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臨床神経42-6_責了.indb

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Academic year: 2021

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要旨 脳波検査を実施するためには,電極が正しい位置で装着され,接触抵抗を下げて電 極間の抵抗にばらつきをなくすことが重要である。脳波記録は覚醒安静時および賦活時脳 波と睡眠時の記録が必要であり,そのうち賦活法は安静覚醒時の閉眼状態で明らかでない 異常波の検出や生理的変化の観察を目的としている。そのためには被検者の協力が必要で あり,検査前に目的や方法を分かりやすく説明し , 被検者の協力を求めるようにする。ま た,検査情報を事前にチェックすることは必要である。被検者自身から聞き出すことも検 査がスムーズに進行するために必要となる場合もある。 Key Words:開閉眼賦活,閃光刺激賦活,過呼吸賦活,睡眠賦活 はじめに 脳波の記録は,安静覚醒閉眼時において全く異常波 が出現しないか,ごく微小の異常波しか出現しない場 合がある。しかし,異常波は特定の生理的や生化学的 な内外の環境変化が生じた時のみ異常が出現するか, あるいは増強する場合がある。臨床的診断に必要とな る軽度にしか出現しない異常波を見極めるための方法 を賦活法という。脳波の賦活法には一般的に①開閉眼 賦活,②閃光刺激賦活,③過呼吸賦活,④睡眠賦活が ある。 開閉眼賦活 1.方法 α波の出現を確認し,開眼させ 10 秒間 1 点を凝視 させ,α波減衰(α-blocking)の確認をする(図 1,2)。 α-blocking が不明瞭な場合は再現性をみるために何回 も行う。高齢者などによる反応が遅い場合は 20∼30 秒と長めに行うと確認しやすい。モンタージュは基準 誘導および双極誘導で行う。 1)開眼によりα-blocking が左右同じように出現 するか確認する。α-blocking が一側で開眼によって 欠如する場合は,その半球の機能異常が示唆される (Bancaud 現象)1)。 2)α 波が開眼によって背景脳波で減衰すると,不 明瞭であった異常波(徐波や棘波)が明らかになるこ とがある。 3)てんかん性の突発異常が開閉眼で誘発されるこ とがあるが,特に閉眼直後に広汎性棘・徐波や高振幅 徐波などが誘発されやすい。光過敏てんかんでは,開 閉眼で異常波が誘発されやすい。 4)脳波の低振幅パターンやα波の出現が乏しい時 には開閉眼を繰り返すと覚醒時か睡眠傾向かの鑑別も 可能となる。睡眠傾向がある場合は開閉眼を繰り返 し,最後の閉眼直後を覚醒時脳波として判読するが, 開閉眼直後はα波の周波数が最大 2 Hz ほど速くなる ことがある(squeak 現象)2)。 5)ナルコレプシーは,開眼によってα 波の出現が 増 強 さ れ る(逆 説 的α波 ブ ロ ッ ク:paradoxical α -blocking)が,睡眠傾向の強い場合でもみられる(図 3)。 6)μ波は開眼では抑制されない。 大垣市民病院医療技術部診療検査科生理機能室

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2.注意点とコツ ① ただ開眼するだけではα 波の抑制が不十分な場 合があり,十分な賦活を得るために 1 点を注視するよ うに指示する。被検者によっては,大きく眼を開くこ とで筋電図が多く混入する場合があり,静かに軽く開 眼するように指示する。 ② 開閉眼が指示通りに行えない小児や指示が理解 できない被検者の場合は,軽く瞼を押さえたり開放し たりして行う。持続的に閉眼のできない患者には頻回 に開閉眼を行い確認する。 閃光刺激賦活:photic stimulation; PS 1.方法 ストロボスコープを使用し,覚醒度を上げて行う。 閃光の色は橙色や赤色が最も有効であるとされる。通 常は青白色が使用され,眼前 15∼30 cm の距離で, 低頻度から高頻度に頻度を段階的に上げ,それぞれ 10 秒刺激し 10 秒停止する。 1)固有の突発波の周波数と同調する刺激が有効で, 15 Hz 付近が最も有効であるとされ,小児では 3∼8 Hz, 思春期では 13∼20 Hz が範囲である。 2)正常な反応では,後頭部に光駆動反応(photo driving response)が出現し(図 4),①基本同調駆動 反応(fundamental driving),②整数倍の高次同調駆動 反応(harmonic driving),③整数分の 1 の低次同調駆 動反応(subharmonic driving)がある。基本同調駆動 反応は,10 Hz の光刺激によって 10 Hz の波が出現し, 高次同調駆動反応は 20 Hz や 30 Hz での出現,低次 同調駆動反応は 5 Hz の波での出現をいう。 3)睡眠傾向にある場合は光駆動による高調波が出 現しにくくなり,また,基礎律動に徐波化がみられる てんかんの症例でも高調波が抑制される。 4)左右差がある場合は欠如側の半球の機能低下が 示唆される。 図 1 症例 49 歳 開眼によるα波減衰(α-blocking) 図 2 症例 49 歳 閉眼によるα波増加 図 3 症例 22 歳 開眼による覚醒 図 4 症例 70 歳 10 Hz-driving

