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み上げ積算単価積第 39 回環境システム研究論文発表会講演集 2011 年 10 月 港湾整備事業における二酸化炭素排出量の推計 前川直紀 1 林友弥 2 菅野甚活 3 1 津市役所都市計画部都市整備課 ( 三重県津市西丸之内 23-1)

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港湾整備事業における二酸化炭素排出量の推計

前川 直紀

1

・林 友弥

2

・菅野 甚活

3 1津市役所 都市計画部 都市整備課(〒514-8611 三重県津市西丸之内23-1) E-mail:E6831@city.tsu.lg.jp 2国土技術政策総合研究所 港湾研究部港湾施工システム課(〒239-0826 神奈川県横須賀市長瀬3-1-1) E-mail:hayashi-t852a@ysk.nilim.go.jp 3国土技術政策総合研究所 港湾研究部港湾施工システム課長(〒239-0826 神奈川県横須賀市長瀬3-1-1) E-mail:sugeno-j82ab@ysk.nilim.go.jp 本研究では,港湾整備事業における二酸化炭素排出量の推計として,ケーソン式係船岸工事における中 詰材(砂利,スラグ)の異なる場合と,航路浚渫工事における作業船規模の組み合わせが異なる場合にお ける二酸化炭素排出量の推計を行い,それぞれの排出量の要因について比較検討を行った.その結果,対 象とした事業において,ケーソン式係船岸ではスラグを用いた場合が工事全体として二酸化炭素排出量が 減っており,浚渫工事では異なる規模の作業船を効率的に組み合わせることが二酸化炭素排出量の削減に おいて重要であることがわかった.

Key Words :life cycle assessment(LCA), port construction, co2 emission,

1. はじめに

IPCC報告などにより,人間活動によって増加した温 室効果ガスが地球を温暖化させ社会に危機をもたらすこ とが広く認知されるようになった.そのため政府は温室 効果ガスの削減目標を定め,温室効果ガスの削減に向け 大きな力を注いでいる.土木分野においても温室効果ガ スの排出削減は重要な課題であり,温室効果ガス削減の ための取り組みが様々なされている. 土木事業における温室効果ガス削減への取り組みは, 施工機械が直接排出する温室効果ガスを削減することが 主流であったが,近年は,資源採取から施設の廃棄処分 までのライフサイクル全体を視野に入れた評価(=ライ フサイクル・アセスメント(LCA))を行うことで,よ り具体的かつ効果的に温室効果ガスの排出削減を目指す 取り組みに関心が高まっている. 本研究では,港湾内に設けられるケーソン式係船岸の 建設と航路泊地の浚渫を対象とし,使用材料や設計・施 工方法の違いによる二酸化炭素排出量の違いを算出する ライフサイクルCO2排出量の推定方法をとりまとめ,そ の方法を用いて使用材料や設計・施工方法が異なる工事 の二酸化炭素排出量を推計し,排出量の違いの要因を分 析することで,港湾施設の建設段階における二酸化炭素 排出量の削減に向けた基礎資料とするものである.

2. 二酸化炭素排出量の推計

港湾施設建設時の二酸化炭素排出量を正確に計算する ためには,建設時に使用した資材の種類や数量,建設機 械の種類や稼働時間などの詳細な情報が必要となる.本 研究では,工事積算の考え方に基づき,深い階層から上 位の階層に向けて遡及的に積み上げることにより,二酸 化炭素排出量を計算する.図-1に工事積算書のデータ構 造(イメージ)を示す. 単位 数量 単価 金額 m3 ○○ ○○ ○○○○ 規格・形状寸法単位 数量 単価 金額 ○○ m3 ○○ ○○ ○○○○ ○○ 日 ○○ ○○ ○○○○ 人 ○○ ○○ ○○○○ 規格・形状寸法単位 数量 単価 金額 ○○ L ○○ ○○ ○○○○ 人 ○○ ○○ ○○○○ 日 ○○ ○○ ○○○○ 時間 ○○ ○○ ○○○○ 名称 燃料 ○○運転手 損料 損料 名称  ○○工事   ○○工    ○○ 直接工事費 ○○材料 ○○機械 ○○工 規格・形状寸法 名称 第1階層 積算総括 第2階層 積算代価 第3階層 積算単価 積み 上げ 図-1 工事積算書のデータ構造(イメージ) ここで,一般的にLCAにおいては資源採取から構造物 廃棄までの全ての環境負荷について検討すべきであるが, 港湾構造物の維持管理計画やライフタイムについては十 分な情報が得られないことから,全ての要素を含めて検 第39 回環境システム研究論文発表会講演集 2011 年 10 月

