外国人研修生等の研修手当等は租税条約の免税適用がないとされた事例
在留資格基準適合性と租税条約の適用∼ ∼ 税理士 加瀬昇一 はじめに 「研修・技能実習制度」は、多くの日本企業が海外進出した 1960 年代後半頃から、 日本企業の現地法人や合弁会社、取引関係のある企業の社員等を我が国に招へいし、関 連する技術や技能、知識(以下「技術等」という )を修得させた後、その社員等が現。 地の会社に戻り、修得した技術等を母国(開発途上国)で発揮させるための外国人向け 、 ( ) の研修を実施していたことから 国際貢献と国際協力の一環として昭和56年 1981年 に、出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という )の改正により新たに「在留。 資格」として創設された。 年代末の我が国は、少子高齢化の進展、ボーダーレス社会の出現、高度情報化 1980 の進展等により、外国人労働者問題にどう対応するのかということが政治、経済、社会 等あらゆる場で議論され、その結果、平成2年(1990 年)に入管法の改正がされた。 この改正により、新たに在留資格として「研修」が設けられ、これにより、幅広い分 野における研修生の受入れを可能とする途が開かれた。 さらに 、受入機関として、従前の「企業単独型」に加え、新たに中小企業団体等を 通じて中小企業等が研修生を受入れることが出来る「団体管理型」の受入れが認められ たのである。 このことは、開発途上国に対しては、そのニーズにあった技術等の移転による人材育 、 、 成に貢献しやすくなったと同時に 我が国の中小企業においても外国との接点が生まれ 事業の活性化等に役立つようになったという意味で、大きな改正であったといえよう。 その後、平成5年(1993 年)には、研修制度拡充の観点から「技能実習制度」が設 けられ、さらに平成9年(1997 年)には、その滞在期間は2年とされ 「研修」での滞、 在期間と併せて最長3年間となり現在に至っている(注1 。) しかし、その目的が技術等の移転を通じた国際貢献であるにもかかわらず、受入れ機 関の中には、研修生や技能実習生を安価な労働力として受入れ、社会問題となるケース もみうけられるようになった。 本件事例もまさに 「外国人研修制度」の根幹に内在する問題であり、裁決は「たと、 、 『 』 、 え在留を許可され滞在している者であっても 実際に 基準適合性 に該当しない者は 租税条約の免除の適用はない 」と判断した事案である。。 、 「 」 本稿では 各種の課題を抱えながらも毎年増加の一途をたどっている 外国人研修生 問題を検討することとする。 Ⅰ 事案の概況 1 事実と経緯(1)審査請求人(以下「請求人」という )は、生鮮魚及び水産加工品等の販売などを。 目的とする株式会社であり、平成 18年1月30日、外国人研修制度における研修生の 第一次受入機関であるJ社との間で請求人が第二次受入機関として中華人民共和国 (以下「中国」という )の国籍を有するK及びL(以下、この両名を「本件研修生」。 という )を研修生として受入れる旨の研修委託契約を締結した。。 、 、 、 「 」、 (2)平成18年4月24日付で 本件研修生は 〇入国管理局長から 在留資格 研修 在留期間を1年とする在留資格認定証明書(入管法第7条の2)の交付を受け、 平 成18年6月2日、本件研修生は 「研修」の在留資格(在留期限は同日から1年)に、 より、日本に入国し、同月5日から、J社において、日本語の研修を受けるなどし、 同月21日から、請求人において、業務に従事した。 (3)本件研修生は、平成 19年5月 14日、在留資格を「研修」から「特定活動」に変更 するための在留資格変更申請(入管法第 20 条)を行い、同年6月4日、当該申請は 許可され、これにより、本件研修生は技能実習生となった。 本件研修生が在留資格「特定活動」の下で日本において行うことができる活動は、請 求人において、平成18年6月2日から平成19年6月2日までの間「研修」の在留資 格の下で修得した技術等に習熟するため、請求人との雇用契約に基づき、当該技術等 に係る請求人の業務に従事する活動であると指定された。 (4)請求人は、本件研修生に対し、本件期間のうち「研修」の在留資格で滞在した期間 (以下「本件研修期間」という )において、研修手当などを支払い 「特定活動」の。 