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5)光突発波反応(photo-paroxysmal response; PPR) または光痙攣反応(photo convulsive response)は, 閃光刺激により後頭部に局在性棘波や,高振幅の多棘 徐波複合または棘徐波複合などが誘発されたりする。 6)光筋原反応(photo myogenic response)は,反復 光刺激によって脳波上では明らかな突発波は出現しな いが,顔面や四肢などに刺激に一致したミオクロニー 痙攣が起こることである。 7)開閉眼賦活と閃光刺激の両者で異常波が出現す る場合があり,閃光刺激中に開閉眼を行うと異常波の 出現率が高くなるとされる。参考までに閃光刺激と開 閉眼のダブル刺激の一例を示す(図 5,6,7,8,9)。 2.注意点とコツ ① 室内が暗く閉眼状態であり,時々声をかけなが ら覚醒状態を保つように心掛ける。 ② 異常波が出現した場合は再現性をみるために同 一周波数で刺激を行うが,異常の可能性がある範囲を 繰り返し刺激することで発作へ移行することがあり注 意を要する。 ③ 小児や発達遅滞のある被検者の場合,閃光刺激 のため順調に検査ができないことを考慮にいれて最後 に行う場合もある。 図 8 症例 63 歳 閉眼時に 18 Hz 閃光刺激 図 5 開閉眼と閃光刺激のダブル刺激(一例) 図 6 症例 63 歳 開眼と同時に 18 Hz 閃光刺激 図 7 症例 63 歳 閉眼と同時に 18 Hz 閃光刺激 図 9 症例 63 歳 閉眼と同時に 18 Hz 閃光刺激(徐波が出現)

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過呼吸賦活:hyper ventilation; HV 1.方法 軽く閉眼したまま,1 分間に 20∼30 回の割合で 3 分間過呼吸を行わせる。PS 同様に覚醒度が重要であ り,睡眠傾向であれば声掛けなどして覚醒度を保つよ うにする。状況に応じて過呼吸の時間を延長すること もあり得る。呼吸は吸気より呼気を強くさせ,終了後 は安静時の記録を少なくとも 2 分は記録する。 1)筋活動や体動によるアーチファクトの混入を避 けるために予め説明しておくのがよい。上手にできな い場合は過呼吸用の器具を使用する(図 10)3)。 2)build up とは,過呼吸によって呼吸性アルカロー シスとなった結果,脳血管に収縮が起こり,脳波の徐 波化と振幅が増大する現象で正常者においても出現す る。10 歳以下の小児の多くと一部の成人にみられる (図 11)。過呼吸終了後の build up の持続時間は,正 常で 30 秒以内であり,60 秒を超過すると異常の可能 性が高い。徐波の出現部位は,一般的に前頭部,頭頂 部に著明で,後頭部では目立たない。また左右差や局 在性の出現は異常を疑う要素となる。 図 10 過呼吸用器具 左:かざぐるま(100 円ショップでも売っている)。 右:自家製(閃光刺激の横にフックをつけて引っ掛けてもいいし,家族に持ってもらってもいい)。 図 11 症例 38 歳 過呼吸 build up(+)だが,過呼吸終了と同時に徐波は消失。

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3)re-build up とは,過呼吸実施中に出現した徐波 がいったん消失し,その後に再び出現することをい う。モヤモヤ病に比較的特異的であるとされ,診断が 成されている場合には過呼吸賦活は禁忌である。

