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Akita University 自律学習を促進するための学習支援システムの開発 総合情報処理センター 吉崎弘一 1. はじめに 学習を効果的にするためのソフトウェアや Web サービスが, 学習の内容や手法に応じて既に数多く提案されている 特に自学における学習の情報化では, 近年のスマートフォンと

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Academic year: 2021

シェア "Akita University 自律学習を促進するための学習支援システムの開発 総合情報処理センター 吉崎弘一 1. はじめに 学習を効果的にするためのソフトウェアや Web サービスが, 学習の内容や手法に応じて既に数多く提案されている 特に自学における学習の情報化では, 近年のスマートフォンと"

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トの急速な普及と共に,これらの機器にインストールして用いる学習アプリケーションに注目が 集まっている。このようなモバイル機器インストール型アプリケーションには様々な学習内容の ものが提供されているが,個々のアプリケーションは語学など特定分野の学習を支援する単機能 アプリケーションであることが多い。  これに対し教育機関における教育の情報化では,モバイル機器へのインストール型アプリケー ションが自学の場合と同様に注目を浴びる一方,Web ベースの汎用学習支援システム(Learning Management System)を全学的に利用できるようにするケースが依然多く見られる。これは様々 な内容や手法の講義に対して,共通のユーザインターフェイスと利用者データベースを提供する ことができる,複数の情報通信機器間でも学習データを同期することができる,サービスの管理 運用コストが低いなどのメリットが大きく寄与していると考えられる。この汎用的な学習支援シ ステムについては,国内の教育機関における利用傾向として,2010 年の時点で大学・短期大学の 24.7% で,授業で学習支援システムを利用していることが報告されている [1]。また,利用してい るシステムとしては Moodle[2],Blackboard[3],WebClass[4] などの既存のオープンソースやプ ロプライエタリな学習支援システムが多くの大学・短大で利用されている一方,独自開発したシ ステムの利用事例も数多いことが報告されている [1,5]。

2. LePo のシステム概要

 国内外において様々な学習支援システムが開発・運用される一方,学習者の自律学習を支援す る際に重要と考える「学習目標の達成度評価」と「ノートテイキングの促進」を積極的に支援し, 同時に操作性に優れたシステムが存在しなかったため,本論文の著者が中心となり新たな学習支 援システム LePo を開発した [6-8]。2009 年より継続開発している LePo は,Web ブラウザ上で動 作し,そのクライアントサイドには HTML5/JavaScript/CSS の各技術を用いている。Internet Explorer のバージョン 8 以上など,HTML5/JavaScript の対応が十分なブラウザからであれば, LePo を利用することができる。また,サーバサイドには Ruby on Rails 3 を用いて開発している。 なお,LePo の画面構成には,電子メールソフトなどでよく見られる 3 ペインレイアウトを採用 している(図 1 参照)。

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3. LePo による教学支援

 学習者が自ら学ぶ自律学習を教育の現場で支援するには,教授内容,教授手法,教授環境を総 合的に考慮する必要があるが,本論文では教授手法と教授環境の観点から自律学習の促進支援を 考慮し,特に自律学習を支援するための LePo の機能である,学習目標の達成度評価とふせんノー ト機能について述べる。 3.1 学習目標の達成度評価  LePo では科目に相当するコースに,各回の講義に相当するレッスンを配置することで,教授 内容を構成する。コースとレッスンには,それぞれ学習の達成目標を設定することが必須である。 各コースの目標とレッスンの目標は,システム上で明示的に関連づけることが可能であり,その ようにすることを推奨している(図 2 参照)。また,教授者は各レッスンに,そのレッスン目標 の達成度を確認するための課題を登録することも必須である。このように LePo ではその教授者 に,コースと各レッスンの学習目標,および課題の登録を必須とする一方で,学習者にはレッス ン学習後の課題提出とレッスン目標の達成度評価の実施を必須としている。  各レッスンに設定する課題は,レッスン目標とその配点に基づき,学習の達成度を定量的に評 価するために用いる。このレッスン目標達成度の定量評価は,1 つの課題の配点を 10 点に規格 化し,その点数を教授者が各学習目標に予め配点することで実現する。なお,コース目標の達成 度は,コース目標に関連づけされたレッスン目標の達成度評価を集計することで自動的に算出さ れる。  レッスン目標の達成度評価には,学習者による自己評価と教授者による評価の 2 種があり,自 己評価は必須,教授者評価は予め実施の有無を任意で設定する。これらの達成度評価は同等の操 図 2 学習目標の構成(概念図) 図 1 LePo の教材トップ画面

