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フォーカシングとTAEを使って書き記すことによる社会の改良

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Academic year: 2021

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(1)Title. フォーカシングとTAEを使って書き記すことによる社会の改良. Author(s). 上村, 英生. Citation. 学校臨床心理学研究 : 北海道教育大学大学院教育学研究科学校臨床心理 学専攻研究紀要, 第15号: 41-55. Issue Date. 2018-03-14. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/9817. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) フォーカシングとTAEを使って書き記すことによる社会の改良 上 村 英 生*. Writing through Focusing and TAE Makes Society Better. 要 約 本研究は,フォーカシングを使って書き記すことによって,社会の改良をもたらす可能性を明らかに することを目的とする. フォーカシングは個人の成長やいやしのための方法ととらえられがちだが,創始者のユージン・ジェ ンドリンが強調した通り,社会の改良につながるものである.なぜ,そうなのかを彼の哲学,心理学の 理論から探る. 学校の授業や個人の執筆で, からだを使って作文する教示方法を開発したソンドラ・パー ルの研究にも言及する. ジェンドリンが,書きながらその人なりの普遍的理論をつくる方法として発表したのがTAEである. 本論文では,このTAEを上村自身の新聞記者体験から浮かぶ暗黙知の言語化に用いた.そこから浮 かんだリサーチクエスチョンを基に,フォーカシングと書くことの両方に精通し,社会に好影響を与え ている3人にインタビューした.データをTAEで分析した結果,4つの仮説的命題を見出した. 第1に,書く前に,人との相互作用がある.第2に,直接照合体(フェルトセンス)が形成されると, 納得いく文章を書けて,人とつながれる.第3に,1人称で例を挙げて書くと,読者が追体験して理解 しやすい.第4に,直接照合体の形成からもたらされた実例を書くと,社会を改良する可能性がある. 書く作業は,多くの人に読まれることで,社会をより良く変える可能性に富む.. 1.はじめに. した. 同年,ニューヨークで記者としてジェンドリン. 筆者は,38年間,新聞記者をしてきた.フォー. にインタビューした.彼は,フォーカシングとは. カシングとの出合いも,ユージン・ジェンドリン. 「感じてはいても,まだ知らない何か…….それ. の『フォーカシング』を読んだ時から33年になる. が何なのか自分自身に語れないものと一緒に時間 筆者が30歳代の頃はフォーカシングの個人を変. を過ごすことだ」と語った(2005年11月7日・米. える側面に,40代半ばからは社会を変える側面に. 国ニューヨーク).. も関心を持つようになった.2001年には,札幌で. この年は日本にとって戦後60年の節目だった.. フォーカシングを学ぶ市民グループを結成し,月. 戦争体験者に取材し,新聞に連載した際にも,実. 例会やワークショップを通じて普及に努めてきた. 感を大切にするフォーカシング的な聴き方,書き 勉強を兼ねてアン・ワイザーの『フォーカシン. 方を心がけた.. グ・ニューマニュアル』を翻訳し,2005年に出版. 筆者は,生前の父に悩みを相談すると,具体的. *. Hideki KAMIMURA:公益財団法人北海道新聞社会福祉振興基金理事・事務局長,北海道教育大学大学院学 校臨床心理専攻修了生. キーワード:フォーカシング,TAE,社会改良,書き記す,相互作用,直接照合体. 41.

(3) 学校臨床心理学研究 第15号(2017年度). な答えの代わりによく「自分のからだに聴いてみ. あたる建物に行った.父はある男と部屋に. ろ」と言われた.これも,からだの感じに焦点を. 入った.15分ほど待った.父が出てきたとき,. 当てるフォーカシングにひかれた基盤にある.. 青ざめた顔で『行こう』と言った.外に出て. ジ ェ ン ド リ ン が 残 し た「 エ ッ ジ で 考 え る 」. から父は『あの男は信用できない』と説明し. (TAE:Thinking At the Edge)は近年,質的. た.自分のフィーリングが自分にノーという. 研究に使われ始めている(諸富,末武,得丸,村. のだと言った.私はすでに何度も父が『私は. 里,2016) .研究方法に光明が射した.. 自分のフィーリングに従う』というのを聞い. 記者は,現代史を書き記す仕事といわれる.書. ていた.けれど,この時はまだ父がフィーリ. く時には過去を思い起こし,未来を感じつつ,今. ングを信じるというのを私は理解できなかっ. の状況に向き合っている.フォーカシングになじ. た.私たちの希望がこの『住所』にかかって. んだ記者が「意味のありそうな感覚」に注意を向. いたにもかかわらず,父がそう『感じた』と. け,話し手との共同作業から編み出された言葉を. いう理由だけで,この希望は打ち砕かれてし. 書くことは,社会を前進させる一歩になるのでは. まったのだ.. ないか.フォーカシングと,書き記すこと,社会. 私はその時大変驚いたので,後になって,. の改良の三つをつなげる理論を探求したい.. 自らに語り掛けてくるフィーリングというも. 本論文では,ジェンドリンの理論と先行研究を. のが一体どのようなものなのか,何度も自問. 概観したあと,筆者の記者体験と,フォーカシン. した.自分の内側にそのようなフィーリング. グと執筆活動の両方に習熟したインタビュー相手. を見つけようとしたが,見つけられなかった.. の体験を,TAEを使って分析し,書くという一. けれど私が,そのフィーリングについて探求. 連のプロセスからどのように社会の改良がもたら. し始めたことが,結果的に実を結ぶことに. されるかを理論化した.. なった.40年後,フォーカシングをどのよう に発見したのかと尋ねられたとき,私はこの. 2.ジェンドリンの理論と,それによる社会 の改良の先行研究. 少年の日を思い出したのである.」 次にジェンドリンの父親が会った仲介者はOK と感じられた.その人に教えられた方法で,一家. 2.1.ユージン・ジェンドリンの人物像. はドイツを脱出し,ベルギーを経由して,米国に. 最初にユージン・ジェンドリンの人物像を紹介. 移住した.. する.Korbei(1994)によれば,ジェンドリンは. ジェンドリンは,シカゴ大で哲学の研究に取り. 1926年12月25日,オーストリアのウィーンで生ま. 組んだ.ディルタイの研究で1950年に修士号,論. れた.両親はユダヤ人で,ナチスドイツの侵攻に. 文「象徴作用における体験過程の機能」 (1958). 伴い,1938年に一家でウィーンを脱出した.この. で博士号を取得した.. 時の様子をジェンドリンが66歳の時に語った(日. カール・ロジャーズのグループに入り,臨床家. 本フォーカシング協会ニュースレター2012年冬号. としての優れたセンスを認められた.1958~62年. と春号に邦訳) .. にロジャーズが主宰したウィスコンシンプロジェ. ジェンドリンの父は母と一人っ子のジーン. クト(統合失調症患者に対する心理療法の臨床研. (ユージンの愛称)を祖父母の家に避難させた.. 究)の主任研究員を務めた.心理療法の成功した. 3日後に合流したが,父の店はすでに収奪され,. ケースに共通した特徴として,クライエントが「自. 父が築き上げたすべては失われていた.国外移住. 分自身の体験そのものに触れていること」を見出. 許可証の入手が難しくなり,一家は,自由な国ベ. し,それを哲学的研究によって基礎づけたのが,. ルギーの「住所」を売る人がいるというドイツの. 体験過程理論である.. ケルンに向かう.. 1963年にシカゴ大准教授となり,1978年に心理. 以下は,邦訳通り.. 学の主著『フォーカシング』が米国で出版された. なお,1981年に別の出版社からペーパーバック版. 「ケルンで父は私を連れて『その住所』に 42.

