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1 可分債権そもそも債権という意義ですが 債権とは 特定の者に対して何らかの行為や給付 (= 給付とは 貸付金の返済や売掛代金の支払い等 ) を請求する権利 を言います 可分債権とは 同一の債務者に同一内容の債権者が複数いる場合 ( 即ち 共有の債権者 ) に各債権者が単独で自らの権利割合分を単独で

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1 No76(2016 9)

相続・資産税の世界

相続対策の専門家 堀光博税理士事務所

民法改正案に見る遺産分割

092-292-5138 ~遺産分割前の遺産の規律、相続における可分債権の取扱の改正~

はじめに

前回までは、この民法が改正され施行されるまでには、数年はかかるのではないかと いうことを書きました。しかし、確かな情報によりますとパブリックコメント(意見公募 制度)が出されたので、早ければ来年早々には改正され施行されるのではないかというこ とです。 改正案が立法・公布され施行されるまでの間に国民に周知させるための時間的猶予を 置いて施行されるのではないようです。今回のパブリックコメントが国民への周知に相 当するものとして国民の意見を公募するということになっているのではないかとも考え られます。 ところで、国民への周知期間を置いたものとしては、民法改正では例えば新借地借家 法は平成 3 年 10 月 4 日に立法公布されました。しかし周知期間を置き翌年の 8 月 1 日 に施行されました。ただし、旧法時代に契約した借地借家契約はその契約が存続する間 は旧法が適用されていますし、現在でも旧法の借地借家契約が有効に存続している契約 もあります。 しかしながら、改正民法典は旧法と改正法との併存期間はないはずです。たとえば、 前回のコラムのテーマの配偶者の相続分を取ってみますと、改正施行前の婚姻による相 続であれば二分の一であり、改正法施行後の婚姻による相続であれば配偶者の相続分は 例えば三分の二であるということになれば、却って国民生活に重大な混乱が起きること になります。改正される民法典全体が公布即施行されるかどうかは、法律の専門家に確 認してください。少なくとも、民法典の親族編と相続編は混乱を避けるために公布、即 施行されるものと思われます。今後の民法改正の動向を見守っていきたいと思います。 今回は、可分債権の遺産分割前の遺産の規律について考えて見たいと思います。

Ⅰ 可分債権の遺産分割における取扱

まず、一般の方には「可分債権」という言葉は耳慣れない言葉ですので、ご説明いたし ます。

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2 1 可分債権 そもそも債権という意義ですが、「債権とは、特定の者に対して何らかの行為や給付(= 給付とは、貸付金の返済や売掛代金の支払い等)を請求する権利」を言います。 可分債権とは、同一の債務者に同一内容の債権者が複数いる場合(即ち、共有の債権者) に各債権者が単独で自らの権利割合分を単独で債務者に請求できる権利を言います。 不可分債権とは言葉通りに分けることができない債権で、所有している債権の全部を請 求しなければならない債権のことを言います。 可分債権の代表的なものが預貯金等の金銭債権です。その他に売上債権などがあります。 2 相続における可分債権 最高裁判所の判例では、相続財産の中の可分債権は分割債権であり、預貯金等は遺産 分割を経ずに相続開始によって当然に、各共同相続人にその相続分に応じて承継される ものとして扱われています。可分債権に関してはいくつもの判例があり実務上も定着し ています。(最一小判S23・4・8 最小判 S30・5・31 最判 H16・4・20 等)。 したがって、実務上も、金銭その他の可分債権については、遺産分割を経ずに請求す ることができることになっています。ただし、金銭債権等の可分債権であっても、共同 相続人間でその可分債権を遺産分割対象財産に含めるという合意をすれば、遺産分割の 対象となります。一般に、可分債権の典型である預貯金(預貯金払戻請求権)については、 他の相続人の異議が無い限り、通常は遺産分割の対象とされています。つまり、預貯金 の払戻請求権については、可分債権であるものの、通常は遺産分割によって決するのが 一般的になっています。 しかし、最高裁の判例によると遺産分割協議が整う前に、相続人が単独で自らの相続 分に相当する割合の預貯金の払い戻しを請求することができます。ところが、金融機関 は自らの都合による内規を主張してなかなか預貯金払い戻しに応じようとはしません。 これは明らかに法令違反行為です。法的なことは法律の専門家の意見をお聞きしなけれ ばなりませんが、何らかの威力業務妨害罪に当たるのではないかとさえ思えるほどの強 い対応です。弁護士さんが代理人として払戻しを請求すると払戻しに応じてくれます。 事情は分かりませんが、何らかの法的責任を弁護士さんに課するような約束があるのか もしれません。 3 相続における可分債権の改正案 今回の改正案では、確かな情報によりますと金融機関の強い要望によって、可分債権 も遺産分割の対象にすべきであるという主張で改正案の俎上に上がっています。主とし て、預貯金払戻請求権を狙った改正の主張です。そのことによって、相続における他の 可分債権の取扱いにも波及し、遺産分割が整わない時の特に納税資金の問題が非常に難 しいものになりますが、金融機関自身はその対案さえ出してはいません。 金融機関の主張通りの改正になりますと、何らかの事情で遺産分割協議が整わない場 合は、相続税の納期限までに金銭で一括納税をしなければならない相続人は、納期限が

