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脳性麻痺 理学療法診療ガイドラインを使うために

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(1)理学療法学 第 524 42 巻第 6 号 524 ∼ 529 頁(2015 年) 理学療法学 第 42 巻第 6 号. 講  座 シリーズ 「エビデンスに基づく理学療法 ―理学療法診療ガイドラインを読み解く―」. 連載第 8 回 脳性麻痺 理学療法診療ガイドラインを使うために. *. 中   徹 1). はじめに. 経過によって変化しない,すなわち属性に近い臨床像を 導く評価を示す。この評価の確定により,長期的予後や.  2011(平成 23)年に日本理学療法士協会より出され. 介入の基本的な方向性が決定するため,より正確な評価. た「脳性麻痺 理学療法診療ガイドライン第 1 版」を利. が求められる。. 用しやすいようにまとめた。臨床場面での活用を図るた. ①定義・診断(A). め,ICF を意識して項目立てや順序を若干入れ替えてい ることをご了承いただきたい。   こ の 総 説 を 一 読 い た だ け れ ば, 第 1 版 が 出 さ れ た 2011 年当時のエビデンスに基づく推奨レベルが一目瞭 然であり,具体的な利用方法も提示したので,一層ガイ ドラインの「利用=使う」が促進されるものと期待して いる。また,2015 年の現状を踏まえた今後の課題にも ふれ,将来のガイドラインの姿も見通してみた。会員諸 氏がガイドラインを「創る」立場にいることもご自覚い ただければ幸いである。  評価や介入の方法論の詳細については本論ではふれる ことができないので,第 1 版本文と巻末用語解説をご参 照いただきたい。第 1 版は用語の解説が充実しているの で,本文と併せて読むと方法論が不明であるということ にはならない。また,文献や URL を示しオリジナルに 辿り着ける工夫も講じた。ぜひ,第 1 版の利用を願って 稿を進める。. 1.脳性麻痺(以下,CP)に対する理学療法 評価(指標)の推奨グレード. 「Executive Committee for the Definition of Cerebral Palsy;ECDCP の定義」 (A) ②タイプ分類(B) 「Surveillance of Cerebral Palsy in Europe(SCPE) による CP のタイプ分類」(B) ③麻痺の身体分布の分類(B) 「四肢麻痺・両麻痺・三肢麻痺・片麻痺が主で対麻 痺・単麻痺は少ない」(B) ④重症度の分類(A ∼ B) a.「CP のための粗大運動能力分類システム(Gross Motor Function Classification System;以下,GMFCS) 」 (A) b.「CP のための手指操作能力分類システム(Manual Ability Classification System;MACS) 」(B) ⑤重症度,分類,タイプを含む障害名表記方法(C) 「タイプ,身体分布,重症度で示す」(C)事例;痙直 型両麻痺 GMFCS2 2)経時的な評価(問題解決を指向する評価)  ここでは変化を捉えることを目的とした評価で,基本.  以下に評価を判定的な評価と経時的な評価の 2 つに区. 的には時間の経過によって変化する臨床像を把握する評. 分し,それぞれの評価項目について項目名(推奨グレー. 価を示す。この評価は経過の把握だけでなく,介入方法. ド)のみで示す。. の変更 ・ 発展に資するものであるため,頻繁な評価が求 められる。. 1)判定的な評価(分類的な評価)  ここでは区分を目的とした評価で,基本的には時間の *. Finding Availability of Clinical Guide Line of Physical Therapy for Cerebral Palsy 1)郡馬パース大学保健科学部理学療法学科 (〒 370‒0006 郡馬県高崎市問屋町 1‒7‒1) Toru Naka, PT: Gumma Paz College, Faculty of Health Science, School of Physical Therapy キーワード:脳性麻痺,理学療法,診療ガイドライン. ①形態評価(A ∼ C) a.「筋厚の評価」 (A) b.「脊柱変形;Cobb 角」(B) c.「胸郭変形」 (C) d.「身長測定法」 (C) ②運動機能評価(A ∼ C) a. 痙性・筋緊張の評価指標(B ∼ C).

