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運動器疼痛を有する高齢者への認知行療法の応用

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Academic year: 2021

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スキルアップ講座 連絡先:〒 359-1192 埼玉県所沢市三ヶ島 2-579-15 早稲田大学スポーツ科学学術院 Ⅰ.高齢者の運動器慢性疼痛対策における問  我が国の高齢者を対象とした調査では、腰 椎の変形によって過去 1 ヵ月間に少なくとも 1日以上の持続的な腰痛がある者の割合は男性 24.6%、女性 31.2% である1)。また、膝の変形 によって膝痛を訴える者は男性 24.1%、女性 37.6%である2)。これらの調査では、腰痛、膝 痛ともに年齢が上がるにつれて、疼痛を訴え る者の割合が増加していくことが報告されて いる。高齢者に多い腰痛、膝痛は、疼痛によっ て身体活動量の低下をもたらし、体重増加や 筋力低下、さらには外出頻度の低下により閉 じこもりや精神面への悪影響が懸念されてい 要   旨  超高齢社会に伴い、我が国では運動器に障害を呈して疼痛を訴える高齢者が増加している。高 齢者の運動器疼痛は、加齢による退行変性によって疼痛が慢性化しやすく、身体活動量を減少させ、 体重増加や筋力低下、さらには外出頻度の低下による閉じこもり等、精神面への悪影響も懸念さ れている。このような慢性疼痛に関して、疼痛への不適切な対処方略(願望思考、破滅思考、医 薬行動)が活動制限を引き起こすことが報告されている。疼痛への不適切な対処方略は、活動制 限以外にも疼痛の増悪、機能障害、生活水準(家事や社会的活動)の低下に影響を及ぼす。その ため、高齢者の運動器慢性疼痛対策では、高齢者自身が疼痛を自己管理する能力を高めることが 重要である。

 近年、運動器慢性疼痛対策において、認知行動療法(Cognitive Behavior Therapy、以下 CBT) が重要な役割を果たすことが示されている。運動器慢性疼痛対策における CBT は、患者の疼痛に 対するネガティブな考えや行動に着目して、それらを修正することを目的としている。特に、こ れまでの運動器慢性疼痛対策には、CBT を日常の疼痛体験に応用する「痛み対処スキルトレーニ ング(Pain Coping Skill Training、以下 PCST)」が多く活用されている。

 本稿では、まず初めに高齢者の運動器慢性疼痛に関する先行研究から疼痛の自己管理能力を高 めることの重要性を述べ、我々が膝痛高齢者に対して使用した PCST の技法(認知再構成、リラ クセーション、活動量調整、目標設定、快活動計画、サポート資源の活用、逆戻り予防)につい て解説する。次に、運動器慢性疼痛対策への応用が期待されている第三世代の認知行動療法であ る「アクセプタンス&コミットメント・セラピー(Acceptance and Commitment Therapy:以下、 ACT)」を紹介する。ACT は、疼痛などの不快な事情が存在する状態こそが人間にとって正常な状 態であることに気づき、患者が願う人生を支援することを目的としている。先行研究でも、ACT は高齢者の運動器慢性疼痛対策に適した治療であることが報告されおり、今後も研究成果の蓄積 が期待されている。特に本稿では、先行研究とワークブックを参考に我々が運動器慢性疼痛対策 のために作成した ACT のプログラムを紹介する。   キーワード:高齢者、運動器慢性疼痛、認知行動療法、痛み対処スキルトレーニング、         アクセプタンス&コミットメント ・ セラピー

運動器疼痛を有する高齢者への認知行療法の応用

長澤 康弘

1,2)

  柴田 愛

3)