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作で行い,共に定量評価と自由記述評価から構成する(図 3 参照)。なお,教授者による個々の 学習者への達成度評価は任意であるため,教授者は自分が管理するコースを,教授者評価を 1) 実施しない(自己評価のみ実施),2)一部のレッスンでのみ実施,3)全てのレッスンで実施, のいずれかの形式にて運営する。  なお,各レッスンで用いる教材はシステムに登録する必要は無く,システム外の Web ページ や紙面の教材を用いることも可能である。このように LePo は学習目標の達成度管理システムと して設計している点が,他の多くの学習支援システムとの大きな違いとなっている。学習目標と その達成度評価を中心とする学習管理は,教授者と学習者の双方に若干の作業を強いることにな るが,双方に対して以下の利点がある。  まず,学習者は毎回のレッスンにおいて LePo 上で学習目標を確認の上,教材を用いて学習 し,課題の作成と目標達成度の自己評価を通して,自分の学習達成状態をチェックする。目標達 成度の自己評価は,コース内の学習者平均もシステム上で表示されるため,この値も踏まえ,自 分の学習状態をより詳細に把握することができる。また,自己評価を確認した教授者から,必要 に応じて個々の学習者に対して記載されるコメントを参考にして,学習を進めることができる。 このように LePo で学習をする際には,毎回のレッスンと言う小さな学習単位において,自然に PDCA サイクルを達成するように設計している。  また,教授者は学習者の目標の達成度評価から算出される「自己評価の実施率」(公開中のレッ スンに対する自己評価を完了したレッスンの割合)と「目標達成率」(公開中のレッスンの達成 度評価の配点に対する評価得点の割合)を,特定の学習者や学習者平均について確認することで, 多人数の授業においても学習者の学習状況を的確に把握することができる(図 4 参照)。このよ 図 3 目標達成度の評価画面 図 4 目標達成度の確認画面(教授者用)

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うに学習目標を設定しその評価を実施することは,教授者に学習目標の構造分析を促すだけでは なく,個々のレッスンやコースの学習目標に対する学習者の達成度評価から,授業改善をするた めの指標が得られることを意味する。  なお,各レッスンの課題では,学習者の理解を推進するため,教授者による達成度の評価を実 施することが望ましい。この教授者評価の労力を軽減するため,記述評価のテンプレート機能も 実装している(図 5 参照)。この機能ではシステムを利用する教授者が任意の文章をテンプレー トとして登録し,作成したテンプレートをクリックすることで,その登録文章を自由記述の評価 欄に挿入することができる [8]。 3. 2 ふせんノート機能  LePo では,各利用者がシステム上に任意のテキスト情報を残すことが可能なふせんノート機 能を実装している [7, 9]。このふせんノートは一般の電子掲示板とは異なり,教材の特定のペー ジ上にテキスト情報を記入・表示するため,ページ単位でのアノテーション機能として利用する ことができる(図 6 参照)。この LePo のふせん機能のような学習支援システムへのアノテーショ ン機能の実装としては,文章教材に下線を挿入するもの [10] や動画教材の指定した再生位置に連 動して文字情報を付与するもの [11] が報告されている。これらの先行研究に対し,今回開発した 学習支援システムでは,テキスト・画像・映像と言った様々なファイル種別の任意のアップロー ド教材に対して,ページ単位でアノテーションを挿入できるという特徴がある。  また,LePo のふせんノートには,記載者本人のみ閲覧可能は「個人ふせん」と,コースの登 録者全員が閲覧可能な「コースふせん」の 2 種がある。前者については検索可能なデジタルノー トとして,後者については講義中における協調学習などで,主に使用する。特にこの後者の用途 では,教授者がふせん利用を想定した授業デザインを行うことが重要であり,教材上で共有する コースふせんの記載情報を,授業にフィードバックさせるなどの工夫をすることが望ましい。 図 5 メッセージテンプレートの利用画面 図 6 ふせんノートの利用画面

