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日本の伝統工芸を取り入れた図画工作指導 ~和紙を探る~

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日本の伝統工芸を取り入れた図画工作指導

∼和紙を探る∼

田島 陽子

・松島さくら子

**

那珂川町立馬頭東小学校

宇都宮大学教育学部

**

  Youko TAJIMA* Sakurako MATSUSHIMA**: E d u c a t i o n o f a r t s a n d c r a f t s , a d o p t i n g t r a d i t i o n a l J a p a n e s e c r a f t s  r e s e a r c h Japanese paper

 * Batouhigashi Elementary School

** Faculty of Education, Utsunomiya University (連絡先:[email protected] 著者2) 概要 私たちの生活は日本の伝統工芸と深く関わり,それらを日常に取り入れてきた。特に和紙は,障子や など和室に欠かせない。しかし,障子は現在はビニール製のものや機械でつくられた障子が出回っていた り,和室がなく, や障子さえ見たことのない児童もいる。また,暑い季節に使う団扇や扇子も和紙で作 られたものは少なくなってきている。現在,日本で手に入れられる和紙は,さまざまな種類があり,板締紙, レース(落水)紙,雲龍紙,無地楮紙,手もみ紙,典具帖紙など厚さや,風合いがさまざまである。これらの 和紙を図画工作の材料に取り入れることができれば,児童の材料の選択に幅が広がるのではないかと考えた。 和紙の可能性をさらに見つけ,教材として提案していきたい。本稿は,前半で和紙の歴史や日本の和紙の産地, 原料を探り,後半で和紙を取り入れた作品作りの実践を紹介し,成果と課題について述べたものである。  キーワード:和紙,神業,楮,トロロアオイ,黒皮,白皮,和紙の明かり,カレンダー 1.はじめに  2014年11月27日,本美濃紙,細川紙,石州半紙の 紙漉の技術が,「和食」に続きユネスコの無形文化 遺産に登録が決定された。日本の伝統工芸である「手 漉き和紙」の技術が,世界から注目され,認められ たのである。しかし,日本の子ども達は,そのこと をどう受け止めているのだろうか。  そこで,和紙を含めた日本の伝統工芸を,図画工 作指導の中で取り上げ,児童の生活や教育の現場に 取り入れていきたいと考えた。それによって,古く から受け継がれてきた日本の伝統工芸を,日本の心 として,児童は意識しながら生活することができる のではないだろうかと考える。  小学校学習指導要領解説「図画工作編」の中には, (ⅰ)改善の基本方針の中に,「創造することの楽し さを感じるとともに,思考・判断し,表現するなど の造形的な創造活動の基礎的な能力を育てること 生活の中の造形や美術の働き,美術文化に関心を もって,生涯にわたり主体的にかかわっていく態度 をはぐくむことなどを重視する」1)とある。  また,「美術文化の継承と創造への関心を高める ために,作品のなどのよさや美しさを主体的に味わ う活動や,我が国の美術や文化に関する指導を一層 充実する」2)ともある。  (1)目標の改善策の中にも,改善が図られ「感 性を働かせながら」3)を加えた。  これらから,児童が感性を働かせながらつくりだ す喜びを味わうための基盤が大切だと感じた。その 基盤となるものは,絵画や版画指導だけではなく, 立体的な工作活動,日本の伝統工芸など美術教育を 広い視野で捉えたい。  つまり,造形的な創造活動の基礎的な能力を育成 するためには,ふだんの図画工作指導に加えて,地 域に伝わる伝統工芸と連携した図画工作科の指導が できればよいのではないだろうかということであ る。そして,児童は,眠っている感性がさらに磨か れ,深いものとなり,造形への関心や意欲・態度が 広がり,児童が主体的に取り組める図画工作科の活 動ができるのではないかと仮定した。 宇都宮大学教育学部教育実践紀要 第1号 2015年8月1日

