カヴァの制度改革
2022 年になる前に、カヴァは地理的に特定されたゾーンとサブゾーン、そして新たなカテゴリーに区分けさ れることになります。そしてこの度、我々はフェランのテイスティング・ノートに、いくつかのお気に入りのカヴァを 掲載します。 2020 年 1 月、私はコルピナットに属するワイナリーが DO カヴァから脱退することに焦点を当てた記事を 寄稿しました。コルピナットはそれぞれのアペラシオンが持つ高品質なイメージが欠落することを恐れていた、 というのがその概要です。特に、地域性が欠如しているということを彼らは残念に思っています。というのも、 カヴァはスペイン国内の非常に広範な地域で作られているにも関わらず、地理的呼称のラベル表記が認 められていなかったのです。 リオハ、エストレマドゥーラ、カタルーニャ、バスク、バレンシア、サラゴサといったスペイン国内各地の生産者が すべて、スペインの伝統的製法をしているということであれば、汎用的にボトルに「カヴァ」と冠することができ るのがこれまでの慣例です。 しかし、この状況からかなり改善されました。カヴァの世界に変革を起こす新たな風が吹き込まれています。 カヴァ原産地呼称委員会の新代表、ハビエル・パジェス氏の下、新たな熱意と明確な視野を持って、2 年に渡る歳月をかけ変革が推し進められました。 パジェス氏はその友好的かつ穏やかなキャラクターで、柔らかな口調で語ってはいるものの、彼の確固たる 決意は多大な変更を必要とするものでした。彼は本当にこの地を揺り動かしたのです。 (念のため、カヴァの 60%は輸出されており、38,000 ha/93,900 エーカーの葡萄畑と 370 以上の 生産者がいることを付け加えておきます。) 驚くことではないが、他の大多数のヨーロッパのワイン生産地と同様、カヴァ生産のピラミッドの下部は、 2019 年に生産された 2 億5千万本のうち、86%がスタンダードなカヴァ(最低 9 か月の瓶内熟成だ けが条件)として構成されている。これは、この地の反対勢力すべてをも巻き込んだ、カヴァにおけるもっと も挑戦的な区分けであるといえそうである。問題は特に、果実を 1kg あたりちょうど 0.3€で販売できると みていた栽培農家にとって深刻であり、葡萄栽培はほとんど利益を生まなくなってしまうことである。 一方、ピラミッドの上部は、レセルヴァ(最低瓶熟 15 か月以上)とグラン・レセルヴァ(最低瓶熟 30 か 月以上)に分類され、最上部はカヴァ・デ・パラヘ(単一畑の葡萄かつ最低瓶内熟成 36 か月以上) と呼ばれる。しかし最近の生産者の脱退やコルピナットの形成により、この最上部に位置するに相応しい DO 該当地域はかなり減少してしまった。パジェス氏はこのように述べている。「今日、カヴァ・デ・パラヘに 留まっているのは極わずかである。そして我々は規制機関として、もっと多くのトップ生産者にいてもらいたいと思っている。そして、要望するだけでなく、現実として戻ってきてもらわなければならない。」 加えて、カヴァにおける別のニュースとして、2 つの新しい名称の履行がある。1つは、瓶内熟成期間最低 9 か月以上の最も若いカヴァは、広域カヴァに対する新名称として、「カヴァ・デ・グアルダ」と名付けられ、も う一つは瓶内熟成期間最低 18 か月以上の、「カヴァ・デ・グアルダ・スペリオール」と名付けられました。こ れら 2 つの新たなカテゴリーのポイントは、カヴァの製造過程はプロセッコよりもはるかに複雑であり、高価で あることを強調しているところにあります。(広域プロセッコは瓶内でなくタンク内熟成で、最低熟成期間は 1 か月以上である)
いくつかの比較