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3 到来しても遺産の中から納税ができず、延滞せざるを得ません。そうしますと、高率の 延滞税の負担や、更に納税が延滞すれば財産の差し押さえなどの処分が待っています。 そのほかに、被相続人の預貯金で生活をしていた相続人家族の生活が困難になることも あります。又、緊急に要する費用等にも支障が出ているというのが現状であることを、 筆者は多く目にしています。 現在では、一部の金融機関では葬儀費用に充当するための資金については遺産の預貯 金の払戻しをしています。しかし、これも相続人全員が相続人であることの証明書と印 鑑証明書を添付して、金融機関独自の内規による書類に署名押印させています。これは、 遺産分割協議そのもの、つまり遺産の一部分割となんら変わりはなく、金融機関がなん らかの特別の対応をしているわけでも何でもありません。つまり、可分債権たる預貯金 は遺産分割協議をしないと預貯金の払戻しはしないという金融機関独自の身勝手な強い 姿勢の表れでもあります。このような場面に遭遇した相続人の全員が感じているという ことを、相続業務を介して筆者は数多く見てきました。法務省の改正案の検討では、金 融機関の思惑通りの改正になるかどうかは分かりません。法務省の民法改正部会として も対応案を考えているようです。

Ⅱ 可分債権の遺産分割における取扱

以下、法務省の「民法(相続関係)等の改正に関する中間試案の補足説明」を解説し ます。文中、一般の方にも分かり易いように加筆したりしています。 1 見直しの要点 原則、預貯金再検討の可分債権を遺産分割の対象に含めるものとする。 【甲案】 遺産分割がなされるまでの間も原則として各相続人の権利行使を認める。 【乙案】 遺産分割がされるまでの間は原則として各相続人の権利行使を禁止する。 2 見直しの必要性 最高裁の判例によると、可分債権たる金銭債権は相続人が相続分に応じた預貯金の払 い戻し請求ができる取扱いになっている。(実際は、金融機関は相続人が単独で請求して も応じてはいない。(注:最高裁の判例は、法律と同様の判例法とされています。) 最高裁の判例による考え方によると次のような問題が起こり得ると言われています。 ① 遺産の全て或いは大部分が可分債権であると、特別受益(生前の相続財産の前払)や 寄与分(相続分とは別の別枠の取り分)を考慮することがなく、形式的に法定相続分 に従って分割継承される結果、相続人間の実質的公平を図ることができない。 ② 可分債権は、遺産分割を行う際の調整手段としても有用であるので、可分債権を遺産