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2.和紙の歴史 (1)紙の文化を大切にしてきた日本の暮らし  日本では,古くから紙を生活の中の多くの場面で 取り入れ,日本で作られてきた「和紙」を大事に使 用し続けてきた。特に障子や などの日本の伝統建 築に特徴的に現れている。外国の建築では,部屋と 部屋を分け隔てるのは壁やドアであるが,日本では, 障子や が部屋と部屋の区切りとなっている。部屋 を広く使ったり,狭く仕切ったりしながら用途にあ わせて区切ることができる。夏の暑いときには,部 屋を広く使い,冬は,区切ることで暖かさを保ちな がら生活してきた。和紙の厚さは障子紙ならば1ミ リもなく,壁と比べてかなりの薄さであるが,和紙 の中にある楮などの植物繊維が,部屋からの温かい 空気を逃がさない働きをしてくれる。湿度調整もで き,和紙は日本の風土や気候に大変適しているとい える。  電気がまだない時代は,和紙を使用した提灯や行 灯を暗い夜道や部屋を照らす灯りとして使用してき た。和紙の耐久力は提灯が伸び縮みをしても破れに くく、行灯の周りに貼ってある和紙は,ろうそくの 炎を風から守り,光を拡散させ部屋全体に灯りをも たらす。しかも,和紙を通って届けられる光は,オ レンジ色で優しい光となり,人々の生活環境を大き く変えてきた。店などで使う台帳も和紙でできてお り,折ったり濡れても破れにくい。現在でも美しい 浮世絵や版画が昔と変わらずに美しい色彩で観るこ とができるのも,和紙に描いたり刷ったからであろ う。また,絵画や浮世絵,絵巻物も古く傷んだ場合, それらの作品を補修したのも和紙なのである。  日本の生活の中に和紙の使用例はまだまだある。 和傘,団扇や扇子,懐紙,千代紙,掛け軸,古くは 日本書紀や枕草子などの草子,紙で作られた着物(紙 衣:かみこ)など日本独自の和紙を生かした生活文 化が華咲いた。「和紙の絵本」の著者である冨樫氏 によると,1823年(文政6年)にオランダ人の医師 シーボルトは,日本のいたるところに和紙が使われ ていることに驚き,和紙の質の高さにさらに驚いた4) という。このように,日本の文化は和紙の文化といっ てもいいというくらいに,人々の生活の中で生きて いたのである。  紙の歴史は,日本の神社にも古くから繋がりが深 いとされている。神社で行われる祭祀に欠かせない 紙垂(しで)や御幣(ごへい)などは,現在も和紙 で作られている。  栃木県と 城県の県境に位置する鷲子山上神社も 和紙との関わりが深い。毎年11月の第三土曜日の夜 に行われる「夜祭り」に,宮司が社の中に納める「御 幣」という御札があり,烏山から納められた和紙を 毎年つかって神事を行うそうである。神主が御祓い をする時に使用する道具にも和紙が使われている。  鷲子山上神社の長倉氏にお話を伺ったところ, 「 紙 は 神 でもあり, 鷲 と 和紙 で言葉を かけている。昔から 和紙 と 神社 は繋がりが ある。」ということであった。なお,御幣に関しては, 神社により形や長さなどさまざまである。まさに 神 様 を象徴しているようである。 (2)紙の誕生と紙の歴史 ①紙に代わるもの パピルス:紀元前3000年(およそ5000年前)のエジ プトでは,ナイル川にたくさん生えていたパピルス という草から,その茎を紙のように平たく加工した ものに,絵や文字を書いていた。パピルスは英語の 「Paper」(ペーパー)の語源になった。 羊皮紙:紀元前1500年頃に地中海沿岸では,羊や山 羊の皮を使った羊皮紙が使われていた。パーチメン トともいう。500年ほど前まで高級な材料としてヨー ロッパ中で使われたという。 木簡・竹簡:日本では,木や竹の板を紐でつなぎ広 くし,字を沢山書けるように工夫していた。奈良時 代の遺跡から多くの木簡が見つかり,それらは伝達 文書や帳簿として使われていた。荷物を送るときの 荷札としても使われた。 バイラーン:アジアの国々では,ヤシの葉に文字を 書いた。これをバイラーンといった。5)  このように,世界中で多様な材料が使われてきた。 絵や文字を書き記し,その役目を果たしていた。こ れらが「紙」の誕生により世界各地でさまざまな紙 へと発展していくのである。 ②紙の発明 世界四大発明とは,①火薬,②羅針盤,③印刷技術, そして④紙のことをいう。6)これらの発明により世 界が大きく進化していくことになる。  冨樫氏によると,紙は今から1900年前に中国で発 明されたといわれている。後漢書によると,元寇元 年(105年)に蔡倫という役人が,樹の皮や麻,布,