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成果について概略を述べる。この科目では同じ教材を用いて対象者が異なる 4 つの授業に対して 開講し,それらの合計として 133 名が履修した。同授業は PC 実習室内で LePo を用いながら行 い,学生は授業中及び授業外の時間に課題の作成と提出を行った。計 14 回の授業で LePo を用い, これら全ての教材で自己評価と教授者評価の双方を実施した。また,同授業の最終回にアンケー ト(7 件法で,1:非常に当てはまる〜 7:全く当てはまらない)を実施し,4 科目計 126 名の有 効回答を得た。  学習内容を理解する上で役に立った事項としては,「各レッスンで,教員からの評価メッセー ジがある」 (平均 1.69 / 標準偏差 0.91),「各レッスンで提出課題がある」(1.92 / 0.91),「各レッ スンで学習目標を明記している」 (2.05 / 1.06),「各レッスンで,学習を振り返るメッセージを記 載する」(2.48 / 1.11)が,アンケートの上位の項目として得られた。  また,教授者が自由記述形式の達成度評価をする際に,複数の教材で課題評価のテンプレート 機能を使うクラスと使わないクラスに分けてその効果を確認した。その結果,同機能を使うこと で提出課題あたりの記述評価時間を約 59%(55 秒)に短縮でき,学習者のアンケート結果からは, 同機能を使うことによる教員の記述評価への評価は低下しなかった。  なお,授業実践によるふせんノートの有用性は参考文献 [9] で報告しており,その操作性と「コー スふせん」を用いた情報共有については,学習者から高い評価を得ている。

5. まとめ

 学習支援システム LePo では学習目標の達成度を,実施が必須である学習者の自己評価と,実 施の有無を教授者がレッスン単位に設定する教授者評価で示す。この達成度評価では,学習者に よる自己評価と教授者による評価を同じ条件で実施するため,学習者は自己評価の妥当性を教授 者評価から確認することができる。また,学習者が達成度評価を提出した際に,教授者が学習者 へのメッセージを記載する作業を効率化するため,文章をテンプレートとして登録し再利用する 機能も開発した。  また,LePo ではレッスンに学習目標を設定する必要があるのに加え,複数のレッスンから構 成するコースにも学習目標を設定する必要がある。特定の教材目標がどのコース目標に属するか

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はシステム上で設定され,学習者にも明示される。この学習目標の構造化と個々の目標に対する 達成度評価から,教授者は設定した学習目標の妥当性を確認し,教材や課題,そして授業設計に フィードバックすることができる。  LePo の有用性については,授業アンケート結果から確認した。このアンケート結果からは, 特に「各レッスンで,教員からの評価メッセージがある」,「各レッスンで提出課題がある」,「各 レッスンで学習目標を明記している」,「各レッスンで,学習を振り返るメッセージを記載する」が, 学習内容を理解する上で役に立った項目として挙げられ,学習目標の達成度管理システムとして の LePo の有用性に一定の評価が得られた。 参考文献 [1] 放送大学学園,「ICT 活用教育の推進に関する調査研究」,http://www.code.ouj.ac.jp/ wp- content / uploads/ICT-2011.pdf,2011 [2] Moodle, http://moodle.org/ [3] Blackboard, http://www.blackboard.jp/ [4] WebClass, http://www.webclass.jp/ [5] 吉崎弘一,“LMS の相互運用性−学習コンテンツと e ポートフォリオシステムに関して−”,コンピュー タ&エデュケーション Vol.33, 2012 [6] “LePo”,http://lepo.info/ [7] 吉崎弘一・堀田博史・森田健宏・松河秀哉・松山由美子・村上涼:協調アノテーション機能を持つ学習 支援システムの開発,日本 e-Learning 学会誌 Vol.11,p.79-864(2011) [8] 吉崎弘一“学習目標の達成度評価機能を持つ学習支援システムの開発”,日本教育工学会第 28 回全国大会, pp.647-648, 2012 [9] 堀田博史,吉崎弘一,松河秀哉,森田健宏,松山由美子,“保育でのメディア活用イメージを豊かにす るカリキュラムと協調アノテーション機能の開発”,ICT 情報教育方法研究 , 第 15 巻 , 第 1 号,pp31-36, 2012 [10] 福永良浩,平嶋宗,竹内章 , “e-Learning 教材における読解促進を目的とした下線引き活動に対する フィードバック機能の実現とその効果”,日本教育工学会論文誌,29(3),pp231-238 (2005) [11] 松本哲,堀出雅人,西之園晴夫,“VOD のアノテーションを共有するシステムを用いた協調自律学習 の効果”,教育システム情報学会誌,26(1),pp11-16 (2011)

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参照

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