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小児の midline spikes の臨床脳波学的検討 : 終夜脳波,脳波基礎活動の分析

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原  著 〔東女医大誌 第63巻 第10号頁1193∼1201平成5年10月置

小児のmidline spikesの臨床脳波学的検討

一終夜脳波,脳波基礎活動の分析一

東京女子医科大学 小児科学教室(主任:福山幸夫教授) 東京女子医科大学第二病院 小児科(部長:村田光範教授)        ウエ      ダ       サトル        上   田    哲 (受付 平成5年6.月25日) Clinical and Electroencephalographic Study of Mid駈ne Spikes in Cllildren: Analysis of All Night EEG Recordings and EEG Background Activities       Satoru UEDA   Department of Pediatrics(Director:Prof. Yukio FUKUYAMA), Tokyo Women’s Medical College Department of Pediatrics(Chief:Prof. Mitsunori MURATA), Tokyo Women’s Medical College Daini Hospital   Midline spikes(MSs)are uncommon EEG findings. Between 1986 and 1991,MSs were found in 59 EEGs recorded in our laboratory. Our clinical study led us to the conclusion that there must be a group of patients wlth idiopathic partlal epllepsy who exhibit MSs、 In this paper we studied the all・night E耳Grecordings and EEG background activity of children with MSs to clarify the neurophysiologicaI nature of their MSs.   1)In the sleep study we analyzed spikes/20 sec ratio in relation to different sleep stages. There were 6 subjects,4children with epilepsy,1child with febrile convulsions and l child with mental retardation. In all of the patients, MSs showed a significant increase in frequency throughout all stages of sleep.   2)Computer analysis of EEG background activity by Fourier transformation was performed in about 18 patients with idiopathic epilepsy and 4 with febrile convulsions. In 1/20f cases, there was a considerable increase in delta power, but alphal and alpha2 power were relatively well developed compared with previous reports.   Based on an analys三s of the clinical study, the all−night EEG recordings and EEG background activity, we concluded that there exists a benign partial epilepsy of children with MSs which or量ginates in the mesial cortex.          緒  言  Midline spikes(MS)は小児より成人まで認め られる脳波異常であるが,その臨床脳波学的な意 味あるいはその起源に関してはいまだに不明な点 が多い.欧米の報告1》2)によるとMSはその他の focal spikeに比べ痙攣の合併率が高く何等かの 神経学的異常や頭部CTの異常を認める症例が多 く,必ずしも良性の経過をたどらないとされてい る.我々は過去MSを認めた小児に対する臨床的 検討を行った3)が,MSを伴い良性の経過をとる小 児特発性てんかんが22例認められ,MSを認めた 症例全体の51%を占めた(表1).その結果特発性 てんかんにおけるMSはmesial cortex起源で, RD同様機能的,素因的であり,一過性に出現する 性格があると考えられた.今回我々はそのような MSの神経生理学的な特徴をさらに明確にさせる ため,MSを認めた小児に対して終夜脳波による 発作波の出現様式と脳波基礎活動の周波数分析を

(2)

表1 MSを認めた43症例の基礎疾患 特発性てんかん   初発時神経学的,神経放射線学的異常が   なくその後同様の発作を繰り返すかも   しくは1回のみの発作でもmidline   spikesを認めたもの BECCT(benign epilepsy of childhood with    centro−tempoτal EEG fQci) 症候性てんかん   West症候群   LennOX症候群   脳炎,髄膜炎後遺症   その他 熱性痙攣   単純型   複合型 その他   知能障害   睡眠障害 22例 3例. 1例 1例 1例 2例 4例 3例 1例 5例 6例 6例 4例

;::1∴:∴:1半面艦ぬ欝応:

F。.F、凶飼{.一..・一一・一・一…一、へ納Wv一.ハ・一一一い

1謙:聯::諏:塾墨震墜

EMG ECG’一ト、−卜』・卜’』「・卜一1・肯・.・}㌔・卜1…1.・・一ト}・.・ドー・ド・・1^.斗‘’・}ρ・・}へ・.トレト・i・…卜卜lv卜t・  図1 睡眠時脳波.Czに棘波が認められる. 行い新しい知見を得たので報告する.          対象および方法  1.終夜脳波学的検討  1986年1月より1991年6月の間,東京女子医科 大学附属第二病院小児科神経外来.にて脳波を施行 しMS(Fz, Cz, Pzに限局するspike)(図1)を 認めたのは3歳より23歳の43例(男性23例,女性 20例)であった.表1に43例の基礎疾患を示した.

