要 約
2010 年、首都圏の大規模物流施設賃貸マーケットの空室率は大幅に改善された。2005~ 2009 年の大量供給と金融危機に伴う世界経済の悪化を受け、新規供給が激減したことと、高機 能型の大規模物流施設への底堅い需要によるものと推定される。 一方、物流施設の投資マーケットは始まったばかりで取引量が少ない。本格的な賃貸マーケッ トの誕生後、初めてマーケットの悪化を経験したことで、立地・スペック・運用会社による違いが鮮 明になり、優良物件の希少性も明らかになった。地価や建築費も落ち着いたことから、投資適格 物件の新規開発が待たれる。物流施設セクターは成長分野であり、外資だけでなく国内資金の 流入に期待したい。 首都圏の大規模物流施設マーケット動向 ◆供給動向のポイント ・ 2010 年・2011 年の供給量は激減し、大量供給前の水準に戻る ・ 2010 年の供給は、テナント誘致リスクのない自社物件(8 棟)や特定テナント向け(7 棟)がほと んどで、マルチテナント向けは 1 棟のみであった ・ 2004 年〜2007 年の着工量は高水準だが、長期的にみれば過剰ではない ・ 2005 年~2008 年の着工量の 69%が 1 万㎡以上の大規模倉庫であった ・ 既存ストックの大半が中・小規模であり、需要にあった大規模施設は不足している ◆賃貸マーケットのポイント ・ 物流施設の賃貸マーケットは 2005 年以降本格化した ・ 2005 年〜2009 年は、賃貸物件の供給が自社物件を大幅に上回った ・ 大規模賃貸物件 138 棟のテナントは 3PL 企業が 6 割、利用面積の多い荷主は「日用雑貨」、 「食品関連」で、「通販」の成長率が高い ・ 近年竣工した大規模賃貸物件は、基本仕様のレベルアップと標準化が進んでいる ・ 空室率は 2009 年 14.4%、2010 年 7.2%と大幅に改善された ・ 2010 年は一部のエリアや物件を除くとほぼ満室となり、堅調な需要が確認された ・ 物流施設の賃料はオフィス・商業等に比べて変動幅が小さく、比較的安定している ・ 工業地の地価は落ち着き、建設費も下落。新規開発の環境は整いつつある ◆投資マーケットのポイント ・ 物流セクターの取引額は全セクターの 4%で、投資対象としては今後の成長分野 ・ 投資家期待利回りの上昇はほぼストップした ・ 大規模賃貸物件の所有者はファンド系が中心で、企業数も取引量も限られている ・ 高機能・好立地な大規模物流施設は希少性が高く、安定したインカムが見込める ・ 開発環境(地価、建築費)が整ったことから投資適格物件の開発が待たれる目 次 レビュー 2010 年秋季号 首都圏物流施設マーケット動向調査 (2010) 要約 ... 1 はじめに ... 3 1. 供給動向 ... 4 1-1 大規模物流施設の供給動向 ... 4 1-2 エリア別供給動向 ... 5 1-3 供給の長期トレンド ... 6 2. 賃貸マーケットの動向 ... 7 2-1 賃貸物件の供給動向 ... 7 2-2 テナント・荷主企業の動向 ... 8 2-3 賃貸物件の基本仕様 ... 9 2-4 空室率 ... 9 2-5 賃料の動向 ... 11 2-6 地価と建設費の動向 ... 11 3. 投資マーケットの動向 ... 13 3-1 物流施設の取引動向 ... 13 3-2 CAP レート ... 13 3-3 新型大規模賃貸物件の所有者 ... 14 3-4 今後の動向 ... 14 おわりに ... 15 付属資料 2009 年~2012 年竣工の主な大規模物流施設リスト ... 16
首都圏物流施設マーケット動向調査 (2010)
はじめに
