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聴覚障害者が必要とする就労後の支援に関する研究 -聾学校の追指導を中心に-

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(1)学位論文. 聴覚障害者が必要とする. 就労後の支援に関する研究 一聾学校の追指導を中心に一. 兵庫教育大学大学院 学校教育研究科 特別支援教育学専攻. 心身障害コース.

(2) 目 次. 第1章 問題と目的 1.障害者を取り巻く社会状況 ・・・・・・・・・… 皿.聴覚障害 ・・・・・・・・・・・・・・・・・… 皿.聴覚障害者の就労 ・・・・・・・・・… .’●’ 1V.研究の目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・…. 1 2 3 10. 第2章 研究1 聾学校の追指導の質問紙による実態調査 第1節 目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・… 12 第2節 方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・… 12 第3節 結果と考察 ・・・・・・・・・・・・・・… 12 1.質問紙調査 ・・・・・・・・・・・・・・・… 12 皿.結果の概要と考察 ・・・・・・・・・・・・… 54 第3章 研究2 聾学校の追指導の実態調査(進路指導主 任へのインタビュー). 第1節 目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・… 57 第2節 方法 ・・・・・・・… 9・・・・・・… 57 1.対象 皿.手続き 第3節 結果と考察. ・・・・・・・・・…. ・・…. @. 58. 1.全体 II.各カテゴリーの内容 ㎜.結果の概要と考察. 第4章 研究3 聴覚障害者の就労後の生活の調査 第1節 目的 ・・・・・・・・・・・… 第2節 方法 ・・・・・・・・・・・… 1.対象 H.手続き 第3節 結果と考察 ・・・・・・・・…. ・・・…. @ 77 @ 77. ・・・…. @ 78. ・・・…. 1.全体 皿.カテゴリー分析 皿.結果の概要と考察. 総合考察 第5章 ・・… 1.結果の概要 H。課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 皿。 聾学校の担う就労支援のあり方. 引用文献・参考文献 謝辞. 巻末資料. ・・・・・・… ・・・・・・・・・・・・・・…. 110 115 116 120.

(3) 図一覧. 図1−1 図1−2 図1−3 図1−4 図2−1 図2−2 図2−3 図2−4 図2−5 図2−6 図2−7 図2−8 図2−9. 聴覚障害におけるハンディキャップ. 図2−10. 追指導の改善点. 図2−11. 関係機関との連携. 図2−12. 連携している関係機関. 図2−13. 連携内容(職業安定所). 図2−!4. 連携内容(障害者職業センター). 図2−15. 連携内容(障害者就業・生活支援センター). 図2−16. 連携内容(福祉事務所). 図2−17. 連携内容(手話通訳者). 図2−18. 連携内容(聴覚障害者協会). 図2−19. 関係機関との連携での問題点. 図2−20. 追指導の実施状況(重複障害児). 図2−21. 追指導の支援内容(重複障害児). 図2−22. 重複障害児の追指導での連携する機関. 図2−23. 連携している機関の比較. 図2−24. 今後連携したい関係機関. 障害の種類別身体障害者雇用状況 常用雇用身体障害者の賃金 聴覚言語障害者の退職理由 追指導の実施状況 追指導の期間. 追指導担当者 追指導の実施方法 予算措置 相談内容. 追指導の効果 追指導を行った結果の影響(利点) 追指導で困ったこと.

(4) 図2−25. 連携したい理由(職業安定所). 図2−26. 連携したい理由(障害者職業センター). 図2−27. 連携したい理由(障害者就業・生活支援センター). 図2−28. 連携したい理由(聴覚障害者協会). 図2−29. 連携している機関と今後連携したい機関との比較. 図2−30. 連携したい理由(福祉事務所). 図2−31. 連携したい理由(ろうあ者相談員). 図2−32. 連携したい理由(手話通訳者). 図2−33. 聾学校が担う就労支援. 図3−1 図4−1 図5−1. 聾学校の追指導に関する全体図 聴覚障害者の就労後の生活調査の全体図 聴覚障害者の就労支援の流れ.

(5) 表一覧. 表1−1 表1−2 表1−3 表1−4 表3−1 表3−2 表3−3 表3−4 表3−5 表3−6 表3−7 表3−8 表3−9. 盲・聾・養護学校の卒業者数 障害者の雇用状況. 身体障害者の転職状況 身体障害者の昇進経験の有無 対象校のプロフィール 大群・小群名と郡数. 進路指導主任へのインタビュー 追指導の必要性 追指導の形態 追指導の予算 卒業生との関係 相談. 支援の方法. 表3−10. 連携. 表3−11. その他. 表4−1 表4−2 表4−3 表4−4 表4−5 表4−6 表4−7 表4−8 表4−9. 対象者のプロフィール. 仕事を辞める. 表4−10. 生活上のこと. 表4−11. 生活情報. 表4−12. ストレス発散. 表4−13. これからの自分. 聴覚障害者へのインタビューのカテゴリー分類 仕事中のこと. 職場環境 コミュニケーション 人間関係 相談. 就職前.

(6) 第1章問題と目的 1.障害者を取り巻く社会状況. 障害者の生活は,2006年に施行された障害者自立支援法により大き く変わろうとしている。障害者自立支援法の目的は,障害者の福祉の 増進を図ると共に,障害の有無にかかわらず国民が相互に人格と個性 を尊重し安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄与すること (障害者自立支援法 総則)としている。障害者自立支援法はこれま. での障害者福祉の障害種ごとの縦割りサービス,自治体問の格差,財 源の確保等の課題解決のために制定された。この法律の要点は,障害 者福祉サービスの仕組みの一元化,市町村による一元的なサービスの 提供,応益負担による安定財源の確保,就労支援体制の強化,支給決 定の仕組みの透明化・明確化である。これまでは応能負担であった障 害者の福祉サービスを利用する場合は,軽減策が講じられてけいるも のの1割の利用者負担となった。. 障害者自立支援法には,障害者の地域生活と就労を進めることも含 まれている。1995年に策定された障害者プランでは,障害者がその適 性と能力に応じて,可能な限り雇用の場につき職業を通じて社会参加 を可能にしていくと明示されている。就労し賃金を得ることは社会生. 活の基礎となる大切な部分であり,社会的自立をするための第1歩に なると考える。障害者の就労に関しては,障害者雇用促進法により国 から法定雇用率が出され,多くの障害者が多様な事業所に就職するよ うになってきている。しかし,未達成の事業所もまだ多く,国は障害 者の雇用と職場定着に向けたさまざまな取り組みを展開している。. 障害者の就労支援では,ジョブコーチやトライアル雇用の制度等の 充実を進めている。また労働・福祉・保健・教育などの関係機関と連 携を図ることを目的とする地域障害者就労支援事業も各地で始まって いる。障害者の地域生活と就労を進め,自立を支援する観点で,就職. に向けての支援と就職後の定着指導を行うとしている(厚生労働省 障害者雇用対策課,2005)。このように,障害者に関する制度の変革は 1.

(7) 措置制度から利用者契約制度へ移り変わり,. 障害者の生活も転換を迎. えようとしている。. ∬,聴覚障害. 一次的ハンディキャップ. 聴覚障害者は情. 闘こえないζと. 報障害者だと言わ. 二次的ハンディキャップ. れる。聞こえない. 話すこと,読み書きにおける不利. という聴覚障害は 三次的ハンディキャップ. 一次的ハンディキ. 篇ミ晶ニケーションが閉ざされていることにより. 精報不足・偏りによる対人関係,. ャップである。そ. 「心理的問題などがおき惹,. のことは話すこと,. 読み書きにおける. 不利という二次的. 図1−1 聴覚障害によるハンディキャップ 聴覚障害者の職場定着推進マニュアル(高齢・障害者雇用支援機構). ハンディキャップ. につながる。読み書きすることの不利は学力の向上にも影響を及ぼす ことが考えられる。そしてコミュニケーションが閉ざされていること により,情報不足・偏りによる対人関係,心理的問題などがおきると. いう三次的ハンディキャップにつながっていくとされる(図レ1 高 齢・障害者雇用支援機構,2007)。聾学校に在学する聴覚障害児は,保. 護者や教職員が常に周りにいる環境で過ごしている。困ったことや分 からないことがあればいつでも聞くことができ,いつでも援助しても らえる状況にある。聾学校は,同じ障害を持つ仲間と情報を交換し,. 共有することができる心理的にも安定した環境であるといえる。しか し,学校を卒業し社会へ出ると,ほとんどの聴覚障害者は健聴者の社 会の中へ飛び込むことになり,三次的ハンディキャップに直面するこ とになる。聴覚障害者は実際に社会生活の中でこれらのハンディキャ ップを感じているのだろうか,対人関係,心理的問題等を抱えている 場合どのように解決しているのであろうか。就労支援では聾学校の追 指導が行われているが,聴覚障害者のニーズとの適合性についてこの 研究で分析し明らかにする。.