、 在留資格で滞在した期間(以下 「本件技能実習期間」という )において、給与を支、 。 払った。 また、請求人は、本件研修期間において、アパートの1室(以下「本件宿泊施設」と いう )を借り上げ、本件研修生に対し、これを無償貸与した。。 (5)本件研修生は、平成 19年6月 28日、その受領する給与について、所得に対する租 税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国と中華人民共和国政府との 間の協定(以下「日中租税条約」という)の規定に基づき、所得税の免除を受けるた め 「租税条約に関する届出書」を請求人を経由して原処分庁に提出した。、 、 、 、「 」 なお 本件技能実習期間において 本件研修生は 給与所得者の扶養控除等申告書 を、請求人に提出しなかった。 (6)平成20年3月31日付で原処分庁は、①本件研修生に支払った本件各研修手当及び 本件宿泊施設の無償貸与による本件経済的利益は、非居住者の国内源泉所得(人的役 務の提供の対価)に該当する。②請求人が本件研修生に支払った本件各給与は、給与 所得に該当する。(本件各研修手当 本件経済的利益及び本件各給与を併せて以下 本、 「 件手当等」という )③本件各研修手当及び本件各給与は、源泉所得税額を差し引い。 た手取額(以下「税引手取額」という )であるから、税引手取額を源泉所得税込み。 の金額に逆算した金額を源泉徴収の対象となる支払額とする計算方法(以下 「グロ、 スアップ計算」という )に基づいて源泉徴収税額を計算したうえで、本件期間の各。 月分の源泉所得税の各納税告知処分等を行った(同年7月4日付で、グロスアップ計 20 算によらない方法により減額した )が、請求人は、この処分等を不服として平成。 年8月5日に審査請求を行った。
2 原処分庁の主張 (1)租税条約に規定する所得税の免除の適用。 請求人は次のとおり、本件研修制度に従った研修又は技能実習を行っておらず、本件 研修生を請求人の業務に従事させ、その対価として本件手当等を支払っているのである から、本件手当等は研修又は実習のために受け取る給付又は所得であるということはで きず、ひいては租税条約第 21 条に規定する生計、教育又は訓練のために受けとる給付 又は所得には該当しない。したがって、所得税の免除の適用はない。 ①研修制度 イ)研修制度は事前に申請した研修計画に基づく研修をおこなわなけれけばならないと ころ、申請した塩蔵品製造等の水産加工に係る研修を行っておらず、所定時間外作業 も行っている。 ロ)本件研修生が行う作業・業務は同一の作業の単純反復の繰り返しではないものとさ れているところ、請求人の事業である魚介類販売業における作業は、同一の作業の単 純反復を繰り返すものである。 ②技能実習制度 イ)技能実習制度では、技能実習に従事する技能実習生の職種・作業は、修得技能の評 価の対象である職種作業に限定されているところ、請求人の事業である魚介類販売業 は、当該対象職種・作業に該当しない。 (2)本件研修手当は非居住者の国内源泉所得 ①居住者の判定時期 本件研修生の1年以上の在留が確定するのは、技能実習を受けることが確定した時 点であって 、非居住者と認定した期間においては、技能実習を受けることが確定し ておらず、1年以上の在留が確定しているとはいえないから、本件研修生は居住者で はない。 ②国内源泉所得 本件各研修手当は、請求人の業務に従事した対価と認められるから、研修手当が実 費弁償的な金額を超えるものであるかどうかは、国内源泉所得にあたるかどうかの判断 要素にはならない。 3 請求人の主張 (1)租税条約に規定する所得税の免除の適用。 本件研修生は、現に「研修」又は「特定活動」の在留資格を有しており、中国政府及 び日本国政府が認めた研修生又は実習生であり、次のとおり、本件研修制度に沿った活 動をしているから、日中租税条約第 21 条に規定する生計・教育又は訓練のために受け とる給付又は所得に該当する ①研修制度 本件研修生は、水産加工における包丁の技術の修得、日本語などの研修を実際に行っ ている。
