僻地校における小・中学校一貫教育への技術教材導入の一試み
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(2) No.52. 1998.3. 僻地校における小・中学校一貫教育への技術教材導入の一試み 北海道教育大学釧路校 長 滞. 徹. 白滝村立白滝小学校 芳 賀 重 紀. AnAttempttoIntroduceTeachingMaterialsofIndustrialArts intoBothElementaryandSecondarySchooIsofRuralArea TohruNAGASAWA(HokkaidoUniversityofEducation,KushiroCollege). SigenoriHAGA(SiratakiElementarySchool). 1.目. から育むべきだとして小・中・高での一貫した技術教育. 的. を提言した2)。. 海外での技術教育に関しては,近年小中一貴の方針で. 本研究では,小学生にも出来る技術教材を僻地の小学. 再編・統合し,男女共学を実施している。イギリスでは,. 校に導入し授業を行い,児童の反応や理解度,作品の完. 88年の教育改革法から小(6年)・中(5年)の一貫教. 成度などを考察し,小・中学校一貫教育の可能性を追求. 育を実施し,アメリカでは,小中高まで一貫した技術教. するものである。. 育を実施している。韓国でも,昨年から小中高一貫の技. 用いた教材としては,金属加工領域であるネームプ. 術教育が取り入れられているL2)。日本では,新産業の. レート作り5・6)と木材加工領域であるスライド式本立て. 創出が叫ばれているのにともない創造的人材や,モノづ. 作り7)であり,その結果について報告する。. くりのできる人材づくりが急がれている。技術教育の中. の男女共学については改善されたが3),小中校一貫教. 2.研究対象校. 育に関してはいまだに実施されていない現状である。ま. は1.6%とイギリスの10%など欧米諸国に比べ極端に少. 本研究対象校は,著者らの勤務先でもある白滝村立白 滝小学枚(全校生徒75名)で,対象学年は5年生と,繰. ない。家庭科は,小・中・高と普通教育として扱われて. り上がり年次の6年生で行い,男子10名女子2名の計12. いるのに対して,技術科は中学校にしかなく,しかも. 名である。. た,小・中学校の全授業時間数に占める技術教育の比率. 免許外教科担任で敢えている学校は1/3にものぼる。. 生徒達は素朴で,どの教科においても熱心に取り組む 姿勢が見られた。特に5年次でのネームプレート作りに. 小学校には中学校の技術科に相当する科目としては,. 図画工作がある。図画工作の指導書には,「表現及び鑑. おいては,自分の作品を丁寧に仕上げており,その時間. 賞の活動を通して,造形的な創造活動の基礎的な能力を 育てるとともに表現の喜びを味わわせ,豊かな情操を養. の目標に到達した児童は,クラスの仲間を手伝う姿が見. う」となっている4)。これは造形活動の美的感覚を養う. れ,スライド式本立て作りにおいては,学習意欲が大き. ことを目標としており,その上美術的要素が強く情操教. く仲間と協力し合いながら丁寧に作品を仕上げる姿が見. 育を育てる点では貢献していると思われるが,最近の生. られた。. られた。また6年次では何事にも活発な取り組みが見ら. 徒の傾向を見ると「ハンマーが正確に打てない」「鋸が. 授業は実習に重点をおいて行い,5時間でネームプ. 使えない」などモノ作りの基本が欠乏している。これは,. レートを仕上げる内容であり,21時間でスライド式本立. 中学校における技術科の時間の減少,家庭内での道具の. てを仕上げる内容である。. 扱いが少ないことが原因になっていると思われる。この. 様な事例を鑑み,全国の教育系大学の技術科担当教官で 作られた「技術教育推進会諌」は,創造的人材の育成に つながる“モノ作りのできる人材”育成を,小学校の頃. − 91−.