   岡 浩一朗

4) 1)長谷川病院  2)早稲田大学 スポーツ科学研究科 3)筑波大学 体育系  4)早稲田大学 スポーツ科学学術院

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る3)。このことから、我が国における高齢者の 運動器疼痛は介護予防推進に向けて重要な課 題と言える。   運 動 器 疼 痛 に 対 す る 鍼 治 療 の 効 果 は、 Vickersら4)のメタアナリシスによって、12 カ 月程の疼痛改善が報告されている。また、中 高齢者の腰痛や膝痛を対象としたランダム化 比較試験においても鍼治療の有効性が報告さ れ5-7)、鍼治療は高齢者の運動器疼痛対策の一 助として期待できる。しかしながら、その効 果は軽度から中等度と限定的なものであり、 生活障害や生活の質への介入効果については 課題が見受けられる4-6)。この要因の一つに、 高齢者の運動器疼痛は、加齢によって疼痛が 慢性化しやすく、痛みに対する不適切な対処 方略を採用しやすいことが挙げられる8)。痛み に対する不適切な対処方略には、願望思考(早 く痛みがなくなるようにと願う)、破滅思考(自 分の痛みに対する絶望感や諦め)、医薬行動(必 要以上に薬に頼る)、といった考え方や行動が あり、疼痛増悪や活動制限、生活の質に影響 を及ぼすことが報告されている8-10)。このよう に、高齢者の運動器疼痛は疼痛や身体機能な どの問題だけでなく、痛みに対する考え方や 行動などの心理的側面にも影響することから、 疼痛対策には、疼痛に対する不適切な対処方 略を修正するなど、疼痛の自己管理能力を高 めることが重要であると考える。 Ⅱ.運動器慢性疼痛対策に有効な認知行動療  慢性疼痛対策において、心理的アプローチ は有効な治療法とされ、その中でも認知行動 療法(Cognitive Behavior Therapy、以下 CBT) は高いエビデンスが報告されている11)。CBT は、個人の行動と認知(対処可能性、信念、 考え方、構えなど)に焦点を当て、そこに含 まれる行動、認知、感情、身体、そして動機 づけの問題を合理的に解決するために構造化 された治療法と定義されている12)。疼痛対策 では、図 113)に示した疼痛に対するネガティブ な考え、感情と不適切な対処方略の悪循環に 対し、患者の考え方や行動に着目して修正を 促すことが目的となる。  Williams ら14)は、運動器疼痛に対する CBT の有効性についてメタアナリシスを行ってお り、疼痛、能力障害、気分、破局思考に 6 カ 月以上の長期的効果を報告している。さらに、 中楚ら15)は、膝痛高齢者の疼痛管理における CBTの有効性をシステマティックレビューに よって検討しており、17 編のランダム化比較 試験のうち 13 編が運動療法、関節疾患教育、 体重管理指導などに CBT を組み合わせたプロ グラムであったことを指摘している。このよ うに CBT を組み合わせたプログラムは、単独 で CBT を実施した治療群よりも疼痛、セルフ・ エフィカシー、身体機能、歩行能力、体重減 図1 疼痛に対するネガティブな考え、感情と不適切な対処方略(文献 13 より引用)                      