(2) 脳性麻痺 理学療法診療ガイドラインを使うために. ⅰ「 修 正 版 タ ー ル デ ィ ユ・ ス ケ ー ル(Modified Tardieu Scale;MTS) 」(B) ⅱ「 修 正 版 ア シ ュ ワ ー ス・ ス ケ ー ル(Modified Ashworth Scale;MAS) 」(C) ⅲ「ベイレイ・オルブライト・ディストニア・ス. 525. 2.CP の理学療法介入の推奨グレードとエビ デンスレベル  以下に介入をいくつかに区分し,それぞれの介入項目 について項目名(推奨グレード・エビデンス)で示す。. ケール(Barry-Albright dystonia scale;BAD) 」 (C). 1)運動療法─機能に対する介入─(A ∼ C). b.「筋力の評価」(A).  運動機能に影響を与える運動療法,運動器・神経系・. c.「関節可動域(ROM)の評価」(A). 呼吸循環器系に対するいわば基本的な運動療法を示す。. d.「ゴールドスミス指数(Goldsmith Index) 」(B). a.「筋力強化」 (A・1). e.「 生 理 的 コ ス ト 指 数(Physiological Cost Index;. b.「ストレッチ」(B・1). PCI,または Energy Expenditure Index;EEI) 」 (B). c.「持久力トレーニング」 (B・1 ∼ 3). ③ 活 動 と 参 加( 運 動 能 力 お よ び 発 達 と ADL お よ び. d.「有酸素トレーニング」(B・1 ∼ 4b). QOL)に関する評価. e.「バランストレーニング」(B・3). a. 主として運動能力に関する評価(A ∼ B). f.「ヴォイタ法(Vojta)」(C・3). ⅰ「 粗 大 運 動 能 力 尺 度(Gross Motor Function Measure;以下,GMFM) 」(A) ⅱ「脳性麻痺簡易運動テスト(Simple motor Test for Cerebral Palsy;SMTCP) 」(B) ⅲ「粗大運動遂行尺度(Gross Motor Performance. 2)物理療法(B)  ここでは,物理療法の一部である水治療についてのみ 示すが,運動療法が一部含まれている。 「水治療(水泳を含む)」(B・2). Measure;GMPM) 」(B) ⅳ「 チ ェ イ リ ー 姿 勢 能 力 発 達 レ ベ ル(Chailey Levels of Ability;CLA) 」(B) b. 主として子どもの発達に関する評価(A) ⅰ「 新 版 K 式 発 達 検 査(Kyoto scale of psychological development) 」(A) ⅱ「デンバー式発達スクリーニング検査(Denver Developmental Screening Test;DDST) 」(A) c. 主として新生児の発達に関する評価(A ∼ B) ⅰ「 新 生 児 の 自 発 運 動 の 観 察 法(General Movements;GMs) 」(A). 3)運動療法─能力・活動に対する介入─(B)  ここでは運動能力しいては活動に影響を与える運動療 法,いわば課題志向的な応用的な運動療法を示す。 a.「 神 経 発 達 学 的 治 療(neurodevelopmental treatment;NDT) 」(B・1) b.「CI 療法(上肢に対する)」(B・1) c.「歩行(主として体重免荷式トレッドミル歩行) 」 (B・1 ∼ 4b) d.「サーキットトレーニング(circuit training) 」 (B・ 2 ∼ 3). ⅱ「 ブ ラ ゼ ル ト ン 新 生 児 行 動 評 価(Neonatal Behavioral Assessment Scale;NBAS) 」(B) ⅲ「 ド ゥ ヴ ォ ビ ッ ツ 神 経 学 的 評 価 法(Dubowitz Neonatal Neurologic Examination;DNNE) 」 (B) d. 主として ADL に関する評価(A). 4)その他の応用的な理学療法(B)  ここでは論文に載ってきているものだけを示すが,他 に多くあると思われる。 「乗馬療法(Hippo therapy) 」(B・2). ⅰ「 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン の た め の 子 ど も の 能 力 低 下 評 価 法(pediatric evaluation of disability. 5)補装具を使った療法─下肢装具など─(A ∼ C1). inventory;以下,PEDI) 」(A).  ここでは下肢の装具療法に関する内容を示すが,運動. ⅱ「 小 児 の 機 能 的 自 立 尺 度(Functional independence measure for children;Wee FIM)」 (A) e. 主として QOL に関する評価(A) 「 小 児 の ア ウ ト カ ム デ ー タ 収 集 質 問 紙(Pediatric outcomes data collection instrument;PODCI) 」(A). 療法との併用が前提となっている。 a.「短下肢装具」(A・1 ∼ 3) b.「シリアルキャスティング(連続ギプス固定)」 (B・ 2 ∼ 5) c.「アデリースーツ(Adeli suit and associated treatment;AST) 」(C1・1 ∼ 3) 6)補装具を使った療法─車椅子─(B ∼ C1)  ここでは生活支援と機能改善を目的とした車椅子の適.

