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医療における患者個人の意思の確保と公衆衛生の望むもの

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Academic year: 2021

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Title

医療における患者個人の意思の確保と公衆衛生の望むもの(

内容の要旨(Summary) )

Author(s)

永井, 磨智

Report No.(Doctoral

Degree)

博士(再生医科学) 甲第873号

Issue Date

2012-02-15

Type

博士論文

Version

none

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12099/42917

※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。

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氏名(本籍) 学 位 の 種 類 学位授与番号 学位授与日付 学位授与要件 学位論文題目 審 査 委 員 永 井 磨 智(岐阜県) 博士(再生医科学) 甲第 873 号 平成 24 年 2 月 15 日 学位規則第4条第1項該当 医療における患者個人の意思の確保と公衆衛生の望むもの (主査)教授 藤 崎 和 彦 (副査)教授 永 田 知 里 教授 武 内 康 雄 論 文 内 容 の 要 旨 「患者」とは医療従事者との関係のなかで成り立つ概念である。医療の現場では, 常に様々な患 者が, 生命の尊重と個人の尊厳の保持を旨とし, 医療の担い手と医療を受ける者との信頼関係に基 づいた良質かつ適切な医療が提供されることを望んでいる。同時に, 現代社会は「よい」と考える 価値観が一様ではなく混在している多様性社会であり, 医療においても, 患者自身が「よかった」と 感じられる生き方を模索する時代となってきている。 しかし, 現行の医療関係法令の一部には, 戦後の社会思想をそのままに医療の方向性として社会 的な衛生レベルの向上を目指したパターナリスティックな医療政策を引き継いだものもある。国民 一人ひとりが健康を増進することで社会全体の健康水準は向上するが, 社会的健康レベルが向上し たからといって必ずしも患者個人の健康に関する満足度が高まる訳ではない。医療の現場では, 患 者の価値観の多様性に対応すべく努力が続けられているが, 意思を満たすための有効な解決策は見 いだせていないのが現状である。 本研究は, 公衆衛生の向上を目指す日本の医療政策の方向性を確認し, 医療に関する各制度の中 で, 患者の多様な価値観を尊重し, 患者の権利を守るためにどのような対応がなされるべきかを探 求することを目的として実施した。患者が医療に対する思いをどのような形で表現し, 医療現場は その実現にむけてどのように対処してゆけばよいのか考察を試みた。 【対象と方法】 公衆衛生の望むものとして, 法律に定められている制度を詳らかにし, 戦後の日本が目指した医 療の方向性と国が導こうとしている公衆衛生のあり方について, 文献を用い歴史をさかのぼって検 討を行った。また, 近年における人口構造, 疾病構造の変化等が政策にどのような改変をもたらし, 現在の政策には何が引き継がれているのかを, 統計資料をもとに確認した。 具体的には, 患者個人の意思を尊重しその権利を守るために, 現行の法律で各疾病に対する予防 と治療に関して設けられている制度について検討を行った。テーマとしては, 筆者が所属していた 岐阜県健康福祉部保健医療課で所管している感染症対策, 生活習慣病対策, 臓器移植対策, がん対 策の 4 つの医療政策を取り上げた。各種制度の中で, 集団の健康増進対策という公衆衛生上の目的 と並行して個々の患者が持つ多様な価値観を尊重し, 患者の意思を確保しようとする際に注意すべ き点を洗い出した。 [ ] [ 13 ]

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【結果と考察】 公衆衛生上の施策は, 集団の健康を確保するために疾患の予防に重点がおかれ, 確実に予防する ことで社会的健康への影響を最小限に食い止めるという思想のもとに対策が取られている。現実に 感染症のまん延防止のための介入には理解が得られているが, 生活習慣病やがんの予防対策は国が 強制的に実施するのではなく, 健康教育による個人の自主的な行為に委ねられている。治療技術や 新薬の研究が進んでも治療には不確実性が潜在する。近年, 患者の権利を守る法理である「インフ ォームド・コンセント」が医療の現場に普及したことにより, 患者は説明を受け十分理解したうえ で治療方針を自己選択できるようになった。一方で, 自ら選択するためには患者が主体的に健康問 題を考える必要性が出てきた。 そこで筆者は, 自らの健康に関する価値観を反映させるツールとして「私のカルテ」の作成を提 案する。「私のカルテ」には健康診断結果, 予防接種の記録や過去に罹患した病名, 食品や薬剤に対 するアレルギーの有無などの基礎情報, その他の検査結果や服用している薬の情報等をファイルす る。自分の健康情報を把握することは, 自己責任において健康管理する一つの方法である。患者の 医療に対する思いは揺れ動くことを想定し, 「私のカルテ」には治療の過程における健康への考え 方やその時々の思いを書き込み, 診断結果や主治医とのやりとりを記入することを勧める。治療に おいて尊重されるべき患者の意思は, 疾病の種類も病態も様々な状況下で考える必要があるが, 患 者の生き方に対する思いや気持ちの変化, 個人の価値観が正直に記されることにより, 結果として 事前指示書のような役割を持つという方向性を理想とする。 将来的には, 臓器提供だけでなくその他の医療提供の場面においても, 治療方針の決定において 患者や家族の意思が尊重されることを制度化することが望ましいと考える。医療政策の目的は国民 の健康寿命の延伸と生活の質の向上である。実際に選択する患者自身が医療には不確実性が伴うこ とを理解した上で自分の健康観を持って病気と向き合い, その価値観に沿った医療への思いを治療 方針として決定できることが, 本人や家族にとって満足度の高い「よい」医療につながる。 【結論】 患者は, 健康や失われた機能を取り戻したいと考えて医療機関を受診する。現行の医療法は, 医 療を受ける者の意向を十分に尊重し, その心身の状況に応じた良質かつ適切な治療及び予防措置, リハビリテーションが行われることを基本理念としている。多様性社会において患者の意向に沿っ た治療を進めるためには, 医療制度が, 生物学的な個体差だけでなく各個人の社会的背景による個 人差にも適切に対応できるよう変化してゆく必要がある。 医療従事者は, 医療の現場で公の制度を患者個人に治療という形で提供する役割を担う。患者や 家族と十分なコミュニケーションを図り, その過程を記録に残す開かれた医療を進めていくことは 患者の人権を尊重することにつながる。公衆衛生の施策を進める上で, 患者個人の健康に関する価 値観の多様性というジレンマがある。しかし, 理解した上で選択できるよう医療従事者が患者を導 き, 医療における患者個人の意思が確保できれば, 患者は治療の方針を決定するという形で医療に 参画でき, 医療従事者との間に今まで以上の信頼関係を築くことにより, ジレンマは克服できる。 論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨 申請者 永井麿智は,公衆衛生に係る法規や施策について検討を行い,全生涯を通じた記録を構 築することにより,個人の健康に関する多様な価値観と公とのジレンマの克服に有用であることを 示した。このことは,生命倫理学ならびに社会医学の進歩に,少なからず寄与するものと認める。 [主論文公表誌]なし

参照

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