JCOG9705「進行期 Hodgkin 病(IB、IIB、III、IV 期、または bulky)に対する
ABV 療法と照射併用療法(non-bulky 症例の PR 例の残存腫瘤と bulky mass)の
臨床第 II 相試験(LSG22)」総括報告書
2011 年 2 月 22 日
研究事務局:小椋美知則 名古屋第二赤十字病院
研究代表者:森島泰雄 愛知県がんセンター中央病院
解析担当:浅川 誉 JCOG データセンター
データマネージャー:渡部裕子 JCOG データセンター
本総括報告書作成担当: 小椋美知則 名古屋第二赤十字病院
同封:JCOG9705 最終解析レポート(2006/11/29)
注:本文中のページは、同封の最終解析レポートのものである
1. 試験経過
1998年1月26日より40施設で登録を開始した。本試験では、Simon’s 2-stage minimax design(P0=0.7, P1=0.8, alpha=0.1, beta=0.2)によって目標患者数が設定された。すなわ ち、第1段階(ただし登録は中止しない)で適格例46例中CR+PRの奏効例が32例以下 (69.6%以下)で早期試験中止と規定し、第2段階で適格例86例中CR+CRuが65例以下 (75.6%以下)であれば本試験の治療法が無効と判断する。不適格例を20%見込んで、 目標登録患者数を108例と設定した。予定登録期間は3年で、1999年8月26日にプロトコ ール規定の中間解析予定の46例の登録が確認され、2000年5月に中間解析を実施した。 2000年5月17日に、36例のCRFが回収されたことを確認し、予定症例登録数の適格例 46例には満たなかったが、参加施設から「再発が多いのではないか」との意見が出され、 中間解析を延期すべきでないとの判断から中間解析が実施された。プロトコール規定で は、「中間解析の時点では最終的にCRu となる患者の多くが部分奏効(partial response: PR )と判定されることが予想されるために、中間解析でCR+CRu のみを完全寛解率の 算出に用いると、本試験治療の効果がかなり過小評価される可能性が高いと考えられた。 このことから、本試験の中間解析では、CR+CRuのみを完全寛解としてカウントするだ けでなく、最も新しい効果判定がPR である患者も「CRu となる可能性のある患者」と して便宜上CR例に含めて上記の第1 段階のdecision rule を適用すると規定されていた ため、PRの7例をCRに加えて算出し、CR割合は77.8%であった。46例での第1回中間 解析で規定されていた試験中止規準では閾値奏効割合を69.6%と規定しており、これに
相当するdecision ruleは25/36以上なら登録継続であり、この条件は満たした。しかし、 進行期ホジキンリンパ腫に対するCancer and Leukemia Group B(CALGB)が中心となっ て実施したABVD(doxorubicin[ADM], bleomicin[BLM], vinblastine[VLB], dacarbazine [DTIC])療法、MOPP(mechloretamine, vincristine, procarbazine, prednisolone)療法、 MOPP/ABVD交替療法の3群ランダム化比較試験[1]で示されたABVD療法の治療抵抗 例や増悪の割合の2%と比べると、本試験の第1回中間解析時点では、治療中の増悪が化 療中で4例(11.1%)、化療+放射線療法で7例(19.4%)と多く、さらに、CRもしくは CRu後の再発が5例(13.9%)と多かった。そのため、有効性の点から本試験の登録を一 時中止すべきと判断し2000年5月20日より登録を中止し、登録再開の是非は2回目の中間 解析の結果によって判断することとした。なお、この時点で72例が登録されていた。 2回目の中間解析ではCR割合と生存期間だけでなく、無増悪生存期間についても算出 し、同じ疾患を対象としたJCOG9305と比較することとした。ただし、JCOG9305には、 本試験(JCOG9705)には含まれない「stage IIA かつbulky massなし」の予後のよい患 者がかなり含まれていたため、JCOG9305の登録患者からこのサブグループを除いた集 団を本試験との比較に用いることとし、2000年10月18日に第2回中間解析レポートが提 出された。 解析対象である46例のCR割合は71.7%(33/46)で、プロトコール規定の試験継続 decision ruleである46例中33例以上のCR例という規準をクリアしていた。また、前述の ようにJCOG9305の登録患者からIAとIIA期non-bulkyを除いた集団と比較した結果、全生 存期間では差を認めなかったが、1年無増悪生存割合はJCOG9305で83.8%(95%信頼区 間 76.1-91.6)、本試験で71.7%(95%信頼区間 58.7-84.8)、2年無増悪生存割合は JCOG9305で79.2%(95%信頼区間 70.6-87.7)、本試験で49.4%(95%信頼区間 32.2-66.6)と本試験で大きく下回っており、本試験の登録患者で無増悪生存割合が劣る 傾向が著しかった。この結果を受けて、2000年10月23日、効果・安全評価委員会に対し て、本試験の中止を申請した。 JCOG9305の同じ対象患者と比較して無増悪生存割合が劣った点については以下のよ うな検討がなされた。本試験では化学療法のコース数や放射線治療において、モニタリ ングレポートより、過剰治療よりも過少治療が多かったと考えられるため「プロトコー ル治療」の治療強度が実施されていない可能性があると考えられた。