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保育器収容となった新生児の出生後早期の体重別器内温度設定基準の評価

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Academic year: 2021

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6 仙台医療センター医学雑誌 Vol. 10, 2020 新生児体重別の保育器内温度設定基準の評価 Ⅰ.はじめに 出生後早期の新生児は胎外環境に適応する時期で あり、この適応がスムーズに行われるよう全身管理 をしていく必要がある。新生児は成人に比較し体表 面積がその体積に比べ3 倍大きいことが言われて いる。体温管理は熱喪失を予防することが重要であ るが、新生児は体温調整可能温度域が狭いため高体 温になりやすく、原因として不適切な環境温度によ る医原性によるものも多いとされる。高体温に陥る と顔面紅潮・多汗・多呼吸・頻脈等の症状がみられ、 さらに高度になると脱水が起こり代謝性アシドーシ スをきたし、心不全・けいれんなどで死の転帰をと る症例もある。 新生児を至適環境温度におく必要があるが、出生 体重や日齢によって異なるため、当院では入院時体 重別器内温度設定基準(以下、温度設定基準とす る)を設けている。しかし、平成29 年度の研究か ら対象児の9 割が高体温を呈していることが分かっ た1)。生後5 ~ 10 時間に高体温となった群では生 後1 時間以内に器内温度を上昇させていることが 多く、体温安定までに入院時の温度設定より平均 1.5 ~ 3.3℃下げる必要があった。しかし、器内温 度調整は30分~1時間毎に0.2~1℃間で行うため、 体温が安定するまでの器内温度になるまで時間を要 する。このため高体温を呈すると考えられた。その 結果入院時の温度設定を下げる必要性が示唆され、 平均-1℃とした新温度設定基準を導入した。 そこで、新温度設定基準、旧温度設定基準による 新生児の体温変化、看護師の体温管理方法に関して 新基準の有用性について検討した。 用語の定義  出生後早期:本研究では生後 24 時間とした 正常体温:36.5℃以上 37.6℃未満 低体温:36.5℃未満 高体温:37.6℃以上 初期ケア終了:初回レントゲン撮影終了時とした

原著論文

保育器収容となった新生児の出生後早期の

体重別器内温度設定基準の評価

菊池美穂、西山梢、川上愛、佐藤秀子 母子医療センター 抄録  出生後早期の新生児は胎外環境に適応する時期であり、この適応がスムーズに行われるよう全身管理をし ていく必要がある。そのなかで熱喪失を予防する体温管理が重要である。体温管理における、新生児の特徴 として成人に比較し体表面積がその体積に比べ3 倍と大きいため熱喪失しやすいことが分かっている。  当院での出生後早期の体温管理は、体重別器内温度設定基準に基づき入院時の器内温度を設定している。 しかし、平成29 年度研究結果から対象児の 9 割が高体温を呈していることが分かり、入院時の器内温度設定 規準が適していないことが考えられた。そこで、入院時の体重別器内温度設定基準を見直し、新生児の体温 変化について評価し、新たな基準の有用性について検討したため報告する。 キーワード:出生後早期、保育器収容、体温管理

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仙台医療センター医学雑誌 Vol. 10, 2020 体温安定:4 時間以上体温が正常範囲内で経過した 場合とした Ⅱ.研究目的 新、旧温度設定基準による新生児の体温変化、看 護師の体温管理方法に関する比較検討を行い、新温 度設定基準の有用性を明らかにする。 Ⅲ.研究方法 1.研究の種類:量的研究・後方視的観察研究 2. 研究対象:出生直後より保育器収容となった入 院児 3.研究期間:平成 29 年 11 月~平成 30 年 11 月 4. データの収集方法 平成28 年 7 月から平成 29 年 3 月まで旧温度設 定基準で管理を行った入院児をA群、平成29 年 11 月から平成30 年 11 月まで新温度設定基準で管理 を行った入院児をB群に分け電子カルテよりデータ 収集した。