第2章 質点系と剛体
2.1 二体問題
我々の身の回りにあり、通常観察する物体の多くは、質 点の集まりであると考えられ、この現象を理解すること は大切である。 複数の質点の集まりを質点系(system of particles)といい、 2個の質点からなる質点系の運動を調べる問題を二体問 題(two-body problem)という。 2.1.1 運動の第3法則 質量 m m1, 2の2つの質点が互いに力をおよぼし合いながら運動している場合を考えよう。 質点1が質点2におよぼす力を F12、質点2が質点1におよぼす力を F21とする。 質点の位置ベクトル(1.2 節参照)を r , r1 2とするとき、質点1からみて質点2の位置は r =r2 −r1で与えられる。 このように質点が力をおよぼしあっている時に成り立っていると考えられる最も基本的 な法則は、 [法則 2. 1] 運動の第3法則 2つの質点が互いにおよぼし合う力はそれらを結ぶ線上にあって、大きさが 等しく向きが反対である という運動の第3法則である。 これは、作用・反作用の法則とも呼ばれる。 式で表わせと、 F12 =−F21 (2. 1) であり、これらの力は r= r2−r1に平行である。 m1 O r m2 r1 r2 図 2- 1 2つの質点 に働く力2.1.2 重心 2つの質点のそれぞれに対して運動方程式をたてると、 m d dt m d dt 1 2 1 2 2 2 2 2 r F r F 21 12 = = (2. 2) となる。 上式をそれぞれ加え、式(2.1)を用いると、 F12 +F21 = となるので、 0 d
(
)
dt m m 2 2 1 1r + 2 2r = 0 (2. 3) を得る。 M =m1+m2(質点系の全質量)として、 MR=m1 1r +m2 2r (2. 4) によって重心(または質量中心)の位置を定義しよう。 成分で書けば、次のようになる。 MX m x m x MY m y m y MZ m z m z = + = + = + 1 1 2 2 1 1 2 2 1 1 2 2 右上図に示すように、これは2つの質点を結ぶ線分を質量の逆比に内分する点G P G P G1 / 2 =m2 /m1 である。 よって、式(2.3)は、 Md dt 2 2R = 0 (2. 5) となり、重心Gは加速度が零、つまり等速運動をする。 その速度は最初に零ならば、いつまでたっても零、つまり重心は不動に保たれる。m
1m
2P
1P
2G
図 2- 2 二体系と重心2.1.3 換算質量と運動方程式 式(2.2)を d dt m d dt m 2 2 1 21 2 2 2 2 12 1 1 r F r F 1 = = として引き算すると、 r= r2−r1および式(2.1)を用いて、次式が得られる。
(
)
d dt m m d dt m m 2 2 2 1 2 12 1 21 2 2 1 2 12 1 1 1 1 r r F F r F − = − = + ここで、 µ = + 1 1 1 1 2 m m (2. 6) によって、この2質点の換算質量を定義すると、上式は、 µd dt 2 2 12 r F = (2. 7) という1個の質点に対する運動方程式と同じ形の式になる。 一般に、力 F12は2質点間の相対座標r(=r2 −r1)の関数である。[例題 2. 1] 2 つの恒星P(質量 m1)とQ(質量 m2)の重心に対する運動を考える。重心Gを原点にとっ て、恒星Pの座標を r1、恒星Qの座標を r2とする。相対座標 r=r2−r1を使うと、万有引 力 f r( ) は f r Gm m r ( ) = − 1 2 2 とかける。恒星Pの運動方程式を r1を用いて、恒星Qの運動方程式を r2を用いて表わせ。 m1 >>m2のとき、恒星Pと恒星Qの運動方程式はどうなるか。 [問題 2. 1] 同じ質量の2つの物体をひもで結んで滑らかな水平面上に密接して置いてある。片方の物 体に速度 v(その方向はもう一方の物体から離れる方向)を与えた後、この系はどのような 運動をするか説明せよ。ただし、ひもがピンと張られたときの衝撃によるエネルギーの損 失はないものとする。 [問題 2. 2] 質量 m1, m2の2個の質点PとQが、バネで結ばれてい る系を考える。両端の質点の変位を x x1, 2とし、バネの 力はフックの法則に従うとする。重心系における運動方程式を求め、質点の変位を時間 の関数として示せ。ただし、バネの力の定数を k k( > 0 とせよ。 ) m1 m2 P Q x1 x2
2.2 重心とその運動
2.1 節では2質点が相互作用している系を扱ったが、このように扱えるのは2質点の問 題(二体問題)までであって、三体問題以上の多体問題になると解析的に厳密な扱いは不 可能であることが証明されている。 一般に、地上で我々が扱う通常の物体は大きさをもっているから一般には質点としては 扱えない。そのような物体(流体なども含めて)でも、これを微小部分に細分して考えれ ば多数の質点の集まりとみなすことができる。 質点 1,2,3,...が互いに力をおよぼし合っていて、 i 番めが j 番めにおよぼす力を Fij とする。このように質点系内で互いにおよぼし合っている力を内力とよぶ。 いま考えている質点系にはこのほかに外部からも力が作用しているものとして、 i 番め の質点が受けている外力を Fiと表わす。 各質点の質量を m1, m2, m3,... 、それらの位置を r , r , r ,1 2 3 ... として、運動方程式は、 m d dt m d dt 1 2 1 2 1 2 2 2 r F F F r F F F 21 31 2 2 12 32 = + + + = + + + ... ... ... (2. 8) これらを全部加えあわせると、内力については作用・反作用の法則によりFij +Fji = 0が 成り立つから、右辺の和としては外力だけが残って、 m d dt m d dt 1 2 2 2 2 2 r r F F 1 2 1 2 + + =... + +... (2. 9) また、 M =m1 +m2+... として、重心(質量中心)の位置 Rを MR =m1r1 +m2r2+... (2. 10) によって定義すると、式(2.9)は、 Md dt i 2 2 R F1 F2 Fi = + + =...∑
(2. 11) この式は質量が M で位置 R にある一個の質点に外力 F1+ +... が作用している時の運動F2 方程式になっている。つまり、 質点の重心は、質点系の全質量がそこに集中し、外力も全てそこに働いている時の一つ の質点と全く同じ運動をする ことを意味している。 すなわち、実際に大きさのあるものを質点とみなし、第1章で調べたような方法で扱っ てよいのはこのためである。2.3 運動量と運動量保存
