疾患による死亡原因の第 1 位を占めており3),近年は小 児緩和ケアの普及が進められているが,世界の中でのわ が国の小児緩和ケアの提供レベルは,小児ホスピスがな いなどの点で低い評価を受けている4).また,2008 年に わが国で初めて「小児がん看護ケアガイドライン」が著 され,その後,2012 年には日本小児がん看護学会から 改訂版が発刊されて,子どもと家族の QOL 向上という 専門性の高い看護遂行のためには,看護師への精神的な 支援が必要であることが,基本的な考え方として示され た5).
Ⅰ.はじめに
わが国の小児がん発症数は,年間約 2,500 人と推定さ れ,白血病や悪性リンパ腫などの血液造血器腫瘍がその 約 4 割を占める1).小児がんに対する治療技術の進歩に よって,現在では約 7∼8 割の子どもたちの治癒が可能 となり,がん対策推進基本計画における小児がん対策で は,小児がん拠点病院の整備や,晩期障害への対策も含 めた長期フォローアップの取り組みが課題となっている2). しかし,小児がんは,依然として幼児期以降の子どもの ■ 原 著 Key words: 小児がん,死,看護師,態度変容 本研究の目的は,小児がんの子どもの死を契機とした看護師の態度変容過程を明らか にすることである. 参加者は,小児がんの子どもの死を体験した看護師 13 名である.データ収集は,半構 成的面接を行い,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)を用いて質 的帰納的に分析した. 本プロセスは,【喪失の悲しみを抱える】【関わりの中での慰めを感じる】【揺らぎつつ 変えていく】【生きられる時間を意識して技を尽くす】【生の限界を了解する】という過 程を辿ると考えられた . そしてその過程には,【闘病支援とターミナルケアの板ばさみに 悩む】という看護師の葛藤が表出された.すなわちそれは,子どもの死を契機として, 看護師が,初期には関係性の中に身を置くことで悲嘆からの回復過程を辿りながら変わ り,闘病支援に葛藤しながら技を駆使して,最終的には死をも承認する態度へと変容し, 成長していく過程として捉えられた. 本結果は,新人看護師も含めて,子どものターミナルケアに関わり,最期の時まで受 持つことの重要性と,そのための精神的支援,および技術的・教育的支援の必要性を示 唆するものであった. (受付日:2017 年 5 月 1 日,受理日:2017 年 11 月 29 日,公開日:2018 年 3 月 1 日) 連絡先 大久保明子/新潟県立看護大学 〒943 0147 新潟県上越市新南町 240 Phone:025 526 1176/FAX:025 526 3107/E-mail:[email protected]小児がんの子どもの死を契機とした看護師の態度変容過程
*大久保 明 子
** 1),小 山 千加代
** 2)要 旨
** 1)新潟県立看護大学 ** 2)新潟大学大学院保健学研究科
Ⅱ.研究目的
小児がんの子どもの死を契機とした看護師の態度の変 容,すなわち,子どもの死という出来事を看護師がどの ように体験し,その後のケアに対する考え方や取り組み に繋がって行くのか,その過程を明らかにする.Ⅲ.用語の定義
1.看護師の態度 看護師が小児がんの子どもの死を体験することによっ て生じた感情,および子どものターミナルケアに対する 考え方やケア行動をいう. 2.子どものターミナルケア 治癒の見込みがなく,ごく近い将来に死が近づいてお り,緩和ケアに頼らざるをえない時期にある子どもとそ の家族に寄り添うケアとする.なお,がんの診断時から 入退院を繰り返し,終末期に至るまでの期間,症状緩和 とともに,患者の生活の質を重視して,多職種チームで 実施される医療と看護を「緩和ケア」とする.Ⅳ.研究方法
1.参加者 小児看護経験 3 年以上で,小児がんの子どものターミ ナルケアおよびその子どもの死を体験した看護師 13 名 である(表 1). 2.データ収集方法 データ収集は,2011 年 3 月から 2013 年 3 月であり, 小児がん治療を行っている小児専門病院,および大学病 院や総合病院の看護部長に承諾を得て,参加者の条件に 小児がん看護においては,とりわけターミナルケアに 携わる看護師のストレスが高いとされ6),小児看護にお ける子どもの死は看護師の心的外傷経験のひとつとして も挙げられている7).加えて,子どものターミナルケア に携わる看護師は,担当した子どもや母親に「同一化」 する特異性があり,担当した子どもの死により「バーン アウト」を引き起こす可能性があることも指摘されてい る8).看護師のこのような不安定な精神状態は,死にゆ く子どものみならず,入院している他の子どもや家族へ の看護にも影響すると考える. 一方,大西9)は,成人期・老年期の患者を看取った看 護師への聞き取りから,悲嘆やバーンアウトを引き起こ す負の側面のみならず,ターミナルケアを実践している 看護師の人間的成長という正の側面があることを報告し ている.また,遺族ケアに関する聞き取り調査では,看 護師の悲嘆が小児領域における遺族ケアの必要性の意識 化とケア行動に結びつく10)とも報告されている.した がって,小児がんの子どもの死の経験においても,精神 的枯渇を生じる一方で,看護師の人間的な成長をもたら す側面があると考える. 近年,子どもの死を経験した看護師の感情に焦点を当 てた先行研究11)∼13)はみられるが,その体験を看護師の 態度変容という視点で捉えた研究は少ない.本研究にお いては,看護師の感情や考え方,ケア行動を看護師の 「態度」と捉えて,小児がんの子どもの死を契機とした 看護師の態度変容のプロセスを明らかにする.その知見 から,看護師の悲嘆からの回復や看護師としての成長へ の支援について示唆を得ることができると思われる. 表 1 研究参加者の概要 対象 年代・性別 看護経験年数小児がんの 受持ちの子どもとの死別回数 病棟での子どもとの死別体験 所属 A 20歳代・女性 4 1回 あり 総合病院 B 40歳代・女性 9 数回 あり 小児専門病院 C 40歳代・女性 9 約 10 回 あり 小児専門病院 D 20歳代・女性 6 なし あり 小児専門病院 E 40歳代・女性 4 約 10 回 あり 小児専門病院 F 40歳代・男性 4 2回 あり がん専門病院 G 30歳代・女性 11 10回以上 あり 小児専門病院 H 20歳代・女性 4 数回 あり 大学病院 I 20歳代・女性 5 なし あり 総合病院 J 40歳代・女性 8 10回以上 あり 小児専門病院 K 20歳代・女性 5 なし あり 小児専門病院 L 30歳代・女性 7 数回 あり 大学病院 M 30歳代・女性 5 数回 あり 大学病院4.倫理的配慮 新潟大学大学院研究倫理審査委員会の承認を得て実施 した(承認番号第 70 号).参加者には,研究目的と方 法,研究協力に関する自由意思の尊重,研究協力に同意 後も辞退可能なこととそれによる不利益はないこと, データの守秘性,結果公表時の匿名性の確保について, 書面と口頭にて説明し,同意を得た.