新温度設定基準を表1 に示す。 1)対象特性 在胎週数、出生体重、分娩様式、アプガールスコ ア1 分後・5 分後、入室までの所要時間と移動手段 (搬送用クベース・抱っこ)、保育器収容時の設定温 度・設定湿度、入院時体温、入室から初期ケア終了 (レントゲン撮影終了時)までの所要時間、生後24 時間の人工呼吸器装着の有無 2)生後 24 時間までの体温変化  測定時間が30 分以降の体温は、次の時間の体温 とした1 時間のうちに複数回体温測定している場 合は、平均値とした。 3) 生後 24 時間までの設定器内温度変化と実測器 内温度の変化 4) 生後 24 時間までの設定器内湿度変化と実測器 内湿度の変化 5) 生後 24 時間までの看護師の器内温度調節方法 (回数、調節温度) 5.データの分析方法  1) カルテから得られたA群とB群のデータを比較 した。 2) 体 温 は 腋 窩 温 と し、 正 常 体 温:36.5 ℃ 以 上 37.6 ℃ 未 満、 低 体 温:36.5 ℃ 未 満、 高 体 温: 37.6℃以上、体温安定:4 時間以上体温が正常 範囲内で経過した場合とした。新生児は体温調 節機能が未熟であり、覚醒度(State)による体 温変動も大きいため、生後24 時間までの体温 測定時の覚醒度を収集しState Ⅴ以上は除外し た。 3) 生後 24 時間までの体温変化の平均値と標準偏 差を求めエラーバーで示した。 4) Shupiro-wilk 検定(SPSS)を用いて正規分布 か否かを確認後、正規分布データは対応のない t 検定もしくは X2検定、正規分布ではないデー タはマン・ホイットニーのU 検定を用いた。有 意水準はp < 0.05 とした。 5) 体温が安定したときの器内温度と体重・在胎週 数は単回帰分析を行った。 6) 生後 24 時間までの看護師の体温測定時の器内 温度調節方法(24 時間以内の体温測定回数、器 内温度調節回数、器内温度調節幅、体温別器内 温度下げ幅、生後時間別器内温度下げ幅)を記 述統計にて分析した。 Ⅳ.倫理的配慮 対象児のデータ収集は電子カルテを用いて行い、 全て個人が特定できないようプライバシーを保護し た。得られたデータは本研究以外には使用しないこ ととし、倫理審査委員会の承認を得た。 Ⅱ . 研 究 目 的 新 、 旧 温 度 設 定 基 準 に よ る 新 生 児 の 体 温 変 化 、 看 護 師 の 体 温 管 理 方 法 に 関 す る 比 較 検 討 を 行 い 、 新 温 度 設 定 基 準 の 有 用 性 を 明 ら か に す る 。 Ⅲ . 研 究 方 法 1 . 研 究 の 種 類 : 量 的 研 究 ・ 後 方 視 的 観 察 研 究 2 . 研 究 対 象 : 出 生 直 後 よ り 保 育 器 収 容 と な っ た 入 院 児 3 . 研 究 期 間 : 平 成 2 9 年 1 1 月 ~ 平 成 3 0 年 1 1 月 4 . デ ー タ の 収 集 方 法 平 成 2 8 年 7 月 か ら 平 成 2 9 年 3 月 ま で 旧 温 度 設 定 基 準 で 管 理 を 行 っ た 入 院 児 を A 群 、 平 成 2 9 年 1 1 月 か ら 平 成 3 0 年 1 1 月 ま で 新 温 度 設 定 基 準 で 管 理 を 行 っ た 入 院 児 を B 群 に 分 け 電 子 カ ル テ よ り デ ー タ 収 集 し た 。 新 温 度 設 定 基 準 を 表 1 に 示 す 。 表 1 新 温 度 設 定 基 準 出 生 体 重( g ) 器 内 温 度 ( ℃ ) 器 内 湿 度 ( % ) ~ 1 0 0 0 g 3 4 ~ 3 5 ℃ 6 0 ~ 7 0 % 1 0 0 0 ~ 1 4 9 9 g 3 2 ~ 3 3 ℃ 5 5 ~ 6 0 % 1 5 0 0 ~ 1 9 9 9 g 3 1 ~ 3 2 ℃ 5 5 ~ 6 0 % 2 0 0 0 ~ 2 4 9 9 g 3 1 ~ 3 2 ℃ 5 0 ~ 5 5 % 2 5 0 0 ~ 2 9 9 9 g 3 0 ~ 3 1 ℃ 5 0 % 3 0 0 0 g ~ 3 0 ~ 3 1 ℃ 5 0 % 1 ) 対 象 特 性 在 胎 週 数 、 出 生 体 重 、 分 娩 様 式 、 ア プ ガ ー ル ス コ ア 1 分 後 ・ 5 