• 検索結果がありません。

エピゲノム制御を介した作物ゲノムの構造と機能の改変

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "エピゲノム制御を介した作物ゲノムの構造と機能の改変"

Copied!
6
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

2016 年 2 月 29 日受理 連絡責任者:土生芳樹(habu@affrc.go.jp)

エピゲノム制御を介した作物ゲノムの構造と機能の改変

土生芳樹

農業・食品産業技術総合研究機構生物機能利用研究部門 (〒 305-8602 茨城県つくば市観音台 2 丁目 1-2) 要旨:近年の交配育種においてはマーカー育種法やゲノミックセレクション法などの進展により多数の交配後代 個体から目的のゲノム組成を持つ個体を選抜する効率が飛躍的に向上したが,減数分裂期組み換えの位置や変異 誘発の頻度を積極的に制御する試みはほとんど行われていない.減数分裂期組み換えはゲノム中で限られた領域 (ホットスポット)に集中しているため,ホットスポット以外の領域に組み換えを誘導する技術の確立は効率的な 作物育種にむけた重要な課題の一つである.組み換えが起きないゲノム領域は DNA の局所的な「固さ」と関係し ていることが知られており,この固さを決める要因がエピゲノムと呼ばれる DNA −ヒストンタンパク質複合体の 化学修飾である.本稿では作物への有用形質付与を目的としたゲノムの構造・機能の改変を効率的に行う手段と して,従来の方法とは異なるエピゲノム制御の観点からのアプローチを紹介する. キーワード:イネ,エピゲノム,減数分裂期組み換え,DNA メチル化

1.緒言: 作物育種におけるゲノムの構造改変

作物のさまざまな形質を司る遺伝情報はゲノム DNA に 格納され,半保存的複製機構により世代を越えて安定に伝 えられる.一方で,他殖性植物や自家不和合性植物などに 見られる積極的な染色体の混交と組み換えは新たなハプロ タイプを生み出し,進化・適応の推進力となるとともに, 交配育種における有用形質の集積に主要な役割を果たす. 有用形質集積の前提となるのは性質の異なる対立遺伝子の 存在であり,交配可能な遺伝的距離にある個体間での目的 形質遺伝子の塩基配列の違いによりその性質が決定される. 交配育種における有用形質遺伝子の集積では一般に既存 の遺伝資源を利用するが,積極的にゲノム塩基配列を改変 することにより,新たな塩基配列を持つ系統を意図的に作 出することも可能である.目的とする遺伝子領域内の特定 塩基の改変にはジーンターゲティング技術やゲノム編集技 術が有効であり,少なくとも一部の作物では実現可能な技 術レベルに達しつつある.一方でジーンターゲティングや ゲノム編集を利用する際には標的遺伝子の構造やコードさ れるタンパク質の機能の理解が必須だが,実際には優良形 質に直結する塩基配列情報が明らかになっている場合は少 ない.さらに,これらの技術はほとんどの場合で遺伝子組 み換え技術を利用するため,食糧としての作物の改良には 社会的受容性の問題が存在する.近年,遺伝子組み換え技 術を用いるが最終的に確立された系統に遺伝子組み換え操 作の痕跡を残さない塩基配列改変技術(new plant breeding techniques: NBT)の開発が海外を中心に進められており, このような技術の安全性や有効性,さらには今後の法規制 や社会的受容性に注目が集まっている(Lusser et al 2012). このようなジーンターゲティングやゲノム編集において は,標的ゲノム領域のアクセシビリティ―(ヌクレアーゼ などのエフェクタータンパク質と DNA の接触しやすさ) がその効率に大きく影響すると考えられる.局所的なゲノ ム領域のアクセシビリティ―を決める要因はゲノム DNA のエピジェネティックな状態(エピゲノム状態)だが,エ ピゲノム状態を積極的に制御してゲノムの構造改変の効率 化を目指す試みは作物育種の分野ではこれまでに全く例が ない. 本稿では,イネをモデルとし,これまでほとんど手が付 けられていなかったエピゲノム制御の観点からの作物ゲノ ムの構造改変の試みを紹介する.

