中学校の指導における数学的コミュニケーション活動に関する実践的研究
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(2) . 中学校の指導 にお ける 数学的コミ ュ ニケー ショ ン. 活動に関する実践的研究 久. 保. 良. 宏. Pract icaIStudyon M[athemat icaICo iol ivi iesin t 1mmunicat I Act ‐L lnstruct ionof owerSecondary SchooI. KUBO Yoshihi ro. l998. 日本数学教育学会誌 第80巻 第9号.
(3) . 142. . ′ 壁 二番 計量 …△. 説. 中学校の指導における. 数学的コミ ュ ニケ ーシ ョ ン活動 に関する 実践的研究* 久. 要. 保. 良. 宏 **. 約. 数学の指導は教師主導型になりがちである との指摘がなされている, しかしこれからの数学教育では生徒 が自ら考える指導が大切であり, これを具体化する 上で, 最近の主張である数学 とコミュニケーショ ンとの 関係に注目する必要があると考えた,そこで先行研究を調 べ数学的コミュニケーショ ンについて明らかに し, 生徒の実態を踏まえてこれの活発化に役立つ指導法について考察した. その結果, 筆者は数学的コミュニケーショ ン活動を 「生徒同士で考えを深め, 生徒にとって新しい数学が. つくられていく活動」 であると捉えた, また実態調査から, 生徒は自分の考えに固執し, 発言が発散的場面. につながる傾向がある こと等が分かっ た, そ してこれらを踏まえ実践 した授業から, “発散的場面と収束的 場面の繰り 返 し” が数学的コミ ュニケーショ ン活動を活発にし, その際の教師の役割として, “発散と収束“ を関連 づけるための発問が重要な意味を持つことが分かっ た, キーワード:星形五角形. 数学的コミュニケ ーショ ン. 1 . 研 究 の 背 景 数学の指導というと, 教師か らの知識の伝達や. 技能面の習熟に重点がおかれる傾向がある. こう. 表現力. 話 し合い活動. 発問. 実態調査. を定義し, そして生徒の実態を踏まえながら, 日 常の授業において数学的コミ ュ ニケー ショ ン活動. が活発になると思われる指導法について明らかに す る,. した 指 導 にお い て は, 数 学 と コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン. 3 . 研 究 の 方 法. とは無縁 のも のである と 考 えられる, しかし, 生. 徒が数学を使って自分の考えを表現し, 数学の知 識を深めたり, 生徒の数学的な考え方や数学への. (1) 数学指導 とコミ ュ ニケーシ ョ ンとの関 係. 興味, 関心を高めることに重点をおけば, 生徒と. (2) コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 能 力 の 一 面 で あ る ペ. 教 師, さ ら に は, 生 徒 と 生 徒 の コミ ュ ニ ケ ー シ ョ. ーパー上での生徒の表現力の実態 を 明らかに. ン活動は, 中学校における数学指導の改善を考え. するために調査問題を開発し, 調査, 分析を. ′考えられる, る上で極めて重要な視点であると. 行う.. 2. 研 究 の 目 的. 筆者はこれまでに, 「話し合い活動」 を活発に. を 明らかにする ため に, 先行研究を調べる,. )の調査問題と類似の問題を授業で扱い, ( )( 3 2 授業における生徒の実態を分析する. (4) 数学的コミ ュ ニケーシ ョ ン活動 が活発に. するための雰囲気 づくりについて考察 してきた,. なると思われる指導法を明らかにするため. 本研究では, これをさらに発展させ, 数学科の 指導における 「数学的コミ ュ ニケー シ ョ ン活動」. に, 日常の授業 を ビデオに撮り, 特に生徒の. * 原稿受付 平成9年1 0年6月25日 1月2 1日, 採用決定 平成1 ** 共立女子学園共立女子中学校. 発言と教師の発問やそれらの関係, また授業 の流れに着目 して分析する,.