②技能実習制度 請求人の職種・作業は、H機構の職員が巡回指導の際に確認しているから、本件研修 制度の対象となる職種・作業と認められたものである。 (2)本件研修手当は非居住者の国内源泉所得 ①居住者の判定時期 本件研修生は、日本での在留資格を有し、実際に原処分時には1年以上在留している のであるから、居住者である。 ②国内源泉所得 本件各研修手当は、生活費等の研修に必要な範囲の実費弁償的な金額であるから、国 内源泉所得には当たらない。 Ⅱ 裁決の要旨 〈棄却・平成21.3.24裁決・裁決事例集第77集232頁〉 、 、 、 「 」 請求人は 外国人研修生等に支払った研修手当等について 研修生等は 現に 研修 又は「特定活動」の在留資格を有しており、中国政府及び日本国政府が認めた研修生又 は実習生であり、また、実際に水産加工における包丁の技術、日本語などの研修を行っ ているから、本件研修生が受領した研修手当等は、日中租税条約第 21 条に規定する所 得税の免税の適用がある旨主張する。 しかしながら、租税条約第 21 条の事業修習者又は研修員(以下「事業修習者等」と いう )は、在留資格をもって日本に滞在している者であり、許可された在留資格に応。 じたそれぞれの活動を行うことができるのであるから、技術等の修得をする活動を行う 「研修」などの資格をもった者はその在留資格の基準に適合する活動を行わなければな らず、たとえ、在留を許可され滞在している者であっても、在留資格の基準に適合しな いような活動を行っている者にあっては、租税条約第 21 条に規定する事業修習者等に は該当しないと解されるところ、請求人は、水産加工品梱包方法など研修計画書に記載 された研修を行っていないことなどからすれば、本件研修生は 「研修」等の在留資格、 基準に適合するような活動を行っている者とはいえず、租税条約 21 条に規定する事業 修習者等には該当しないので、研修手当等について、租税条約に規定する租税の免除の 適用はない。 Ⅲ 研究・・・・・結論に賛成 1 問題の所在 本件事案における争点は、本件手当等について日中租税条約に規定する租税の免除の 適用があるか否かである。 請求人は、本件研修生は現に「研修」又は「特定活動」の在留資格を有しており、実 際に研修を行っているから、免税の適用がある旨主張したが、原処分庁は事前に申請さ れた「研修計画」どおりの研修がなされておらず、しかもその作業・業務は「同一作業 の単純反復を繰り返すもの」であり、さらに「所定時間外作業」も行っている。
又、請求人の事業である「魚介類販売業」は、技能実習制度の対象職種・作業に該当 しないとして、本件手当等は所得税の免除の適用はないと主張した。 これらの主張に対し、審判所は、技術等の修得をする活動を行う「研修」などの資格 をもった者はその在留資格の基準に適合する活動を行わなければならず、たとえ、在留 を許可され滞在している者であっても、研修計画書に記載された研修を行っていないこ となどから 「在留資格基準」に適合するような活動を行っている者とはいえず、よっ、 て租税条約第 21 条に規定する事業修習者等には該当しないので、租税条約に規定する 租税の免除の適用はないと裁決した。 本件事案において審判所が適用要件とした「在留資格基準適合性」を踏まえ、何かと 課題の多い「外国人研修制度」を検証し、日中租税条約における租税免除の適否につい て考察することとする。 2 外国人研修制度 (1) 外国人研修制度の概要 研修・技能実習制度は、研修生や技能実習生への技術・技能移転等を通じ、その国の 経済発展を担う人材育成を目的とする制度であり、日本の国際協力・国際貢献の重要な 一翼を担っているものである。 研修生・技能実習生制度は、ともに外国人に我が国の産業・技能・知識を移転するこ とを通じ人材育成に協力する点においては、まったく同じ性格のものであるが、その要 件や内容には以下のような相違点がある。 (2)研修制度と技能実習制度の主な相違点 ①研修生は「研修 、技能実習生は「特定活動」としての在留資格」 (イ)研修は、入管法で「公私の機関により受け入れられて行う技術、技能又は知識の 修得をする活動と定められており(入管法第2条の2、同法別表第一の四 、この要件) に該当することを「在留資格該当性」という。 又、外国人が研修制度により、入国、在留するためには 「研修」の在留資格を取得、 することが必要とされ、その上陸許可の基準として入管法第7条第1項第2号の基準を 定める省令(以下「基準省令」という)によって詳細に定められており、この基準に適 合することを「基準適合性」という。 研修の基準は、1号から9号まで規定されており、いずれの基準も満たしていなけれ ば当該研修生は入国することができない。1号から3号は主に研修生本人に係る基準で あり、4号から9号は主に受入れ機関の研修実施体制に係る基準である。 この「在留資格該当性」と「基準適合性」という二つの要件を満たしている場合に初 めて、研修生を受け入れることができるとされ、本件事案において審判所がその適用要 件とした「在留資格基準適合性」もこれらと同義語であると解される。 研修生を受け入れた後においても、受け入れ機関、送り出し機関、研修生が相互に協 力し、これらの要件を遵守することは当然に求められている。