Ⅴ.結 果
分析の結果,41 の概念から 15 のサブカテゴリーと 6 つのカテゴリーが抽出された(表 2).以下カテゴリー は【 】,サブカテゴリーは《 》,概念は〈 〉,看護 師の語りは「 」で示す. 1.結果図とストーリーライン 小児がんの子どもを看護した看護師は,その子どもの 死によって【喪失の悲しみを抱える】.【喪失の悲しみを 抱える】には《悲しみに沈む》《後悔する》とともに, 初めて遭遇した子どもの死に対する《よく分からない感 覚をもつ》が含まれる.しかし,今,闘病している《子 どもの笑顔に救われる》《看護することで気持ちが落ち 着く》《つながっていると思う》という【関わりの中で の慰めを感じる】ことで,《悲しんでばかりいられない》 から《気持ちを切りかえよう》と,【喪失の悲しみを抱 える】に後戻りしながらも,【揺らぎつつ変えていく】. そして,《心の距離を縮めてケアにつなぐ》《場を整えて 親子の時間を大切に育む》《母親による手当てをケアに 組み込む》《新人の辛さを気遣い共にケアする》という 【生きられる時間を意識して技を尽くす】態度へと変 わっていく.反面,【闘病支援とターミナルケアの板ば さみに悩む】ことも少なくない.そのような看護の末の 子どもの死に対して,【生の限界を了解する】という,い わば死さえも承認する看護師の態度変容に至る(図 1). 2.カテゴリーの説明 【喪失の悲しみを抱える】 《悲しみに沈む》《後悔する》《よく分からない感覚を もつ》というサブカテゴリーで構成された.自らが看護 した子どもを失う悲しみであり,悲しみと同時にケアに 対する後悔がある一方,新人の頃には死そのものがよく 分からない感覚として残ることが含まれた体験を意味す る. 受持ちとして看護した子どもの死に,看護師は「ぼん やりして…情熱がもてない」で〈空しくなる〉〈あって はならないことと思う〉.病棟に行くと反射的に「A ちゃんのからだ拭きの時間」と思ったり,「空のベッド 該当する看護師の紹介を依頼し,同意が得られた参加者 に半構成的面接を行った.インタビューガイドのおもな 内容は,小児がんの子どもが亡くなった時の状況とその 時の思い,子どもの死を体験したことによる子どもの死 やターミナルケアについての考えやケアで心がけている ことなどである.面接は 1 人 1 回で,時間は 47∼97 分 であり,許可を得て IC レコーダーに録音した. 3.分析方法 修 正 版 グ ラ ウ ン デ ッ ド・ セ オ リ ー・ ア プ ロ ー チ (Modified Grounded Theory Approach,以下 M-GTA と記 す)の手法14)を参考にした.M-GTA は,人と人との社 会的相互作用のプロセスに焦点が置かれ,対象となる現 象がプロセス的性格をもつヒューマンサービス領域の研 究に適用されている . 本研究で扱う現象は看護師が子ど もとその親をはじめとして職場の人々との相互関係の中 で,子どもの死を体験して生じた感情・考え方・取り組 み方の変化の過程である.それは臨床実践に示唆を与え ると考えられ,分析手法として適すると判断した . 分析焦点者は「小児がんの子どもの死を体験した看護 師」とし,分析テーマは「小児がんの子どもの死に対す る看護師の気持ちの揺らぎとターミナルケアへの向き合 い方」とした.面接の逐語録をデータとし,①∼⑧の手 順で行った.①全データを丁寧に読み,分析テーマと分 析焦点者に照らして関連した具体例に着目し,その具体 例が分析焦点者にとってどのような意味をもつのかを考 え概念名を生成した.②その際,ワークシートを用い て,生成した概念とその定義,具体例を記入した.③ データを読みながら生成した概念が他の類似例も説明で きるかどうか,また対極例がないかを比較検討しながら 新たな概念を生成し,それぞれの概念の定義を複数の具 体例に共通した意味として記入した.④ワークシートに は理論的メモ欄を作成し,疑問や比較例,アイディアな ど, 思 考 の プ ロ セ ス を 記 録 し た. ⑤ 11 名 の イ ン タ ビューが終了した時点で,2 名の参加者の追加インタ ビューを行い,具体例の充実のみで新しい概念名が生成 されないことを確認した.⑥全例の分析終了後,個々の 概念を関係づけながら意味内容が類似している概念を集 め,サブカテゴリー,カテゴリーを生成した.⑦カテゴ リーの関係性を表す図を作成し,その関係性を簡潔に文 章化して,ストーリーラインを記した.⑧分析の過程に おいては質的研究および M-GTA の研究経験者から継続 的にスーパービジョンを受け,2 名の研究者間で繰り返 し検討するとともに,複数の教員と大学院生による検討 会で発表し,真実性の確保に努めた.表 2 カテゴリー・概念・定義一覧 カテゴリー サブカテゴリー 概念 定義 喪失の悲しみ を抱える 悲しみに沈む 喪失を実感する 空のベッドや空いた時間に,改めて子どもが亡くなった事実を思い知ること あってはならないこと と思う 未来をうばわれた子どもの死は受け入れがたく,あってはならないと思うこと 空しくなる 仕事を終えて独りになったときなどに,亡くなった子どもがふっと思い出され,空しくなること 気持ちをしまい込む 悲しみや罪悪感の気持ちを周囲に言わずに,自分の心の中に密かにもっていること 親の悲しみを思う 自分がこれだけ悲しいのだから,親の悲しみはいかばかりかと思うこと 後悔する 申し訳なく思う 力不足で重篤な子どもや親に対するケアを何もできなかったと申し訳なく思うこと 足を向けられなかった ことを悔いる 苦しむ子どもやその家族への対応に戸惑い,病室に足を向けられなくなること 心を通じ合えなかった ことを悔いる 子どもの本音がわからないまま,心を通じ合えなかったと悔いること 思いに沿えなかったこ とを悔いる 子どもの思いに沿った対応ができなかったことを悔いること よく分からない感覚 をもつ よく分からない感覚を もつ 子どもが亡くなった事実に「ピンとこない」と,よくわからない感覚をもっていること 悲しむ余裕もない 目の前のことに精一杯で,子どもが亡くなっても,その死を悲しむ余裕がないこと 関わりの中で の慰めを感じ る 子どもの笑顔に救わ れる 