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2 討することは困難であるため,本研究でのLCAを検討す る範囲については資材調達から施工までを対象とした. 対象とした港湾施設はケーソン式係船岸の建設と航路泊 地の浚渫であり,近年の施設建設の事例を参考に条件設 定を行い,設計段階・工事発注段階における概算工事費 算出に用いられる工種を対象とした.表-1に港湾整備に おける各事業段階の概要を示す. 表-1 港湾整備の施工段階の細分類 細分類 概要 計画段階 何を建設するかが決まる段階 設計段階 施設の構造形式・主要諸元が決まる段階 工事発注段階 施設建設に使用する資材の種類や施工方 法等が決まる段階 工事実施段階 施設建設に使用する資材の調達場所や施 工機械の規格など,工事の詳細な施工条 件が決まる段階 港湾施設のCO2排出量の推計に使用可能な環境負荷原 単位として,2001年に九州地方整備局が「港湾整備にお けるLCA手法導入調査」1)において産業連関表(1992表)を 用いて作成したものと,その考え方を引き継ぎ,2009年 に国土技術政策総合研究所が産業連関表(2000表)を用い て作成したものがある.双方とも産業副産物を原料とし たスラグ資材の環境負荷原単位については,積上げ法と 産業連関法を併用した手法を用いて作成している.しか し,前者は使用した産業連関表及び各種統計資料が古く, 船舶及び建設機械の規格が現在の工事発注段階で使用す る作業船規格とあっていない.後者は使用した産業連関 表は新しいものの,前者と同様に作業船規格があってい ないことが問題点として挙げられる. そこで,本研究で使用する環境負荷原単位については 原単位の推計過程が可能な限り公開されたデータの透明 性の高い3EID(国立環境研究所作成)2)を使用し,それ に合わせて船舶および機械器具等の損料算定基準につい ても2000年を使用する.また,リサイクル資材の積み上 げデータは日本鉱業協会からのヒアリング値を使用した.

3. ケーソン式係船岸の二酸化炭素排出量の推計

(1) 施設概要 ケーソン式係船岸(設計水深-15m)については,設計 段階を対象とした.通常,設計検討においては複数断面 提案より比較検討し,施工性,経済性に優れたものが選 択されることから,本対象ではケーソン中詰材に単位重 量の大きいスラグを用いた場合と砂利を用いた場合につ いて比較検討を行った.両者に対して,工種別及び項目 別に二酸化炭素排出量を推計し比較を行った.図-2に推 計の対象となるケーソン式係船岸の断面図を示す.ここ では,中詰材の違いにより寸法が異なる箇所のみ寸法を 記載している. (a:スラグの場合,b:砂利の場合) 図-2 ケーソン式係船岸断面図 (2) 対象工種 設計段階の概算工事費算出で検討される工種を対象と して比較を行った.設計段階での概算工事費を算出する 場合は,主要な工種が対象となり,型枠組立組外や仮設 足場などは対象としない.図-3に対象工種の施工手順を 示す. 基礎本均し・荒均し 基礎捨石投入 ケーソン据付 -一連据付方式ー ケーソン中詰投入 蓋コンクリート運搬打設 根固ブロック据付 被 覆石投入 被覆均し 被覆ブロック据付 裏 込石投入 裏 込材投入 路盤材敷均し・転圧 コンクリート舗装 ケーソン製作 ー陸上施工方式- (鉄筋加工組立) (コンクリート打設) 被覆ブロック製作 根固ブロック製作 (中詰材輸送) 砂利 50km 銅スラグ 100km 図-3 ケーソン式係船岸の施工手順 (3) 推計条件 資材製造,輸送及び施工を対象として二酸化炭素排出 量を推計する.環境負荷原単位を産業連関法にて作成し たものについては,資材の輸送を内数とした原単位とな っているため,輸送に関する二酸化炭素排出量を別途積 み上げる必要がない.しかし,リサイクル資材について は,生成から保管までに投入された資材やエネルギーな どの投入量を積み上げ法で行っているため,輸送(出