(3) 長澤 徹・芳賀 亜紀. 行い,金切りばさみにより各自切断する。. 3.製作工程・制作中の生徒の様子・生徒の感想. 3)鉄工やすりにより,プレートの角を取るため面取り および表面を紙やすりで磨く。. 3−ト1作品の製作工程. 4)ハンドドリルにより,プレートの上部に2mmの穴あ. 以下にネームプレートの製作工程を述べる。. けを行う。 5)仕上がったプレートに英字刻印を用い,各自の氏名. 1)まず黄銅(真鎗)板または銅板を,約20mmの幅に押 し切りにより切断する。これは,教師が前もって切断. や電話番号の文字打ちを行う。. する。. 今回用いた指導案の一例を図1に示す。. 2)20mm幅に切断された板を40∼50mの長さでけがきを. 【夏l エ 科(技術教材). 学習手旨尋事案. 日時・■平成7年10月17日. 生徒‥5年 男子10名女子2名 計12名 指尊者 芳賀 皇紀 1,単元名「ネームプレートを作ろう」. 2、単元と生徒 略 3,授業分析 1)、金属について‥・1時間. 2)、金属カロエ実習‥・4時間(ネームプレート作り)‥けがき、切断、面取り・‥1時間(本時) :研磨、穴あけ… …・2時間. :文字打ち… … …1時間 4,目標 金属加工を通してけがき、切断、面取りの作美が出来る。 5,本時の展開(略案). 段階. 生徒の行動・予想される解答 授業の流れ. 学習内容(教師の行動・言動) 留意点・評価. はじめ. 導. ・意見を板書. 全. する。. する。. 入. 一金属についての特徴を発表 ■■■r▲■r′■■lr′■■′■■′−′ 一′−′−′■■■′−′■■′.■■■′■■′一′一′. 、. 空. ・課題を把握. ′■■■■′−′■■l′′■■′■■′■■′−′。■■′■■■■′. する辛が出 5分. ・ネームプレートの構想を立 ・見本を見せ. 展. てさせ、けがかせる。. を立てけがく。 開. ■金切りばさ. み. 長方形のプレートを作る。 ・面取りを行わせる。. 3了分. ま. 全. ・本時の学習課題を確認する. ・本時の学習課題の確認させ ・本時の学習. る。. と. め. る。. おわり. ・次回の予告をする。 (研磨、穴あけ). 3分. 6,評価 金属加エを通してけがき、切断、面取りの作美が出来たか。 図1 指導案の一例. − 92 −. ・鉄エヤスリ. 確認 課埋が達成. 出来たか。.
(4) No.52. 僻地校における小・中学校−−−㍗一貫教育への技術教材導入の−一試み. 1998.3. った。. 3−ト2 制作中の様子. 上記の手順に従い,ネームプレートを製作した時の生. d)思うようにバリが取れなくていらいらしたけど,家. 徒たちの様子や道具の使い方を,図版1の写真にて説明. に帰って家族や友達にあげたらすごく喜んでくれて,. する。 図版1のA 黄銅板を生徒に見せたところ,初め生徒. たくさん作ったかいがありました。疑問に思ったのが,. 達は目を白黒させていたが,黄銅板の事を,「金みたい」. 開くのか。また,黄銅と鋼ではなぜ硬さに違いがある. とか「鏡のように光っている」というような感想を述べ. のかです。楽しく勉強できたのでよかったと思います。. どうしてハンドドリルを使うと硬い金属にすぐに穴が. e)とても楽しかったです。ただ,どうして黄銅と銅と. ていた。用いた黄銅板および銅板の厚さは,0.8∼1mm. では,硬さが違うのかなあと思いました。. である。. f)金属板は硬かった。バリを取るのに時間がかかった。. 図版1のB 前もって押し切りを使って20mm幅の短冊. うまくいったのでうれしかった。. 状に切った後,生徒が物差しを用い50mmの長さにけがい. g)お母さんや弟にやったら喜んでいた。