子どもの笑顔に救われる 病棟ではいつものように子どもたちの笑顔があり,その笑顔に慰められること 看護することで気持 ちが落ち着く 看護することで気持ちが落ち着く 気持ちが沈滞してはいるが,看護師としての責任から出勤して看護を続けながら,徐々に気持ちの落ち着いていくのを感じること つながっていると思 う 死が終わりではないと 感じる 遺族と一緒に悲しみを分かち合うことで,子どもの死が終わりではないと感じること 親の姿に励まされる 悲しみから立ち直ろうとしている親の姿に看護師が励まされたと感じること 感謝の言葉を嬉しく思 う 親からの感謝の言葉が嬉しく,悲しみが癒され,励まされること 気遣いを感じる 悲しみは自分 1 人が抱えているのではなく,同僚も先輩も同じように抱えており,気遣いを受けていると感じること 揺らぎつつ変 えていく 悲しんでばかりいら れない 悲しんでばかりいられ ない 辛い治療に耐えている子どもの姿を見て,悲しんでばかりいられないと思うこと 守りたい思いが湧き上 がる 小さい身体で苦痛に耐えている子どもたちを見ると,守りたい思いが湧き上がってくること 手助けしたい 命が短いのであれば,子どもや家族がよかったと思える最期を迎えられるように手助けをしたいという気持ちになること 遺されたメッセージに 応えたい 亡くなった子どもからいろいろなことを学び,その子どもから残されたメッセージに応えなければならないと思うこと 経験を活かしたい ターミナルケアの経験を振り返り,その経験を活かしたいと思うこと 不完全さを埋めたい ターミナルケアでできなかったことを振り返り,その不完全さを埋めたくて,1 つひとつできることを積み重ねていこうとすること できるようになりたい 自分の未熟さのためにもっとできるようになりたいと自発的に勉強をしたり,研修に参加するようになること 気持ちを切りかえよ う 気持ちを切りかえよう 良かったことやできた事を考えるようにして,気持ちを切りかえようとすること 生きられる時 間を意識して 技を尽くす 心の距離を縮めてケ アにつなぐ 子どもと心の距離を縮 める 子どもと心の距離を縮めるために,時間を大切にする,メッセージを伝える,1 人の人間として関わるケアを実践すること 子どもの思いをケアに つなぐ 子ども本人の思いに耳を傾け,あるいは察しながらケアにつなげたいと思うこと 親との信頼を築く 子どもの親から信頼を得られるように努力すること 場を整えて親子の時 間を大切に育む 親子が共に過ごせる場 をつくる 個室の準備,外泊の段取り,面会制限の解除など,子どもと家族が一緒に過ごせる環境を整えること 最期の過ごし方を共に 考える 最期の過ごし方について,親が納得のいく決断ができるように,親と共に考えていこうとすること きょうだいが抱く気持 ちにも配慮する きょうだいへの病児の病状説明や面会制限の緩和,そしてドナーとなったきょうだいへの心のケアなどのきょうだいに気遣いをすること 母親による手当てを ケアに組み込む 母親による手当てをケアに組み込む 重症で医療器械に囲まれた状態でも,抱っこや添い寝,清潔ケアなど,母親らしいことが出来るように工夫すること 新人の辛さを気遣い 共にケアする 新人の辛さを気遣い共にケアする 新人の看護師の大変さや辛さに配慮し,後輩とともに部屋を訪問し,共にケアをしようと心遣いをすること
とぽっかり空いた時間」に,「確かにそこに居た」子ど もの〈喪失を実感する〉.しかし,「弱みはみせられな い」と〈気持ちをしまい込む〉ことや,自分の悲しみに 重ねて〈親の悲しみを思う〉こともある.一方,受持ち を外された新人の頃は,「自分のことで精一杯」で〈悲 しむ余裕がない〉.「ピンとこない,テレビに近い感じ」 「本当に亡くなる子がいるんだ」という〈よく分からな い感覚をもつ〉.また,悲しみと同時に「何もできな かった」「もっと子どもの気持ちに気づけていたら」と 〈申し訳なく思う〉.そして,〈心を通じ合えなかったこ とを悔いる〉〈足を向けられなかったことを悔いる〉〈思 いに添えなかったことを悔いる〉という後悔の念にから れる. 【関わりの中での慰めを感じる】 《子どもの笑顔に救われる》《看護することで気持ちが 落ち着く》《つながっていると思う》というサブカテゴ リーから構成された.子どもや同僚,遺族との関係性の 中で看護師自身が支えられていると気づき,次第に慰め られていくことである. 病棟に行くと《子どもの笑顔に救われる》.「子どもた ちが元気をくれる」から《看護することで気持ちが落ち 着く》.「一緒にやってきた家族とは,亡くなってもお互 いに気にし合っている」ので〈死が終わりではないと感 じる〉.また,「母親がきょうだいを一所懸命育てている 姿を見ると自分も元気をもらえる」と〈親の姿に励まさ れる〉し,〈感謝の言葉を嬉しく思う〉.一方,「スタッ フがこんないいことあったよねとかって言ってくれて」 と同僚からの〈気遣いを感じる〉.そのような【関わり の中での慰めを感じる】ことで,子どもは亡くなったけ れども《つながっていると思う》. 【揺らぎつつ変えていく】 《悲しんでばかりいられない》《気持ちを切りかえよ う》というサブカテゴリーで構成された.【喪失の悲し みを抱える】に後戻りしながらも,【関わりの中での慰 めを感じる】ことで,沈んでいた気持ちが次第にほぐ れ,子どもを守りたい心情が高まって,一歩踏み出そう とひとつの区切りをつけることである. 看護師は後悔を残しているがゆえに「命を張って教え てくれたことだから」「子どもの死を無駄にしちゃいけ ない」「子どもたちが宿題を残してくれた」「自分の知識 や技術の不足で辛い思いをさせたくない」と考え,〈経 験を活かしたい〉〈遺されたメッセージに応えたい〉〈不 完全さを埋めたい〉〈できるようになりたい〉と思う. ただ,仕事が終われば「フッと自分の気持ちが落ちて る」時があり,悲しみに沈んでしまう.しかし,「がん ばっている子どもたちを見たら」「子どもや家族がよ かったと思える」ように〈手助けしたい〉と,〈守りた い思いが湧き上がる〉.それゆえ《悲しんでばかりいら れない》《気持ちを切りかえよう》と,自らの気持ちを 【揺らぎつつ変えていく】. 