(4) . 中学校の指導における数学的コミュニケーショ ン活動に関する実践的研究. 143. (討論での発言者) によって知識の再構成が行わ れる自律的適応過程であり, 個人的解釈の形成,. 4 . 研究の結果と考察 (1) 先行研究と筆者の捉え方. フィ ー ドバ ッ ク の 発 生, 連 鎖 的 フィ ー ドバ ッ ク の. 発生; 個人的解釈の変容という一連の諸段階を経 て, ある種の情報が参画者の間で共有される過程. 数 学 と コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン につ い て は, こ れ ま. でに小学校算数科を中心にいくつかの研究が発表. } で あ る」 と 述 べ て い る4 ,. されている. これらの中から本研究において示唆 ) 古 ) 金 本2 ) 熊 谷3 ) 江 森4 を 受 け た, 瀬 沼1 , , , ,. ) 協力的なコミ ュニケーショ ン活動の重要性 5 直鹿 (1995) は, 子 ども同士 の協力 的 な コミ. )の先行研究を踏まえ 本研究における数学 藤5 ,. ュ ニケーシ ョ ン過程の重要性を指摘 し, 「一 人ひ. 的コミ ュ ニケーショ ン活動を定義する.. ① 先行研究について. とりの考えが生かされるような練り合いの過程を. ) 数 学 的 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ンの 構 造 1. 通 して, それがより深い理解に近 づくと共にそこ ) から新しい発展が導かれる」 と述べている6 ,. ) は, 算数科を対象と したコミュ 適温 ( 1995. ② 筆者の捉え方 これらの先行研究を受け, 筆者は数学的コミュ. ニケーシ ョ ンの構造を, 第1の次元:表現 (数や 式, 表, グラフ, 図, 言葉, 文章, 具体物), 第. 2の次元:目標 (自分が納得する, 他人を説得す. ニ ケ ー シ ョ ン を 次 の よ う に 捉 え た,. る) , 第3の次元 : 活動 (聞く, 読 む, 書く, 話 す, 操作・動作, 解く), の3つの次元 において ) の考察 を提案している1 , ) 数学的コミ ュニケーショ ンの能力 2. なお, これら先行研究に対 し, 本研究では “中 学校の一斉授業における数学的コミ ュニケーシ ョ ン” に着目 している点が特徴である,. 金杢 を 中心 とする グルー プ (1994) は, 数学 的コミ ュ ニケー シ ョ ン能力 を, (1) 算 数・数学. 数学には, 日常の言葉 とは別 の, 数, 記号, 式, 図 形, グラ フ と い っ た “こ と0r がある, これを. ) 考えの伝達や討議 の表現・記述が使える, ( 2. 使っ て, 話す, 書く, 道具 を使う (コン ピュ ータ やグラフ電卓等) といっ た方法で自分の考えを表. ) 基本的な捉え方 1. な どの交流がで きる, (3) 数学的表現の よさ が. 現し, 聞く, 読 む, 見る と いっ た方法で, 友だち や教師の考えが伝わっ てくる, これは, 数学とコ. 理解できる, (4) 話 し合いや議論の大切さへの 適切 な態度 が形成されている, の 4 つ の視点か ) ら捉えることを提案 している2 .. ミ ュニケーショ ンを捉えるもっ とも重 要かつ基本. ) 教師と生徒, 生徒と生徒の共有の過程 3 腿査は, 『算数・数学の授業における共有プロ. 的立場である,. ) 学校教育における意義 2 こうした活動が教師と生徒だけでなく, 生徒同 士でも行われる過程で, 自分の知識や考えが深め. セス に関する考察』 (1989) の中で, コミ ュニケ ‐ ソョ ンの基盤となる教師と生徒, 生徒と生徒の. 相互作用を前提とした「共有プロセス」の概念を, 『共有するときのてがかり』 「 , 『同意の内容』『共 有すること』 が関係づけられたとき, 共有が成立. られ,同時に友だちの知識や考えも深ま っ ていく. ここに, 学校教育における数学とコミ ュ ニケーシ ョ ン活動の関連がある.. する. そして, 共有が成立するまでの相互作用 を 共有プロセス と 呼ぶ」 と定義し, 共有プロセスの. ) 新たな捉え方−数学をつくりだす− 3 と により, 数 これらがより積極的に行われるこ.. 関係 を問題解決 プロセスと問題構築 プロセスに 大 ) 別してその関係について明 らかにしている3 ,. 学への興味, 関心が高まり, 練り上げの活動を通 して考えを認め合い, 考えを共有するこ と によっ. 4) コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ンの 過 程. て個々の考えが変容し, より有効な考えへと発展. 淫盛 は, 『数学の学習場面におけるコミ ュ ニケ ーショ ン・プロセスの分析−参画者の自律的適応. していく, このような活動は, 未学習なことがら を発見するだけでなく, 新しい数学がつく られる. して の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン −』 (1992) の 過 程 と・. ことにつながっ ていく. これは数学指導 とコミ ュ. 中 で, 「コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ・ プ ロ セ ス は 参 画 者. ニケーショ ン活動を捉える新たな考え方である,. 8.