MSを認めた43例中,特発性てんかん3例,

BECCT.

ibenign epilepsy of childhood with centro−temporal EEG foci)1例,熱性痙攣1例,「 知能障害1例に関して終夜睡眠脳波を施行した. MSは視察により20秒問当りの発作波を数え,発 作波の出現頻度と睡眠ステージ,睡眠サイクルと

の関係を検討した.睡眠ステージは

0    1 3 5 7 9 11 13  Age Case N。 i  i  i  i

l i1⊥.勒

2 i iし一b一三●

3 i i ib→

4   i    i      . 5   ・     l       l

6 i  i  ●● i

▼・li・iCal Seizu・e EEG findings  O n。・m・1  ●midline・pik・・  ㊥pth・・f。・al・pik・ 図2 対象の臨床脳波所見の経過 表2 対象の診断と臨床脳波的特徴 診  断 初発年齢 Midline spike出現年齢 発作回数 発作型

Case 1 特発性てんかん

1ylm

3y9m

10 GTCS, CPS

Case 2 特発性てんかん

3y5m

7yg胆

1

GTCS

Case 3 特発性てんかん

6ylm

6ylm

1 CPS

Case 4

BECCT

2ygm

6y9m

10 GTds, SPS

Case 5 熱性痙攣

6m

5y2m

1

GTCS

(3)

Rechtschaffen and Kalesの判定基準に従っ た4).症例の臨床経過は図2,表2に示した.  2.脳波基礎活動の周波数分析  神経学的,神経放射線学的異常を認めない症例 (特発性てんかん18例,熱性痙攣4例)に対して脳 波基礎活動の周波数分析を行った.脳波記録は10/ 20国際法による電極配置の左後頭部の安静覚醒閉 眼時の脳波をデータレコーダーに磁気記録し,周 波数分析を行った.周波数分析は日本光電社製シ グナルプロセヅサーATAC−450を用い,平均周波 数はsampling time 30mscで7.68secのsam・ plingを行い, FFTによりパワースペクトルを求 め,優位律動を求めた.帯域周波数分析は同様に

左後頭部の安静覚醒閉眼時の脳波をsampling

time 7.81msecで3.9secのsamplingを行い5回 加算し,各周波数帯域の%パワーを求めた.帯域 区分は1.5∼3.5C/Sをび,3.5∼6C/Sをθ、,6∼8 C/Sを亀,8∼10C/Sをα1,10∼12C/Sをα2, 12∼20C/Sをβ,20∼40C/Sをβ2とした.平均周 波数に関してはSmith5)の年齢別平均周波数,帯 域周波数に関しては大田原6)の年齢別平均値にあ てはめ,最も近い年齢における平均周波数と各帯 域の%powerの平均値からのZscoreを算出して 評価した.平均周波数,α波帯は一2SD以下を高 度異常,一1SD∼一2SDを軽度異常とし,δ,θ波 帯は+2SD以上を高度異常,+1SD∼+2SDを軽 度異常とし,.β波帯は±2SD以上を異常とし,そ れ以外を正常域とした.てんかん症例は全例抗痙 攣剤単剤内服中である(CBZ 8例, VPA 6例, PB4例),熱性痙攣は2例が抗痙攣剤内服中(PB) で,臨床発作後1ヵ月以内の脳波と後頭部に棘波 を認める症例は除外して検討した.          結  果  1.終夜脳波学的分析  特発性てんかん3例,BECCT 1例,知能障害1 例に関しては,5例とも睡眠ステージによる発作 波の出現頻度は同様の傾向を示した.すなわち20

sec当たりの発作波の出現頻度はW<stage

REM<stage 1,2<stage 3,4の順であった. しかしながら熱性痙攣の1例のみは睡眠による発 作波の増加は認めたが,REM期における発作波 の抑制はみられず,睡眠ステージ間の変化ははっ きりとした傾向はみられなかった.(図3,表3).  睡眠サイクルとの関連をみると,サイクルの進 行とともに発作波の頻度は減少の傾向にあった が,特発性てんかん,BECCT,知能障害の各1例 では最後のサイクルで再び増加する傾向がみられ た.臨床的には特発性てんかん,BECCTの各1例 は臨床発作の多い症例であった.また熱性痙攣に 関しては睡眠サイクルとの関連でもそのような関 Spikes/20sec 20 10 o