2010 年、首都圏物流施設マーケットの需給バランスは回復基調 近年、急成長した首都圏の物流施設マーケットは、世界金融危機に伴う経済の落ち込みでい ったん停滞した。しかし、前回レポート(*1)で予見したとおり、供給の激減と底堅い需要に支えら れ、2010 年は需給バランスを回復しつつある。 2005 年以降の流れを辿ると、2005 年に供給が急増したが、旺盛な需要がそれをカバーした。し かし、その後、日本の物流事情に不慣れなファンドや企業の新規参入が相次いだ。2008 年には 供給がピークに達し、空室率が上昇。そこに 2008 年秋の金融危機による景気悪化が直撃したた め、空室率が高止まりし、いくつかのファンド系企業が淘汰・再編された。しかし、2010 年は、新規 供給の激減と高機能な大規模物流施設に対する底堅い需要により、一部を除いてほぼ満室稼働 となった。供給サイドの姿勢は依然として慎重であり、当面は低水準の供給が続くものと予想され る。 では、2005 年〜2009 年の高水準の供給は、市場規模に対して過剰供給だったのだろうか。ま た、大規模施設のニーズは今後も堅調に続くのだろうか。本格的に供給が回復する時期はいつ 頃で、そのための課題は何か。 今回のレポート(*2)はこうした疑問を明らかにするため、第 1 章では、直近の新規供給の実態 と長期的な供給動向を分析、第 2 章では、2000 年以降に竣工した大規模賃貸物件のテナントや 荷主、施設の基本仕様、直近の空室物件の実態の調査に加え、供給の鍵を握る地価と建設費動 向も調査分析した。第 3 章では、物流セクターの投資の現状を踏まえて今後の大規模物流施設 の投資マーケットについて考察する。 ... (注記) *1 2009 年 10 月 15 日に発表したインベストメントレビュー2009 年秋季号パートⅠ:『東京圏大規模物流施設 マーケット動向調査(2009)』 http://www.nomura-re.co.jp/business/shisan_report.html *2 今回のレポートは、2010 年 8 月末時点における首都圏の竣工済物件と 2012 年までの竣工予定物件を、実査 と公表資料および当社データベースの情報に基づいて分析した。1. 供給動向
1- 1 大規模物流施設の供給動向 図 1 首都圏大規模物流施設供給量(延床面積 10,000 ㎡以上) 予定 0 10 20 30 40 50 60 0 50 100 150 200 250 2 0 00 2 0 01 2 0 02 2 0 03 2 0 04 2 0 05 2 0 06 2 0 07 2 0 08 2 0 09 2 0 10 2 0 11 2 0 12 ( 棟数) ( 万㎡) XL:100,000㎡~ LL: 60,000㎡~ L: 30,000㎡~ M: 10,000㎡~ 棟数 119 59 62 50 69 55 131 129 186 127 53 69 23 ※対象物件は、首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)に立地する延床面積 10,000 ㎡(3,000 坪)以上の普通倉庫 および冷蔵倉庫(危険物等の特殊倉庫、工場敷地内の倉庫、上屋等の港湾関連施設を除く)、調査時点は 2010 年 8 月末 2010 年、2011 年は供給激減、2004 年以前の水準に 図 1 は、当社の調査に基づく首都圏の大規模物流施設の供給動向(2000 年〜2012 年竣工物 件、竣工予定含む)である。対象物件は、1 都 3 県に立地する延床面積 10,000 ㎡(3,000 坪)以上 の普通倉庫と冷蔵倉庫 (グラフ下の※参照)。 図1からわかるように、2005 年以降、供給量が急増し、2008 年の 186 万㎡をピークに 2009 年ま で高水準な供給が続いた。2005 年~2009 年の平均供給量は年間 138 万㎡(約 42 万坪)で、 2000 年〜2004 年の約 2.3 倍の水準であった。 しかし、2008 年秋の金融危機に伴う景気の悪化によって、2010 年の供給量は 53 万㎡(約 16 万 坪)、2011 年は 69 万㎡(約 21 万坪)に激減する。この供給水準は 2004 年、2003 年とほぼ等しい。 2010 年の供給は自社物件と BTS 型がほとんど 2010 年の新規供給物件は自社物件が 8 棟、賃貸物件 8 棟である。賃貸物件のうち 7 棟は着工 前にテナントが決まっている特定テナント向け施設・BTS(Build-to-Suit)型で、複数テナント向け のマルチテナント型施設は 1 棟のみであった。