(8) 皿.聴覚障害者の就労. 1.聾学校の就職率. 平成18年度の全国の聾学校の卒業生は509人でそのうち就職したも のは180人であった。就職率は35.4%であり,盲学校,養護学校より 高い数値を示している(表1−1)。養護学校の対象となるのは肢体不自 由者や知的障害者であるため,この数値は障害種別のものではないが, 聴覚障害者は就職しやすいということがいえる。. 表1−1 盲・聾・養護学校の卒業者数(平成19年目 卒業者. 就職者. 就職率. 盲学校. 283. 35. 12.4%. 聾学校. 509. 180. 35.4%. 養護学校. 13,470. 3,083. 22.9%. (学校基本調査速報 文部科学省). 2.障害者雇用実態調査. 平成15年度障害者雇用実態調査によると常用雇用の身体障害者は. 36万9千人である。障害種別に見ると肢体不自由者が18万1千人で 49.1%,内部障害者が7万4千人で20.1%,聴覚言語障害者が5万9 千人で16.0%,視覚障害者が1万7千人で4.6%となっている(表1−2, 図1−2)。. 表1−2 障害者の雇用状況. 平成10年度. 平成15年度. 雇用者数. 割合. 雇用者数. 割合. i千人). i%). i千人). i%). 視覚障害者. 43. 10.9. 17. 4.6. 聴覚言語障害者. 60. 15.2. 59. 16.0. 肢体不自由者. 214. 54.0. 181. 49.1. 内部障害者. 59. 15.0. 74. 20.1. 障 害 種. (障害者雇用実態調査 厚生省). 3.

(9) 平成10年度と15年度の調査結果を見ると,内部障害者の雇用者数 は増加しているが,他の障害種の雇用者数は減少している。この時期 は景気の落ち込みによるリストラが社会問題にもなり,障害者もこの 影響を受けたのではないかと思われる。しかし聴覚言語障害者の雇用 者数は微減であり,安定しているものといえる。. 身体障 害者の転 職状況を. 18脚. 15年度調査. ,59. 181. 74. 撒19. 17. 見ると,. 聴覚言語 障害者で. 転職の経 験をして. @5. 43 60. 10年度調査 0. 100. 214. 200. 60. 400. 300. ロ視覚障害 ロ聴覚言語障害ロ肢体不自由ロ内部障害ロ重複国不明. 500 (千人). 図1−2 障害の種類別身体障害者雇用状況. いる者は,. 平成10年度は39.0%,平成15年度は40.6%である。平成10年度の 離職経験では一番高い数値である。平成15年度の離職率は,平成10 年度に比べすべての障害種で増加しており,聴覚言語障害者は4割を 超える高い数値を示している。平成10年度の転職回数の平均は2.2回 に対し,聴覚言語障害者は2.4回である(表1−3)。聴覚言語障害者は. 他の障害者に比べ転職を経験している者が多いことが分かる。 表1−3 身体障害者の転職状況. (%). 平成15年度. 平成10年度 障 害 種 全. 体. 転職経験の. 平均転職回数. ы〟i%). 転職経験の ы〟i%). 28.7. 2.2. 34.1. 視覚障害者. 29.8. 2.1. 44.1. 聴覚言語障害者. 39.0. 2.4. 40.6. 肢体不自由者. 30.8. 2.2. 37.1. 内部障害者. 9.7. 1.4. 16.6. (障害者雇用実態調査 厚生労働省) 4.

(10) 聴覚言語障害者の昇進経験の有無については,全体の28.5%に対し,. 17。1%という最も低い数値であった(表1−4)。最も高い数値の内部障. 害者の39.2%と比較すると2倍以上の差があった。昇進するための要 素には,昇進試験の受験や資格取得,統制力,判断力,調整力等も考 えられる。また職場におけるコミュニケーションも昇進のための大事 な要素の一つになるであろう。この点において,聴覚言語障害者は他 の障害者と差が出てしまうのではないだろうか。. 表1−4 身体障害者の昇進経験の有無 障 害 種 全. 昇進の経験がある(%). 体. 28.5. 視覚障害者. 25.6. 聴覚言語障害者. 17.1. 肢体不自由者. 32.4. 内部障害者. 39.2. (平成10年度障害者雇用実態調査 厚生労働省). 聴覚言語障害者の賃金は,20万1千円であり,全体の28万6千円 を大きく下回っている。賃金の. 最高値を示す視覚障害者の40 万1千円との差は実に20万円で. 千円. 450 400. ある(図1−3)。以上のことより,. 350. 聴覚言語障害者は,他の障害種. 300 250. に比べ就職率は高く,雇用者数. 譲. 嚢. 熱iiii. 繋 iliii難難,ili. 200 150. は多い結果は出ているにもかか. 嚢i. lii. :iliili. :ii験i:i;. 撃奄奄於{iiii. li. 嚢$. 100. わらず賃金が最低値を示すのは,. 50. 0. 転職経験が多く,勤続年数が短. 視 覚 障 害. いことが影響しているのではな. 聴 覚 言 語. 障 害. いかと思われる。一般的に企業 等の場合,勤続年数や昇進・昇. 図1−3. 格は給与の算定基準になる場合. 肢 内 重 全 体 部 複 体. 否讐讐 由. 常用雇用身体障害者の賃金. (平成10年度障害者雇用実態調査 厚生労働省). 5.

(11) が多いことを考えると,聴覚言語障害者は不利な条件に身を置く結果 につながっているといえる。. 聴覚言語障害者 の退職理由を見る. 職場の人間関係. と,職場の人間関. 賃金・労働条件. 係の23.8%が一. 仕事の内容. 番多くなっている. 2. 22.6 Q0.5. 12 6. 会社の配慮. (図1−4)。聴覚障. 害者は就職するこ とは容易であるが,. 職場の中での人間. P1.6. 家庭の事情 49. 通勤が困難. 園聴覚言語障害(数値). 4. ?S体. 障害のため. 関係の問題を解決 することができず,. .8. 0. 5. 10. 15. 20. 図1−4聴覚言語障害者の退職理由. 25 (%). (平成15年度障害者雇用実態調査厚生労働省). 離職する傾向が高 いことがわかる。 これはまさしく三次的ハンディキャップの現象であ. るといえる。聴覚障害者はコミュニケーション不足で人間関係がうま くいかず退職している(八田,2004)。長南(2003)は,聴覚障害者は. 聴者と意思の疎通がうまくいかず,仕事でミスをする,孤独を感じる などの結果として離職してしまう例が多いと報告している。些細なコ ミュニケーション不足が職場の人間関係に影響を与えて,結果的に離. 職してしまう(障害者雇用推進者講習テキスト 高齢・障害者雇用支 援機構,2006)。しかし,石原(2003)は,聴覚障害者が自分自身の社 会性の欠如により生じた事態を周囲の障害理解の不足として捉えると、. いったことは起こりがちだと指摘している。身の回りにあるさまざま な情報を的確に,正確に入手することが困難iな場合,物事の尺度に広 がらず,周りとの不協和音を生じさせてしまうことも考えられる。 3.聴覚障害者の職場での様子. 聴覚障害者の大多数は,健聴者と共に仕事をしている。高齢・障害者. 雇用支援機構調査報告書(2004)によると,聴覚障害者は自分の目の 6.