<力のモーメント> “てこ”などのように、力 F によって原点 O のまわりで物を 回転させる場合を考える。 回転の大きさは、 ①力の大きさ F ②点 O から作用線 AB へ下した垂線の長さ l に比例する。 図 2-3 の場合、時計の針と反対まわりであるので、モーメント の方向は紙面に対して手前向きである。 O 点に関する F のモーメントを、大きさがFl で、紙面に対して 手前向き方向を持つ回転軸と向きをもったベクトルと定義し、 次ページ式(2.15)より、 N =r×F (r =OA) (2. 12) で表わす。 r の成分を ( , , )x y z 、F の成分を (F Fx, y,Fz)とすると、 N の成分は式(2.18)より、 N yF zF N zF xF N xF yF x z y y x z z y x = − = − = − (2. 13) である。 N = Fl= Frsinθ (2. 14) は rとF を2辺とする平行四辺形の面積である。 rとF が平行または反平行(θ = 0かπ)なとき N = 0 である。 r O A F l θ B 図 2-3 力のモーメント 定義[2.1] モーメント(moment) この積 F l を、 O 点に関する力 F のモーメントの大きさとよぶ。 モーメントの方向は力の作用線 AB と O 点で作る平面に垂直であり、O 点を通る軸まわり に、右ねじの進む向きを正とする。 右ねじを回す 回転方向 ねじの進む 方向 図 2-4 右ねじOne Point 外積(ベクトル積) 2つのベクトル AとB から、 大きさ:C = ABsinθ(θは AとB の間の角, θ π< ) 向き : AとB の両方に垂直で AからB の向きに右 ねじを回した時にそれが進む向き をもつベクトルC をつくることができる。これを AとB の外積(ベクトル積)といい、 C= × A B (2. 15) で表わす。 A B× = −(B×A) (2. 16) に注意すること。 右手系の座標軸方向の単位ベクトル i, j,k (x,y,z 軸の方 向を持ち長さが1のベクトル)に関して、 0 , , , , , = × = × = × − = × = × − = × = × − = × = × k k j j i i j k i j i k i j k i k j k i j k j i (2. 17) が成り立つ。また、A= Axi+Ayj+Azk, B = Bxi+Byj +Bzkと すると、上式から、
(
) (
)
(
)
(
)
(
)
k j i k j i k j i k j i B A C z y x x y y x z x x z y z z y z y x z y x C C C B A B A B A B A B A B A B B B A A A + + = − + − + − = + + × + + = × = (2. 18) [例題 2.2] xy 面上で原点 O を中心とする円板が角速度ω[rad/s]で回っ ている。円板上の位置 r における速度ベクトルv をω、 r 、 および、 z 方向の単位ベクトルk で表せ。 (解答) 図において P は位置ベクトルr の点を表す。一般に、rθは円周を示す ので、角速度ω[rad/s]を用いて、点 P の速さはωrであり、速度の方 向はr とkとに垂直であって、k ×r の方向を向いている。従って、 v = ×k( )
ωr =ω(
k×r)
成分で書けばk = ( , , )0 0 1 、r = ( , , )x y 0 であるので、 vx = −ωy, vy =ωx, vz =0 [問題 2.3] A=2i −3j −k,B = +i 4j −2 の場合、次のものを求めよ。 k (1) A B× (2) (A B+ )×(A B− ) [問題 2.4] 次の各式を証明せよ。 (1) (A B× )2 +(A B• )2 = 2 2 A B (2) (A B+ )×(A B− )=2(B×A) C=A×B O ABsinθ A θ B Bsinθ A θ B A 図 2-5 外積 k=i×j O S=1 i j P ω x y r v k O<運動量> 重いものが大きな速さで動いているほど、大きな運動量をもっている。 <角運動量> xy 平面内で行われる運動を考える。 rもp もz 成分はもたないから、それらの面に垂直である力のモーメント N と角運動量 l は z 成分だけしかもたない。式(2.18)より、 N xF yF l xp yp z y x z y x = − = − (2. 21) 上式を時間で微分し、式(2.19) dt dy m p dt dx m px = , y = を代入すると (次式の導出は次ページ参照)、 2 2 2 2 dt x d my dt y d mx dt dlz − = (2. 22) 運動方程式 Fx =mx&&, Fy =my&& より、 dl dt xF yF z y x = − (2. 23) 式(2.21)を利用すると、上式から次式を得る。 dl dt N z z = (2. 24) 定義[2.2] 運動量(momentum) 質量 m の質点が速度 v で運動しているときに、この質点は運動量 p= m v (2. 19) をもっているという。
m
v
定義[2.3] 角運動量(angular momentum) 運動量のモーメント l= × r p (2. 20a) を角運動量という。 l= ( , , )lx ly lz 、r = ( , , )x y z 、p= ( , , )p p px y z とすると、式(2.18)より lx = ypz −zpy, ly =zpx −xpz, lz = xpy− ypx (2.20b) r P l m 一般の運動では、 x 成分や y 成分でも同様な関係が成り立ち、ベクトルを使って、 d dt l N = (2. 25) と表わされる。すなわち、角運動量の時間的変化の割合は力のモーメントN に等しい。<補足> 前ページ式(2.22)の導出
(
)
− − + = − = − = 22 22 dt x d y dt dx dt dy dt y d x dt dy dt dx m dt dx y dt dy x dt d m yp xp dt d dt dl x y z 積の微分 =mxd y − dt my d x dt 2 2 2 2 [問題 2.5] はじめに静止していた物体が摩擦の無視できる斜面を滑り落ちるとき、その距離は経過し た時間tの2乗に比例する。斜面に沿って下向きにx方向をとり、物体の質量をmとする とき、物体の運動量の大きさを求めよ。 [例題 2.3] ある点に関する角運動量 L の方向が不変な場合、質点の運動は一つの平面内で行われる ことを示せ。 (解答) L の方向を z 軸方向にとると、 Lx = Ly =0, Lz ≠0となるから、式(2.20b)より ypz −zpy =0, zpx −xpz =0 この第1式に x を、第2式に y を掛け加えれば、xyp xzp yzp xyp xzp yzp z xp yp z y x z y x y x − + − = − + = − − = 0 0 0 ( ) しかし、他方で Lz =(xpy −ypx)≠0としているから、最後の2式が成立するためには、 z= 0 、すなわち、質点はつねに平面 z = 0 上にある。 [問題 2.6] 質量mの質点が速さvでx方向に運動している。点 O から 質点の軌道におろした垂線の長さを rp とするとき、角運 動量を求めよ。角運動量が零になるのはどのような場合か、 また、角運動量が保存される運動はどのような時か述べよ。 ただし、vは零ではないとする。 [問題 2.7] 右図の様に時刻t=0 に点 P から質量mの質点が重力加速度g を受けて初速度0で自由落下を始めたとする。点 O から見た 角運動量を求めよ。角運動量の時間変化の割合が力のモーメ ントに等しいとおいて、質点の力を求め、それがmg になる ことを示せ。 One Point 積の微分 ( )'fg = f g' + fg' x m rp v O x m rp v O P y
<運動量保存>
質点 1,2,...の速度をv1,v2,...とすると、式(2.13) ...(
1 1 2 2 ...)