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少などに長期的な改善が認められることから 16-18)、運動器慢性疼痛を有する高齢者の治療に CBTを積極的に取り入れることは有効な方法 であると言える。 Ⅲ.痛み対処スキルトレーニング  中高齢者の運動器疼痛に対する CBT にお いては、「痛み対処スキルトレーニング(Pain Coping Skill Training、以下 PCST)」が多く活 用されている19)。PCST は、①痛みと認知・行動・ 情緒的な問題と関係性の理解を促す、②痛み に効果的に対処するスキルを学ぶ、③痛み対 処スキルを日常場面で応用するトレーニング を行うことに要約される20)。近年、諸外国で は理学療法士による PCST の介入効果が報告 され21)、臨床心理士以外の医療従事者が技法 を身につけてプログラムを提供している。我々 も先行研究を参考に、外来リハビリテーショ ンに通院する膝痛高齢者を対象として介入研 究を試行した22)。プログラムは週 1 回 8 週間(計 8回)、約20分のプログラムを外来リハビリテー ション後に行っている。以下に、我々が行っ た PCST の技法の詳細について解説する。 1. 認知再構成  認知再構成は、疼痛に対するネガティブな 思考や考え方に焦点を当て修正を目指す技法 である。特に疼痛に伴う不快な体験は、何度 も痛みについて考えてしまうこと(反芻)、痛 みをより大げさにとらえて考えてしまうこと (拡大視)、痛みに対してどうすることもでき ないと考えてしまうこと(無力感)、といった 破局的な思考に陥って、疼痛の増悪、日常生 活や社会参加に制限を及ぼすことが報告され ている23)。実際に我々の介入では、図 2 に示 す課題をもとに、疼痛を体験した時の考えが、 感情、行動、身体へどのような影響を与えた のか記録を行い、客観的にネガティブな考え が身体に悪い行動パターンを及ぼすことを振 り返って、適切な考え方へ修正することを促 す。認知再構成では、疼痛に対するネガティ ブな考え方に着目してセルフ・モニタリング を行うことで、痛み対処方略や痛みセルフ・ エフィカシーへの改善が期待されている。し かしながら、認知再構成は心理的に高い専門 知識が求められる技法であることから、臨床 心理士以外では十分な結果が得られないこと が懸念されている24)。そのため、介入では対 象者の熟練度を高める目的でテキストを使用 して、ホームワークを取り入れながら進めて いくことが有効である。 2. リラクセーション  リラクセーションは、疼痛による抑うつ状 態によって交感神経が優位となり、筋肉や血 管が緊張した状態を改善していく技法である。 筋肉内の血行不良は、酸素不足による発痛物 質の産出や老廃物の貯留によって疼痛を増悪 させてしまう。そのため、リラクセーション では、筋肉の血行不良および発痛物質に起因 する疼痛の改善、筋緊張や不安の改善、脳内 の神経伝達物質で鎮痛に働くエンドルフィン の分泌などの効果が期待されている25)。実際 の技法では、図 3 に示した呼吸法と筋弛緩法 を活用した26)。その他にもリラクセーション 技法は多く存在するが、全ての技法を実施す る必要はなく、自身にあったリラクセーショ ン技法を対処方略の 1 つとして身につけるこ とが重要である。 3. 活動量調整 図3  リラクセーション技法の実際(文献 26 より引用)  図2 認知再構成における課題 