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3 荷)の負荷量を別途計上する必要がある.また,中詰材 に使用する砂利についても,作業船に積み込み海上輸送 されることはまれであるため,砂利の作業船による輸送 についても別途計上する.輸送条件は図-3のとおりであ る.使用資材の数量については1スパン(17m)を算定 対象とする.表-2に使用資材の数量,表-3及び表-4に推 計に使用した環境負荷原単位を示す. 表-2 使用した工種別数量(1スパン当たり) 銅スラグ 砂 基礎工   基礎捨石投入 m3 1,190 1,255   基礎荒均し(±50cm) m2 179 179   基礎本均し(±5cm) m2 349 381 本体工   鉄筋加工組立 kg 101,618 108,320   コンクリート打設(ケーソン) m3 1,019 1,090   ケーソン据付(ウインチ方式) 函 1 1   中詰材投入 m3 3,538 3,985   コンクリート運搬(蓋コン) m3 117 132   コンクリート打設(蓋コン) m3 117 132 根固工   根固ブロック製作 m3 145 145   根固ブロック据付 個 12 12 被覆工   被覆石投入 m3 478 478   被覆均し(±30cm) m2 409 409   被覆ブロック製作 m3 275 275   被覆ブロック据付 個 127 127 上部工   コンクリート運搬(上部・嵩上げ) m3 483 515   コンクリート打設(上部・嵩上げ) m3 483 515 舗装工   路盤材敷均し転圧 m2 264 264   コンクリート舗装 m2 264 264 裏込工   裏込石投入 m3 4,482 4,482   裏埋材投入 m3 5,661 5,147 名称 単位 数量 表-3 推計に使用した環境負荷原単位(建設機械) 供用日当たり CO3排出量 (kg-CO2/日) 潜水士船 D180PS型 3~5t吊 5.22E+01 6.59E+01 揚錨船 鋼D5t吊 ※ 2.05E+02 2.65E+02 台船 鋼D300t積 - 2.24E+02 引船 鋼D300PS 1.33E+01 1.42E+02 引船 鋼D450PS 1.90E+01 2.03E+02 引船 鋼D500PS 2.11E+01 2.25E+02 引船 鋼D600PS 2.47E+01 2.64E+02 引船 鋼D700PS 2.84E+01 3.03E+02 起重機船 非航旋回 鋼D25t吊 4.93E+01 4.21E+02 起重機船 非航旋回 鋼D100t吊 1.17E+01 9.99E+02 起重機船 非航旋回 鋼D120t吊 1.35E+02 1.15E+03 クレーン付台船 45~50t吊 1.12E+02 4.29E+02 クレーン付台船 80t吊 1.98E+02 5.75E+02 ガット船 グラブ容量3.0m3 1.79E+02 1.72E+03 ラフテレーンクレーン 排ガス対策型(油)25t吊 6.87E-01 6.04E+00 クローラクレーン (油)100t吊 3.58E+00 2.25E+01 モ-タグレーダ 排ガス対策型 油圧3.1m級 5.50E-01 3.28E+00 タイヤローラ 排ガス対策型 8~20t 4.06E+00 2.09E+00 ロードローラ 排ガス対策型マカダム10~12t 3.48E+00 2.45E+00 コンクリートフィニッシャ 3.0~7.5m 2.04E+00 1.08E+01 コンクリートスプレッダ ブレード式 3.0~7.5m 1.03E+00 6.07E+00 コンクリーレベーラー 3.0~7.5m 1.51E+00 9.58E+00 ブルドーザ 排ガス対策型15t級 8.32E-01 3.21E+00 クラムシェル 1.2m3 2.01E+00 1.27E+01 コンクリートポンプ車 ブーム式 90~110m3/h 1.56E+00 8.73E+00 名称 規格 環境負荷原単位 運転時間当たり CO2排出量 (kg-CO2/時間) ※運転日当たりのCO2排出量(kg-CO2/日) 表-4 使用した環境負荷原単位(資材,燃料) 名称 単位 CO2排出原単位 (kg-CO2/☆) 軽油 L 2.96E+00 A重油 L 2.88E+00 捨石 m3 5.39E+01 鉄筋(異形棒鋼) t 1.13E+03 コンクリート m3 2.62E+02 銅スラグ m3 3.05E+00 砂利 m3 1.51E+01 路盤材 m3 9.62E+00 ※(☆)は各資材の単位 (4) 推計結果 二酸化炭素排出量の推計結果について,a)では工種 別,b)では資材・機械稼働・機械減耗の項目別,c)で は資材別について述べる.また,d)では工種毎の工事 費割合比較について述べる. a)工種別 表-5,図-4 に中詰材に銅スラグおよび砂利を使用した 場合の工種別,二酸化炭素排出量の推計結果を示す. ケーソン中詰材に銅スラグを使用した場合の二酸化炭 素排出量は,1,876t-CO2/スパンである.また,中詰材に砂 利を使用した場合では,1,939t-CO2/スパンである.ケーソ ン中詰材に銅スラグを使用した場合が砂利を使用した場 合に比べ,3.2%小さい. 表-5 工種別の二酸化炭素排出量 銅スラグ 砂利 基礎工 108,547 115,013   基礎捨石投入 84,597 89,218   基礎荒均し(±50cm) 3,834 3,834   基礎本均し(±5cm) 20,116 21,961 本体工 507,937 586,788   鉄筋加工組立 127,023 135,400   コンクリート打設(ケーソン) 270,137 288,959   ケーソン据付(ウインチ方式) 24,454 24,454   中詰材投入 33,505 78,385   コンクリート運搬(蓋コン) 17,819 20,104   コンクリート打設(蓋コン) 34,999 39,486 根固工 46,464 46,464   根固ブロック製作 39,585 39,585   根固ブロック据付 6,879 6,879 被覆工 163,103 163,103   被覆石投入 34,010 34,010   被覆均し(±30cm) 14,016 14,016   被覆ブロック製作 82,033 82,033   被覆ブロック据付 33,044 33,044 上部工 218,046 232,492   コンクリート運搬(上部・嵩上げ) 73,561 78,435   コンクリート打設(上部・嵩上げ) 144,485 154,057 舗装工 15,146 15,146   路盤材敷均し転圧 708 708   コンクリート舗装 14,438 14,438 裏込工 816,953 780,757   裏込石投入 418,305 418,305   裏埋材投入 398,648 362,452 合計 1,876,196 1,939,763 名称 CO2排出量(kg-CO2/スパン)