(4) フォーカシングとTAEを使って書き記すことによる社会の改良. が出版され,日本語で出版されたのは後者を訳し. 水のようなもの.人のプロセスが加わっている.. た「フォーカシング」である.これまでに販売部. 実践的で,社会的改革の意味がある」と違いを説. 数は50万部以上を数え,18カ国語に翻訳されてい. 明した(上村,2004).. る.. 得丸(2008)は,TAEを使った文章表現のワー. 2017年5月1日にジェンドリンは米国ニュー. クブックを出版し,イラストを多用して,易しく. ヨークで亡くなった.90歳だった.. 取り組めるようにした.得丸(2010)は,TAE を質的研究に応用する理論と方法を丹念に明らか. 2.2.先行研究. にした.末武,諸富,得丸,村里(2016)は,実. フォーカシングと書くことに関した先行研究を. 際にTAEを用いて研究をした報告を多数盛り込. 概観する.. んだ質的研究入門書である.. 西本(2001)は,日本の生活綴方教育運動以来, 受け継がれてきた実践の中の「イラダチやムカツ. 2.3.体験過程と意味の創造. キなど整理がつかない気分や感情」をそのまま書. ジェンドリンの哲学を『体験過程と意味の創造』. くことを重視する流れとフォーカシングの類似性. (1962,筒井邦訳1993)から説き起こす.ジェン. に言及した.. ドリンはこの本で「体験過程」(experiencing). 小林(2002)も,書く行為を通して対人援助す. という造語を次のように定義する. 「経験は我々. るロールレタリングとフォーカシングを同時に評. がどの瞬間にでも持っている感情の流れであり,. 価した.. やや形の整わない流れであると考えられなければ. パールは1970年代の終わりから,ジェンドリン. ならない.私は,それを『体験過程』と呼ぶこと. や研究仲間,学生の協力を得て,フォーカシング. にして,あなたが望むときにはいつでも内的に触. を作文のガイドライン(教示集)にするステップ. れていくことができる具体的な感情の流れを指す. を創作し, 「フェルトセンス(Felt Sense-感じ. 用語として使う」.. られた意味,意味ある感じ) 体を使って書くこ. 意味は,体験過程と,シンボルとして働くある. と」(Perl, 2004,筆者が全訳)という本にまとめ. ものとの相互作用によって形成されるとジェンド. た.付録のCDには,40分授業,60分授業,個人. リンはいう.体験過程が動いていくさまは,「体. 使用に対応した3種類のガイドラインが収められ. 験・表現・理解が循環している」というディルタ. ている.ガイドラインは,話題を選択し,発展さ. イの解釈学的循環を基盤としている.. せ,フェルトセンスの形成を待って,その示唆す. 哲学者の三村(2015)は,ジェンドリン哲学の. るものがわかるところ,最終的には草稿や視点を. 特長は再帰性にあるとする.再帰性とは自分で. 見つけるところへ導いてくれる.ポストモダン,. 語ったことが自分に降りかかってくるということ. ポスト構造主義者に反して,パールは,私たちは. である.. 言葉や文化によってつくられるだけでなく,新し. ジェンドリンはディルタイから理解が持つ創造. い言葉や文化の創造者であると提起する.. 性という観点を獲得した.フッサールから,具体. エルボーはこの本の序文で,しばしば書く作業. 的,日常的な体験の記述が哲学であることを引き. は書いたものが受け入れられるかどうかを判断す. ついだ.ハイデガーからは,一般的に考えられて. る権威のある人のためになされ,外部的基準を無. いる認知とは異なる自己了解と世界了解があるこ. 視できないからこそ,書くときには,フェルトセ. と,それらは気分,雰囲気など前言語的であるこ. ンスに,より根をつめてつきあおうと,強調した. とを学んだ.メルロ=ポンティからは心は内部, ジェンドリンの協力者のカイ・ネルソンが2004. 身体は外部という二元論的な考えの否定を継承し. 年にTAEを紹介するために来日し, 「フォーカシ. た.. ングはグランドキャニオンを流れる水のようなも. ジェンドリンが現象学に新たに付け加えたもの. の.自然の川を流れのままに降りていく.プライ. は,体験の直観と記述の関係に対して,ダイナミッ. ベートで非公式.TAEは,偉大ですばらしい噴. クな「推進」(carrying forward)という観点で 43.

(5) 学校臨床心理学研究 第15号(2017年度). ある.体験をありのままに記述するフッサールの. れている自分の感じていることであるというのが,. 現象学的記述は,その記述を超えていく変化をも. ジェンドリンの理論である.人が状況を生きるあ. たらし,前進として自覚するべきだとジェンドリ. りさまが「実存(existence)」であり,ジェンド. ンは言う.. リンはこれを「フェルトセンス」や「からだの感. ジェンドリンの言う「からだ」は,雰囲気や状. 覚」という.「感じ」は生の感覚である.. 況を理解する.肌で感じる,空気を全身で感じて, ジェンドリンによると,フェルトセンスは前概 「あ,これは…だな」と理解するなど言語や概念. 念的で,言葉に象徴化する.ある実態を表象する. を介さないものを言う.. ことではない.言葉にした時に今人生で起きてい. 三村(2015)によると,ジェンドリンの最も優. ることが理解できる.言葉にすると前概念的なも. れた考察態度は,実体論的思考をしないで,機能. のが変わる.セラピーで話し手がたとえば「~を. 的なとらえ方をすることにある.サッカー選手が. したい自分がいた,と今,わかった」というとき,. ポジションに縛られず,状況によって役割が変わ. ジェンドリンは,“carrying forward was”(推進. るのと似ている.体験(experience)は体験の特. された過去)という.推進されたあとにそれがあっ. 定 の 内 容 を い う. こ れ に 対 し, 体 験 過 程. たとわかる.. (experiencing)は,体験の働き,作用を指す.. 池見の2016年5月28日,東京国際フォーラムで. 体験過程は本来的に,注意を向けるというシンボ. の理論セミナーの講義録によると,聴き手は,話. ル化と相互作用している.. し 手 の 体 験 を「 追 体 験 」 (ドイツ語で Nacherleben)しながら聴いている.クライエン. 2.4.フォーカシング. トの体験が推進していくように,まず,リフレク. 次に, フォーカシング (focusing -焦点合わせ). ションをする.ただ反射をするだけでは足りず,. とは何かを論じる.ジェンドリン(1981,村瀬ら. ときに誠実に感じていること,聴き手の追体験を. 邦訳1982)は,フォーカシングをからだの内部で. 話し手に伝えることで,聴き手自身と話し手が「交. のある特別な気づきに触れてゆく過程である,と. 差」 (crossing)する.言葉と状況のあいだの精. 定義する.この気づきをフェルトセンスと呼ぶ.. 密で創造的なかかわりのことをジェンドリンは,. 特定の問題や状況についてのからだのセンス(感. 「交差」と呼ぶ.聴き手が感じられていることを. 覚)である.. 言葉にすることで,話し手が感じを探索するのに. コーネル(2013)は, 「フォーカシングとは,. 役立ち,うまくいけば,交差し,意味が成立する.. 人がオープンな許容的な態度でフェルトセンスに 注意を向けるプロセスである」という定義が本質. 2.5.プロセスモデル. 的な理解だとする.. ジェンドリン哲学の本質が盛り込まれている. フェルトセンスは「悲しみ」のように,すぐ名. 『プロセスモデル』(Gendlin, 1997)を読み解く.. 前のつく, はっきりした感情ではない. 池見 (2016). この本は8章からなり,第Ⅰ章からⅥ章は,生物. は,フェルトセンスを, 「なんとなく感じる」と. と環境の諸作用から説き起こし,原始生物,植物,. いう感覚を言う用語であると日本語で定義する.. 動物へと,独自の進化モデルをたどるように書い. 「心理療法では感情よりもフェルトセンスの方が. ている.. 重要である.フェルトセンスに含意される意味を. ジェンドリンは,適者生存や自然淘汰によって. 明在的に言い表していくことによって変化が生じ. 進化が起きるとは考えておらず,少数の突然変異. るから」と言う.今この瞬間ごとに「何を感じて. がその種全体の進化をもたらすという概念も採用. いるのか」に目を向けると, 「悲しみ」以外にも. しない.進化はあらゆる個体の生きているプロセ. 暗に存在するものが,豊かに体験されている状況. スの中で,そして個体間の相互作用において,常. があることが感じられてくる.. に生起しているという新しい認識を提案している.. 人がある状況に「悲しみ」を覚えるのは「内面」. 4つのタイプの環境を定義する.この4つのタ. や「性格」のあらわれではなく,状況の中に置か. イプは,環境#1から環境#4までに分けられる. 44.

