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視鏡は現行のフルハイビジョン (2K) 内視鏡よりも 16 倍高い解像度で撮影が可能になっている ( 写真 1) 以前は不鮮明だったために損傷することのあった神経 血管などを温存して手術できるようになり 神経損傷や出血などの術後合併症を予防できると期待される これまでは見えなかった胆嚢の表面の細かい

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Academic year: 2021

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REPORT

REPORT◎オールジャパンの技術を結集した次世代内視鏡

8Kカメラの「高精細」は臨床に役立つか?

2016/9/23 古川湧=日経メディカル  現行のフルハイビジョン硬性内視鏡の16倍高い解像度を持つ超高精細硬性内視鏡 (8K内視鏡)の開発が進んでいる。実用化すれば内視鏡手術で起こる神経損傷、出 血などの術後合併症、癌組織の取り残しなどを低減できると期待されている。8K内 視鏡を用いた手術は既に試験的に行われており、普及には有効性の検証が待たれ る。 写真1 ヒト大腸表面の毛細血管画像の比較(提供:千葉氏)  「8K内視鏡」は次世代テレビ放送用の超高精細映像技術(8K)を応用して開発 された。「実際に手術で使ってみると、従来の内視鏡よりずっと詳細に組織が見え た。これまで認識できなかった血管や神経がはっきりと分かるので、それらに注意 して手術ができた」。8K内視鏡を使った手術を世界で初めて行った杏林大学消化 器・一般外科教授の森俊幸氏は、腹腔鏡下胆嚢摘出手術での経験をこう話す。8K内

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「これまでは見えなかった 胆嚢の表面の細かいシワま で見えた」と話す杏林大の 森俊幸氏。 視鏡は現行のフルハイビジョン(2K)内視鏡よりも、 16倍高い解像度で撮影が可能になっている(写真1)。 以前は不鮮明だったために損傷することのあった神経、 血管などを温存して手術できるようになり、神経損傷や 出血などの術後合併症を予防できると期待される。     内視鏡がじゃまにならない  森氏が使用した8K内視鏡の開発を主導するのは、日本 大学総合科学研究所教授の千葉敏雄医師だ。千葉氏は医 療や工学の専門家と企業の共同研究組織「メディカル・ イメージング・コンソーシアム」を2012年に設立し、 オールジャパン体制で開発を進めている。「8K内視鏡の 高解像度を生かせば、患者と術者の両方の負担を軽減で きる」と千葉氏は話す。    硬性内視鏡は主に、基部となるカメラ、体内に挿入するスコープ、それらをつな ぐアダプタから構成されている。8K画質に対応するため、これらの全てを日本の技 術で開発し直した。従来の内視鏡は解像度が低いため、術野を拡大するときはスコ ープを患部に近付ける必要がある(図1)。そのため術中にスコープと器具が衝突 して、意図せず動いた器具で臓器を傷付ける懸念があった。実際、腹腔鏡手術で は、臓器損傷の発生率が開腹手術と比べて2倍になるとの報告もある 。 図1 従来の内視鏡と8K内視鏡の腹腔内でのスコープ位置 1)

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 一方、8K内視鏡は画面を拡大しても映像が粗くならないため、スコープを患部に 近付けなくても手術が可能。スコープと器具の衝突を回避できる。見たい部位を画 面上で拡大すればスコープと患部の距離を一定に保ったまま手術ができ、術野を映 すためにスコープを頻繁に動かす必要もなくなるという。また、画面上で患部にズ ームして局所の手術を行っている間も、一時的に全体の映像に切り替えれば、周辺 部での出血に気付きやすくなる。森氏は「内視鏡がじゃまにならないので、手術そ のものがやりやすい」と説明する。   東京オリンピックで8Kモニターの値段は下がる?  8K内視鏡用カメラ(8Kカメラ)の高解像度は脳神経外科や眼科、形成外科など の顕微鏡手術にも生かせると期待されている(写真2)。従来の顕微鏡手術では、 術者が顕微鏡をのぞき込む必要があった。しかし「8Kカメラを顕微鏡に接続し、映 像をモニターに表示すれば顕微鏡をずっとのぞき込む必要がなくなるので、術者の 負担はかなり軽くなる」(千葉氏)。    8Kの内視鏡やカメラを使用する場合、映像を表示するモニターも8K解像度のも のを使用するのがベスト。しかし、8Kモニターは現状ではおよそ1600万円と高額 で、市場にも十分に出回っていない。その点について千葉氏は「撮影した画面の中 央を拡大表示することで、4K解像度のモニターでも当面は対応ができる」と話す。 8Kモニターが普及するまでの間は、現在数万~十数万円の4Kモニターで代用して も、8K画質を臨床に生かすための解像度を十分に得られるという。国は2020年の 東京オリンピックを8K画質で放送する目標を掲げている。目論見どおりに進めば 8Kテレビが一般に広がり、8Kモニターの価格を押し下げる可能性もある。 写真2 8Kカメラを用いた眼科顕微鏡手術 手術室内でスタッフ全員が同じ映像を 共有できる。(提供:千葉氏)