(5) . 144. 日本数学教育学会誌. 第 80 巻. 第 9 号( 1998年). ② 調査の方法. 4 ) 数学的コミ ュニケーショ ン活動の定義 筆者は, こう した考えに立ち, 数学的コミ ュニ ケーショ ン活動を次のように定義 した,. 調査時期 は平成 8 年2 ∼3月 であ り, 調査対. 象は4都県から1校ずつ選 ばれた中学 校生徒. 『数学を使 っ て自分の考 えを, 友だち が納得で. 283名 (1年生男子 79名, 女子 74 名 の計 153 名, 2 年生男 子 68名, 女子 62名 の 計 130名). きるように論理的に表現することにより, 自分の 考えをより深めていく活動. さらに, これが生徒. で あ る,. 間において積極的に行われ, 相手の考えを理解し ようと努めながら友だち同士の連帯意識が高まる 中で, 生徒の数学の知識や考え方が深められ, 生. ③ 分析の視点 )〔表現の形式〕 どのような形で自分の考え 1 を相手に伝えようとしたか (言葉, 図等) , )〔具体物, 表現の工夫〕 実際的な場面にお 2. 徒にとっ て新 しい数学がつくられていく活動』. (2) 中学生の表現力の実態. ける表現と して, 具体物等を利用 しようと し. コミュ ニケーショ ン能力育成のため の調査が国. たか (ひも, 巻き尺, 縮図, 記号等),. 立教育研究所で行われ (算数・数学代表:瀬沼花. )〔具体的な表現のタイプ〕 具体的にどのよ 3 うな表現で自分の考えを相手に伝えようとし. ) 筆者は中学校数学コミ ュ ニケー ショ ン能 子)6 , 力調査のメ ンバーと してこれに参加 した, ここ で. たか ( 2つの二等辺三角形, 2つの円等) , なお, 本稿では, 指導法の考察に関係 する 1 ). 開発されたペー パー による調査問題とその分析の. 「端を記すことにより, 中学生の表現力の実態に ついて明らかに し, 本研究の目的である指導法の. )を中心に調査結果を示し, 考察を加える, 2 ④ 調査結果と考察. 考察のための1つの資料とする, なお, こ の調査は小 学 4 年生から中学 2 年生. )の 〔表現の形式〕 は, a 「言葉」 1 , b 「図」 ,c 「言葉と 図」 「 d 無答 」 の4つに分類 した , ,. の児 童 ・ 生 徒, およ び教師を 対象に言語, 社会, 人間関係, 算数・数学, 理科について行われた,. 分類とその数は表−1の通りである,. ① 調査問題. 表‐1 表現の形式の分類とその 数 (%). 海岸に2 本の木 があります, こ の2 本の. 表現の形式. 木 の 間 は 30 メ ー ト ル で す. こ の 2 本 の 木 の. 夫妻 勇姿. 20 a 言葉のみ 14 25 の表現. どちらからも 20メ ー トルの地点が2か所あ. b 図のみ の表現. ります. そこ に宝 がう めら れている そう で す, 片方の地点 には宝石 が, もう 片方の地. 15 1 3 ”. 9 12. 6. 点には宝剣 がう め られています. 宝のあり. 47 c 言葉と図 による表現 4 4 5 0. 56. かをさがす方法を,. d 無答など. 亭. 雫. 18. 13 22. 5 6. 図 や 言 葉 で, ク ラ. 合 計 男 女. 24 3 0 1 9. 7 5. 55.. 9. 6. 53. 50 51 5 1. 25 25 25. 25 28 2 1. スのみんなにわか る よう に 説 明 しま. へ. 最も多か っ たのは, c 「言葉 と 図」 に よ る表現. しよ う,. (約50%) であり, 学年, 男女とも約半数がこれ に当てはま っ た, 男女別では 「言葉の み」 は女子. 実際的な場面を数学の問題として捉え, 図形の 用語を正確に使うことで宝のありかを探す方法を. が, また 「図のみ」 は男子が若干多か っ た,. 的確に表現できるかをみる問題である, また, 説. で表現 しようとする傾向が分かる,. 明する対象を明確にするために, 同等の数学の知. 2) の 〔具体物, 表現の工夫〕 につ いての分類 と その数は表−2の通りである.. 生徒は自分の考えを伝えるために, 多様な形式. ) 識を有する 「クラスのみんな」 と している7 ,. 4.