(3) 526. 理学療法学 第 42 巻第 6 号. 応に関する内容を示すが,運動療法との併用が前提と. 1 版で扱っておくべき項目が掲載されていないという事. なっている。. 実である。換言すれば 2011 年当時の現状でさえ反映し. a.「電動車いす」(B・1 ∼ 4b). ていない「未完の第 1 版」という現状があることを示し. b.「立位型車いす」(C1・6). ておきたい。第 2 版で対応すべく,掲載されなかった項 目を以下に挙げておきたい。. 7)補装具を使った療法─姿勢保持具─(B ∼ C1). ①評価(能力・活動での経時的評価項目).  ここでは主として生活支援と機能維持を目的とした姿. a.「ハンドリング・介助による自立度評価」. 勢保持具の適応に関する内容を示すが,運動療法との併. b.「 ア ル バ ー タ 乳 幼 児 発 達 検 査(Alberta Infantile. 用が前提となっている。 a.「座位保持装置」(B・1 ∼ 3) b.「夜間姿勢保持具」(C1・3). Motor Scale;AIMS) c.「 運 動 と プ ロ セ ス 技 能 評 価(The Assessment of Motor and Process Skills;AMPS) d.「 ゴ ー ル 達 成 度 検 査(Goal Attainment Scaling;. 8)教育的介入(C1) 「家庭でのプログラム(home exercise) 」(C1・2). GAS)」 e.「学校での機能評価(School Function Assessment; SFA)」. 9)術後の理学療法(B)  ここでは代表的な手術後の理学療法に関する内容を示 すが,理学療法手法の差が明確に示される段階ではない。 a.「A 型ボツリヌス毒素治療後の理学療法(Botulinum toxin A;BoNT-A) 」(B・1) b.「選択的後根切除術後の理学療法(Selective Dorsal Rhizotomy;SDR) 」(B・1). f.「 ケ ア 過 程 の 評 価 尺 度(Measure of Processes of Care;MPOC) ②介入 a.「電気刺激を使った治療」 b.「短下肢装具以外の下肢装具療法」 c.「第 1 版に掲載されていない『∼法』という概念の 固有の治療体系」. c.「整形外科手術後の理学療法」 (B・2). d.「定量化に馴染まない介入手法」. d.「 バ ク ロ フ ェ ン 髄 腔 内 投 与 後 の 理 学 療 法. e.「教育的な介入」. (Intrathecal baclofen;ITB) 」(B・3). f.「在宅,地域支援」  これらの記載が充実するために,会員諸氏のエビデン. 10)ハイリスク新生児へのディベロップメンタル・ケア. スの蓄積への取り組みと発信をお願いしたい。. ─ Developmental care ─(A ∼ B)  ここでは脳性麻痺に至るかもしれない子ども達への介. 2)この五年間での変化を反映させるということ. 入方法を示すが,脳性麻痺のガイドラインとしては知識.  第 1 版以降の五年間での大きな変化を今後のガイド. レベルにとどまるかもしれない。. ラインには反映させる必要がある。評価の分野では,. a.「ポジショニング」(A・1). GMFCS や GMFM および PEDI を上回る頑強な評価指. b.「呼吸理学療法」(B・1). 標がでてきていないのが現状である。したがってそれら. c.「NICU からの早期介入」(B・1). に追いつくレベルの評価指標を見出していくという課題. 3.CP 理学療法診療ガイドラインをめぐる現 状と展望. となる。また日常的に多用されるハンドリングによる運 動能力 ・ 活動の自立度を評価する方法についても,定式 化してエビデンスに並んでいく必要がある。.  2011 年に同ガイドラインの 1 版が協会によって公開.  介入の面では,引き続いてではあるが定量化に馴染ま. されたが,多くの内容は 2009 年に試公開された同ガイ. ない介入方法について,リサーチベースに乗ってくるよ. ドライン 0 版を基礎としている。