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理学療法の国際協力

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Academic year: 2021

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(1)理学療法学 第 42 巻第 8 号 659 ~ 660 頁(2015 年) 理学療法の国際協力. 659. 合同シンポジウム 3(JICA). 理学療法の国際協力* ─アジアでの理学療法支援─ 小西恵一郎**. た。この新しい門出に際して,本法人の目的を「我が国および. はじめに. 諸外国,主として開発途上国の医療技術を振興し,国際的視野. 人間が健康で文化的な生活を営むには日常生活動作の質の維. に立って,医療技術分野における相互の理解を深め,国際協力. 持・向上が必要である。近未来に世界各国がやがて直面すると. を推進する事業を行い,もって国際保健医療協力の増進と人類. 推定されている超高齢化という社会変化に向かい 1),理学療法. の福祉の向上に寄与する」こととし,その達成のために次の通. 士の役割はその重要性をますます増してきている。また,日. り定款に規定されている事業を実施している。. 本国政府は 2015 年 2 月 10 日に開発協力大綱. 2). を閣議決定し,. ・海外の医療技術分野の専門家等の研修. そのポイントのひとつとして社会的弱者の保護と開発への参画. ・我が国の医療技術ならびにその関連分野の専門家等の海外派遣. を挙げていることから,国際協力の分野においても理学療法士. ・内外の医療関連団体との国際協力活動. の活躍がますます求められていくといえる。そこで,本稿にお. ・内外医療技術の調査研究および啓発事業. いては,設立以来,開発途上国の理学療法士を含む医療技術者. ・災害医療事業. を育成してきた公益財団法人 国際医療技術財団(JIMTEF). なお,本法人は設立から現在までに,国際医療協力について,. について紹介し,おもな事業から研修員受け入れ事業の展望に. 102 の国と地域から 1,139 名の研修員の本邦受け入れ,6 ヵ国 5. ついて述べる。. 分野に 17 名の専門家の派遣,14 ヵ国に 15 チームの調査団派遣,. 公益財団法人 国際医療技術財団について 公益財団法人 国際医療技術財団(JIMTEF)は,特例財団 法人 国際医療技術交流財団として医療技術分野の国際協力を. 2 ヵ国 2 回の海外医療協力フォーラム,4 ヵ国 6 回の国際セミ ナーを実施してきた。. 理学療法分野での実績. 目的に医師会,歯科医師会,薬剤師会,製薬をはじめ医療関連. 本法人は,理学療法分野について,公益社団法人 日本理学. 企業や医療関連職種団体ならびに一般社団法人 日本経済団体. 療法士協会と国内医療機関の協力を得て以下の国際医療技術協. 連合会所属主要業界団体の支援のもと 1987(昭和 62)年 10 月. 力事業を行ってきた。. 31 日に設立され,国際医療協力の重要性を提唱していた創設 者,渡辺美智雄初代理事長の強力な指導力のもと,開発途上国. 1.現地活動型プロジェクト. の医療技術者の育成と医療技術の向上に重点を置き,海外研修. 1)インドネシア CBR ※協力プロジェクト. 員の受け入れ,JIMTEF 専門家および調査団の海外派遣,国. 1992 ~ 1997 年度に,インドネシア CBR 協力プロジェクト. 際セミナー,国内外におけるシンポジウムや講演会の開催等を. を実施し,中部ジャワ州ソロに所在する CBR 開発・訓練セン. 実施し,着実に実績を積み重ね,国際医療協力の一翼を担って. ターに対する技術協力として理学療法士専門家派遣を 5 回行っ. きた。そして,これらの成果が高く評価され,2000(平成 12). た。※ CBR:Community Based Rehabilitation(地域に根ざし. 年 10 月に第 52 回保健文化賞,厚生大臣表彰,2009(平成 21). たリハビリテーション). 年 7 月に外務大臣表彰を受賞するとともに,専ら公益目的に事. 2)独立行政法人 国際協力機構 草の根技術協力事業:ネパー. 業を実施してきたことが認められ内閣府より公益財団法人への. ル連邦共和国カトマンズ盆地における呼吸器疾患患者の早. 移行認定を受け,2011(平成 23)年 2 月 7 日,公益財団法人. 期社会復帰支援に向けての取り組み─呼吸リハビリテー. 国際医療技術財団(以下,本法人)として新たにスタートし. ションの普及─. *. International Cooperation in the Field of Physical Therapy in Asia ** 公益財団法人 国際医療技術財団 代表理事 薬剤師 (〒 102–0083 東京都千代田区麹町 3–3–8 丸増麹町ビル 903) Keiichirou Konishi, PhC: Japan International Medical Technology Foundation, JIMTEF, Representative Director キーワード:国際医療協力,開発途上国,研修. 近年,人口の集中が著しい都市部では,喫煙,大気汚染(浮 遊粉と盆地特有の空気の対流),家屋内調理による煤煙吸入な どの複合的要因を原因とする呼吸器疾患,特に慢性閉塞性肺疾 患(以下,COPD)に苦しむ患者が増加し,社会的,経済的に も大きな脅威となっており,可及的速やかな対策が必要とされ.