(ロ)技能実習制度は、研修とは異なる制度である。 研修が技術等を修得する者であるのに対し、技能研修は「研修」の在留資格をもって 在留し、研修で一定の水準に達したこと等を「要件」として、より実践的かつ実務的に 習熟することを目的として移行するのであり、入管法上の在留資格は「研修」から「特 定活動」へと変更になる。 ここでいう「移行に当たっての要件」とは、イ.全研修期間の6分の5程度を経過し た時点で、国の技能検定、又は(財)国際研修機構(以下「JITCO」という )が。 認定した機関の評価システムにより、研修生が一定水準(国の技能検定基礎2級相当) 以上の技術・技能を修得していることや、ロ.研修状況・生活状況が良好であること、 ハ.さらに研修生受け入れ企業から提出された技能実習計画が、研修成果を踏まえた適 正なものであると認められることの3要件すべてをクリアしたものでなければならな い。 技能実習にあたり「技能実習実施制度に係る出入国管理上の取扱に関する指針 (以」 下「技能実習告示」という )にそって技能実習を実施することが要求される。。 ②研修の対象となる業務・職種 (イ)基準省令では、研修生が修得しようとする技術、技能又は知識が同一の作業の反 復(単純作業)のみによって修得できるものではない業務であるとしている。 (ロ 技能実習の内容は研修活動と同一の種類の技術・技能等であることを前提として) 、 技能実習移行対象職種が定められている(注2 。) ③労働者性の有無 (イ)研修生は、前述したごとく 「∼技術、技能又は知識の修得をする活動」を目的、 、 、 ( )。 として在留する者であり よって労働者性はなく 就労は認められていない 法19条 しかし、生活に要する実費(食費、衣料費・教養娯楽費・電話代等その他の雑費)と して研修手当を支払うことは問題ないとされているが、研修手当を研修成果により増減 することは、生活費の実費弁償という研修手当の性格から認められていない。 又、時間外や休日に研修を行うことはあり得ないのである。 (ロ)技能実習生は、研修を終了した者であって、研修を行っていた第二次受入れ機関 ( 、「 」 。) 、 と同一の機関 以下 実習実施機関 という との雇用契約に基づき技能実習を行い さらに実践的な技術・技能を修得しようとする者であり、労働基準法上の「労働者」と して取り扱われる。 雇用契約は、日本人従業員と同等以上の報酬を受けることを内容とするものであるこ とが求められ、時間外労働や休日労働等においても所定の割増賃金を支払う等、労働関 係法規に基づき保護されている。 ④技能修得のための担保措置 (イ)研修計画の作成とこれに基づく研修履行 基準省令は研修の中に実務研修が含まれている場合は、原則として研修総時間の3分 の1以上を「非実務研修」に当てることとされている。
この非実務研修には、イ.日本語教育を行うこと、ロ.研修を実施する上での安全衛 生上の留意点を教えること、ハ.我が国における生活上の留意点等が含まれる。 又、第一次受入れ機関は、研修を「監理」することが義務づけられており、その監理 の一環として、非実務研修の重要な部分を、研修生全員に対して実効ある方法で行うこ とが望まれている。 非実務研修を実施した場合、その実施状況を「研修日誌」に記録することが義務づけ られている。 非実務研修を研修計画どおりに実施しなかった場合、例えば第一次受入れ機関が、1 ヶ月間の非実務研修を実施するとしながら それを短縮して実施したような場合は、 、「不 正行為」や「不正行為に準ずる行為」認定の対象となる。 さらに、第一次受入れ機関は、3ヶ月につき少なくとも1回、各二次受入れ機関に対 し監査を行い、その結果を地方入国管理局等の長に対して報告しなければならないもの とされている。 第二次受入れ機関は当然なこととして研修計画に従って研修を実施し、日々の研修実 施状況は「研修日誌」に記録することが義務づけられている。 