4)過呼吸中に 3 Hz の棘徐波複合(3 Hz spike and slow wave complex)が誘発される場合,欠神発作を 誘発して意識消失となることがある。このことから, 欠神発作の疑いがある症例には有効な賦活である(図 12)。 5)過呼吸賦活は妊婦,高齢者,重篤な心疾患,急 性期の脳血管障害,重篤な呼吸疾患などの被検者は, モヤモヤ病と同様に実施すべきではないが,不安な場 合は医師に確認する。 2.注意点とコツ ① 過呼吸では力が入り,口や頭が動くことで筋電 図が後頭部や側頭部を中心としたアーチファクトとな るが,その場合は軽く開口させて頭を動かさないよう に指示する。被検者には,手を動かすなど,体動が激 しい例もあるが,それらを防ぐには検査前に十分な説 明をしておく。しかし,それでも筋電図が混入する場 合は賦活を優先する。 ② 小児や発達遅滞のある被検者では指示が入らず, 検査を継続できない場合があり,呼吸用の器具を用い る方法で実施するが,開眼でもそのまま賦活を優先さ せる。また,検査技師が傍につけない場合は母親にも 協力をもとめる。 ③ カルテや母親への情報収集により欠神発作が疑 われる場合は,過呼吸は十分行う必要がある。欠神発 睡眠賦活:sleep activation4) 1.方法 睡眠賦活には自然睡眠と薬物睡眠の 2 つの方法があ る。両者とも覚醒時脳波とその他の賦活を行った後に 記録されるのが望ましいが,記録開始時に眠気が先行 する場合は,睡眠脳波記録を先に行い,後半に覚醒さ せてその他の賦活を行うなど臨機応変に対応する。 1)睡眠賦活は,てんかん疑いの症例,またはてん かんを除外する目的での依頼には不可欠である。異常 波は覚醒から drowsy1 や軽睡眠時への移行時に出現 しやすい。また,睡眠時のみにおいて異常波が出現す る場合もあり,記録は「①覚醒―②入眠期―③睡眠時 (sleep stage Ⅱ)―④刺激して覚醒」が望ましい。 2) 睡 眠 時 の 波 形 パ タ ー ン は 必 須 で あ り,sleep stage Ⅰでは瘤波(hump:頭蓋頂鋭波;vertex sharp wave),sleep stage Ⅱでは紡錘波(sleep spindle)や K 複合波(K complex)などである。記録は異常波の出 現率が高まる sleep stage Ⅰ∼Ⅱまでを中心に行う。 また,一般的には深睡眠の stage Ⅲ∼Ⅳや sleep REM 期では異常波の出現率は低くなる。図 13,14,15 は 覚醒時に出現しなかった異常波が軽睡眠では出現した 症例である。 3)脳波が睡眠段階と確認したところで,左右差, および年齢発達や異常波と睡眠脳波との区別について 観察する。とくに小児脳波では瘤波が鋭波と誤判断す るような波形で出現してくる場合もあり,注意が必要 である(図 16)。 4)脳の器質的障害などでは紡錘波や K 複合波など が患側で減弱する(lazy activity)が観察される。 5)睡眠薬の使用は,睡眠の効果だけでなく,でき るだけ脳波に影響を与えず自然睡眠に近い脳波パター ンを呈することが条件である。例として経口薬はトリ 図 12 症例 12 歳 3 Hz spike and slow wave complex

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クロリールシロップまたは抱水クロラールがあり,坐 薬としてエスクレの使用がある。これらを使用しても 睡眠効果がなく,また脳波記録が必要な症例の場合 は,静注麻酔薬(ラボナール)や鎮静・催眠作用のあ るセルシンを使用することもある。 2.注意点とコツ ① 検査時には短時間でも眠れるように前日の夜の 睡眠は少なめにするようにお願いし,早朝から起床 し,多少の睡眠不足の状態で検査に臨んでもらう。脳 波は早朝に覚醒させる効果として睡眠時間の短縮によ 図 13 症例 11 歳 図 14 症例 13 歳

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り,部分的断眠効果によって,てんかん性異常波が賦 活されることがある。 ② 睡眠に時間がかかることもあるが,波形や被検 者の様子から目を離さないことは重要であり,そのた めには検査補助として母親の協力を得ることも一つの 方法である。 ③ 睡眠脳波の記録の終了後は必ず覚醒させるが, 体を動かしたりすると脳波の基線にアーチファクトが 混入するため,鼻をつまんだり,口を塞いだりして覚 醒させる方法がある。ただし,母親に付き添ってもら う場合には事前に説明して承諾してもらう。 最後に 賦活法の手順および注意点とコツについて述べた。 検査者は目的にあった正しい賦活ができる技術は必須 であり,そのためには経験や技術を通して身につけ る。また,インフォームドコンセントを十分行い,被 検者あるいはその家族の不安や緊張を取り除く。とく に,乳幼児においては母親の協力があることで臨床診 断に必要な脳波を記録することができる可能性があ り,コミュニケーションは重要である。 文献 1) 原 悦子:スキルアップ脳波検査,脳波賦活法.MEDI-CAL TECHNOLOGY 42(6): 542 548, 2014. 2) 飛松省三:脳波判読のポイント.14 17.https://www.med. kyushu-u.ac.jp/neurophy/point.pdf 3) 水野久美子,石郷景子:きれいな波形を得るためのテク ニック,脳波賦検査(成人・小児).MEDICAL TECHNOL-OGY 38(2): 134 146, 2010. 4) 日本臨床神経生理学会臨床脳波検査基準改訂委員会:改訂 臨床脳波検査基準.臨床神経生理学 32(2): 221 242, 2002. http://jscn.umin.ac.jp/guideline/fi le/ClinicalEEGtest.pdf 図 15 症例 16 歳 図 16 症例 13 歳 hump の連発

参照

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