分 後 、 入 室 ま で の 所 要 時 間 と 移 動 手 段( 搬 送 用 ク ベ ー ス・抱 っ こ )、保 育 器 収 容 時 の 設 定 温 度 ・ 設 定 湿 度 、 入 院 時 体 温 、 入 室 か ら 初 期 ケ ア 終 了 ( レ ン ト ゲ ン 撮 影 終 了 時 ) ま で の 所 要 時 間 、 生 後 2 4 時 間 の 人 工 呼 吸 器 装 着 の 有 無 2 ) 生 後 2 4 時 間 ま で の 体 温 変 化 測 定 時 間 が 3 0 分 以 降 の 体 温 は 、次 の 時 間 の 体 温 と し た 1 時 間 の う ち に 複 数 回 体 温 測 定 し て い る 場 合 は 、 平 均 値 と し た 。 表1 新温度設定基準 新生児体重別の保育器内温度設定基準の評価

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8 仙台医療センター医学雑誌 Vol. 10, 2020 Ⅴ.結果 1.対象特性(表 2) A群47 名、B群 46 名であった。B群の 5 分後 アプガールスコアは有意に低く、入室までの所要 時 間 は 有 意 に 長 く、 人 工 呼 吸 器 装 着 が 有 意 に 多 かった。5 分後アプガールスコア 5 ~ 7 点の軽度仮 死は、A群0 名、B群 8 名であった。入室までの 所要時間については入院時体温の差がないことから 分析の対象とした。 2.生後 24 時間までの体温経過 1)入院時体温について B群の入院時平均体温は37.0 ± 0.44℃であった。 高体温を示していたのは5 名(10.9%)で、低体温 は3 名(6.5%)であった。背景として入室までの 所要時間や移動方法について差は見られなかった。 また、入院時体温においてA群との差は見られな かった。 2)高体温について B群の生後24 時間までの体温は、生後 1 時間で 最低値を示し、その後は平均37.0 ± 0.1℃で経過 し た( 図1)。 最 高 値 は 生 後 16 時 間 で 平 均 体 温 37.2℃であった。24 時間で高体温を呈した児は 18 名(39%)、平均持続時間は 2.4 ± 2.4 時間、最長 持続時間は9 時間であった。 また、2 群の生後 24 時間までの平均体温の比較 を示した(図2)。A群では生後 5 ~ 10 時間の平均 体温が37.5 ± 0.04℃と高体温を示したが、B群は 37.1 ± 0.03℃と高体温を示すことはなかった。A 群の高体温は44 名(91.4%)、B群の高体温は 18 名(39%)であった。13 名(28.2%)が体温安定後、 生後6 ~ 17 時間に高体温を呈した。 3)低体温について B群の低体温は9 名(20%)で、生後 1 時間が 6 名であった。平均体温は36.4℃(36.3 ~ 36.5℃) で出生直後より最大0.6℃低下した(図 3)。低体温 を呈した3 名の器内湿度が 37 ~ 48%と入院時器内 湿度設定より低く、平均器内湿度と比較しても入室 時、生後1 時間共に設定基準より低かった(図 4)。 低体温事例は持続時間1.4 ± 0.4 時間で正常体温に 復温した。 く 、 入 室 ま で の 所 要 時 間 は 有 意 に 長 く 、 人 工 呼 吸 器 装 着 が 有 意 に 多 か っ た 。 5 分 後 ア プ ガ ー ル ス コ ア 5 ~ 7 点 の 軽 度 仮 死 は 、A 群 0 名 、B 群 8 名 で あ っ た 。入 室 ま で の 所 要 時 間 に つ い て は 入 院 時 体 温 の 差 が な い こ と か ら 分 析 の 対 象 と し た 。 