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産業組織論(企業経済論)

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Academic year: 2021

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(1)

産業組織論(企業経済論)

第8回

井上智弘

(2)

注意事項

次回(6/9)は,講義のはじめに小テストを行う.

» 内容は,完全競争市場の均衡を求める問題と(本日講 義を行う)独占市場の均衡を求める問題. 

講義の資料は,授業終了後にホームページにアッ

プしている.

http://tomoinoue.web.fc2.com/index.html

(3)

前回の復習

総余剰

= 消費者余剰 + 生産者余剰 + 政府の財政収支

消費者余剰

= 需要曲線の下の面積 - 支出額

生産者余剰

= 収入額 - 供給曲線の下の面積

(4)

生産者余剰は収入から限界費用の合計を引いた

ものであるため,短期では「利潤 + 固定費用」,長

期では「利潤」と等しくなる.

MC q P VC P' B A » 生産量ゼロの点から,1単位ずつ 生産を増やしていくと,限界費用 分が積み重なっていく.これは生 産量に応じた費用となるため,限 界費用曲線の下の面積は可変費 用と一致する. » 長期には,固定費用はゼロとなる ため,可変費用 = 総費用となる. » 収入 = P’×Q’ = □ACDOである ため,生産者余剰 = ⊿ACBとなる. C D 収入

(5)

完全競争では,限界費用が一定の場合には,生

産者余剰がゼロになる.

VC

前回の復習

P q O MC一定 P’ Q’ 収入 VC

(6)

前回の復習

政府の財政収支

» 税を課すときは,税収として正の財政収支が発生し,補 助金を与えるときは,補助金としての支出が負の財政 収支となる.

(7)

総余剰

= 需要曲線の下の面積-供給曲線の下の面積

需要曲線と供給曲線の高さが一致するところ(両者

が交わるところ)で取引が行われるときに,総余剰が

最大になる.

完全競争市場では需要曲線と供給曲線が交わると

ころが市場均衡となるため,完全競争市場では社会

的な効率性が実現される.

前回の復習

(8)

前回の復習

P* Q* B E S P Q O A D

(9)

前回の復習

限界費用が一定であっても,完全競争市場におい

ては総余剰が最大化される.

» ただし,総余剰=消費者余剰となる. P q S P* E D 消費者余剰 =総余剰

(10)

前回の復習

完全競争市場の均衡から外れたところで取引が行

われる場合,総余剰は小さくなる.

生産者に対して,生産量1単位当たり t の税金(

従量税)を課す場合

» 生産量1単位ごとに t だけ税金がかかるため,追加的 に1単位生産すると,生産費用に加えて t だけ税負担 の費用がかかる. » 税込みの供給曲線は t だけ上にシフトする.

(11)

前回の復習

P’ Q’ B E S P Q O A D S’ F G P” t P* Q*

(12)

前回の復習

税込みの供給曲線 S’と需要曲線 D の交点で取

引が行われるため,市場価格は P’となる.

生産者は受け取った価格から税金を支払うため,

P’- t = P”しか受け取れない.

» 消費者余剰 = ⊿AFP’ » 生産者余剰 = ⊿P”GB » 税収 = t×Q’= □P’FGP” » 総余剰 = 台形AFGB 

死荷重

= ⊿FEG が発生する.

(13)

前回の復習

完全競争市場では効率的な資源配分(生産・消

費活動)が行われるため,政府が市場に介入する

必要はない.

しかし,市場では効率的な資源配分が行われない

場合がある.このことを市場の失敗という.

その1つの理由に市場支配力がある.

» 市場支配力とは,費用を上回る価格を設定することが できる力のことをいう. » 企業が市場支配力をもつケースの1つに独占がある.

(14)

本日の内容

独占市場が生じる理由

独占企業の行動

(15)

独占市場が生じる理由

なぜ,市場で一社しか生産を行っていないのか?

独占企業が利潤を獲得している場合,他の企業も

市場に参入しようとするはず.それにもかかわらず,

一社しか生産を行っていない.

独占市場には,他の企業の同じビジネスへの参入

を防ぐ参入障壁が存在する.

(16)

独占市場が生じる理由

主要な参入障壁

① 生産要素の独占

② 規模の経済

③ 公的な規制

④ その他

» サンク・コスト » 企業の参入阻止戦略 » ネットワーク外部性

(17)

独占市場が生じる理由

① 生産要素の独占

» その産業にとって決定的に重要な資源や生産要素を 支配する独占企業は,他企業の市場参入を妨げること ができる.

② 規模の経済

» 生産量が増加すればするほど平均費用が低くなるよう な産業では,大規模な企業が有利となり,小規模な企 業を駆逐してしまう. » すでに設立されている企業は潜在的な参入企業よりも 費用面で優位性をもつ.