名前だけじゃ. ている写真である。. 図版1のC 金切りばさみ使って,所定の長さに切断. なく電話番号のも作った。いい経験になったと思いま. している所である。最初は,金切りばさみの使い方がわ. す。. からず,刃の先で切断している生徒が多かった。てこの. h)金属でネームプレートが作れてすごいなあと思いま. 原理をまだ学習していない革もあり,はさみの切る位置. した。先生から「黄銅は,なかなかさびないよ」と言. や持つ位置が解らなくて苦労していたようである。. われてどうしてかなあと思いました。生年月日をいれ. 図版1のD これは,金切りばさみの使い方を指導し. てまた作ってみたいです。. i)最初はむりかなあと思ったけれどちゃんと作れた。. た後の写真である。支点の近くで材料を切っており,ま さみが重たいのか机の上に刃先を置いて,黄鋼板を切断. そんなに難しくなかった。家族のを作れてよかった。 見たことのない道具が2∼3個あった。今度は家族み. している。. んなで作りたい。金属に穴を開けるのが楽しかった。. たみんなで協力しながら切っている様子が見られる。は. もっといろいろな人に作ってあげたかった。. 図版1のE ハンドドリルで穴を開けている所であ. j)最初は難しいと思ったけれど教えられた通りにすれ. る。しかし,これではドリルと一緒にプレートが回って. ば,誰にでも出来ることだと思いました。今度は,も. しまい,うまくいかなかった生徒が多かった。. っと大きいのを作りたい。. 図版1のF 穴あけの際プレートが回らないようにす. k)生まれて初めて作ったけれどとても楽しかった。な. るため,簡単な治具を作った。この写真は,みんなで協. んで金属は硬いのだろう。. 力しあいながら,治具にプレートをはめてドリルで穴あ. けをしている所である。治具を作った結果,うまく穴を 開けることが出来た。. 3−2−1スライド武本立ての製作工程. 以下にスライド式本立ての製作工程を述べる。. 図版1のG 英字刻印で氏名などを打っている所であ. 1)まず廃材を,約10mmの厚さに小型丸ノコ盤を用いて. る。普通の状態で刻印を打つと,注意を払っても曲がっ. 切断する。これは,教師が前もって切断する。. てしまう事が多かった。それで横方向の文字を真っ直ぐ. 2)10mmの厚さに切断された板を,部品の長さに応じて. に打てるように,簡単な治具を作った結果,うまく打つ. けがきを行い,ノコギリにより各自切断する。. ことができた。この生徒は,刻印およびハンマーをほぼ. 3)木工やすりにより,板の角を取るため面取りおよび. 正確に使用している。. 表面を紙やすりで磨く。 4)きりで下穴を開け,木工用ボンドで接合する。 5)釘をハンマーで打ちつけながら,組み立てる。. 3−ト3 生徒の制作後の感想. ネームプレートの製作後の生徒達の感想を以下に列記. スライド式本立ての寸法および等角図を図2に示す。. する。 a)かっこいいものをいっぱい作りたかった。作るのは 難しかったけど楽しかったのでよかったです。紙やす. 3−2−2制作中の様子. 上記の手順に従い,スライド式本立てを製作したとき. りでこすった時にでる黒い物は何か知りたいです。. の生徒たちの様子や道具の使い方を図版2の写真にて説. b)金属を切った時になぜバリが出来るのか不思議に思. 明する。 図版2のA この写真は,子供の親から無償で提供さ. いました。. C)ネームプレートを作った時,銅に名前をつけるより. れた木材の廃材である。父母に負担をかけないように,. も黄銅に名前をつけた方が大変だったので不思議に思. − 93 −.
