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香川県のヒシ属の調査報告 第1報-香川大学学術情報リポジトリ

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Academic year: 2021

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香川県のヒシ属の調査報告 第1報

坂 口 清 一

高松市番町3丁目19−4

A Repot of the Genus乃●aPain Kagawa

Prefecture,Japan(1)

SeiichiSAKAGUCHI,3−19−4,Banch否,Tbkamatsu760,Jqpan

ある。(第1図)。しかし,現在はユ・−ラシア 大陸とインド大陸とアフリカのナイル河流域に 7種が分布し,北米には分布しない。また第1 図のように三木茂博士はヒシ属の化石を詳しく ま え が き 筆者は香川県の湖沼に分布す−るヒシ属7サ叩α を調査中である。しかし,これまでの文献と比 較すると,いくつかの異なる点がある。水中根 の1節より出る数については,北村・村田(1961) では対生,大滝・石戸(1980)では2∼4とな っている。菓の形や銀歯について−は,牧野(1968) のメビシて∵微昆α朋 Var・γ弘ゐβOgαの菓の形と 鋸歯,北村・村田(1961)のヒシr。あゐp勿0さα の実の形と鋸歯,大穂・石戸(1980)のヒシの 菓の鋸歯,果実の形については,大穂(1980) および大滝・石戸(1980)のオニビシR乃α才α†ば var。J叩0γ乙五cαの果実の形が調査資料とは異な る点があるので第1報として報告する。 調査報告を行うにさきだって,ここ.で北村・ 村田(1961),牧野(1968),大井(1972), 粉川(1976),掘田(1978),大滝(1980), 大滝・石戸(1980)によって,ヒシ属の概要に ついて説明しておく。ヒシ属は固着水生植物で, 1年草の浮美穂物で沈水薬をもたず,多量の養 分を貯えた大形の種子を発芽の時の養分に使い, 短期間に数米もある泥土中より茎を伸して,水 面に菓を拡をヂる。多くの果実はその場所に沈ん でがくの変化した刺で泥中に固定し,越冬して 子葉の1枚は退化し,1枚は種子内に残り養分 器となる。水中茎には1節より2∼4本の羽状 の葉緑素を持つ水中根を出す。7∼10月に虫媒 花の1日花を1個宛開き,子房は2室で胚珠は 片方だけが受精し,養分は子葉に貯える1花1 結実である。分布を拡げるより安全確実さの方 向に進化してきた植物である。白亜紀末の化石 はもう少しよく調べなければならないようで新 生代第三紀の始新世に起因したヒシ属の先祖は, 北米の北部に見られるキョクチビシアんβγγ宜で 十S8 第1図 ヒシの進化(≡∴木博士による,−・都政め). 粉川(1976)より転載。 Sa:バラ目のネコノメソウの類 He:アスナロビシ A:カザリビシ B:ジョウゴビシ C:ヤツイボビシ D:イボビン E:タイリクヒメビンF:n岬αmerよcα柁α G:乃叩αガerrよ H:マルシリェビシⅠ:シリブトビシ J:乃呼αe比r叩eα K:ヒロツノビシ LM;ヒメビシ N:乃叩αぶγgeSよαCα 0:イヌビシ P:コオロビシ Q:オ■ニビシ R:7丁αPαSpい S:コウモリビン T:マンシュウオニビン U:キハラビシ 点線の外は現在も生きて−いるもの. 研究し,ヒシ属は第≡紀周榛要素に所属する植 物の1つで,原始的な形態を持つ化石の色々な ものが,日本で発見されるから,起原地はアジ アであると論じている。日本には現在16種の化 石が発見され,14種が新種で12種は日本だけに 慶する。 日本産のヒシ属の学名と和名は研究者によって

(2)