マルチテナント型が激減した原因は供給サイドの (1)企業淘汰(2)資金不足(3)空室リスクの回避によるものと推定される。 2011 年の新規供給は、調査時点(2010 年 8 月末)で確認されたものだけで自社物件 8 棟、BTS 型 5 棟、マルチテナント型 4 棟と増えており、回復傾向がうかがえる。 出所:NRE1- 2 エリア別供給動向 図 2 各都県エリア(湾岸部、内陸部)別供給量(2009 年~2012 年) 7 6 17 19 17 34 27 4 3 20 5 7 6 9 2 12 4 9 8 3 32 17 3 3 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 湾岸 内陸 湾岸 内陸 湾岸 内陸 内陸 東京 神奈川 千葉 埼玉 ( 万㎡) 2 012年 2 011年 2 010年 2 009年 エリア別では、2010 年が「神奈川湾岸部」、2011 年は「埼玉」が最大 2009 年〜2012 年各年の新規供給量を、都県別に湾岸エリア(国道 14 号線・15 号線より海側) と内陸エリアに分類したものが図 2 である。 2009 年の供給量は、東京を除く各エリアで高水準であったが、特に千葉内陸部(34 万㎡)や埼 玉(27 万㎡)が目立つ。2010 年は全体的に供給が少ないなかで、神奈川湾岸部のみ 20 万㎡と 多い。2011 年は埼玉が 32 万㎡と突出した供給になるほか、東京内陸部で久々に 10 万㎡超の供 給がある。また、2012 年は東京湾岸部でビックプロジェクトが竣工する予定。 図 3 2009 年~2012 年の大規模物流施設プロジェクト分布図 黄色:2009 年、青色:2010 年、赤色:2011 年、白色:2012 年 竣工(予定)物件 出所:NRE 出所:NRE 神 奈 川 県 千葉県 東京都 埼玉県 (C)2008ZENRIN CO., LTD. (Z10LD 第 269 号)
1- 3 供給の長期トレンド 2004 年〜2007 年の着工量は長期的には過剰ではない 図 4 は首都圏の倉庫着工量の長期トレンドである。神奈川、千葉、埼玉は規模別の内訳が公 表されていないため、1 万㎡以上の大規模倉庫の着工量は当社データベースの謄本データから 推定した(延床面積を着工量、竣工年の 1 年前を着工年とした)。全規模の倉庫着工量は国土交 通省の「建築着工統計調査」による。 まず、全規模の倉庫着工量をみると、1980 年〜2003 年の年間平均着工量は 213 万㎡であっ た。2004 年〜2007 年に着工量が急増したが、同期間の年間平均着工量は 233 万㎡であり、これ までの平均値を 20 万㎡上回る程度である。また、期間も 4 年間であることから、長期的にみれば 過剰な供給量ではない。 図 4 首都圏の着工量(全規模と 1 万㎡以上) 0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 ( 万㎡) 首都圏の着工量(全規模) 大規模物流施設(1万㎡以上)の着工量 '80~'03年の平均値:213万㎡ '04~'07年の平均値:233万㎡ 2004 年〜2007 年の着工は大規模倉庫が主流 全着工量に対する大規模倉庫の割合は、1980 年代前半が平均 14%、1980 年代後半〜1990 年代前半のバブル期も 22%前後である。しかし、1990 年代後半は 38%、2000 年代前半には 45%と、急速に大規模倉庫の着工比率が高まり、2005 年~2008 年は平均 69%に達した。 バブル崩壊までは荷物量の増加に呼応して中・小規模の倉庫が増加したが、近年の着工量の 増加を促したのは物流システムの高度化・効率化であり、大半がその受け皿となる大規模倉庫で ある。 既存ストックの大半は中小規模倉庫 首都圏と比較するために、全国と東京都の年代別・規模別平均着工量を示した(図 5、6)。 図 5 の全国ベースでは、1980 年代前半は小規模倉庫(1,999 ㎡以下)の割合が着工量の 78% を占めた。この割合は徐々に減少するものの、2000 年代前半まで 5 割以上が小規模倉庫であっ た。1 万㎡以上の大規模倉庫が着工量の 3 割を超えたのは、2005 年以降である。つまり、全国ベ ースでは既存ストックの大半が小規模倉庫であると推定される。 一方、東京都は、図 6 でわかるように比較的早く大規模化が進んだ。1 万㎡以上の大規模倉庫 出所:国土交通省「建築着工統計調査」と NRE の資料を基に NRE 作成