2.植物におけるエピゲノム制御

ゲ ノ ム DNA は 核 内 で 4 種 類 の ヒ ス ト ン タ ン パ ク 質 (H2A,H2B,H3,H4)の 8 量体に巻きついた状態のヌク レオソームとして存在し,ヌクレオソーム単位の集合状態 (クロマチン構造)が局所的な DNA 領域に対する様々な タンパク質のアクセシビリティ―を決定する.ゲノム塩基 配列の安定性にはクロマチンの構造が関与していることが 知られており,クロマチン密度が高い凝集したゲノム領域 では減数分裂組み換えや遺伝子発現が起こりにくい.クロ マチン構造は DNA 中のシトシンやヒストンタンパク質の 化学修飾によって制御され,これらの修飾状態を認識・結 合するタンパク質がクロマチン構造変化を介して他の核タ ンパク質に対するアクセシビリティ―を決定すると考えら れている.DNA やヒストンの化学修飾状態制御は塩基配 列の変化を伴わずにクロマチン構造変化を介して遺伝子発 現を変化させることができ,かつ安定に次世代に伝えられ 得る性質を持つことからエピジェネティックな制御と呼ば

総 説

(2)

れ,ゲノム全域のエピジェネティックな動的平衡状態を表 すエピゲノムという言葉も近年使われるようになってきて いる. 植物ゲノム DNA に見られるエピジェネティックな化学 修飾はシトシンのメチル化である.一般に植物のゲノム DNA では CG 配列および CHG 配列(H は C,A,T のい ずれか)に加えて CHH 配列のシトシンのメチル化が見ら れ,それぞれの配列のメチル化を司る主要な酵素が異なっ ている(Law and Jacobsen 2010).CHH 配列のメチル化は 24 ヌクレオチドの小分子 RNA が関与する経路であり, CG 配列・CHG 配列のような対称的な位置のシトシンのメ チル化維持とは異なる de novo メチル化を行う. 一方,ヒストンタンパク質についてはヌクレオソームの コアから外側に飛び出している N 末端部分が様々な化学 修飾を受ける(Luger et al 1997).主にヒストン H3 および H4 の修飾に関わる酵素が詳しく解析されており,アセチ ル基,メチル基,リン酸基などが特定アミノ酸の側鎖に共 有結合される.シトシンメチル化およびヒストン修飾のい ずれの場合も,修飾基を付加するタンパク質(writers), 修飾基を取り除くタンパク質(erasers),修飾基を認識し て結合するタンパク質(readers)が存在する.これらに加 えて,新たに合成された DNA 鎖にヒストンを供給するシャ ペロンや,DNA 上でのヌクレオソームの位置決定に関わ るクロマチンリモデリングタンパク質などの機能により局 所的なゲノムのアクセシビリティ―が決定される(Law and Jacobsen 2010). エピゲノム制御に関わる植物の因子については双子葉モ デル植物であるシロイヌナズナで圧倒的に研究が進んでい るものの,作物におけるエピゲノム制御因子の解析例は乏 しい(Mirouze and Vitte 2014).作物で比較的解析が進んで いるのはイネであり,これまでに幾つかのエピゲノム制御 因子の機能欠損系統が確立・解析されている.シロイヌナ ズナで単独の遺伝子にコードされる因子がイネでは複数の 遺伝子にコードされている場合が多いが,そのうちの一つ の遺伝子のみがエピゲノム制御機能を担っている例も示さ れている(Hu et al 2014). イネで詳細な解析が行われているエピゲノム制御因子機 能欠損系統のほとんどはカルスへの遺伝子導入により作出 されたノックアウト・ノックダウン系統か,カルスの長期 培養により得られたトランスポゾンの挿入変異系統である (Mirouze and Vitte 2014).しかし近年,イネにおいてカル ス形成によりエピゲノムの状態変化が誘導され,世代を越 えて維持されることが示されており(Stroud et al 2013), カルス化を経て確立されたエピゲノム制御因子機能欠損系 統の解析には注意が必要である.