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4 分割の対象に含める したがって、法務省の民法改正の作業をしている部会では、甲案の再検討はされずに、 乙案の預貯金等の可分債権を遺産分割の対象に含める方向で検討することになっていま す。 現在、前記の甲案と乙案が検討されています。 筆者の考え 前記、①②の文中の指摘が一部にあると述べています。それは改正をしなければならな いほどの強い理由には当たらないと思料します。やはり、金融機関の強い要望があること が見え隠れしているような気がしてなりません。 3 甲案について 検討されているのは、①~⑨までありますが、⑥以降は第三者との関係ですので省略し ます ① 預貯金債権等の可分債権を遺産分割の対象に含める。 ② 相続の開始により可分債権は法定相続分に応じて分割継承され、各相続人は、原則とし て、遺産分割前でも、分割された債権を行使することができる。 ③ 遺産分割において各相続人の具体的相続分を算定する際には、可分債権の相続開始時の 金額を相続財産の額に含める。 以上が、甲案の基本的な考え方です。 本来、最高裁の判例によると可分債権は遺産分割を待たずに当然に相続分に応じて分 割されたものとしているわけで、遺産分割の対象財産には含まれないとするものです。 甲案はこれを一部修正し、相続開始時の可分債権の額を具体的な相続分算定の基礎とな る財産に含め(注)、且つ、可分債権が遺産分割時にも残っている場合には、これを遺産 分割の対象とする。 結局、最高裁の判例との調整をするような案で、相続開始と同時に可分債権たる預貯 金は法定相続分に応じて分割済みであるということを、遺産分割の対象財産にすること によって、Ⅱの 2 の①の問題が解決されるというもので、もし改正する必要があるとし たならば、筆者はこれを支持します。 結局、最高裁の判例との調整をするような案で、相続開始と同時に可分債権たる預貯 金は法定相続分に応じて分割済みであるということを、遺産分割の対象財産にすること によって、Ⅱの 2 の①の問題が解決されるというもので、もし改正する必要があるとし たならば、筆者はこれを支持します。

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5 注:具体的相続分とは 相続員に対する生前贈与や遺言による遺贈(これらを「生前贈与等」といいます。) は、相続財産の前取りであり、相続開始に残っていた遺産のみを民法の法定相続分で 分ければ、生前贈与等を受けていない相続人に対して不公平になるので、生前贈与等 を相続財産に加算して(持戻して)、民法規定の法定相続分で分けた額から生前贈与等の 額を差し引いたものを「具体的相続分」といいます。 ④ 相続開始後、遺産分割終了までの間に、可分債権の弁済を受けた相続人について は、その取得した金額を具体的相続分から控除する。‘(生前贈与と同じ扱い) ⑤ 相続人が遺産分割前に弁済を受けた額がその具体的相続分を超過する場合には、 遺産分割において、その超過額につきその相続人に金銭支払い債務を負担させるも のとする。(貰いすぎ、預貯金の引出しじから他の相続人に払い戻させる。) 以上二つは、①~③までの規定に応じ可分債権を遺産分割の対象に含めるのであれば当 然に必要な規定です。 この案であれば、金融機関は遺産分割協議絶対主義ではなくても、最高裁の判例通り、 相続人からの預貯金の払い戻しに応じるように、窓口業務を法律に沿ったあるべき姿に変 えなければ、民法の改正が実務上の役目を果たすことはできないことになります。 4 乙案について (1)乙案の概要 可分債権を遺産分割対象に含めることとし、かつ、遺産分割が終了するまでの間、可 分債権の行使(預貯金払戻請求)を禁止する。 ① 預貯金債権等の可分債権を遺産分割の対象に含める。 ② 相続人は、遺産分割が終了するまでの間は、相続人全員の同意がある場合を除き、 原則として、可分債権を行使することができない。 ③ 遺産分割において各相続人の具体的相続分を算定する際には、可分債権の相続開 始時の金額を相続財産の額に含める。 乙案は、金融機関が自ら独自に実務で行っている方式に沿った改正案と思われます。 ②は、遺産分割を原則としています。原則であれば例外があります。その例外をどのよ うな場合とするかが検討されています。 (2)乙案に対応する方策 ① 裁判所が関与しない方策 現行法では、遺産分割の対象となる財産を遺産分割前に行使する必要がある場合には、 裁判所が行う審判前の保全処分として、仮分割の仮処分を行うことができるそうです。 しかし、手続きや緊急性の疎明の必要性など、非常に複雑かつ困難で素人の相続人がで