の割合は、1980 年代前半に 35%、1990 年代前半には 59%を占めている。1990 年代後半から供 給が激減したが、2005 年~2008 年には大規模倉庫が着工量の 65%に達した。 首都圏全体では、1980 年~1999 年の大規模倉庫の着工比率が 23%であったことから、市場 には中・小規模倉庫が相当量残っていると推定される。物流システムの高度化・効率化を目指す 企業のニーズを満たす高機能な大規模施設のストックはまだわずかであり、今後さらに必要にな るものと考えられる。 図 5 全国の平均年間着工量(規模別) 図 6 東京都の平均年間着工量(規模別) 0 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400 1,600 '80-'84 '85-'89 '90-'94 '95-'99 '00-'04 '05-'08 ( 万㎡) 10,000㎡~ 2,000~9,999㎡ ~1,999㎡ 0 10 20 30 40 50 60 70 80 '80-'84 '85-'89 '90-'94 '95-'99 '00-'04 '05-'08 ( 万㎡) 10,000㎡~ 2,000~9,999㎡ ~1,999㎡
2. 賃貸マーケットの動向
2- 1 賃貸物件の供給動向 賃貸マーケットは 2005 年から本格化し、自社物件の供給を上回る 首都圏の大規模賃貸物件(1 万㎡以上)は 2005 年から供給が急増し、2009 年まで自社物件を 大幅に上回る年間 94 万㎡(平均値)が供給された(図 7)。しかし、2010 年は 26 万㎡に激減。特 に 2008 年には賃貸物件の約 6 割を占めたマルチテナント型の割合が約 3 割まで低下し、空室率 改善の一因となった。景気や空室状況によって供給調整が行われる賃貸物件に比べ、自社物件 は比較的変動が少なく、平均すると年間約 44 万㎡の供給となっている。 図 7 首都圏大規模物流施設供給量(自社・賃貸別) 0 20 40 60 80 100 120 140 160 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 (万㎡) 賃貸(マルチテナント) 賃貸(シングルテナント) 自社 出所:国土交通省及び東京都「建築着工統計調査」を基に NRE 作成 出所:NRE2- 2 テナント・荷主企業の動向 大規模賃貸物件の主なテナントは 3PL 企業 図 8 は、2000 年以降、首都圏で竣工した大規模賃貸物件のテナントを業態別に分類し、それ ぞれの利用面積を累計したものである。自社の物流を担う会社(自社物流)、運送会社(運輸)、 一括元請け物流会社(3PL:Third-party logistics)のうち、もっとも利用面積が大きい業態は 3PL 企業で約 60%を占めている。自社物流は自社物件の使用が主流であったが、賃貸物件の利用 が約 35%に増加している。自社物流を 3PL 企業に売却するケースも増えており、今後も 3PL 企業 が大規模賃貸物件の主要テナントとなるであろう。 図 8 テナントの業態別利用面積(累積)の推移 0 100 200 300 400 500 600 2005 2006 2007 2008 2009 2010 ( 万㎡) 運輸 自社物流 3PL 主な荷主は「日用雑貨」と「食品関連」、急成長は「通販」 2000 年以降に竣工した大規模賃貸物件 138 棟を対象に、荷主の業種別利用面積割合を調査 した(図 9)。最も利用面積割合が高い荷主は「日用雑貨」で、次が「食品関連」である。2005 年以 降、最も伸びたのは「通販」で、約 6%から 13%に急上昇し、大規模賃貸物件の主要な荷主にな ってきた。 これらの荷主は高いスペックやセキュリティに加えて、人材を集めやすい立地を必要とするケー スが多く、高機能かつ好立地な大規模賃貸物件が求められている。 図 9 荷主の利用面積割合の推移 (2000 年~2010 年 8 月竣工の賃貸物件 138 棟) 0% 5% 10% 15% 20% 25% 2005 2006 2007 2008 2009 2010 日用雑貨 食品関連 通販 運輸 医療・メディカル 原材料 アパレル 家電・精密機械 出版・印刷 その他 出所:NRE