(6) フォーカシングとTAEを使って書き記すことによる社会の改良. このうち,環境#2は,足と地面のように,身体. アフィル化」とジェンドリンは呼ぶ.新しいトピッ. と環境が暗在的に相互作用のプロセスの中で互い. クをモナド化とダイアファイル化の両方向におい. に含意している関係である.環境#3は,蜘蛛の. て交差させることができれば,人類は知恵に至る. 巣や貝殻,文化のように,人が自ら作り出したも. とジェンドリンは言う.. のが新たな環境となっている関係である.身体と. 得丸(2009)は,直接照合体の形成が,私たち. 環境#2および環境#3は,互いをインプライ. の日常生活に適用されれば, 「生活を大きく改善. (imply 暗在のうちに含意)しており,暗在的. する可能性を持つ」と結んでいる.. 含意(implying)は,生命体に生起(occurring) を引き起こすとされる.. 2.6.フォーカシングと社会,政治の変革. 第Ⅶ章では,人間の経験と言語の関係が精緻に. 本節では,フォーカシングと社会のより良い変. モデル化されている.私たちは,言葉の使用にお. 革の関連を論じる.ジェンドリン(2007)は,フォー. いても,推進され,変化するようになった.. カシングや暗在性の哲学を単に自己理解や成長を. 最後のⅧ章では,経験と言語の新しい関係を論. 得る方法としてだけではなく,社会を変えるもの. じ,モダンバレエの創始者,イサドラ・ダンカン. として考える. 「私たちは人類の巨大な発展の最. の自伝を例に「直接照合体」 (Direct Referent). 初の段階にいる,新しい製品は〝人間相互間の注. が出現した状況を描写する.. 意〟と呼ばれる.私は,新しい言葉で,私たちを. 「何時間も両手を胃の下あたりにあるエネ. 〝タウン〟と呼ぶ.注意の質を上げる専門家の中. ルギーの集結部の上で組み,じっと立ってい. にあるものがフォーカシング」という.. ることもあった.母はひどく心配したが,私. 末武(2014)は,ジェンドリン哲学の社会臨床. は求め続け,すべての動きがわき出す源,動. 的な提言を4つにまとめた.第1に,政治的経済. 力の中心,あらゆる種類の動きが生まれる統. 的な概念などを,一人一人が身体の複雑性と相互. 合体……をついに発見した」. 作用できるように入手,修正していく.第2に,. 彼女が探し,ぴったりした感じが来るのを待ち, 社会的状況についてフォーカシングし,出てきた その新しい感じと相互作用した感覚が,哲学用語. ものを他の人と話し合う.第3に,私たちの体験. でいう「直接照合体」 ,心理学用語の「フェルト. は政治,社会的な次元と関連を持っていることを. センス」である.俳優のスタニスラフスキーや,. 知る.第4に,体験の複雑性と政治や社会につい. 一般相対性理論のアインシュタインの著書も引い. ての認識を結合することによって,政治・社会的. て,独創的な思索家たちはおそらく,とても頻繁. な概念や制度は異なる意味を現し,変化も可能に. に,直接的な照合に専念するとジェンドリンは書. なる.. いている.直接照合体が形成され,やってくると. ジェンドリンの妻メアリー・ヘンドリックスは,. き,何かがやわらかなゼリーのようにゆるやかに. フォーカシングで世界に平和と調和を育てようと. まとまり,何かが生じ,何か-とても多くの-が. した.筆者は記者としてヘンドリックス(以下で. 納まるべきところに納まる.. は,メアリーと表記する)にインタビューをした. ジェンドリンは, 「モナド」 (monad)という言. (2002年5月22日,北海道新聞朝刊).. 葉を,直接照合体があらゆることのすべての結果. 「私が用意した質問をしようとすると,メ. に対して適用されるあり方を示すために用いる.. アリーさんは『それが今,本当に聞きたいこ. 「モナド化する」と動詞で使う.末武の2017年7. とですか』と確かめるように促した.(私の. 月22日,札幌・道民活動センターでの研修講義録. 質問に)答える前に少し時間をとってぴった. によると,その人の機能を十全に生かして残した. りの言葉が浮かんでから答えた」(同). もの,光輝いて残るものがモナドだという.直接. メアリーは,「レボリューショナリー ポーズ. 照合体からモナドをつくるのとは逆の方向で,モ. (revolutionary pause)」(ひと息入れて,フェル. ナドからメタファー(隠喩)によって新たな体験. トセンスと照合する時間をとる)を提唱した.彼. が広がり,直接照合体をつくりだすことを「ダイ. 女は2004年の中米コスタリカでのフォーカシング 45.