3.作物における減数分裂期組み換え位置の制御

交配育種による品種改良は,減数分裂期組み換えによっ て両親系統の遺伝情報が分離・再結合され,新たなハプロ タイプを生み出すことに依存している.優良形質を支配す る遺伝子と不良形質を支配する遺伝子が染色体上で隣接し ている場合には,多数の交配後代集団から両遺伝子の間で 組み換えが起きた個体を選抜する必要があるが,一般に減 数分裂期組み換えが起こる位置は染色体上でホットスポッ トと呼ばれる位置に集中しており,連鎖した優良形質と不 良形質を分離するためにはしばしば膨大な数の交配後代集 団を扱う必要がある(Fukuoka et al 2009).現状ではゲノム 中の特定領域に減数分裂期組み換えを誘導することは困難 であり,多数の交雑後代集団から目的とする染色体領域の 交換が置きた個体を DNA マーカーにより効率よく選抜す る技術の開発に力が注がれている.また,近年のゲノム編 集法の急速な普及により,特定染色体領域に二本鎖 DNA 切断を誘導することは多くの生物で容易になってきている が,ゲノム編集技術を利用して特定の位置に減数分裂期組 み換えを誘導した例はこれまでに報告されていない. 植物の染色体では主にセントロメア周辺領域に機能を 失ったトランスポゾンの残骸が集積し,DNA メチル化率 も高いが,こういった領域内にも機能的な遺伝子が散在し ていることが示されている(Nagaki et al 2004).セントロ メア周辺領域はヘテロクロマチンと呼ばれるヌクレオソー ムが高度に集積した状態にあるため,セントロメア周辺領 域に活性な遺伝子が存在することは驚きであった.セント ロメア領域近傍では減数分裂期組み換えが起きないため, これらの領域に存在する遺伝子群は連鎖不平衡の状態にあ り,進化や育種の過程で分離することなく保存されてきた と考えられる.セントロメア周辺領域に減数分裂期組み換 えを誘導することができれば,これまで自然界には存在し なかったハプロタイプの創出につながることが予想され, 既存の遺伝資源の持つポテンシャルを高め得ることが期待 される. 近年になって,シロイヌナズナとイネでヘテロクロマチ ン領域のエピジェネティックな状態制御に関わる因子が減 数分裂期組み換えの位置や頻度の決定に関与することが明 らかになり,エピゲノム状態の制御を介して既存の遺伝資 源から新たなハプロタイプの創出を実現できる可能性が示 さ れ た(Habu et al 2015; Melamed-Bessudo and Levy 2012; Mirouze et al 2012; Yelina et al 2012; Yeliena et al 2015).以 下ではイネのジャポニカ x インディカ交配におけるエピゲ ノム制御因子と減数分裂期組み換えの関係解析から得られ たデータについて詳細を紹介する.

DECREASE IN DNA METHYLATION1 (DDM1)は主に 不活性なクロマチン状態の維持に関わるシロイヌナズナの 核タンパク質であり,クロマチンリモデリング因子として ヌクレオソームの配置に関わると考えられている(Vongs

et al 1993; Brzeski and Jerzmanowski 2003).イネには DDM1

と高い相同性を持つ遺伝子が 2 つ存在し,どちらも様々な 組織・器官で発現している(Higo et al 2012).これまでに これら 2 つの遺伝子の発現を同時にノックダウンしたイネ 系統(asDDM1)が確立され,詳細な解析が行われた(Habu