2- 3 賃貸物件の基本仕様 基本仕様のレベルアップと標準化が進む賃貸物件 2000 年以降に竣工した大規模賃貸物件 138 棟の主な仕様を、公表資料と実査結果から分析 したところ、図 10 のようになった(不明箇所は算入せず)。 床荷重は 1.5t/㎡以上が 98%、天井高さ(梁下)は 5.5m以上が 84%、トラックバースの仕様は高 床式が 92%を占めた。また、マルチテナント型ではランプウェイ(スロープ)のある物件が 60%を 占めている。 本格的な賃貸マーケットの誕生により、マルチテナント型を中心に基本仕様のレベルアップと標 準化が進んだ。一方、既存物件は自社向けに開発されたものが多く、スペックもまちまちで汎用 性が低い。特に基本仕様はリフォームで変えられないため、新型大規模賃貸物件は規模だけで なく、スペック面でも既存物件に対して優位にたつ可能性が高い。 図 10 賃貸物件の主な仕様の棟数割合 床荷重 天井高さ(梁下) (高床バース仕様/低床) 2- 4 空室率 図 11 エリア別空室率 (2000 年以降竣工の大規模賃貸物件) 5.3% 0.0% 50.5% 0.0% 12.7% 8.7% 2.6% 13.3% 2.0% 0.0% 37.9% 13.6% 10.2%13.3% 10.6% 14.4% 1.4% 0.0% 24.2% 0.0% 0.5% 13.7% 2.1% 7.2% 0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% 60.0% 湾岸 内陸 湾岸 内陸 湾岸 内陸 東京 神奈川 千葉 埼玉 全体 2008 2009 2010 新型賃貸物件は一部を除き満室稼働、空室率も 7.2%まで改善 図 11 は、2008 年、2009 年、2010 年に調査した賃貸物件のエリア別空室率である。 2009 年 8 月末時点の調査では、2000 年以降竣工の賃貸物件 126 棟の平均空室率は 14.4% だった。特に神奈川湾岸部が 37.9%と高く、その他も東京以外は 10%を越えていた。 出所:NRE 出所:NRE 1.5t 未満 1.5t 以上 5.5m 未満 5.5m 以上 低床 高床 2% 98% 16% 84% 92% 8%
野田エリア 成田エリア 神奈川湾岸エリア (C)2008ZENRIN CO., LTD. (Z10LD 第 269 号) 今回は、2010 年 8 月までに新たに竣工した物件を加えた 138 棟を調査した。平均空室率は前 回調査より 7.2 ポイント下がり、7.2%まで改善している。 エリア別では神奈川湾岸部が引き続き高く 24.2%、次いで千葉内陸部が 13.7%となったが、そ の他の 5 エリアはほぼ満室稼働となった。賃貸マーケット誕生後初めて大量供給と景気悪化が重 なり、一時的に需給バランスが崩れたものの、堅調な需要が確認された。 次に空室率が高い2つのエリアを取り上げ、需給動向を分析する(文中の XL クラスは延床面積 10 万㎡以上、LL クラスは同 6 万㎡以上の施設)。 [神奈川湾岸部] 平均空室率は低下したが、集客に苦戦する施設も 空室率は昨年より 13.7 ポイント改善したが、依然として 24.2%と首都圏でもっとも高い。 空室のある物件は 6 棟。新規供給は LL クラスの 1 棟で、大きな空室を抱えての竣工となった。 既存物件は XL クラス 1 棟と LL クラス 1 棟がほぼ満室になったが、3 棟は空室率 50%以上で、 そのうち 1 棟は改善が見られない。ほぼ満室稼働した 2 棟は比較的立地がよく、所有企業も柔軟 に対応したためと推定される。当面供給がないため、需給バランスの改善が予想されるが、どの程 度改善されるかは所有企業の対応にも左右されるだろう。 [千葉内陸部] 航空貨物減少の「成田」、大規模施設竣工の「野田」が苦戦 空室率はやや上昇し、13.7%で高止まりしている。主な空室は、野田エリアで新規供給された XL クラス 1 棟と成田エリアに集中している。 成田エリアは航空貨物が中心で代替需要がないため、景気悪化による航空貨物の減少が大き く響いた。航空貨物は船舶貨物に比べて総量が少ないうえに高級品が主体であることから、同エ リアの回復は景気の本格的な回復を待つことになるだろう。 図 12 空室のある大規模物件 16 棟(50%以上の空室物件は赤印の 6 棟) 出所:NRE