このため、過少治 療例を除外した無増悪生存期間を推定したが、第2回中間解析対象46例中、これらの過 少治療例を除く36例の1年無増悪生存割合および2年無増悪生存割合は、JCOG9305で 77.8%(95%信頼区間 64.2-91.4)、本試験で57.7%(95%信頼区間 37.0-78.4)であり、 若干良い方向にシフトしたが、第2回中間解析結果の解釈を覆すほどの変化ではなかっ た。このことは「プロトコールの計画通りの治療強度」を達成したとしても、やはり早 期再発/増悪が多いであろうと解釈された。 その後、効果・安全評価委員会よりの試験中止勧告を受けて、試験中止が決定され、 2000年12月11日付で、JCOGリンパ腫グループの本試験参加全施設に対して、試験中止 および、本試験で治療中の患者さんに対する適切な対応の依頼を文書で周知した。 本試験では、その後国際的な病理診断規準の改訂などを反映して、2006年11月29日に 最終解析レポートが提出された。
2. 登録状況(2-3 ページ)
予定登録期間は3年(目標被験者数108例)であったが、登録が中止された2000年5月 20日までの2年4ヶ月の間に72例を登録して終了した。参加40施設のうち25施設から登録があり、登録ペースは予定のほぼ80%で推移した。施設別では国立がんセンター東病院 が9例で、4例以上の登録施設は6施設、2例以上の登録が20施設である一方、登録のない 施設が15施設(37.5%)あった。欧米に比べ頻度が約3-4分の1のホジキンリンパ腫であるが、 登録のない参加施設が予想以上に多かったため、今後の試験では全参加施設の登録適格 患者の数や非同意の場合の理由の把握に努め、また、試験情報の周知や登録の呼びかけ を積極的に行う必要があると思われた。
3. 病理中央診断と背景因子(4-10 ページ)
1) 病理中央診断(10 ページ) 72例中7例(全登録例の9.7%)は病理標本未回収のため病理中央診断が行われなかった。 また、1例が登録後に施設報告によってT-cell lymphomaと病理診断の変更がなされプロ トコール治療が中止され不適格と判定された(但し、後に収集された検体での病理中央 診断結果はNodular sclerosis-NOSで結果的にはホジキンリンパ腫であった)。この他登録 後IIIA期→non-bulky IIA期とstage変更されて不適格となった1例をあわせた2例の不適格 例を除いた70例が全適格例である(病理標本未収集の7例は施設報告を基に適格と取り 扱った)(4ページ)。病理中央診断が行われたのは65例(不適格2例を含む)であり、こ のうち病理不適格例(WHO分類第3版による)は5例で、さらに2例の不適格例を除いた 58例が病理中央診断適格例であった(4-5ページ、10ページ)。 病理中央診断不適格5例の内訳をWHO分類第3版の診断名で記載すると(10ページ)、 多い順に以下の通りであった。Diffuse large cell lymphoma -special type
(lymphomatoid granulomatosis type, pyothorax-associated, primary effusion, etc) 2例 Diffuse large cell lymphoma-T-cell rich B 1例
Diffuse large cell lymphoma-Primary mediastinal large B 1例 B-cell lymphoma, unclassified, NOS 1例
(計5例)
病理中央診断適格58例のうち、WHO分類第3版による病理組織亜型の内訳は以下の通 りである(%の分母は病理中央診断適格例)(10ページ)。
Nodular lymphocyte predominanceが1例(1.7%)
Classical Hodgkin lymphoma (CHL)が57例(98.3%)であった。 そのサブタイプは多い順に以下の通りであった。
Nodular sclerosis-NOS 41 例(70.7%) Mixed cellularity 11 例(19.0%)
Lymphocyte depletion- NOS 3 例(5.2%) Nodular Sclerosis-Grade 1 1 例(1.7%) Hodgkin lymphoma, unclassified 1 例(1.7%) ① 病理診断に関する問題点
a)
病理中央診断の背景について 研究開始時のホジキン病の国際的な病理分類は 1994 年に発表された REAL 分類 を改訂して提案された WHO 分類案(1996)であった。その後、一部改訂がなされ WHO 分類第 3 版として出版された分類に基づいた病理分類・診断コードによって 中央診断が行われた。ホジキン病は 1999 年の新 WHO 分類以降ホジキンリンパ腫 と名称が変わり、本総括報告書では、ホジキン病とホジキンリンパ腫の 2 種類の病名が同義語として用いられている。
b)
病理中央診断の扱いについて 従来、リンパ腫の臨床試験では、20%以上もの症例が病理中央診断で事後に不適 格として解析対象から外されていたが(1990 年代前半まで)、現在では、その割合 は 10%前後にまで減少している(本試験では 5/65 [7.7%])。また、日常臨床は施設 病理診断を基に進められているため、病理中央診断での不適格例を解析より除外す ることは一般化可能性の点から、必ずしも適切ではない。一方、病理中央診断を用 いた解析からは治療感受性や病理予後因子などについて探索的な知見を得ること ができる。また、病理中央診断そのものは各施設の病理診断の質を把握する意味で も有用である。 本試験では以上の点を踏まえ、全適格例での解析と病理中央診断適格例での解析 を明示して報告している。c)