表 2 対 象 特 性 統計 p値 Mann-Whitneyの U検定 0.959 t検定 0.19 帝王切開 経膣分娩 Mann-Whitneyの U検定 0.698 Mann-Whitneyの U検定 0.043 Mann-Whitneyの U検定 0 Mann-Whitneyの U検定 0.261 入院時体温 t検定 0.195 無 8±0.7 カイ2乗検定 0.286 5(10.4%) 平均 標準偏差 7±1 18±7.3 1938±356 (1325~2818) 在胎週数(週) 最小~最大 33±1.8 (30週3日~38週6日) Apgar score 1分後(点) 9±0.4 37.0±0.44 75±20.9 背景 Apgar score 5分後(点) 13±3.5 出生体重(g) (最小~最大) 初期ケア終了までの時間 分娩様式(件) 36.9±0.39 入室までの所要時間(分) 96±57.8 B群(n=46) A群(n=47) 平均 標準偏差 2058±515 (1214~3529) 34±1.8 (30週3日~40週3日 8±0.8 42(89.4%) 5(10.6%) 41(85.4%) 12(25.5%) 23(50%) カイ2乗検定 0 人工呼吸器の有無 35(74.5%) 23(50%) 有 2 . 生 後 2 4 時 間 ま で の 体 温 経 過 1 ) 入 院 時 体 温 に つ い て B 群 の 入 院 時 平 均 体 温 は 3 7 . 0 ± 0 . 4 4 ℃ で あ っ た 。 高 体 温 を 示 し て い た の は 5 名 ( 1 0 . 9 % ) で 、 低 体 温 は 3 名 ( 6 . 5 % ) で あ っ た 。 背 景 と し て 入 室 ま で の 所 要 時 間 や 移 動 方 法 に つ い て 差 は 見 ら れ な か っ た 。 ま た 、 入 院 時 体 温 に お い て A 群 と の 差 は 見 ら れ な か っ た 。 2 ) 高 体 温 に つ い て B 群 の 生 後 2 4 時 間 ま で の 体 温 は 、生 後 1 時 間 で 最 低 値 を 示 し 、そ の 後 は 平 均 表2 対象特性 3 7 . 0 ± 0 . 1 ℃ で 経 過 し た( 図 1 )。最 高 値 は 生 後 1 6 時 間 で 平 均 体 温 3 7 . 2 ℃ で あ っ た 。 2 4 時 間 で 高 体 温 を 呈 し た 児 は 1 8 名 ( 3 9 % )、 平 均 持 続 時 間 は 2 . 4 ± 2 . 4 時 間 、 最 長 持 続 時 間 は 9 時 間 で あ っ た 。 ま た 、2 群 の 生 後 2 4 時 間 ま で の 平 均 体 温 の 比 較 を 示 し た( 図 2 )。A 群 で は 生 後 5 ~ 1 0 時 間 の 平 均 体 温 が 3 7 . 5 ± 0 . 0 4 ℃ と 高 体 温 を 示 し た が 、 B 群 は 3 7 . 1 ± 0 . 0 3 ℃ と 高 体 温 を 示 す こ と は な か っ た 。 A 群 の 高 体 温 は 4 4 名 ( 9 1 . 4 % )、 B 群 の 高 体 温 は 1 8 名 ( 3 9 % ) で あ っ た 。 1 3 名 ( 2 8 . 2 % ) が 体 温 安 定 後 、 生 後 6 ~ 1 7 時 間 に 高 体 温 を 呈 し た 。 図 1 B 群 に お け る 2 4 時 間 平 均 体 温 経 過 図2 生後24時間平均体温の比較 3 7 . 0 ± 0 . 1 ℃ で 経 過 し た( 図 1 )。最 高 値 は 生 後 1 6 時 間 で 平 均 体 温 3 7 . 2 ℃ で あ っ た 。 2 4 時 間 で 高 体 温 を 呈 し た 児 は 1 8 名 ( 3 9 % )、 平 均 持 続 時 間 は 2 . 4 ± 2 . 4 時 間 、 最 長 持 続 時 間 は 9 時 間 で あ っ た 。 ま た 、2 群 の 生 後 2 4 時 間 ま で の 平 均 体 温 の 比 較 を 示 し た( 図 2 )。A 群 で は 生 後 5 ~ 1 0 時 間 の 平 均 体 温 が 3 7 . 5 ± 0 . 0 4 ℃ と 高 体 温 を 示 し た が 、 B 群 は 3 7 . 1 ± 0 . 0 3 ℃ と 高 体 温 を 示 す こ と は な か っ た 。 A 群 の 高 体 温 は 4 4 名 ( 9 1 . 4 % )、 B 群 の 高 体 温 は 1 8 名 ( 3 9 % ) で あ っ た 。 1 3 名 ( 2 8 . 2 % ) が 体 温 安 定 後 、 生 後 6 ~ 1 7 時 間 に 高 体 温 を 呈 し た 。 図 1 B 群 に お け る 2 4 時 間 平 均 体 温 経 過 図1 B群における24時間平均体温経過 新生児体重別の保育器内温度設定基準の評価

