2005.10.22(土)
環境基礎実験
環境システム学科
1年 必修
担当者:岩見,宮脇,伊藤,大島
4-1 標準液の調製と標定
滴定とは, 溶液の反応体積を測定して定量分析を行う方法 ・定量しようとする物質の溶液、 ・この物質と反応する物質の濃度既知溶液(標準液) を用意し、ビューレットを用いて滴定を行う。 容量分析において標準液は分析の基礎 その濃度は十分正確である必要 大体の濃度の溶液を調整し、その溶液の規定度係数を定める。この溶 液の濃度を正確に決定する操作を標定といい、係数をファクターという。 ファクター f = 理論上の標準液の容積 実際に使用した標準液の容積 一般に規定度係数は標定に使用した溶液の容積と理論上の規定 液の容積との逆数で示される。4-2 塩化物イオンの定量
塩素について ○硝酸銀による滴定法 ○イオン電極法(定量範囲:5~1000mg) ○イオンクロマトグラフ法(0.1~25mg/L) ○重量分析 など Cl-の 測定方法 ○塩素は還元されると塩化物イオンとなる ○自然水には塩化物イオンが多少含まれているが、生活排水、 産業排水中にも塩化物イオンは多く含まれ、塩化物イオンがこ れらを原因として増えたとき水は汚染されたことを示す ⇒塩化物イオンは汚染のひとつの指標となる その他 ○悪臭物質や発ガン物質などの副生成物を生成する 問題点 ○微量でも殺菌効果が高い ○経済性がよい ○残留性があり殺菌効果が持続する 利点硝酸銀による滴定法
沈殿滴定法 目的物質と作用して定量的に沈殿を生ずる物質を標準液とし て用いる容量分析法 標準液中の成分すなわち沈殿剤は目的物質が存在する間は 沈殿に消費されるが等量点に達すれば液中の濃度が急速に 上昇する。 その点を沈殿剤に反応する指示薬で認識すれば目的物質を 定量分析できる。指示薬の違いによる方法がいくつかある。1. Fajans法:ファヤンス法(JIS法)
変色にはある程度の量の塩化銀の存在が必要なため、定量限界 1mg(20mg/L)程度である。 硝酸銀は塩化物イオンと反応して沈殿を生成する。滴定の終点を決定する指示 薬としてウラニン(フルオレセインナトリウム)を用いる。 塩化ナトリウムの溶液に硝酸銀を加えた とき、塩化銀が生成される。NaCl + AgNO3 → AgCl + NaNO3
形成された塩化銀は溶液中に過剰に存 在する塩化物イオンをその表面に引きつ ける傾向がある。 (AgCl)・Cl-:Ag + Cl-が過剰の場合 NaCl量 AgNO3滴定量 AgCl生成量 過剰に存在 AgNO3を徐々に加える NaCl量 AgNO3滴定量 AgCl生成量 過剰に存在 銀イオンが過剰になるまで硝酸銀を加え ていくと銀イオンが塩化物イオンを置き換 えて、正に帯電する。 (AgCl)・Ag+:Cl- Ag+が過剰の場合 このときウラニンを加えておくと、ウラニンは弱い有機酸であり陰イオンを電離 し、このfluor-によって蛍光性の黄緑色をしているが、反応液中のNO 3-よりも 吸着力が強いので、先に帯電粒子にこのfluor-が吸着され、その特性として 蛍光性のないピンク色に変色する。
(AgCl)xAg++ fluor-→ (AgCl)xAg+fluor-
蛍光性黄緑色 ピンク色 NaCl量 AgNO3滴定量 AgCl生成量 Ag+が過剰 C O HO OH O CO C O OH COO- O +H+ 過剰に存在 fluoresein fluor- 図 フルオレセインの構造式
Cl-が過剰の場合 Ag+が過剰の場合
(AgCl)xAg+ + fluor- → (AgCl)xAg+fluor-
蛍光性黄緑色 ピンク色 fluor-はコロイド状の塩化銀に 吸着されることはない。 粒子表面に吸着され、変色する この変色に要する銀イオンの過量は微量でよいので吸着色の発現点と終点と してこの滴定が成立する。 (AgCl)・Cl- fluor- (AgCl)・Ag+ (AgCl)xAg+fluor- fluor- 吸着力 : fluor->反応液中のNO 3- 《参考》 ○コロイド イオンはその直径が数オングストローム単位(10-8cm)である。イオン積が その溶解度積定数を超えるとイオンは互いにくっつき始めて結晶格子を形成 し、大きく成長したときは重力の作用によって容器の底へ沈降していく。一般 に、粒子はその直径がほぼ10-4cm以上になったとき沈殿物として溶液から沈 降していく。粒子はその成長過程で必ずコロイド領域を通過し、その直径が約 10-4~10-7cmの粒子をコロイドとよぶ。 NaCl Cl- Na+ Cl- Cl- Cl- Cl- Cl- Cl- Cl- Na+ Na+ Na+ Na+ Na+ Na+ Na+ 図2 コロイド粒子 一般にコロイド粒子はそれを構成してい る同種のイオンを吸着して帯電する傾向 がありこの帯電粒子がさらに反対電荷の イオンを二次的に吸着して電気的二重層 を作る性質がある。沈殿とはそれを構成 しているイオンと不溶性の化合物を作る イオンを最も強く吸着する傾向がある。 よって塩化銀の沈殿は、ナトリウムイオン または硝酸イオンよりも銀イオンまたは塩 化物イオンをより強く吸着する。 溶液中のイオン(10-8cm)→コロイド粒子(10-7~10-4cm)→沈殿物(>10-4cm)