ヒシ群落型で,オニビシ・ヒシ・メビシが混生 する。 (2)中山町クニ池.新しい住宅の多い農村の田 畑中にあり,15年位前より−・部分を蓮池とした り,8月頃より毎年菓に大虫害を受けたり,3 年前堤防の内側の悠 をコンクリ・−トに改めた り,毎年9一∼10月殆ど排水する等人工のよく加 わる地で広さ25ア−ル,深さ2∼3m底は摺 鉢型でヒシガガブタ群落型で,ヒ・ンの単生地で ある。 (3)三谷町通谷小池.最初に中井京氏が採集 (1981年11月8日)した。低山の谷間にあり殆 ど人エの加わらぬ,東西一両北34×36m−26× 21mの小池で,底は摺鉢型で深さ2m位でヒシ 群落型でヒシの単生地である。 (4)西植田町池田の上池.最初に中井京氏が採 集(1981年11月2日)した。農村の丘に続く小 高い谷間にある人工の余り加わらない小池で, 底は摺鉢型で,深さ2m位でヒシガガブタカ群 落型で,ヒシとメビシの混生池である。 (5)≡谷町通谷のコモ池.最初に中井京氏が採 集(1981年11月2日)した。低山の谷間の奥に あり人工の余り加わらない小池で,東西一南北 60×40nl−−14×40m,探さ6m,底は摺鉢型に 近く,ヒシガガブタ群落塑で仮称サヌキビシの 単生地である。 2 調査方法 各地の環境・形・堤防の構造・広さ・底の形 ・深さ・水草の大安を観察した。次にヒシ属に ついて群落型(ヒシ・ヒシガガブタ・ヒシガガ ブタトチカガミの≡二型)と分布種を調査し,可 能な限り花・果実・水中根のついた茎葉を採集 し,階乗・液浸標本とした。果実は茎葉付や水 底のものが入手難のため,10月∼12月上旬に池 の水際に集まる果実を多数採集し調査資料とし た。また池近くの60∼84才の方に他の環境変化 やヒシ属の果実の形・大きさなど尋ね参考とし た。 計測法は果実の左右突起刺間の長さ・その角 度と,前後突起か前後突起刺の長さ・その間の 長さ・その角度と果実体の厚さと果実体の高さ を測定した。 ー・致していない。今回,筆者が対象にした4種 のヒシ属の学名と和名は,北村・村田(1961) にしたがった。すなわち,ヒシア.ゐ宜8p宜耽0さα Roxb.var。IinunaiNakano,イボビシ

T。bispinosa Roxb.var.Makino Nakano,

オ・ニビシア.九α≠α彿βL.var・。JαpO7も宜¢α

Nakai,およびメビシT natans L.var,

クⅦあβOgα Makino である。 稿を始めるに当たり御指導を下さっている京■ 都大学の村田源先生と調査資料を多数提供され た中井京氏に謝意を表する。 調査地点と調査方法 1 調査地点と5つの他の概要 人工の溜他のヒシ属が全滅すると,人為的手 段の他に種子を運ぶものが殆どないため容易に 生えない。最近では胃の薬用や食用としての利 用は激減しており,城を守るのに使う必要もな く,溜池は一・部蓮池や養魚池にしたり,堤防を コンクリ・−トで修築したり,俗に「ゆる」とい う排水口を塞ぐという理由で,一冬池を乾してヒ シ属を全滅さす等人為的手段が変化しているの で,ヒシ属の分布を妨げられ香川町浅野の林衛 門地や国分寺町国分の関の他のように,近くの 池にヒシ属が多く生えていても生えない弛も多い。 香川県には自然の湖沼は殆どないが,人工池 が全国中兵庫県に次いで多く,県の台帳に記録 されているものだけでも18,000余りもある。そ の他の内で,ヒシ属の多く見られる満濃町の二 つの小池と,国分寺町国分の赤石地と,香川町 浅野の馬浜津池と牟礼町原の小池と高松八乗の 源氏池・高柳池と西植田町池田のカゴ池・上池 と三谷町通谷小池・コ・モ池・実相寺の小池とw 宮町の辻堂池と中山町のクニ池・フクロヤ他の 15の他の不充分な調査である。 次は調査資料を多く採集した他の概要である。 (1)辻堂池い新しい住宅の多い市街周辺の農村 中にあり,古くから堤防の変化もなく,毎年12 月養魚関係で短期間大部分の水を排水するが, 年内よりすぐに水を溜める池で人工の加わるの が少ない。広さ8へクタ・−ル位,深さ5m位で 底は摺鉢型なるも南部は泥土が1mも溜まる。