(7) 学校臨床心理学研究 第15号(2017年度). 国際会議で基調講演した(上村,2005) . 「現実の. 起させることができる. 「新鮮な言葉で語ることは,. 中から出てきているフェルトセンスには,いろん. 人が言葉にしないまま生きてきたことや言葉にし. なものが絡み合っているが,フォーカシングをし. たかったことを減少させたり限定するのでは決し. ていくと,一つずつはっきりしたものが出てきて, てない.むしろ,感じたり言わんとしたことを身 次のステップが見えてきたり,今の状況にぴった. 体的にさらに展開するのだ.そして,語られたこ. りした創造的な方法とか,予想もつかなかったア. とを書き留め読み返すことによって,生の歩みを. イデアが出てきたりする.社会を変えたいと思っ. さらに進めることができる」とジェンドリンは,. たときにフォーカシングを使える」と強調した.. 書く効用にも言及する.. メアリーは2015年3月に死去した.. 村里(2009)は,日本ではフォーカシングを好 む 人 々 に 言 語 使 用 を 不 得 手 と す る 人 も 多 く,. 3.研究の目的と方法. 「フォーカシング的言語使用が私的言語にとどま り,その人のいやしと成長に役立っても,フォー. 本論文の目指すところは,フォーカシングを. カシングから他者と社会へと発言する人はいまだ. 使って書き記す過程で起きる現象を分析し,どの. 少ない」と指摘する.. ような意味で社会の改良につながるのか,実例を. TAEは,14ステップからなる.個人の身体から,. 示すことにある.インタビュー相手の豊かな言葉. その人独自の理論作りが可能という考えに出発し. を拾い上げるためにTAEを研究方法として採用. ている.個人の身体は,人間の身体の普遍的な在. した.. り方を具体化している以上,個人の理論は普遍的 なものが今,ここで具体化した一つの実例である. 3.1.研究の目的. と言える.. 本論文のテーマにした「書き記す」の「記」に. こ れ は, ジ ェ ン ド リ ン のIOFI(instance of. は,「記者」や「記事」という使われ方がある.. itself)原理の考え方である.IOFIとは,それ自. 漢和辞書で「記」とは, 「手掛かりを引き起こす. 身の実例であること.「アイオブアイ」と読む.. 言葉や目印のこと,またその手がかりをメモする. どんなものも「そのようなもの」の一つの実例で. 「そのようなもの」の先には こと」 (学研漢和大字典)を言う.本研究の目的は, あるという意味で, 書き記す作業にフォーカシングを使うと個人や社. 普遍的なものがある.. 会にとってどんな良いことがあるのかを明らかに. 得丸(2010)によると,TAEを応用する質的. することである.. 研究も,IOFI原理による.第1に,ある領域に 暗在する普遍性をある研究対象者の体験において. 3.2.研究方法. 見出そうとする.第2に,研究者が示すリサーチ. 3.2.1.TAEとは何か. クエスチョンに応じて立ち上がって来る普遍的な. TAE(ジェンドリン,2004) は 「暗在性の哲学」. ものを取り出そうとする.第3に,立ち上がって. を背景とする概念形成と理論構築の方法である.. 来るものを言語化していくのも,可能な言語化の. そのステップ自体は,わずか14ページの手順書で. 一つの実例となる.何らかの「代表」や「唯一の. ある.TAEとは何かを,ジェンドリンがフォー. 真実」を示すことはできないが,「典型」や「真. カシング研究所の学術誌「フォリオ」のTAE特. 実の一つの実例」を示すことができる.TAEは,. 集号(2004)に書いた序文と村里(2009)の邦訳, データを読みこんだ直後の状態で,未分化な意味 の塊=直接照合体=を形成させ,その意味感覚を. 解説などから紹介する.. それによると,TAEは,自分のテーマについて, 分析の中心に置くことにより,恣意的解釈を抑制 しようとする.個人が振り返ったり,研究者と協. いまだ言語化できない,からだの感じを言語化す. る際に頻繁にフォーカシングを用いる方法である. 力したりして,個人のからだに暗在する「うまく シカゴ大でジェンドリンが教えた「理論構築」の. 言葉に言えないけれども知っている感じ」を言葉. 授業に端を発している.TAEは新鮮な言語を生. にして共有すれば,個人の人生は豊かになり,社 46.

(8) フォーカシングとTAEを使って書き記すことによる社会の改良. 会は良くなるだろうというのが最終的なTAEの. 漠然としていた伝えたいことが,次第にはっ. 構想である.. きりしてきて,見出しやタイトルとなって浮. 3.2.2.新聞記者体験のTAEによる分析. かんできたら,多くの人と共有したい」. まず,筆者の記者体験について,TAEを用いて, 22で,仮タイトルを「フォーカシング指向記者 論」とし,章立てができた.まとめは以下の通り.. 言語化を試みた. 最初は,得丸(2010)の本に掲載されたジェン. 「フォーカシングを身につけると,自分の. ドリンとメアリーによるTAEステップ(2004). 感じている意味感覚にとどまれるようになり,. を使った.. そこから文章が流れるように出てきて,社会. ステップ1では,フェルトセンスの中核を短い. 変革の一歩につながる」. 文にした.「書く前に立ち止まって,何を書きた. ここまでの作業を基に,研究のテーマ(仮)を. いのか感じる時間をとる」が出てきた.次に筆者. 「フォーカシングを使って,心に響く良い記事や. の実例を書いた.なお,本項の中での「 」での. 文章を書き記す」 ,リサーチクエスチョンを「成. 引用はいずれも筆者自身の文章である.. 功した記事や本の執筆,出版では,筆者と読者に. 「相手の話した通り,いきなり,時系列で. どのような相互作用や変化が起きているのか」と. 書いていかない.一番伝えたいのはどこかな. した.インタビュー相手への具体的な質問は,次. あ…と感じて,そこを冒頭に書くことで,記. の6つを想定した.. 事が読まれるものになった」. 1)書く前にどんなことが大切か. 2)最初に原稿を読んでくれる人はだれで,その. ステップ2から5までを終えて, 「マイセンテ. 人との関係はどうだったか.. ンス」として出てきたのは次の文章である.. 3)読者からは,どんな反響があり,どんな関係. 「書く前に立ち止まって,一休みし,原初. をもったか.. 的な感覚に触れる.知っていることを脇に置 いて,早く書こうとむりくり考えない.身を. 4)書きながらだんだん書きたいことがはっきり. 細らせるような言葉をいったんどけて,…,. してきて筆が進んだり,逆に袋小路に入ったり して苦しかったことはあるか.. 何を書きたいのか感じる時間をとる」 ステップ6では側面を集め,7ではパターンを. 5)自分ではなく,神様かあるいは別のだれかが,. 取り出した.8では側面を交差させ,9では自由. 自分の手を通して書かせてくれた,というスピ. に書いた.信頼関係の大切さや,ジェンドリンの. リチュアルな感じを味わったことがあるか.. 哲学用語である「インタラクションファースト」. 6)フォーカシングを身につけて,話を聴き,感. (まず相互作用ありき)が浮かんできた.. じと言葉を行き来しながら,正直に自分と向き. ステップ10で,これまで出てきた語句の中から,. 合うと,心に響く文章が流れでるように出てき. 重要と思える3つのタームを選択した.11で,. て,社会を変える一歩になるという研究仮説を. ターム間の本来的関係を探求し,恒久的なターム. 筆者は立てた.こうした体験があなた(研究協. として「信頼関係」 「響く」 「フェルトセンス」 「暗. 力者)にはあるか.. 在」を得た.. 4.フォーカシングを使って書くときに生起 するプロセスの理論化――TAEを用いた質 的分析から. このあとの理論化は, 得丸(2008)のワークシー トを使って,丁寧に取り組んだ. フェルトセンスを保ったまま, シート18で, テー マを「良い記事を書くこつ」とした.重要語を選 び,追加し,21までに理論の骨格として次の文章. インタビューへの協力を次の3人に依頼した.. が得られた.. 北海道教育大研究倫理審査委員会の承認(番号は. 「信頼関係は,心に響く言葉を話し,書き. 北教大研倫2016041002)を2016年4月26日に得て,. 記すことによって築かれていく.本当の自分. 9月にインタビューを実施した.. が感じていることを正直に表現する.最初は. A(大学院教授)は,日本にフォーカシングを 47.