【生きられる時間を意識して技を尽くす】 《心の距離を縮めてケアにつなぐ》《場を整えて親子の 時間を大切に育む》《母親による手当てをケアに組み込 む》《新人の辛さを気遣い共にケアする》というサブカ テゴリーで構成された.子どもの死を契機に,闘病中の 他の子どもたちの生きられる時間を今まで以上に意識し て,辛い治療の中にも看護の技を使ってケアに心を尽く すことである. 子どもの死を経験した看護師は,その後悔から「時期 が厳しくなってからでは子どもとの距離は縮められな 表 2 カテゴリー・概念・定義一覧(つづき) カテゴリー サブカテゴリー 概念 定義 闘 病 支 援 と ターミナルケ アの板ばさみ に悩む 闘病治療に葛藤する 闘病治療に葛藤する ターミナルの時期に入ったのではないかと感じながらも,最期まで治 療する方針に従わなくてはならないことに葛藤すること 闘病治療に無力感を抱 く ターミナルケアができず,最期までつらい治療に耐えて亡くなることに無力感を抱くこと 時を逃すことに悩む 希望を叶えられる時を 逃す現実に悩む 親が回復の見込みがないと認識した時には,既に子どもの状態が悪化 していることが多く,子どもの希望を叶えられるタイミングを逃して しまうこと 子どもの不安に応えら れない葛藤がある ターミナル期で回復の兆候がなくても治療が続けられている子どもが抱く不安に応えられず,葛藤すること 家族を傷つけない言葉 選びに悩む 闘病の中,家族を傷つけないように言葉を選んで説明することが難しいと感じること 生の限界を了 解する 生の限界を了解する もう助けられないと思 う 子どもの死は不本意であるが,治療や蘇生に最善を尽くしても助けられない事実があることを認めること 苦しみからの解放に安 堵する 「あー,これで楽になったね」と苦痛からの解放に安堵すること子どもの苦痛を共に感じながら,必死で看護してきた末の死に, 私が送り出してあげる と思う 死が避けられない子どもを受け入れ,私が送り出してあげたいと思えたこと
図 1 小児がんの子どもの死を契機とした看護師の態度の変容過程 〈 〉 :カ テ ゴ リ ー :サ ブ カテ ゴ リ ー :変容の方向 :概 念 :対 立 :出来 事 :影 響 〈闘病治療 に 葛藤 す る 〉 〈闘病治療 に 無力 感 を 抱 く 〉 〈 希 望を叶 え ら れ る 時を逃 す 現実 に 悩 む 〉 〈 子 ど も の 不 安に応 え ら れ な い葛 藤 が あ る 〉 〈家族 を 傷 つ け な い 言葉選 び に悩 む 〉 〈 も う助 け ら れ な い と 思 う〉 〈苦 し み か ら の 解放 に 安堵 す る 〉 〈 私 が 送 り 出 し て あ げ ると 思 う 〉 〈 子 ど も と 心の距 離 を 縮め る 〉 〈 子 ど も の 思 い を ケアに つ な ぐ 〉 〈 親 と の 信 頼を築 く 〉 〈 悲 し ん で ば か りい ら れ な い 〉 〈 守 り た い思い が 湧 き 上 が る 〉 〈手助 け し た い 〉 〈 遺 さ れ た メ ッ セ ー ジ に 応え たい 〉 〈 経 験を活 か し た い 〉 〈不完全 さ を 埋 め た い 〉 〈 で き る よう に な り た い 〉 〈 死 が 終 わ りで は な い と 感 じ る 〉 〈 親 の 姿に励 ま さ れ る 〉 〈感謝 の 言葉 を 嬉 し く 思 う 〉 〈気遣 い を 感 じ る 〉 〈喪失 を 実感 す る 〉 〈 あ っ て は な ら な い こ とと 思 う 〉 〈 空 し くな る 〉 〈 気 持 ち を し ま い 込む〉 〈 親の悲 し み を 思 う 〉 〈 申 し 訳 なく 思 う 〉 〈 足を向 け ら れ な か っ た こと を 悔 い る 〉 〈 心を通 じ 合 え な か っ た こと を 悔 い る 〉 〈 思 い に 沿 え な か った こ と を 悔 い る 〉 〈 よく 分 か ら な い 感 覚 を も つ 〉 〈悲 し む 余裕 も な い 〉 〈親子 が 共 に 過 ご せ る 場所 を つ く る 〉 〈 最 期 の 過 ご し 方を共 に 考 え る 〉 〈 きょ うだ い が 抱 く気 持 ち に も 配 慮 す る 〉 闘病支援 と タ ー ミ ナ ル ケ ア の 板 ば さみ に 悩 む 生 き ら れ る 時 間を意 識 し て 技を尽 く す 生の限 界 を 了 解 す る 揺 らぎ つ つ 変 え て い く 関 わ り の 中 で の慰め を 感 じ る 喪 失の悲 し み を 抱 え る 闘病治療 に 葛藤 す る 時を逃 す こ と に 悩 む 悲 し ん で ば か りい ら れ な い 悲し み に 沈 む 後 悔 する よく 分 か ら な い 感 覚 をも つ 気 持 ち を切 り かえ よ う 心の距 離 を 縮め て ケアに つ な ぐ 場を整 え て 親 子 の 時 間 を 大 切に育 む 母 親 に よる 手 当 を ケアに 組 み 込 む 子 ど もの 笑 顔 に 救 わ れる 看 護 す る こと で 気 持ち が 落ち着 く つ な が っ て い ると 思 う 新 人の辛 さ を 気 遣い 共 に ケア す る 子どもの死
どもと向き合えた」から「私を選んでくれた」と感じ て,その子を〈私が送り出してあげると思う〉.「辛いの をみて,もうただただ,どうにもしてあげられないし, その子が亡くなった時に,心の中で,あぁ,これでもう 痛くないねって思った自分がいた時に,すごいハッとし たのを今でも覚えてて」「これで看護師になれた」と自 らの変化に驚きつつ,〈苦しみからの解放に安堵する〉.
Ⅵ.考 察