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漁網で紙を作り,帝に喜ばれたという。このときに 作られた紙を「蔡候紙」といい,紙のはじまりとさ れている。  しかし中国では,それよりもっと古い時代の紀元 前120年頃に「はきょう紙」と呼ばれるものや,紀 元前140年頃「放馬 紙」がそれぞれ見つかっている。 よって,紙は,およそ2100年以上前の中国で誕生し, 紙としてつくり方をまとめた人は,蔡倫であるとい える。ここから,世界各地に「紙漉」の技術がひろ まり,757年には,サマルカンドに本格的な製紙工 場が建てられ,サマルカンド紙ができ,ヨーロッパ にも紙漉の技術が広まった7)といわれている。 ③和紙の誕生と紙漉技術の発展  日本へはいつごろ紙漉の技術が伝わったかについ て何冊か本を調べた結果,「曇徴」という一人の僧 が紙漉きの技術を伝えたという説がある。  もともと105年に中国で生まれた「紙」は,朝鮮 半島から日本へ伝わったとされる。610年に高句麗 からきた僧,曇徴が「よい紙」の作り方を知ってい たと「日本書記」に書かれており,これが日本の紙 「和紙の誕生」と「手漉きの技術」に深く関わって いる。そこから,奈良時代の終わりから平安時代の はじめにかけて,日本の紙漉きの技術は大きく発展 した。「ねり」を加えての「流し漉き」の技術が生 まれ8)世界一の品質,日本独自の紙「和紙」が誕生 となる。この技術により,教典を写す紙を生産でき, また様々な模様が入った紙もでき種類が増えたこと で,貴族の文化も栄え,多様な日記や文学を書くこ とができるようになった。和紙が誕生して世の中に 出回るようになったからこそ,昔の出来事や記録が 「和紙」に残り,その「和紙」の記録から歴史をた どることができるのである。正倉院に伝世の日本最 古の紙は,702年美濃国,筑前国,豊前国の戸籍用 紙である。ここから全国に「和紙」と「和紙の紙漉 技術」が伝わったと推測する。  しかし「和紙」とよばれるようになったのは,『「紙 への道」和紙と和紙紀行』著者の中嶋氏によると明 治のはじめに欧米からきた洋紙(西洋紙)に対応し て言われるようになった9)とされている。  自分なりに解釈すると和紙は,和=日本で生まれ た独特の紙漉の技術,紙=神業で生まれた紙なので はないか。なぜなら,先に述べた神社などの神事と 深く関わっていることや,これから紹介する紙漉職 人の技がまさに神業とも言われるべくすばらしい技 術であるからである。その技術は世界でも認められ, 日本の3か所の紙漉の技術が世界遺産に登録され た。現在,中嶋氏によると,機械抄きの洋紙に対して, 和紙は0.3%しか出回っていない10)ということであ る。 ④紙の  和紙がいつ誕生したのかは,実際のところ正確に はわかっていない。ただ,現存している和紙の記録 から1300年前といわれている。『越前和紙』の著者 斎藤氏は,「紙を発明したのは,105年の祭倫といわ れているが,それよりもっと古い中国の古城や古墳 から紙が出土していた。11)」という。さらに,「日 本では,邪馬台国の卑弥呼の時代に魏の皇帝との間 でたびたび詔書のやりとりがあった。詔書は紙だっ たはず。12)」と述べている。また,「光武帝が渡し たとされる金印が,天明4年(1784),博多湾の志 賀島で金印が発見されたということは,捺印する紙 があったのでは13)」とも述べている。それほど,紙 に関しては が多い。しかし,手先の器用な日本人 は,木簡や竹簡の使用以降,すでに,曇徴が紙を伝 えた610年までには,身近な植物で紙らしきものを 地方の山々でひっそりと作っていたのではないだろ うかと推測する。 木簡:複製 日本書紀