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4 0 500 1,000 1,500 2,000 銅スラグ 砂利 裏込工 舗装工 上部工 被覆工 根固工 本体工 基礎工 CO 2 排出 量( t) 図-4 工種別の二酸化炭素排出量 b)項目別 表-6,図-5 に項目別,二酸化炭素排出量の推計結果を 示す.資材に起因する二酸化炭素排出量が全体の約8 割 を占める.機械減耗と機械稼働は共に1割程度である. 表-6 項目別の二酸化炭素排出量 (kg-CO2/スパン) 中詰材 資材 機械稼働 機械減耗 計 銅スラグ 1,490,226 189,471 196,500 1,876,197 砂利 1,553,924 183,637 202,202 1,939,763 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 銅スラグ 砂利 機械稼働 機械減耗 資材 CO 2 排出割合 ( % ) 図-5 項目別の二酸化炭素排出割合 c)資材別 表-7 及び図-6 に資材別の二酸化炭素排出量を示す. ケーソン中詰材を砂利から銅スラグへ替えることにより, 二酸化炭素排出量の大きいコンクリートと鉄筋の使用数 量が減少すること.また,ケーソン中詰材を二酸化炭素 排出量の小さい資材に置き替えることにより,1 スパン 当たり約63tの二酸化炭素排出量を削減できる.とり わけ,中詰材の削減割合が約57%と大きい. 表-7 資材別の二酸化炭素排出量 (単位:t-CO2 / スパン) 名称 ①銅スラグ ②砂利 ③削減量 (②-①) 削減割合 ③/② 基礎石 88.4 93.1 4.6 5.0% 鉄筋 127.0 135.4 8.4 6.2% コンクリート 541.0 581.0 40.0 6.9% 中詰材 33.5 78.4 44.9 57.3% 裏込材 398.6 362.5 △ 36.2 △ 10.0% その他 687.6 689.4 2 0.3% 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 スラグ 砂利 基礎石 鉄筋 コンクリート 中詰材 裏込材 その他 (t‐CO2/スパン) 図-6 資材別の二酸化炭素排出量 d) 工種毎の工事費割合比較 ケーソン式係船岸における中詰材の違いに伴う工事費 増減割合について,砂利を中詰材とした各工種金額を 100 として,銅スラグと比較した割合を表-8 及び図-7 に 示す. 基礎工・本体工・上部工では銅スラグの方が工事費が 減少している.これは単位体積重量の異なるスラグを用 いることによりケーソン幅が小さくなり,必要とする資 材等が減ったためである.一方で裏込工が増加している のは,ケーソン背後を含む岸壁全体の施工範囲が固定で あるのに対してケーソン幅が小さくなったことにより, 裏埋範囲が増加したためである.全体の直接工事費につ いては,銅スラグの方が小さくなる結果を得られた. 表-8 工種毎の工事費割合比較 ①砂利 ②銅スラグ ①-② 基礎工 100.0 95.5 4.5 本体工 100.0 89.5 10.5 根固工 100.0 100.0 0.0 被覆工 100.0 100.0 0.0 上部工 100.0 93.8 6.2 舗装工 100.0 100.0 0.0 裏込工 100.0 105.3 △ 5.3 直接工事費 100.0 98.1 1.9 砂利を100とした場合の工事費割合 名称