(12) 前でも,自分に分からない話が進行しているという不安感,昼休みな どに同僚と食事をしていても,自分だけ輪の中に入っていけないとい った孤独感などからくる,心理的な問題も抱えている場合が少なくな いとしている。卒業生は周囲とのコミュニケーションが円滑に進まず 孤立感を感じている(木村,2004)。岩本ら(2006)は,聾学校卒業生. の職場での問題について,企業側も学校側も,聴者とのコミュニケー ションなどの対人関係に重点をおく同様の傾向にあったと示している。. 仕事をする上では仕事の指示や打合せ,連絡等,コミュニケーション は不可欠なものであるが,そのコミュニケーションの問題に悩まされ 苦しむ聴覚障害者は多いことがうかがえる。小田・横尾(2000)は,職. 場の中で適切なサポートがないために孤立し,離職を余儀なくされて いることも考えられ,職場で孤立する卒業生をどうフォローするかが 課題だとしている。職場への適応上の問題に直面したとき,十分に相 談する機会や場がなく,結局は退職せざるを得なかった聴覚障害者も 多かったとの報告もある(障害者雇用推進者講習テキスト,2006)。こ. のようにコミュニケーションの課題を抱える聴覚障害者の中には,問 題をどこにも,誰にも相談せずに一人で考え一人で解決しているケー スは多く,時として誤った判断につながることもある。また,親しい 友人や先輩に相談し限られた片寄った情報から易きに流されてしまう 場合も少なくない。. 4.聴覚障害者の就労支援. 学校で行われる進路指導の活動には,生徒理解,進路情報,啓発的 経験,進路相談,進学・就職の指導・援助,卒業生への追指導などが ある。追指導の対象は卒業生であることが,他の活動と異なる点であ る。追指導とは,卒業後に新しく迎えた生活により良く適応し,自己. 実現を図っていくことができるように,卒業した後も引き続いて指 導・援助を行う活動のことである(進路指導の手引き,1980)。その際. に得られた卒業生の実態や情報は,在学生の進路指導に役立つものと なる。これにもとづき聾学校では,聴覚障害者への就労支援として進 7.

(13) 路指導部を中心に卒業生への追指導(追支援)が行われている。. 小田・横尾(2000)が行った聾学校の就労支援に関する調査による と,聾学校では,支援体制や卒業生の職場でのコミュニケーション面 への支援を重要視する意見が多く,就職先でうまくサポートを受けら れていない卒業生が多いことが推測され,聾学校の追支援は,卒業生 と企業の問に入り,仲介役となる役割があると述べている。長南(2003). は,コミュニケーションや職場でのマナーは高等部だけでなくすべて の学部の教師が職場適応の援助者であることを認識しておくことが大 切だと示している。小嶋(2006)は,問題がこじれる前の段階で適時 に支援機関が介入する必要があるとしている。これらのことから,聾 学校が行う追指導の重要性は高いものであると考えられる。. 障害者が職場に定着するための公的な就労援助として}手話協力員 やトライアル雇用,ジョブコーチ(職場適応援助者)などがある。手 話協力員は,求職相談や職場定着指導など聴覚障害者への情報やコミ ュニケーションをサポートすることを目的に職業安定所に設置されて. いる。トライアル雇用は,3か月間の試行雇用を行い,事業主と障害 者の相互理解を深め常用就労を目指す事業である。ジョブコーチは,. 事業所にジョブコーチを派遣し,障害者や事業主に対して,雇用の前 後を通じて,障害特性を踏まえた直接的・専門的な援助を行う事業で. ある。平成18年現在でのジョブコーチ配置数は778人である。職場定 着率は83.6%との支援実績が報告されている(厚生労働省,2007)。. ジョブコーチの支援による職場定着の効果は確かに上がっているが,. 対象は知的障害者や精神障害者が圧倒的に多くなっている。ジョブコ ーチの支援を聴覚障害者が受けようとすると,二者間でのコミュニケ ーションの問題がそこには発生することになる。手話のできるジョブ コーチがいなければ,聴覚障害者は充分な就労支援を受けることが困 難になることが予想される。.. また,聴覚障害者向けの就労支援事業に取り組む自治体もある。そ. れは,大阪府と山梨県の2か所である。名称はワークライフ支援事業 (重度障害者職場定着指導員制度)で,手話のできる支援ワーカーが 8.

(14) 聴覚障害者の職場での問題解決の支援や,職業生活の相談等を行い職 場定着につなげる制度である。この事業により聴覚障害者への的確, 適正な就労支援を行うことが可能になっている。. 聴覚障害者(ろうあ)協会は,各都道府県にありその組織の中に労 働対策部を有し,聴覚障害者の就労問題を考え労働環境を整備するこ とを目的に活動している。実際に,労働対策担当者が聴覚障害者協会 の会員・非会員を問わず,多くの聴覚障害者の就労相談に応じている が,その担当者の力量に負うところが多く見られる。. 聴覚障害者の就労支援には,聾学校を始めさまざまな機関がそれぞ れの支援を行っているのが現状である。 5.関係機関との連携. 小嶋(2006)は,援助を必要とするときに,本人自身が自分からS. OSを発信できるようなスキルを身に付けることが重要だが,当該関 係機関に直接援助を求めにくい面もあり,双方にとって学校の進路指 導担当者等が一番の相談先になるとしている。手塚(1999)は,個々 の障害者のアフターケアや就労支援を個々で行っていくことは困難で,. 就労支援センター等を中心とした,地域の就労支援ネットワークが必 要になってくると述べている。障害者就業・生活支援センターは,直 ちに就職することが難しい人に対して,身近な地域で就業面と生活面 の支援を一体的に行う施設であり,地域の支援ネットワークの拠点と して機能するよう期待されている(小塩,2006)。また,生徒に関する. 情報を一番持っている学校が就労支援のネットワークの中心になるべ きだと言っている(小塩,2005)。. 小田・横尾(2000)は,連携の必要性は十分わかるが,関係機関と の意思疎通に対する方法に課題があると示唆し,聾学校は手話でのサ ポートが行えるメリットを活用し,他の機関へつなぐコーディネート 役を担う重要な機関となる可能性があるとしている。また,工藤(2006). は,聾学校の追指導は,学校独自の地域に密着した取り組みが不可欠 で,関係機関との連携を十分図りながら,聴覚障害者の就労支援に寄 9.

(15) 与できる役割を担うことができると特別支援教育の観点から述べてい る。. 聴覚障害者の抱える就労の課題は,聴覚障害が見えない障害である ため,聴覚障害者に関わりを持たない者には理解しがたいものも多い と思われる。意思疎通を円滑に行うためには,手話等のコミュニケー ション手段は欠かせない。聴覚障害者を取り巻くさまざまな支援機関 が,情報を共有し,連携することにより,更に有効な就労支援を行う ことができる。それは職場定着を促進し,聴覚障害者の社会的自立の 実現につなげることができると考える。 IV.研究の目的. 本研究は,聴覚障害者の就労支援に関して,聾学校の卒業生への追 指導に焦点をあて,聾学校の追指導の実態を把握し,その課題を明ら かにする。また,聴覚障害者ヘインタビューを行い,聴覚障害者が必 要とする支援は何か,現状を探り分析を行う。これらにもとづき,聴 覚障害者の卒業後の就労支援のあり方について提言することを目的と する。. 10.

(16) 【語句の表現】. この論文で扱う語句については,以下の見解により使用することと した。. (1)聾学校. 全国聾学校の名称は,聾学校,ろう学校,特別支援学校,聴覚特別 支援学校,ろう特別支援学校などさまざまであるが,聾学校と統一し て表記した。. (2)聾者. インタビュー対象者の語りの中で「聾者」「ろう者」と出てきたもの は,聾者として表記した。. (3)聴覚障害者. 聴覚に障害のある者を,ろうあ者,聾唖者,ろう者,聾者,聴覚障 害者,難聴者,中途失聴者等,障害の程度や文化的背景によりさまざ まな呼称があるが,(2)の聾者以外は聴覚障害者として表記した。 (4)健聴者. 聴覚に障害がなく,耳の聞こえる者を健聴者と表記した。 (5)追指導. 各聾学校において追指導の名称は,追支援,アフターケアなどと呼 ばれているが,追指導として表記した。. 11.

(17) 第2章研究1追指導の質問紙による実態調査 第1節 目的. 聴覚障害者の就労支援の一つである,聾学校の卒業生への追指導の 現状と課題を質問紙により調査を行い,その結果を分析し,追指導の あり方を明らかにすることを目的とする。. 第2節方法 1.対象. 調査対象は高等部のある聾学校(特別支援学校)67校である。 皿.方法. 調査は郵送法で行った。回答は,各学校の進路指導担当者とした。 皿.調査用紙. 質問紙の質問内容は20問,A4サイズ用紙4枚に作成した。質問項 目は,追指導の実施状況,実施期間,担当する者,実施方法,予算措 置,相談内容,影響(利点),課題,改善点,現在の連携している機関,. 連携の際の課題,重複障害児への追指導の実施状況,重複障害児への 支援内容,重複障害児への追指導で連携している機関,今後連携した い関係機関,学校の担う就労支援の内容であった。 四.調査実施期間. 200X年5,月∼8.月に調査用紙を各学校へ郵送し,回収を行った。. 第3節結果と考察 1.質問紙調査 1.回収率. 全国の高等部のある聾学校(特別支援学校)に調査用紙を郵送し, 54校から回答があった。回収率は80.6%であった。 12.