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(3)日本の和紙の産地  日本の和紙は41都道府県にわたる14)。その中で筆 者が訪ねた4か所ついては次の通りである。 3.和紙の種類と特徴  和紙には,手で漉いた手漉き和紙と機械で漉いた ものがある。手で漉いた和紙は,周りが漉き簀から 外すときの自然な薄さになるため,一見してわかる。 機械漉きは,周りがほぼ直線に近くきれいである。ロー ル紙といわれているものは,ほぼ機械漉きである。  値段は,同じ大きさであれば,手漉き和紙は機械 漉きに比べて10倍以上は高くなる。さらに伝統工芸 士である和紙職人が,100%楮で手で漉いたとなれ ば,機械漉きの100倍の値段になるであろう。職人 の技術の高さや手間や時間のかかることを考えれば 当然のことである。  価格や流通の点から図画工作科で使用可能な和紙 の一部を以下紹介したい。 ○板締紙:濃淡の色が入ったぼかしが特徴 ○レース紙(落水紙):全体に穴があいている ○雲龍紙:楮や麻の荒い繊維がまばらに入っている ○無地楮紙:楮繊維で作られ厚手でしっかりした紙 ○手もみ紙:無地楮紙や板締紙などを手で揉んで柔 らかくした紙 ○典具帖紙:和紙の中で最も薄く透明感があり、丸 める,束ねる,重ねるど用途が多い。 4.和紙の原料 (1)楮  現在,日本の和紙は,楮,三椏,雁皮が代表的で ある。地域により,麻や竹などを使うこともあるが, 日本ではこの三種が主流である。それぞれに良さが あり,寒い地方では育ちにくいものがある。それぞ れの土地や風土にあったものが,それぞれの土地で 紙の原料として使われている。  楮の 皮繊維(和紙の原料)は黒皮,甘皮,白皮 に分けられる。黒皮は漂白し使用されることが多い。 甘皮は少し緑色をしている。石州半紙はこの甘皮も 残した白皮(地元産)で紙を漉く。白皮は楮の皮の 最も内側の部分である。本美濃紙や細川紙,程村紙 はこの白皮( 城県大子町周辺の那須楮の白皮)を 使用した最高級和紙である。 (2)トロロアオイ  和紙を漉く時に欠かせないのが,トロロアオイで ある。日本特用林産振興会の調査によると,ネリに トロロアオイを利用する漉き手は,59.3%,科学ネ リは12.8%,ノリウツギは,8.1%となっている15) いかに,トロロアオイの需要が多いかがわかる。埼 玉県の細川紙の産地である小川町は,トロロアオイ の生産に力を入れて取り組み,生産の安定を図って いる。  和紙を漉く時は,このトロロアオイの根から取り 出す「ネリ」が和紙を上手に漉くポイントとなる。 楮や三椏,雁皮などの繊維を接着するためのもので はなく,水中での紙の繊維を分散させておくために 大切な役目となる。繊維が分散すると,長時間繊維 が漉き舟の中で浮遊した状態となるため、和紙を漉 くと簀の中に均一して繊維が漉かれる。水にもぬめ りがでるので,繊維同士が絡み合い丈夫で美しい和 紙が漉けるのである。 (3)寒晒し   城県の大子町の周辺では,昔から冬場は乾燥し た冷たい風が吹くという。雪はあまり降らないかわ りに気温が低い。冷たく乾燥した風に晒されること により楮に透明感が加わりさらによい品質となる。 この楮で紙を漉くと,出来上がった紙を陽に透かし た時によい風合いを与えるという。 ( 城県大子町 相馬商店 相馬氏より) 5.和紙と西洋紙の違い  ①和紙と比べて西洋紙(=洋紙)は,歴史が浅く, 約200年前に外国(フランス)で発明された。和紙 は紙を「漉く」と書くが,洋紙の場合紙を「抄く」 と書く。②原材料も,和紙が,楮・三椏・雁皮など の植物の皮の部分( 皮繊維)を使用するのに対し, 洋紙は,木材の内側の木の部分(パルプ)を原料と している。③和紙は,楮や三椏,雁皮の 皮繊維を 細かく叩いて「ネリ」といわれるトロロアオイと混 ぜ合わせた流し漉きであるのに対して,洋紙は,溜