1.子どもの死と看護師の態度変容過程 子どもの死という出来事を看護師がどのように体験 し,その後のケアに対する考え方や取り組みにつながっ て行くのかは,【喪失の悲しみを抱える】【関わりの中で の慰めを感じる】【揺らぎつつ変えていく】【生きられる 時間を意識して技を尽くす】【生の限界を了解する】と いう過程を辿ると考えられた.そしてその過程には, 【闘病支援とターミナルケアの板ばさみに悩む】という 看護師の葛藤が表出された.これらの初期の過程におい ては,【喪失の悲しみを抱える】【関わりの中での慰めを 感じる】【揺らぎつつ変えていく】に特徴づけられるよ うに,悲しみを経験し,喪失の現実に対峙しながら,そ れを受け入れていく悲嘆の作業と重なる過程としても捉 えられた. これら態度変容の過程において,【喪失の悲しみを抱 える】という局面は,子どもの死からまだ日が浅く, 個々の看護師の悲嘆感情が強い局面であり,とりわけ 「空のベッドとぽっかり空いた時間」という言葉には, その悲しみがよく表現されている . 荒川11)は小児科の看 護師が受け持ちの子どもをわが子のような特別な存在と して捉え,母親のように強い悲嘆感情や自責の念をもつ と述べている.本研究における《悲しみに沈む》《後悔 する》にも,自責の念に近い一面があるが,それは,む しろ闘病治療のみでターミナルケアができなかったこと を〈申し訳なく思う〉心残りであると考えられた.そし て,看護師と患者との関係が親密であるほど喪失感が強 いといわれているように15)16),入退院を繰り返す子ども を看護してきた看護師からは〈空しくなる〉体験が語ら れた.子どもとの心の距離が近いだけ,喪失感が強いの は当然のことと思われる.他方,子どもの病状悪化で, 受持ちを外されることの多い新人の頃の子どもの死は 《よく分からない感覚をもつ》に特徴づけられた.看護 師とはいえ,子どもの死が人生最初の人の死との出会い であることも少なくない中で,「ピンとこない,テレビ に近い感じ」という感覚は,第三人称の死という譬えと い」「最期に一所懸命コミュニケーションとっても無理」 と考えて〈子どもとの心の距離を縮める〉,「本人がどう したいかに沿って」〈子どもの思いをケアにつなぐ〉.そ のためにも〈親との信頼を築く〉.そのように《心の距 離を縮めてケアにつなぐ》努力をする.「あの子たちは なにより家族と一緒にいることで幸せを感じている」か ら〈親子が共に過ごせる場所をつくる〉.「寂しい思いを している」〈きょうだいが抱く気持ちにも配慮する〉. 「気持ちを大事に」「一緒に決める手伝い」をしながら 〈最期の過ごし方を共に考える〉という《場を整えて親 子の時間を育む》.母親から「抱っこできる?」「お風呂 に入れなくてかわいそうと言われた」ことがきっかけ で,母親が抱っこや添い寝,からだ拭きができるように 《母親による手当てをケアに組み込む》.先輩看護師とし ては子どものそばに行けない《新人の辛さを気遣い共に ケアする》.それは「気持ちの面で支えてあげることで ケアがもっと向上したらいいなって思う」からである. 【闘病支援とターミナルケアの板ばさみに悩む】 《闘病治療に葛藤する》《時を逃すことに悩む》という サブカテゴリーで構成された.きつい治療に耐えて良い 兆しがみえない中,それでも治療が継続され,ターミナ ルケアができない現状に葛藤することである. 看護師は,両親と医師の方針である《闘病治療に葛藤 する》.「ターミナル期は長くてもターミナルケアは短 い」「何もしてあげられなかった」と〈闘病治療に無力 感を抱く〉.「親御さんとこの子がもうお別れだと共有で きるのは最期の数日で,最期の数日になんとか間に合わ せなければならない」が「意識がなくなった後にしか ターミナルケアはできない」と〈希望を叶えられる時を 逃す現実に悩む〉.子どもには「死にたくないと言われ ても,頑張ろう,大丈夫」と励ますしかなく,〈子ども の不安に応えられない葛藤がある〉.両親には「亡く なった後にもっとこうしてあげたかったと思ってほしく ない」が,「今しかできないことがあると伝えることで 傷つけてしまう」こともある .〈家族を傷つけない言葉 選びに悩む〉結果,子どもの希望を叶える《時を逃すこ とに悩む》ことになる . 【生の限界を了解する】 カテゴリーと同格のサブカテゴリーで構成された. 【生きられる時間を意識して技を尽くす】ことに努めた 末の死に対して,いわばこれで良いと了解する境地にな ることを意味する. 「経過を追ってたくさん関われて,だんだん受け入れ ていく,しょうがないのかなって」「ありのままを受け 止めて」,〈もう助けられないと思う〉.「自分が本当に子看護を提供するにあたり,看護師の価値観を現実のもの とし,個人的な意味を伝えることであると述べている. 《新人の辛さを気遣い共にケアする》は,辛くても親子 の傍に行って,看護の技を駆使することの重要性とその 意味を理解している先輩看護師による新人看護師への気 遣いであり,Wengström らが述べるアートに通じるも のと思われる.このような先輩から後輩への看護の心と 技の伝授が,子どものターミナルケアの質を支えている といえる. 【闘病支援とターミナルケアの板ばさみに悩む】は, 【生きられる時間を意識して技を尽くす】に対立する概 念として捉えられた.つまり【喪失の悲しみを抱える】 時点において「何もできなかった」と《後悔する》気持 ちは,「子どもの死を無駄にしてはいけない」とその後 のケアにつながる一方で,広瀬20)が述べるように,悲し みや後悔そのものは容易には消えず,各局面を辿りなが ら【生きられる時間を意識して技を尽くす】際に葛藤と して表出されると思われた . 治癒が難しい状況の中で, なお治療が継続されることに看護師が悩む局面であり, 子どものターミナルケアにおいては治療の中止が容易で はないことを示している . 【生の限界を了解する】という局面は,子どもの死の 瞬間もしくは死後であり,そこでは【喪失の悲しみを抱 える】ことになる.しかし,子どもの看護に自らを投 じ,【生の限界を了解する】に至った看護師は,《悲しみ に沈む》《後悔する》とともに〈苦しみからの解放に安 堵する〉という両価的な感情をもつと推測されるのであ る.このような両価的な感情をもつことは,荒川12)が述 べるように「やれることをやった実感」として看護師の 心の支えとなり,その後のケアに繋ぐための重要な要素 になると考える.一方,〈もう助けられないと思う〉は, 子どもの変わりゆく姿を見て,自らの無力を悲しみつつ 死を受け入れる局面といえるかもしれない.