(9) 学校臨床心理学研究 第15号(2017年度). 紹介し,近年も理論の革新を続けている.. すような感覚で「この感じ」 (=フェルトセンス. B(大学教授)は,TAEを一般向けや質的研. =意味感覚)と特定した.フェルトセンスがどん. 究用に紹介している.. な言葉で表現できているかを自問し,浮かんでく. C(カウンセラー)は,子供の自己表現を促す. る言葉を書きとった(表1).その中から重要だ. ワークシートを作り,学校で使われている.. と感じられた2~3の語句に下線を引き,それを 使い,フェルトセンスをいくらか表現できている. 4.1.分析過程. と感じられる文(仮マイセンテンス)を作った. (表. 得丸の「TAEリフレクション」 (2016)サイト. 2). から,記入シートをダウンロードして使用した. 分析過程を以下に示す.. 4.1.2.ステップ4から5. 4.1.1.ジェンドリンのステップ1から3. フェルトセンスを感じ直し,大事な言葉の一般. 分析データを繰り返し読みこみ,テーマとして. (辞書)的意味とフェルトセンスの意味感覚を書. いるデータ理解の想起される場面を書き,実例. いた.さらに探りたい感覚の強い語を選び,同様. カードを作った.Aからは14枚,Bからは26枚,. の作業を繰り返した.集めた語を眺めながら,フェ. Cからは26枚の実例カードが得られた.. ルトセンスを感じ直し,一文(マイセンテンス). 実例カードを書いたシートの全体を眺め,しば. で表現した.(表3). らく感じ続けた.その感覚を,身体の内側で指さ 表1 フェルトセンスから浮かんできた語句 A. びびーと響く,伝わる,ジーン,わかった感じ,そうそう,書く意味,じわ~,本当の,感動,ふれ る,琴線,心打たれる場面,体験から感じたこと,1人称の語り,生きる上で大事な何か,体験の質, 心に残ることを記す,意味感覚の共有……. B. 書く効用,自分を二重化,つながる,成長,推進,世界の再構築,TAE,リテラシー,社会を変える, 静かなる革命,世界平和,フェルトセンス,感じる,大事にする,生き方,生活,みんな,言葉の連結, かしっ,ぴちっ,はまる,動ける,気持ちいい,自分をつくる,自分ができる,これこれ…,そうそう …,涙ぐむ,バロメーター,つう,自分を提供,大変,離れて,大胆,解釈,スコーンと,簡単に,自 分版,わかりやすく,やってみたくなる,感じをホールド,励まされる,自分を許せる,刺激される, 心地いい感じ……. C. 書くこと,プロセス,外在化,関係の中で,エピソード,楽しい,簡単,わかりやすい,遊び感覚, 自分とつながる,安心感,親近感,表現,自己理解,実感,気づき,受容,枠,場,安全なシート,カ ウンセリング,主体性回復,気持ち,出せる,短時間,見せたい,見せたくない,フェルトセンス,動 く,全体,眺める,仕上げ,書き足す,温かい,かわいい,すごい,すっきり,ストーン,それそれっ, ぴったり,クリーンヒットみたい,抜けた,新鮮な,関わり合い…… 表2 「この感じ」を表す文(仮マイセンテンス) A. 体験して感じたことを書くと伝わる. B. 書くことで自分自身や人とつながり,成長でき,言葉が連結する. C. 人との関係の中で書いた本がすごいクリーンヒット. 表3 マイセンテンス A. 体験し経験して心に残った感動や心の動きを書くと,理解できる. B. 意味感覚を大事にして書くことで言葉ががっちり連結し,成長やつながりの基になる. C. 人と相互作用し,かかわる中で出来た本が大ヒット. 48.

(10) フォーカシングとTAEを使って書き記すことによる社会の改良. 4.1.3.ステップ6から9. 部分ごとに文になるように表現を整えた.この文. 実例カードを切り取り,グループを作った.各. を「結果パターン」と呼ぶ.結果パターンを箇条. グループの特徴を最もよく表現しているパターン. 書きし,番号をつけた.先に保存しておいた実例. を選んだ.全データの多様な側面をとらえるAに. シートのコピーを切り取り,結果パターンが現れ. ついては5つ,Bについては8つ,Cについては. ている実例シートを張り付けた.さらに,3人の. 6つのパターンが抽出された.たとえばAからは, 概念システム(理論)を図解した.最後に,最終 「一人称で筆者の実例を挙げて書くと,読者は追. 的な文言(表5)を確定し,分析の結果とその過. 体験しやすい」「執筆は仮想する読者との対談の. 程を通じて気づいたことを書いた.その気づきを. ようなもの」「潮の流れがやってくるようなノリ. ふまえ,考察の方針または今後の実践の方針を書. ノリ気分で,言葉を選びながら書くといい」とい. いた.. う3つのパターンが抽出された.次に,選ばれた 各パターン同士を交差し,Aについては20例,B. 4.3.考 察. については56例,Cについては30例の新パターン. 4.3.1. タームの連結による理論化の試み―― TAE分析から導かれた主要タームを用いて. を抽出した.最後に重要と思われる語句を抜き出 し整理した.. インタビュー協力者3人と筆者自身のTAEに. 4.1.4.ステップ10から12. よる質的分析から導かれた語句を用いて,フォー. Aの重要語として, 「追体験」 「例示」 「やりとり」. カシングを使って書き記すことによって生起する. を選んだ.Bの重要語は「書く」 「TAE」 「効果」. プロセスの理論化を試みた.. を選定した.Cの重要語は 「相互作用」 「自己表現」. A,B,C,筆者それぞれについてのデータか. 「枠というか場」を選んだ.それぞれの重要語を. ら重要語句を3語ずつ書き出し,語句を追加し,. 組み合わせて文を作ったあと,語句を補足して. それ以外にもデータ全体を眺めて大切に感じられ. フェルトセンスに合う文を作り,気づいたことを. る語句を書き並べた.. 自由に書いた.. 生起するプロセスを図式的に,書く前,書いて. 次に,重要語同士が持っている本来的関係を指. いる最中,書いたあとの3つの様相に分け,様相. す語として新しい重要語を呼び出した.最後に,. ごとに浮かんでくる概念と,インタビューで語ら. 重要語のリストの中から,5つの用語を相互に組. れた言葉をまとめた.. み込んだ相互定義文をつくり,そのうち,最も重. 4.3.1.1. 様相1:〈書く前〉=まず相互作用あ りき. 要だと感じられる語(概念)が主語になっている. Aのいう「書き手と編集者とのやりとり」が相. ものを選び,骨格文・結果文とした(表4) .. 互作用にあたる. 4.2.結 果. Bが「 (イラストレーター志望の学生)Dがい. 結果文を意味のまとまりごとに分割した.分割. なかったらあのワークブックはなかった」という. 表4 骨格文・結果文 A. 追体験は一人称で例示することによって容易になり,興味が沸いて理解につながる. B. フォーカシングやTAEを使って意味感覚を大事にして書くことは,個人の成長と社会の再構築をもたらす. C. 自己表現は,相互作用のプロセスが起きている場で育まれる. 表5 最終的なまとめの文 A. 一人称で例を挙げて書くと,読者は興味をもち,追体験して理解しやすくなる. B. 意味感覚を大事にしてTAEを使って書くと,人は成長し,社会が再構築される. C. 自己表現は相互作用のプロセスが生じている場で育まれる. 49.

