Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
Sodium-Calcium Exchangers in Rat Ameloblasts
Author(s)
奥村, 礼二郎
Journal
歯科学報, 111(1): 82-83
URL
http://hdl.handle.net/10130/2315
論 文 内 容 の 要 旨 1.研 究 目 的
エナメル質の形成は,有機質が分泌される基質形成期と石灰化が進行する成熟期の二段階で進行することが 知られている。エナメル質形成を担うエナメル芽細胞の頂端側(遠心端)には Plasma membrane Ca2+
pump-1.4(PMCA1-4)が存在し,小胞体には sarcoplasmic/endoplasmic reticulum calcium-ATPase 2b(SERCA2b)が 存在していることが報告されている。一方,エナメル質石灰化前線とエナメル芽細胞間にはエナメル液が存在 し,その Na+ 濃度は,血清 Na+ 濃度よりも10%低いことが報告されており,何らかの Na+ 濃度調節機構が働 いていると考えられる。そこで我々は,Na+ /Ca2+ 交換体(NCX)に着目した。NCX がエナメル芽細胞に存在す ると仮定するとエナメル液の Na+は細胞内にとりこまれ同時に Ca2+が石灰化前線に放出されるのでエナメル 液の Na+ 組成とエナメル質石灰化過程を同時に説明することができると仮定した。そこでエナメル芽細胞にお ける NCX アイソフォームの同定を RT-PCR 法,NCX 機能を細胞内カルシウム濃度計測法・パッチクランプ 法を用い,またエナメル芽細胞におけるその局在を免疫染色を用いて検索した。 2.研 究 方 法 生後7日齢ラット下顎切歯からエナメル芽細胞を単離し初代初代培養を行い,PT-PCR 法(Qiagen, Valen-cia, CA, USA)Fura-2 を用いた細胞内カルシウム濃度計測法,パッチクランプ法による内向き電流の計測を 行った。免疫組織染色法は未固定非脱灰,厚さ6μm の凍結切片を作成し,1次抗体には NCX モノクローナ ル抗体を用いて行った。NCX 特異的阻害薬である KB-R7943,SN-6,SEA0400 を用いそれぞれの薬理学的感 受性を検討した。パッチクランプ法による内向き電流の計測を行った。 3.研究成績および考察 エナメル芽細胞に NCX1 および3のアイソフォームが特定された。免疫組織染色法において分泌期および 成熟期のエナメル芽細胞に NCX の局在を認め,特に頂端側(遠心端)に強い陽性反応を示した。Ca2+ influx of forward exchange NCX 活性は,細胞外カルシウム濃度に依存し,NCX 特異的阻害薬によって,濃度依存的 に抑制された。その抑制は,SEA0400と SN-6 でより感受性が高かったのでエナメル芽細胞に発現するアイソ フォームは NCX1>3であることが薬理学的に示唆された。Ca2+efflux of reverse exchange NCX 活性は,細
胞外 Na+ 濃度に依存した。従って,エナメル芽細胞に NCX1 と3が発現し特に NCX1 が有意に機能しかつ頂 氏 名(本 籍) おく むら れい じ ろう
奥
村
礼 二 郎
(富山県) 学 位 の 種 類 博 士(歯 学) 学 位 記 番 号 第 1760 号(甲第1035号) 学 位 授 与 の 日 付 平成20年3月31日 学 位 授 与 の 要 件 学位規則第4条第1項該当学 位 論 文 題 目 Sodium-Calcium Exchangers in Rat Ameloblasts
掲 載 雑 誌 名 Journal of Pharmacological Sciences 第112巻 223∼230頁 2010年 論 文 審 査 委 員 (主査) 中川 寛一教授 (副査) 藥師寺 仁教授 井上 孝教授 下野 正基教授 栁澤 孝彰教授 歯科学報 Vol.111,No.1(2011) 82 ― 82 ―
端側(遠心端)に強く発現することによって,エナメル液への直接的な Ca2+ 放出を石灰化前線に行うと同時 に,Na+ をエナメル液から流入させることによって低濃度の Na+ 濃度を維持することが示唆された。 論 文 審 査 の 要 旨 エナメル質石灰化に関与するカルシウムイオン輸送機構に関しては,Plasma membrane Ca2+ Pump(以下 PMCA)による放出機構に関して報告されているが,もう一方の放出機構である Na+/Ca2+交換体(以下 NCX) に関して未だ報告がない。本実験は,ラットエナメル芽細胞における NCX の発現および局在を PT-PCR 法・ 免疫組織化学染色法により検索し,機能活性を細胞内カルシウム濃度測定法・パッチクランプ法を用いて計測 した。その結果,NCX アイソフォーム1・3が検出され,頂端側(遠心端)での局在が確認された。また,カ ルシウム放出フォワード交換における活性は細胞外ナトリウムイオン濃度に依存し,カルシウム流入リバース 交換は細胞外カルシウムイオン濃度に依存性を示し NCX 特異的阻害薬により濃度依存的に抑制された。過去 の報告では,骨芽細胞の基質形成側での NCX が報告されていることから,NCX が石灰化に重要な役割を果 たしていることが報告されている。今回の実験でも同様の傾向が示されていることから,エナメル質石灰化に NCX が重要な役割を果たしていることが示唆された。また,本研究で示された Na+ ,Ca2+ に対する KD 値 が,それぞれエナメルフルドの範囲内であることから,エナメル芽細胞の NCX が生理学的な条件下で機能し ていることが示唆され,エナメルフルドの濃度が140mM であることから NCX 活性は最も高い状態であると 考えられた。 一般に報告されている阻害薬の特性と今回の RT-PCR 法および阻害薬実験の結果と合わせて考えると NCX 1が NCX3 よりも有意に発現している可能性が示唆された。エナメル芽細胞では,Ca 動態経路に関与する SERCA2b が発現していることが報告されています。SERCA2b は細胞内カルシウム濃度を調節するためにカ ルシウムイオンをストアへと取り込む役目を果たしており,エナメル芽細胞に Ca ストア介した Ca 動態経路 が存在していると考えられます。以上のことから本研究では,細胞内カルシウムシグナル機構を介して, NCX1 が有意に機能しかつ頂端側(遠心端)に強く発現することによってエナメルフルドの Na+ 濃度勾配を利用 し,エナメル質石灰化に関与するカルシウムイオン放出を行っていることが明らかになった。 本審査会では1)エナメル芽細胞の分化過程の名称,2)サンプルの採取法,3)細胞内透過経路と細胞間 透過経路における NCX の役割,4)PMCA と NCX の優位性,などについて質問が出されたが,概ね適切な 回答が得られた。さらに今後の研究の展望や図の変更について要望がなされた。本審査委員会は提出された論 文の成果が歯科医学の発展に寄与するところ大であり,学位授与に値すると判定した。 歯科学報 Vol.111,No.1(2011) 83 ― 83 ―