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9 仙台医療センター医学雑誌 Vol. 10, 2020 3.保育器収容時と体温安定時の器内温度の比較 体重別入院時平均器内温度から体温安定までに要 した平均器内温度の差は-0.6 ~ 0.1℃であった。出 生体重3000g 以上の対象児はいなかった。(表 3) 4.看護師の体温管理 1) 生後 24 時間の体温測定と器内温度調整(表 4)  体温測定回数はA群11.5±1.7回、B群14.8±2.3 回でB群が有意に多かった。新温度設定基準では体 温測定を保育器収容時から生後8 時間まで 1 時間 毎とした。最大体温測定間隔はA群で6 時間であっ たのに対し、B群では4 時間であった。器内温度 調整回数はA群5.7 ± 1.8 回、B群 5.1 ± 2.2 回で 有意な差はなかった。 器内温度上げ幅はA群では0.5 ~ 1.3℃、B群で は0.2 ~ 0.5℃であった。また器内温度下げ幅はA 群0.2 ~ 2℃、B群 0.1 ~ 1℃で器内温度調整を行っ ていた。 2)2 群の平均器内温度調整幅の比較(図 5) 生 後24 時 間 の 器 内 温 度 調 整 幅 は A 群 -0.4 ± 0.2℃、B群 -0.1 ± 0.1℃であった。生後 6 時間か ら生後10 時間で器内温度調整幅に差がみられ、こ れはA群において平均体温が高体温へ移行した時間 であった。体温が最低値となる生後1 時間の器内 温度調整幅の比較ではA群0.1 ± 1.4℃、B群 0 ± 0.2℃とB群で調整幅が小さかった。 5.体温安定に要した時間(図 6) B群で体温安定に要する時間は最小で出生直後、 最大で生後9 時間であった。A群は 13.9 ± 4.94 時 45.0 50.0 55.0 60.0 入室時 生後1時間 生後2時間 生後3時間 平 均 器 内 湿 度 ( % ) 全体 低体温 図 4 B 群 に お け る 低 体 温 事 例 の 生 後 3 時 間 ま で の 器 内 湿 度 3 . 保 育 器 収 容 時 と 体 温 安 定 時 の 器 内 温 度 の 比 較 体 重 別 入 院 時 平 均 器 内 温 度 か ら 体 温 安 定 ま で に 要 し た 平 均 器 内 温 度 の 差 は - 0 . 6 ~ 0 . 1 ℃ で あ っ た 。 出 生 体 重 3 0 0 0 g 以 上 の 対 象 児 は い な か っ た 。( 表 3 ) 表 3 入 院 時 と 体 温 安 定 時 の 器 内 温 度 の 差 出 生 体 重 ( g ) 入 院 時 器 内 温 度 ( ℃ ) ① 入 院 時 平 均 器 内 温 度 ( ℃ ) ② 安 定 時 平 均 器 内 温 度 ( ℃ ) 器 内 温 度 差 ① - ② ( ℃ ) 人 数 1 0 0 0 ~ 1 4 9 9 3 2 ~ 3 3 3 2 . 6 3 2 . 6 0 . 0 4 1 5 0 0 ~ 1 9 9 9 3 1 ~ 3 2 3 2 . 0 3 1 . 4 - 0 . 6 2 2 2 0 0 0 ~ 2 4 9 9 3 1 ~ 3 2 3 1 . 8 3 1 . 4 - 0 . 4 1 7 2 5 0 0 ~ 2 9 9 9 3 0 ~ 3 1 3 1 . 2 3 1 . 3 0 . 1 3 3 0 0 0 ~ 3 0 ~ 3 1 0 表3 入院時と体温安定時の器内温度の差 4 . 看 護 師 の 体 温 管 理 1 ) 生 後 2 4 時 間 の 体 温 測 定 と 器 内 温 度 調 整 ( 表 4 ) 体 温 測 定 回 数 は A 群 1 1 . 5 ± 1 . 7 回 、 B 群 1 4 . 8 ± 2 . 3 回 で B 群 が 有 意 に 多 か っ た 。 新 温 度 設 定 基 準 で は 体 温 測 定 を 保 育 器 収 容 時 か ら 生 後 8 時 間 ま で 1 時 間 毎 と し た 。 最 大 体 温 測 定 間 隔 は A 群 で 6 時 間 で あ っ た の に 対 し 、 B 群 で は 4 時 間 で あ っ た 。 器 内 温 度 調 整 回 数 は A 群 5 . 7 ± 1 . 8 回 、 B 群 5 . 1 ± 2 . 2 回 で 有 意 な 差 は な か っ た 。 