(5) 長澤. 徹・芳賀 重紀. しかったが,最後には出来るようにってきた。釘打ち は,簡単だった。なぜ木は臭いがするか不思議に思っ た。今は,本を入れて使っている。 b)思ったより難しかった。のこぎりびきが難しかった。 のこぎりの刃が2種類あって使い方によって切れ方が 違うのが疑問に思った。今度はイスを作ってみたい。 釘打ちが楽しかった。. C)のこぎりで木を切るのが難しかった。釘打ちは曲が ってしまったのが2本あったが友達が手伝ってくれた のでうれしかった。ヤスリがけは,一生懸命こすった らすごくきれいになってうれしかった。今度は,木で. 図2 スライド式本立て寸法及び等角図. イスやテーブルを作ってみたい。完成してよかった。 d)けがきはうまくできた。のこぎりびきは難しかった。. 廃材を利用した。しかし割れや節があり,材質はよくな. 釘打ちは,慎重にしなければならないので時間がかか. かった。また,厚さが23mmもあるのであらかじめ小型. った。きりを使っての穴あけは簡単だった。スライド. 丸ノコ盤(リョウビ製,使用丸ノコ160mm)で11mmに切っ. する中板はスムーズに動いてうれしかった。本立て作. て渡した。. りは,見たり考えたりするよりも手で作業をしたほう. 図版2のB これは,組立図をみながら材料にけがき. がじょうずになっていくと思いました。. をしている所である。6年生になってから立体を習うこ. e)のこぎりびきは,最初の方は曲がってしまったが,. ともあり組立図から縦,横,厚さを考えてのけがきは,. だんだん真っ直ぐに切ることが出来るようになってき. 苦労していたようである。. た。苦労したのは,切るときにでこぼこになってしま. 図版2のC ノコ引きをしている写真である。男子は. い,ヤスリがけが大変だったことです。木に1年で1. 野球をやっている子が多いのでバットを持つように手が. つ年輪がどうしてできるのか不思議に思った。今は,. 逆になっている。しかし,足でしっかり押さえながら切. 本立てを家で漫画の本を入れて使っている。. っている。最初は,けがきの線から曲がってしまう事が. f)木材を切るのは大変だった。初めは曲がってしまい. 多かったが,慣れてくると真っ直ぐに切ることが出来る. 上手くいかなかったが,慣れてくると,真っ直ぐ切れ. ようになった。. るようになってきた。ヤスリがけの時,こすっている. 図版2のD これは,きりで下穴を開けている写真で. とどんどん熱くなってきたので燃えるのではないかと. ある。最初は,きりの上部を手ではさんでいるが,後に. 思った。釘打ちは,最初曲がってしまったけど,少し. なってきりの下部まで手が降りている。誰に教えてもら. ずつ真っ直ぐに打てるようになってきた。今は,家で. った訳でもないのに全貞きりの正しい使い方をしてい. 漫画の本を入れて使っている。. g)のこぎりびきは難しかった。木材の筋に合わせて切. た。. 図版2のE スライドする中板に彫刻刀を使って模様. ると切りやすいことが解った。どうして木材に筋があ. を彫っている写真である。生徒たちは,中板に思い思い. るのか不思議に思った。釘打ちは完壁にできた。ヤス. のデザインを措き,丁寧に仕上げていた。. リをかけるのに時間がかかった。将来小さなテーブル. 図版2のF これは,側板を釘で取り付けているとこ. を作ってみたい。今,家で漫画を入れて使っている。. ろである。みんなで協力しあい組立作業を行っている。. また,木材を使った授業を受けてみたい。. 作業工程で一番苦労していたのが,スライドする中板を. h)のこぎりびきと釘打ちは,難しかった。他のきりで. スムーズに動かすことだった。可動部分をやすりで丹念. の穴あけとやすりがけは簡単だった。今度は木材でい. に削っていたようである。. す作ってみたい。完成してうれしかった。ノJ、学校に技. 図版2のG 最初に出来た子の表情である。満足げな. 術が入ってきたらみんなのためになると思います。本. 顔で写真に写っている。. 立ては,今漫画の本を入れて使っている。. i)図面を見ながら板に線を引くことは,時間がかかっ 3−2−3 生徒達の感想. たけど出来てうれしかった。板を切るのが大変だった。. スライド式本立て製作後の生徒達の感想を以下に列挙. 釘を打つのが難しかった。ヤスリがけは簡単だったけ. する。. ど,口の中に粉が入ってしまい気持ち悪かった。今,. a)本立て作りは楽しかった。最初,のこぎりびきが難. 本立ては弟にかしてあります。作っているとき弟は「早. − 94 −.