(3)

et al 2015: Numa et al 2015).次世代シーケンサーを用いた asDDM1 のゲノム全域のメチル化状態解析の結果から,イ ネ DDM1 はシロイヌナズナと同様にセントロメア近傍ヘ テロクロマチン領域の CG 配列および CHG 配列のメチル 化維持に必要だが,シロイヌナズナでは見られないセント ロメア領域の CHH メチル化抑制機能も持つことが示され た(Numa et al 2015).さらに,イネのさまざまな組織・ 生育段階におけるトランスクリプトームデータと合わせて みると,イネの DDM1 は不活性なヘテロクロマチン領域 のみではなく,活性な遺伝子領域の DNA メチル化にも関 与していることが明らかになった(Numa et al 2015).こ れらのデータは反復配列の割合やエピゲノム修飾分布が異 なるシロイヌナズナとイネの間でエピゲノム制御因子の機 能分化が起きたことを示すものと考えられる. asDDM1(日本晴系統)を野生型カサラスと交配し,自 殖後代の F2 集団における遺伝子型解析を行った結果,3 番染色体のセントロメア領域内に野生型の日本晴・カサラ ス交配では見られない減数分裂期組み換えのホットスポッ トが新たに生じていることが明らかになった(Habu et al 2015).検出された組み換えホットスポットは asDDM1 で CG 配列および CHG 配列のメチル化が低下しているセン トロメアリピート境界領域付近の約 8 kb の範囲に限定さ れた.さらに野生型 F1(日本晴 x カサラス)をヒストン 脱アセチル化酵素の阻害剤(トリコスタチン A :TSA)で 処理した場合にも 3 番染色体セントロメア領域で減数分裂 期組み換え位置がセントロメアの中央寄りに移動している ことが明らかになった(Habu et al 2015).これらのデータ はイネにおいてエピゲノム制御因子の機能制御を介して減 数分裂期組み換え位置を変更できることを示している.シ ロイヌナズナおよびイネでは DNA メチル化とヒストン脱 アセチル化が密接な相互作用を持つことが知られており, TSA 処理によって反復配列領域の DNA 脱メチル化を誘導 できることが明らかになっている(Lawrence et al 2004; Habu et al 2015).TSA のような薬剤を使った減数分裂期 組み換え位置の変更は遺伝子組み換え技術を用いないた め,さまざまな作物における実用的な利用に有効であると 思われる.

4.分離歪みの解消

交配育種においては,しばしば遠縁関係にある個体間の 交配が行われるが,その際に問題になる現象の一つが分離 歪みである.通常,ヘテロ接合体においてそれぞれの親由 来の対立遺伝子は均等に配偶子形成に関わり,メンデルの 法則に従って次世代でホモ・ヘテロ・ホモ= 1:2:1 の比 率で分離する.しかし,対立遺伝子の配偶子への取り込み 頻度に差がある場合や,特定の遺伝子の組み合わせが不稔 をもたらす場合などには,次世代でメンデルの法則から外 れた分離比が観察され,これを分離歪みと呼ぶ.分離歪み は様々な生物で見られ(Burt and Trivers 2006),イネのジャ