器 内 温 度 上 げ 幅 は A 群 で は 0 . 5 ~ 1 . 3 ℃ 、B 群 で は 0 . 2 ~ 0 . 5 ℃ で あ っ た 。ま た 器 内 温 度 下 げ 幅 は A 群 0 . 2 ~ 2 ℃ 、 B 群 0 . 1 ~ 1 ℃ で 器 内 温 度 調 整 を 行 っ て い た 。 表 4 2 4 時 間 の 看 護 師 の 体 温 管 理 の 比 較 体温管理   最少 最大 平均  統計  P値 A群 9 16 11.5±1.7 B群 11 20 14.8±2.3 A群 1 6 3.5 B群 1 4 2.5 A群 2 9 5.7±1.8 B群 2 10 5.1±2.2 A群 0.2 2 -0.4±0.2 B群 0.1 1 -0.1±0.1 A群 0.5 1.3 B群 0.2 0.5 A群 0.2 2 B群 0.1 0 器内温度調整幅(℃) 器内温度上げ幅(℃) 器内温度下げ幅(℃) Mann-Whineyの U検定 0 Mann-Whineyの U検定 0.055 体温測定回数(回) 体温測定間隔(時間) 器内温度調整回数(回) 2 ) 2 群 の 平 均 器 内 温 度 調 整 幅 の 比 較 ( 図 5 ) 生 後 2 4 時 間 の 器 内 温 度 調 整 幅 は A 群 - 0 . 4 ± 0 . 2 ℃ 、B 群 - 0 . 1 ± 0 . 1 ℃ で あ っ た 。 生 後 6 時 間 か ら 生 後 1 0 時 間 で 器 内 温 度 調 整 幅 に 差 が み ら れ 、こ れ は A 群 に お い て 平 均 体 温 が 高 体 温 へ 移 行 し た 時 間 で あ っ た 。 体 温 が 最 低 値 と な る 生 後 1 時 間 の 器 内 温 度 調 整 幅 の 比 較 で は A 群 0 . 1 ± 1 . 4 ℃ 、B 群 0 ± 0 . 2 ℃ と B 群 で 調 整 幅 が 小 さ か っ た 。 表4 24時間の看護師の体温管理の比較 図 5 生 後 1 0 時 間 ま で の 平 均 器 内 温 度 調 整 幅 の 比 較 5 . 体 温 安 定 に 要 し た 時 間 ( 図 6 ) B 群 で 体 温 安 定 に 要 す る 時 間 は 最 小 で 出 生 直 後 、最 大 で 生 後 9 時 間 で あ っ た 。 A 群 は 1 3 . 9 ± 4 . 9 4 時 間 、B 群 は 1 . 0 ± 1 . 9 7 時 間 と 体 温 安 定 ま で の 時 間 が 短 縮 し た 。 ま た 、 B 群 で は 4 3 名 ( 9 3 % ) が 生 後 3 時 間 ま で に 体 温 が 安 定 し 、 生 後 2 4 時 間 以 内 に 全 例 の 体 温 が 安 定 し た 。 A 群 の 1 1 % は 生 後 2 4 時 間 経 過 し て も 体 温 が 安 定 し な か っ た 。 < 0 . 0 5 * * * * * 図5 生後10時間までの平均器内温度調整幅の比較 新生児体重別の保育器内温度設定基準の評価 図 2 生 後 2 4 時 間 平 均 体 温 の 比 較 3 ) 低 体 温 に つ い て B 群 の 低 体 温 は 9 名( 2 0 % )で 、生 後 1 時 間 が 6 名 で あ っ た 。平 均 体 温 は 3 6 . 4 ℃ ( 3 6 . 3 ~ 3 6 . 5 ℃ ) で 出 生 直 後 よ り 最 大 0 . 6 ℃ 低 下 し た ( 図 3 )。 低 体 温 を 呈 し た 3 名 の 器 内 湿 度 が 3 7 ~ 4 8 % と 入 院 時 器 内 湿 度 設 定 よ り 低 く 、 平 均 器 内 湿 度 と 比 較 し て も 入 室 時 、 生 後 1 時 間 共 に 設 定 基 準 よ り 低 か っ た ( 図 4 )。 低 体 温 事 例 は 持 続 時 間 1 . 4 ± 0 . 4 時 間 で 正 常 体 温 に 復 温 し た 。 36.3 36.4 36.5 36.6 36.7 36.8 36.9 37.0 37.1 入室時 生後1時間 生後2時間 生後3時間 平 均 体 温 ( ℃ ) 24時間平均体温 低体温平均体温 図 3 B 群 に お け る 低 体 温 事 例 の 生 後 3 時 間 ま で の 推 移 図3 B 群における低体温事例の生後3時間までの推移 45.0 50.0 55.0 60.0 入室時 生後1時間 生後2時間 生後3時間 平 均 器 内 湿 度 ( % ) 全体 低体温 図 4 B 群 に お け る 低 体 温 事 例 の 生 後 3 時 間 ま で の 器 内 湿 度 3 . 