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イヌジステンパーウイルスの感染メカニズムと宿主域に関する研究

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Academic year: 2021

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Title イヌジステンパーウイルスの感染メカニズムと宿主域に関する研究( 内容と審査の要旨(Summary) ) Author(s) 大槻, 紀之 Report No.(Doctoral Degree) 博士(獣医学) 乙第131号 Issue Date 2014-09-24 Type 博士論文 Version ETD URL http://hdl.handle.net/20.500.12099/50401 ※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。

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氏名(本(国)籍) 大 槻 紀 之(京都府) 主 指 導 教 員 名 岐阜大学 教授 杉 山 誠 学 位 の 種 類 博士(獣医学) 学 位 記 番 号 獣医博乙第131号 学 位 授 与 年 月 日 平成26年9月24日 学 位 授 与 の 要 件 学位規則第3条第2項該当 研 究 科 及 び 専 攻 連合獣医学研究科 獣医学専攻 研究指導を受けた大学 岐阜大学 学 位 論 文 題 目 イヌジステンパーウイルスの感染メカニズムと 宿主域に関する研究 審 査 委 員 主査 岐 阜 大 学 教授 杉 山 誠 副査 帯広畜産大学 教授 鈴 木 宏 志 副査 岩 手 大 学 教授 村 上 賢 二 副査 東京農工大学 教授 水 谷 哲 也 副査 岐 阜 大 学 教授 浅 井 鉄 夫 学位論文の内容の要旨 イヌジステンパーウイルス(CDV)は,主にイヌや他のイヌ科動物に感染し, 発熱・くしゃみ・下痢さらには痙攣・麻痺等の重篤な神経症状を引き起こす。 CDV はまた,イヌ科動物以外のほ乳類にも感染し,1987 年にはバイカル湖のア ザラシを大量死させるなど,新興感染症の原因としても知られている。近年で は,中国や日本においてサルへの致死的な感染が報告されているものの,これ までにヒトへの感染に関する報告はない。 CDV はパラミクソウイルス科モルビリウイルスに属し,ヒトで世界的に流行が 続く麻疹ウイルスと近縁である。2011 年に麻疹ウイルスの上皮細胞における受 容体がネクチン4であることが報告された。また CDV が麻疹ウイルスと同様に ネクチン4を受容体として利用でき,イヌネクチン4が CDV の受容体である事 も報告されている。一方,イヌとヒトのネクチン4のアミノ酸配列の相同性は 高く CDV がヒトネクチン4を受容体として利用できる可能性は否定できない。 そこで本研究では,CDV 受容体の細胞上での発現と感染性の関係から,CDV のヒ ト上皮細胞への感染メカニズム及び宿主域を規定する分子生物学的基盤につい (1)

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て検討を行った。 第1章では,ヒトネクチン4発現 Vero(Vero/hN4)細胞およびヒトネクチン 4を発現する麻疹ウイルス感受性ヒト肺胞上皮細胞(H358 細胞)を用いて,CDV 野外株が両細胞で増殖可能かを調べ,ヒトネクチン4を CDV が受容体として利 用可能かについて検討した。その結果,Vero 細胞ではほとんど増殖しない CDV 6株全てが,Vero/hN4 細胞で効率よく増殖することが示され,CDV がヒトネク チン4を受容体として利用できる事を明らかとした。 一方,H358 細胞では,用いた6株のうち2株(Ac96I-VDS 株および 007Lm-VDS 株)の増殖は強く抑制されていた。しかしながら,両株とも H358 細胞で8代継 代することにより,同細胞で効率よく増殖する馴化ウイルスを得ることができ た。受容体結合能を有する H タンパク質の親株および馴化株のアミノ酸配列を 決定し,比較したところ,両株とも親株と馴化株間で変異は認められず,馴化 の仕組みが受容体の特異性の変化と関連性がないことを確認した。このことは, 細胞内での複製能力の違いが増殖の違いを決定していることを示唆するもので あった。 第2章では,細胞内での複製能力の違いを規定するウイルス側の因子を特定 するため,両ウイルス株の親株および馴化株の遺伝子配列を次世代シークエン スにより CDV の集団として遺伝子変化(アミノ酸置換)を解析した。その結果, Ac96I-VDS 株では馴化株や他の株と異なりカルボキシル末端が欠損した C タンパ ク質を有することが明らかとなった。また,007Lm-VDS 株ではパラミクソウイル ス科のウイルスで高度に保存されている V タンパク質のカルボキシル末端の Zinc finger ドメインに存在する Cys 残基のうちの一つが Tyr に変異しているこ とが確認された。パラミクソウイルス科のウイルスの V タンパク質や C タンパ ク質はウイルスの複製には必須でないものの,宿主の自然免疫系に対抗するの に重要な役割を果たしていることが数多く報告されている。このことから, Ac96I-VDS 株においては C タンパク質の,007Lm-VDS 株では V タンパク質の特徴 的なアミノ酸置換が H358 細胞でのウイルス複製の違いを決定していることが示 唆された。 第3章では,CDV の V タンパク質が H358 細胞での 007Lm-VDS 株の増殖に影響 を与えるかを確認するため,V タンパク質を恒常的に発現する H358 細胞を作製 し,検討を行った。親株の V タンパク質を発現する H358-V-Tyr267 細胞に 007Lm-VDS 株を接種したところ,ウイルスの増殖は認められなかったが,馴化株 の V タンパク質を発現する H358-V-Cys267細胞では,ウイルス増殖が認められ,V タンパク質が H358 細胞での増殖に影響を与えていることが確認された。 続いて,CDV の V タンパク質が他のパラミクソウイルスの V タンパク質と同様 に宿主細胞のインターフェロン(IFN)誘導,応答などの自然免疫系を阻害する