(18) 2.追指導の実施状況 ・追指導を実施している聾学校は98%,. なし 2%. 実施していない聾学校は2%であった(図 2−1)。実施していない理由は,卒業生の数 あり. が少なく,追指導をしなくても卒業生の状. 98%. 況を把握することが可能だとしている。追 図2−1追指導の実施状況. 指導は,ほとんどの聾学校が取り組んでい. る卒業生に対する支援であることが分か った。. 3.追指導の期間. 追指導を行う期間は,3年間. 4年間. その他. 2%. 4%. 2年閤. 8%. が一番多く41%,次は,1年間. が30%,5年間以上は15%,2. 5年間以. 年間は8%,4年間は2%,そ. 15%. 3年間. 上. 41%. の他は4%という結果であった。 (図2−2)。8校の学校が5年間. 以上,追指導を行っていると答. 兵2−2追指導の期間. えていた。基本的には3年間だ が,個人によっては, 5年間以上追指導を行う学校もあった。その他. の回答には,年数は決めず必要に応じて行う,企業から要請があれば. 行う,聴覚障害単一の場合は1年間,重複障害児の場合は3年間追指 導をする等,対象者により臨機応変に対応し追指導を実施していると. いえる。追指導を5年間以上実施している8校の内6校は,中国・四国 地区の学校であった。5年間という長期にわたる追指導が実施できて いる理由や地域性の背景は,この調査からは知り得ることはできなか った。この結果は,卒業生の中には追指導を必要とする者がいるとい う現状を示しており,その要請に聾学校が長期にわたり対応している ことが読み取れる。. 13.

(19) 4.追指導の担当者 進路指導担当者i. 追指導を担当しているのは, 進路指導担当者96.2%,旧担任. 旧担任i. 71.7%,その他13.2%であっ. その他i. 8. 0. た(図2−3)。その他では,高等. 20. 40. 60. 図2−3追指導担当者 (学校数). 部職員,関わりのある職員,職 業科担当者,長期勤務者などが. 対応していた。追指導を担当するのは,進路指導担当者と旧担任がそ のほとんどを占めていた。卒業生にとって一番相談しやすいのは,や はり旧担任であろう。追指導の実施にあたっては,進路指導担当者と 旧担任の協力体制のもと,卒業生の情報の共有が必要になってくるこ とが考えられる。. 5.追指導の実施方法 追指導の実施方法は,職場訪問96.2%,卒業生の来校時83.0%,メ ール52.8%,電話・FAX37.7%,家庭訪問20.8%,手紙など20.8%,. 同窓会など卒業生の会合に出向いての追指導17.0%,その他は5.7% という順であった(図2−4)。その他には,保護者からの情報,就労先. の支援要請を受けて対応との答えがあり,卒業生の身近にいる人から の要請もあることが分かった。追指導の実施方法は,職場訪問が9割, 職場訪問. iiiiiii麟層騰唱i. 来校時. {li…i…iiiiil。ii. …i}iiiiii.驚繊i黛iiiiii藝iiiii華iiiiiiiiiiiiiiiiii,. メール. 蛛E…・…・…44. 葦…i…i…ii}iiii懸慧…ii iiii華}i鱒藻黙暴ii糞iiiiiiii 史・N. 20. 電話・FAX 11. 家庭訪問. 手紙. =i=i:iミiiii藝i’w. P1. iiii灘iiiiii蓑ii. 会合 その他 0. 10. 20. 30. 40. 50. 60. (学校数). 図2−4追指導の実施方法 14.

(20) 来校時における相談が8割を超え,この二つの方法は全国の聾学校で 実施されている追指導の形態であるといえる。メールでの追指導を行. っていると答えた学校は5割を超え,パソコンや携帯電話の普及によ り支援の形態が時代と共に変化しており,携帯電話が聴覚障害者の生 活の中に入り込み,活用されている様子がうかがえる。 6.追指導の予算の措置. 未記 入. 追指導の予算があると答えたのは. 2%. 58%,予算がないと答えたのは40%,未 記入の学校は1校あった(図2−5)。予算. な彩、 、ご. があるのは旅費だけ,1年間県内のみ,. ある. S鰯. 58%. 予算はあるが少ないため他の出張に併 せて実施しているなど切実な状況が読 み取れる。追指導を5年間以上実施して. 図2−5予算措置. いる8校のうち3校は,追指導の予算措 置がないと答えている。追指導の実施方法では,職場訪問による指導 が多いという結果であったが,それに伴う旅費等はどのように捻出さ れているのであろうか。追指導の必要性があるのに予算がなく職場訪 問できないという状況は,進路指導担当者にとって苦しい立場に置か. れていることは想像で きる。 、罷繍 罵慰黛 ・趣麟慧翼慧=・慧懸 50. 人間関係. 7.相談内容 追指導の相談内容は,. 黙ぺ撰懸無、騨蕊懸ミ’. 仕事内容. §纒憾ミミ瀞懸. 離職・転職. 職場の人間関係94.3%,. 生活面. 仕事内容88.7%,離職・. 給与. 転職64.2%,生活面の. 金銭面. 悩み39.6%,給与. その他. 妻、継慧 婁・蕪’. き1§1ミ. 繋’§. 21. ミ馴5 10. 1. 0. 28.3%,金銭面の悩み. 34. 10. 20. 30. 40. 50. 60. (学校数) 図2−6相談内容. 18.9%,その他が,余暇 15. 4.

(21) の過ごし方や友人関係の悩みで1.9%という結果が得られた(図2−6)。. 人間関係,仕事内容の相談がともに8割を超え,多くの卒業生がこの 問題の解決に苦慮していることが分かった。仕事内容の相談について は,職場における様々な問題が考えられるが,具体的な相談の内容を この調査からは把握することはできなかった。 8.追指導の効果. 追指導の効果があったと答えた学. 未記入. 校は96%,効果を感じることは少な. 効果は. かったと答えた学校は2%,未記入. 2%. 2%. 少ない. の学校は1校あった(図2−7)。追指. 導の効果や,有効性を高く評価して 効果あり. いる学校が多いことが読み取れた。. 96麗. この結果は,卒業生の就労に関して は追指導の需要があるという状況の. 図2−7追指導の効果. 表れだと考えられる。. 9.追指導の影響. 追指導を行った結果の影響・利点の回答は,自由記述で答えてもら. い,分析した結果,9つのカテゴリーに分類することができた。職場 定着につながった42.3%,職場への啓発になった21.2%,進路開拓に つながった19.2%,職業意識の改善になった17.3%,悩みを解消でき た15.4%,精神的な安定につながった13.5%,会社との信頼関係がで きた5.8%,関係機関と連携ができた3.3%という順であった(図2−8)。. この結果を見ると追指導は,卒業生本人への支援と企業向けの支援,. 在校生への進路開拓の大きく3つの支援に分けることができる。結果 では,関係機関との連携を挙げたのは4%の学校であったが,聾学校 が地域におけるセンター的役割を担うとしたら,聴覚障害者の就労支 援においては,関係機関との連携は今後重要な部分になると思われる。. 16.