未回収検体について 本試験では、病理標本の未回収例が多いという問題があり、7/72 例(9.7%)の検 体が未回収であった。前項で述べた通り病理中央診断の重要性を踏まえて、登録後 早期に(検体が保管されているうちに)確実に検体が収集される仕組みを検討する 必要性があると考えられた。 2) 背景因子(5-10 ページ) 全登録72例は年齢中央値31.5歳(15-69歳)、男女比38/34、III, IV期症例が41例56.9%、 B症状有りが40例55.6%、bulky mass有りが34例47.2%、5 cm以上の最大腫瘤径を有する 患者が53例73.6%と進行期ホジキンリンパ腫の一般的な背景因子の分布と同様の分布 であった(5-6ページ)。 全登録72例中、施設での病理診断変更の1例および臨床病期変更の1例の計2例が不適 格例となり全適格患者数は70例(97.2%)となった(4-5ページ)。 欠側値がある項目は、表面マーカー未検の4例のみであり、ほぼ全ての規定された情 報が収集された。1998年に報告された国際予後予測因子(International Prognostic Score, IPS)[2](10ペ ージ)を用いての解析では、予後良好群とされるIPS2以下の群は、全登録例72例中35 例(48.6%)、全適格例70例中33例(47.1%)であった。このIPSを規定する7つの予後不 良因子に欠測値は認めなかった。
4. 治療経過(プロトコール遵守については後述)(11-23 ページ)
1) 試験治療のコンプライアンス(11 ページ) 全適格例70例中52例(74.3%)が規定の化学療法を完了した。試験治療のコンプライ アンスは高いと考えられた。 試験治療中止例の内訳は、原病の悪化・再発で全適格例中(以下同じ)7例(10.0%)、 有害事象(副作用)による中止が3例(4.3%)、患者の拒否が2例(2.9%)、担当医判断が3 例(4.3%)、プロトコール違反が3例(4.3%)であった。原病の悪化・再発による中止 例が、JCOG9305試験の118例中5例(4.2%)と比較して多かった。 2) 放射線治療(16-17 ページ) 37例に放射線治療が実施された。規定の放射線治療が実施されなかった患者が全登録 例中7例(9.7%)みられ、これらは初発時にbulky病変があって6もしくは8コースの化学療法終了後にPR,CRが得られたか、non-bulky例で規定のコース数の化学療法終了時に PR判定で残存腫瘤に照射が義務づけられていたにも関わらず照射されなかった患者で あった。また、規定外の照射を実施された患者が5例みられたが、これらの効果判定の 結果は腫瘍縮小効果の判定に含めることとした。
5. 安全性(23-26 ページ)
安全性の評価は有害反応/有害事象や二次がんについて行った。 1) 重篤な有害反応(23-24 ページ) 本試験のプロトコール治療による治療関連死亡は認めなかった。また、プロトコール 治療期間中またはプロトコール治療終了30日以内の死亡は認めなかった。 登録後1965日、治療終了後1740日の後治療による治療関連死亡を1例認めた。また、 プロトコール治療終了後4年5ヶ月後に他院にて、肺線維症で死亡した患者が1例認めら れた。この患者は慢性気管支炎を合併しており、試験治療6コースの前にBLMが原因と 思われる間質性肺炎を併発し6コース目のBLMは中止されていた。この例に関しては試 験治療との因果関係は不明であるが、BLMによる肺機能障害が関係した可能性は否定 できない。 2) 二次がん (24 ページ) 二次がん/重複がんの可能性があるとされた患者は2例で、いずれもびまん性大細胞型 B細胞リンパ腫であった。1例は第2再発時の生検でびまん性大細胞型B細胞リンパ腫と 診断され、他の1例は、原病がCRの経過中に甲状腺にみられた腫瘍がびまん性大細胞型 B細胞リンパ腫と診断された。後者はその後、二次がんが治療抵抗性となり死亡した。 3) 一般的な有害反応・有害事象(24-25 ページ)有害反応・有害事象の評価は、JCOG Toxicity Criteriaに基づき、全コースを通しての 最悪値で評価した。対象は全登録患者の72例である。主なものを下記の表1に示す。 もっとも頻度の高い毒性はgrade4のneutropeniaで36例(50.7%)に認められたが、grade4 の血小板減少は1例(1.4%)ときわめて少なかった。これは、原法のABVD療法に比べ、 ADMは増量してあるものの、DTICを外したレジメンであるためと考えられた。 grade4の非血液毒性は認めなかった。非血液毒性ではgrade3のALT上昇、PaO2低下、 末梢神経の知覚障害、心虚血を各1例に認めたのみであった。ADMを20%増量したこと から本試験では心電図のチェックを義務づけたが、心電図異常はCRFで4例報告された。 うち3例は臨床的に問題とならない洞性頻脈、I°AVブロック、完全右脚ブロック+洞性 頻脈+PR短縮+右室伝導遅延+右軸偏位で、1例が第4コースで狭心症発作を認めたが、 4例とも本試験治療との関連は否定的と判断された。 表 1. 主な有害事象の発現頻度(Grade3 以上) 主な有害事象の項目 患者数(Grade3 / 4) Grade4 の% Leukopenia 29/5 6.9 Neutropenia 22/36 50.7 Thrombocytopenia 0/1 1.4 T-bil 0/0 0 AST 0/0 0 ALT 1/0 0 PaO2 1/0 0 末梢神経知覚障害 1/- -
感染 0/0 0 心虚血 1/0 0
6. 有効性(27-41 ページ)