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のか否か,また阻害するのであればどの段階に影響を与えるのかについて検討 を行った。この結果,親株,馴化株の V タンパク質は共に IFN 誘導系は抑制し なかったが,馴化株の V タンパク質は IFN 応答系を完全に抑制することが確認 でき,馴化株では V タンパク質が IFN 応答系を抑制することで,H358 細胞での 増殖能を獲得したことが示唆された。 以上,CDV はヒトネクチン4を受容体として利用でき,ネクチン4発現ヒト肺 胞上皮細胞に感染し増殖が可能なこと,そして CDV の V タンパク質がヒト細胞 での自然免疫に対抗する能力があることが示された。これらのことより,CDV が 潜在的にヒトに感染する危険性を有することを示すことができた。本研究で得 られた知見は,CDV のヒトへのリスク評価にとどまらず,モルビリウイルスの宿 主細胞内における自然免疫からの回避機構の解明,さらに CDV を含むモルビリ ウイルスが進化の過程でどのように宿主域を広げてきたか等,その発生あるい は進化のメカニズムを考える上で,貴重な情報を提供していると考えられる。 審査結果の要旨 イヌジステンパーウイルス(CDV)はモルビリウイルスに属し,ヒトで流行が 続く麻疹の原因である麻疹ウイルスと近縁である。CDV はイヌや他のイヌ科動物 に感染し,発熱・くしゃみ・下痢さらには痙攣・麻痺等の神経症状を引き起こ す。また,CDV はイヌ科動物以外のほ乳類にも感染し,中国や日本においてサル への致死的な感染が報告されているものの,これまでにヒトへの感染に関する 報告はない。本研究では,CDV の受容体であるネクチン4の細胞上での発現と感 染性の関係から,CDV のヒトへの感染リスクを視野に,ヒト上皮細胞への感染及 び宿主域を規定するメカニズムに関する分子生物学的解析を行った。 第1章では,ヒトネクチン4発現 Vero(Vero/hN4)細胞及びヒトネクチン4 を発現する麻疹ウイルス感受性ヒト肺胞上皮細胞(H358 細胞)において,Vero 細胞ではほとんど増殖しない CDV 野外6株全てが,Vero/hN4 細胞で効率よく増 殖することが示され,CDV がヒトネクチン4を受容体として利用できることを明 らかとした。一方,H358 細胞で増殖が抑制された CDV も 8 代継代することによ り,同細胞で効率よく増殖する馴化ウイルスを得ることができた。馴化ウイル スの遺伝子解析から,馴化の仕組みが受容体の特異性の変化ではないことが示 され,細胞内での CDV の複製能力に関連することが示唆された。 第2章では,馴化による CDV の細胞内での複製能力の違いを規定するウイル ス側の因子を特定するため,2つの CDV の親株および馴化株について,次世代 シークエンスにより遺伝子変化(アミノ酸置換)を解析した。その結果, それ それの CDV において C タンパク質及び V タンパク質の特徴的なアミノ酸置換が

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H358 細胞でのウイルス複製の違いを決定していることが示唆された。 第3章では, 親株あるいは馴化株の V タンパク質を恒常的に発現する H358 細胞での CDV の増殖性から,V タンパク質が H358 細胞での増殖に影響を与えて いることが確認された。さらに,馴化株の V タンパク質は IFN 応答系を完全に 抑制したことから,CDV の V タンパク質がヒト細胞での自然免疫に対抗する能力 があることが示された。 以上,CDV が潜在的にヒトに感染する危険性を有することが明らかとなった。 さらに,本研究で得られた知見は,モルビリウイルスの自然免疫からの回避機 構,宿主域の拡大メカニズム等,貴重な情報を提供している。 以上について,審査委員全員一致で本論文が岐阜大学大学院連合獣医学研究 科の学位論文として十分価値があると認めた。 基礎となる学術論文

1)題 目: Canine distemper virus with the intact C protein has the potential to replicate in human epithelial cells by using human nectin4 as a receptor

著 者 名: Otsuki,N., Sekizuka,T., Seki,F., Sakai,K., Kubota,T., Nakatsu,Y.,Chen,S., Fukuhara,H., Maenaka,K., Yamaguchi,R., Kuroda,M. and Takeda,M.