通常,ガイドラインは. うに質的研究手法の方向性も提案していかなければなら. 4 ∼ 5 年ごとに改訂されることが本来の姿であることを. ない。さらに,急速に進歩してきているロボティクスな. 考えると,現在私達が共有している第 1 版ガイドライン. ど体外動力を利用した介入・支援についてはテクノロ. は見直すべき段階にきているといえる。したがって,こ. ジーの発展に応じて適宜取り上げるべきであろう。ま. こでは第 1 版にない視点で現状と展望を述べる。. た,高齢化・少子化社会のもとで,国家政策で振興され ている地域・在宅アプローチや高齢のゾーンに入る CP. 1)第 1 版で掲載できなかった項目があったという現状 と今後  まず述べたいのは,時間の制約があったとはいえ,第. の課題についても,教育プログラムと併せて取り上げて いく必要がある。これらが成就するためには,会員全体 で実践を発信・報告し学会などで討議しあってエビデン.

(4) 脳性麻痺 理学療法診療ガイドラインを使うために. スを着実に発展させることが必要である。 3)歴史に支えられた実践量をエビデンスに反映させる ことができるために. 527. 4.CP 理学療法診療ガイドラインの実際の使 い方  診療ガイドラインは日常の臨床で使われてはじめて意.  日本の理学療法は小児からはじまった歴史がある。理. 味があるため,最後にいくつかの臨床的な質問例に答え. 学療法士免許が日本に置かれた時代では,CP の「訓練」. る形でガイドラインの使い方を提示する。Q & A 方式. にかかわっていた医師たちが国家資格化を強く後押しし. の文体「ですます調」で示すが,ガイドラインに親しん. た経緯もある。この歴史と経緯から読み取れることは,. でいただくきっかけになればと願っている。なお,以下. 小児や CP では多くの熱心な経験が蓄積しているという. の文中の評価方法・介入方法のあとの( )内に,参考. ことである。しかしながら,それらが必ずしもすべてエ. のために推奨グレードのみを再掲しておく。. ビデンス蓄積の方向に集合しているわけではない。これ は問題点でもあるが,大きな潜在性を抱えているという. Q1;新患でやってきた CP の方のタイプや身体分布と. 事実でもある。. 重症度を知るにはどうすればよいですか ? またそれをど.  知名度の高い一定の概念をもつアプローチでも,事例. のように標記すればよいのでしょうか ?. 報告よりエビデンスレベルの高い報告がない現実は残念. A1;本論 1 − 1)②∼⑤に示したガイドラインの判定. である。それはそれらの手法が,いかに臨床的に手ごた. 的評価の項目をみて判定してください。タイプは 1 −. えがあったとしても,定立・反定立・統合という学術的. 1)−②の「タイプ分類(B)」に基づき筋緊張に基づく. 論議の機会が減少することによって,結果として子ども. 分類を行い一番あてはまるものに決め,混合タイプとは. 達の利益を守るような体系に発展する機会に制限を与え. しないでください。ただしジストニックは日本ではア. てしまうことになってしまう。その原因は明確で,評価. テトーゼと表現する方が通じます。麻痺の身体分布は 1. にしても介入にしてもリアルタイムでセラピストが子ど. − 1)−③の「麻痺の身体の分布分類(B) 」により比較. も達から受ける感覚メッセージを受け取り,ハンドリン. 的簡単に判断できます。重症度は④「重症度の分類の. グを変化させる内容が多く,エビデンスに必要とされる. GMFCS(A) 」を年齢別の表を使って,普段できる能力. 「与える刺激の定量化」や「アウトカムの定量化」に余. で一番あてはまるレベルを 5 段階で判定します。. りにもそぐわないからである。概ねの流れにおいてこの.  それらを総合して,障害について「CP タイプ身体分. 関係性は今後とも大きく変わる様相はないであろう。か. 布(GMFCS) 」で標記します。たとえば,CP 痙直型両. くして,CP の理学療法は延々と実践だけが蓄積され記. 麻痺(レベル 3) ,CP 痙直型片麻痺(レベル 1) ,CP ア. 述だけが残るということになるかというと,それは否で. テトーゼ型四肢麻痺(レベル 5)というように標記する. ある。