(22) 職場定着. il懸懸嚢i蓑. 職場への啓発. …liiiliミi慧ii}1. …iiii灘iiiiii. ::::1・…購………………11. 進路開拓. 騰1馨…i…ii…ililii蓑…i…i…i…i…鎌…撚……… … 離強嚢iii 灘ii…灘……ii…ii…i…i…il. 職業意識. i遷織iiiiiiiiiii i…i}i…iii鱗ii iiiiiil. 悩み 精神的な安定. 10. …iii蓑i馨liiiiiiiiii…蓮…羅i…i…i. V. 悪iilii襲li. 信頼関係 関係機関との連携. 改善された. 繋懸灘醗2 d養11. 0. 5. 10. 15. 20. 25. (学校数) 図2−8追指導を行った結果の影響(利点). 各カテゴリー別に分類し,抽出されたエピソードを以下に記述した。 職場定着のカテゴリーでは,離職の相談があったが踏みとどまった,. トラブルを回避し離職を防ぐことができた,家庭の問題で出社拒否気 味だった卒業生に追指導を行い,離職を踏みとどまった,職場定着に 大いに役立っている,離職を防ぐ一助となる等の卒業生の離職防止に 役立っていることが分かる。. 職場への啓発のカテゴリーでは,職場の上司・同僚の聴覚障害者に 対する理解力が深まった,アドバイスができ卒業生・企業共に利点が ある,人間関係やコミュニケーション等の問題を早期に解決すること ができた,事業所からコミュニケーション方法や接し方について相談 に応じられる,進路先と卒業生との誤解,行き違いが改善された等,. 卒業生自身では解決することのできない問題を第三者である教職員の 仲介により解決することができている。. 進路開拓のカテゴリーでは,進路開拓につながる,職場での様子を 企業側と本人の双方から聞くことができ問題点を把握できる,職場の 障害者に対する配慮を知ることができた等の記述があり,卒業生の就 労の現状は,これから社会に出て行く在校生にも有意義な情報となる ことは間違いない。それぞれの卒業生が感じる職場での課題は,聴覚 17.

(23) 障害者全体の課題と考えても過言ではないであろう。. 職業意識の改善のカテゴリーでは,本人の意識向上,本人・上司と の話し合いで勤務態度の改善になった,就労意欲の向上につながった. 等,何か職場で問題に直面し,それを克服できず悶々としている卒業 生の様子が浮かんでくる。慣れ親しんだ教職員が職場に出向き,声を かけ,励ますだけでも卒業生にとっては,大きな支えになり,気持ち を切り替え,就労意欲の向上につながっていると思われる。. 悩みの解消のカテゴリーでは,悩みを相談し,改善策をアドバイス することができた,本人の思い込みで人間関係がうまくいっていなか ったことが解消された,職場の上司とのコミュニケーションに溝を埋 めることができた,職場の上司への協力依頼をし,問題が改善され悩 みが解消した等,卒業生にとっては相談できる教職員の存在は大きい ものであるといえる。. 精神的な安定のカテゴリーでは,職場に手話を使える人がいない場 合,教員と手話で話をすることができ情緒が安定する,本人もほっと する,悩み相談などによる心の安定感,悩み等を聞くことにより「気 持ちが楽になった」という言葉が返ってくることが多い,生活におけ る悩みの相談や指導を行うことが,卒業生の生活の安定につながった,. 悩み等を話し合うことで,心のケアになり職場定着につながっている 等が挙げられ,卒業生が職場での様々な人間関係により,多大なスト レスを感じていることが読み取れる。そのストレスは,手話など自分 のコミュニケーション手段を思いつきり使い,教職員と話すことで解 消されていると考えられる。. 信頼関係のカテゴリーでは,会社との信頼関係,会社の相談に答え られた,企業との関係強化につながった,企業から連絡がある場合は 離職寸前の場合が多く解決が難しいことが多い等,企業と学校との信 頼関係の記述が見られた。企業の中には,社内で何とか問題を解決し たいと考える所もあるかもしれないが,見えない障害である聴覚障害 者の問題は,聴覚障害者と接したことのない人にとっては,理解しが たいものもある。企業とのパイプは,卒業生の情報収集には欠かせな 18.

(24) いものである。. 関係機関との連携のカテゴリーでは,地域の自治体相談員やろうあ 協会との関係が促進された例が示された。. 追指導は,卒業生本人への支援として,さまざまな相談に乗り,悩 みを聞き話をすることにより心理的安定が得られ,卒業生の離職防止 につながっているといえる。企業向けの支援では,学校との信頼関係 を築きながら,聴覚障害者の理解・啓発が行なわれ,職場環境の改善に. 寄与している。在校生への進路開拓では,追指導で得られた卒業生の 就労の現状は,在校生の進路学習・進路指導の生きた教材になっている といえる。. 10.追指導の困難点. 追指導を進める上で困ったことは,自由記述で答えてもらい,37校 の学校から回答が得られ,分析した結果,12のカテゴリーに分類する. ことができた。予算面29.7%,多忙18.9%,進路指導担当者の異動 13.5%,相談内容の限界13.5%,保護者や企業などとの連携13.5%,. 離職後の相談5.4%,進路指導担当者の人的配置5.4%,情報5.4%, 予算 多忙 限界 異動 連携 離職後の相談. 鶏i・iミiii黙§iiii. ::i;i:i≒ii黙i:繍. 繍ili:i:i;i繍i:iミ:i;i;i:i=i黙§:i:i:iミ=i;きi:き§=iミi. 聡i§ililllilili:iヒ;i:隙ili:iミ=きi黙 :i聴i:i:. 灘i購i. 照=鱒,’照:i;i:・. iiiiiiiiiii繍iii. ・i・i・i聡i iiii’. ・iiiiii継iミiii享iiii綴誤iiiiiiiiiiiミiミi醐:きiiiiiiii:層. 1…灘職11. …鰹・…黙…3…・…・1・…講§・…・……・…欄・…・3…・…・隙7. …………鎚……………総………………………………}5. i・i・iミiii・購輩. i灘ii…il…1…1……蜘・…………1…i…1…1…隙………………………ll……§’. 巽黙藤iiiiiiミ. ’鱒iξ=i:i=i:きi:i蝿:i=i唐i蝋鱗i構i噛. 55. 欝iiii難. 2222. ・:::i・iii§ミliiliiii謹霞iiiiキiiii澱iiミi繍i購. 人的配置. 醤iiiiiiiii. 情報. i=ヨ=:i=i:i総liiiiヒ癖iliiiii薬懸キiiiii. 就労意欲不足. 一口iii. 11. 相談不要 大学側の姿勢. 個人情報. 羅ミ…1………翻………………1………1. 1. 問題なし 0. 2. 4. 6. 8. 10. 12. (学校数). 図2−9追指導で困ったこと. 19.

(25) 就労意欲の不足5.4%,相談不要2.7%,大学側の姿勢2.7%,個人情 報の取扱い2.7%,問題なし2.7%という結果となった(図2−9)。追. 指導の課題として挙げられているものを見てみると,学校内の制度面 と,学校外の取り組みに分けることができた。学校内の制度面は,予 算,業務の多忙化,人事異動,人的配置の問題であり,学校外の取り 組みは,相談の限界,他機関との連携,情報,離職後の相談などであ る。. 各カテゴリー別に分類し,抽出されたエピソードを以下に記述した。. 予算面のカテゴリーでは,東北地区の聾学校は県外就職者が多く,. 旅費を確保することが難しいと答えており,予算の制約があり,臨機 応変に対応できない,県外の追指導は私費で進めている等の厳しい現 状が示された。. 多忙のカテゴリーでは,頻繁に職場訪問する余裕がなく,問題発生 を初期に食い止められず,離職してしまうケースがある,時間確保の 配慮がないので,追指導はボランティアに近い活動になっている等, 追指導はしたくてもできない進路指導担当者の苦悩が感じ取れる。. 進路指導担当者の異動のカテゴリーでは,卒業生の在校時の様子を 把握していない者が担当者になる,就労に至る過程や取り決めを知る 職員が少なくなり,情報の蓄積や継続が困難,卒業生を知っている職 員が少なくなる等,学校現場の体制の問題が指摘された。. 限界のカテゴリーでは,本人が心を閉ざした場合,アプローチの手 段がなくなる,家庭の問題や個人的な交友関係が絡むケースは追指導 の限界を感じる,卒業生の能力的なこと,性格的なトラブルは追指導 の限界を感じる,私生活等で学校としてどこまで関わるのか,家庭で の問題や金銭管理について,どこまで立ち入って良いか困った等,追 指導の対象である卒業生の就労は,生活面の安定の上に成立している ことがうかがえる。就労と生活は切り離せないものであり,卒業生を 支えることは,生活面をも支えることにつながっているといえる。. 企業や保護者との連携のカテゴリーでは,保護者の協力が得られな い,続かなければ辞めてしまえばいいという姿勢が企業にあり,問題 20.