(18)

独占市場が生じる理由

③ 公的な規制

» 政府の規制によって参入が制限され,政府が自ら市場 を独占したり,特定の企業に独占的な営業権を与えたり する場合がある.  通信,電気,ガス,水道などの公益産業  産業政策の一環 » 特許によって,一定期間,法的に独占が認められる.

(19)

独占企業の行動

完全競争市場 → プライス・テイカー

独占市場 → プライス・メイカー

» 市場の需要はすべて独占企業の需要であるため,企業 は生産量を少なくすれば高い価格で販売することがで き,低い価格でよければ生産量を多くすることができる. » 独占企業は,需要曲線上のどの点の生産量と価格の 組み合わせも選択することができる.

(20)

独占企業の行動

企業の利潤関数はπ(Q) = R(Q) - C(Q)である.

» R(Q) は収入 R が生産量 Q の関数として表されること を示す. » C(Q) は総費用 C が生産量 Q の関数として表されるこ とを示す. 

R(Q) = P×Q である.

» 完全競争では,価格 P を定数として扱ったが,独占で は,価格は生産量の関数として,P = P(Q) と表される. » P(Q) は逆需要関数である.

(21)

独占企業の行動

以下では,逆需要関数と(総)費用関数を

と表す.ただし,a,b,c>0 の定数とする.

企業の利潤関数π(Q)は次の式によって表される.

P(Q) = a - bQ, C(Q) = cQ

π(Q) = P(Q)Q - C(Q)

= (a - bQ)Q - cQ = aQ - bQ

2

- cQ

(22)

独占企業の行動

独占市場では,価格は生産量とともに需要曲線に

沿って変化する.

生産量を増やそうとすれば,価格を引き下げる必

要がある.

完全競争市場では,限界収入 = 価格となったが,

独占市場では生産量を増やせば価格が低下する

ため,限界収入は価格よりも小さくなる.

(23)

独占企業の行動

たとえば,P(Q) = 1000 - 10Q のとき

» R(Q) = (1000 - 10Q)×Q = 1000Q - 10Q2 となり, 限界収入は MR(Q) = R'(Q) = 1000 - 20Q となる.  以下では,P = P(Q) のような関数として表記する場合に限り, dP/dQ = P'(Q) と表す. » 生産量が Q = 10 のとき,価格は P(10) = 900 である ため,完全競争における限界収入 = 価格は900である が,独占における限界収入は MR(10) = 800 となる. 

すべての Q について,価格≧限界収入となる.

» ただし,Q≧0 の場合に限る.

(24)

独占企業の行動

逆需要関数,限界収入関数,限界費用関数は次

のようになる.

逆需要関数:

P(Q) = a - bQ

限界収入関数:

MR(Q) = R'(Q) = a - 2bQ

限界費用関数:

MC(Q) = C'(Q) = c

(25)

需要曲線,限界収入曲線,限界費用曲線はこの

ようになる.

MR MC D O c a Q P

(26)

独占企業の行動

注意点:

» 需要曲線は右下がりとなる(b>0 であるため) . » 生産量がゼロのとき(Q = 0),P(0) = MR(0) = a となる ため,Q = 0 のときには需要曲線と限界収入曲線は一 致する. » 限界収入曲線の傾きの絶対値(2b)は需要曲線の傾き の絶対値(b)よりも大きいため,限界収入曲線は需要 曲線よりも下になる. » 限界費用曲線は水平になる.

(27)

π'(Q) = a - 2bQ - c = 0 → a - 2bQ = c 

完全競争と同じように,企業は利潤を最大にするよ

うに生産量を決定する.

» 利潤関数π(Q)を Q で微分して = 0 として計算する. » π(Q) = aQ - bQ2 - cQより, » 独占企業の利潤を最大にする生産量をQMとすると,こ の生産量は,QM = (a - c)/2b となる.

独占企業の行動

MR MC

(28)

独占企業の行動

独占企業の生産量は完全競争の場合に比べて少

なくなり,価格は完全競争に比べて高くなる.

» 独占企業が設定する価格(独占価格)は PM = P(QM) = a - bQM = (a + c)/2 となる. » 完全競争では,企業の生産量は P = MC となるように 決まるため,a - bQ = c より,Q* = (a - c)/b となり,こ のときの価格は,P* = P(Q*) = a - bQ* = c となる. * M * M c P 2 c a P ,価格: Q b c a 2b c a Q 生産量: = − < − = = + > =

(29)

それぞれの市場で決まる生産量と価格を図にする

とこのようになる.

MR MC D O P* = c a Q P Q* QM PM M E F A C

(30)

独占企業の行動

完全競争では,需要曲線と供給曲線(= 限界費用

曲線)の交点が均衡となり,そこで取引数量 Q

*

価格 P

*

が決まる.

独占では,限界収入曲線と限界費用曲線の交点

が均衡となり,そこで取引数量 Q

M

が決まる.そし

て,この取引数量に対応する需要曲線上の点で価

格 P

M

が決まる.