 ク

ノ ノ      2昌・・….“      ○      ,      ゆ       つ      の      つ      ’      鬼     .      ●     ’        9     0      .     ○      ●    ○       ●    の      つ    の       り

  〆      、

  ゆ      の   ♂      ■◆◆・◆

@       、

◆◆◆ 倉・,,“の _■一〇■_幽 Case 1 一一一ィ■一一 Case 2 ■■■晶一一 Case 3 曝閣唱6」■■■  Case 4 ___w一_一 Case 5 ___処鼈黶@Case 6

W

S1 S2 S3 S4 SR S【eeρstage 図3 睡眠ステージによる発作波の出現頻度

(4)

表3 睡眠ステージによる発作波の出現頻度

Case 1 Case 2 Case 3 Case 4 Case 5 Case 6

W

1.13±1.83 0.07±0,37 0.91±1.33 1.54±3.59 3.12±2.43 0.28±0.78 stage 1 1.57±1.75 0.84±1.36 0.95±1.38 6,89±5.87 6.47±3.99 1.29±1.77 stage 2 2.09±1.88 2.27±2.23 1.29±L66 10.53±5.35 5,12±2.86 2.19±1.87‘ stage 3 4,36士2.47 4.78±2.74 2.09±・1.76 16.75±3.93 5.35±3.06 2.21±1.93 stage 4 5.46±2.37 5.42±2.93 2.57±2.04 16.04±4.35 6.36±2.87 2.15±1.89 stage R 1.16±1.61 1.50±1.72 1.22±1.87 7.19±4.41 7.67±4.20 0.40±0.99 spike/20sec mean±SD Spike!20gec 8 6 4 2 o q、

  ねL、、馬、 Sρike’20sec 口曜一  唱唱●. 、噛 。・一一一, 0    1    2    3      Case1 $pike!203ec 20 10 0 岱陶脚 一鴨¶一o= 4    5    6 一一一一愚、         一山__一一巳     、    一一■ひ’ 7   Sleep Cycle o Spike/20sec 3 2 1 0 Case2  、■」一馬ユ   ヘ       ノ  へ   、       、、 、 ’\・  ’r一 Sleep Cycle 1     2     3     4     5     6     7    S!eeP Cycle Splke/20sec 4 3 2 1 0 Case4 !  /q、 ,’@ 、、 、 、 ■r−r_ 、『” 一一。r ,■ o 0 Spike/20s已。 2 4 Case3 6 8        ,ρ風       ”     、   昌,一一咀一一●”      、          、、 匹≦一一一一一一    ’.

10   Sleep Cycle

1 2 3

4 5

67Sleep Cycle =:=罫 =:=1: =コ=1乱 0      斥 2      3      4      5      6   Sleep Cycle

 Case5

Case6 図4 睡眠サイクルによる各睡眠ステージの発作波の出現頻度 連性は認められなか・つた(図4).  2.周波数分析  平均周波数は特発性てんかんにおいては2例の みが高度異常となり,2/3の症例(18’例中12例)は 正常の平均周波数をもっていた.熱性痙攣に関し ては全例軽度異常∼正常であった.CBZ服用中の 症例とそれ以外の抗痙攣剤服用の症例とで平均周 波数の有意な差は認められなかった(図5).  帯域周波数に関しては特発性てんかんではδ 波が高度異常である症例が全体の半数を占めた.

特にCBZ服用中Q症例の8雨中5例は高度異常

となった.θ波に関してはθ、,θ2ともにほとんどの 症例は軽度異常∼正常であったが,θ、ではCBZ服 用中の2例が高度異常であった.CBZ服用中の症 例はδ,θ波の出現がやや多い傾向にあったが,統 計学的な有意差は今回の検討では認めなかった.

(5)

Mean frequency(Hz) 12 10 8 6 4 2               q     ‘{コ.1   .・  .覇“・・’・’191.d・・’o ・・;’

P賀 o・.