(26) があっても学校に連絡してくれない,職場が追指導に協力的でない場 合がある,卒業生が追指導を望まない場合,その対応に苦慮する等の 記述があり,企業や保護者,本人に対し,追指導の意義の理解を求め,. 信頼関係を築くことは大事なことである。無駄な追指導を行なう必要 はないが,困っているのなら是非活用するべき支援である。 離職後の相談のカテゴリーでは,連絡を受ける前に離職してしまう,. 他県への就職では職場訪問が難しく,離職後に報告を受けるケースが 多い等の記述があり,離職を考えるときに即決せず,誰かに相談して 問題の解決を試行するなど,第三者の意見に耳を傾ける工夫が必要で ある。. 人的配置のカテゴリーでは,進路担当者が一人なので生徒の情報収 集が不十分,毎年卒業生が多数いるため追指導,職場開拓など進路指 導主事一人では負担が多い等,人的に厳しい学校の現状が示された。. 情報のカテゴリーでは,県外の企業に追指導を兼ね職場開拓に行く と人事担当者との情報交換だけになり,卒業生には会えないことがあ ると記述されており,この場合,卒業生に直接会い支援する追指導の 意義は希薄になってしまう。. 就労意欲不足のカテゴリーでは,本人の就労意欲が不足し適した職 場が見つからない,悩みを聞き相談したがやる気を失い結局退職した 等,心理的な支援の必要性が考えられる。. 相談不要のカテゴリーでは,本人が学校との関わりを求めていない 場合が多いと示されたが,聾学校は,卒業生が困ったときに気軽に相 談に来れる門戸を設けることも必要となる。. 大学側の姿勢のカテゴリーでは,大学に在籍している障害学生の数 により,大学側に温度差があるとされ,大学での学習情報の保障も気 になるところである。. 個人情報のカテゴリーでは,個人情報の取扱いに困ったとの記述が 見られた。. 追指導における学校内の制度面では,予算,業務の多忙化,人事異 動,人的配置の課題は,学校や教育行政の理解を得られなければ,そ 21.

(27) の改善は難しいであろうが,卒業生の数が少なくても,卒業生の就労 における問題は,深刻なものであることを根気強く学校に働きかけて いかなければならない。学校外への取り組みでは,相談の限界,他機 関との連携,情報,離職後の相談などの課題は,学校だけで解決しよ うとするのではなく,地域にある相談支援機関と連携することにより 解決することができるかもしれない。積極的に関わっていく姿勢も今 後は必要になっていくのではないかと考える。 11.追指導の改善点. 追指導を進める上での改善点を,自由記述で答えてもらい,37校の 学校から回答が得られ,分析した結果,12のカテゴリーに分類するこ. とができた。関係機関との連携27.0%,追指導の予算を確保する 21.6%,本人と連絡を取る12.2%,校内体制を整える16。2%,担当す. る教員を増やす16.2%,教員の認識を高める8.1%,情報を収集する 8.1%,計画的に進める5.4%,継続して追指導を行う5.4%,追指導. の見極め2。7%,在学中に指導をする2.7%という結果であった(図. 関係機関との連携. ……}§i…iiiiiii織il. 予算の確保. …8. §1懸iiiiiiiiii}iiii. 校内体制の整備. ilii. 本人との連絡. 蝋藻騨襲…i…i…・≒…i…謬…i…ミ懸罎…i…li…. ・::::::::i:照i:i:i;i=. 担当教員の増員 …i…ii}i羅iiiiii…. iiiiiii繕i鑛. 層灘………………懸………3. {…i…iii}iiii磁 ・繍…ミ騨……ミ……撫…壽………騨……………1………………………3 ’ミi美i婁. 継続指導 計画的な実施. 666. :i・i・i=iiiiii聾i§iiiiiiii: i・iミ・iiiiii蕪. 教員の認識向上. 情報の収集. 10. 2. ……iii}iiii嚢iiミ…. iii難繍iiiiii. …2. 在学中の指導 追指導の見極め. 改善点なし 0. 2. 4. 6. 8. 12. 10 (学校数). 図2−10 追指導の改善点. 22.

(28) 2−10)。このことから追指導の改善点には,学校内の制度面に関する予. 算の確保,校内体制の整備,担当教員の増員,教員の認識向上,計画 的な実施,継続的な指導,在学中に指導するなど多数挙げられている ことが分かった。. 各カテゴリー別に分類し,抽出されたエピソードを以下に記述した。. 関係機関との連携を深めるカテゴリーでは,卒業生が気軽に相談で き,就労訓練等の支援が受けられる機関が,地域ごとに設立されると 良い,各機関に手話通訳者の配置が充実すると良い,職業安定所や地 域の就業支援センターとの連携の強化,県外に就職した卒業生につい てジョブコーチ支援など現地の職業センターとの連携,以前は学校が 追指導全般を担っていたが,地域に障害者就労の生活支援機関ができ てからは,この機関が卒業生の動向をリサーチして確実に問題に対応 している,関係機関との情報の共有化が必要,関係機関との追指導ネ ットワークづくり等,地域の関係機関と積極的に連携を取ることが今 後の追指導には必要である。. 追指導の予算を確保するカテゴリーでは,予算的な裏づけ・増額・ 充実・確保,就職するよりも,定着させることが難しいという意識を 学校が持ってくれると,人的配置や予算の充実ができると,校内向け の追指導の理解・啓発の問題を提起している。. 本人と連絡を取るカテゴリーでは,卒業生の相談は来校時にしてい るがメール・FAXでも連絡を取るようにしたい,追指導を強化するた めに卒業生の来校日を設定し,じっくり話を聞く,追指導の時,会社 の担当者が同席すると,仕事上の悩みがあっても話しにくいと思うの. で,個別に話ができる時間を設ける,企業と連携を取り,早期に卒業 生の動向を察知する,卒業後早い時期に,電話やアンケートで状況を. 確認する必要性を感じた,年に1度は連絡を取る等,卒業生の情報を 確実に収集する方策が挙げられていた。. 体制整備のカテゴリーでは,いつでも支援できる体制づくり,相談 に来やすい環境づくり,進路担当者が替わっても継続的・組織的にで きる方法を考えることが必要,卒業生についての資料を確実に引き継 23.

(29) ぐ,追指導をする体制ができていない等の記述があり,学校内の進路 指導部の体制づくりの課題が出されている。. 担当教員の増員のカテゴリーでは,必要があってもすぐに対応でき ない,進路担当者の増員,以前は就職支援員の加配があったので再度 お願いしたい等,担当者を増員することで追指導の充実を図ることが 示された。. 教員の認識向上のカテゴリーでは,障害のある者の追指導はとても 重要で,彼らの職場での様子を知り,困っていること,悩んでいるこ とを把握することが,進路指導に役立っことを教育者全体が認識する ことが必要,教員一人一人のキャリア教育力の向上と意識改革が必要 等,追指導は進路指導部だけではなく,聾学校の全教職員が認識する べき問題だとしている。. 情報収集のカテゴリーでは,卒業生の離職・転職の情報や余暇支援 の情報の収集等が挙げられた。. 計画的に進めるカテゴリーでは,移行支援計画『と深く結びつけてい く必要があると,特別支援の視点が示された。. 継続して追指導を行うカテゴリーでは,長期の支援が必要な卒業生 の追指導期間の延長が必要,追指導の継続化等,卒業生の実態に応じ た対応が求められた。. 追指導の見極めのカテゴリーでは,追指導が必要であるかどうかの 判断,見極めが重要だと追指導の難しさが挙げられた。 在学中に指導するカテゴリーでは,退職の理由として休日,給料,. 仕事内容に関するものが多いので,就職指導の際に確認することが大 事等,追指導で得られた卒業生の現状が,在校生の進路指導に生かさ れているといえる。. 追指導の改善点には,学校内の制度面に関する問題が多く,卒業生 の追指導を行なうためには,まずは,学校内での卒業生の就労の理解・. 啓発を推進し,予算の確保,校内体制の整備,担当教員の増員,教員 の認識向上,計画的な実施,継続的な指導,在学中に指導など基礎固 めの部分を強調する意見が多く見られた。 24.