保 育 器 収 容 時 と 体 温 安 定 時 の 器 内 温 度 の 比 較 体 重 別 入 院 時 平 均 器 内 温 度 か ら 体 温 安 定 ま で に 要 し た 平 均 器 内 温 度 の 差 は - 0 . 6 ~ 0 . 1 ℃ で あ っ た 。 出 生 体 重 3 0 0 0 g 以 上 の 対 象 児 は い な か っ た 。( 表 3 ) 表 3 入 院 時 と 体 温 安 定 時 の 器 内 温 度 の 差 出 生 体 重 ( g ) 入 院 時 器 内 温 度 ( ℃ ) ① 入 院 時 平 均 器 内 温 度 ( ℃ ) ② 安 定 時 平 均 器 内 温 度 ( ℃ ) 器 内 温 度 差 ① - ② ( ℃ ) 人 数 1 0 0 0 ~ 1 4 9 9 3 2 ~ 3 3 3 2 . 6 3 2 . 6 0 . 0 4 1 5 0 0 ~ 1 9 9 9 3 1 ~ 3 2 3 2 . 0 3 1 . 4 - 0 . 6 2 2 2 0 0 0 ~ 2 4 9 9 3 1 ~ 3 2 3 1 . 8 3 1 . 4 - 0 . 4 1 7 2 5 0 0 ~ 2 9 9 9 3 0 ~ 3 1 3 1 . 2 3 1 . 3 0 . 1 3 3 0 0 0 ~ 3 0 ~ 3 1 0 図4 B 群における低体温事例の生後3時間までの器内湿度

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10 仙台医療センター医学雑誌 Vol. 10, 2020 間、B群は1.0 ± 1.97 時間と体温安定までの時間 が短縮した。また、B群では43 名(93%)が生後 3 時間までに体温が安定し、生後 24 時間以内に全 例の体温が安定した。A群の11%は生後 24 時間経 過しても体温が安定しなかった。 Ⅵ.考察 A群、B群の対象特性において低出生体重児での 出生が最も多く、当院における特徴であるといえる。 新生児の至適環境温度は出生体重や日齢によって異 なるため、一定の温度環境を統一することはできな い。そのため、当院における入院時出生体重別器内 温度を設定していることは適切であると言える。 入院時体温において、出生直後の初期ケアでは熱 喪失を最小限にするための保温に重点が置かれてい る。当院では初期ケアを行う開放型保育器と移動用 保育器の温度は一定に保っている。しかし、新生児 は熱喪失しやすい特徴があり、体温調節可能域が狭 く、環境温度に左右されやすい。そのため分娩室、 帝王切開を行う手術室は27 ~ 28℃、湿度 50%に 保つ²⁾ 必要がある。そのため、B群における高体 温と低体温を呈した背景に差がないことから、出生 する場所の環境温度・湿度が影響していたと考えら れる。 生後24 時間の体温経過において、B群では高体 温を呈する人数は減少し、持続時間も大幅に低下し ている。これは、当院における昨年度の研究結果を 踏まえて、温度設定基準を見直し、体温安定までに 要した平均器内温度の差が-0.2 ~ 0.6℃と小さく なった新温度設定基準が高体温予防に有用であった と推測される。新温度設定基準では体温測定を保育 器収容時から生後8 時間まで 1 時間毎としたこと で、体温測定回数は増えたが、器内温度調整回数に は差がなく、器内温度下げ幅はA群0.2 ~ 2℃に比 べ、B群0.1 ~ 1℃とB群で温度調整幅が少ない中 で温度調整が行われていた。内山らは「入室時から 24 時間以内の高体温は、閉鎖式保育器の初期設定 温度の高さが影響している」3)と述べている。入院 時器内温度を下げたことにより少ない調整幅で早期 に体温安定ができたと考える。また、基準の見直し により平均体温安定時間は1.0 ± 1.97 時間で、43 名(93%)が生後 3 時間までに体温が安定していた。 このことは、新温度設定基準が高体温予防に有効で あったと考える。 しかし、体温安定後に高体温を呈する事例が見ら れた。