2- 5 賃料の動向 賃料は過去 10 年の平均値を下回るが、乖離幅は数%以内 図 13 は首都圏の平均募集賃料の推移である。 過去 10 年の平均値は東京が坪当たり 5,700 円、神奈川 4,500 円、埼玉 4,000 円、千葉 3,800 円。2009 年時点はまだ低下傾向にある。しかし、平均値との差は東京が 3%、神奈川が 5%、埼 玉が 3%、千葉が 4%に留まっており、オフィスや商業施設と比べれば、物流施設の賃料は比較 的安定している。 高機能大規模物件はほぼ高稼働しているが、中・小型物件の空室率は改善されていない。そ のため賃料は下落傾向にあり、これが大規模物件の賃料にも影響を及ぼしていると推定される。 本格的な賃料の回復は今後の景気動向がポイントになる。 図 13 首都圏の平均募集賃料(募集面積 1,000 坪以上) 3,000 3,500 4,000 4,500 5,000 5,500 6,000 6,500 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 (円/坪) 東京 神奈川 埼玉 千葉 2-6 地価と建設費の動向 工業地の地価は、物流施設ニーズを反映して推移 図 14 は、国土交通省の地価公示(毎年 1 月 1 日時点)の工業地の中から主な大規模物流施 設の敷地付近の基準点をピックアップし、地価変動率を示したものである(2004 年の千葉湾岸地 点 C1 を 100 とした指数で、具体的な取引事例ではない)。ここからわかるように、ほとんどの地点 が 2006 年〜2008 年に上昇した後、下落している。2010 年の地価は 9 地点中 7 地点が 2004 年 の 72%~94%の水準になっている。 これらの工業地では工場のニーズが低下し、それに代わる物流施設ニーズの強弱が地価動向 に反映される傾向が強い。たとえば、東京湾岸部 T1(江東区東雲)は物流施設ニーズが強く、そ れを反映して地価が 34%上昇した。千葉湾岸部 C1(市川市二俣新町)の 40%上昇も、物流施設 ニーズの高まりが地価に反映されたものと思われる。 千葉の内陸部 C2(野田市)はその逆であり、物流施設の新規物件が多くの空室を抱えている 現状と一致する。一方、神奈川湾岸部 K1(横浜市鶴見区)の地価下落は、物流施設の大量供給 により空室率が高まったことが影響したものと思われる。 出所:CBRE「IndustrialMarketReport」を基に NRE 作成
工業地の地価は総じて落ち着きを取り戻しているが、大規模賃貸物件に適した土地は限られ ている。用地取得は物件の見極めとタイミングが重要であり、中長期的な視点も欠かせない。 図 14 工業地の地価変動率の推移 (2004 年の千葉湾岸部 C1 を 100 とした指数) 60 80 100 120 140 160 180 200 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 T1: 江東区東雲 T2: 八王子市石川町 K1: 鶴見区大黒町 K2: 厚木市長谷 C1: 市川市二俣新町 C2: 野田市中里 C3: 柏市新十余二 S1: 草加市青柳 S2: 川越市南台 400 500 600 700 2004年C1 = 100 T1 ~ ~ S1 T2 K2 K1 C3 S2 C1 C2 建設費は 2004 年を下回る水準まで低下 図 15 は、建設物価調査会による東京の建築コストの推移(2000 年を 100 とした指数)である。 