 =;.鎚“’・i   凸  ・色  ・   1 ”‘ @     1 ・畠 @      l       i       「       【       1       1       1 ㊥ . Mean  +1SD 4 +2SD  −1SD ^ .2SD o 特発性てんかん 口熱牲痙攣 十 GBZ服用中 0  100      200 図5 全症例の平均周波数   Month 300 α波に関してはα、は1例高度異常であり症例間 のぼらつきが大きいのに対し,α2は18例中15例 (83.8%)が正常であり一定した傾向がみられた. α、+α2としてみると高度異常が3例みられ,18例 中8例(44.6%)が正常であったが,CBZ内服中 の症例は8例中3例(37.5%)が正常であり,や やα波の出現が悪い傾向にあった.  β波に関しては,β、は18例中5例(27.8%)が異 常でありゃやぼらっきが大きいのに対し,焼では 18例中1例(0.6%)のみが異常で一定の傾向がみ られた.  熱性痙攣においては,δ波は4例中2例が高度 異常であったが,易,θ2,α2,α1÷α2,β2帯域では すべて軽度異常∼正常であった(図6).          考  察  欧米の報告1)2)によると,MSを伴う症例は痙攣 合併率が高く,知能障害などの神経学的異常や頭

部CTの異常を示す例が多いとされ,またMSを

伴うてんかんのうち高年齢になってMSの出現

を見たり,脳波基礎活動の悪い症例は発作予後も 悪いとの報告7)もみられる.しかしながら本邦に おける報告では高橋ら8)は予後良好な焦点性発作 波であろうとし,梶谷ら9)も機能的素因性のもの が過半数を占めるとしている.我々の臨床検討に

おいても0∼3歳に初発し,3∼7歳にMSの出

現をみる発作予後の良い特発性部分てんかんの存 在が示唆され,これらに合併するMSはRolandic discharge(RD)などと同様に機能的,素因的で一 過性に出現する傾向があると考えられた.また10 歳以上の高年齢初発の例も認められたが,現在の ところ発作コントロールは全例良好であった.

 これら特発性てんかん群におけるMSの神経

生理学的な意味を考える上で,終夜脳波による発 作波の出現様式と脳波基礎活動の発達に関する検 討は重要である.  てんかん性異常波が睡眠覚醒のリズムの影響を 受けることは良く知られた事実であり,特に原発 性全般てんかんにおいては発作間欠期の脳波異常

はNREM睡眠により賦活され, REM睡眠によ

り抑制を受けるとされているlo). Gloorら11)の corticoreticular theoryによると3/secの全般性 sp−wは生理的に出現するsleep spindleの起源と なるthalamocortical volleysに対する大脳皮質 の神経細胞の異常な反応であり,大脳皮質の漫慢 性の軽度の興奮性の増加に起因するとしている. よって大脳皮質は睡眠が深まるとともに,皮質下 より解放され発作間欠期の脳波異常は活動性が高 まり,逆にREM睡眠においては皮質下の抑制機 能によりてんかん性活動が減少すると考えられて いる.一方部分てんかんにおいても同様に多くの 症例で睡眠による発作間欠期の異常波の増加を認 める.特にBECCTに代表される良性特発性部分 てんかんにおいては多くの報告12)∼15)があり,ほぼ 一定の見解が持たれている.すなわち,てんかん

(6)

SD 5 2 0 2 5 o 口 $ 緯 o 0   9口    【〉 鱒 ◇ 砂 Φ o SD 5 2 o 2 100 200 Mean frequenCy   o 甑 ㌔ooの Q{翁 箪 SD 5 2 0 2 5 SD 5 2 0 2 5 100 200 D 口 Theta1 P㊨ T・・ $  ◇8 0 c》血 由 口  0 100 200 Alpha1 口 o⇔ 6  0 鵠 輿 o  o oΦ o も $ SD 5 2 0 2 5 100       200  Aipha1+2 100       200   Beta2      図6 Mo口th Mon匙h Month Month Month SD 7 5 2 0 2 5 SD 5 2 o 2 SD 5 2 0 2 100 Delta a)o 5 SD 5 2 o 2 5 100 200

Theta2

   o

@o

E寂。㊤

o ウ ㊧ 100 200  A[pha2 O 匂 更8。ε σ 纏 燈 Φ 100 Beta1 200

。特発性てんかん

・熱性痙攣 ・CBZ服用中 全症例の平均周波数と各周波数帯域のZscore Mo口山 Month Month Mo朧th

(7)