(3)

調査結果と考察 1.ヒシ属の分布と群落 香川県内の溜他には前記学名のヒシが最も多 く,次はオニビシで,メビシは少なく,イポピ シは更に少なく分布する。 ヒシ群落型はヒシ■ヒシガガブタ・ヒシガガ ブタトチカガミの三型とも分布するが,その多 少は更に調査したい。 2.ヒシ属の菓の形態 第2図Aのようにヒシの葉身には基本型aと

bの二型がある。a型は左右の端が円く下半は

低い低い三角形の広い菱形で,左右が4∼6cm, 上下が2.5∼4.5cmで緑にやや不正の小鋸歯が左 右に各12∼18位あり,下半上部に数個続いている。

b型菓身はa塾より左右の円みが少なく,下半

が低い三角形の菱形で,左右が2・5∼3・5cm上下 が2.5∼3cm位で,a型より小さい。不整の鋸歯 はa型より大きく左右に各8∼12位ある。葉柄 はa型は長さが10∼20cmb型は5∼13cln位で, 上方に長橋円形のふくらみがあり,菓身の表面 は両方とも緑色で裏面汚緑色で,葉柄の裏と裏 面に長軟毛が多く薬身裏面の隆起脈に特に毛が 多い。 第2図Dのようにオエビシの葉身は下半が低 い三角形の菱形で,大きさはヒシのa型に似て 左右が4∼6.5c恥上下が4∼5.5cm位である。 不正の鋸歯はa型よりやや大きく,左右に10∼ 15位あって,下半にヒシのa型より少ない。葉 柄や色はヒシのa塾に似るも毛はa型より少な いものがある。ただ標本が少ないから再検討し たい。 第亭図Cのようにメビシの菓身はヒシのb型 に近いが上半の三角形は高く,下半の三角形は 低い三角形の菱形で,左右上下とも3∼4cmで,

第2図 ヒシ属の薬の形臥A‥ヒシ,B‥仮称“サヌキビシ”,C‥メビシ,D:オニビシ,

A中のaとbは本文中のa塑とb型を示している。図中の実線は2cmを示す・

(4)

や太い。辻堂地産を計測し表示する(第1表)。 第3図bのようにメビシはオニビシより小さ く細い。頂環は埋まるが肩より高く出る。左右 突起刺は水平より上にあがり1800より小なるも のが多く,オニビシより全形比で長い。前後突 起刺の形とそのつく角度に変化が多く,オニビ シより全形比で細く長いものが多く,四方の刺 も全形比で長い。辻堂池・上地産を計測し表示 する(第1表)。 第3囲Cのようにヒシはメビシに似た点が多 く,頂環は肩に埋まるも肩より高く,左右突起 刺も細く長く角度とともに変化が多い。前後突 起には刺がなく長さは0.1∼0.8cmと変化が甚だ 大で形にも色々あるも刺はない。短いのが普通 塑で多い。辻堂地・クニ地・通谷小池・上地産 を計測し表示する(第1表)。 第3図dは仮称サヌキビシで,現在の調査点 ではコモ池だけに座し,単生で果実はヒシに近 いが,頂環が全く埋まらず肩は上がらず高く出 て,左右突起刺は長くて上に湾曲し,全体ヒシ より大で,雑種が突然変異か不明だが果実形に 殆ど変化なく固定しているようで,果実幼生も ヒシと異なる。花等よく検討して明かにしたい。 コモ地産を計測し表示する(第1表)。 イボヒシは個体数甚だ少なく再検討する。 以上の外果実の形に変化が多く分類難のもの もある。 混生他に見る変化の大きいヒシの前後の長さ の測定結果を第4図に示す。 葉柄は4∼8cm位あり,上方に長楕円形のふく らみがある。葉身の表は緑で裏は葉柄の裏と共 に帯紅色で,毛は甚だ少ない○鋸歯は不整で大 きく深く左右に各7∼9位ある。 第2図Bのように仮称“サヌキビシ”は菓身 はヒシのb塾とオニビシの中間型で,左右3・5