エビデンスのために人為的に刺激やアウトカムを. ことをお勧めします。. 定量化するようにすべての評価と介入を修正してゆくこ とは失うものが多く合理的ではない。そこで,その解決. Q2;CP の方のタイプや身体分布と重症度がわかれば,. の方途として質的研究の手法を使ってエビデンスを蓄積. どんなことに役に立つのでしょうか ?. する実践方向を提案したい。. A2;大切なことは,治療方針と長期的な予後がわかる.  定量化された体系より定性化された体系では論理の工. ということです。このことがわかれば,目標を設定しや. 夫が若干必要であろうが,エビデンスは形成することは. すく,目標を実現するための具体的な介入の方法を提示. できるのである。実際に,評価方法などの開発では数値. することができ,介入のペースを考えることができます。. を扱うが,本質的には質的研究の方法論を使っている。.  A1 に示した CP 痙直型両麻痺(レベル 3)であれば,. この事実は,質的研究も十分に科学的なエビデンスを支. 立ち上がりなどの姿勢変換能力や歩行能力の向上を目標. える方法論であることを示している。定量研究でなけれ. として,動きを重視したアプローチを行うという基本方. ばエビデンスから遠ざけるという姿勢は,科学的な精神. 針をもつことができます。また CP アテトーゼ型四肢麻. からすると外れているといっていいであろう。. 痺(レベル 5)であれば,座位など姿勢保持能力の向上.  CP の理学療法こそ量的研究だけでなく,質的研究の. を目標として,動きを止めることを重視したアプローチ. 併用によってエビデンスの発展が可能で,そのことによ. を行うという基本方針をもつに至ります。. り日々の臨床の実感に近いエビデンスが生まれる土壌を.  したがって,1 − 1) −②∼④はより正確に評価する必. もっているといえる。エビデンスが増えることは,子ど. 要があります。ガイドラインに示した説明に加えてオリ. もと親達が安心して受けられる介入の選択肢が増えるこ. ジナルの評価表にまでたどりついて,厳格な評価を追及. とであり,彼らの親達の利益に資するものである。その. してください。. ような自覚で会員諸氏の実践と発信の集中を願いたい。.

(5) 528. 理学療法学 第 42 巻第 6 号. Q3;CP の方の目標を設定するにはどのような評価が大.  これらの手法を駆使し,多く生まれてくるゴール候補. 切になるのでしょうか ?. の中から,ハンドリングの手応えと子どもと親達のニー. A3;経時的評価のうち,活動と参加に関する評価 1 − 2). ズも勘案すれば,最適なゴール設定ができると思いま. −③を使って目標を詳細に設定することが可能です。CP. す。これらの手続きを踏んで決めたゴールはかなり現実. の理学療法の目標はそれが短期であれ長期であれ,形態. 性のあるものとなっているはずです。. や機能ではなく,能力や活動 ・ 参加で示されなければな りません。したがって活動と参加に関する評価からしか. Q4;ゴール達成のために解決すべき問題点(治療方針). 導けないのですが,ここで重要なのはその能力や活動 ・. はどのようにすれば探せるのでしょうか ?. 参加の自立度を判定することです。目標とは,自立度で. A4;経時的評価のうち,形態および機能に関する評価. いえば,現状が見守り∼中等度介助の自立度に判定され. 1 − 2)−①∼②で探すことが可能です。問題点や治療方. る課題であり,介入の結果その自立度を 1 段階以上改善. 針は機能や形態で記載するのが通常ですから,活動や参. するのが理学療法士の使命です。では 1 − 2) −③からど. 加の制限の原因となっているポイントをある程度予測し. のように自立度を判定するのかをご紹介しましょう。. て検査に臨みます。前提として, 「身長測定法」 (C)は.  ごく基本的には,活動などの自立度はセラピストの観. 体重を含め必須です。中枢神経障害の児は成長障害があ. 察や介助によって判断するのが通常ですが,この点のエ. ることが多く,重症であるほどその程度は強いとされる. ビデンスにつながる研究はありません。