(6) . 中学校の指導における数学的コミュニケーショ ン活動に関する実践的研究. 態も明確にする必要がある, そこで4( )と類似 2 の問題で, その予備調査問題として作成された問. 表−2 具体物等を使った表現とその数 (%). 具体物, 表現の工夫など. 実際場面 ・具体物. a. ひも, ロープ,. 5 6. b 巻き尺, メジャー を使って等. 3. c 足で印をつけて いく. 2 1 1 1 1 2. 紙上. メント ) の宝等のコ. e 縮図, 地図の上. 5 10. 3 3. O 0. 5. 2 1 2. 0. 2 3 0. 5. 1. 3. 計 女. 導入と して授業で扱い, 生徒の様子を分析 した,. 2. 8. 1. ) 授業の概要 3. I 1. g 木の幅等. 2 3 1. 2. 木 の 間の距離を与 え てい ないため, ま ずこの点. 0. 6 8 4. 1. (なお, 生徒は女子のみ49名である,). 1. 3 1 1 3 3 1 4 7. (木を点とすると等). ) 対象学校学級:共立女子中学校・1年6組 2. I. f 記号の使用 (木をA ,B ,交点0等). 2. ) 実施年月日:平成7年11月 10日第4時限 1. 2 2 2. 3 1 4. 1. ① 授業実践. 5. 3. で. 題 (木の間の距離を与えない) を 「平面図形」 の. 6. 8. 糸を使って等. d 現実場面(海側. 美. 勇曇晶雲 男合. 145. が生徒間で議論の中心とな っ た, 「木 と 木 の間が す ごく離れていたら宝のありかは見つか らない」 , 「宝があるという のだから40 m は 離れて いない. はずだ」 との意見が出された, 条件を暖昧にする. 2 2 1. こと で, 生徒の問題に対する意識が高ま り, これ が, 活発な意見交換につながっ たと考え られる,. 木と木の間の距離で場合分けすべきであるとの発 長さを測るのに 「ひも」 や 「ロー プ」 を利用 し. 言はなく, 議論の末, 生徒は40 m 以上離 れてい ることはないとの結論を出 した.. たり 「巻き尺」 などを用いるとした生徒は, それ ぞれ全体の約 6%, 約 2%であり, さらに 「足で. 問題の解決場面では, はじめに 「2本の木 を結 べ ばその線上に宝がある ;S6 」 と の考え が発表さ. 印をつける」 などを合わせると約10%の生徒が 問題を実際的な場面で考えていたといえよう,. れた, しかし, 生徒から 「線は曲がっ た線ではい けない」 との指摘がなされ, 「直線」「線分」 と い. 「クラス のみんなに説明する」 ことを考えれ ば. 「縮図」 や 「地図」 などの紙の上で考え表現しよ. っ た表現で言い直された, その後の展開は次の通りである, 以 下, S は生 徒の発言, T は教師の発問である,. う とした生 徒は全体の約 3%であっ た,. S8:S5さんのは違う と思います. 木を 中心に円. 有効な方法であるといえよう. 一 方, 実際の地面の上では作図できないので,. また 説明 しやすいよう に木に記号 (A, B 等) をつけたり, 円の交点を ○ とすると い っ た 表現. を か い て, そ の 円 と 円 が 交 わ っ て る と こ ろ. が宝のありかです, S9: どう して? S, 。: 木 か ら 20 m と いうこ とは, 木から 20 m 離. の工夫は全体の約6%であり, これは学習経験の. 多い2年生の方が高く, 男女別では2年生にお いて男子が女子の2倍と いう結果だっ た.. れ て い れ ばい い か ら た く さ ん あ る か ら …,. )〔具体的な表現のタイ プ〕 では, 「望ましい 3 表現」 は全体の約 30%と低く, 約45%が 「不 備・誤り」 だった, 生徒は数学的な表現が苦手で. S, .:木の どちらからも 20m 離れてるん だよね,. あり, 独自の解釈や考察の甘さが見られた.. S (複数):そうか, わかっ たわかっ た. T :S 5さ んはわか っ たかな? S5さんと 同 じ意. S, 2:20 m の ひ も を 持 っ て き て, ひ も を ピ ン と 張 っ て 交 わ る と こ ろ を 探 せ ばい い ん で す.. なお, 全体的に学年による顕著な差が認められ ないことや, 無答が約25% と高 い こと の2点の 分析については今後の課題 と したい.. 見 だっ た人は? (S6が首を傾 げたの で) T :S 6さん達は納得 してないようだよ, S, 3:ひも じゃ なくて巻き尺で木から 20 m の 所 に. (3) 中学生の話し合い活動の実態 生徒の表現力 はペーパー上だけでは十分に分析. 印をつければいいよ, 〔以下, 略.〕. できない面もある, また話 し合い活動における実. 5.