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5 50  60  70  80  90  100  110  直接工事費 裏込工 舗装工 上部工 被覆工 根固工 本体工 基礎工 砂利 銅スラグ 工事費の割合(砂利を100とする) 図-7 工種毎の工事費割合比較

4. 航路浚渫の二酸化炭素排出量の推計

(1) 施設概要 グラブ浚渫船による航路浚渫について,施工計画・工 事発注段階を対象として検討を行った.浚渫工事の施工 計画・工事発注段階では,作業船(浚渫船と揚土船)の 組み合わせにより経済比較を実施して船団構成を決定す る.浚渫工事の規模,施工条件,船団構成等は表-9,表 -10及び表-11のとおりである. 表-9 浚渫工事の工事規模および施工条件 工事規模 浚渫面積 30,200m2 浚渫土量 49,310m3 平均土厚 1.6m 施工条件 船団構成 グラブ浚渫船,空気圧送船 浚渫期間 20日間 土捨場 港内(運搬距離6.8km) 表-10 浚渫工事の船団構成 ケース名 船団構成 Case1 グラブ浚渫船23m3 2隻 空気圧送船6000PS 1隻 土運船1300m3 2隻 引船1500PS 2隻 Case2 グラブ浚渫船15m3 2隻 空気圧送船6000PS 1隻 土運船1300m3 2隻 引船1500PS 2隻 Case3 グラブ浚渫船23m3 1隻 グラブ浚渫船15m3 1隻 空気圧送船6000PS 1隻 土運船1300m3 2隻 引船1500PS 2隻 表-11 作業船の運転時間等

Case1 Case2 Case3 グラブ浚渫船 運転最大時間 6.5hr 7.5hr 7.5hr 空気圧送船 運転時間 8hr 7hr 8hr 引船 運転時間 8hr,8hr 6hr,8hr 6hr,8hr 1 日あたり浚渫 土量 5,380m 3/日 4,758m3/日 5,496m3/日 注)グラブ浚渫船の最大運転時間は一時退避を行うものとして 7.5hr,空気圧送船の最大運転時間は 8hrとした. (2) 対象工種 施工計画・工事発注段階では,施設建設にかかる全て の費用を積み上げる必要があるため,浚渫に関わる全て を建設費用算出の対象とする.ここでは,土捨場内の陸 上排砂設備は既設として,海上排砂設備より海側の作業 を対象とする.図-8及び図-9に施工手順,浚渫工事のイ メージを示す. フロータ管設置 海上管設置 立ち上がり零号設置 グラブ浚渫 土運船運搬 空気圧送船揚土 フロータ管撤去 海上管撤去 立ち上がり零号撤去 安全監視船 図-8 浚渫工事の施工手順 図-9 浚渫工事のイメージ (3) 推計条件 工種別数量,使用した環境負荷原単位は表-12,表-13 及び表-14のとおりである.