性異常波は睡眠による振幅の増大はあるが,形態 的な変化は認めず,出現頻度は増加するとされて

いる.睡眠ステージによる変化はW〈stage

REM〈stage 1,2くstage 3,4の順であること が多く,睡眠サイクルによる変化は第一サイクル が最も頻度が高く,サイクルの進行により減少す る傾向があり,まれに最終サイクルで増加傾向と なるケースもあるとされている.  Dalla Bernardinaら12)セこよると, BECCTをは じめとして,benign partial epilepsy with oc− cipital spike wave (BEOSW), benign psychomotor epilepsy,などの小児良性特発性部 分てんかんの発作間欠期脳波異常は覚醒期と比 べ,全ての睡眠ステージにおいて増加するとして いる.初発時臨床脳波学的に良性であるかどうか の判断に迷う場合,終夜脳波による発作波の出現 様式を見ることでより正確な診断が可能となり, 逆にこのような出現様式をとらない,つまり睡眠 により脳波異常が減少する症例は二二性もしくは 症候性の可能性もあるとしている.  しかしながら,部分てんかんにおいてはREM 睡眠による発作波の抑制をみない症例もあり全般 てんかんほど一定の傾向をとらないことが多く, 部分てんかんの局在性脳波異常に対する睡眠の影 響に関しての神経生理学的な:意味は全般性てんか んと比べ不明な点が多い16).Wylerは17)実験的に epileptic neuronのうちhighly epileptogenic neuronは睡眠などによりその活動性はあまり変 化を受けないと報告し,また難治性部分てんかん の患者においても,最もepileptogenesisの強い focusはその他のfocus(対側など)と比較して発 作間欠期の異常波の出現様式は睡眠による変動が あまりなく,REM睡眠でも比較的出現頻度は高 くなるとの報告18)もある.またBagdorfら7)は高

年齢初発のてんかん症例のMSは睡眠による賦

活を受ける症例が少なく,それらの多くは器質的 脳障害があったと報告している.以上よりRDな どに代表される機能的な脳波異常は睡眠による影 響を受けるが,器質的でhighly epileptogenicな focusは睡眠の影響を余り受けないことが予想さ れる.  今回の終夜脳波では特発性てんかんの3症例は いずれも睡眠による脳波異常の出現増加を認め,

これらのMSは器質的な異常のない機能的な脳

波異常であり,この結果はMSを伴う予後良好な 特発性部分てんかんの存在を支持するものであ る.今回の検討では,BECCT,熱性痙攣,知能障

害におけるMSも特発性てんかんと同様の傾向

をとった.これらのMSは特発性てんかんと同じ 起源を持つものであり,これはRDが熱性痙攣な

どBECCT以外の疾患にも認められることと同

様にMSが素因的にある一定の時期にのみ出現

しやすい性格を持つことを意味している.  正常小児の脳波基礎活動の発達に関しては大田 原の詳細な報告6)があり,帯域周波数に関しては 3ヵ月頃の急激なδ波帯の減少,3歳頃のδ,θ帯 域優位よりα、優位へのspectrumの変換,8∼9 歳におけるα2を主としたα波の増加,11∼12歳 におけるα、と偽が等値となり徐波成分の減少す る発達の完成が小児脳波の発達の4つの大きな特 徴であるとしている。今回MSを伴う特発性てん かんと熱性痙攣の横断的な脳波基礎活動の検討で は年齢的にほとんどの症例が6歳∼10歳であり, 正常児でいうとα2の:増加を主としたα波の発達 を特徴とする時期と一致している.今回の検討で はδ波は22例中11例(50%)と全体の半数が高度 異常となり,特発性てんかん,熱性痙攣共に二二 傾向を示す例が多かった.α帯域に関しては偽の 出現率の悪い高度異常の症例が特発性てんかん, 熱性痙攣に各1例認めたがα2は特発性てんかん (CBZ服用中)の1例のみが高度異常であり,やや 徐波成分は多いものの,α帯域を中心としたこの 年齢層に特徴的なα2の発達は良好であった.  一方,てんかん症例の脳波基礎活動の報告19)20) はほとんどが成人例で小児についての報告は少な い.松浦ら19)は成人てんかんの脳波基礎活動は,発 作予後の悪いほど徐波とα波の異常度が有意に 高くなり,β波の異常度も高くなる傾向があり,横 断的な検討においても脳波基礎活動の異常度は発 作予後と関連が深いとしている.小児てんかんの 報告は赤羽21)が15歳未満の小児の帯域周波数分析 を行っているが,正常児に比べ二二成分の比率が

(8)