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め抄きである。それは,紙の強度に大きく影響して いる。流し漉きの和紙は,簀の中で揺り動かされ繊 維同士が絡み合う。そのため,折りや曲げに強い性 質を保持する。④和紙は少量生産なのに対し,洋紙 は大量生産が可能である。和紙も手漉きと機械漉き がありますが,洋紙は,機械により大量の紙を抄き, 生産量が非常に高い。また,印刷しやすく滑らかに 加工されている。現在,和紙と洋紙はそれぞれの特 徴が活かされ共存している。 6.和紙を取り入れた図画工作指導 <平面から>  カレンダーやカードは,平面的な表現となる。初 めて和紙を扱う際は,平面的な表現の方が,子ども 達は取り組みやすいと思われる。  例えば,和紙の「はがき」や和紙の「メッセージ カード」など小さなものからスタートさせたい。実 際に「手漉き和紙」体験をし,それから自分で漉い た和紙を使って作品製作にあたるとさらに興味・関 心をもって図画工作の授業に取り組めるのではない かと考える。 和紙のカレンダー提案「季節のカレンダー」 <材料> 段ボール(台紙),色つき和紙,手もみ和紙, 板締紙,雲龍紙,レース紙(落水紙),典具帖紙, でんぷんのり,貝,手芸用目玉 <用具> 筆,刷毛,水,ハサミ,クラフトパンチ,霧吹き <手法> 重ねる 異なる種類の和紙を重ねることで重厚感が でる。 丸める 水をつけて丸めることができる。コスモス の花に使用 撚る 水をつけて撚ると細長くなり細やかな表現が できる。 水切り 筆に水をつけて和紙を切る方法。和紙の繊 維が飛び出し柔らかな表現ができる。 細かい部分はハサミで切る 日にちや数字などの細 かい部分はハサミで切る。 これらの表現方法を組み合わせていくと和紙のさま ざまな表現が可能。 1月のカレンダー 7月のカレンダー 11月のカレンダー

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<立体に>  和紙は,針金や木などと組み合わせると立体的に 表現できる。  任意の野菜や果物の形に針金で形をつくり,そこ に色の付いた和紙を貼っていくと,野菜や果物の形 を作ることができる。  ビーチボールや風船など球形のものに,ちぎった 和紙を貼り付けていくと,球型のものにも変身させ ることができる。  工事や学校の体育で使う「三角コーン」に,楮の 繊維を巻き付けていくと,円錐形の傘になる。  さらに,それらの立体的な和紙に電球を組み合わ せれば,子ども達の発想でどんな明かりにも変身す ることができるのである。 和紙の明かり提案「花の明かり」 <材料> 無地の手漉き和紙,典具帖紙,でんぷんのり <用具> 筆,水,小皿,ビーチボール,おしぼり, 和紙の明かりの応用作品(下) 7.和紙の可能性(成果と課題) 成果Ⅰ:和紙を探って (1)和紙を知ることは日本の伝統工芸を知る第一 歩 和紙を知ることにより,自分たちの身近なとこ ろに日本の伝統工芸を守る人々や,職人の方々がい ることを知ることができる。図画工作の時間だけで はなく,社会科や道徳,総合などと関連させて指導 することで,児童の心に響く繋がりのある教育がで きるのではないか。 (2)和紙は日本の農家の方々や伝統工芸士の方々 の丁寧な仕事の賜物  和紙ができるまでは,多くの楮農家の方々や和紙 漉き職人,和紙の販売の方々などが関係しており, 一人一人の丁寧な仕事の賜物である。人と人との繋 がりがあって和紙が出来上がることがわかった。 (3)和紙の産地の共通点 (岐阜県美濃市,埼玉県小川町,栃木県那須烏山市, 島根県浜田市三隅町)  緑の山々,清らかな川と豊かな地下水,優れた技 術をもつ紙漉き職人,この3つが えば和紙づくり が可能である。昔からこの3つの条件が った各地 で和紙が生まれてきた。 1.材料と用具 3.典具帖紙を貼り重ね 花弁の表表現 5.針金で口を整える 2.ビーチボールに 和紙を貼る 4.空気を抜いて ボールを取り出す 6.電球を入れて完成 ビーチボールに和紙を貼った明かり(葉入り) 三角コーンを使用した蜘蛛の巣の明かりとクリスマスツリー