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6 表-12 使用した工種別数量 名称 単位 数量 グラブ浚渫工   グラブ浚渫 m3 49,310 土運船運搬工   土運船運搬 m3 49,310 揚土土捨工   空気圧送船揚土 m3 49,310 排砂管設備工   フロータ管設置・撤去 m 42   海上管設置・撤去 m 18   立上がり零号設置 組 1   排砂管設備 式 1 安全対策工   安全監視船 式 1 表-13 推計に使用した環境負荷原単位(建設機械) 名称 規格 供用日あたり CO2排出量 (kg-CO2/日) グラブ浚渫船 D15m3スパッド式 6.16E+02 5.50E+03 グラブ浚渫船 D23m3スパッド式 9.31E+02 8.30E+03 引船 鋼D250PS 1.16E+01 1.24E+02 引船 鋼D350PS 1.53E+01 1.63E+02 引船 鋼D1500PS 5.59E+01 5.97E+02 土運船 鋼1300m3 密閉式 - 8.17E+02 空気圧送船 鋼D6000PS 1.01E+03 1.34E+04 揚錨船 鋼D30t吊 ※ 1.16E+03 1.50E+03 台船 鋼200t積 - 1.64E+02 安全監視船(引船) 鋼D200PS 9.35E+00 9.99E+00 トラッククレーン 油圧伸縮型20t吊 7.04E-01 4.99E+00 トラック 8t積 2.72E-01 1.85E+00 排砂管 長さ6m 660mm - 4.45E+00 運転時間あたり CO2排出量 (kg-CO2/時間) ※は運転日あたりのCO2排出量(kg-CO2/日)である. 表-14 推計に使用した環境負荷原単位(燃料) 名称 単位 CO2排出原単位(kg-CO2/L) 軽油 L 2.96E+00 A重油 L 2.88E+00 (4) 推計結果 二酸化炭素排出量の推計結果について,a)では工種 別,b)では項目別について述べる.また,c)では工種 毎の工事費割合比較について述べる. a)工種別 表-15,図-10 にグラブ浚渫船の組み合わせを変えた 3 ケースについて工種別の二酸化炭素排出量の推計結果を 示す. 浚渫工程からの二酸化炭素排出量は,浚渫船のグラブ 容量の合計が最小となるCase2 が最小となる.しかし, 運搬,揚土土捨,排砂管設置,安全対策を含めた航路浚 渫全体では,グラブ容量の合計が中間のCase3 が最小と なる. 表-15 に示すとおり,空気圧送船や土運船の運転時間 が同じであっても一日当たりの浚渫土量がケース間で異 なる.これは,作業船を如何に効率よく稼働させたかの 違いである.つまり,浚渫全体における二酸化炭素排出 量を小さくするためには,浚渫作業全体の効率性が重要 である. 表-15 工種別の二酸化炭素排出量

case1 case2 case3

グラブ浚渫工 529,589 445,762 472,390   グラブ浚渫 529,589 445,762 472,390 土運船運搬工 202,664 214,005 184,913   土運船運搬 202,664 214,005 184,913 揚土土捨工 500,786 523,962 489,938   空気圧送船揚土 494,086 517,262 483,238   空気圧送船拘束 6,700 6,700 6,700 排砂管設備工 9,604 9,604 9,604   フロータ管設置・撤去 1,903 1,903 1,903   海上管設置・撤去 2,369 2,369 2,369   立上がり零号設置 4,531 4,531 4,531   排砂管設備 801 801 801 安全対策工 8,340 9,174 7,506   安全監視船 8,340 9,174 7,506 合計 1,250,983 1,202,507 1,164,351 名称 CO2排出量(kg-CO2/工事) 0 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400 case3 case2 case1 グラブ浚渫工 揚土土捨工 土運船運搬工 排砂管設備工 安全対策工 t‐CO2/工事 図-10 工種別の二酸化炭素排出量 b)項目別 表-16,図-11 に機械稼働・機械減耗の項目別に推計し た二酸化炭素排出量を示す.機械減耗に起因する二酸化 炭素排出量が全体の約6 割を占め,機械稼働は約 4 割で ある. 表-16 項目別の二酸化炭素排出量 (kg-CO2/工事) ケース 機械稼働 機械減耗 計 case1 490,969 760,014 1,250,983 case2 482,343 720,164 1,202,507 case3 466,558 697,793 1,164,351 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

case1 case2 case3

機械減耗 機械稼働

(7)