∼5.5cm,上下は3∼4cmで,毛は多く,不整

鋸歯は左右に9∼12位ある。 イボビシはヒシのb型に近いが資料が少ない から再検討したい。 第3図 ヒシ属の果実の形態。a:オニビシ,b: メビシ,C:ヒシ,d:仮称“サヌキビシ” 図中の実線は2cmを示す・ 3,ヒシ属の果実の形態 第3図aのようにオエビシの果実は大きく太 く,頂環は肩より下に埋まり甚だ低い。左右突 起は太く水平に近いものが多く,前後突起も太 く先に逆刺が左右に10位四方のものにつき,や 第1表 果実各部の計測結果 左右刺間 左右刺間 前後突起 前後刺間 前後刺間 色め の角度0)の長さ¢め ¢め の角度(0) 厚さ¢め 高さ¢め 個体総数 産地 種 類 1∼2.5 1.2′・)1.9 1.5′、)2.5 1.2∼2 1.2∼2 1.4(一2.4 1.9′、・ノ2.4 2 ∼2.5 0 0 4 0 0 0 5 0 3 0 2 0 2 2 3 1 1 70\190 1∼2 7ひ−}180 0.7′\′1 9Cトー180 0.5∼1.3 70、180 0.7∼1 7…80 0.7′■)1 8…00 1.3 11α\480 1.3 6…80 0.9′、−ノ1.4 辻堂池 オニビシ 4 ∼6.5 110∼1901・4∼2・8 同上 メ ビ シ 3 ∼4.5 115∼170 0・9∼1・7 同上 ヒ シ 2.5∼5 70∼150 0・1∼0・8 ク こ池 ヒ シ 2.3∼3.8 50∼120 0・1∼0・2 通谷小池 ヒ シ 3.5∼4.311什)140 0・1 上 池 ヒ シ 3.3∼5 8α∼120 0・1∼0・8 同上 メ ビ シ 4 ∼4.6 110∼130 1・4∼1・6 コ モ池 サヌキビシ 2.3∼3.8 98∼115 0・6∼0・9 4 ∼5.5 2.5∼4 0.7′・)2.3 0.7′■−1.3 0.7′・)1 1∼2.1 3.3∼4.5 2 ′・)2.7

(5)

養分や日照の外,葉を虫害に浸され小形となる 場合も多い。 (4)香川県のヒシ属の果実の形は,単生地より 混生他の方が変化が多く,殊にヒシの前後の突 起の長さに大差があり,その突起の先が鈍角と 鋭角の2傾向が見える。オニビシ・メビシ・ヒ シの混生する辻堂池と,メビシ・ヒシの混生す る上池とのヒシの果実を比較すると,上池のも のに前後突起の長いものが多い傾向が見える0 (5)香川県のヒシ属は雑種をよく作り,個体変 異も多く,よく果実に変化が現われている。適 応性や進化の研究によいように推測される。

引 用 文 献

堀田満.1978.水辺の植物・保育社,大阪・ 北村四郎・村田源1961.原色日本橋物図鑑

草本編中 保育社,大阪

粉川昭平.1976㌧遺体からみたヒシの起原と進 化.太田次郎・増田芳雄・木原弘ニ(編)。 植物の系統と進化.日本放送出版協会,東京 牧野富太阻1968.新日本植物園鑑・北隆館, 東京. 大井次三郎.1972.日本植物誌・至文堂,東京 大滝末男。1980.水草の観察と研究ニュ・−サ イェ・ソス社,東京∴ 大滝末男・石戸忠.1980.日本水草植物園鑑・ 北隆館,東京.

O 1 2 3 4 5 6 7 8mm

O

FF=3三 B

第4図 辻堂池㈱と上池(B)の混生地で見るヒシの 前後突起の長さの変異1横軸は突起の長 さ,縦軸は個体数を示す.図中の白い部 分は鋭角個体,黒い部分は鈍角個体を表 わして)1る. 要 約 (1)香川県のヒシは水中茎の節に1∼8位の水 中板を生ずる。 (2)香川県のヒシ属の葉身の形や鋸歯や生える 毛の多少は複雑である。 (3)香川県のヒシ属の果実の大きさ払 水深や

参照

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