スペイン産スパークリングワインは、現在主にカヴァ、クラシック・ペネデス、コルピナットの3つに分類される。 これら3つの共通の特徴は、製造過程において伝統製法のみを採択しているところである。また、既に述 べたように、瓶内熟成期間はそれぞれの呼称によって定められている。例えば、クラシック・ペネデスは最低 15 か月以上と規定され、コルピナットは最低 18 か月以上と規定されている。 葡萄の樹齢に関して言えば、カヴァ・レセルヴァとグラン・レセルヴァは最低 10 年以上の樹齢が必要とされ るが、その他のスパークリングワインに関しては、樹齢は必要条件とはされていない。 葡萄品種は、白はマカベオ、チャレッロ、パレリャーダ、シュビラン・パレン、シャルドネであり、赤はピノ・ノワー ル、トレパット、ガルナッチャである。コルピナットは国際品種のブレンド比率の上限を 10%までとしている一 方、クラシック・ペネデスではモスカテル、ソーヴィニヨン・ブラン、リースリング、シュナン、ヴィオニエ、フォルカー ダ、ウル・デ・リブレ、カベルネ、メルロ、プティ・ヴェルドなどの品種で作ることを許可している。(ただし、これ らの品種を使用したものを市場で目にすることはほとんど無い) クラシック・ペネデスとコルピナットは、買い葡萄に関し非常に制限的である。クラシック・ペネデスでは 51% 以上が自社畑の葡萄でなければならず、コルピナットにおいては 75%以上がそうでなければならない。カ ヴァにはこのような制限は無い。 カヴァ(カヴァ・デ・パラヘを除く)とクラシック・ペネデスの規定では、既に瓶熟されているスパークリングワイ ンを他の生産者から購入し、ラベルを変えることを認めている。一方、コルピナットではこれは明確に禁じら れている。変化の風
カヴァが企てている変化の風は、ウェブサイトに明示されている。https://www.cava.wine/en/そこには規定に関する最新情報が、シンプルかつ分かりやすく、しかし余すところなく掲載されている。 このウェブサイトにより、カヴァに興味を持つ人々に対し、職人的な面や伝統的な面を知ってもらうことが望 まれる。 しかし包括的な疑問が残ったままである。葡萄の原産地を示す手がかりが無いのではないか?この疑問 にはきちんと答えがある。 著名なワイン専門家集団によって会合が催され、そこで定められた規定が承認されることになった。シャン パーニュ専門家のリチャード・ジャフリンとトム・スティーブンソン、またマスター・オブ・ワインのペドロ・バレステロ ス、サラ・ジェーン・エヴァンス、フェルナンド・モーラとともに、私もこのチームに参加したのだ。我々はまず規 定を総括し、そして全ての変更点について意見交換をした。その意見をもとに、評議会は最終的な決定 をした。 以下に示すのは、最新のカヴァの区分と地域、また各地の主要生産者である。(しかし一般消費者は 2022 年に市場にリリースされるまで知ることはない)カヴァは、ゾーン、サブゾーン、カヴァ・デ・パラヘの三 層に地域分けされる。もしサブゾーンの名前が使われていたら、そのカヴァは最低瓶熟 18 か月以上で、 葡萄は有機農法でなければならない。
ゾーン:コンタ・デ・バルセロナ
このエリアはカヴァ生産の 95%以上を占め、主にカタルーニャの葡萄畑で構成される。カヴァの心臓ともい える地域であり、サン・サドゥルニ・ダノイアの街は 1872 年以来カヴァの中心部とみなされている。 ゾーンはさらに、以下の5つのサブゾーンに区分される。 サブゾーン:ヴァル・ダノイア・フォワ 沿岸部の山岳部マシ・デル・ガラフと前沿岸部2つの山間の広い谷からなるで、バルセロナとタラゴナの間 に位置する。 地中海の影響と北風を遮断するモンセラット山により、この地域の気候は冬場でも温暖で、夏も乾燥し すぎない。 このような自然環境の中、葡萄は標高 750m の土地まで生育する。沿岸部ではチャレッロが主流で、山 間部ではマカベオが主流である。 