(7) . 146. ②. 日本数学教育学会誌. 第 80 巻. 第 9 号( 199 8年). 『点 A を適当 にとり, 点 A から左 下に線分をひ. 授業の考察. き 端の点を B とする. 次に, 点 B から右上 に線 分をひき端の点を C と する. 次に, 点 C から左 の方に線分をひき端の点を D とする,. 多くの生徒が正しい宝のありかを見つける方法 を述べよう と していたが, S6の誤りを, S5が納 得できるよう に指摘 した発言は見られなかっ た. S, I oの発言に期待 したが十分ではなく, 次の S,. さ らに, 点 D から右 下に線分 を ひき端 の点を. の発言はS, oの足りないところ を補うものにはな っ ていない. 自分の考えを主張することで, S6. 聡 とする. 最後に, 点 E と点 A を結ぶ.. の考 えを否定するということに終始 していると捉. 乙配) は何度 になる だろうか,』. と ん が っ た角 の 和 (‘ A 十‘ B +‘ C 十‘ D 十. ) 授業記録 4. えられよう, またひもや巻き尺を使うという実際 場面での説明には友 だちから拍手がおこっ たが,. 以下,S は生徒の発 言, T は教 師の発問である,. S8と 同様に作図方法 を示 している だけで, 理由. (S3∼ S7の5 人の生徒を指名 し, 黒板に図をか. を 述 べ て い る も の で は な い.. かせた.) 〔板書−1〕 〔板書−1 〕. この授業からは, 生徒は数学的により正 しい表 現 を求めようと しているものの, 自分の考えに固. ア. (S3 ). 執し, 友だちの発言と対比しながら自分の考えを. ウ. (S5). イ. (S4 ). A. A. A D. 述べよう とする姿勢が 不足 してい ること が分か. C. る,. D. 活発な発言があっ てもこの授業は, 議論の視点. B. B. が明確化され, ある方向へ考えがまとまるといっ. B. た状態 (授業の収束的場面) ではなく, 議論の視 点がまちまちで発言が他の発言と関連づけられて. エ, S6) ≦. いない状態 (授業の発散的展開) で進んでいる, さらに発言が教師に向けられており, これは友だ. B. B. D. C. C. D. オ. (S7 ) A D C. C. ちを納得させるために発せられるものではなく,. 教師からの評価を期待している発言とも捉えられ. B. B. B. B. る,. (4) 授業における有効な指導法. (他の図をかいた生徒もいたが, は じめはこ の. (2)( 3) で述 べた生 徒の実態 を 踏ま え, 筆者の. 5つの図で考 えさせることにした.). 行った授業実践を通して本研究で定義した数学的. 〔途中, 略.〕 S, 9:エはさ っ きと同 じ方法 (外角 の 性質) を使 え ば 1800 になります, でもオ はなりませ. コミ ュニケーショ ン活動を具体化する, そ してこ の授業から, 数学的コミ ュ ニケーショ ン活動を活. 発にするための有効な指導法を明らかにする. ① 本時の目的. ん. だ か ら, ア, イ, ウ, エ と オ に 分 け ら れ ま す,. 数学的コミ ュニケーショ ン活動を通して, 星形. S2 。: オ の 場 合 は −‘ A 十‘ B 十乙 C 十乙 D +‘ 紀 = 1800 になります. 五角 形のかき方 から作られる図形の5つ の角 の. ,. 和の関係を, 生徒にとって新しい数学である 「負. 〔途中, 略.〕. の角」 を考 えること によ って 一般化する,. T, .: そ れ で は, 黒 板 の ア ∼ エ と オ は どこ が 違 う. ② 授業実践. んだろう, あるいは同 じ所もある のかな?. ) 実施年月日:平成8年7月 16 日第4時限 1. S2 . : 先 生, オ の 図 は, ア の 星 形 の 一 部 で す, だ ,. ) 対象学校学級:共立女子中学校・3年2組 2. から違います.. 〔途中, 略.〕. (なお, 生徒は女子のみ48名である.) 3) 課題:. S2 5:先生. ウとオ っ て見た目 は違う け ど, 同 じ. 8.