2008 年は建設資材などの高騰と物流施設の大量供給が重なり、建築費が高騰した。これがコスト アップ要因となり、物流施設の採算に影響を与えたと推定される。 しかし、2009 年には建築費の高騰はおさまり、2010 年も引き続き低下して 2004 年の水準を下 回った。今後の景気次第では 2003 年の水準まで下がる可能性もあり、供給側には有利な環境に なっている。 図 15 建築コストの推移(建築費指数) S 造/延床面積 4,000 ㎡/倉庫・工場/東京 100.0 98.6 97.8 97.7 101.9 102.1 102.2 104.3 118.5 104.1 101.0 95.0 100.0 105.0 110.0 115.0 120.0 125.0 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010.9 (2000年=100) 出所:国土交通省の資料を基に NRE 作成 出所:(財)建設物価調査会の資料を基に NRE 作成
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. 投資マーケットの動向
3- 1 物流施設の取引動向 物流セクターの取引額はまだ 4%、投資対象としてはこれから 図 16 は 2003 年~2009 年度の不動産取引について、セクター別に取引額を集計したものであ る。オフィスセクターが約半分を占め、商業、住宅、ホテルと続く。物流セクターの取引額は 5 番目 で、全体の 4%にすぎない。物流施設の賃貸マーケットが 2005 年以降に本格化したこともあり、こ れから伸びる可能性を秘めたセクターと言える。 図 16 資産セグメント別取引額 オフィス 47% 商業施設 18% 住宅 13% ホテル 5% 物流施設 4% その他 13% 3-2 CAP レート 取引利回りは概ね 5.5%~6.5%で推移 日本不動産研究所の「不動産投資家調査」によると、物流施設の期待利回り(江東区のマルチ テナント型)は 2007 年秋から 2008 年春にかけて 5.5%まで低下してから上昇に転じ、2010 年春 時点で 6.1%となっている(図 17)。 実際の取引利回りも 2008 年を底に上昇傾向にあるが、J-REIT による取得利回りは 5%~6%と 安定傾向にある。私募ファンドも含めた全体の取引利回りは、エリアや物件による差はあるものの、 首都圏の優良物件は概ね 5.5%~6.5%の範囲と推定される。 図 17 物流施設の期待利回り(投資家調査) 6.2 6.0 6.0 5.8 5.5 5.5 5.7 6.0 6.0 6.1 5.0 5.2 5.4 5.6 5.8 6.0 6.2 6.4 2 0 0 5/10 2 0 0 6/04 2 0 0 6/10 2 0 0 7/04 2 0 0 7/10 2 0 0 8/04 2 0 0 8/10 2 0 0 9/04 2 0 0 9/10 2 0 1 0/04 (%) 出所:NRE(上場企業の適時開示情報と新聞等で公表された情報を集計したもの) 出所:(財)日本不動産研究所「不動産投資家調査」を基に NRE 作成3-3 新型大規模賃貸物件の所有者 大規模物流施設の所有者はファンド系が中心 図 18 は、首都圏で 2000 年以降に竣工した大規模賃貸物流施設の所有者別面積割合を示し たものである。 図 18 大規模賃貸物流施設(1 都 3 県) 所有者別面積割合 A社 16% B社 11% C社 8% D社 6% E社 6% F社 6% G社 6% H社 5% I社 3% J社 3% K社 3% L社 3% M社 2% N社 2% O社 2% P社 2% その他 16% 新型:2000年 ~2 010年竣工 トップの外資系企業 A 社は、金融危機を機に E 社の資産売却を受けて誕生したファンド系運用 会社であり、全体の 16%を占める。以下、外資系企業 B 社 11%、国内企業 C 社 8%、外資系企 業 D 社、A 社の母体だった外資系企業 E 社、リース会社 F 社、J リート G 社と続く。以上の上位 7 社で約 6 割を占めており、6 社がファンド系(内 4 社が外資系企業)である。