1 2 ... 2 2 1 1 + + = v + v + =F +F + v v m m dt d dt d m dt d m 式(2.19)運動量pi =mvi iを用いると、上式は、(
p1+p2+...)
=F1+F2 +... dt d (2. 26) すなわち、∑
=∑
i i dt d i i F p (2. 27) ここで、質点系の全運動量を次のように定義する。 P =∑
pi (2. 28) 上式の右辺は、式(2.14)の右辺をtで微分したものである。すなわち、 dt d M dt d m m i i i i i R r v p =∑
=∑
=∑
よって、 dt d M R P = (2. 29) 式(2.28),(2.29)を式(2.27)に代入すると、 = =∑
i i dt d M dt d F R P 2 2 (2. 30) が得られる。 以上より、 法則[2.2] 運動量の法則 (i)質点系の全運動量P は、重心に全質量が集中したと考えた時の質点の運動量 t M ⋅dR /d に等しい。 dt d M R P = (ii)質点系の全運動量の時間的変化の割合dP /dtは、外力の総和∑
i i F に等しく、内 力には無関係である。 = =∑
i i dt d M dt d F R P 2 2 (iii)もし外力が働いていないか、その総和が零ならば、質点系の全運動量P は一定 に保たれる。これを、運動量の保存則という。<衝突> 衝突とは、2つの物体(粒子)が互いに近づいて力をおよぼし合い、最初に持っていた運 動量やエネルギーを変化させることをいう。 一般に、地上のマクロな物体の場合、相互の万有引力は無視できるので、両物体が接触したと きに生じる力は抗力であり、物体が固体である時には撃力(瞬間的に作用する大きな力)になる。 撃力では力が時間とともにどのように変化する か は 測 定 し に く い 。 こ の と き 運 動 方 程 式 F v / )= (d dt m (F は撃力)を時間tで積分して得ら れる。
∫
= − =∫
2 1 2 1 1 2) ( ) ( t t t t dt dt m t m t dt d m v v v F あるいは、式(2.19)p =mvより、 − =∫
2 1 1 2) ( ) ( t t dt t t p F p (2. 31) 式(2.31)は 質点の運動量の増加量は、その間に働いた力の力積に等しい ことを意味している。撃力では力F そのものは求めにくいが、力積は運動量の変化によ って知ることができる。 <弾性衝突と非弾性衝突> ボールが速さv で飛んできて、静止した壁に垂直にあたり、速さv' ではねかえったと する。衝突前後の速さの比 e=v'/v をはねかえりの係数(coefficient of rebound)、あるいは反発係数という。 もしv'>vならば運動エネルギーが増加してしまうので、v'≤vでなければならないから、 0≤ ≤e 1 e の値により、以下の様に分類される。① e= 1 完全弾性衝突(perfectly elastic collision)
衝突前と衝突後で運動エネルギーが変化しない衝突。このとき、I =2mv ② 0< <e 1 非弾性衝突 衝突前後で運動エネルギーが変化し、はねかえる衝突 ③ e= 0 完全非弾性衝突 粘土製のボールなどの場合であり、壁にあたって止まってしまう衝突。 I =mv 普通の場合、運動エネルギーは減少するので、非弾性衝突である。 t Fx t1 t2 面積= =(力積のx成分)
∫
2 1 t t Fxdt 図 2-6 撃力と力積 定義[2.4] 力積 上式の右辺の量∫
2 1 t t Fdt ( F dt∫
x ,∫
F dty ,∫
F dtz を成分とするベクトル)を力F の t1から t2 までの間の力積とよぶ。[例題 2.4] 自由落体について力積が運動量の変化に等しいことを確かめよ。 (解答) 落体は一定の加速度 g で落下する。鉛直下方に x 軸をとり速度をv と すれば、 g dt dv = 上式を toからtまで積分すれば、 ) ( ) ( ) ( ] [ ] [ 0 0 0 0 0 t t g t t t g dt g d gdt d o t t t t t t t t − = − = = =
∫
∫
v v v v v 従って、運動量の変化は mv(t)−mv(to)=mg(t−t0) ① 一方、落体の質量を m とすると、一定の加速度で運動しているから、この物体に働い ている重力の大きさは F=mg であるので、力積は、 ( 0) 0 0 t t mg dt mg Fdt t t t t =∫
= −∫
② 式①、②より、力積が運動量の変化に等しいことがわかる。 [問題 2.8] 静止した質量 M の物体に、質量 m の物体が速度 v0で衝突して合体した。合体後の速度、 運動エネルギー、失われた運動エネルギーを求めよ。ただし、運動は一つの直線上で行 われるものとする。 [問題 2.9] 質量 m の物体が右図のように角度θで壁に衝突する。衝突の前後で 速さは変わらずv であるとするとき、壁と平行方向および垂直方向 の速度の変化を求め、壁が受ける力積を計算せよ。また、力積が 最大になる角度はいくらか。 [問題 2.10] 同一直線上を速度v1,v2(v1 >v2)で運動している質点 m1, m の2 2つの物体が衝突して一体となった。合体後の速度を求めよ。 その速度は衝突前のどのような速度に相当するか。衝突した後 静止するには、速度の比v2/v1がいくつであればよいか。ただ し、v1 >0とする。 m 加速度 g v v θ θm
1v
1m
2v
22.4 重心運動と相対運動
前節において質点系の運動では重心が重要な役割をしていることを説明したので、重心 からみた各質点の運動を考える。 次ページ図に示すように、座標原点をOとし、重心Gの位置をR =OG、i 番めの質点の 位置をr とする。 i Gからみたi の位置を 'r とすると、質点の位置i r は、 i ri =R +ri' (2. 32) 成分ごとに示すと、 x X x y Y y z Z z i i i i i i = + = + = + ' ' ' 式(2.32)を時間tで微分すると、次式を得る。 dt d dt d dt dri = R + ri' vi =V +vi' (2. 33) ここで、 'v は重心Gからみた質点i i の相対速度である。 式(2.32)に miを掛けて、i について加え合わせると、次式を得る。∑
miri =∑
miR +∑
miri' (2. 34) mi M ∑ = とすると、上式の右辺第1項は、∑
miR =MR に等しく、さらに、2.2 節の式(2.10)重心の定義により、 MR =∑
miri となるので、式(2.34)は以下のようになる。∑
miri =∑
miri+∑
miri'∑
m ri i'=0 (2. 35) 上式を時間tで微分すると、以下のようになる。∑