7 c) 工種毎の工事費割合比較 工種毎の工事費増減割合について,case1の各工種金 額を100 として,他 case と比較した割合を表-17 及び図-12 に示す. グラブ浚渫工に関してはcase2<case3<case1 の順に工 事費が大きくなっているが,土運船運搬工ではcase2> case1>case3 と,case2 が最大へと逆転している.これは 空気圧送船や土運船の運転時間が同じであっても作業船 の稼働効率によって一日あたりの浚渫土量が異なるため と考えられる.結果として直接工事費全体ではcase3< case2<case1の順となっている. 表-17 工種毎の工事費の割合比較 case1 case2 case3 グラブ浚渫工 100.0 80.4 85.2 土運船運搬工 100.0 111.8 96.8 揚土土捨工 100.0 109.1 97.9 排砂管設備工 100.0 100.0 100.0 安全対策工 100.0 110.0 90.0 直接工事費 100.0 96.3 91.8 case1を100とした場合の工事費割合 名    称 50  60  70  80  90  100  110  120  直接工事費 安全対策工 排砂管設備工 揚土土捨工 土運船運搬工 グラブ浚渫工

case1 case2 case3 工事費の割合(case1を100とする) 図-12 工種毎の工事費の割合比較

5. 結論

本研究では,ケーソン式係船岸及び航路浚渫における 二酸化炭素排出量について,近年の施工事例を基にした 条件設定から推計を行った. ケーソン式係船岸の中詰材にスラグを用いた場合と砂 利を用いた場合の比較では,スラグ使用による純粋な二 酸化炭素排出量の減に加えてスラグの単位重量を活用し たケーソン幅の減少により資材等が減少する効果が得ら れており,全体として1スパン当たり3.2%の二酸化炭素 排出量が削減された. 航路浚渫工事における作業船の組み合わせによる比較 では,大規模の浚渫船と小規模のものを組み合わせた case3がもっとも二酸化炭素排出量が少なかった.小規 模のみのcase2では浚渫工での二酸化炭素排出量が少な くなるが,その他の工程での稼働時間が長くなるため, 全体としての二酸化炭素排出量は必ずしも最小とはなら ない.浚渫作業全体の効率化が重要であるといえる. 二酸化炭素排出量を計算するためには,通常,細かい 積み上げ計算を行う必要があり,多くの時間を要する. そのため,多くの試算を行ってそれをもとに感度分析を 行うことにより,積算代価レベルの原単位を作成するこ とが二酸化炭素排出量の計算を容易にする可能性がある. 謝辞:本研究にあたり,国土技術政策総合研究所鈴木港 湾研究部長をはじめ,たくさんの方々に多大なご協力を 頂きましたことに感謝いたします. 参考文献 1) 国土交通省九州地方整備局下関港湾空港技術調査事 務所(2001):港湾整備における LCA 手法導入調査 報告書. 2) 南斉規介・森口祐一(2006):産業連関表による環 境負荷原単位データブック(3EID) LCA のインベ ントリデータとして,国立環境研究所. (2011. 8. 8 受付)

ESTIMATION OF CO2 EMISSION ASSOCIATED WITH

PORT CONSTRUCTION PROJECTS

Naoki MAEKAWA, Tomoya HAYASHI and Jinkatsu SUGENO

In this study, we estimated CO2 emission associated with port construction projects, which were con-struction of caisson-type quay and dredging work of fairway. In the caisson-type quay project, filling of caisson was set slag. Base case of the project was sand. In the dredging project, performances of dredger were set high, middle and low. Each case was calculated CO2 emission and compared to another case.

The results showed that slag case had lower CO2 emission than sand case in the quay project. In the dredging project, middle performance dredger case had the lowest CO2 emission. This suggests that to se-lect appropriately working crafts and construction equipments is important to reduce CO2 emission.

図 -11  項目別の二酸化炭素排出割合

参照

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