(2) 660. 理学療法学 第 42 巻第 8 号. ている。そこで,カトマンズ盆地バクタプール郡の病院および. だけでなく,チーム医療,情報の記録・共有,施設・機器の清. 診療所において呼吸リハビリテーションが実践され,COPD を. 潔・整頓,さらに機材の保守管理をはじめとした各種マニュア. はじめとする慢性呼吸器疾患患者の呼吸困難,運動能力および. ルの作成管理などを通じて,医の倫理や責任感を体得すること. 生活の質が改善されるとともに,地域住民の予防意識が向上す. が,技術以上に重要であり研修成果を高めている。また,人材. ることを目標にバクタプール郡の呼吸器疾患患者・家族,地域. 育成だけでなく,開発途上国の課題への貢献,日本国内におけ. 住民,医療・保健スタッフを対象として,日本より理学療法士. る地域の国際化,開発途上国における親日家の拡充などの成果. と医師を派遣し,現地での指導者養成,患者教育(自己管理と. が期待される 3)。. 在宅訓練)と家族教育(理解と支援),地域住民を対象にした 予防啓発セミナー,地域住民・NGO・行政庁三位一体による. 2.研修員受け入れ事業への評価. 継続的な実施体制の整備をおもな活動とするプロジェクトを. 研修成果は,評価会などにおける研修員からの感謝の言葉に. 2015 年 4 月~ 2018 年 3 月(3 年間)の期間で実施している。. 表されており,受け入れ先の専門家の努力が研修員に伝わった 結果といえる。研修員は本邦滞在中に多くの日本人と接し,日. 2.本邦研修. 本の国情や文化を知ることで,帰国後は相互の架け橋として,. 1)JIMTEF 個別研修 理学療法コース. 人と人,国と国をつなぐ貴重な存在となっている。. 1992 ~ 2015 年度に,20 名 7 ヵ国(内アジアは 19 名 6 ヵ国:. なお,政府開発援助により実施された「研修員受け入れ事業」. インドネシア 12 名,カンボジア 2 名,ネパール 2 名,スリラ. への第三者評価によれば,その有用性を高く評価する一方で,. ンカ,パキスタン,ラオス各 1 名)の研修員を本邦で指導した。. 国益のための戦略援助の明確化をはじめ ODA の無償資金協力. なお,インドネシア 12 名中 11 名は前述のインドネシア CBR. や技術協力と連動した研修スキームの強化,本邦における独自. 協力プロジェクトに連携した研修であり,ネパール 2 名は前述. 性,比較優位性のある研修の提供,ジャパン・ブランドの確立,. の JICA 草の根技術協力事業に連携した研修であった。. 国の状況に応じた研修スキームの見直し,体験を重視した研修. 2)独立行政法人 国際協力機構 委託集団研修. 内容の確立,帰国研修員とのパートナーシップの強化,官民協. (1)医療技術スタッフ練成コース. 調による研修体制の構築などが指摘されている。. 2001 ~ 2008 年度に,理学療法士累計 32 名 22 ヵ国(内アジ アは 13 名 9 ヵ国:カンボジア 3 名,パキスタン 3 名,スリラ. 3.今後の事業展開. ンカ,タイ,ネパール,フィリピン,ベトナム,マレーシア,. 本邦での研修のメリットは課題解決型の実践指導にあり,我. ラオス各 1 名)を本邦で CBR をテーマに指導した。. が国のもつリソースを研修員に提供し,研修員が吸収した技術. (2)ミャンマーリハビリテーション研修コース. を帰国後自分の職場において応用していくことを通じて,自国. 2008 ~ 2011 年度に,本邦において,ミャンマーよりの理学. の医療技術の発展に寄与していく点で,他の技術協力にない特. 療法士累計 20 名を評価に基づく理学療法をテーマに国際協力. 徴があるといえる。しかしながら,研修員が本邦における研修. 機構の現地プロジェクトと連携して指導した。. によって技術を高めた場合でも,帰国後に制度的・組織的にそ の能力が評価され,活動できる受け皿がなければ,研修成果が. 3.調査団派遣(理学療法関係). 生かされず,我々の努力が水泡に帰すことになってしまう。そ. 開発途上国への医療技術協力事業を効果的かつ効率的に実施. こで,短期的な成果のみではなく,長期的な成果も見据えた信. するため,必要に応じて調査団を派遣している。理学療法につ. 頼性の高いエビデンスに基づく具体的な事業目標を設定し,こ. いては次の通り実施した。. の目標を達成していくための戦略・戦術を明確にし,現地活動. 1)1996 年度 インドネシア:専門家派遣プロジェクトの評価. 型技術協力プログラムへつなげていくことが必要である。そし. 調査 2)2002 年度 タイ:メコン地域のリハビリテーションに関す る新規ニーズの発掘調査 3)2006 年度 カンボジア:リハビリテーションに関する新規 ニーズの発掘調査 4.国際セミナー 第 1 回 カンボジア国際セミナー(日本国政府外務省後援) 2008 年 3 月 6 日,国立小児病院(カンボジア首都プノンペン) にて,医療の安全と向上-理学療法士に必要な安全管理と評価 および診断学をテーマとして国際セミナーを開催した。. これからの研修事業について 1.本邦研修の意義 開発途上国の医療技術者の本邦研修においては,技術の習得. て,地域の医療文化や技術水準,住民の保健医療ニーズにマッ チした地域固有の問題にも対応可能な技術協力の継続的な実践 を通じて当該地域における指導的立場にある人材を養成してい きたいと考えている。. 文 献 1) The United Nations Population Fund (UNPF): Ageing in Twentyfirst Century: A Celebration and A Challenge. 2012, pp. 19–26. 2) 外 務 省 ホ ー ム ペ ー ジ 開 発 協 力 大 綱.http://www.mofa.go.jp/ mofaj/gaiko/oda/seisaku/taikou_201502.html(2015 年 5 月 8 日引用) 3) 特例財団法人 国際医療技術交流財団:国際医療協力を考える会 答申.2008,pp. 2–6..

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