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(4)地方に根ざした紙漉の伝統 ①和紙の原料は,楮,三椏,雁皮が主であるが, その地方により土地にあった原料で紙漉が行われ ている。例をあげると,楮は黒皮,甘皮,白皮に 分かれるが,白皮のみを使う和紙(本美濃紙・細 川紙・程村紙など)と,甘皮を残した白皮を使う 石州半(和)紙がある。ネリに関してもトロロア オイが主であるが,化学薬品やノリウツギを使う 地方もある。 ②叩解については,その地方独特の手法があり, 昔から受け継がれてきている道具を使って行われ ていた。本美濃紙では,叩解の際に伝統的な木 を使い,白皮を叩くと菊の花のような模様になる。 石州和紙では「六通六返し」という方法がある。 ビーターなど機械を導入する場合もある。 ③紙漉の場合,基本の三段階があるが,二番目の 紙の厚さを調整する段階(調子)の簀の動かし方 が,地方により異なった。美濃和紙は縦揺りに横 揺りを加えるが,石州和紙は縦揺りのみであった。 (5)日本の豊かで美しい自然と伝統文化  筆者が一番伝えたいことは,「和紙がなかったら 日本についての歴史や昔の出来事は伝わらなかった ことになる」ということである。  国宝である「日本書紀」や「鳥獣人物戯画」など の書物や巻物は,すべて和紙に書(描)かれ,それ らが現代に伝わってきた。和紙が腐らずに残ってい たのはなぜだろうか。保存状態がよかったこともあ げられるが,それだけではない。以下の3つが重要 なことではなかったか。 ①日本の手漉きの技術が,次々と伝えられ,地 方に広まり,その土地の人々が工夫をしながら 和紙を漉き,開発し続けたこと。 ②和紙作りには欠かせないきれいな水が豊富に あったということ。 ③和紙の原料であった楮などの材料に,不純物 がなかったこと。  冨樫朗氏によると,洋紙原料の木材には,紙を変 色し弱くさせるリグニンが,薬品処理しても残って しまう16)という。しかし和紙は,楮を加工する過 程で不純物(リグニン)がお湯にとけ出してしまう ため,残らないといわれている。そのため,完成し た和紙は,はじめは,やや茶色だが時間が経てば経 つほど白くなる。また,繊維同士が絡まり丈夫で, 強い紙になる。それに対して,洋紙は,時間が経て ば経つほど,茶色くなってしまう。  日本の自然が,和紙づくりや保存のよさをバック アップしていたのではないか。そんな強くて美し い日本の和紙を使い続けることは,日本の伝統を守 ることにもなるのではないだろうかと考えさせられ る。島根県石見地方の「石見神楽」や,那須烏山市 の「山あげ祭り」にも和紙を使うなど和紙と伝統文 化は深く関わっていた。人々の生活に,和紙が身近 にあり続けることで,日本の文化がさまざまな形と なって未来へ繋がっていくのではないだろうか。 成果Ⅱ:作品作りから (1)和紙の効果的な活用方法と万能な典具帖紙 ①重ねる  和紙と和紙同士を重ねたり,和紙とレース紙を重 ねたり,和紙に典具帖紙を重ねたりする方法がある。 なかでも典具帖紙は様々な用途に活用しやすい。ま た,典具帖紙は明かり造りでも薄い素材のため,花 びらや飾りなどに多く使用した。目に届く光を優し い光にしてくれる。典具帖紙は土佐(高知県いの町) で作られている。和紙の中で最も薄くしなやかで美 しい。この和紙にも機械漉きと手漉きとある。手漉 きの場合,薄く漉くために簀を細かく何度もゆする。 簀の中で水が円を描くように回すのである。こんな に薄く透けるように紙を漉く技術は,まさに神業と いえる。これを,他の和紙とともに有効に使い,図 画工作指導に取り入れると,作品づくりに幅が出る。 ②丸める・撚る・水切りの技法  和紙は,水をつけると柔らかくなり,丸めたり, 撚ったりすることができる。水切りすると,繊維が 出てきて和紙の柔らかさが表現できる。ただし,カ レンダーやカード制作において数字などの細やかな 紙漉の様子(島根県石州和紙 西田氏)