ポニカ・インディカ間交配においても観察されている (Harushima et al 1996)が,その原因は多様と考えられ, 作物育種における分離歪みを克服するための有効な手段は 確立されていない. これまでにエピゲノム状態と分離歪みの関係を間接的に 示唆するデータがショウジョウバエの SD システムの研究 か ら 得 ら れ て い る(Larracuente and Presgraves 2012).SD 遺伝子座はセントロメア近傍に存在する Rsp 遺伝子座に作 用して分離歪みを誘導することが示されているが,SD 遺 伝子がコードしているのは核から細胞質への物質輸送に関 わる RanGAP と呼ばれるタンパク質であり,Rsp 遺伝子座 は 120 bp のリピート配列であるため,これらが関わる分 離歪みの機構は長らく謎だった.興味深いことに分離歪み の強さは Rsp 遺伝座のリピート数に依存することが示され ており,リピートの数が多いほど歪みが強い.最近になっ て,生殖細胞におけるトランスポゾンの不活性化に関与す る小分子 RNA の産生経路が SD システムにおける分離歪 みに重要な役割を果たすことが示唆され,核からの RNA 輸送と細胞質でのプロセシングを含む分子モデルが提唱さ れた(Gell and Reenan 2013).このモデルでは,セントロ メア近傍に存在する Rsp 遺伝座のヘテロクロマチン化が起 こらない染色体は減数分裂期に適切な凝縮が起こらず,配 偶子形成に至らないことが想定されており,エピゲノム制 御が分離歪みを誘導する具体的な例と考えられる. イネにおいては,野生型日本晴 x カサラスの交配後代で 3 番染色体の 62 cM 付近に強い分離歪みが出現することが 知られているが,この歪みは圃場および温室で生育した日 本晴 x カサラスの後代に共通して見られ,生育環境の影響 を受けにくい機構が関与していると考えられる(Harushima et al 1996; Habu et al 2015).一方,やはり 3 番染色体の 160 cM 付近に見られる分離歪みは圃場と温室でパターン が異なり,環境要因に影響されやすい仕組みが関与してい ると思われる(Habu et al 2015).TSA 処理した F1(日本 晴 x カサラス)から得られた F2 集団では,62 cM 付近の 歪みは影響を受けなかったが,160 cM 付近の歪みは消失 した(第 1 図).さらに上述の asDDM1x 野生型カサラス 交配後代においては,160 cM 付近の歪みが消失するとと もにセントロメア領域内に新たな歪みの発生が見られた. セントロメア領域内に発生した分離歪みの位置は上述の減 数分裂期組み換えホットスポットの位置と一致しており, 組み換えによるセントロメア領域の分断と日本晴−カサラ スセントロメア領域の新たな結合が分離歪みを誘導した可 能性が考えられる.現状では観察された分離歪みの解消・ 発生の具体的な分子機構は不明であり,エピゲノム状態変 化による遺伝子発現変化を介した間接的な影響の可能性も 残る.しかし,イネ 3 番染色体でエピゲノム状態変化によ る影響を受ける分離歪みがいずれもリピート配列やヘテロ クロマチンが存在するセントロメアとテロメア近傍に見ら れることは,上述のショウジョウバエの SD システムの例 と合わせて,植物においてもエピゲノム制御が分離歪みに

(4)

関与することを強く示唆するものと考えられる.

5.展望

本稿ではゲノム全域のエピジェネティックな状態制御を 介してゲノムのグローバルな構造や組成を改変する可能性 について紹介したが,特定遺伝子領域のエピゲノム状態を 改変し,遺伝子発現やクロマチン構造のアクセシビリティ ―を局所的に変化させる試みもすでに動物で始まっている (Hilton et al 2015).エピゲノムの状態変化が数世紀にわ たって安定に維持されている例(Cubas et al 1999)やエピ ゲノム変化が重要な農業形質に関わる例(Ong-Abdullah et al 2015)が報告され,エピゲノム状態の維持機構もシロイ ヌナズナで次第に明らかになりつつあるものの(Blevins et al 2014),有用農業形質や収量に直結したエピゲノム状態 変化を積極的に維持する技術はまだ確立されていない (Probst and Mittelsten Scheid 2015).また,エピゲノム制御 を介した減数分裂期組み換え位置の変更については,二本 鎖 DNA 切断位置の決定と複数の切断位置から最終的な組 み換え反応を起こす位置を選ぶ過程(クロスオーバーホメ オスタシス)のどちらのステップにエピゲノム状態変化が 影響しているかは興味がもたれる.エピゲノムの制御機構 時間がかかると予想されるが,今後,シロイヌナズナや動 物の先端的な研究成果から作物における実用的なエピゲノ ム制御の方法論が確立され,既存の遺伝資源の幅を大きく 広げる育種技術が実用化されることを願っている.