また,村上21) が死への立ち会いを可能にするのは「ドライさ」である 旨を述べているが,〈私が送り出してあげると思う〉は, 「ドライさ」というよりも,保坂8)が看護師は子どもや母 親に同一化すると指摘するように,子どもを引き受け護 るという,子どもの苦しみに添う中での母性的な感情の 表れとも考えられる.それだけ技を尽くすことに親身に なっていたということであり,【生の限界を了解する】 は,いわば子どもと一体になって子どもの苦しみをわが 身の痛みとして感じ,死をも承認するという看護の境地 といえる . それは,今,子どもが実感している苦痛を看 護師が感じているように感じていること,すなわち共感 であり,単に知的に理解することとは異なっている . 子 も異なり,メディアを媒介とした不特定他者の死と同様 の感覚にも似ている.しかし,それは「受持ちを外さ れ,子どもの最期を看護できなかった」という条件のも とでの死である. 【 関 わ り の 中 で の 慰 め を 感 じ る 】 と い う 局 面 は, Conte16)が,患者や他の看護師とのつながりの感覚が喪 失の悲しみを和らげると述べているように,【喪失の悲 しみを抱える】から【揺らぎつつ変えていく】過程にお ける態度変容の要因としての意味が強く,関係性の中に 自らが置かれていることの重要性を示すものである.同 時に大西9)17)が,患者や家族との相互関係から看護師自 身も力や癒しを与えられていることに気づくことで,ケ アを続けていくことができると述べているように,むし ろ日常の看護に戻り,子どもの笑顔に力を与えられてい ると感じること,それ自体が重要であり,態度変容の一 過程としても理解されるものである . このような中で, 看護師は【喪失の悲しみを抱える】に後戻りしながら も,悲しみの感情を【揺らぎつつ変えていく】.そして, 亡くなった子どもに注がれていた力が,少しずつ闘病し ている他の子どもとの新しい関係に注がれていく. 【生きられる時間を意識して技を尽くす】は,点滴の ラインに繋がれ,医療機器に囲まれていても,わが子を 胸に抱いてやりたい母親の願いを叶えるために工夫をし て行われた看護実践であり,一瞬でも親子が親子である ことの温もりと喜びを感じられたのなら,それはサイエ ンスを超えたアートとしての看護の技であり,親子で居 られる時間が限られていることを承知しているからこそ の技の駆使とも理解される.一方,上山18)が,緩和ケア 病棟に携わる看護師の捉える「よい最期」は,患者の症 状がコントロールされ,患者が家族に囲まれて過ごすこ とであった旨を報告しているが,小児看護においては, 子どもが成長発達の過程にあるため,むしろ,親の意向 を聞きながら,親にとってのよい看取りの実現を志向し ているといえる.しかし,「もっと子どもの気持ちに気 づけていたら」と後悔が語られたように,子どもが病気 をどのように捉え,何を望んでいるのかについて分から なければ,看護師が実際のケア行動に移すことは難し い.《心の距離を縮めてケアにつなぐ》は,「時期が厳し くなってからでは子どもとの距離は縮められない」とい う看護師の経験知であり,《心の距離を縮めてケアにつ なぐ》ためには,その最初の出会いから,短くても同じ 時間を共有する努力を継続することが重要であると示唆 される.そのような関わり方をしながら子どもの希望を 知る手がかりをつかむことが,看護の技につながってい く.また,Wengströmら19)は,アートとしての看護とは
が,未来を想起させる子どもの成長を間近で感じられる ことは小児看護の特権であると述べているように,子ど もの死によって看護師自身が大きく揺さぶられても,小 児病棟には子どもの笑顔があり,軽快して退院する子ど もや退院後に成長した姿を見せてくれる子どもたちの存 在がある . また,お別れ会への参加や遺族の訪問という 亡くなった子どもとのつながりを感じる機会もあり,そ れ自体が支えになる.小児病棟の空間性と関係性は,看 護師を支え,悲嘆からの回復の助けになると示唆され る . そのような中で,看護師は【生の限界の了解】に至 る変容を遂げる . そこには,看護師として子どもととも に苦しみ,【闘病支援とターミナルケアの板ばさみに悩 む】という情緒的体験に巻き込まれながらも,技を尽く してやり遂げた安堵がある.しかし,この情緒的体験が 勝れば,看護師としては不全感が強く残ると考えられ, 悲嘆からの回復および看護師としての成長のためには, ストレスが大きくても「ターミナルケアができること」 が重要と思われる. 今後は,子どもの死による悲嘆からの回復のために必 要な,看護師への精神的支援の方法に関する研究と, 【生きられる時間を意識して技を尽くす】という先輩か らの技の伝授を含めた,「ターミナルケアができる」た めの技術的・教育的支援の方法に関する研究への取り組 みが課題である.
Ⅶ.結 論
子どもの死を契機とした看護師の態度変容過程は,関 係性の中に身を置くことで,初期には悲嘆からの回復過 程を辿りながら変わり,闘病支援に葛藤しながら技を駆 使して,最終的に死をも承認する局面へと変容する過程 として理解された.それは看護師の成長の過程として捉 えることができるものであった. また,板ばさみに葛藤する看護師のありようは,積極 的な治療からの「ギアチェンジ」が難しい子どものター ミナルケアの特徴を表していると考えられた.それは人 間として等しく,子どもが子どもらしく生きられるよう に看護したいという看護師の願いの表出としても捉えら れた.さらに本結果は,新人であってもターミナルケア に関わることの重要性と,【生きられる時間を意識して 技を尽くす】ための,先輩からの技の伝授も含めた技術 的・教育的支援の重要性,看護師が悲嘆から回復し,成 長の過程を辿るための,子どもや同僚,遺族との関係を 重視した精神的支援の必要性を示唆するものであった. どもとこのような関係をもつことができるようになった 瞬間を,看護師としての態度変容の最終局面であると考 えた.つまり,これら態度変容の過程は,子どもの死を 契機とした看護師の成長の過程としても理解できた. 2.板ばさみが意味すること 成人の場合は,がんの積極的治療からターミナルケア への転換として,従来から「ギアチェンジ」という言葉 が用いられてきた22).