(11) 学校臨床心理学研究 第15号(2017年度). シートを作る.「簡単・楽しく・わかりやすい」. のも,2人の相互作用である.. Cのいう「相互作用」 「1人1人との関係が先」 , , とフェルセンスが動きやすいので,遊び感覚でで 「安心できる関係」という言葉も書く前の人間関. きる,かわいいイラストを描いた.書いた後,全. 係の重要性を指している.. 体を眺め,仕上げの時間をとると,子どもたちは. 上村の「信頼関係」 , 「人間関係」 , 「信頼づくり」 , どんどん書き足すと言う. 「ゆったり」という言葉も,書く前の人間関係に. 筆者の「記す」,「響く」,「共有」という言葉は,. 着目している.. 書いたものが読み手の心に響き,共有された体験. 4.3.1.2. 様相2:〈書いている最中〉=直接照. から来ている. 4.3.2.フォーカシングを使って書くことによる. 合体の形成. 社会の構築の実例化. Aは「言葉を選んでいる」 , 「ノリノリになって 書く」 , 「潮の流れがやってくる」という表現で,. TAEによって導き出された主要なタームをさ. フェルトセンスに直接照合して書いている実感を. らに検討したあとで,重要な論点を仮説的命題と. 語った.. して抽出する.. Bは, 「評価を気にせず書く」 ,つまり,書いて. 4.3.2.1.様相1.〈書く前〉. いるときには, 「自分との対話」が起き, 「自分を. 4人に共通していたのは,相互作用,相互の影. つくる」ことができると言う.これがジェンドリ. 響,やりとり,人間関係という,英語の「インタ. ンの言う「推進」であり,Bは個人の「成長」と. ラクション(interaction)」に相当する言葉である.. 考える.言葉の「フェルトセンスを保ち,呼び出. ジェンドリン(Gendlin, 1990)は「私たちの考え. す機能」を重視する.これは,何か思い出したこ. る相互作用は,推進(carrying forward)です.. とを,ちょっと記しをつける言葉として置いてお. その人が今感じているところを取り上げ,その人. き,その言葉の組み合わせで全体やより大きなと. の本当のあり方に触れることです」と書いた.. ころをつかむ,言葉の新しい使い方である.Bは. Aは,「本になるかどうかは,編集者とのやり. 「(書く)楽しさを復権したい」と説く.. とりにかかっている」として,Aを聴き手とする. Cは, 「自分とつながる表現」ができたときが,. 対談集や,新たな文庫本の企画を例示した.友人. 直接照合体の形成されたときであり, 「自己表現」. との会話から,ロマンスの結末が正反対に変わっ. の目指すものでもあると言う.. た例も挙げた.. 筆者の場合, 伝えたいことは何かと 「自問自答」. Cの自己表現ワークシートは,もともとカウン. するうちに, 「伝えたい感じ」がはっきりしてきて, セリングルームで会う生徒1人1人のために手書 「湧き出る」ように「タイトル」が浮かび, 「すっ. きしたシートだった.出版については,中学校の. きり」した文章が書けたときには,直接照合体が. 先生たちからの要望や,大学院教員と出版社員か. 形成されている.. ら話があり,Cが「ワークシートを本にしたい」. 4.3.1.3.様相3: 〈書いたあと〉=追体験と交差. と話して実現した.. Aのいう「1人称」で, 「体験できる執筆」を. 筆者も,原稿を真っ先に読んで直す人(新聞社. 目指すというのは,例をたくさん挙げて,1人称. のデスク)との関係のありようが記事の出来を左. で書くと,読者が「追体験」しやすく,理解しや. 右する経験を積み重ねてきた.. すいからである.抽象論ではなく, 「自分はどう. 以上から次の仮説的命題を提起する.. 体験したか」を書く, 「心を打たれるところ」か. 第1命題:書く前に,人との相互作用がある.. ら書くということをAは主張している.. 4.3.2.2.様相2.〈書いている最中〉. Bは,できるだけわかりやすいように「自分な. 書いている時には,フェルトセンスへの直接的. りの解釈」を入れた.TAEでは「言葉の連結」. な照合が生じている.自分は何を書きたいんだろ. が起きて,「動ける構造」になるので交差もしや. うと,胸に聞いてみるときに起きている現象であ. すいと言う.. る.時間をかけて感じていると,やわらかいまと. Cは,子どもが自己表現できるスペースのある. まりができて,だんだんはっきりしてくる. 50.

(12) フォーカシングとTAEを使って書き記すことによる社会の改良. Aは,インターネットラジオでジャズを聴きな. くりが新聞記者の一番大事な仕事というフェルト. がら書いていると,ノリノリになってきて,むこ. センスを持っていた.戦後60年を前に,読者から. うから潮の流れがやって来るように言葉が出てく. 戦争体験記を募り,半年間にわたり,毎日1人ず. ると言う.書き始めると,止まらなくなって,や. つを連載した.記事は,体験者の1人称で読者の. るべきことさえできなくなると言う.. 心を打ちそうな場面から書き出した.連載には多. Bは,書きながら自分の文章を見て, 「そう,. くの反響があった.倉本聰に1年半に及ぶインタ. そう,そうだね」と,涙がうっすらと浮かぶとき. ビューをして書いた本も,倉本の1人称で,エピ. に,良いものができていると言う.自分で納得し. ソードを具体的に書いた.. て許せる感じ,励まされる感じだとBは言う.日. 以上から次の仮説的命題が得られた.. 記のように,人に見せることを考えずに書き,他. 第3命題:1人称で例を挙げて書くと,読者が. 者の評価を気にした「よそいきの文章」は書かな. 追体験して理解しやすい.. いとBは言う.Bはまた書くことによって「人と. 4.3.2.3.2.社会改良. つながる」効果も挙げる.. Aがわかりやすくフォーカシングを紹介した本. Cは,書く前に「お祈り」をする.感じて,書. は,初版で2万部印刷され,これまでに21刷を数. きたいことのフェルトセンスに触れる時間をとっ. え,今も国内外から反響がある.. てから,最初は変な言葉でいいから一気に書き始. Bは,ジェンドリンやメアリーの「TAEリテ. めるとCは言う.. ラシーで世界を変えたい」という言葉に胸が熱く. 筆者は,脚本家倉本聰から, 「神様が自分の手. なり,わかりやすく伝える本を書いた.その本は,. を使って書かせているように感じる」 (上村,. 日本語と英語版の両方を作り,英訳版がBの予想. 2013)と聴いた.筆者自身も,取材メモを見なが. 以上に400冊売れた.TAEを使った研究がその後,. ら,伝えたい感じに触れていると,書きたいこと. 続々登場した(諸富,末武,得丸,村里,2016).. がほとばしり出てきて,一気に書くと,よい記事. セラピーや保健師,国語教師,看護師などの仕事. が生まれるという経験をしてきた.. の実践知を言語化する試みがなされている.. フェルトセンスに導かれて書いた文章は,自分. Cと子供との1対1の関係から描かれたシート. を納得させ,読者の心にも響く.筆者と読者がつ. が学校全体で使われるようになり,さらに本に. ながっていく.概念や立場の違いを超えて,読ん. なって全国の教育現場で使われるようになった.. だ人が程度の差こそあれ, 「その通り」と,うな. その本は出版から11年間で19刷,3万部を超え,. ずき,次なる一歩が体験的に見えてくる文章はあ. 2冊目も発行された.. りうる.. 筆者の戦後60年連載記事は,反響の大きさから,. 以上から次の仮説的命題を挙げる.. 後に本として出版された.. 第2命題:直接照合体が形成されると,納得い. 直接照合体の形成からもたらされた本や記事は,. く文章を書けて,人とつながれる.. 社会に好ましい連鎖反応を生んでいった.普遍的. 4.3.2.3.様相3. 〈書いたあと〉. で,輝く光明のようなものの実例を書くことを目. 4.3.2.3.1.追体験. 標にしたい.なお,修士論文では,社会の「構築」. Aが自分はどう体験したかをできるだけ1人称. という言葉を使ったが,社会はすでに何らかの形. で書くのは,読者が著者の目線で追体験しやすい. で構築されており,筆者はより良く変えるという. からである.本では心理学理論の説明を,Aの体. 意味を込めたいことから,本論文では「改良」を. 験を通して書いた.Aは,書いていて退屈だった. 使った.. ので,工夫したという.別の本は,1人称のエッ. 以上から次の仮説的命題を挙げる.. セイ風で,フォーカシングを教えに行った記録を. 第4命題:直接照合体の形成からもたらされた. まとめ,ロマンスを創作して加えた.読者層が10. 実例を書くと,社会を改良する可能性がある.. 代から70代までに広がったという. 筆者は,父親の戦争体験を聞き,平和な社会づ 51.