有効性の評価は、プライマリーエンドポイントの完全奏効(CR)割合(プロトコー ルでの記載は完全寛解[CR]率;完全奏効と完全奏効不確定[CRu]をあわせた数を 分子とする)とセカンダリーエンドポイントの生存期間、CR期間である。 1) 腫瘍縮小効果(27-29 ペ-ジ) ① 全適格例 70 例(放射線療法は 37 例に施行された)を対象とした解析 化学療法後で31.4%(CR 27.1%, CRu 4.3%)(95%信頼区間:20.9%-43.6%)、放射線 照射後の総合効果では70.0%(CR 38.6%, CRu 31.4%)(95%信頼区間:57.9%-80.4%) であった。 以上より、化学療法後の完全奏効割合が極めて不良であり、放射線照射追加によって 完全奏効割合は約37%上昇し、約7割弱の患者が完全寛解に達することが明らかになっ た。② 国際予後予測因子(International Prognostic Score, IPS)によるサブグループの解析 a) 全適格例 70 例の中で、IPS:0-2 の予後良好群 33 例を対象とした解析 化学療法後で 33.3%(CR 27.3%, CRu 6.1%)(95%信頼区間:18.0%-51.8%)、放 射線照射後の総合評価では 81.8%(CR 39.4%, CRu 42.4%)(95%信頼区間:64.5% -93.0%)であった。 b) 全適格例 70 例の中で、IPS:3-の予後不良群 37 例を対象とした解析 完全寛解率(CR+CRu)は化学療法後で 29.7%(CR 27.0%, CRu 2.7%)(95%信頼 区間:15.9%-47.0%)、放射線照射後の総合評価では 59.5%(CR 37.8%, CRu21.6%) (95%信頼区間:42.1%-75.3%)であった。 以上の結果から、予後良好群の完全奏効割合は不良群に比し約22%高い。しかしなが ら、化学療法後の完全奏効割合は30%前後と極めて不良であり予後良好群と予後不良群 との間に差が認められず、本試験でのABV療法の寛解導入における有効性が低いことが 推定される。 2) 無増悪生存期間(33-35 ページ、39-41 ページ) ① 全適格例 70 例を対象とした解析 3年無増悪生存割合は49.4%(95%信頼区間:37.2%-60.5%)、5年無増悪生存割合は 43.5%(95%信頼区間:31.7%-54.8%)、50%無増悪生存期間は2.60年であった。 無増悪生存は期待していたものより不良であり、完全奏効割合は良好であっても、増 悪が早期に起こっていることを示している。
② 国際予後予測因子(International Prognostic Score, IPS)によるサブグループの解析 a) 全適格例 70 例の中で、IPS:0-2 の予後良好群 33 例を対象とした解析 3 年無増悪生存割合は 48.5%(95%信頼区間:30.8 %-64.1%)、5 年無増悪生存割 合は 45.5%(95%信頼区間:28.2 %-61.2%)、無増悪生存期間中央値は 2.60 年であ った。 b) 全適格例 70 例の中で、IPS:3-の予後不良群 37 例を対象とした解析 3 年無増悪生存割合は 50.4%(95%信頼区間:33.3%-65.2%)、5 年無増悪生存割 合は 41.6%(95%信頼区間:25.5%-57.0%)、無増悪生存期間中央値は 3.30 年であ った。
以上の結果から、IPSでの予後良好群と予後不良群との間で無増悪生存期間の差は認 められず、予後良好群においても無増悪生存は極めて不良であった。なお、この結果は 全登録例、全適格例、病理中央診断適格例のいずれも同様であった。
③ ABVd 療法を検討した JCOG9305 試験と本試験との無増悪生存期間の比較(全適格例) (39-41 ページ)
a) JCOG9305 試験からは IA non-bulky および IIA non-bulky を除いた患者と本試験から は IB, IIA non-bulky を除いた患者を比較。
JCOG9305 全 85 例の 3 年無増悪生存割合は 76.0%(95%信頼区間:65.4% -83.8%)、5 年無増悪生存割合は 72.2%(95%信頼区間:61.2%-80.6%)、無増 悪生存期間中央値は推定不能であった。本試験全 68 例の 3 年無増悪生存割合 は 49.4%(95%信頼区間:37.0%-60.7%)、5 年無増悪生存割合は 43.3%(95% 信頼区間:31.3%-54.8%)、無増悪生存期間中央値は 2.60 年であった。 b) JCOG9305 試験の III,IV 期例と本試験の III, IV 期例を比較。
JCOG9305 全 62 例の 3 年無増悪生存割合は 70.2%(95%信頼区間:56.9% -80.1%)、5 年無増悪生存割合は 66.7%(95%信頼区間:53.2%-77.1%)、無増 悪生存期間中央値は推定不能であった。本試験全 40 例の 3 年無増悪生存割合 は 56.8%(95%信頼区間:40.0%-70.6%)、5 年無増悪生存割合は 46.2%(95% 信頼区間:30.1%-60.9%)、無増悪生存期間中央値は 4.55 年であった。 以上の結果からIIA bulky, IIB, III, IV期もしくは、III期、IV期の進行期症例を対象とし てJCOG9305で実施されたABVd療法(+放射線照射)と本試験で実施されたABV療法(+放 射線照射)を比較すると、本試験で治療された群はJCOG9305で治療された群よりも明ら かに不良な無増悪生存を示し、(ADMを20%増量しても)DTICをABVdから除くことが、 この原因である可能性を示した。この傾向は全登録例、全適格例、病理中央診断適格例 のいずれでも同様であった。 3) 全生存期間(30-32、36-38 ページ) 全適格例70例中、イベントである死亡は16例に観察され、打ち切り(生存例、追跡不 能例は最終生存確認日で打ち切り)例の最長追跡期間は7.93年であった。