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6 きるものではありません。現状よりもかなり相続人に負担が重くなると指摘されていま す。 このような手続きを経ないでも、可分債権の権利を行使することができるような次の ような方法も検討されています。 考えられる可分債権の権利行使ができない場合に起きることとして次のようなことが挙 げられています。 イ 被相続人名義の医療費を支払う必要性がある場合 ロ 被相続人から扶養を受けていた相続人の生活費に困窮するので、資金的に裕福な相 続人が遺産分割協議を引き延ばすことによって、自己に有利な条件で遺産分割協議 を成立させようとする。 ハ 被相続人の死期が迫った場合に、相続人の一部による預貯金の引出を招く 以上のような状況に対して、裁判所の関与なしに、預貯金の払い戻しを受けることが できないかどうかについて検討されています。その要件として検討されたものは、 イ いかなる目的の場合に払い戻しを認め、その金額をどのように定めるかについて は、一義的に明確な基準を定立することは困難である。 ロ したがって、払戻しを受ける目的を問わずに、一定の金額については当然に払い 戻しを認める。 筆者の乙案に対する考えは、基本的には反対です。しかしながら、もし乙案が立法さ れたとすれば、乙案の預貯金の払い戻しに関しては、上記ロの一定割合金額と、相続人 が緊急に必要とする額で確実なものとの大きい金額までの額の払い戻しを認めるべきで あると考えます。 当然に、相続税の納付すべき額は確定していますので、緊急性と必要性の要件は満た します。したがって、無条件に払い戻しができるようにすべきであると考えます。これ は、国家財政収入の確保という国家存立の要求に沿うものですから当然に預貯金の払い 戻しをさせるべきです。そのほかの相続に関連する費用負担、例えば相続登記費用その 他の相続関連費用についても同様に相続手続きを円滑にするためのものは必要不可欠で す。 いずれにせよ、乙案が成立したとしても、従来のように金融機関が自己の都合ばかり を主張して法を順守しなければ、絵に描いた餅になることになります。もっとも、現行 においても金融庁は金融機関が可分債権の払い戻し応じようとしないことについて、な んらの行政指導をも行っていないことも問題であります。したがって、法務省はこの改 正部分に関して、金融機関が法を順守するよう特別の付帯決議をすべきであると思料し ます。もっとも、実際に付帯決議するのは国会でありますが。 ② 裁判所の関与の下で預金の払い戻しを認める方策 上記①の方策は、裁判所の関与なしに預金の払い戻しを認めるものであり、その範囲

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7 は相当限定される必要があるので、一定の管理処分権限を有する者(預金管理者)を、裁 判所が選任することとする方策が検討されています。この預金管理者の性質、権限につ いては、基本的には遺産管理人の規定を適用するというものです。預金管理者が選任さ れた場合には逐一、家庭裁判所の許可を得ることなく、預金管理者の判断に基づいてよ と金を相続人に適宜分配し、あるいは、相続債務を弁済することができるというもので す。 筆者の考え この制度は、それなりの費用負担を要しますので、相続税の基礎控除額前後の一般の 相続では利用しがたいのではないかと思われます、それ相当の遺産がある場合にしか 利用できないのではないでしょうか。遺産分割に関する調停はこの遺産レベルの相続 が約四分の三と非常に多いということをも検討して方策を考えるべきです。 相続人が相続債務のみならず、相続に関連して支払義務が明らかなものや、緊急を要 するもので且つ確実なものの支払い義務は、裁判所を介しなくても預貯金の払い戻しが できるようにしなければ、実務には役に立たたない法律改正であると考えます。支払が 確実で且つ明らかであるかどうかは、債権者からの請求書や契約書等で確認できるはず です。あるいは、債権者からの証明書という方法もあります。法律は国民のためのもの であり、実務に沿った法改正であるべきであると考えます。 その良い例が、後見人制度です。後任人制度の利用者は、この制度を利用する必要が ある数百万人の僅か 2%程度で伸び悩んでいます。この制度の使い勝手の問題と費用負 担のために、一般の方には利用しがたい制度と言われています。

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