研修生は、技術等を学ぶ者であって、留学生なとど変わらない立場にあるとの認識が 必要である (ロ)技能実習計画の作成とその履行 受入れ企業等が技能実習計画を作成するに当たり、技能実習生に移転すべき技術・技 能・知識を検討し、それに必要な技能実習のカリキュラム、スケジュール、指導体制等 をとりまとめ、これを記載した技能実習計画を策定し、JITCOに申請し、その評価 を受ける。 技能実習に移行した場合、研修期間中は第一次受入れ機関と共有していた研修生の管 理責任は、実習実施機関が引き受けることとなり、第一次受け入れ機関は補助的な役割 を担うこととなる。 日々の技能実習状況は「技能実習日誌」に記録することが義務づけられている。 3 日中租税条約第21条の免税 (1)租税条約の目的 ①租税条約は 「二重課税の排除」と「脱税の防止」などを目的として主権国家の間で、 締結される条約である。 国際的経済活動の活発化に伴いそれに対する課税の問題は、国家にとっても納税者に とっても、きわめて重要な問題である。国際租税法の分野では、国際的二重課税をどの ようにして排除するか、又外国の国民や企業に対してどのように課税するかが重要な問 題であり、まさに各主権国家の課税権をどのように調整し制限するかの問題である。 一方、国際的経済活動は主権国家の領域を超えて行われ、その調査権が及びにくいた め、そこから生ずる所得については、脱税が行われやすいという側面もある。 租税条約は、国内法上課税しうることを前提に、二重課税排除を目的に当事国間で課
税権を譲歩するということであり、我が国においては、締結された租税条約は国内法に 優先して効力を有し、この優先の意味は、国内法の一部を減殺するということであると 解されている。 ②租税条約は、対先進国型か対後進国型かによって免税の取扱が異なる。 前者には、生計、教育、勉学、研究又は訓練のために受け取る給付で海外からの送金 について課税の免除があるのに対し、後者には、生計、教育、勉学、研究又は訓練のた めに受けとる給付で、海外からの送金のほか、政府又は宗教若しくは慈善団体等からの 交付金、手当又は奨学金、雇用主等から支払われる給与等の報酬及び滞在地国における 人的役務の対価(アルバイト収入)を含めて免除される。この場合、雇用主などから支 払われる給与等の報酬及び滞在地国における人的役務の対価等は、一定の金額制限が付 されているのが通常である。 なお、租税免除の適用は「租税条約に関する届出書」を提出することによって、源泉 徴収はされないことになる。 (2)中国との租税条約(協定)第21条 21 本件事案において、その適用の有無が問われた「中国との租税(所得)条約」第 条は 「専ら教育若しくは訓練を受けるため又は特別の技術的経験を修得するため一方、 の締約国内に滞在する学生、事業修習者又は研修員であって、現に他方の締約国の居住 者であるもの又はその滞在の直前に他方の締約国の居住者であったものがその生計、教 育又は訓練のために受けとる給付又は所得については、当該一方の締約国の租税を免除 する 」と規定されている。。 4 本件事案 (1) 日中租税条約第21条の法令解釈 裁決は 「∼事業修習者等は、在留資格をもって日本に滞在している者であり、許可、 された在留資格に応じたそれぞれの活動を行うことができるのであるから、技術等の修 得をする活動を行う「研修」などの資格をもった者は、その在留資格の基準に適合しな いような活動を行っている者にあっては、租税条約第 21 条に規定する事業修習者等に は該当しないと解している 」。 つまり、同条にいう「事業修習者等」に該当するか否かは「在留資格」を有している だけでは足りず 「在留資格基準」に適合する活動を行っているという二要件が必要で、 あるとしている。 (2 「研修」の在留資格基準適合性の有無) 請求人は、本件研修制度にそった活動をしていると主張したが、裁決は事実認定にお いて①水産加工品梱包方法など研修計画書に記載された研修を行っていないこと、②修 得しようとする技術等が同一作業の反復のみによって修得できるものであること、③実 務研修を受ける時間が90%であり、研修時間全体の3分の2を超えていること、④残 業、休日出勤などの所定時間外作業を行っていることから、本件研修は「研修」の「在 留資格基準」に適合する活動とはいえないと判断したのである。