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pHの影響
フルオレセインは弱酸であるから水素イオンが増大すれば電離が抑制されて fluor-の濃度は非常に低くなるので、変色は認められない。 また、強アルカリ性ではAgNO3からAgOHが生じさらにこれがAgOとなって沈殿 して滴定ができなくなる。 よって、液性はフルオレセインの場合は中性から弱アルカリ性(pH7~10)が適 している。 C O HO OH O CO C O OH COO- O +H+ fluoresein fluor- 図 フルオレセインの構造式 右から左へ反応が進む H+が 増大・反応液の濃度
吸着色の発現はコロイド性粒子の吸着力によるので塩化銀をコ ロイド性粒子として生成させることが必要である。 濃度が高いとコロイドは凝結する恐れがある。沈殿が凝結して大 きな粒子になったり、フラスコの底に沈むことがあってはならない。 塩化銀の沈殿はデキストリンのような物質が存在しないかぎり当 量点において凝結してしまう。つまり、デキストリンは保護コロイド として作用する。 《注意》 硝酸銀は分解して暗色なるので遮光して保存する。指示薬を吸着したAgCl は感光性がより強くなるので直射日光を避け、よく振りませながらできるだ け短時間に行う。・塩化物イオンの算出
反応式より塩化物イオン(Cl-)は硝酸銀(AgNO
3)と1:1(1mol:1mol)で反応する。
NaCl + AgNO3→ AgCl + NaNO3
塩素の分子量は35.45だから、40mmol/Lの硝酸銀を1ml滴下したとき、 40mmol/L×0.001L×35.45g/mol=1.418mg の塩化物イオンと反応しているということになる。 したがって硝酸銀の滴下量aからその試料に含まれる塩化物イオンの量がわか る。 a×f×1.418mgCl- (f:ファクター) それがVml中に含まれているので求める塩化物イオン濃度は a×f×1.418×1000/V から求められる。 クロム酸カリウム(K2CrO4)を指示薬とする方法である。この方法ではクロム 酸銀の赤色沈殿が生じはじめる点を滴定の終点とする。 複数のイオンに他のイオンが反応して共に沈殿をつくるとき、溶解度積の小さ いほうの沈殿がある程度で生成した後、溶解度積の大きいほうの沈殿も生じは じめる。溶解度積の差が大きいほど完全に分別する。 塩化ナトリウム溶液にクロム酸カリウム溶液を少量加えておき、硝酸銀溶液を 滴定すると塩化銀はクロム酸銀より難溶(溶解度が小さい)であるから塩化銀が 先に沈殿する。
NaCl + AgNO3 → AgCl↓ + NaNO3 (溶解度1.9×10-3g/L,25℃)
白色沈殿
塩化物イオンが塩化銀の白色沈殿として沈殿し終わった後、クロム酸銀の赤褐 色の沈殿が生じはじめる。
K2CrO4+ 2AgNO3→ Ag2CrO4↓ + 2KNO3(溶解度2.9×10-2g/L,25℃)
黄色 赤褐色沈殿
・pHの影響
クロム酸カリウムの指示薬作用は溶液の酸性が強くなるにしたが い感度が悪くなる。それは酸性溶液中ではHCrO4-がごくわずかに しか解離しないのでクロム酸イオンの濃度は減少する。さらにクロ ム酸水素イオンは二クロム酸イオンと平衡関係にある。 2H++ 2CrO 42- 2HCrO4- Cr2O72-+ H2O逆にアルカリ性になるとAgNO3からAgOHが生成し、さらにAg2Oに なって沈殿し滴定ができなくなる。
NaOH + AgNO3→NaNO3 +AgOH → NaNO3 + 1/2(Ag2O+H2O) よってモール法はpH6~10の間である必要がある。 《注意》 クロムは-2~+6までの酸化数をとるがクロム(Ⅲ)とクロム(Ⅵ) の化合物が自然界に存在する。クロム酸カリウムのクロムは6 価のクロムであり、これは酸化力が強く、有害性が高い。中毒 性もあり、水質汚濁防止法に基づく排出基準が設けられており (2mg/L以下:生活環境項目)、そのまま流し捨ててはいけない。 その取り扱いには注意が必要である。 クロム酸銀の赤褐色沈殿が認識できる程度に生成するためには、等量点か らさらに若干の硝酸銀が必要である。そのため、実用分析ではブランク試験 を行って滴定値を補正する必要がある。