' =0 dt d m i i r∑
mvi i'=0 (2. 36) (つづく)G O ri
’
i R ri 図 2- 7 重心と相対位置前ページ式(2.33)を成分ごとに示すと、 vix =Vx +vix', viy =Vy +viy', viz =Vz +viz' したがって、運動エネルギーmvi i2 /2は、
(
)
(
)
(
)
2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 ' 2 1 ' 2 1 ' 2 1 2 1 ' 2 1 ' 2 1 ' 2 1 2 1 ' 2 1 ' 2 1 ' 2 1 2 1 iz i z iz i z i iz z iz i iy i y iy i y i iy y iy i ix i x ix i x i ix x ix i m V m V m V m m m V m V m V m m m V m V m V m m v v v v v v v v v v v v + + = + = + + = + = + + = + = 上式をi について合計して、前ページ式(2.36)を用いると、上式の右辺第2項の和は消 えて、∑
∑
∑
∑
∑
∑
+ = + = + = 2 2 2 2 2 2 2 2 2 ' 2 1 2 1 2 1 ' 2 1 2 1 2 1 ' 2 1 2 1 2 1 iz i z iz i iy i y iy i ix i x ix i m MV m m MV m m MV m v v v v v v 上式を加え合わせると、 マクロの物体は原子で構成されており、我々が見て静止しているときでも、 原子は細かい複雑な運動をしている。これが熱運動とよばれるものである。 衝突とか摩擦で力学的エネルギーの一部が失われるように見えるのは、この ような内部運動の運動エネルギーや位置エネルギーに転化するためである。 質点系の運動エネルギー∑
(
2 + 2 + 2)
=(
2 + 2 + 2)
+∑
(
2+ 2+ 2)
' ' ' 2 1 2 1 2 1 iz iy ix i z y x iz iy ix i MV V V m m v v v v v v∑
2 = 2 +∑
2 ' 2 1 2 1 2 1 i i i i M m mv V v (2. 37) 質点系の 重心運動の 相対運動の 運動エネ 運動エネ 運動エネ ルギー ルギー ルギー 従って、上式は次のことを表している。 質点系の運動エネルギーは、重心運動の運動エネルギーと、それに対する 相対運動の運動エネルギーの和に等しい 式(2.36)[例題 2. 5] 質量の等しい3つの質点 1,2,3 が、xy 平面上の3点(2,0)、 (-2,0)、(0,3)から速度 1 でそれぞれ、x 方向、− x 方向、y 方 向に動き出したとする。 このとき、各質点の質量を m として、重心の相対的な運動 エネルギーを求めよ。 (解答) [問題 2. 11] 質量 m1と m2の2個の質点 P と Q が速度v1,v2で x 軸上を運動している。これらの質点 を速度v で x 軸上を動く座標から観察すると、速度はv1-v,v2-v にみえる。このことは、 系の運動エネルギーが観測する座標に依存することを示している。 (1)運動エネルギーを最小にする座標は、静止座標に対して重心の速度 2 1 2 2 1 1 m m m m G + + = v v v で動く座標になることを示し、その座標における全運動エネルギー K' は、
(
)
2 2 1 2 1 '= µv −v K に等しいことを示せ。ここで、µ は換算質量を表す。 (2)運動エネルギー K' は、重心に相対的な運動エネルギーに一致することを示せ。 x y O 1 (2,0) 2 (-2,0) 3 (0,3)2.5 質点系の角運動量
<角運動量の保存則> 次ページ図に示すように、外力を受けて、互いに内力をおよぼし合っている質点系の角 運動量を考える。 2.3 節の式(2.25)dl/dt =Nより、角運動量l の時間変化はこの質点に働く力のモーメンi ト(の総和)(式(2.12) N =r×F)に等しいので、 ... ... ... ... ... ... ... ... ... 23 3 13 3 3 3 3 32 2 12 2 2 2 2 31 1 21 1 1 1 1 + × + × + × = + × + × + × = + × + × + × = F r F r F r F r F r F r F r F r F r dt d dt d dt d l l l (2. 38) 上式を合計すると、2.1 節の”運動の第3法則”Fij =−Fjiより、外力のモーメントの和ri×Fi だけが残る。よって、質点系の(全)角運動量を = + + + =∑
i i l l l l1 2 3 ... L (2. 39) とすると、 外力が作用していないか、あるいは、作用してもそのモーメントの和が零の場合、 =0 dt dL となり、上式を時間 t で積分すると、 i i i dt d F r F r F r F r L = × + × + × + =∑
× ... 3 3 2 2 1 1 (2. 40) 従って、次のことがわかる。 質点系の(全)角運動量の時間的変化の割合は、その系に働く外力のモーメント の総和に等しい 法則[2.3] 角運動量の保存則 L=C (C:積分定数) となり、L は一定に保たれる。 これが質点系の場合の角運動量の保存則である。O
F
jii
r
ij
r
jF
ij 図 2- 8 作用と反作用の モーメント<重心運動と相対運動> これまでに説明してきた角運動量(運動量のモーメント)や力のモーメントは、全て固定 した原点に関するものであったが、運動は重心の運動と重心に関する相対的な運動とに 分けられることを前節で示した。 よって、角運動量に関しても、質点系が全体として動きながら(重心運動)、重心のまわ りで行う回転について説明する。 [例題 2. 6 地球の運動] 質点系として、地球の運動を考える。ここでは地球の自転に関する運動を取り扱う。こ の場合、重心は固定していないから、原点を重心に移すわけにはいかない。 重心の位置をR 、重心に関する質点 i の相対的な位置を R r ri'= i − (右図)とすると、角運動量L は次のようにな る (導出は次ページ参照)。 L=
∑
ri×m vi i =LG +L' ① ただし、 LG =R×MV, L'=∑
miri'×vi' (2. 41) 地球の例でいえばL は地球の重心の公転の角運動量、G ' L は重心のまわりの自転の角運動量である。 式(2.41)LG =R×MV を時間 t で微分し、重心についてM⋅dV /dt =∑
Fi (2.2 節の式 (2.11))を用いると、 dt d M dt d G V R L × = i i i R F F R× = × =∑