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術中病理診断が遠隔でも可能に  従来の内視鏡で大腸癌や胃癌の腹腔鏡手術を行う場合、細胞レベルでの診断は難 しく、癌の遺残を招くケースもあった。腹膜への播種による再発率は開腹手術の 1.5倍に上るとの報告もあり 、腹腔鏡手術による癌治療には成績向上の余地があ る。千葉氏の説明によると、8K内視鏡は色調の高い再現性や高精細な画像拡大によ り、癌細胞と正常細胞の境界を、その浸潤域を含め判断しやすくする可能性がある という(写真3)。癌を確実に避けて切除できれば、腹膜播種の減少も期待でき る。 写真3 8K内視鏡で撮影したイヌ肝臓表面の癌組織(提供:日本大学生物資源科学 部獣医学科 浅野和之教授)  さらに、病理医がいない環境でも術中病理診断を行える可能性がある。手術中に 採取した切片を、8Kカメラを接続して顕微鏡下で撮影すれば、細胞や組織の詳細な 観察もできる。画像を病理医に転送して切除部位の断端に癌細胞が残っているかど うかの判断を仰ぐこともでき、断端に癌細胞が確認されれば、その場で切除部位を 拡大することも可能になる。病理医がいない医療施設では、病理標本を郵送し確認 してもらう必要があったが、その時間を大きく短縮できる。「データの蓄積はこれ からだが、8Kの内視鏡やカメラで癌組織の遺残を減らせれば、癌の長期成績を改善 できる」と森氏は期待を隠さない。 「8Kならでは」の利点の検証を  「8K内視鏡の価格(モニターは含まない)は最新の高精細内視鏡を大きく超える ことはなく、本体も450グラムに軽量化できた。多くの企業の協力で開発も大詰め 1)

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© 2006‒2016 Nikkei Business Publications, Inc. All Rights Reserved. 「8K内視鏡では、人間の視 力が到達できないほど細や かな映像が撮影できる」と 話す日本大の千葉敏雄氏。    普及に向けて必要な次のステップは、実績の積み上げ だろう。これまでに8K内視鏡や8Kカメラが使われた手 術は、胆嚢摘出手術などの一般外科手術2例 、子宮内 膜症の評価などの婦人科手術2例、白内障治療などの眼 科顕微鏡手術11例。現時点では、従来の手術を8Kで試 みる段階にとどまっており、「8Kならでは」の利点の検 証が待たれる。「消化器や子宮の癌治療、心臓のバイパ ス手術など、さまざまな手術に応用すれば予想もしなか った技法やメリットが出てくるだろう」と森氏は話す。 有効性や安全性のエビデンスとともに、手術の効率化に よる病床稼働率の向上まで示すことができれば、普及を 後押しすると考えられる。      千葉氏らは今年7月、安倍晋三首相と面会して国によ る支援の必要性を訴えた。安倍首相は「戦略的に支援していきたい。国民の医療だ けでなく、国際的にも大きな魅力になる」と話し、支援と海外展開に意欲を示し た。海外で評価されるためには、8K内視鏡や8Kカメラのエビデンスは必須。開発 に長く携わってきた千葉氏は「夢物語、実現は無理と何度も言われてきたが、その 度に小型化などを成功させ、ようやく実用化の目前まで来た」とこれまでの苦労を 振り返り、「データの蓄積もしっかりと成し遂げたい」とこれからの課題を見据え る。臨床の場でどこまで実力を発揮できるかが、これから問われることになる。         【参考文献】   1)Kitano S,et al.: Colorectal Cancer Study Group (CCSG) of Japan Clinical Oncology Group. Randomized controlled trial to evaluate laparoscopic surgery for colorectal cancer: Japan Clinical Oncology Group study JCOG 0404. Jpn J Clin Oncol.2005; 35(8):475‒7   2) Yamashita H,et al.: Ultra‒high definition (8K UHD) endoscope: our first clinical success. SpringerPlus.2016;5:1445   2)

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