主要な研究成果
背 景
従来の岩盤の力学試験方法は、強度と変形を別々の試験により評価しなければならず、また試験面の整形に
よる乱れの影響を受けやすいなどの課題があった。これらの課題を解決することができる新しい試験法「原位
置岩盤三軸試験法」をこれまでに開発し、均質な軟岩を対象とした原位置での検証試験によって、この試験法
の適用性を確認した。しかしながら、原位置での実証は唯一この均質な軟岩のみであった。本試験法を実用化
するためには、変位計測システムの精度と信頼性の向上、ならびに大型の試験体を必要とする不均質な岩盤や
不連続性岩盤への適用性の確認が残されていた(図 1)。
目 的
原位置岩盤三軸試験の計測システムの改良を行い、不均質な岩盤である礫岩を対象として試験法の適用性の
検証を行う。
主な成果
1.計測システムの改良
原位置岩盤三軸試験における変位計測システムの改良を行った結果、以下のことが可能となった。
(1)計測システムの改良により計測精度を向上させるとともに、中空円筒試験体の中央の小孔と外周溝の
両方で軸ひずみと周ひずみを計測することが可能となった。これにより、計測システムの信頼性が大
幅に向上した(図 2)。
(2)計測システムの改良により三軸圧縮試験だけでなく、三軸引張試験および繰返し三軸試験が可能と
なった。これにより、原位置で低応力のせん断強度や引張強度、地震時の動的な強度変形特性を評価
することができるようになった(図 3、4)。
2.不均質岩盤への適用性の検証
改良した試験装置を用いて不均質岩盤である礫岩を対象に原位置岩盤三軸試験を実施した結果、以下の結
果が得られた。
(1)原位置岩盤三軸試験で得られた軸ひずみと周ひずみは、中央の小孔と外周溝の両方でほぼ一致し、信
頼性の高い応力−ひずみ関係を得ることができた(図 5)。
(2)原位置岩盤三軸試験と同地点で実施した従来通りの岩盤せん断試験および同地点でサンプリングした
コアを用いた室内三軸試験との結果を比較したところ、概ね整合する結果が得られた(図 6)。
以上より、原位置岩盤三軸試験法は不均質な岩盤にも適用可能であり、従来から行われてきた岩盤試験法
に代わる実用的で有効な岩盤調査法であることが明らかとなった。
なお、本研究は電力 9 社、日本原子力発電 1、電源開発 1 による電力共通研究の一部として実施した。
今後の展開
本試験法の一層の実用化に向けて、より効率的な試験体作製方法を開発し、不連続性岩盤を対象とした適用
性の検証を行う予定である。
主担当者 地球工学研究所 バックエンド研究センター 主任研究員 岡田 哲実
関連報告書 「原位置岩盤三軸試験法の開発(その 2)」電力中央研究所報告: N05049(2006 年 5 月)
110
不均質岩盤にも有効な原位置岩盤三軸試験法の開発
9.電力施設建設・保全/自然災害対策
111
1
'-3
ε
ε
ε
θ
-1 .0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5
0
1
2
3
4
5
6
q
(
M
P
a)
a、 (%)
軸ひずみ
外セル:差動トランス
内セル:磁力センサーー
周ひずみ
外セル: 非接触型変位計
内セル: 磁力センサーー
0
1
2
3
4
5
6
7
-2 0 2 4 6 8 10
室内三軸圧縮(CU-)
室内三軸圧縮(CD)
室内三軸引張(CU-)
室内三軸引張(CD)
原位置三軸圧縮
原位置三軸引張
(σ
1
'-σ
3
')
/2
(
M
P
a)
(σ
1'+σ3') /2 (MPa)
1E-40 1E-3 0.01 0.1 1
2000
4000
6000
8000
10000
12000
14000
0
5
10
15
20
25
30
35
履歴
減衰率
h
(%
)
等価
ヤ
ン
グ率
Eeq
(
M
P
a)
片振幅軸ひずみ ( a)SA (%)
E
eq
5波目
10波目
h( %)
5波目
10波目
磁石
ゴム膜
磁力センサー
スキ
スキャンャン
差動トランス
式変位計
ロッド
ターゲット
(鉄板)
非接触型
変位計
差動トランス
式変位計
スキ
スキャンャン
試
験
体
560mm
磁力センサー 非接触型
変位計
ステンレスバンド
外セル
内セル
外セル 外セル
スキ
スキャンャン
試
験
体
内セル
①底面を平滑に仕上げる(モルタルを打設し平滑にすることも可能)。
②中央の小孔を掘削する。採取したコアを観察する。
③外周溝(スリット)を掘削する。この状態で試験体の成形が終了する。
④内セル、外セル、および載荷システムを設置する。<試験を実施>
⑤試験終了後に試験体を回収、その破壊状況を観察する。
図1 原位置岩盤三軸試験法の手順
図2 変位計測システムの概念
中空円筒状の試験体の中央小孔(内セル)と外
周溝(外セル)の両方でひずみを測定できる。
岩盤の応力とひずみの関係を2種類の方法(内
セルと外セル)で計測することが可能となり、
信頼性が向上した。
原位置三軸試験から得られる強度(縦軸)は拘
束圧(横軸)によらず室内三軸試験の結果と整
合した。
これまで原位置で取得することが困難であった
動的変形特性の取得に成功した。
図3 岩盤の動的変形特性
図4 試験後回収した試験体
(左:三軸圧縮試験後、右:三軸引張試験後)
図5 応力とひずみの関係
図6 原位置試験と室内試験の比較