平成31年 2月
藤谷裕介 学位論文審査要旨
主 査 尾 﨑 米 厚 副主査 本 間 正 人 同 黒 沢 洋 一
主論文
Impact of maximum air temperature on ambulance transports owing to heat stroke during spring and summer in Tottori Prefecture, Japan: a time-stratified case-crossover analysis
(日本の鳥取県における春季および夏季の熱中症による救急車輸送に対する最高気温の 影響:時間層別ケースクロスオーバー解析)
(著者:藤谷裕介、大谷眞二、Abir Majbauddin、天野宏紀、増本年男、黒沢洋一)
平成31年 Yonago Acta Medica 掲載予定
参考論文
1. Prediction of health effects of cross-border atmospheric pollutants using an aerosol forecast model
(エアロゾル予測モデルを用いた越境大気汚染物質の健康への影響予測)
(著者:大西一成、関山トーマス剛、野島正寛、黒崎泰典、藤谷裕介、大谷眞二、
眞木貴史、篠田雅人、黒沢洋一、山縣然太朗)
平成30年 Environment International 117巻 48頁~56頁
学 位 論 文 要 旨
Impact of maximum air temperature on ambulance transports owing to heat stroke during spring and summer in Tottori Prefecture, Japan: a time-stratified case-crossover analysis
(日本の鳥取県における春季および夏季の熱中症による救急車輸送に対する最高気温の 影響:時間層別ケースクロスオーバー解析)
温暖化が進行している日本では、熱中症による救急搬送と夏季の高温との関係について 研究が行われてきた。 しかし、春の熱中症に着目した報告はほとんどない。気象の過去の 観測データによると近年、春の気温も上昇傾向にある。 そこで、夏季だけでなく春季にも 熱中症を引き起こす最高気温の影響を調べ、効果的な熱中症予防対策を検討した。
方 法
鳥取県の2017年4月から2017年9月までの熱中症による救急搬送データを入手した。気象 データ(最高気温、平均湿度、日照時間、降水量、平均風速)を気象庁から取得した。気 象要因による熱中症による救急搬送リスクを評価するため、時間層別ケースクロスオーバ ー解析を使用した。
結 果
鳥取県では2017年4月から2017年9月の間に382例の熱中症による救急搬送があった。 症 例数は7月が最多で、次いで8月、5月と続いた。気温は平年に比べ高く、最も高い最高気温 は37.8 ℃だった。気象データ(最高気温、平均湿度、日照時間、降水量、平均風速)と熱 中症による救急搬送について解析した結果、最高気温が最も相関が高かった。最高気温が 1 ℃上昇すると、熱中症リスクは1.13倍に増加した。 夏季には、30 ℃未満の日に比べる と、熱中症搬送リスクは、30 ℃で2.55倍、31 ℃で2.79倍と1 ℃刻みで増加を続けた。猛 暑日(最高気温35 ℃以上)のリスクは5.55倍となり、さらに、37 ℃以上でリスクは17.26 倍まで上昇した。 また、4月から5月の春季には、真夏日(30 ℃以上、35 ℃未満)のリス クは他の日(30 ℃未満)のリスクの約4倍だった。
考 察
最高気温は熱中症による救急搬送と有意に関連していた。これは先行研究の結果と類似 している。現在、気象庁は最高気温が35 ℃を超えると予想された場合「高温注意情報」を 発表する。本研究では、熱中症搬送リスクは猛暑日(35 ℃以上)で5.55倍に増加した。猛 暑日日数は1990年代半ば頃から大幅に増加している。本研究で37 ℃以上の高温でリスクは さらに高くなることがわかった。近い将来、平均気温(37 ℃)を超える場合は、より深刻 な警告情報を提供する必要がある。
また、本研究では、4月から5月の春季に、真夏日(最高気温30 ℃以上)の熱中症リスク が他の日より約4倍大きいこともわかった。この調査結果は、熱中症リスクの増加が4~5 月の早い時期に始まることを示している。最近では、春の年間真夏日日数が増加する傾向 がある。夏の猛暑日だけでなく、春の真夏日にも熱中症予防に特に注意する必要がある。
結 論
著者らは2017年4月から2017年9月にかけての鳥取県における熱中症による救急搬送に対 する最高気温の影響について時間層別ケースクロスオーバー解析を用いて調べた。最高気 温が熱中症による救急搬送と有意に関連していることを見出した。熱中症による救急搬送 のリスクは、4月から9月の他の日と比較して、非常に暑い日に5.55倍に増加した。また、4 月から5月の春季には、真夏日の熱中症による救急搬送リスクは他の日(最高気温30 ℃未 満)のリスクに比較して約4倍だった。夏の猛暑日だけでなく、春の真夏日にも熱中症を予 防するために熱中症予防の特別な注意が必要である。