(13) 学校臨床心理学研究 第15号(2017年度). 5.結 論. 例を挙げにくい時には,メタファー(隠喩)に なるかもしれない.Bが,本を書いていた時の自. 5.1.本論文の成果――総合考察. 分を夕鶴のつうにたとえて, 「私っていつもこう. 本論文における考察と議論によって,以下の諸. いう感じだなと思って.自分の羽,毛を抜いて織. 点が明らかになった.. り込むでしょう.なんか,その感じがぴったりだっ. 第1の仮説的命題「書く前に,人との相互作用. たんです」と,説明したときに,筆者にわかった. がある」は,相互作用を通して,書きたいフェル. 感じがした.. 「直接照合体の形成から トセンスが明確になるプロセスの大切さを示した. 第4の仮説的命題は, もたらされた実例を書くと,社会を改良する可能. 書かれた文章のできを左右し,何を書き記すか自. 体を決めるとも言える.一般的に,書くと言うと, 性がある」は,4人の実例をジェンドリンの理論 内面にあるものを文字にする作業と思われがちだ. と交差させ,拡張した結果を筆者が言語化した.. が,人との相互作用がその前にあることが多い.. 直接照合体から飛び出てきた実例やメタファーを. 相互作用を通して,ジェンドリンのいう「暗在す. 用いると,社会の中で実践知として生き残る.書. る含意」の中から,何かを書きたいと感じること. いたものが読者の体験とうまく「交差」を起こす. から始まる.書き記す行動は, 「暗在する含意の. たびに,人間関係や社会が改良されていく.. 中への生起」だとも言える.. 書くことは,心理面接に比べて,治療的意義は. 第2の仮説的命題「直接照合体が形成されると, 少ないが,多くの人に読まれることで,社会をよ り良く変える可能性に富む.. 納得いく文章を書けて,人とつながれる」は,書 く最中に,まだ言葉にならない意味感覚に焦点を 当てる時間をとると,良い変化が生じうることを. 5.2.今後の課題. 明らかにした.逆に,感じから離れて,既知のこ. 文章を書くときはできるだけ1人称で,実例や. とだけを書いたときには,言葉にとらわれて,袋. 体験を挙げて,読者の追体験を促すように書きた. 小路に陥り,文章が体験を殺しかねない.. い.フェルトセンスに目印をつけるようにメモし. いったん書く手を休める時間をとることが大切. たり,書いたりする,言葉の新しい使い方も心が. である.パール(2004)の作文授業でも,書いた. ける.ジェンドリンの哲学は難解で独創的である.. ものを脇に置いて1分間目を閉じ,話題全体を感. 一字一句その通りではなく,自分なりの解釈を加. じて,何が重要なのか,何が引きつけるのか,な. えて,よりわかりやすく一般の人に伝えたい.. どと自問する時間をとる.何度も,フェルトセン. 新聞記者体験について,もっと多くの記者にイ. スと文章の間をジグザグに行き来して,その都度, ンタビューして,まだ言葉になっていない経験知 の言語化にTAEを使うことも課題である.. 新鮮に感じられる言葉を記していきたい. 書いたものを自分で読むと,納得したり,何か. 6.おわりに. に気づいたりする時がある.書いたものと書き手 がつながった感じがするときには,読者も書き手 につながった感じを抱きやすい.フォーカシング. 自らの記者体験の分析を通じて,原稿を最初に. は体験の少し深いレベルで起き,言葉や体験の異. 読む人である新聞社のデスクだけでなく,取材相. なる人ともフェルトセンスを共有しやすいからで. 手との相互作用の大きさも感じられた.. ある.. 富良野支局に赴任した当時,倉本聰と支局とは,. 第3の仮説的命題「1人称で例を挙げて書くと, 長 年 接 触 が な か っ た. 倉 本 は, か つ て 東 京 で 読者が追体験して理解しやすい」は,抽象的なこ. NHKの大河ドラマを執筆していたころ,記者に. とを第3者的に書くのではなく,1人称で自分な. 話したこととは違う見出しの記事を雑誌に書かれ. りの例を挙げて書くことの勧めである.わかりや. た.NHKから非難を受け,執筆を途中降板し,. すい文章を書く典型的な方法をこの一文で表現し. 逃げるように北海道に移住した.以来,記者との. た.. つきあいに慎重になっていた. 52.

(14) フォーカシングとTAEを使って書き記すことによる社会の改良. しかし,東日本大震災が起きて,福島県の子ど. and Two, Berkley, CA: Calluna Press.(大澤美. もたちを一時疎開させたいと思った倉本は,富良. 枝子,上村英生共訳 2005年 『フォーカシン. 野の受け入れ家庭を募る必要から,支局に対し,. グ・ニューマニュアル:フォーカシングを学ぶ. 自宅の電話に決めた時間に電話してほしいと,仲. 人とコンパニオンのために』コスモスライブラ. 介者を通じて伝えてきた.筆者が電話する直前,. リー.). 倉本が仲介者宅に現れ,直接会うことができた.. Cornell, A. W., 2013, Focusing in Clinical Practice:. 倉本の文章や記事を新聞に載せて信頼関係を築き,. The Essence of Change, New York: W. W.. DVDで視聴できる全ての倉本ドラマ作品を見た.. Norton & Company.(大澤美枝子,木田満里代,. 放送回数が多かったドラマは,見るのに1カ月以. 久羽康,日笠摩子訳 2014年 『臨床現場の. 上かかった.こうして,2年後には倉本の半生記. フォーカシング』金剛出版.). を出版できた(上村,2013) .. Gendlin, E. T., 1962, Experiencing and the Creation. 「インタラクションファースト」の例がもう一. of Meaning, New York: Free Press(筒井健雄. つある.. 訳 1993年『体験過程と意味の創造』ぶっく東. 戦時中,捕虜収容所の通訳をして,戦後に処刑. 京. ). された道北出身のB級戦犯の生きざまを新聞に連. Gendlin, E. T., 1978,1981, Focusing, New York:. 載した.その際も,先輩記者からテーマを託され,. Bantam Books.(村山正治,都留春夫,村瀬孝. この戦犯がいた捕虜収容所の様子を本に書いた人. 雄訳 1982年『フォーカシング』福村出版.). や,国立国会図書館,翻訳者,B級戦犯の裁判記. Gendlin, E. T., 1990, The Small Steps of the. 録をまとめた弁護士らの協力があったからこそ記. Therapy Process: How They Come and How. 事にできた.書く前に,人との関係ありきだと,. to Help Them Come, In Lietaer, G. Rombauts,. しみじみ感じる.. J. & Van Balen R.(Eds.), Client-centerd and experiential psychotherapy in the nineties,. 付 記. Leuven, Belgium: Leuven University Press, pp. 205~224. ( 池見陽訳, 池見陽著,村瀬孝雄訳 1999年『セラピープロセスの小さな一歩』金剛. この論文は,2017年1月に北海道教育大学大学. 出版.). 院に提出した修士号請求論文をもとに,その一部. Gendlin, E. T., 1997, A process model, New York:. を要約しつつ,新しい知見や考察を加えて執筆し. The Focusing Institute.. たものである.. Gendlin, E. T., 2004, What is TAE? Introduction. 謝 辞. to “Thinking At the Edge”, The Folio. Vol. 19. No. 1. New York: The Focusing Institute. pp. 1~8.. この論文の基になる修士論文を書き終えた3カ 月後,ジェンドリンは90歳の人生を終えた.真っ. Gendlin, E. T., 2007, The Town And Human. 先に彼に感謝の言葉をささげたい.TAEを使った. Attention, The Folio. Vol. 20. No. 1. New. 質的研究の例を多数盛り込んだ本が,論文を書こ. York: The Focusing Institute. pp. 165~171.. うとしていた2016年の夏に発刊されるという幸運. 池見陽,1995年, 『心のメッセージを聴く:実感 が語る心理学』,講談社現代新書.. にも恵まれた.多忙な中,インタビューに応じて くれた3人の方には,お礼の申し上げようもない.. 池見陽,2010年,『僕のフォーカシング=カウン. 参考文献. 池見陽,2011年,「フォーカシングにみるユージ. セリング:ひとときの生を言い表す』,創元社. ン・ジェンドリンの現象学」, 『フッサール研究』 第9号,pp. 1~14.. Cornell, A. W., & McGavin, B., 2002, The Focusing. 池見陽,2016年, 『傾聴・心理臨床学アップデー. student’s and companion’s manual, part One, 53.