3年生存割合 は86.9%(95%信頼区間:76.3%-93.0%)、5年生存割合は80.9%(95%信頼区間:69.4% -88.5%)、生存期間中央値は推定不能であった。 以上の結果から、5年生存割合は比較的良好であった。無増悪生存が不良で、約2.6年 で半数に増悪が認められても、その後の救援療法で救命できていることを伺わせる。試 験中止当時、ホジキンリンパ腫の65歳以下の再発例に対しては救援化学療法を施行し、 救援化学療法に奏効した患者に対しては自家造血幹細胞移植併用の大量化学療法が標 準的治療法としてのコンセンサスを得ており、班会議などでこの点を周知した。 なお、この結果は全登録例、全適格例、病理中央診断適格例のいずれにおいても同等 であった。 以下に、①国際予後予測因子によるサブグループ解析、並びに、②ABVd療法を検討 したJCOG9305試験との比較結果を記す(全登録例、病理中央診断適格例の結果は本総 括報告書では省略した)。
① 国際予後予測因子(International Prognostic Score, IPS)によるサブグループの解析 a) 全適格例 70 例の中で、IPS:0-2 の予後良好群 33 例を対象とした解析
3 年生存割合は 90.9%(95%信頼区間:74.4%-97.0%)、5 年生存割合は 87.9%(95% 信頼区間:70.9%-95.3%)、生存期間中央値は推定不能であった。
b) 全適格例 70 例の中で、IPS:3-の予後不良群 37 例を対象とした解析
3 年生存割合は 83.4%(95%信頼区間:66.7%-92.2%)、5 年生存割合は 74.6%(95% 信頼区間:56.7%-85.9%)、生存期間中央値は 7.46 年であった。
② ABVd 療法を検討した JCOG9305 試験と本試験との生存期間の比較(全適格例) (36-38 ページ)
a) JCOG9305 試験からは IA non-bulky および IIA non-bulky を除いた患者と本試験から は IB, IIA non-bulky を除いた患者の生存期間を比較。
JCOG9305 全 85 例の 3 年生存割合は 91.5%(95%信頼区間:83.1%-95.9%)、 5 年無増悪生存割合は 86.6%(95%信頼区間:77.1%-92.4%)、生存期間中央値 は推定不能であった。本試験全 68 例の3年生存割合は 86.5%(95%信頼区間: 75.7%-92.7%)、5 年生存割合は 80.4%(95%信頼区間:68.6%-88.1%)、生存 期間中央値は推定不能であった。
b) JCOG9305 試験の III,IV 期症例と本試験の III, IV 期症例の生存期間を比較。 JCOG9305 全 62 例の 3 年生存割合は 90.0%(95%信頼区間:79.0%-95.4%)、 5 年生存割合は 83.2%(95%信頼区間:71.0%-90.6%)、生存期間中央値は推定 不能であった。本試験全 40 例の 3 年生存割合は 84.6%(95%信頼区間:68.9% -92.8%)、5 年生存割合は 79.1%(95%信頼区間:62.5%-89.0%)、生存期間中 央値は推定不能であった。 リスクグループ間の生存曲線の差は、全登録例では6~8%、全適格例では7-13%であり、 各リスクグループの生存曲線は全登録例、全適格例、病理中央診断適格例の間では殆ど 差を認めなかった。これは、病理不適格例が5例(6.9%)と低い割合であったことを反 映しているものと推定される。
また、IIA bulky, IIB, III, IV期もしくは、III期、IV期の進行期症例を対象として JCOG9305で実施されたABVd療法(+放射線照射)と本試験で実施されたABV療法(+放射 線照射)と比較すると、全登録例、全適格例、病理中央診断適格例のいずれにおいても、 本試験で治療された群とJCOG9305で治療された群では生存期間では差を認めなかった。 無増悪生存では明らかな差がJCOG9305と本試験で認められたが、生存割合では2つの試 験の間で差が認められず、このことは増悪・再発が認められた後、救援化学療法や大量 化学療法によって救命されたことを強く示唆している。
7. プロトコールの遵守
1) 化学療法のコース数について(14-16 ページ) 化学療法の施行コース数はCRに到達する速さにより最低6コース、最大でも8コース と規定されていた。8コースで終了した患者が最も多く全登録例中(以下同じ)38例 (52.8%)であった。次いで、6コースが23例(31.9%)で、7コースが2例(2.8%)で あった。規定の6コース以上が行われた患者は63例(87.5%)であった。 本試験では、ABV療法4コースでCRもしくはCRuに到達した場合、AVDの追加2コー ス(計6コース)を施行し、4コースでPRもしくはSDの場合は6コース施行後の効果判定 でCRもしくはCRuまたはPRに到達した場合は2コース追加して8コースで終了すると規 定されていた。規定のAVD2コースを追加せず、過少治療の可能性があるとされた患者 が9例(12.5%)みられた。逆に、規定のコース数を上回って化学療法を施行し過剰治 療の可能性があるとされた患者は3例(4.2%)みられた。2) 薬剤の用法用量(18-23 ページ) ADMに関しては、血液毒性および粘膜障害の程度により治療延期および薬剤投与量 を次コースで75%に減量(毒性が回復すれば次コースからは原法量に復す)、VLBに関 しては血液毒性により治療延期および次コースでの75%への減量(毒性が回復すれば次 コースからは原法量に復す)および神経毒性によって50%の減量が規定され、BLMに 関しては肺毒性での中止などの規定がされていた。ADMの減量がなされなかった患者 が21例(21/72 29.2%)に認められた。VLBが規定通り減量されなかったのは21例(21/72 29.2%)に認めた。