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部分は,ハサミを使用したほうがよい。作りながら, 和紙のよさを引き出せるように,ハサミとの使い分 けを指導することがポイントである。  また,今回は行わなかったが,和紙だけではなく, モールやビーズ,手芸用品などとも組み合わせると さらに多彩な表現活動が展開できる。 (2)立体的な和紙の表現  和紙は,針金や木などと組み合わせれば,立体的 な表現もできる。楮の繊維を三角コーンやビーチ ボールなどに貼り付ければ円錐形や球にもなる。  電球を組み合わせれば子ども達の発想でどんな明 かりにも変身させることができる。 (3)和紙の接着  木工用ボンドは,楮の明かりで使用したが,ほと んど場合,のりと水を混ぜ合わせた「のり水」が和 紙やその他の素材とをつなげるのに有効であった。  貝などの自然の素材をホットボンドでも貼ること は可能だが,透明の液体が乾いたときに目立ち美し さにやや欠ける。和紙と相性のよいのは,昔から日 本で使われてきたでんぷんのりが有効であった。  また,和紙は漆とも相性がよい。どちらとも植物 から由来する素材(成分)であり密着がよい。 (4)無地の手漉き和紙  明かりづくりで使用する和紙は,無地か薄い色ま たは,暖色系のものの方が,電気の光をやわらかく 透すことがわかった。 (5)和紙とのふれあい  図画工作科でも和紙を取り入れ,積極的に使うこ とで,子ども達が和紙に触れる機会が増え,既存の 材料に加え材料選択の幅が広がることは前にも述べ た。表現だけではなく、完成した明かり作品の鑑賞 の時間も生活の中の造形やその効果について知り、 自分のイメージ育む活動につながるのではないだろ うか。友達と作った明かりをどのように配置するか を児童同士が話し合い決めていく。そしてこれらの 過程で,子ども達は,友達と交流もあり,自分で作っ た美しい明かりに感動する。この一連の活動は,子 ども達の豊かな情操を養うことができる有効な活動 ではないかと考える。よって,和紙の明かりは子ど も達の心に優しい明かりを灯すのではないかと思う。  以上のことから,和紙は,図画工作の材料として 有効であり材料選択の幅を大きく広げることがで き,図画工作科の授業でさまざまに展開可能な素材 である。 課題 (1)和紙の価格と材料の管理  和紙には,手漉き和紙と機械漉きの和紙があるが, 一般の色紙や色画用紙に比べると高価である。一度 に購入することは,学校の予算上難しい場合もある。 前年に図画工作科としての予算を計上したり,学校 と相談するなど,和紙の購入を計画的に行えるよう にするとよいのではないか。  また,和紙は,はし切れも大切に使いたい。細か な和紙や未使用の和紙を箱などに入れ,いつでも使 用ができるようにしたい。材料の管理をきちんとす ることや,和紙を大切に使おうとする意識を児童に 育てていけるとよいのではないか。 (2)小・中の連携した指導  小学校の図画工作科の中で,日本の伝統工芸を取 り入れた授業時間は限られている。今後,他教科と の連携や,小学校から中学校に繋がる授業の展開や 工夫がさらに必要であると思われる。今後の課題と して,自己研究していきたい。 注 1)2)文部科学省『小学校学習指導要領解説 図 画工作編』日本文教出版 2002 P3 3)〃 P5 4)16)冨樫朗『つくってあそぼう和紙の絵本』農 文協2008 P2,P33 5)6)7)8)〃 P4,P5,P6, 9)10)http://homepage2.nifty.com/t-nakajima/ 白菜・美濃和紙の明かり

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washi.htm(最終アクセス確認2015/03/31) 11)12)13)斎藤岩雄『日本の手業 越前和紙』 源流 2005 P99 14)http://www.tesukiwashi.jp/sanchi_map.jpg (最終アクセス確認2015/03/31) 15)http://nittokusin.jp/wp/?page_id-=320 (最終アクセス確認2015/03/31) 参考文献 ・朝倉直巳著『Paper紙』美術出版2001.8 ・犬丸直・吉田光邦編 『日本の伝統工芸品産業全集・ 第7巻和紙・人形他』1992.1 ・烏山和紙「程村紙」調査委員会編『「程村紙」調 査報告書』2014.2 ・高橋矩彦編『和紙で作るあかりの空間』シナノ書 籍2011.8.1 ・橋田裕司『あかりのレシピ』マール社2001.3 ・ 〃 『あかりのレシピ2』マール社2002.9 ・太陽編集部,コロナブックス編『和紙のある暮らし』 平凡社2000.7 ・エキグチクニオ著『手作りのランプシェード』誠 文堂新光社2010.11 ・渡辺風沙絵著『すてきな和紙ちぎり絵入門』〃 2008.7 (2015年 3月31日 受理)

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参照

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