(30) 12、関係機関との連携. 連携している関係機関があると答 えた学校は85%,連携している関係機. なし 15%. 関はないと答えた学校は15%で,8校 あった(図2−11)。多くの学校が関係 あり. 機関と連携しながら,追指導を進めて. 85%. いる状況が把握できた。関係機関と連. 携をしていない8校は,学校単独での 指導を行なっていることが分かった。. 図2−11関係機関との連携. 13.連携している関係機関. 「追指導をする場合に連携している関係機関はありますか」の問に,. 連携が考えられる7か所の機関名をあらかじめ記載し,それ以外の連 携機関がある場合のために,その他の欄を設けた。連携機関の回答は,. 数か所の機関との連携が考えられるので複数回答とした。関係機関と の具体的な連携内容は,自由記述での回答を求めた。 追指導をする際に連携を取っている関係機関は,次の通りであった。. 公共職業安定所82.6%,障害者職業センター50.0%,障害者就業・生 活支援センター34.8%,福祉事務所30.4%,手話通訳者21.7%,聴覚 障害者協会17.4%,ろうあ者相談員!3.0%,障害者雇用開発協会2.2%,. 雇用支援協会2.2%,障害者雇用支援センター2.2%,市障害者福祉課 2.2%,就職先の担当者2.2%,聴覚障害者情報センター2.2%,保健. 師2.2%,全てと連携している2.2%,連携していない15%であった (図2−12)。このことから,8割を超す学校が連携している公共職業. 安定所は,就労に関して中核的な存在であることが分かる。障害者就 業・生活支援センターの設立は比較的新しいが,3割以上の学校が連携 していると答えている。地域には,さまざまな障害者の就労を支援す る機関があることが明らかになった。. 連携している関係機関との具体的な連携内容は,自由記述での回答 であるため,いくつかのカテゴリーに分類し,連携内容を分析した。 25.

(31) 公共職業安定所. iiiiiiiii駆iiii層’iiiiiiiii鎌iiiii嚢. 障害者職業センター 障害者就業・生活支援センター. 福祉事務所 手話通訳者. …・…・……ミ1……lll…… li…i…iiiii華・. i灘iiiiiiiii講…婁38. iiiiliii}iiiiii§iiiiiii灘iiiiiilil. 黛ii妻……………1…. .、…ii華i華iii毒il…i…i…ii…iiiiilil. 1…i…ilii悪…ii 16. 運iiiiiiiiiii ……i…i…i;i蕪. 10. 翻iiiilii ……}…i…ii懸. ・1・さ・:;撒:. ろうあ者相談員. ii韮ii 6. 障害者雇用開発協会. 1. 雇用支援協会. @1. 障害者雇用支援センター. 塩ヨi1. 就職先の担当者. i…i華懸iiiii}…1灘i…i…i糠i灘…iiii. i援1. 聴覚障害者協会. 市障害者福祉課. ’軽レ:’. 1. @1. 聴覚障害者情報センター. 保健師. @1. 全てと連携. Pi 1. 連携なし. 8. 25. 35. 30. 40. (学校数). 図2−12連携している関係機関. (1)公共職業安定所. 連携先に公共職業安定 所を挙げた学校は38校あ. 定着指導 求人 情報交換. カテゴリーに分類するこ. 話し合い. 10 P0. 相談. った』連携内容は,9つの. iiiii椰聯’. …1::…i4. ・1;::::…2. 窓ロ. とができ,求人26.3%,. 必要があれば. 定着指導26.3%,相談. トライアル雇用. 18.4%,情報交換10.5%,. ・i…i……薫・i…i…i. c:き…ll=. P. 啓発 0. 話し合い5.3%,窓口. 5. 10. 15. (学校数). 5.3%,啓発2.6%,トラ. 図2−13連携内容(職業安定所). イアル雇用2.6%,必要が. あれば連携する2.6%での順であった(図2−13)。公共職業安定所との. 連携では,就労前後の求人情報や定着のための支援の連携が多いとい 26.

(32) える。. 連携内容は各カテゴリー別に分類し,抽出されたエピソードを以下 に記述した。. 求人のカテゴリーでは,求人情報,再就職の斡旋,就業体験受入企 業の斡旋,障害者就労状況等の記述があり,職業安定所には,就労に 関する情報が集積されていることが分かる。. 定着指導のカテゴリーでは,定期的な職場訪問,定着指導員との連 携・支援,巡回指導時に職業安定所の定着指導を兼ねて同行してもら った,管轄の職業安定所の専門援助部門担当官と同行する,学校とは 別に職場訪問を行い,卒業生の様子を知らせていただける等,職業安 定所は,学校の行なう追指導と同様の事業を持ち,就労支援を行なっ ていることが示された。. 相談のカテゴリーでは,仕事内容や人間関係で悩んでいる場合,連 携を取り相談にのったり,企業との話し合いを持ったりする,就労の 具体的な指導や相談,職場でのトラブルの相談等,追指導では幅広い 相談活動を行なっている。. 情報交換のカテゴリーでは,お互いの情報の提供,会社の様子や状 況を聞く,労働局主催の各連携機関との連絡会があり,その都度,情 報交換を行っている等,情報の共有化が図られている。 公共職業安定所は,職業・就労に関する専門機関であり,就労問題の. 多くの事例や雇用に関する情報を保有し,学校の追指導では連携の要 になる機関となる。また,聴覚障害者の就労支援の対応のための手話 協力員が設置されている職業安定所もあり,連携をさらに強化するべ き機関である。. (2)障害者職業センター. 連携先で障害者職業センターを挙げた学校は23校あった。連携内容 は,9つのカテゴリーに分類することができ,ジョブコーチ43.5%, 相談21.7%,職業評価13.0%,情報8.7%,定着指導4.3%,トライ アル雇用4.3%,必要があれば4.3%の順であった(図2−14)。このこ 27.

(33) とから,聾学校の卒業生も. 用していることが読み取. 相談 職業評価. れる。. 情報 定着. ジョブコーチのカテゴ リーでは,ジョブコーチの. トライアル雇用. 依頼・派遣,ジョブコーチ. 必要があれば. ”iii. ……隷…………ミ5. ・…ξ・::iiiiiiii美iiiiii襲. iiii灘iiii 1. Aiiiiii 1. 024681012 (学校数). 制度の活用等があり,ジョ. ブコーチの制度の利用が. 10. ジョブコーチ. ジョブコーチの制度を利. 図2−14連携内容(障害者職業センター). 進んでいるといえる。. 相談のカテゴリーでは,就職・再就職の相談,離職・転職の相談等,. 障害者の労働問題に特化した情報を有している。. 職業評価のカテゴリーでは,職業ガイダンスや職業評価等,就職前 の指導で,大きな役目を担っていることが示された。. 情報のカテゴリーでは,障害者雇用全般の情報が蓄積されていると いえる。. 定着指導では,職業評価による再就職後の定着支援等,離職した卒 業生への支援につながっていることが示された。. トライアル雇用のカテゴリーでは,トライアル雇用の対象となった 卒業生の追指導の記述があり,制度の積極的な活用も今後必要になる ことが分かる。. 障害者職業センターは,あらゆる障害者を対象に,職業に関する業 務を執り行っている機関であり,ジョブコーチやトライアル雇用など の事業を有し,障害者の職業自立を支援していることが分かった。聴 覚障害者の積極的な活用が望まれる。 (3)障害者就業・生活支援センター. 連携先で障害者就業・生活支援センターを挙げた学校は16校あった。 連携内容は,10のカテゴリーに分類することができ,生活支援、25%, ジョブコーチ18.8%,情報12.5%,支援依頼6.3%,必要があれば6.3%, 28.

(34) 相談6.3%,就 労支援6.3%,. 定着指導6.3%,. 求人6.3%,連 携はまだしてい ない6.3%の順 であった (図 2−15)。生活支援. 生活支援. ・…………li…i繍i…i…i…i…ill……蕪i…ililili…i. ジョブコーチ. ……li 4. 3. 懸iiii……i. 情報. 2. ……i……≒liミ…騰’呂融. 支援依頼・地域移行. 必要があれば. 相談 就労支援 定着指導 求人. 蓬iiiiiii藝糞iiiii譲iiiii購. i§iii巽iiiiiii藁iiiiiiiiiii}糞iiliiiii圭. 連携はまだしていない. やジョブコーチ. iiiiiii藁iiii懸iiiiiii慰iiiiiii. 0. 1. 2. 3. 4. 5. (学校数). の利用は多いが,. 他の支援内容に. 憩i…i…≒i…i…i…i…i. 図2−15連携内容(障害者就業・生活支援センター). 多岐にわたっていることが分か’る。 実数は少なく,. 生活支援のカテゴリーでは,生活上の諸問題についての連携,生活 支援の対応,生活支援全般にわたり,ネットワークを活かし連絡を取 っている,生活面でのサポート等を受けることができることは,この 機関の魅力の一つであろう。ジョブコーチのカテゴリーでは,見学や 講話,利用方法,卒業後に離職した者の支援,ジョブコーチ支援に向 けた連携が挙げられ,学校とのつながりが徐々に構築されているとい. える。連携はまだしていないのカテゴリーでは,県内に2か所あるが 具体的なケースはまだないとの記述があり,障害者就業・生活支援セン ターの取り組みは地域的に差があることが分かった。 障害者就業・生活支援センターとは,連携をしている聾学校はまだ少. ないが,今後障害者の就労に関して,多くの事業が展開される可能性 があり,障害者を取り巻く就労関係の中心的な位置を占める機関にな るのではないかと考えられる。 (4)福祉事務所. 連携先で福祉事務所を挙げた学校は14校あった。連携内容は,6つ のカテゴリーに分類することができ,施設入所,情報交換,相談,ケ ース会議,福祉の手続き,必要があればの順であった(図2−16)。一 29.