血液毒性が回復してもADMを減量したまま継続した患者は6例、VLB を減量したまま継続した患者が4例であった。また減量規定のないBLMを減量した患者 が1例認められた。毒性による治療延期規定が遵守されなかった患者は7例認められた。 本試験では、ADMとVBLの減量規定の不遵守が約30%に認められたが、重篤な有害事 象はみられなかった。 3) 放射線治療(16-17 ページ) 初発時にbulky病変があって6もしくは8コースの化学療法終了後にPR,CRが得られた か、non-bulky例で規定のコース数の化学療法終了時にPR判定であった場合には残存腫 瘤に照射が義務づけられていた。規定の放射線療法が実施されなかった患者が全登録例 中7例(9.7%)みられた。また、規定外の照射を実施されたものが1例(1.4%)みられ た。
現時点では、European Organisation for Research and Treatment of Cancer (EORTC)に おけるランダム化比較試験の結果、初発進行期ホジキンリンパ腫において、多剤併用化 学療法でCRに到達した患者に対しては、初発時に巨大腫瘤(bulky病変)が認められて もbulky病変に対する追加照射の有効性は示されていない[3]。本試験では初発時bulky 例でABV後のCR到達例に対して放射線照射未実施例が1例みられたが、これはEORTC からの報告における放射線照射不要例にあたる。
8. 考察
ホジキンリンパ腫に有効な抗がん剤が欧米で開発されたこと、ホジキンリンパ腫の頻 度がわが国の3-4倍に達するほど高いことなどから、治癒率の高い標準治療法は全て欧 米で確立されてきた。[1,4-7]。米国の臨床腫瘍研究グループの一つであるCALGBは IIIA2期以上の初発進行期ホジキンリンパ腫に対して、それまでに開発・報告されてい たMOPP療法、ABVD療法、MOPP/ABVD交替療法の3つの治療法の大規模ランダム化比 較第III相試験を実施し、ABVD療法とMOPP/ABVD交替療法がprimary endpointである治 療成功生存期間でMOPP療法よりも有意に優れ、かつ、急性および遅発毒性ではABVD 療法が有意にMOPP/ABVD交替療法よりも優れていたことが検証された[1]。以来、現 在までABVDが初発進行期ホジキンリンパ腫の標準的治療法となっている。DTICは、 1980年代後半になってもわが国では未承認のままであったが、JCOG-LSGは保険査定の 問題を抱えながら、1989年からJCOG8905(C-MOPP/ABVd交替療法)を、1993年から JCOG9305(ABVd療法)を第II相試験として行った[8,9]。その結果、JCOG9305試験の 結果に基づいて、DTICにホジキンリンパ腫の適応の追加が2002年に薬事承認され、保 険が適用されるようになった。 しかし、JCOG-LSGが実施した本試験の計画時点(1997年)、および開始時点(1998 年)ではDTICはホジキンリンパ腫に対して依然として薬事法上の承認が無く、DTICの 血管炎、血管痛、消化器毒性がABVD療法や(DTIC投与量を原法の375 mg/m2から250 mg/m2に減量した)ABVd療法でも問題となっていた。また、DTICは米国の臨床腫瘍研究グループであるSWOG(Southwest Oncology Group) が実施した単剤の試験においてホジキンリンパ腫に対して56%の奏効割合が報告され ていたが[10]、ABVD (ABVd)療法においてDTICがはたしてkey drugであるか否か については不明であったため、JCOG-LSGではABVD(ABVd)療法の薬剤の内で、ADM を20%増量し、化療後のCR, PR例のbulky病変とPR例の残存腫瘤に対して区域照射を実 施することで、毒性の強いDTICを使用せずにABVD(ABVd)療法と同等の効果を得ら れる可能性があるとの臨床仮説をもとに本試験を立案し、開始した。 本試験の5年無増悪生存割合は43.5%であり、欧米の初発進行期ホジキンリンパ腫に 対する代表的な臨床試験成績(IIIA2期以上を対象にしたCALGBのRCTではABVD療法 での5年治療成功生存割合61%[1]、と比べても極めて不良な成績が示された。 また、ABV療法後のCR割合は僅か30.6%であり、CALGB試験で報告されたABVD療 法のCR割合82%と比べて極めて低く、区域照射という放射線療法の追加によって70% 近いCR割合が得られたが、無増悪生存の改善には繋がらず、3年無増悪生存割合は50% 以下であり半数の患者が2.5年ほどで増悪するという結果であった。これより、化学療 法のみによって高いCR割合が得られないと、良好な無増悪生存が得られない可能性が 示唆された。また、ABVD(ABVd)療法ではDTICがkey drugの一つであり、ADMを増量 してもDTIC無しではホジキンリンパ腫に対して有効性でない可能性が示唆された。 一方、規定の放射線治療を実施されなかった患者が7例(7/72, 9.7%)に認められたが、 既述の通りEORTCにおけるランダム化比較試験で、初発時bulky例に対するCR到達後の 放射線追加照射の有効性が示されなかったことより、本試験で確認された不良な無増悪 生存への放射線未照射例の影響は低いと判断された。 ホジキンリンパ腫では、Cotswolds分類による病期決定が重要な予後予測因子である ことは周知である[11]が、初発進行期ホジキンリンパ腫では7つの予後不良因子が同 定されIPSとして知られている[2]。本試験開始当時、米国ではIPSの保有因子数が2以 下の予後良好群と3以上の予後不良群に分け、より有効な治療法の開発を目指した臨床 試験が実施されていた。