(31)

独占企業の行動

完全競争市場では,企業はプライス・テイカーとし

て行動し,価格と限界費用が等しくなるまで生産す

る.

» 生産量 Q* = (a - c)/b,価格 P* = c より,企業の利 潤はゼロとなる.

0

b

c

a

c

b

c

a

c

cQ

Q

P

)

π(Q

*

=

* *

*

=

×

×

=

(32)

独占企業の行動

独占企業にとっては,需要曲線は右下がりであり,

増産すると価格が下がるため,生産コストと比べて

価格を高く保つために,完全競争と比べて生産量

を抑制する.

» 生産量 QM = (a - c)/2b,価格 PM = (a + c)/2 より, 企業の利潤は以下のようになる. 0 4b c) (a 2b c a c 2b c a 2 c a cQ Q P ) π(Q 2 M M M M = = + × ×=>

(33)

独占企業の行動

独占企業は生産コストに比べて高い価格を設定す

ることで,利潤を得る.

では,独占企業は,生産コストに比べてどれだけ高

い価格を設定するのか?

価格と限界費用がどれだけ離れているかを示す指

標として,ラーナー指数がある.

(34)

独占企業の行動

企業の利潤関数を生産量で微分すると,

となる.

MC(Q)

ε

1

1

P(Q)

MC(Q)

P(Q)

Q

(Q)

P'

1

P(Q)

MC(Q)

(Q)Q

P'

P(Q)

MC(Q)

bQ

P(Q)

c

bQ

bQ

a

c

2bQ

a

(Q)

π'

 −

=

×

+

=

+

=

=

=

=

(35)

独占企業の行動

ε= - (P/Q)/P'(Q) は需要の価格弾力性を表す.

企業はπ'(Q) = 0 となる生産量を選択するため,

となる.この左辺をラーナー指数と呼び,価格の限

界費用からのマークアップ比率を表す.

ε

1

P(Q)

MC(Q)

-P(Q)

0

MC(Q)

ε

1

1

P(Q)

(Q)

π'

=

=

 −

=

訂正 誤: ε= - (Q/P)/P'(Q) 正: ε= - (P/Q)/P'(Q)

(36)

独占企業の行動

ラーナー指数は財の需要の価格弾力性に反比例

する.

εの値が増加すると,ラーナー指数は 1 から 0 に

近づいていく.

» ε≦1 の価格と数量の組み合わせでは,生産を減らす ことで利潤が増加するため,生産を行わない. » ラーナー指数は最大でも1未満となる. » 代替財が存在し,需要の価格弾力性が高いときには, 独占企業といえどもあまり高い価格をつけることはできな

(37)

練習問題

逆需要関数が P(Q) = 70 - Q,費用関数が C(Q)

= 10Q で表されるとする.

① 完全競争市場における均衡価格と均衡数量を求

めよ.

② 独占市場における均衡価格と均衡数量を求めよ.

③ 独占市場の均衡における需要の価格弾力性を求

めよ.

④ 独占市場の均衡におけるラーナー指数を求めよ.

(38)

解答

① 完全競争市場では,価格 = 限界費用が成り立つ.価格 は逆需要関数より, P = 70 - Q であり,限界費用は費 用関数を Q で微分することで,MC = 10 と求められる. したがって,70 - Q = 10 より,均衡数量は Q = 60 とな る.均衡価格は逆需要関数に Q = 60 を代入することに よって,P = 70 - 60 = 10 と求められる. 答え: 均衡価格 = 10,均衡数量 = 60

(39)

解答

② 独占市場では,限界収入 = 限界費用となるように生産 量と価格を設定することで,企業の利潤が最大になる. 企業の収入は,R = P(Q)Q = (70 - Q)Q = 70Q - Q2 で あるため,限界収入は,MR = 70 - 2Q となる.限界費 用は,①と同じように,MC = 10 となるため,70 - 2Q = 10 より,独占市場における均衡数量は Q = 30 となる. 独占市場の均衡価格(= 独占価格)は逆需要関数に Q = 30 を代入することによって,P = 70 - 30 = 40 と求 められる. 答え: 均衡価格 = 40,均衡数量 = 30

(40)

解答

③ 需要の価格弾力性はε= - (P/Q)/P'(Q).独占市場に おける均衡数量は Q = 30,均衡価格は P = 40 であり, 逆需要関数の式から P'(Q) = -1 であるため,需要の価 格弾力性を計算すると, ε= - (40/30)/(-1) = 4/3 となる. 答え: 需要の価格弾力性 = 4/3

(41)

解答

④ 独占市場の均衡価格は,P = 40 であり,限界費用は MC = 10 であるため,ラーナー指数を計算すると, (P - MC)/P = (40 - 10)/40 = 3/4 となる. 答え: ラーナー指数 = 3/4

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