このゾーンの中心部であり、コドーニュ、フレシネ、ジュヴェ・カンプス、メストレスといった歴史ある生産者を 含む大半がここに位置する。 サブゾーン:セッラ・デ・マール 地中海に近く、バルセロナ北部 15km に位置し、手付かずの自然が広がる光景を見渡せる山の中腹においては、DO アレーリャの名義でスティルワインがつくられている。 このサブゾーンにおいてはチャレッロが主流で、パンサ・ブランカという名で知られている。最も代表的な生産 者は、アルタ・アレーリャである。 サブゾーン:コンカ・デル・ガイア このサブゾーンはヴィラフランカ・デル・ペネデスの南部に位置し、タラゴナとアールト・カーンプを横断する。典 型的な地中海性気候で、冬も温暖、夏の暑さは海風によって和らげられる。 海に面しており、沿岸の山岳地域が最高点となる程度の平地である。あまりたくさんの生産者はいないが、 ヴィニコラ・デ・ニュイエスやヴィヴェス・アンブロスといったところが代表例。 サブゾーン:セッラ・デ・プラード タラゴナ州北部とリェイダの境目に位置し、スパークリングワインと同時に DO コンカ・デ・バルベーラ名義でス ティルワインも作られている。このサブゾーンは山間に囲まれたたらい状の形で、海抜 350~600m に位 置し、内陸部の大陸からくる風と地中海からの影響を併せ持った気候が特徴。とりわけ土着品種トレパッ トに適しており、カルレス・アンドルーが偉大な生産者として挙げられる。 サブゾーン:プラ・デ・ポネント リェイダ地方の最も内側に位置するサブゾーンで、海抜 200~400m に位置する起伏の穏やかな地域。 スティルワインのコステルス・デル・セグレのゾーンでもある。気候は海からの影響は無く、乾燥し昼夜の寒暖 差が大きい大陸性。ライマットがこの地で最も有名な生産者。
ゾーン:ヴァレ・デル・エブロ
ヴァレ・デル・エブロの葡萄畑は DO カヴァの最北部に位置し、エブロ川に隣接した区域である。気候は温 暖な大陸性。アルト・エブロとヴァッレ・デル・シエルソの二つのサブゾーンに分割される。 サブゾーン:アルト・エブロ エブロの窪地の西側に位置し、ナヴァーラ、リオハ、パイス・ヴァスコ(バスク地方)を含む広範な地域。標 高は最高で海抜 600m。気候は大西洋と地中海の影響が合わさっている。 この地では大半の生産者は赤ワインを作ることに重きを置き、名声を得ている。しかし、ムガ、リオハ・アル ヴェサのファウスティーノ、ナヴァーラのオンダーレなどがカヴァも作っている。 サブゾーン:ヴァッレ・デル・シエルソ エブロ川流域の中心地サラゴサにほど近く、スペイン半島の内部に位置し、大陸性気候である。シエルソと 呼ばれる特徴的な強風により、ドライな印象のある気候となっている。ヴァッレ・デル・シエルソの一部は DO カリニェナと重なる。コーペラティヴが支配している地域で、サン・ヴァレーロのカヴァと最も関わりが深い。ゾーン:アルト・デ・レヴァンテ(仮称)
このゾーンはバレンシア州内部、レケーナで構成されている。地中海とカスティーリャの海抜 600~900m の高原に位置し、気候は乾燥している。国内でも国際的にも名声のあるワイナリーとして、ボデガ・イスパ ノ・スイザがある。ゾーン:ヴィニェス・デ・アルメンドラレホ
DO カヴァの南西部、アルメンドラレホ村はエストレマドゥーラとポルトガルの国境沿いに位置する。この地は 概ね平坦で、海抜 200~450m。乾燥した気候で、冬でも温暖だが夏は暑い。ボデガ・ロマーレが最も 有名な生産者である。原著:”Cava becomes geographically specific” by Jancis Robinson
https://www.jancisrobinson.com/articles/cava-becomes-geographically-specific 翻訳:秋元賢介