(8) . 147. 中学校の指導における数学的コミュニケーショ ン活動に関する実践的研究. S3 4:そう か. そう考 えれば, ‘A十乙B 十乙C+. 図 だと思う んです.. ‘ D 十乙 配 は 1800 に な る よ.. T. 2:先 生 に 言 わ な い で み んな に 言 っ て よ,. T・ 7:では, さ っき のオの図 はどうなるの かな?. S2 6:だっ て図 をこう いうふう にかく と, △DCF が△AB風 の内側にあるか, 外側にあるかっ. 〔沈黙〕(小集団の形態をとった. しばらく時間 ) を与えた後, 一斉授業の形態に戻した,. ていう 違いで しかない と思います. だから 0 になる はずなんだけど, 〔板書−2 〕 180 〔板 書‐2 〕 ウ.. A. S3 6:あ の, 変 な ん で す け ど, オ は, マ イ ナ ス の 角 に す る と 1800 になるんです, で もこ の人. (同 じグルー プだ っ た友 だち S3 6を 指 して). A. オ,. D. C. が, そんなのおかしいっ て言う んだけ ど. S3 6: マイ ナ ス の角 な んて ある わ け な い よ.. B. F. E. B. 0 S3 7:私 た ち の グル ー プ は, オ は や っ ぱり 180 に. B. はならないっ ていうことになりま した.. (しばらく生徒に時間を与えた後). S2 7:ス ー. わ か ん な い よ,. (S2 6は, 再度説明 した が, 今度 は, 辺 DE に指をおいて, こ れを点 回 を 固定させた状. S3 8:S2 9さ ん の はマイ ナス の角 に な り ま す.. T2 。:どう いう こ と ? み んな に分 かる よう に, そ れに先生にも分かるよう に説明 し てく だ. 態で右に移動 していく状態 を示 した,). 〔途中, 略,〕. さ い, ‐. 0 S2 9:私 は ウ の 場 合 に 180 になる んだからオの場. S3 o さ ん の AE が ち ょ う ど AB と 重 な 9:私 は, S3. 合もなる と思 っ たん です, でね, ウの場合, 私は A と C を結んでや っ たんでオの場合も. っ た 場 合 っ て いう の を 考 え て た ん だけ ど,. 同 じよう に したんです, そう したら乙A が. の と で…. (S8 9は黒板に走り寄り). そ れ と, S2 9さ ん の A と C を 結 ぶ っ て い う. こ んな図 〔板書−5〕 になるから ‘ A は,. 2回 だぶっ ちゃっ たんです, 〔板書−3〕. 書− 3 〕 善 、ミ 、 B. 正 の 数 か ら 0 にな っ て, 次は負 にな る んで. オ. 。 ,. A. \. す.. 。. 〔板 書−5〕. C. B. T・ 4:S3 oさ ん の 図 を ち ょ っ と 黒 板 に か い て み て.. C D ず ▽D諺 .. A. D. B. B. 4 〕 〔板書−. A. C. C. 〔板書−4〕 こ の図 は ど S3 o: オ の 図 で, AE が ち ょ. A. A. D. ういうの?. C. S4 6 さ ん が 言 っ て た, 三 角 形 が 中 o:そ れ っ て, S2 に あ る か 外 か っ て いう の と 一 緒 じ ゃ な い の,. B . S4 ,:そう か, そう 考 えればオ の場合は −こ A十 乙 B 十‘ C +‘ D 十乙 団 = 1800 な ん だけ ど,. う ど一畑 と重なっ た場合です, でもこんな の だめですよね,. ‘ A が マ イ ナ ス な ら ‘ A 十‘ B 十‘ C +‘ D 十 乙 E = 1800 に な る よ,. T, 6:そう かな? 実 は, 同 じよう な図の人が何 人かいるんだよ ( 3人いた),. o S4 2:−30 っ て ど う い う こ と. 6 〕 〔板書−. です か ?. S3 ,: こ の と き, 乙 A +‘ B +‘ C +‘ D 十乙 配 っ. の 違 い と 同 じ,. 十300. S3 2: 先 生, 乙 A な ん て な い ん じ ゃ あ り ま せ ん か,. だから…. 〔板書−6〕 〔以. ‐300. T・ 6:困っ たな, どう 考えればいいんだろう?. 下, 略,〕. て求まる の?. S4 3:3 と − 3. 0 S3 3: 直 線 に な る ん だか ら, 0 の角 じゃ な い の.. 7.