謝辞

本稿の作成にあたって旧農業生物資源研究所・横尾敬之 博士に貴重な助言をいただいた.本稿で紹介した研究の一 部は JST/CREST 研究予算により行われた.

引用文献

Blevins, T., F. Pontvianne, R. Cocklin, R. Podicheti, C. Chandrasekhara, S. Yerneni, C. Braun, B. Lee, D. Rusch, K. Mockaitis, H. Tang, and C.S. Pikaard (2014) A two-step process for epigenetic inheritance in Arabidopsis. Mol. Cell 54:30-42.

Brzeski, J., and A. Jerzmanowski (2003) Deficient in DNA Methylation 1 (DDM1) Defines a Novel Family of Chromatin-remodeling Factors. J. Biol. Chem. 278: 823-828. Burt, A., and R. Trivers (2006) Genes in confl ict. The biology

of selfi sh genetic elements. Belknap Press, Cambridge Cubas, P, C. Vincent, and E. Coen (1999) An epigenetic

mutation responsible for natural variation in fl oral symmetry. Nature. 401: 157-161.

Fukuoka, S., N. Saka, H. Koga, K. Ono, T. Shimizu, K. Ebana, N. Hayashi, A. Takahashi, H. Hirochika, K. Okuno, and M. Yano (2009) Loss of function of a proline-containing protein confers durable disease resistance in rice. Science 325: 998-1001.

Gell, S.L., and R.A. Reenan (2013) Mutations to the piRNA pathway component aubergine enhance meiotic drive of segregation distorter in Drosophila melanogaster. Genetics 193:771-784.

Habu, Y., T. Ando, S. Ito, K. Nagaki, N. Kishimoto, F. Taguchi-Shiobara, H. Numa, K. Yamaguchi, S. Shigenobu, M. Murata, T. Meshi, and M. Yano (2015) Epigenomic modification in rice controls meiotic recombination and segregation distortion. Mol. Breed. 35:103.

Harushima Y, N. Kurata, M. Yano, Y. Nagamura, T. Sasaki, Y. Minobe, and M. Nakagahra (1996) Detection of segregation distortions in an indica-japonica rice cross using a high-resolution molecular map. Theor. Appl. Genet. 92:145-150. Higo, H., M. Tahir, K. Takashima, A. Miura, K. Watanabe, A.

Tagiri, M. Ugaki, R. Ishikawa, M. Eiguchi, N. Kurata, T. Sasaki, E. Richards, M. Takano, N. Kishimoto, T. Kakutani, and Y. Habu (2012) DDM1 (Decrease in DNA Methylation) genes in rice (Oryza sativa). Mol. Genet. Genomics 287: 785-792. 62 cM 86 cM 160 cM ᪥ᮏᬕ䡔䜹䝃䝷䝇 asDDM1 䡔䜹䝃䝷䝇 ᪥ᮏᬕ䡔䜹䝃䝷䝇 / TSA ฎ⌮ ᳨ฟ䛥䜜䛯ศ㞳ṍ䜏 ఩⨨ 㑇ఏᏊᆺ䛾ฟ⌧㢖ᗘ 䝦䝔䝻 䠚 䜹䝃䝷䝇 䠚 ᪥ᮏᬕ 䝦䝔䝻 䠚䠚 䜹䝃䝷䝇 䠙 ᪥ᮏᬕ 䝦䝔䝻 䠚 䜹䝃䝷䝇 䠚 ᪥ᮏᬕ 第 1 図 日本晴xカサラス交配後代で検出された分離 歪みの特徴とエピゲノム制御の影響. 野生型日本晴xカサラスの交配後代 F2 集団 では 3 番染色体上の約 62 部門 cM および約 160 cM の位置に分離歪みが観察される(白 矢印).TSA 処理した F1 (日本晴xカサラス) から得られた F2 集団では 160 cM 付近の歪 みが消失する.asDDM1xカサラスでも 160 cM 付近の歪みは消失するが,セントロメア 領域(86 cM 付近) に新たな歪み (グレー矢 印) の発生が見られる.