各年齢を通じて高く,全ての導出部位において優 位律動は崎戸帯域にピークを持つものが多いとし ている.  最近本郷ら22)は小児てんかんにおける脳波基礎 活動の年齢的発達を1989年のてんかん分類に即し て検討しているが,てんかん症候群問で差が認め られ,特発性部分てんかんでは徐波傾向ではある が加齢と共に徐波の減少とα2帯域の増加を認め るのに対し,症候性てんかんでは年齢に伴う発達 はみられず,%びはむしろ上昇したとしている.特 発性てんかんに関しては今回の我々の検討もほぼ 同様の結果となった.  投与薬剤と脳波基礎活動との関連はVPAにお いてはその関連性は一定の見解は得られていない が,PBにおける阿波の増加, CBZにおける徐波 成分め増加が知られている.特にCBZにおける 基礎波の徐波化は3週間の投与後α波は平均し て0.83Hz下酒化し,その他δ,θ波帯の増加とα 波帯の減少があるとの報告23)24)がある.本郷ら22) によると全体では%θとの弱い関連があり,CBZ においては%θの増加と%α2の抑制が示唆された としている.我々の検討ではCBZ内服群はやや δ,θ1帯域の増加とα2,α、+α2の減少があったが, 統計学的な有意差は認めなかった.  特発性てんかん児の発作間欠期脳波の基礎波は 正常であると言われ,基礎波に徐波の混在する症 例は症候性,潜門干てんかんの可能性も考えて治 療を進めていく場合が多い.しかしながら発作後 あるいは薬剤の影響を考えても視察による背景波 に徐波傾向がみられ,しかも発作予後の良好な症 例も日常臨床においては稀ではなく認められる.

今回の横断的な検討ではMSを伴う特発性部分

てんかんと熱性痙攣22例の脳波基礎活動はやや徐 波化(%δの増加)の傾向がみられた.しかしなが

らα2を中心としたα帯域の発達はCBZ内服中

の症例においても良好であり,機能性脳波異常を

持つBECCTなどに代表される特発性部分てん

かんとほぼ同様の傾向を示した.これらの結果よ り,今回の熱性痙攣あるいは特発性てんかんにお

けるMSはRD同様機能的かつ一過性に出現す

る傾向があると考えられ,MSを伴う予後良好な 特発性部分てんかんの存在をさらに支持する結果 となった.以上MSを伴う特発性てんかんの臨床 的特徴,終夜脳波学的分析,脳波基礎活動の分析 より,mesial cortexを起源とし,機能的で一過性

に出現するMSを伴った特発性部分てんかんの

存在が示唆され,これらは単一の症候群を形成す るものと考えられた.          結  論

 1)MSを伴う小児特発性てんかん3例,

BECCT 1例,熱性痙攣1例,知能障害1例に関

して終夜脳波を施行し発作波の出現様式を睡眠ス テージ,睡眠サイクルとの関連性より検討した. 熱性痙攣の1例を除いた5例は全て同様の傾向を 示し,発作波はW<stage REM<stage 1,2< stage 3,4の順に増加した.これらはBECCTに 代表される小児良性部分てんかんと同様の傾向で あった.  2)特発性てんかん18例,熱性痙攣4例に関し脳 波基礎活動の周波数分析を行った.平均周波数は 22例中20例(90.1%)が軽度異常∼正常であった. 各周波数帯域に関してはδ帯域は高度異常の症 例が22例中11例(50%)とやや多かったがα帯域 特にα2の出現はほとんどの例は良好で,脳波基礎 活動の発達は良好と思われた.また過去に報告さ れた特発性部分てんかん児における脳波基礎活動 とほぼ同様の結果となった.  3)初発時神経学的,神経放射線学的異常がなく MSを伴う特発性てんかんの臨床的特徴,終夜脳 波学的分析,あるいは脳波基礎活動の分析より, mesial cortexを起源とし,機能的で一過性に出

現するMSを伴った特発性部分てんかんの存在

が示唆され,単一の症候群を形成するものと考え られた.        、  本稿を終えるにあたり,御校閲を賜りました福山幸 夫教授に深謝し,福山幸夫教授定年記念論文として捧 げます.  また直接御指導,御協力いただきました村田光範教 授ならびに梅津亮二助教授に感謝致します.  本論文の要旨は,第34回日本小児神経学会総会 (1992年6月13日,大宮),第35回日本小児神経学会総