上位 16 社(市場占有 率 84%)でも 9 社がファンド系であり、一部淘汰・再編された後もファンド系企業が中心であること は変わらない。 2000 年以降に竣工した大規模賃貸物件は高機能型がほとんどを占め、今後も需要が見込ま れる。しかし、絶対数が少なく、所有者も限られているため、取引量は少ない。 3- 4 今後の動向 高機能型の大規模賃貸施設は安定した投資対象に 首都圏の大規模物流施設は 2005 年〜2009 年に高水準の供給が続いたが、スペックも機能も 従来の物件とは一線を画す高機能型の大規模賃貸物件が供給の主流であり、2010 年には好立 地で高機能な優良物件はほぼ満室稼働している。 大規模賃貸物件のテナントは 3PL 企業が主体であり、荷主企業の物流の高度化、効率化のニ ーズを集めている。旧来の施設では十分に対応できないことから、中長期的にみれば、高機能な 大規模賃貸物件に需要はシフトしていくものと推定される。 優良物件は安定したインカムゲインが期待できる投資対象である。ただ、投資対象物件自体が 少ない。新規開発に有利な環境(地価の安定、建築費の下落、市場の回復傾向)となってきたこ とから、今後の開発が待たれる。 出所:NRE
おわりに
金融危機に伴う賃貸マーケットの悪化はデメリットばかりではない。地価や建築コストの高騰が おさまり、再び新規投資に見合う環境になりつつある。さらにエリア・スペック・運用会社の違いも 顕在化し、投資適格物件の要件もわかってきた。 一方、投資適格物件が不足している実態も明らかになった。物流施設の賃貸マーケットはまだ 始まったばかりであり、物流の効率化とマーケットの成長には好立地かつ高機能な大規模賃貸物 件の開発が望まれる。物流施設の性格を考慮した場合、キャピタルゲインに偏重しないインカム 中心の中長期的な投資が基本となるが、開発リスクやテナント誘致リスクを引き受けて開発できる 事業者は少ないのが現状である。 しかし、日本の物流システムは大きな転換期を迎えており、その需要に応えた高機能型大規模 賃貸施設は安定したリターンを生みだしている。こうした大規模賃貸施設を開発し、投資を呼び 込んだのは主として外資であるが、今後は外資だけでなく国内の投資もバランスよく集め、物流セ クターが安定した成長を遂げることに期待したい。 野村不動産株式会社 <内容に関する問い合わせ先> 運用企画部 投資調査課 林 俊樹 東京都新宿区西新宿 8 丁目 5 番 1 号 野村不動産西新宿共同ビル TEL (03)-3365-8650 FAX (03)-3365-8730付属資料 2009 年~2012 年竣工の主な大規模物流施設リスト (LL クラス:延床面積 60,000 ㎡以上) 2 0 0 9 年 倉庫名称 都道府県 市区郡 階数 延べ床面積 (㎡) プロロジスパーク 座間Ⅰ 神奈川県 座間市 5 118,368 NSリース 野田市船形物流センター 千葉県 野田市 5 111,977 ING 横浜ロジスティクスパーク:A棟 神奈川県 横浜市鶴見区 7 100,530 シーエックスカーゴ 野田流通センター 千葉県 野田市 3 92,240 野村 ランドポート川越 埼玉県 川越市 4 79,252 JLF 市川物流センターⅡ 千葉県 市川市 5 76,784 2 0 1 0 年 倉庫名称 都道府県 市区郡 階数 延べ床面積 (㎡) 山九 首都圏中核物流センター 神奈川県 川崎市川崎区 4 99,133 三菱商事 大黒町物流センター 神奈川県 横浜市鶴見区 4 89,316 2 0 1 1 年 倉庫名称 都道府県 市区郡 階数 延べ床面積 (㎡) プロロジスパーク 川島 埼玉県 比企郡 5 169,506 オリックス 横浜町田ICロジスティクスセンター 東京都 町田市 4 77,628 オリックス 市川千鳥町ロジスティクスセンター 千葉県 市川市 5 72,394 2 0 1 2 年 倉庫名称 都道府県 市区郡 階数 延べ床面積 (㎡) ヤマト運輸 (旧荏原製作所羽田工場跡) 東京都 大田区 6 170,000 ※データは 2010 年 8 月末時点、未竣工物件は建築計画看板または HP 等に公表されたものを掲載