(9) . 148. ③. 考. 日本数学教育学会誌. 第 80 巻. 察. 第 9 号 (1998年). 活動が成立しつつあることを示 している.. ) 認め合うことから創造へ向かう 1. ) 発散と収束の場面の関連 づ け 4. 友 だちからわからないとの指摘を受け, 再度黒. 収束の場面においては, 数学的コミ ュ ニケーシ. 板で, より分かり易い説明をしようとした S2 6や,. ョ ン活動を通して友だちの考えを認めあう姿勢. 友だちの考えを認め, 理解しようと努めた結果, 自分の考えが前に述べられた友だちの考えと結び. が, 収束の場面の内に止まらず, 発散の場面と関. ついて再構成さ れたと思われる S39 の 発 言 等 は,. こ れは生徒が考えを発表 し易い発散 の場面 と,. 数学的コミ ュ ニケーショ ン活動が活発に行われて. 独立したこれらの場面を関連づける収束の場面の. いたことを示すものであると考えられる,. 繰り返 しが, 数学的コミ ュ ニケーシ ョ ン活動と関. そ して S3 o ・ に見 ら れ る よ う に, 生 徒 9 , S4 , S4 は, 生 徒 同 士 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 活 動 を 通 して. 係があるこ とを示 している. 同 じ課題を他のクラ. 連 づ け ら れ て い る (S3 ). 9 o . , S4 , S4. ス で行 っ た際, 生徒の考えを 1つ の 方向 に向け. 「負の角」 を考えてみようという発想に到達し, この考えを導入することにより生徒にとっ て新し. させること (収束的展開) を最優先して授業を展 開すると, 生徒の自由な発想は妨げられ, 活発な. い数学がつくりあげられていっ たと考えられる,. コミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 活 動 が行 わ れ な か っ た. こ れ. ) 調整者と しての教師の唖受割 2. らのことから, 発散と収束の繰り返 しを関連 づけ ることが, 数学的コミ ュ ニケーショ ン活動を活発. (3) で示 した授業と 同様に, 生徒は気 づ いた. ことを勝手に発言しているという場面 (発散的場. にする 1つの要因に成り得ると考え られる.. 面) も多く見られた, ここで重要なことは, 授業 における教師の ”役書r である と 考えられる,. 51 牛徒 の考えが示 し易い発問. 発散と収束の繰り返しとこれらを関連づける指. 直薩 (1995) はコミ ュ ニケーシ ョ ン活動 にお. 導においては, 教師の発問が重要な意味を持つこ ことが分かる. 筆者は別の研究で, 問題解決活動. け る 教 師 の 役 割 を 「陰 で 支 援 す る 調 整 者 ) 的 役 割 が 強 い」 と 述 べ て い る4 .. 様々な視点からの生徒の発言に対 して, これらを. を活発にする上で教師の発問が重要であることを } が 本節で示した授業では 「差異や類似 示 した8 ,. 関係づける支援, 指導が必要であろう,. を見つける」 と いっ た, 生徒にとっ て考 えが示し. (moderater). また少数意見や問題の解決に有効ではないと思. 易い発問 (T, ) が有効であっ た. . 61 牛徒 が観 占を変え易 い発問. われる意見を排除することなく授業を展開するこ とも, 数学的コミ ュニケーショ ン活動を活発にす る重要な視点であると考えられる.. 収束する場面を期待しての意図的な発問である T・ 4 で は, S3 ・ か ら S3 4 に 見 ら れる よ う に, こ れま. 3) 発散と“装束による高まり. での発散的場面が収束へと展開されている, 同様 な意図的な発問 である T, 7は, 発散 的場面 と 収束. 生徒の発言が, この授業の中で発散的 (他の発 言と 関連 づ けられていない状態) であるか, 収束. 的場面を関連づける役割を果たしている.. 的 (他の発言と関連づけられ, ある方向に考えが. さらに, 教師も生徒と同 じ次元に 下りていると 生徒 に意識させる発問 (T, ) や, 発 言 を 教師に 6. まとまりつつある状態) であるかに着目す れば, へ ・か ら S は 収 束 S, 9 か ら S2 9 は 発 散 的 で あ り, S3 。 3 4 か は ら 発 さ ら 的, そ して S3 S 散 的 に S3 6 3 7 8か ,. ではなく生徒 に向けさせる発問 (T, ), そ 2 o , T2. して少数意見を排除しない意図を持つ発問 ( T ) , 5. ら S4 ,は収束的という 形がで きあがっている,. 等も, 数学的コミ ュニケーショ ン活動の活発化に 重要な役割を果たしている といえよう,. これらはそれぞれ独立 しているものの, 収束的. 場面では, 自分の考えを友だちが納得できるよう. ・ . に表現 しようとする姿勢が見られ, また, たとえ 発散的場面であっ ても, 生徒は数学を使 っ て自分. ) 一斉授墓 における4・集団の活用 7 且. の考 えを発 表 している, こ の状態は, 独 立 した. 授業形態と して は, 筆者は一 斉授業が有効であ ) が 生徒からの反 応が途 絶えた ると考えている9 , 場合は途中で小集団でのコミ ュ ニケーショ ン活動. 個 々 の 場 面 に お い て, 数 学 的 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン. を行 わせ, 再 び一斉に戻す形も有効 であることが. 8.