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会(1993年6月17日,京都)で発表した..       文  献   1)Ehle A, Co S, Jone MG: Clinical correlates      of midline spikes, ArCh Neurol 38:355−357,      1981   2)Pedley TA, Tharp BR, Herman K::Clinical      and electroencephalographic characteristics of      midline parasagittal foci. Ann Neuro1.91      142−149, 1981   3)上田 哲,梅津亮二:小児のMidline Spik.esの臨      床脳波学的検討.臨床脳波 35:162−167,1993   4)Rechtsha{fen A, Kales A eds:AManual of      Standarized Terminology, Techniques, and      Scoring System for Sleep Stages of Human      Subjects. Public Health Service, US Govern−      ment Printing O伍ce, Washington DC(1968)   5)Sm董th JR:.The frequency growth of the      human alpharhythms.during normahnfancy      and childhood. J Psychol 11:177−19.8,1941   6)大田原俊輔:脳波の発達一自動周波数分析による      正常小児脳波の発達に関する研究一.臨床脳波      6(特別号):143畦57,1964   7)Bagdorf R., Lee SI:Midline sp三kes:Is it     benign EEG pattern of childhood P Epi黄epsia      34:271−274, 1993   8)高橋系一,本田利博,平沼 博ほか:小児の頭頂      中心線上陰性棘波.臨床脳波 20:731−738,1978   9)梶谷 喬,木村敬文,仙石宣彦ほか:Midline      Spikesを示す小児の臨床的,脳波的検討.臨床脳      波31:92−96,1989  10)Sato S,.Dreifuss F, Penry JK: The ef〔ect of      sleep on spike−wave discharges in absence sei・     zures. Neurology(Minneap)23.:1335−1345,      1973  11)Kostopoulos G, Gloor P:Amechanism for     spike・wave discharge. in feline penicillin epi・     lepsy and its relationship to spindle generation.      魏Sleep and Epilepsy(Sterman MB, Shouse     MN, Passouant P eds)pp11−27. Academic      Prとss, New York(1982)  12)Dalla Bernardina B, Sgro V, Caraballo R et     al: Sleep and benign partial epilepsies of     childhood:EEG and evoked pot.ential study.1擁    Epile:psy, Sleep and Sleep Depr三vation(Degen    R,Rodin EA eds)pp83−96, Elsevier, Amsterdam    (1991) 13)Gozukirmizi E, Dervent A, Altinel A et ah    All night sleep recordings.in benign childhood    epilepsy. Electroencephalogr Clin Neuro−    physiol 53:28, 1982 .14).Maros血 S: The distribution of convulsive    activity in the night s}eep of epileptics.    Electroencephalogr. Clin Neurophysio.150:    115, 1980 15)Clemens B;Majoros E:Sleep studies in    benign epilepsy on childhood with rolandic    spikes. II. Analysis of disごharge frequency and    its relationship to sleep dynamics. Epilepsia    28 :24−27, 1987 16)Mo鏡tplasir J,正averdiere M, Saint・Hilaire    JM: Sleep and epilepsy. 1勿  Long・term    Monitoring in Epilepsy(Gotman J, Ives JR,    Gloor P eds)pp215−230, Elsevire, Amsterdam    (1985) 17)Wyler AR:Epil…eptic neurons during sleep    and wakefulness。 Exp Neurol 42:.593−608,1974 18)Rossi GF, Colicchio G, Pola P et al: Sleep    and epilept.ic.activity.加Epilepsy, Sleep and.    Sleep Deprivation(Degen R, Rodin EA. eds)    pp23−30, Elesvier, Amsterdam(1991) 19)松浦雅人,上杉秀二,小島卓也:コンピュータ分    析から見たてんかんの経過と脳波基礎活動..臨床    月風波  32:143−147, 1990 20)新井 進:てんかんの長期経過における臨床・脳    波相関の研究.精神誌 70:40−51,1968 21)赤羽 晃:帯域周波数分析による小児てんかん脳    波の研究精神誌 62:1487−1505,1960 22)本郷和久,小西 徹,長沼賢寛ほか:小児てんか    んにおける脳波基礎活動の年齢的発達一正常児と    の比較一.脳と発達25:207−214,1993 23)Misure¢」, Nahunek K, Svestka J et al:EEG    pro丘le of carbamazepine. Act Nerv Sup 27:    264, 1985 24)Dun¢an JS:Antiepileptic drugs ahd the    electroencephalogram. Epilepsia 28(3):    259−266, 198.7

参照

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