(5)

Hilton, I.B., A.M. D'Ippolito, C.M. Vockley, P.I. Thakore, G.E. Crawford, T.E. Reddy, and C.A. Gersbach (2015) Epigenome editing by a CRISPR-Cas9-based acetyltransferase activates genes from promoters and enhancers. Nat. Biotech. 33:510-517.

Hu, L., N. Li, C. Xu, S. Zhong, X. Lin, J. Yang, T. Zhou, A. Yuliang, Y. Wu, Y.R. Chen, X. Cao, A. Zemach, S. Rustgi, D. von Wettstein, and B. Liu (2014) Mutation of a major CG methylase in rice causes genome-wide hypomethylation, dysregulated genome expression, and seedling lethality. Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 2111:10642-10647.

Larracuente, A.M., and D.C. Presgraves (2012) The Selfish

Segregation Distorter Gene Complex of Drosophila melanogaster Genetics 192:33-53.

Law, J.A., and S.E. Jacobsen (2010) Establishing, maintaining and modifying DNA methylation patterns in plants and animals. Nat. Rev. Genet. 11:204-220.

Lawrence, R.J., K. Earley, O. Pontes, M. Silva, Z.J. Chen, N. Neves, W. Viegas, and C.S. Pikaard (2004) A Concerted DNA Methylation/Histone Methylation Switch Regulates rRNA Gene Dosage Control and Nucleolar Dominance. Mol. Cell 13:599-609.

Luger K., A.W. Mäder, R.K. Richmond, D.F. Sargent, and T.J. Richmond (1997) Crystal structure of the nucleosome core particle at 2.8 A resolution. Nature 389:251-260.

Lusser M, C. Parisi, D. Plan, E. Rodríguez-Cerezo (2012) Deployment of new biotechnologies in plant breeding. Nat Biotechnol. 30:231-239.

Melamed-Bessudo, C., and A.A. Levy (2012) Deficiency in DNA methylation increases meiotic crossover rates in euchromatic but not in heterochromatic regions in Arabidopsis. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 109:E981-E988. Mirouze, M., M. Lieberman-Lazarovich, R. Aversano, E.

Bucher, J. Nicolet, J. Reinders, and J. Paszkowski (2012) Loss of DNA methylation affects the recombination landscape in Arabidopsis. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 109:5880-5885. Mirouze, M., and C. Vitte (2014) Transposable elements, a

treasure trove to decipher epigenetic variation: insights from Arabidopsis and crop epigenomes. J. Exp. Bot. 65:2801-2812.

Nagaki, K., Z. Cheng, S. Ouyang, P.B. Talbert, M. Kim, K.M. Jones, S. Henikoff, C.R. Buell, and J. Jiang (2004) Sequencing of a rice centromere uncovers active genes. Nat. Genet. 36:138-145.

Numa, H., K. Yamaguchi, S. Shigenobu, and Y. Habu (2015) Gene body CG and CHG methylation and suppression of centromeric CHH methylation are mediated by DECREASE IN DNA METHYLATION1 in rice. Mol. Plant 8: 1560-1562. Ong-Abdullah, M., J.M. Ordway, N. Jiang, S.E. Ooi, S.Y Kok,

N. Sarpan, N. Azimi, A.T. Hashim, Z. Ishak, S.K. Rosli, F.A. Malike, N.A. Bakar, M. Marjuni, N. Abdullah, Z. Yaakub, M.D. Amiruddin, R. Nookiah, R. Singh, E.T. Low, K.L. Chan, N. Azizi, S.W. Smith, B. Bacher, M.A. Budiman, A. Van Brunt, C. Wischmeyer, M. Beil, M. Hogan, N. Lakey, C.C. Lim, X. Arulandoo, C.K. Wong, C.N. Choo, W.C. Wong, Y.Y. Kwan, S.S. Alwee, R. Sambanthamurthi, R.A. Martienssen (2015) Loss of Karma transposon methylation underlies the mantled somaclonal variant of oil palm. Nature 525:533-537. Probst, A.V., and O. Mittelsten Scheid (2015) Stress-induced

structural changes in plant chromatin. Curr. Opin. Plant Biol. 27: 8-16.