∑
(2. 42) 式(2.40) i i i dt dL/ =∑
r ×F でL=LG+L'、ri =R +ri'とおいて、上式を用いると、(導出は 次ページ参照) i i i dt d F r L = ×∑
' ' (2. 43) が得られる。右辺は重心に関する外力のモーメントの和である。これを i i i F r N'=∑
'× と する。 0 '= N の場合、 L'=C(
C:積分定数)
すなわち、重心まわりの角運動量 'L は一定に保たれる。G
O
r
i’
i
R
r
i 図 2- 9 重心と相対位置[式①の導出]
(
)
(
)
(
)
(
')
(
')
(
' ')
' ' i i i i i i i i i i i i i i m m m m m m v r v R V r V R V v R r v r L × + × + × + × = + × + = × =∑
∑
∑
∑
∑
∑
2.4節の式(2.35)∑
m ri i'= 0、式(2.36)∑
mvi i'=0より上式の右辺第2、第3項は消えるので、 L=LG +L' [式(2.43)の導出] 式(2.40) i i i dt dL/ =∑
r ×F でL=LG+L'、ri =R +ri'とおいて、(
i)
i i i i dt d dt d i dt d F r R L L F r L G + = + × × =∑
∑
' ' 上式に式(2.42)を用いると、∑
R×F + L =∑
R×F +∑
r ×F i i dt d i i i i ' ' i i i dt d F r L × =∑
' ' [問題 2. 12] 2a だけ離れた2本の平行線の上を2人のスケーターが互いに速度vで近づき、真横に来 たときに手を握り合って回転を始めた。角運動量の保存則を用いて、回転の角速度ωを 求めよ。ただし、2人とも質量mの質点とみなす。 Coffee Break 潮汐と地球の自転 地球の自転は少しずつ遅くなり、1日は前日に比べ1億分の2秒ずつ長くなっている。そのため、1世 紀の間には 14 秒も差ができるが、これは月や惑星、太陽の運動のみかけの遅れとして観測されている。 地球の自転が遅れるのは、主に海水の満ち引きが自転にブレーキをかけるためである。海水は月に引かれ ていくらか移動するが、月は地球のまわりを約1ヶ月で回るのに対して、地球の自転周期は1日でありず っと速いので、潮汐がブレーキになる。潮汐が絶えず行っているブレーキの仕事は約20億馬力に相当す ると推定されている。この潮汐摩擦の反作用として、地球を回る月の公転運動はエネルギーが与えられ、 その結果、月は1ヶ月に 8mm ずつ地球から遠ざかる。この割合で月が今でも遠ざかっているものとすると 40億年の昔には地球と月とは極めて接近していたことになる。 地球と月とは密接に作用し合っているから、これらをまとめて1つの体系と考えると、その重心のまわ りの角運動量は保存されるはずである。しかし、潮汐により地球の自転は遅くなり、そのため地球の自転 の角運動量は減少する。月の角運動量は、月の自転による角運動量と月が地球を回る軌道運動の角運動量 とからなるが、月の自転の角運動量は小さいので、地球の自転が遅くなるだけ、月の軌道運動が増加する はずである。月の軌道半径をr、速さをv、質量をmとすると、月の軌道運動の角運動量はL = mvrと なる。地球の質量をMとすると、地球の引力が月の遠心力と釣り合うため、 GMm r/ 2 =mv2 /r これから v2 =GM r/ = L2 / (mr)2 従って、 r= L2 / (GMm2) となる。従って、地球の自転が遅くなるにつれて月の角運動量Lは増加し、このため地球と月の間の距 離rは次第に増大することになる。2.6 剛体とそのつり合い
<剛体とは> 実在の固体には鉄や石などのように硬い物体もあれば、ゴムのように軟らかい物体もあ るが、いずれにしても多少は変形する。 これを理想化して 次ページ図に示すように、剛体は無数の質点から構成されていると考えられるが、剛体 中のどの2つの質点をとってもその距離が変わらないものである。従って、剛体は質点 系の特別な場合である。 <剛体に働く力> 剛体は質点系の特別な場合であるので、今までに得られた質点系の一般的な性質(内力に は無関係等)は剛体に対してもそのまま適用できる。 剛体の運動として、 ①全体としての移動である並進運動 ②回転運動 を考えればよい。 この場合、重力は剛体の重心に働き、その大きさは Mg (M:剛体の全質量)である。 剛体の力を保っているのは各部分の間に働く内力であるが、これは全く考えなくてよい。 よって、剛体に働く力を n F F F1, 2, ..., :重心に働く重力を含めた外力 n r r r1, 2, ..., :外力が作用する点 とする。 前節までは、F やi r の添え字 i は質点の番号であるとしたが、ここでは添え字 i を力の番i 号とする。 これは剛体を細かく分けてその細片を質点とみなし、i 番目の力が作用しているところに ある細片に番号 i をつけ、力がF1, F2, ...,Fnまでの n 個につけてあると思えばよい。 このように考えれば、前節までに得られた諸式はそのまま剛体に使える。 定義[2.5] 剛体 全く変形しない物体を仮定し、これを剛体とよぶ。剛体 図 2- 10 剛体中の質点 重心G 原点O F1 (=G ) r2 2 3 r1 r3 F2 F3 剛体 図 2- 11 剛体に働く外力
<剛体のつり合い> ここでは、剛体の釣り合い条件、すなわち、平衡条件について考える。 質点系の運動方程式(2.2 節の式(2.11)) =
∑
i i dt d M R2 F 2 において、剛体がつり合っている場合、それは静止しているので、当然、重心も静止し 続け、すなわち、d R2 /dt2 =0なので、∑
= i i 0 F (2. 44) が成り立つ。 次に、たとえ重心が静止していても、そのまわりで回転している場合、剛体が静止して いるとはいえないので、重心まわりの自転の角運動量 'L は L'=0 でなければならない。 質点系の全角運動量L は、重心の公転に関する角運動量L と重心まわりの自転の角運動G 量 'L の和 L=LG +L' で表わされる。 この場合、重心が止まっている(LG =0)ので、L=LG +L'=0であるから、 =0 dt dL ① 従って、角運動量に関する方程式(式(2.40)) =∑
× i dt dL / ri Fi に、式①を代入すると、∑
× = i i i 0 F r (2. 45) i r の基準点(原点)は固定点ならばどこでもよい。 式(2.44)と式(2.45)はどちらもベクトル式であるので、成分ごとに考えると、3つずつ の式になる。すなわち、∑
=∑
=∑
= i F i F i Fxi 0, yi 0, zi 0∑
(
−)
=∑
(
−)
=∑
(
−)