(6) No.52. 僻地校における小・中学校一貫教育への技術教材導入の一試み. 1998.3. ト作りをしてみたい」といった意見も聞かれた。. く作って」とせかしてきた。. j)木を切るときとても難しかった。ちょっと曲がって. 木材加工領域におけるスライド式本立て作りは,以前. しまった。釘も曲がって打ってしまうこともあった。. に網走第一中学校1学年で実践した内容であった。 小. しかし,ヤスリがけは楽だった。本立ては,家で教科. 学6年生と中学1年生は,学年で1つしか違いがなく,. 書やノート入れに使っている。将来は,自分でテーブ. 作業工程においては,ほとんど年齢差による遠いは見ら. ルや棚を作ってみたい。. れなかった。しかしながら,組立図からけがきを行うこ. k)作る前は,「早くできないかな」と楽しみだった。. とは難しかったようである。. ノコ引きに関しては,最初ほ,曲がってしまうことも. 木を切るのにカがいることが解った。切れたときはう. れしかった。釘打ちは簡単だった。今は,ぬいぐるみ. あったが慣れると真っ直ぐに切断出来るようになった。. をのせるような小さいいすを作りたいです。時間をか. ノコ引きをする手が左右連なのは,野球でバットを持つ. ければ小学生でもできると思った。. くせがでているためと考えられる。. 1)のこぎりで木を切るときになかなかスムーズにいか. 穴あけできりを用いたが最初からみんな上手に使って. いた。きりの上部から下部の方へ手を移動させながら穴. なかった。釘打ちで最初は,自分の手をたたいたり釘. を曲がらせたりしたけど最後の方には,きちんと釘を. を開けていたのには驚かされた。さらに紙やすりや木工. 打つことができた。今後は,いすやテーブルを作って. やすりで,時間を忘れて表面を丁寧に磨いていた。 釘打ちに関しては,最初はくぎが曲がってしまうこと. みたいです。本立ては,家で辞典やCDを入れている。. もあったが慣れてくると上手に行っていた。また,釘打. スライド式なのでよかったです。. ちが終わった後,ハンマーの丸い部分で打っている子も. いた。以前にお父さんに聞いていたようである。. 4.考 察. スライドする中板を本体に入れるときに若干苦労して. いたようであるが,全員スライド式本立てを完成するこ. ネームプレート作りの間,生徒の様子を見ていると,. とが出来き,みんな喜んで家に持ち帰った。. けがき作業は皆うまくいったようである。次に,金切り. 今回,中学校の技術教材を小学校の授業に導入して,. ばさみによる切断に関しては,金切りばさみを始めて使 う生徒が多かった。写真でも見られるように黄鋼板を切. 授業を行った。/ト学校高学年であれば,道具の使い方な. る位置や,はさみの持ち方が出来ていない。そこで,力. どを正確に教えることで充分作業ができることがわかっ. 点はなるべく離れて持つ事と,黄銅板は支点の近くで切 るという金切りばさみの使用法を教えると,ほとんどの. た。また,作業を通しての疑問点や自然現象に関する疑 問点が多く出てきており,自然現象の理解につながる芽. 生徒が利にかなった切断を行った。ハンドドリルを用い. 生えと思われる。これらの疑問点をうやむやにすること. た穴あけも,最初は黄鋼板が一緒に回転して苦労してい. なく指導することが重要である。この作業で道具の正し. たようである。簡単な治具を作る事で正確な穴あけ作業 が出来た。英字刻印での文字打ち作業では,ハンマーの. い使い方の習得や,モノ作りへの興味等の喚起を促す観 点から,小学枚に技術教材を導入し教育することが,望. 持ち方が出来ていない生徒が多かった。ハンマーの使い. ましいものと思われる。. 最後に,小学校に技術教材を導入する場合のポイント. 方の指導を行うと刻印がうまく打てるようになった。以. をあげると,. 上のように道具などの使用の機会が少なくなった生徒達 に,道具の合理的な使い方を指導するとたとえ小学生で. 1.作ったものに対して興味関心,愛着が持てること。. も上手に使えるようになる。 さらに,作品の完成後生徒達に感想を聞くと,「どう. 2.作品及び作業の安全性が確保されること。. して金属は硬いのだろう」,「なぜ黄銅板と鋼板では硬さ. の3点である。. 3.製作時間が短いこと。. が違うのだろう」,「穴をあけるとき,どうして熱くなる のだろう」,「やすりをかけた後の黒いものはなにか知り. 5.結. たい」などの意見があった。この様な素朴な意見は,金. 論. 小・中学校一貫教育導入の可能性を探るため,小学生. 属の特性や物理現象を理解する上での芽生えと思われる. ので,これらの意見を無視しないように教育指導する事. にも出来る技術教材を小学校の授業に導入し,実践的研. が必要である。. 究を行った。その中で,自分の作った作品に愛着を持た. また,休み時間などに他の教室から生徒達が入ってき. せ,将来も金属について興味関心を抱かせる事をねらい. て,作っている様子を羨望のまなざしで見ていた。隣の. として,5年次の2学期5時間を使いネームプレート作. クラスの先生も関心を持ったようで「今度,ネームプレー. りを,また木材について興味関心を抱かせる事をねらい. − 95 −.