これは、初期ケア終了後に、良肢位保持、発 達支援のためポジショニンググッズを使用し囲い込 みを行う。その際に鬱熱が発生し体温が上昇してい る可能性が考えられる。また、出生後の寒冷刺激に 対抗し、体温を保持するために新生児特有の体温保 持機構が起動する。これによって新生児の酸素消費 量が生後6 時間から生後 18 時間かけて急激に上昇 することで、熱産生が増大する4)。体温安定後の高 体温はポジショニングによる鬱熱と新生児の熱産生 により、体温が上昇したと考える。よって、体温が 安定していても、時間の経過とともに変化する新生 児の特徴や環境を踏まえ、予防的観点からの体温管 理が必要となる。 低体温を呈していた9 名のうち 3 名の器内湿度 が入室時、生後1 時間共に設定基準より低く適切 ではなかった。新生児は体温を維持しようと環境温 を上昇させると、蒸散による熱喪失が増大する。蒸 散を防ぐためには、保育器の加湿機能を利用して、 湿度を高く保つ必要がある4)。そのため、設定温度 と共に器内湿度の設定が重要である。 6.研究の限界と今後の展望  本研究においての体温測定は腋窩温測定のみで行 われた。しかし、体表面の温度と深部温度の分布は 大きく異なるため、新生児の循環状態をより正確に 把握するためには深部温度の測定も必要である。 図 5 生 後 1 0 時 間 ま で の 平 均 器 内 温 度 調 整 幅 の 比 較 5 . 体 温 安 定 に 要 し た 時 間 ( 図 6 ) B 群 で 体 温 安 定 に 要 す る 時 間 は 最 小 で 出 生 直 後 、最 大 で 生 後 9 時 間 で あ っ た 。 A 群 は 1 3 . 9 ± 4 . 9 4 時 間 、B 群 は 1 . 0 ± 1 . 9 7 時 間 と 体 温 安 定 ま で の 時 間 が 短 縮 し た 。 ま た 、 B 群 で は 4 3 名 ( 9 3 % ) が 生 後 3 時 間 ま で に 体 温 が 安 定 し 、 生 後 2 4 時 間 以 内 に 全 例 の 体 温 が 安 定 し た 。 A 群 の 1 1 % は 生 後 2 4 時 間 経 過 し て も 体 温 が 安 定 し な か っ た 。 図 6 体 温 安 定 に 要 し た 時 間 P < 0 . 0 5 * * * * * 図6 体温安定に要した時間 新生児体重別の保育器内温度設定基準の評価

(6)

仙台医療センター医学雑誌 Vol. 10, 2020  新温度設定基準の導入により生後早期の体温安定 が可能となった。しかし体温安定後高体温や低体温 を示す事例がみられた。体温安定後高体温を予防す るため、時間の経過で変化する新生児の環境や、新 生児の熱産生の特徴をとらえ予防的観点からの器内 温度調整を行う必要がある。低体温予防には入室時 の器内温度だけでなく湿度設定が影響することを踏 まえ、新温度設定基準の器内湿度が適切か検討して いく必要がある。また、NICU 入院時の体温は分娩 室・手術室の室温・湿度が影響を与えている。今回 は環境温度の調査を行っていないため、初期ケアを 行う開放型保育器や移動用保育器の器内温度・湿度 だけでなく出生する環境温度・湿度が体温に影響を 与えることを考慮し、適切に行われているか確認す る必要がある。 Ⅶ.結論 1. 新温度設定基準では生後早期に体温が安定して おり、有用性が示唆された。 2. 新生児の特徴から生後 6 ~ 17 時間で体温上昇 を来たしやすくなるため、体温安定後も体温変 動に注意して管理する必要がある。 引用文献 1) 高松未季 : A病院における保育器収容となった 新生児の出生後早期の体温管理の現状調査.仙 台医療センター医学雑誌 2018;8:26-31 2) 徳久琢也 : なぜ?から分かる体温管理の「べか らず」集.Neonatal Care 2014;27:22-29 3) 内山麻衣 : A病院 NICU に入院した新生児が正 常体温を保った週数別・体重別の閉鎖型保育器 の温度調査.第27 回日本新生児看護学会学術 集会講演集.2017;161 4) 岩田幸子 : 総論 : 体温モニタリングから学ぶこ と.Neonatal Care 2014;27:6-11 新生児体重別の保育器内温度設定基準の評価

参照

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