= i F y F x i F x F z i F z F yi zi i yi 0, i xi i zi 0, i yi i xi 0 一般に、上式の合計6個が成り立っていることが、剛体のつり合うための必要条件で ある。[例題 2. 7] 長さ 2a、質量 M の一様でまっすぐな棒の一端Aを垂直 な粗い壁に垂直にあて、棒の途中の点C(AC=b)に長さ ℓ の糸をつけて、点Aの真上の点Dで引っ張っているとす る。このとき、点Aに働く力と、糸の張力 S を求めよ。 (解答) 点Aで働く力のうち AB 方向のものを R、壁面に平行な摩 擦を F (上向きを正)とする。 水平方向の力のつり合い:Ssinθ=R 鉛直方向の力のつり合い:Scosθ+F=Mg 点Aまわりのモーメントのつり合い:aMg=bScosθ 上式から未知数である F,R,S を求めると、 Mg b a b aMg Mg S Mg F b l aMg b aMg R b l b alMg b aMg S − = θ θ − = θ − = − = θ θ = − = θ = 1 cos cos cos cos sin cos 2 2 2 2 b>a ならば、F>0(上向き)であるが、b<a であると F<0(下向き)になる。 [問題 2. 13] 質量の無視できる棒で結ばれた2個の質点からなる剛体において、重力による力のモー メントが零になるのは、支点を棒のどのような位置に選んだときか?。2個の質点の質 量が等しい場合と異なる場合について説明せよ。 [問題 2. 14] 質量 mの棒 AB を、壁との角度がθになるように立て かけておくには、棒の下端 B にどれだけの力 F を加え なければならないか。壁と床は滑らかで摩擦がないも のとする。 l C B D A S θ b a Mg
l
N
1B
A
G
θ
Mg
N
2F
2.7 固定軸のまわりの剛体の運動
<運動方程式> 右図のように、z 軸を中心として回転している剛体の運 動を考える。 z 軸外の剛体のどこか一点Pに着目し、そのP点が、例 えば、zx 平面を通る時を基準(ϕ=0)にとって、その位 置からどれだけ回転したかを表わす角度をϕとする。 このときの運動の自由度は1である。 ) (t ϕ の t に関する微分係数d /ϕ dtは角速度である。 ここで、Lzをϕで表わすことを考える。剛体を細分して j 番めの細片の質量を mj、位置 P を(xj, yj, zj)とする。 位置 P から z 軸へ下した垂線を PC とすると、P は C を中心として角速度d /ϕ dtで円運動 をしている。 + j2 =rj 2 j y x = PC とすると、点 P の速度vjは 向き :線分 CP に垂直 大きさ:rjd /ϕ dt であり、この速度vjの x, y 成分を、角運動量の式lz =m(
xvy −yvx)
(2.3 節の式(2.20b))に 代入すると(導出は次ページ参照)、 L l m r2 (d /dt) j j j j jz z ϕ = =∑
∑
(2. 46) ここで、 =∑
j j jr m I 2 (2. 47) という量を導入する。これは、剛体の形、質量分布、固定軸のとり方によってきまる定数 であって、この軸のまわりの慣性モーメントとよばれる(次節で詳細を説明)。この I を用 いると、式(2.46)は、 dt d I Lz = ϕ (2. 48) いま対象としている運動は回転運動であるので、角運動量L(=r ×P)の方程式(2.5 節の 式 2.40)を用いると、その z 成分は、 =∑
(
−)
i ix i iy i z F y F x dt L d =∑
(
−)
i ix i iy iF y F x dt d I 2 2ϕ (2. 49) となり、z 軸を中心として回転している剛体の運動は上式で表わされる。 次に、剛体の運動エネルギーについて考える(106 ページ)。 x y z P O mj vj=rjϕ& yj xj ϕ ϕ& C rj 図 2- 12 z軸まわりの回転[式(2.46)の導出] 右図からわかるように = = = = − = − = ) cos ( ) / ( cos ) / ( ) sin ( ) / ( sin ) / ( j j j j j j jy j j j j j j jx x r dt d x dt d r y r dt d y dt d r θ ϕ θ ϕ θ ϕ θ ϕ v v ① 細片 j のもつ角運動量の z 成分 Lzは、2.3 節の 式(2.20) l =r ×p =r ×( vm )
(
)
(
)
(
y x)
z z x y y z x y x m l x z m l z y m l v v v v v v − = − = − = に、式①を代入することにより得られる。(
)
) / ( ) / ( 2 2 2 dt d r m dt d y x m m y m x l j j j j j jx j j jy j j jz ϕ ϕ = + = − = v v 従って、剛体全体の角運動量の z 成分は、 L l m r2 (d /dt) j j j j jz z ϕ = =∑
∑
(導出終)x
y
θ
P
v
j=r
jϕ&y
jx
jr
jv
jxv
jy jθ
jC
図 2- 13 xy 断面<回転による剛体の運動エネルギー> 回転角をϕとすると、角速度はdϕ/dtとなる。 また、回転軸から rj離れた位置での速度は、 vj =rj(dϕ/dt) となる。 運動エネルギー 2 ) 2 / 1 ( mv (1.6.2 節)に上式を代入すると、回転による剛体の運動エネル ギーは、 =
∑
=∑
j j j j j j m r d dt m K 2 2 ( / )2 2 1 2 1 ϕ v 102 ページ式(2.47)の慣性モーメント I を用いると、上式は次のようになる。 2 2 1 = dt d I K ϕ (2. 50) <まとめ> 以上で求めた諸式を1つの質点が直線上で行う運動の場合と比べると、次のように対応 している。 剛体の回転角ϕ ⇔ 質点の位置 x 剛体の角速度d /ϕ dt ⇔ 質点の速度dx /dt 剛体の慣性モーメント I ⇔ 質点の質量 m 剛体の角運動量I(dϕ/dt) ⇔ 質点の運動量m(dx/dt) 方程式I(d2ϕ/dt2)=Nz ⇔ 方程式m(d2x/dt2)=Fx 運動エネルギー 2 ) / ( 2 1 dt d I ϕ ⇔ 運動エネルギー ( / )2 2 1 dt dx m[例題 2. 8] 実体振り子 剛体が水平な回転軸 z のまわりに自由に回転でき、その回転軸 z が重心Gを通らない ものとする。このような剛体が重力の作用を受けて振動する場合、それを実体振り子、 また、物理振り子という。重心から回転軸までの距離を h、剛体の質量を M、慣性モ ーメントを I とすると、その周期を求めよ。 (解答) x 軸と h の作る角をϕとすると、重力のモーメントは、 Nz =−(Mgsinϕ)h ① 式(2.49)より、z 軸まわりに回転する剛体の運動方程式は、 =