(7) 長澤 徹・芳賀 重紀. として,6年次では図工の21時間を使いスライド式本. 立て作りを行った。今回の研究結果を要約すると以下の ようになる。 (1)簡単な道具,例えばハンドドリルや押し切り,金切 りばさみ,鉄工やすり,ノコギリなどを学校で用意す. るとか,備え付けにする事により,小学校高学年であ れば今回導入した金属加工領域におけるネームプレー ト作りおよび木材加工領域におけるスライド式本立て. 作りは,十分製作が可能である。 (2)以前にローマ字を習っていたので,刻印で名前を打. つことに対しては抵抗なく受け入れられた。 (3)自分で苦労して作った作品は,単なるキットを組み 立てて作った物と較べて喜びが得られ,より愛着が沸 く。それ故,教材は完成した後も家庭で使用できる物 を考える必要がある。 (4)「なぜ黄鋼板と銅板では硬さが違うのだろう」,「穴 をあけるとき,どうして熱くなるのだろう」,「木はど うして臭いがあるのか」,「木の年輪はどうして出来る のか」などの素朴な意見は,材料の特性や自然現象を 理解する上での芽生えと思われるので,これらの意見 を無視しないように教育指導する事が必要である。 (5)今回は小学生高学年の生徒でも制作できる技術教材. を導入したが,今後は小学生に適した教材を考えてい く必要がある。またクラスの人数が少ない僻地校で実. 施して十分な成果を上げる事が出来たが,大規模校に おいて実施した場合の様々な問題点については,今後 の検討課題である。. 参考文献. 1)技術教育推進会議編,「21世紀における接続可能な発 展のために」,(1995−3).. 2)日本工業新聞,1995年9月13日版. 3)中学校指導書,「技術・家庭編」,文部省,(平成7年3 月),pp.32−39.. 4)小学校指導書,「図画工作編」,文部省,pP.4−119. 5)芳賀重紀ほか,第9回 日本産業技術教育学会 北 海道支部大会 講演要旨集(1995−11),pp.4. 6)長滞 徹ほか,「新家庭機械・電気通論」,日刊工業 新聞社,(1984),pp.13−33.. 7)芳賀重紀ほか,第10回 日本産業技術教育学会 北 海道支部大会 講演要旨集(1996−11),pp.4.. − 96 −.
(8) No.52. 僻地校における小・中学校−〉…==一貫教育への技術教材導入の−一試み. A)素材の黄鋼板 B)けがき作業 C)切断作業. D)切り方指導後の切断 E)穴あけ作業. F)治具を用いた穴あけ作業 G)刻印による文字打ち作業. 図版1 ネームプレート製作. − 97 −. 1998.3.
(9) 長揮 徹・芳賀 重紀. A)提供された廃材 B)けがき作業 C)ノコ引き作業. D)きりでの穴あけ作業. E)彫刻刀による作業 F)釘打ち作業. G)完成したスライド式本立て. 図版2 スライド式本立て製作. ー 98 −.
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