本試験の最終解析に於いては、生存割合、無増悪生存割合、腫 瘍縮小効果でのIPSの保有数(2以下と3以上)での2群でサブグループ解析を実施した。 全適格例70例のうち33例(47.1%)がIPS2以下の予後良好群であった。全適格例でのサ ブグループ解析で2群(予後良好群:予後不良群)の5年生存割合、5年無増悪生存割合、 CR割合(総合効果)はそれぞれ、87.9%、45.5 %、81.8%:74.6 %、41.6%、59.5%であ り、2群の5年の無増悪生存割合と予後不良群のCR割合はIPSの原著[2]の報告と比べ ても明らかに不良であった。ただ、4つの予後不良因子を有する(IPS4)グループは全 登録患者の12%、5つ以上を有する(IPS5)グループは全登録患者の7%であり、各々の 5年無増悪生存割合は51%、41%、5年生存割合が各々61%、56%で、このIPSシステム では5年生存割合が50%を下回るようなvery high risk群を同定できないことも示されて おり、今後は、初発進行期ホジキンリンパ腫の中でも、特に予後不良の群を抽出できる 新たなリスクモデルの作成が必要と思われる。
病理中央診断の結果から、代表的な病型はNodular sclerosis-NOSの41例(70.7%)と Mixed cellularityの11例(19%)であった。JCOG9305ではNodular sclerosis-NOS(66.4%) とMixed cellularity(21.5%)であり、ほぼ同様の相対頻度であった。ホジキンリンパ腫 を対象とする臨床試験では、非ホジキンリンパ腫の混入が治療成績を左右するため、今 後も病理中央診断は必要であり、施設の病理診断の質を向上させることも重要である。 また、登録前に病理中央診断か又はそれに匹敵する病理専門医のレビューを迅速に行う 方法は可能かどうか検討することも必要と思われる。
JCOG9305のABVd療法ではgrade4のneutropeniaが45.3%に認められた。ADMを20%増 量したがDTICを使用しなかったために、grade4のneutropeniaの著しい増加をABV療法で 認めなかったと思われる。Grade4の血小板減少は1例(1.4%)ときわめて少なかった。 これはABVd療法と同等の低さであり、ADMの20%増量は血液毒性の増加を殆どもたら さなかったと思われた。ADMを20%増量したことから本試験では心電図のチェックを 義務づけたが、心電図異常は4例で報告され、うち3例は臨床的に問題とならない洞性頻 脈などで、1例が第4コースで狭心症発作を認めたのみであった。但し、4例とも本試験 治療との因果関係は否定的で問題なしと判断された。 ABVd療法のJCOG9305では、grade3の悪心・嘔吐(10.9%)がもっとも頻度が高い非 血液毒性であったが、本試験では悪心・嘔吐は殆ど認められなかった。これは、ABVd 療法の中で最も消化器毒性の高いDTICが使用されていないことと、1992年から、我が 国でも5HT3 antagonistが上市されたことが影響していると思われる。 ホジキンリンパ腫における二次性の非ホジキンリンパ腫の研究は、ホジキンリンパ腫 に対する大規模臨床試験を連続的に実施している欧米で広く研究されている。ドイツの ScholzらはGerman Hodgkin Lymphoma Study Group(GHDSG)の放射線後照射を組み込ん だBEACOPP療法およびCOPP-ABVD療法の8つの臨床試験に参加した5,357例中二次が んが発症した97例(20例は再発後の後治療後の発症)の非ホジキンリンパ腫患者につい ての解析結果を報告した[12]。その結果、二次がんの急性骨髄性白血病や骨髄異形成 症候群と異なり、二次がんの非ホジキンリンパ腫は初回治療の種類に関係なく一定の率 で発症し、その発症リスクは再発後の救援療法後に増加することが示された。本試験で の治療後に発症した2例の非ホジキンリンパ腫はいずれも放射線照射は受けておらず、1 例は救援治療後の発症であるが、ホジキンリンパ腫に対しては限局期、進行期を問わず (コース数の差はあるものの)ABVD療法を中心とした化学療法が標準的治療法として 実施されるため、非ホジキンリンパ腫の二次がんとしての発症リスクがあることを十分 認識して、対象患者に対して治療前に十分な説明と理解を得ることは重要である。 本試験により、ABVD(ABVd)療法におけるアルキル化剤のDTICは、やはりkey drug であり外せない薬剤であることが強く示唆された。ドイツが大規模臨床試験で実施し、 その良好な治療成績からABVDとのRCTが実施されているBEACOPP療法でもアルキル 化剤であるcyclophosphamideが使用されていて、ホジキンリンパ腫に対する多剤併用化 学療法ではアルキル化剤が重要な役割を果たしていると思われる。現時点でも、初発進 行期ホジキンリンパ腫に対する国際的にコンセンサスが得られている標準的治療法は ABVD療法である。日本ではホジキンリンパ腫は稀少疾患である中で、第II相試験によ ってABVD療法でのDTICの重要性を再確認した点で本試験の意義は大きかった。
9. 結論と今後の方針