もちろんそれを. からです。また重症であれば身長の伸びが関節拘縮を悪. もってこの基本的な評価方法が否定されるわけではあり. 化させるリスクをもっているからです。身長・体重測定. ません。まずは基本的な方法を行って自立度の判定を. も立派な理学療法評価です。. 行ってください。以下に,基本的な手法を中心としつつ.  運動器の評価は基本となる「関節可動域(ROM)の. も 1 − 2)−③の評価方法を自立度判定に応用する方法. 評価」 (A)に加えて,筋の活動性を一定反映する「筋. を考えます。ここで,示された評価方法で参考になるの. 厚の評価」(A)は行うことをお勧めします。. は GMFM(A)と PEDI(A)です。これらは,評価項.  神経系の評価は筋緊張評価では,「修正版タールディ. 目の一つひとつが活動や参加の項目となっています。特. ユ・ ス ケ ー ル(Modified Tardieu Scale;MTS) 」(B). に GMFM(A)では選択枝が 0 − 1 − 2 − 3 の昇順リッ. が痙性の評価としては検査レベルでの意義があります. カートスケールですので,1 − 2 のあたりの項目の活動. が,これだけでは十分とはいえません。実際に目標とす. や参加は見守り∼中等度介助の範囲に入りうる可能性. る活動の姿勢と一段階下位にある姿勢で上記の検査に加. がありますのでゴールの候補になりえます。PEDI(A). えて,運動を観察して姿勢の変化による筋緊張の差を見. は選択肢が YES/NO 形式ですが,項目の並び方がひと. ることが,筋緊張の実態を捉えるうえで重要です。座位. つの活動・参加ごとに数段階に,しかもやさしい課題か. では筋緊張は問題なくても立位になったときに問題がで. ら難しい課題の順に並んでいますので,YES から NO. てくるかもしれないからです。このような場合,ゴール. に変わったところの項目の課題が見守り∼中等度介助の. の課題が座位であるか立位であるかによって問題の所在. 範囲に入りうる可能性がありますので,これもゴールの. が変わってきますので,複数の姿勢での筋緊張評価は大. 候補になりえます。それらの中からセラピストが子ども. 切です。. のニーズに応じてゴールを決めていくことができます。.  呼吸循環器系では,一般的な呼吸パターンや量的な.  また GMFM(A)と PEDI(A)はスコアがアイテム. 評価に加えて,「脊柱変形;Cobb 角」 (B),「胸郭変形」. マップとともに表示されますが,これらも利用すること. (C)など,呼吸器系の運動器のチェックは必須です。. が可能です。アイテムマップとは総合スコアが縦線で. この制限が一回換気量の減少,肺機能の左右差ひいて. 95%信頼区間をつけて示され,その背景に一つひとつの. は易感染性につながるからです。また,「生理的コスト. 結果が難易度順に左から右に示されそれぞれの能力状況. 指数(Physiological Cost Index;PCI,または Energy. の段階や可否が示されます。いわば,平均点と個別点が. Expenditure Index;EEI) 」(B)は心肺機能の状態を簡. 一瞥できる表がアイテムマップとなります。この表を眺. 便に表すのに優れた指標です。歩行だけでなく,一定時. めますと,総合スコアの 95%信頼区間ゾーンより左に. 間内に繰り返し運動回数がカウントできる持続運動であ. あるものは理論的にはできていてよい項目,右側にある. ればどのような運動でも活用できますのでお勧めしま. ものができていなくてもいい項目ということになりま. す。心肺機能の低下は運動抑制と肥満に関連し,さらに. す。ここで自立度が見守りから中等度のレベルに相当す. 二次障害を生み出して能力低下につながりますので,ど. るゴールの課題として候補に挙がるものが,95%信頼区. んなに障害が軽くとも PCI は測定する必要があると思. 間ゾーン内から左側のゾーンで達成状況がよくないもの. います。. に相当すると考えることが可能です。.  知能や情緒の問題も原因となり得ますので,その.