(15) 学校臨床心理学研究 第15号(2017年度). 『フッサール研究』第9号,pp. 15~27.. トとフォーカシング:感じる・話す・聴くの基. 三村尚彦,2015年,『体験を問い続ける哲学第1. 本』 ,ナカニシヤ出版.. 巻:初期ジェンドリン哲学と体験過程理論』,. 池見陽,2013年, 「村上春樹の小説にみるフォー. 特定非営利活動法人ratik.. カシングの心理学, 『日本フォーカシング協会. 諸富祥彦,村里忠之,末武康弘編著,2009年, 『ジェ. ニュースレター』 ,第16巻第3号,pp. 8~10.. ンドリン哲学入門:フォーカシングの根底にあ. 池見陽,2017年, 「体験過程が心理療法論に及ぼ. るもの』,コスモスライブラリー.. す根本的なインパクト:二種の交差の検討」 ,. 諸富祥彦編著,伊藤研一,吉良安之,末武康弘,. 『Person-Centered & Experiential Psychotherapies』Vol. 16. No 2,pp. 159~172,. 近田輝行,村里忠之著,2009年,『フォーカシ ングの原点と臨床的展開』,岩崎学術出版社.. http://www.akira-ikemi.net/AkiraIkemi-Net/. 諸富祥彦,末武康弘,得丸さと子,村里忠之編著,. index.html_files/2crossingsJP.pdf. 上村英生,「心の声を聴く:フォーカシングとは . 2016年,『「主観性を科学化する」質的研究法入 門:TAEを中心に』,金子書房.. 上」 ,北海道新聞朝刊,2002年5月29日p.29.. 上村英生,「心の声を聴く:フォーカシングとは 村里忠之,「TAEのステップについて」,『日本 フォーカシング協会ニュースレター』,2004年. 下」 ,北海道新聞朝刊,2002年5月30日p.25.. 秋号(第7巻第4号),pp.1~2.. 上村英生, 「カイ・ネルソンに聞く」 , 『日本フォー. Omidian, P., Lawrence, N. J., 2007, A Community. カシング協会ニュースレター』 ,2004年春号 (第. Based Approach to Focusing: The Islam and. 7巻第2号) ,pp. 14~15. 上村英生,「心の実感で紛争調停」 , 『日本フォー. Focusing Project of Afghanistan, The Folio. カシング協会ニュースレター』 ,2005年冬号 (第. 2007, pp. 152~161, New York: The Focusing Institute.. 8巻第1号) ,p.11.. 大竹直子,2005年,『自己表現ワークシート』,図. 上村英生, 「戦犯になった通訳」 ,2005年,北海道. 書文化.. 新聞社編, 『戦禍の記憶』 ,北海道新聞社,pp.. 大竹直子,2008年,『自己表現ワークシート2』,. 166~189.. 図書文化.. 上村英生,「フォーカシングの創始者ユージン・. Perl, S., 2004, Felt Sense: Writing with the body,. ジェンドリン」,北海道新聞朝刊,p. 3,2005. Portsmouth, NH: Cook Heinemann. (上村英生. 年11月27日.. 訳http://sfp.la.coocan.jp/kamimura/2018/01/2004.. 上村英生, 「心の中のゲスト」 ,北海道新聞夕刊,p.. html). 1,2007年12月25日.. 末武康弘,2014年,「ジェンドリンのプロセスモ. 上村英生,尾張めぐみ,2013年, 『倉本聰ドラマ. デルとその臨床的意義に関する研究」 ,法政大. 人生』 ,北海道新聞社.. 学博士論文,repo.lib.hosei.ac.jp/bitstream/ 10114/. 小林剛,2002年, 「 “書くこと”による感情と思考. 9497/1/13_thesis_Suetake_Yasuhiro.pdf. の統合と自己洞察」 , 『ロールレタリング研究』. 田中秀男,2004年,「ジェンドリンの初期体験過. 第2号,pp. 52~60. Korbei, L., 1994,「Eugen(e) Gend(e)linオ イ ゲ. 程に関する文献研究(上):心理療法研究にお. ン・ゲンデリン (ユージン・ジェンドリン) (大 」. けるディルタイ哲学からの影響」,図書の譜:. 迫久美恵,桜本洋樹,村里忠之,諸富祥彦,末. 『明治大図書館紀要』第8巻,pp. 56~81.. 武康弘,得丸智子訳,=原著はドイツ語) 『日. 得丸さと子,2008年, 『TAEによる文章表現ワー クブック』,図書文化.. 本フォーカシング協会ニュースレター』 ,2012. 得丸さと子,2010年, 『ステップ式:質的研究法:. 年冬号(第14巻第4号) ,pp. 2~4,春号(第. TAEの理論と応用』,海鳴社.. 15巻第1号) ,pp.2~5.. 得丸さと子,2016年,「TAEリフレクション」サ. 三村尚彦,2011年, 「そこにあって,そこにない もの:ジェンドリンが提唱する新しい現象学」 , 54. イト,http://qua.taejapan.org/index.html..

(16) フォーカシングとTAEを使って書き記すことによる社会の改良. SUMMARY Writing through Focusing and TAE makes society better Hideki KAMIMURA (Executive director of Public Interest Incorporated Foundation, Hokkaido Shinbun Social Welfare Promotion Fund) The purpose of this research is to clarify the possibility of bringing the social improvement by writing through Focusing. Focusing tends to be seen as a way to grow and heal individuals, but as its founder, Eugene Gendlin emphasized, it could lead to social improvements. I explore its process from his theory of philosophy and his psychology. I will also refer to the research of Sondra Perl who developed writing method with the body at school classes and for individual. It is TAE that Gendlin announced as a way to create a universal theory of that person while writing. In this paper, I used this TAE for making words of implicit knowledge that emerged from my own newspaper reporter experience. Based on the research question that came from them, I interviewed three persons who are familiar with both of focusing and writing and are having positive influence on society. As a result of analyzing the data by TAE, I found four hypothetical propositions. First, before writing, there are interactions with people. Secondly, once a Direct Referent (felt sense) is formed, you can write convincible sentences and connect with people. Thirdly, if you write some examples from the first person’s point of view, readers will be able to follow up and understand them easily. Fourthly, there is the possibility of improving society by writing examples derived from the formation of a Direct Referent. Writing work is more likely to change society better by being read by many people.. Key words : Focusing, TAE, social change, writing, interaction, Direct Referent. 55.

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