Stroud, H., B. Ding, S.A. Simon, S. Feng, M. Bellizzi, M. Pellegrini, G.L. Wang, B.C. Meyers, and S.E. Jacobsen  (2013) Plants regenerated from tissue culture contain stable

epigenome changes in rice. eLIFE 2:e00354.

Vongs, A., T. Kakutani, R.A. Martienssen, and E.J. Richards (1993) Arabidopsis thaliana DNA methylation mutants.

Science 260:1926-1928.

Yelina, N.E., K. Choi, L. Chelysheva, M. Macaulay, B. de Snoo, E. Wijnker, N. Miller, . Drouaud, M. Grelon, G.P. Copenhaver, C. Mezard, K.A. Kelly, and I.R. Henderson (2012) Epigenetic remodeling of meiotic crossover frequency in Arabidopsis

thaliana DNA methyltransferase mutants. PLoS Genet.

8:e1002844.

Yelina, N.E., C. Lambing, T.J. Hardcastle, X. Zhao, B. Santos, and I.R. Henderson (2015) DNA methylation epigenetically silences crossover hot spots and controls chromosomal domains of meiotic recombination in Arabidopsis. Genes Dev. 29:2183-2202.

(6)

Functional genome engineering of crops by regulating epigenomic modifi cation

Yoshiki Habu

Institute of Agrobiological Sciences

National Agriculture and Food Research Orgamization

(Kannondai 2-1-2, Tsukuba 305-8602, Ibaraki, Japan)

Summary: The word Epigenome refers to functional dynamics of the genome defi ned by covalent chemical modifi cations

of nuclear DNA and histones. Regulation of epigenome state is important for maintenance of genome integrity through determining positions of meiotic recombination and mutation frequency that are key factors for effi cient crop breeding. Recent progresses in cross breeding utilizing DNA markers and genomic selection have markedly accelerated effi ciency in selection of individuals carrying appropriate genome compositions. However, approaches for active regulation of positions of meiotic recombination and frequency of mutation have been tried only poorly. Here I introduce several recent studies towards establishing active and novel approaches for genome engineering through epigenome regulation.

Keywords: rice, epigenome, meiotic recombination, DNA methylation

Journal of Crop Research 61:81-86(2016) Correspondence: Yoshiki Habu (habu@affrc.go.jp)

参照

関連したドキュメント

An example of a database state in the lextensive category of finite sets, for the EA sketch of our school data specification is provided by any database which models the

A NOTE ON SUMS OF POWERS WHICH HAVE A FIXED NUMBER OF PRIME FACTORS.. RAFAEL JAKIMCZUK D EPARTMENT OF

A lemma of considerable generality is proved from which one can obtain inequali- ties of Popoviciu’s type involving norms in a Banach space and Gram determinants.. Key words

de la CAL, Using stochastic processes for studying Bernstein-type operators, Proceedings of the Second International Conference in Functional Analysis and Approximation The-

[3] JI-CHANG KUANG, Applied Inequalities, 2nd edition, Hunan Education Press, Changsha, China, 1993J. FINK, Classical and New Inequalities in Analysis, Kluwer Academic

The commutative case is treated in chapter I, where we recall the notions of a privileged exponent of a polynomial or a power series with respect to a convenient ordering,

Flumioxazin 51% WDG offers residual and post-emergence control of suscep�ble broadleaf and grass weeds as well as an addi�onal mode of ac�on to assist in the control of

改良機を⾃⾛で移動 し事前に作成した墨 とロッドの中⼼を合 わせ,ロッドを垂直 にセットする。. 改良機のロッド先端