(6) 脳性麻痺 理学療法診療ガイドラインを使うために. 529. ようなことが予測できる場合には 1 − 2)−③で示し. Q6;経過はなにを使って把握すれば効果的でしょうか ?. た「 デ ン バ ー 式 発 達 ス ク リ ー ニ ン グ 検 査(Denver. A6;経時的評価のうち,形態および機能に関する評価. Developmental Screening Test;DDST) 」(A) が PT. 1 − 2)のすべては経過把握のために使えます。問題点. で実施するものとして適しています。 「新版 K 式発達検. としてだした 1 − 2)−①∼②の形態と機能は定期的に. 査(Kyoto scale of psychological development)」(A). チェックしたいところです。なかでも心肺機能指標で. は詳細な情報を得ることができますが,専用の検査道具. ある PCI の変化は忘れがちですので留意してください。. セットが必要で時間も要するなど PT にとって制約があ. 活動と参加のゴールが大きく変化していなくても,心肺. りますので,必要であれば臨床心理士や言語聴覚士など. 機能は伸びているということはよくあります。これは隠. の方から情報をいただくほうが正確でしょう。. れた成果でありゴール達成の飛躍前である可能性もあり ます。. Q5;CP への介入方法はどのように選択すればよいで.  経過のうえで大切なのはゴールの達成度合いです。こ. しょうか ?. れはゴール設定をしたときに使った 1 − 2)−③の活動. A5;本論ではガイドラインの介入内容を以下のように. と参加の評価を使わなければなりません。なかでも間隔. 再編しました。ここでは,機能的な介入を 2 − 1)∼ 2),. 尺度として変化を示す点で頑強性が高いのが GMFM と. 課題志向型の活動への介入を 2 − 3)∼ 4),補装具を用. PEDI のスコアです。活動と参加の評価尺度はほとんど. いた介入を 2 − 5)∼ 7),教育的な介入を 2 − 8) ,おも. が順序尺度で変化を厳密に捉える点で制限があります。. な術後の介入を 2 − 9)の 5 つのグループとして示して. しかし GMFM の GMFM-66 と PEDI は間隔尺度であり,. います。問題を解決しゴールに到達するには,機能的な. スコアそのものが子どもの変化の度合いをそのまま示し. 介入と課題志向型の活動への介入および教育的な介入の. ます。GMFM ではソフトウエアが,PEDI ではインター. 組み合わせは必須であると思います。子どもの状態に応. ネット接続環境が必要であるという制限がありますが,. じて試行錯誤の参考にしてください。補装具を用いた介. それを乗り越えるだけの意味はあります。. 入や手術後の介入は,ケースによって必要性は異なるで しょう。必要に応じて介入を構成してください。. さいごに.  先にも述べたようにガイドライン第 1 版は,介入方法.  医師が当直などでもよく使う「今日の治療指針」とい. を多くの選択肢として取り上げるという点では発展途上. うのは,日々使われているガイドラインの類である。診. ですので,未だ偏った印象もあります。ですから,利用. 断がなされれば,その書籍が治療方法をガイドしてくれ. 方法もあまり多くをお示しできないのですが,介入のフ. るまさにガイドラインである。それはエビデンスの蓄積. レームを構成するときの参考にしていただく内容をお示. のなせる結果である。理学療法士にもそのようなガイド. しすることはできました。介入の点では,ぜひともエビ. ラインがあれば,ある程度均質的な介入展開ができるで. デンスをつくる作業に重点を置いて,子ども達が介入方. あろう。ただ,医師の診断のように,理学療法にとって. 法を選ぶことができるように,またセラピストも多くの. も正しい評価を行うことが必須の前提的な能力である。. 選択肢から選ぶことができる環境をつくり上げることが. 今後,評価のエビデンスを高めることを中心にしつつ,. 必要です。ご協力をお願いいたします。. 介入方法を網羅することがガイドラインに求められてい る。力を合わせてガイドラインを創生できることに感謝 したい。.

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