(10) . 中学校の指導における数学的コミ ュニケーショ ン活動に関する実践的研究 ). 分 か っ た (S3 6 5 , S3. 8) 固定化された数学観の見直 し S4 2の よう に 「負の角」 の存在 を 認め よう と し. 149. ) をもとに これを 中学校の 査 (算 数.数学)」6 , 数学指導における数学的コミ ュ ニケーシ ョ ン活動 の考察へ と発展させ たも のである,. ない生徒の中には, これも数学なのか といっ た意 見を持つ者もいた, 固定化 された数学観は, 新 し. 注および, 引用・参考文献 1 ) 瀬沼花子. 「算数におけるコミュニケー ション能力 のとらえ方とその 具体化」 , 新 しい算数 研究 No ,. い数学をつくりあげる 上で妨 げとなり, コミ ュ ニ ケーショ ン活動の消極化につ ながることもあると 考 えられる, 日常の授業に おいて, “数学はでき あがっ たものではない” という意識を生徒に持た. 292, 東洋館. 1995, pp , .69‐71. ) 金本良通・大谷一義・福島正美・馬場敏男. 「数学 2 的コミ ゴニケーション能力の育成 (1)」. 日本数学. せる指導が必要であろう,. 教 育 学 会 誌, 第 76 巻 第 6 号 (43−3), 1994, pp. 18‐22.. 5 , まとめと今後の課題. 3 ) 熊谷光一, 「算数・数学の授業における 共有プロセ l スに関する考察」 ,51 , 日本数 , 数学教育学論究 vo. 本研究では, 数学的コミ ュ ニケーショ ン活動を. 学教育 学 会. 1989, pp . .3‐23. 「生徒同士で考え を 深め, 生徒にと っ て新 しい数. ) 江森英世. 「数学の学習場面におけるコミュニケ‐ 4 ション・プロセスの分析−参画者の自律的適応過程. 学がつくられていく活動」 と 定義 した. またペーパーによる調査からは, 生徒は多様な. と しての コミ ュ ニケー シ ョ ン−」, 第 25 回数学教育. 形式で考えを表現したり, 表現を工夫しようとす. 論 文発 表会論文集. 1992 , , pp ,19一24. なお, この研究は中学校生徒を対象に行われた. ) 古藤 怜. 「コミュニケーショ ンを重視 した算数教 5. るものの, 男女による違いが見られること, 全体. 的に数学を使った表現が苦手であり, 1人では独. 育」. 新 しい算 数 研 究 No .297, 東 洋 館, 1995.. 自の解釈や, 考察の甘さが見られる こと等が分か. pp,62冊65,. っ た,. さらに授業の観察からは, 生徒は自分の考えに. 6 ) 特別研究 「学校カリキュラムの改善に関する総合的 研究」『コミュニケーショ ン能力育成班』 (数学代. 固執して他の考えを受け入れようとしない傾向が. 表:瀬沼花子) 国立教育研究所, の一環として行わ. あり, これによっ て生徒の発言が発散的場面につ ながることが明らかになっ た.. れた. コミ ュ ニ ケー シ ョ ン能力 につい て 調 査するこ. とにより, 教育内容・方法の方策を提案し, 学習指 導要領の改善に役立つ資料を提供することが研究の. そして, これら の問題点 を踏まえ実 践した授業 から, 数学的コミ ュニケーシ ョ ン活動を活発にす るには ”発散と収束の繰り返 し” が有効であるこ. ) ①瀬沼花子, 「算数・数学の観点からみたコミュニ 7 ケーショ ン能力」 『国際化の進展に対応 したコミュ. とが分かっ た, またこれには, 生徒の考えが示し. ニケー ショ ン能力 の育成を目指 す, カリ キ ュ ラム の. 目 的である,. 開発研究・中学校調査報告書』 国立 教育研究所,. 易い発問や, 発散と収束との関連を考えての意図. 1997. pp.113‐128. ・. 的な発問等が重要な意味 を持つ ことが分かっ た,. ②久保良宏, 「コミュニケーション能力−数学系2 , 分析結果」『国際化の進展に対応したコミュニケ‐. 生徒 の数学への興味,関心 を高めるだけでなく,. 数学の知識や考え方を深め数学をつくりあげてい く数学的コミュニケーショ ン活動は, 中学校数学. ション能力の育成を目指す, カリキュラムの開発研 究・中学校調査報告書』 国立教育研究所. 1997 ,. 科の指導改善の新たな視点であると考えられる,. pp.132‐137.. ) 久保良宏・藤津由美子・三浮葉子, 「数学科の指導 8 における発問の工夫」 . 数学科研究集録. 東京私学. なお, 筆者の今後の課題 としては, 数学的表現 や論理的思考 と 数学的コミ ュ ニケーショ ン活動と. 教育研究所. 1995, pp ,49‐70,. の関係について考察する ことであると考える,. 9 ) 久保良宏. 「生徒と教師が一体となって数学の問題 を解決していく授業の工夫」 . 日本数学教育学会誌,. なお, 本研究は, 瀬沼花子先生 (国立教育研究. 第 73 巻 総会特集号, 1991 ,p ,309,. 所) の 「コミ ュ ニケーショ ン能力育成のための調. 9.
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