∑
(
−)
i ix i iy iF y F x dt d I 2 2ϕ 上式に、式①を代入すると、 ϕ2 sinϕ 2 Mgh dt d I =− ϕが小さいとき、sinϕ≒ϕであるので、 ϕ ϕ I Mgh dt d =− 2 2 上式と単振動の運動方程式(1.5.1 節の式(1.24)) m k x dt x d =−ω ω = , 2 2 2 が同じ形であることから、ϕ(t)は単振動であることがわかる。 その解は、1.5.1 節の式(1.25)よりϕ0と a を積分定数として、 I Mgh t t = + = ω α ω ϕ ϕ( ) 0sin( ) ② 周期 T は、 Mgh I T π ω π 2 2 = = 上式と単振り子の周期2π l /g (1.5.2 節参照)とを比べると、この実体振り子は Mh I l = という長さの単振り子と周期が一致することがわかる。 このlを相当単振り子の長さという。 x O y G mg h ϕ 図 2- 14 実体振り子2.8 慣性モーメントの計算と剛体の平面運動
<慣性モーメントとは> 長さ a の軽い棒の一端に質量 m の重いおもりをつけて、棒のもう一方の端の点Oを通り 棒に垂直な軸(回転軸)のまわりに角速度ω で回転させる場合を考える。 回転軸まわりの角運動量である lzは、2.3 節の式(2.20)角運動量l=r ×p =r ×( vm )より、 lz =a(mv) ω = a v を用いて、 = = ω = 2ω ) ( ) (m a ma ma a lz v ① この場合の慣性モーメント I は、2.7 節の式(2.47)∑
= j j jr m I 2より、 I =ma2 と表せる。この I を用いて式①を書きなおすと、回転 軸まわりの角運動量 lzは次式のようになる。 lz = ω I ② なお、多数の質量から構成される質点系の場合、2.7 節の式(2.47)より慣性モーメント は以下の式で求められる。 I m rj j j = ∑ 2 (2. 51) マクロな剛体は連続体と考えられるので、慣性モーメント I を上式で計算するときには 和でなく積分を使うことになる。剛体を体積 dV の細片に分けると、mjはρdV (ρ:密度 [kg/m3])となるので、次式によって I を計算する。 I =∫∫∫(
x2 +y2)
ρdxdydz (2. 52) z 軸を中心として回転している剛体の運動方程式(2.7 節の式 2.49)(
xF y F)
N dt d I i ix i iy i − = =∑
2 2ϕ において、力のモーメント N を一定にした時、剛体の角速度 2 2 /dt d ϕ は慣性モーメント I に逆比例する。従って、質量が直線運動の慣性の大きさを表すことと類似しており、 慣性モーメントは回転運動の慣性の大きさ を表すものである。式(2.51)によれば、慣性モーメントは質量に比例し、質量が軸から 遠くに分布しているほど大きいことがわかる。 次ページ以降で、一様な棒、薄い円盤、一様な球に関する慣性モーメントの計 算を説明し、112 ページでは、慣性モーメントの計算に便利な定理を紹介する。 114 ページでは、剛体の平面運動を説明し、慣性モーメントの使い方を実際に紹 介する。 図 2- 15 垂直な軸まわりに回転 するおもり[例題 2. 9] 細い一様な棒 質量を M 、長さ l の棒について、この一端か ら a だけ離れた点Oを通って棒に垂直な軸ま わりの慣性モーメントを求める。 棒に沿って x 軸をとり、棒を長さ dx の微小片 に細分する。一片の質量は (M l dx であるから、式(2.52)は、 / )
∫
− − = l a a x dx I 2ρ[ ]
(
2 2)
3 2 3 3 3 3 l la a M x l M dx x l M l a a a l a = = − + = − −− −∫
a = l 2ならば、 3 3 2 3 4 12 2 2 2 l l Ml l l M I = + − = a = ならば、l(
)
3 3 3 3 2 2 2 2 Ml l l l M I = − + = [例題 2. 10] 一様な薄い円板 一様な薄い円板の中心を通り板に垂直な軸のまわりの 慣性モーメントを求める。 質量を M 、半径を a とすると、単位面積当りの質量(面 密度)は M/πa2 いま、これを半径が r と r dr+ の同心円で区切った円環 を考えると、式(2.51) =∑
2 j jr m I の rj は円環の全体にわたって共通であるから∑
=r mj I 2 、すなわち、 (円環の質量)×r = M × a rdr r 2 2 2 2 π π が得られる。これを r について0から a まで積分すると、[ ]
2 0 4 2 0 3 2 2 1 4 1 2 2 Ma r a M dr r a M I =∫
a = a = この結果は薄い円板ではなく、円筒でもそのまま使える。 O a x dx x l-a 図 2- 16 細い一様な棒 図 2- 17 一様な薄い円板 y x[例題 2. 11] 一様な球 質量 M 、半径 a の球において、ある一つの直径まわりの 慣性モーメントを求める。 球を z 軸に垂直な平面で厚さ dz の薄い円板に分け、円板 の慣性モーメントを求め、それを合計すればよい。 中心から z のところにある円板の半径 r は 2 2 z a r= − 質量mは m=ρ⋅πr2 ⋅dz=ρπ
(
a2 −z2)
dz [例 2.10]の結果 2 /2 Ma I = を用いると、厚さ dz の薄い円板の慣性モーメント i は i Ma(
a z)
z(
a z)
(
a z)
dz 2 1 d 2 1 2 1 2 2 2 2 2 2 2 2 2 − ρπ = − ⋅ − ρπ = = これを z について積分し、 3 4 3 a M V M π = = ρ を用いると、(
)
2 2 2 2 5 2 2 1 i a z dz Ma I a a a a = − = =∫
∫
− − ρπ O a z dz r z 図 2- 18 一様な球次に、慣性モーメントの計算には、次に示す2つの定理を用いると便利である(証明は次ペー ジ参照)。 剛体の質量を M 、ある軸のまわりの慣性モーメントを I とするとき、 I = Mκ2 (2. 54) によって定義される長さκ = I M/ のことを、その軸のまわりの回転半径という。 例えば、半径 a の一様な球について直径まわりの慣性モーメントは2Ma2/5であるので、 その回転半径は 2/5⋅aである。 定理[2.1] 1つの軸のまわりの剛体の慣性モーメントを I 、重心を通りその軸に平行な直線のまわ りの慣性モーメントを IG、剛体の質量を M 、2つの軸の距離をλ とすると、 I = IG +Mλ2 (2. 53) という関係がある。 定理[2.2] 薄い板状剛体の一点を通り、これに垂直な軸まわりの慣性モーメントは、この点を通り 板の面内にある互いに垂直な2本の軸のまわりの慣性モーメントの和に等しい。