(35) 般就労の難しい卒業生の進路 4. 施設入所. 先として施設があげられるが,. 相談. 福祉事務所は施設入所等の窓. 情報交換. 口になっていることがいえる。. ケース会議. 施設入所のカテゴリーでは,. 福祉の手続き. 卒業生の福祉就労や施設入所. 必要があれば. に関する連携,施設の空き状. 0. 1. 2. 3. 4. 5. (学校数). 況の情報等,福祉施設の情報. 図2−16連携内容(福祉事務所). を把握していることが分かる。. 情報交換のカテゴリーでは,職員と同行して,追指導し,情報交換を 行う,福祉就労者・家庭生活等の情報提供,地域の手話サークルの情 報提供等幅広い情報を持っていることが分かる。相談のカテゴリーで は,生活自立支援の相談,生活面・金銭面の指導等,生活支援の内容 である。ケース会議のカテゴリーでは,ろうあ者相談員・手話通訳者 への相談,ケース会議等,福祉の観点での連携ができている。. 福祉事務所は,障害者の生活問題を主に扱う機関であるが,聾学校 の卒業生の場合,就労支援の際に生活に関するトラブルを抱えるもの も少なくないことを考えると,情報の共有化は不可欠である。 (5)手話通訳者. 連携先に手話通訳者を挙げた学校は10校あった。連携内容は,3つ のカテゴリーに分類することができ,相談,情報,連携の順であった (図2−17)げ. 卒業生支援に関する情報交換,. 面談等での連携,情報提供,企. 相談. 業・医療とのパイプ役,卒業生. 情報. への具体的支援の相談や情報収. 連携. 集等,手話通訳者も,卒業生へ. 0. 2. 2. 4. 6. (学校数). の就労支援に関しては連携先に. 図2刊7連携内容(手話通訳者). なりうるといえる。 30.

(36) (6)聴覚障害者(ろうあ)協会 情報 i. 連携先に聴覚障害者協会を. 挙げた学校は8校あった。連 携内容は,4っのカテゴリー. 定着指導員. 9 i華1. @ 相談 iiii. @ 講話 iii. に分類することができ,定着. 0. 指導員,情報,相談,講話の 順であった(図2−18)。. 懸5. iii。…liil. @. 2. 4. 6. (学校数). @図2−18 A携内容(聴覚障害者協会). 地域での活動の情報提供,就労状況の情報交換,事業とのパイプ役,. 卒業生の情報収集,支援ネットワークづくり,生徒への講話等が挙げ られ,聴覚障害者の生活から就労に至る,さまざまな情報を蓄積して いる機関であることが分かる。 (7)ろうあ者相談員. 連携先にろうあ者相談員を挙げた学校は6校あった。ケース会議の 実施,卒業生の情報提供など,ろうあ者相談員は,聴覚障害者に関す る相談事例を多数,蓄積しているといえる。 (8)その他. その他の連携先として,いくつかの機関が挙げられた。保健師では,. 聾で精神的な卒業生の支援をお願いする,聴覚障害者情報提供センタ ーでは,再就職に関する相談,就職先の担当者では,支援・指導が必 要な状態になったとき連絡をしてもらう,雇用支援協会では,卒業生 の職場訪問をし,激励していただく,障害者福祉課は,福祉就労の手. 続き,障害者雇用開発協会では,生活面・勤務面の指導・相談等,生 徒の実態に合わせ,地域にあるさまざまな機関との連携の状況が挙げ られた。. 地域の中には,聴覚障害者を取り巻くさまざまな機関が存在してい る。それぞれの機関の特性を活用しながら,連携することで,円滑な 就労支援につながることが考えられる。. 31.

(37) 14.関係機関との連携の問題点. 「追指導を行う場合,関係機関との連携で問題になることは何です か」の問について,自由記述での回答を求めた。回答数は37あり,そ れらの回答を分析した結果,15のカテゴリーに分類することができた。. 異動,多忙,支援の程度,連携不足,個人情報,実態の理解,指導に 出にくい,企業の理解が得られない,情報の共有,保護者の協力不足,. 協力を得られない,予算がない,日程調整の順であった。関係機関と の連携に問題はないと答えたのは10校,27。0%であった。連携をして. いないと答えたのは2校あった(図2−19)。関係機関との連携の問題 点には,さまざまな要因が考えられることが分かった。 異動 多忙. iii薫iiiliiiiiii藁毒iiiiiii}il. 支援の程度. 織. i…iiiiiiiiiii懸iiii}ii. 8. 灘iiiiiiiiiiiiil;黙i§華iiii事i. 、ミ、1、…ミ…………………巽………1……………i…il…i…i 2. 連携不足. iiii 2. 個人情報. …,…、きiiii 2. 実態の理解. {iiiiii層1. 指導に出にくい 企業の理解が得られない. 情報の共有. 遠?ci…灘i1. 保護者の協力不足 協力を得られない. 予算がない. 東d蕪i1. 日程調整 問題なし. 10 2. 連携していない 0. 4. 2. 6. 8. 10. 12. (学校数). 図2−19 関係機関との連携での問題点. 異動のカテゴリーでは,連携機関の担当者が代わることで追指導が 困難になる,関係機関での人事異動が多く,引き継ぎが不十分な場合 がある,関係機関の担当者の異動で人間関係が希薄になり,対応が表 面的になりやすい,担当者同士の人間関係の形成や細かなノウハウの. 蓄積が難しい,関係機関の担当者が2∼3年で異動するため,聴覚障 32.

(38) 害者や学校への理解が振り出しに戻り,継続した連携がしにくい,窓 口の担当者が代わり,引き継ぎが十分置されていない等,担当者同士 の意思疎通の取れた連携の必要性を感じていることが分かった。. 多忙のカテゴリーでは,学校・各機関共に多忙で丁寧な追指導がで きない,お互いが多忙で出向けず,電話連絡が中心になる等,連絡を 取ることすら難しい状況が示された。. 個人情報のカテゴリーでは,個人情報の取り扱い,管理の問題が挙 げられたが,卒業生の情報の共有化の妨げになる恐れもある。. その他,学校管轄外の職業安定所との連携が取りにくい,各機関そ れぞれの考えで指導しがちで足並みを合わせた指導が困難,企業に対. して学校がどの程度関わればよいか不安である,在校生の指導も複 雑・多岐にわたってきており,いつまで連携が求められるのか,予算 措置がなく,学校側に依頼があった場合は自分達が出向くことはでき るが,学校から依頼して出向いてもらうことが難しい,保護者が追指 導に協力的でなかったり,子どもの支援に無関心で指導がうまく機能 しないときがある,情報の共有が十分にできていない,法定雇用率に 達していない事業所では,職業安定所の職員と同行するのを嫌がる担 当者がいる,在学生以外の指導では校外に出にくい等,さまざまな課 題が残されている。. 関係機関との連携の問題点は,就労支援の必要性の理解・啓発を推 進することによって得られる,協力体制を作り上げることが大切では ないだろうか。確実な引継ぎができてい. ないことが人事異動に関する問題点だ. 在籍な. し. と示されている。. なし. 4. 11%. 15.ろう重複障害者への追指導. ろう重複障害者への追指導を実施し. あり 85%. ているのは84.9%,実施していないのは 11.3%であった。ろう重複障害者が在籍 していない学校は2校あった(図2−20)。 33. 図2−20ろう重複障害者への. 追指導の実施状況.

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