本件事業は「団体管理型」の受入れ事業であり、上記2(2)④技能修得のための担 保措置にて述べたごとく、第一次受入れ機関は、3ケ月にすくなくとも1回程度、第二 次受入れ機関への監査と、その結果の報告が義務づけられているのである。第一次機関 と第二次機関の双方において、明らかに適正な処理を怠ったものと解される。 請求人は、本件研修生の各月の従事した時間数が一定時間(おおむね月160時間) を超えた場合、残業手当を本件研修生に支払っていた。研修中の手当は名目のいかんを 問わず「労働の対価」としての意味を持つものであれば、入管法違反になることは既述 したとおりである。 (3 「特定活動」の在留資格適合性の有無) 裁決は、①本件研修生は「研修」の在留資格をもって本邦に在留し、当該在留資格に 応じた活動に従事していなかったこと、②本件研修生の行った作業は、H機構が認定し た非加熱性水産加工食品製造業における塩蔵品製造の技術等ではないことからすれば、 本件実習は「特定活動」の在留資格の基準に適合するような活動とはいえないと判断し ている。 本来であれば、研修性から技能実習生への移行要件として、国の技能検定、又はJI TCOが認定した機関の評価システムにより、研修生が一定水準(国の技能検定基礎2 級相当)以上の技術・技能を修得していることや、ロ.研修状況・生活状況が良好であ ること、ハ.さらに研修生受け入れ企業から提出された技能実習計画が、研修成果を踏 まえた適正なものであると認められるとの3要件すべてをクリアしたものでなければ移 行されないこととなっているのである。 、 。 この点においても 本制度の目的とは異なった運用がなされているのではなかろうか (4) 請求人は、第二次受入れ機関として、その提出した研修計画等に従った研修や技能実 習を実施せず、研修生に所定時間外作業をもさせている。まさに、不適正な受入れ事業 である。 裁決は、日中租税条約第 21 条に規定する「事業修習者等」には該当しないとして、 本件各研修手当及び本件各給与について、租税の免除の適用はないと判断したものであ り、妥当な裁決といえよう。 おわりに 法務省資料(注3)によると、平成 15 年当時 64,817 人であった在留資格「研修」で の新規入国者数は、毎年増加を続け、平成 19 年では 102,018 人となり、また「特定活 動」への移行者数も 20,822 人(平成15 年)から 53,999 人(平成 19 年)へと増加し続 けている。 、「 」 「 」 、 これを受入れ形態別にみると 研修 では約70%が 団体管理型 の受入れであり 「企業単独型」は約15% 「公的」受入れが約、 15%となっている。 技能研修移行の「特定活動」に至っては、その約 95%が「団体管理型」であり 「企、 業単独型」は約5%に過ぎないのである。 不法行為認定機関数をその受入れ形態別にみると、平成 15 年「企業単独型」5.4 % 5件 団体管理型 % 件 であり 平成 年は 企業単独型 % 9 ( )、「 」94.6 (87 ) 、 19 「 」2.0 (
件)、「団体管理型」98.0 %(440 件)と、圧倒的に「団体管理型」での受入れに問題が 生じている。 改正入管法(平成 22 年7月1日施行)により、在留資格「技能実習」の創設、不正 な研修・技能実習活動のあっせん等を行った者を退去強制事由に追加、受入れ団体の指 導・監督・支援体制の強化、運営の透明化等が図られることとなった。これにより「団 体管理型」の受入れに一定の是正効果が期待されるところである。 (注1)平成21年7月 15日改正入管法公布、外国人研修制度について改正法に基 づく新制度が平成22年7月1日から施行される。 (注2)職業能力開発促進法に基づく技能検定の対象職種、又はJITCOが認定した 技能評価システムによる職種で、農業、漁船漁業、建設業、製造業等の産業分野 における66職種123作業(2010年4月1日現在)である。 参考文献 「租税法」第11版 金子宏著 法律学講座双書 「外国人労働者雇用管理マニュアル」 新日本法規 「外国人研修・技能実習事業における研修手当、賃金及び管理費等に関する ガイドライン (」 2008年5月 15日改訂) (財)国際研修協力機構 「研修生及び技能実習生の入国・在留管理に関する指針 (平成」 19 年 12 月改訂) 法務省入国管理局 「技能実習制度に係る出入国管理上の取扱いに関する指針」 法務省告示 「技能実習ガイドライン」 (財)国際研修協力機構 「技能実習制度推進事業運営基本方針」 厚生労働大臣告示