最期まで治療を諦められない親の 思いに沿うことや,医師の治療方針に従って闘病支援す ることが看護師の葛藤として語られたように,とりわけ 子どもの場合は「ギアチェンジ」が容易ではない . 加え て,小児がんの治療には,それに伴う副作用や合併症に よって急な状態悪化を引き起こし,突然,死の転帰をと る子どももおり23),「ギアチェンジ」の時期を逃すこと も多いと思われる. しかし,改善の兆しがない中で,看護師が「頑張ろ う,大丈夫」と嘘をつかざるをえない状況は,子どもと の間の溝を深め,子どもの思いに沿うことを難しくす る.名古屋ら24)が,「bad news」を子どもに伝えること が難しい現状は,ターミナルケアの障壁となる旨を述べ ている.一方,子ども自身は命の危うさを察知し,親に も言えない不安や恐怖を抱えているという報告25)もあ る.このように,子どもや親に如何に治療の限界を伝え るかは,なお解決すべき重要課題といえる.【闘病支援 とターミナルケアの板ばさみに悩む】という看護師の葛 藤は,たとえ短い人生でも,人間として等しく,子ども が子どもらしく生きられるように看護したいという看護 師の願いの表出であり,それができないがゆえの葛藤と 考えられた.医療者と子どもの親とが,今,子どもに何 をするべきか,子どもが何を望んでいるのかについて, 生きられる時間を意識しながら話し合い,共に考えるこ とができれば,少なからず子どもの身体と心に添う判断 と選択がなされるのではなかろうか. 3.悲嘆からの回復と看護師としての成長への示唆 原26)は,「キャリア初期の看護師にとって患者の死を 体験することは大きな衝撃を伴うが,それによって看護 師はその体験の意味を吟味しながら,真摯に患者に向き 合うようになる」として,専門職としての成長には,患 者の死の体験が欠かせない旨を述べている.特に子ども の死を経験する機会は希少であり,子どもの死を通して 看護師の態度の変容につながるという本結果は,小児看 護においても新人の頃から,ターミナルケアを経験する ことが重要であると示唆される.新人の頃は,精神的動 揺に加え,技術も未熟であるが,先輩のもつ技を後輩に 伝授する貴重な機会になると考える.また,内藤ら27)14) 木下康仁.グラウンデッド・セオリー・アプローチの実践― 質的研究への誘い.東京,弘文堂,2003
15) Rickerson EM, Somers C, Allen CM, et al. How well are we caring for caregivers? Prevalence of grief-related symptoms and need for bereavement support among long-term care staff. Journal of Pain and Symptom Management. 30 (3), 227 233 (2005) 16) Conte TM. The Lived Experience of Work-Related Loss and
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19) Wengström Y, Ekedahl M.The art of professional development and caring in cancer nursing. Nursing & Health Sciences. 8 (1), 20 26 (2006) 20) 広瀬寛子. がんで家族を亡くした人たちのためのサポート グループの経験から .サイエンスとアートとして考える生 と死のケア.小山千加代編.東京,エム・シー・ミューズ, 2017, 133 146 21) 村上靖彦.摘便とお花見:看護の語りの現象学(シリーズ ケ アをひらく).東京,医学書院,2013, 262 294 22) 高宮有介.ギアチェンジの動向と問題点―特集 ギアチェン ジ:治療から緩和ケアの中心に移るとき.ターミナルケア. 11 (3), 173 176 (2001) 23) 松岡真里.白血病の子どもの End-of-Life ケア どんなときも 子どもらしく を支えるために.小児看護,36 (8),1134 1140 (2013) 24) 名古屋祐子,塩飽 仁,鈴木祐子,他.看護師が抱く子ども の終末期ケアを行う上での障壁と困難.日本小児看護学会誌. 23(3), 49 55 (2014) 25) 杉山智江,佐鹿孝子.小児がんの子どもがターミナル期に病 気の予後や死の不安・恐怖を「語り」始めた瞬間(とき)か らの看護師の関わりのプロセス.日本小児看護学会誌.23 (2), 1 9 (2014) 26) 原 美鈴. 看護師と 死 ―看護職のキャリア形成の視点か ら― .サイエンスとアートとして考える生と死のケア.小山 千加代編.東京,エム・シー・ミューズ,2017, 179 188 27) 内藤茂幸,吉田澄恵,佐藤紀子.小児病棟の中堅看護師が仕 事 を 続 け て き た 原 動 力. 日 本 看 護 管 理 学 会 誌.18(2), 103 113(2014) 謝 辞 本研究にご協力いただきました看護師の皆様に深く感謝申し上 げます. 本研究の要旨は,第 36 回日本看護科学学会において発表した. 利益相反 本研究における利益相反は存在しない. 文 献 1) 国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報セン ター.小児がんの割合.2016,http://ganjoho.jp/child/dia_tre/ about_childhood/about_childhood.html (参照 2017-07-25) 2) 厚生労働省.がん対策推進協議会(小児がん専門委員会)議 事録.2011, http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001ni7l. html (参照 2016 02 25) 3) 厚生労働省.平成 28 年人口動態統計年報.第 8 表 死因順位 , http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei16/index. html(参照 2016 04 04)