[定理 2.1 の証明] I の軸を z 、重心Gを通りこれに平行な軸を z' 軸とすると、式(2.52)より、 I r dV IG r dV = =
∫∫∫
∫∫∫
2 2 ρ ρ ' ① であるが、(
) (
)
(
2 2) (
2 2)
2 2 2 ' 2 ' ' 2 ' ' ' Y Yy y X Xx x Y y X x r + + + + + = + + + = 2 2 2 Y X + = λ とすると、上式、 r2 =r'2+λ2 +2Xx'+2Yy' 上式を式①に代入すると、 I =∫∫∫
r'2ρdV +λ2∫∫∫
ρdV +2X∫∫∫
x dV'ρ +2Y∫∫∫
y'ρdV ② 右辺第1項は IG、第2項の積分∫∫∫
ρdV は M である。第3項と第4項の積分は 2.4 節の式(2.36)∑mi iv '= 0 の x y, 成分であるから零になる。従って、式②から式 (2.53)が得られる。 [定理 2.2 の証明] 板の面密度をσ 、板を細分した一片の面積を ds とす ると、その細片の質量はσds であるので、図の z x y, , 軸まわりの慣性モーメントは、 Iz =∫∫
r2σds, Ix =∫∫
y2σds, Iy =∫∫
x2σds r2 = x2 + y2であるから、 Iz = Ix +Iy (2. 55) [問題 2. 15] 質量の無視できる長さ l の棒の両端に質量 m/2 のおもりをつけた剛体を、棒の中心を通 り棒と垂直な軸のまわりに角速度ωで回転させる。慣性モーメントIを求めよ。さらに、 軸のまわりの角運動量L、回転による運動エネルギーKを計算せよ。おもりの質量を変え ずに棒の長さを2倍にしたとき、慣性モーメントI、角運動量L、運動エネルギーは何倍 になるか。 [問題 2. 16] x 方向の長さが a、y 方向の長さが b の一様な薄い長方形の 板について、x,y,z軸まわりの慣性モーメントIx ,Iy ,Izを求 めよ。ただし、板の全質量を M とせよ。また、Iz=Ix+Iyが 成り立つことを示せ。 r x y z x’ y’ z’ O G λ r’ 図 2- 19 y z x O x y dS 図 2- 20 y z x O a b<
剛体の平面運動>
斜面をころがり落ちる円筒のように、剛体の重心が 常に一つの平面内を運動し、回転軸が常にこの平面 に垂直であるような運動を考える。 重心が運動する平面を xy 平面にとれば、重心の運動 をきめる方程式(2.2 節の式 2.11)は、 Md X dt F Md Y dt F ix i iy i 2 2 2 2 =∑
, =∑
(2. 56) 回転は重心を通り xy 面に垂直な軸のまわりで考える と便利である。 いま考えているような運動では、この軸は剛体に固定されたものになっている。 このまわりの慣性モーメントを IGとすると、角運動量 Lz' (108 ページ式②参照)は、 L I I d dt z'= Gω = G ϕ であるから、2.5 節の式(2.43)は、 =∑
× i i i dt d F r L ' ' I d(
)
dt x F y F G i iy i ix 2 2 ϕ =∑
' − ' (2. 57) となる。 上式を用いて、次ページでは斜面を転がり落ちる一様な円板について説明するが、摩擦 がなくて滑り落ちる物体と比較すると以下の通りである。 転がり落ちる円板(次ページ) 滑り落ちる物体(1.7 節) 加速度 (2/3)gsinθ gsinθ 速度 (2/3)gtsinθ gtsinθ 運動エネルギ 2 2 2θ sin 2 1 9 4 t mg 2 2sin2θ 2 1 t mg 従って、摩擦がなくて滑り落ちる物体と比較すると、加速度は 2/3、運動エネルギーは 4/9 になることがわかる。 y x Mg R F θ θ 図 2- 21 斜面を転落する円板[例題 2. 12] 傾角θ の斜面の最大傾斜線に沿ってすべることなく転がり落ちる一様な円板(質量 M 、 半径 a )の運動を調べる。円板に働く力は重心(円板の中心)に重力、斜面との接点での摩 擦力 F と垂直抗力 R の3力である。 この例題において、式(2.56)、式(2.57)は、 Md X dt Mg F 2 2 = sinθ− (a) Md Y dt R Mg 2 2 = − cosθ (b) I d dt Fa G 2 2 ϕ = − (c) 上式の F も R も未知なので、これらから X t( ), Y t( ), ϕ( )t を求めることはできない。それ は F や R は、円板が斜面にめりこまず、滑ることなく転がるように現れる拘束力だから である。 そこで、円板の回転角度をϕとすると、 t a t X Y d d d d 0 ϕ − = = ① という条件に合うように F や R の力が生じている。従って、上式Y = 0より式(b)は、 R= Mgcosθ [例題 2.10]の結果からIG = Ma2/2が得られるから、これを式(c)に代入し、式①と式(a) を用いると(導出は 117 ページ参照)、 d X dt g 2 2 2 3 = sinθ ② となり、摩擦がなくて滑り落ちる時に比べると加速度が 2/3 になっていることがわかる。 これを積分して、 t = 0 で 0 d d , 0 = = t X X とすると、 = sinθ 3 2 gt dt dX = sinθ 3 1 2 gt X となる。 この例で X = のときを考えると、円板は重力の働く方向にl l sinθ だけ下がったことにな るから、1.8.1 節の式(1.60)(重力場の位置エネルギー)= Mgh より、 (位置エネルギー)= Mgl sinθ だけ位置エネルギーは減少している。
[115 ページ式②の導出] [例題 2.10]の結果からIG = Ma2/2が得られるから、これを 115 ページ式(c)に代入する と、 2 2 2 2 2 d d 2 d d 1 2 a t M t a Ma F = ϕ =− ϕ 115 ページ式① t a t X d d d d ϕ − = より 2 2 2 2 d d d d t X t a ϕ =− であるから、上式は、 2 2 d d 2 t X M F = これを 115 ページ式(a)に代入すると、 2 2 2 2 d d 2 sin d d t X M Mg t X M = θ− d X dt g 2 2 2 3 = sinθ [問題 2. 17] 質量のない長さ r2 の棒の両端にそれぞれ質量mの物 体が固定され、滑らかな水平面を滑っていく。中心の 速さがV 、中心周りの水平面内における回転の角速度 がωのとき、物体の運動エネルギーはどれだけか。た だし、物体の大きさは十分小さいとする。 m m 2r G V ω