本試験によって、AVBD(ABVd)療法においてはDTICが重要な薬剤であること、そ して、良好な無増悪生存を得るためには初回寛解導入化学療法で高い完全奏効を得るこ とが重要であると考えられた。 今後は進行期ホジキンリンパ腫に対して、さらに有効性が高く毒性の少ない治療法の 開発を目指すべきである。IPSシステムでは5年生存割合が50%を下回るようなvery high risk群を同定できないことは周知であり、最近では、ABVD療法2コース後のPET/CTで の効果判定による結果と治療完了後の予後との間に強い相関があることが示され、早期 のPET/CT判定で、治療方針を変更するPET/CTガイドによる治療研究が国際的な研究の 主流となっていて、JCOG-LSGでもそうした研究を開始すべきと思われる。ただ、我が国に於けるホジキンリンパ腫の発生頻度が欧米の3-4分の1以下であること を鑑みると、新たな治療法を第II相試験で探索した後に、第III相試験で検証することは 現時点でのJCOG-LSGのみでは困難であり、欧米のSWOGやGHSGなどとの共同研究を 行うか、或いは日本で有効な新薬を早期に開発するためにJCOG-LSGが医師主導治験を 行うという新たな方向性も早急に模索する必要がある。 (2003年ASCO発表、現在論文作成中)
10. その他の考察
本試験の結果、化学療法のコース数の規定の意義や、内容、減量や延期の実施規定、 および放射線療法の照射の実施規定などのプロトコール記載やその周知徹底のさらな る改善の必要性が示された。 こうしたことを改善するため、第一に放射線治療医と密接に連携し、協力関係を結ぶ ことの重要性がリンパ腫グループでよく認識され、以降の臨床試験では改善された。第 二に、JCOG-LSGの臨床試験支援を目的としたリンパ腫・骨髄腫マニュアルを完成させ た。本マニュアルを基に、参加施設の試験担当医師の教育、データセンターの支援、プ ロトコール作成過程の改革とプロトコール内容の充実などが整備されてきており、今後 のプロトコールに於いては、今回の反省点が払拭されるものと期待する。しかし、この 過程で、リンパ腫・骨髄腫マニュアルの記載の陳旧化も幾つか指摘されており、将来の 改訂に備えることが必要になった。また、病理中央診断の実施上の問題やその結果の取 り扱いの課題が幾つか指摘されている。こうした課題の解決のために、データセンター 及び病理委員会と密接に連携して、作業を進める必要があると考えている。11. 文献
1. Canellos GP, Anderson JR, Propert KJ et al. Chemotherapy of advanced Hodgkin's disease with MOPP, ABVD, or MOPP alternating with ABVD. N Engl J Med 327:1478-1484, 1992
2. Hasenclever D, Diehl V, Armitage JO, et al. A Prognostic Score for Advanced Hodgkin's Disease N Engl J Med 339:1506-14, 1998
3. Aleman BM, Raemaekers JM, Tirelli U, et al. Involved-field radiotherapy for advanced Hodgkin's lymphoma. N Engl J Med. 2003; 348:2396-406.
4. DeVita VT, Serpick AA. Carbone PP. Combination chemotherapy in the treatment of advanced Hodgkin's disease. Ann Intern Med. 73:881-895, 1970
5. Bonadonna G, Zucali R, Monfardini S, et al. Combination chemotherapy of Hodgkin's disease with adriamycin, bleomycin, vinblastine, and imidazole carboxamide versus MOPP. Cancer 36:252-259, 1975
6. Duggan DB, Petroni GR, Johnson JL, et al. Randomized comparison of ABVD and MOPP/ABV hybrid for the treatment of advanced Hodgkin's disease: report of an intergroup trial.J Clin Oncol. 2003 Feb 15;21(4):607-14.
7. Diehl V, Franklin J, Pfreundschuh M, Lathan B, Paulus U, Hasenclever D, Tesch H, Herrmann R, Dörken B, Müller-Hermelink HK, Dühmke E, Loeffler M; German Hodgkin's Lymphoma Study Group. Standard and increased-dose BEACOPP chemotherapy compared with COPP-ABVD for advanced Hodgkin's disease. N Engl J Med. 2003 Jun 12;348(24):2386-95.
8. Takenaka T, Mikuni C, Miura A, et al. Alternating combination chemotherapy C-MOPP (cyclophosphamide, vincristine, procarbazine, prednisone) and ABVd (Adramycin, Bleomycin, vinblastine, dacarbazine) in clinical stage II-IV Hodgkin’s disease: a multicenter phase II study (JCOG 8905). Jpn J Clin Oncol 30, 146-152, 2000
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