4) Knapp C,Woodworth L, Wright M,et al. Pediatric palliative care provision around the world:a systematic review. Pediatric Blood & Cancer. 57 (3), 361 368 (2011) 5) 日本小児がん看護学会.小児がん看護ケアガイドライン 2012.宮澤印刷,2013 6) 山内朋子,筒井真優美,松尾美智子,他.小児看護領域で働 く看護師のストレスや感情に関する文献検討.日本小児看護 学会誌.18 (1), 127 134 (2009) 7) 新山悦子,小濱啓次,塚原貴子,他.看護師の職場における 心的外傷反応の低減に認知が及ぼす影響.川崎医療福祉学会 誌.15 (2), 583 594 (2006) 8) 保坂 隆.小児のエンドオブライフケアに関わるスタッフの ソーシャルサポート.小児がん看護.4, 60 65 (2009) 9) 大西奈保子.ターミナルケアに携わる看護師の態度と悲嘆・ 癒しとの関連.東洋英和大学紀要.2, 89 100 (2006) 10) 大久保明子.子どもを亡くした遺族のケアを体験した看護者 の認識と行動.死の臨床.38(1), 154 159 (2015) 11) 荒川まりえ.看護師が抱く子どもの死に対する思い―ターミ ナルケアの経験から.東京女子医科大学看護学会誌.5(1), 11 19 (2010) 12) 荒川まりえ.看護師が子どもの死を心に受けとめる際に関 わったこと.日本小児看護学会誌.20 (1), 9 16 (2011) 13) 渕田明子.子どもの看取り経験のつみ重ねによる看護師の思 いの変化とその影響要因.小児がん看護.7, 17 27 (2012)
Abstract
Process of Attitude Changes in Nurses Who are Witness to the Deaths of Children with Cancer* by
Akiko Ohkubo** 1),Tikayo Koyama** 2)
The purpose of this study is to clarify the process of attitude changes in nurses who are witness to the deaths of children with cancer.
The subjects were 13 nurses with experience in witnessing the deaths in witnessing children with cancer. Data was analyzed with the Modified Grounded Theory Approach.
The process goes from feeling the sadness of loss, experiencing solace in relationships, making changes even with fluctuating feelings and demonstrating the art of nursing by being aware of the time that the child has left and accepting the limits of the patient s life. This process also revealed the nurses conflict in worrying about the dilemma between providing support to fight the illness, and terminal care. With the initial experience of the death of a child, nurses make changes, while going through the recovery process from grieving, by being involved in other relationships with the people around them. Nurses then feel conflict in providing support to fight the illness while making use of the art of nursing, and transitions to a phase of finally accepting the death. This process was regarded as a growth process for nurses.
These results suggested the importance of nurses including those who had newly graduated in terminal care for children and continuing to care for patients right until the end, and the necessity of mental support and techni-cal and educational support for nurses involved in terminal care.
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Akiko Ohkubo. Niigata College of Nursing
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Key words: childhood cancer, death , nurse, attitude change from
** 1)Niigata College of Nursing