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塩化物の算出
反応式より塩化物イオンは硝酸銀と1:1 (1mol:1mol)で反応する。 AgNO3≡Cl- 0.01mol/Lの硝酸銀を1mL滴下したとき 0.01×0.001×35.45=0.0003545g=0.3545mg の塩化物と反応しているということになる。 したがって硝酸銀の滴下量からその試料に含まれる塩化物イオン の量がわかる。 a×f×0.3545mgCl- (f:ファクター) それがVmL中に含まれているので求める塩化物イオン濃度は a×f×0.3545×1000/V から求められる。 イオン電極法とは、特定のイオンに選択的に感応して電位差 を発生する電極(ここでは塩化物イオンに感応する塩化銀の固 体結晶膜を使用した塩化物イオン電極)を用いて測定する方法 である。 この方法では硫化物などが妨害する。定量範囲は塩化物イ オンとして5~1000mg/Lである。 イオン電極と照合電極を試料溶液中に入れ、両電極間の電 位差の測定により行われる。 内部液は一定濃度の目的イオンを含む溶液で内部電極には 銀―塩化銀電極やカロメル電極外部電極にはカロメル電極が 用いられる。 内部電極|内部液|感応膜 |試料液|外部照合電極 イオン電極イオン電極法
電位は次の金属-金属イオン間の電子移動反応によって生ずる。 Ag+ + e ⇔ Ag しかし銀イオンの濃度は、AgClの溶解度積を通して塩化物イオン 濃度に寄与される。 AgCl + e ⇔ Ag + Cl- 緩衝液を加えてpHを調節しイオン強度を一定とした溶液で、測定 対象イオンの標準液による電位差と、試料による電位差とを比較 すれば、試料中のイオンのモル濃度が求められる。 電極法は簡単で迅速に正確な測定値が得られる。 《注意》 • イオン活量はその溶液のイオン強度に影響を受けるので測 定に際してはイオン強度をできるだけ一定に保たなければな らない。 • 共存イオンの種類や濃度が影響及ぼすことがあるので、試 料の液性について事前に調べ前処理などが必要になる。 実験の課題 電子天秤の使用方法を学び,標準液など試薬の調製を行う。ま た既知濃度の溶液を用いて調製した試薬の標定を行う。具体的 には実験7で使用する0.01mol/L硝酸銀溶液を調製する。 [試薬] 0.01mol/L硝酸銀、0.01mol/L塩化ナトリウム、クロム酸カリウム [使用機器など] 上皿電子天秤、薬さじ、薬包紙、純水、メスフラスコ、ビーカー、ガ ラス棒、ビュレット、ホールピペット、試薬ビン、メスシリンダー
実験6 標準液の調製と標定
[試験操作] 0.01mol/L硝酸銀溶液作成 硝酸銀0.34gを量り取り、少量の水に溶かし、200mLメスフラスコに 移し、水を標線まで加える(注意:遮光保存)。 0.01mol/L塩化ナトリウム液作成(今回の実験では準備済み) 塩化ナトリウムを600℃で約1時間加熱した後、デシケーター中で放冷する。この 塩化ナトリウムを0.304g取り、少量の水に溶かし、500mLメスフラスコに移し、水 を標線まで加える。 クロム酸カリウム溶液作成(今回の実験では準備済み) クロム酸カリウム(K2CrO4)50gを少量の蒸留水に溶かした後、これに僅かに赤 色の沈殿が生じるまでN/100硝酸銀溶液を加えて濾過し、そのろ液に蒸留水を 加えて1Lとする(注意:遮光保存)。少なくとも一昼夜放置した後、濾過する。 標定操作 ①調整した0.01mol/L硝酸銀溶液をビーカーを用いて、ビュレットに 入れる。 ②調製した塩化ナトリウム溶液を20mlホールピペットでビーカーに 取り、純水を加えて液量を約50mlにする。 ③クロム酸カリウム溶液1,2滴を加え、静かにかき混ぜながら 0.01mol/L硝酸銀溶液で滴定する。黄緑色が消失してわずかに 赤くなったときを滴定の終点とする。 ④次の式によって0.01mol/L硝酸銀溶液のファクター(f)を算出する。 f=20/A A:滴定量(mL)
実験の課題 各種環境試料の塩化物イオン濃度を調べる。 塩化物イオン測定の意義:塩素イオン自体は特に有害物質では ない。塩化物イオンは,他の汚染物質と同時に存在することが多 く,環境調査などで良く測定される。公定法はJISが多く用いられる が,今回は低濃度の塩素イオンの定量時の測定法を実施する。 1.滴定法による塩素イオン測定 [試薬] 0.01mol/L溶液硝酸銀溶液、クロム酸カリウム溶液 [試料] 河川水、海水、水道水、雨水、純水 [使用機器など] ビュレット、ホールピペット、メスシリンダー、磁製ビーカーまたはコ ニカルビーカー、ビーカー、ガラス棒、安全ピペッター