学術雑誌名: Virology

巻・号・頁・発行年:435: 485-492,2012

2)題 目: The V protein of canine distemper virus is required for virus replication in human epithelial cells

著 者 名: Otsuki,N., Nakatsu,Y., Kubota,T., Sekizuka,T., Seki,F., Sakai,K.,Kuroda,M., Yamaguchi,R. and Takeda,M.

学術雑誌名: Plos One

巻・号・頁・発行年:8 (12): e82343,2013

既発表学術論文

1)題 目: Characterization of a 39kDa capsular protein of avian Pasteurella multocida using monoclonal antibodies

著 者 名: Ali,H.A., Sawada,T., Hatakeyama,H., Ohtsuki,N. and Itoh,O. 学術雑誌名: Veterinary Microbiology

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巻・号・頁・発行年: 100 (1-2): 43-53, 2004

2)題 目: Rapid detection of quinolone-resistant Salmonella by real time SNP genotyping

著 者 名: Esaki,H., Noda,K., Otsuki,N., Kojima,A., Asai,T., Tamura,Y. and Takahashi,T.

学術雑誌名: Journal of Microbiological Methods 巻・号・頁・発行年:50(1): 131-134,2004

3)題 目: Characterization of the amino acid residues of sendai virus C protein that are critically involved in its interferon

antagonism and RNA synthesis down-regulation

著 者 名: Kato,A., Cortese-Grogan,C., Moyer,SA., Sugahara,F., Sakaguchi,T.,Kubota,T., Otsuki,N., Kohase,M., Tashiro,M. and Nagai,Y.

学術雑誌名: Journal of Virology

巻・号・頁・発行年:78(14): 7443-7454,2004

4)題 目: Invasion of chicken embryo fibroblast cells by avian Pasteurella multocida

著 者 名: Ali,H.A., Sawada,T., Hatakeyama,H., Katayama,Y., Ohtsuki,N. and Itoh,O.

学術雑誌名: Veterinary Microbiology 巻・号・頁・発行年:104(1-2): 55-62,2004

5)題 目: Rubella virus as a possible etiological agent of Fuchs heterochromic iridocyclitis

著 者 名: Suzuki,J., Goto,H., komase,K., Abo,H., Fujii,K., Otsuki,N. and Okamoto,K.

学術雑誌名: Graefe's Archive for Clinical and Experimental Ophthalmology

巻・号・頁・発行年:248(10): 1487-1491,2010

6)題 目: Elucidation of the full genetic information of Japanese rubella vaccines and the genetic changes associated with in vitro and

in vivo vaccine virus phenotypes

著 者 名: Otsuki,N., Abo,H., Kubota,T., Mori,Y., Umino,Y., Okamoto,K.,

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学術雑誌名: Vaccine

巻・号・頁・発行年:29: 1863-1873,2011

7)題 目: Piasy inhibits virus-induced and interferon-stimulated transcription through distinct mechanisms

著 者 名: Kubota,T., Matsuoka,M., Xu,S., Otsuki,N., Takeda,M., Kato,A. and Ozato,K.

学術雑誌名: The Journal of Biological Chemistry 巻・号・頁・発行年:286(10): 8165-8175,2011

8)題 目: Nectin4 is an epithelial cell receptor for canine distemper virus and involved in the neurovirulence

著 者 名: Pratakpiriya,W., Seki,F., Otsuki,N., Sakai,K., Fukuhara,H., Katamoto,H.,

Hirai,T., Maenaka,K., Techangamsuwan,S., Lan,NT., Takeda,M. and Yamaguchi,R.

学術雑誌名:Journal of Virology

巻・号・頁・発行年:86(18): 10207-10210,2012

9)題 目: Lethal canine distemper virus outbreak in cynomolgus monkeys in Japan in 2008

著 者 名: Sakai,K., Nagata,N., Ami,Y., Seki,F., Suzaki,Y.,Iwata-Yoshikawa,N., Suzuki,T., Fukushi,S., Mizutani,T.,Yoshikawa,T., Otsuki,N., Kurane,I.,Komase,K., Yamaguchi,R., Hasegawa,H., Saijo,M., Takeda,M. and Morikawa S. 学術雑誌名: Journal of Virology

参照

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