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 活動量調整は、対象となる患者の運動器の 変性や疼痛の程度を考慮して、身体活動量の 調整、運動の強度や量を調整することを目的 とした技法である。高齢者の運動器疾患では、 すでに運動器が変性している場合が多く、無 理な運動や急激な活動の増加によって、運動 器への過剰負荷が懸念されている27)。実際に 「健康づくりのための身体活動基準 2013」で は、高齢者の身体活動量とロコモティブシン ドローム・認知症発症の相対危険度との関係 を分析し、ある程度までは身体活動量の増加 に伴い相対危険度は低下するが、それ以上増 加すると相対危険度が高まることを示してい る28)。我々が行った介入では、図 4 に示した 課題を 1 週間程のホームワークとして取り組 ませた。1 日の活動状況と痛みの関係を記録さ せ、1 週間程の活動状況と痛みの関係を振り返 ることで、痛みが強くなる傾向などを理解し て活動量を調整してく。 4. 目標設定  目標設定は、取り組み始めた身体活動量の 向上や運動など、行動の動機づけを目的に行 われる技法である。慢性疼痛患者は、治療を 行うにあたり「痛みをとりたい」、「歩けるよ うになりたい」といった漠然とした目標を計 画する傾向にある。この漠然とした目標では、 患者自身が目標の達成程度を把握できず、行 動の動機を失ってしまう可能性がある。その ため、介入では「3 カ月後に友人と電車を使用 して旅行に行く」と言ったように、目標の時 期や内容を明確にして計画することを支援す る。さらに、目標達成に長期間を有する場合 には「まずは 2 週間程度で近くのスーパーま で買い物に杖を使用して一人で歩いてく」と いった達成しやすい短期目標を途中に設定す ることも重要である。 5. 快活動計画  快活動計画は、目標設定と同様に行動の動 機づけを目的に行う技法である。慢性的に疼 痛を抱えている中高齢者は、前述したように 不適切な対処方略 ( 願望思考、破局思考、医 薬行動 ) を選択しやすく8)、身体活動量や運動 を指導しても開始や継続が難しいことが報告 されている29)。疼痛を抱える高齢者では、高 齢者自身が楽しいと感じられる活動の中で必 要な身体活動量を確保したり、運動を取り入 れたりする快活動計画が有効とされている30) 実際の介入では、慢性疼痛を有する高齢者は 身体機能および活動範囲が減少していること が予測されるため、対象となる患者が興味や 関心を持ちそうな活動リストなどを予め用意 をしておき快活動を探していくことが必要で ある。 6. サポート資源の活用  サポート資源の活用も行動の動機づけを目 的に行う技法である。実際の技法では、患者 の身体活動量の向上や運動の取り組みに関係 すると考えられる周囲の人々(家族、友人)、 役割(家事、仕事、ボランティア)、近隣の施 設(スポーツジム、地域施設)など、資源を 予め整理しておいて、必要に応じて利用でき るようにしておく。 7. 逆戻り予防  PCST によって不適切な痛み対処方略が改 善され、身体活動量の向上や運動の継続がで きても、安静や不活動といった行動に逆戻り することは稀ではない。そこで、逆戻り予防 では、予め患者自身の考えや行動をネガティ ブにしてしまう要因をまとめて、その対策手 段を考えておく技法である。実際の介入では、 患者自身が不活動などの不適切な対処方略を 選択してしまう事例(痛みの増悪、転倒、疲労、 配偶者の死、転居、天候不良など)をまとめ ておいて、患者自身がどのように事例に対応 していくのかを検討する。対応策を検討する 際には、PCST で学んだ技法をどのように応用 していくかを復習することが重要である。 図4 活動量調整における課題 

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Ⅳ.アクセプタンス&コミットメント・セラ ピー  これまで解説してきた痛み対処スキルト レーニングを中心とする認知行動療法は第二 世代の認知行動療法とされ、疼痛、不適切な 考えや行動に着眼点を置くことから、逆に疼 痛を意識しすぎて感度を高めることが懸念さ れている14)。そのため近年は、疼痛や不適切 な考えを取り除くことに時間の大部分を費や すのではなく、不快な事情が存在する状態こ そが人間にとって正常な状態であることに気 づき、患者が願う人生を送ることを支援する、 アクセプタンス&コミットメント・セラピー (Acceptance and Commitment Therapy: 以 下、

ACT)が第三世代の認知行動療法として注目 されている31)。慢性疼痛ガイドラインにおい ても ACT は心理的アプローチの一つにまとめ られ、その効果は第二世代の認知行動療法より も有効であると報告されている11)。Wetherell ら32)は、慢性疼痛患者に対する ACT と第二世 代の認知行動療法による生活障害の改善度を、 若年者、中年者、高齢者で比較しており、若 年者では第二世代の認知行動療法、中年者で は両療法とも有効とされているが、高齢者で は ACT の方が有効であったと報告している。 ACTは高齢期に直面する身体の衰えを受け入 れ、特定の領域に絞った目標の達成に最適な 方略をとって適応する、老化と向き合う上で 重要な考え方と共通する部分が多い33)。ACT の有効性は、メタアナリシスによっても、痛 みの受容、疼痛、機能障害、うつ、生活の質 に長期的な改善が報告されている34)。ACT の 治療目的は、図 535,36)に示した心理的非柔軟性 の高い状態を改善することを目的としている 37)。本節では、先行研究38)とワークブック36,39) を参考に我々が作成した ACT のプログラムに 用いる技法について紹介する。 1. 創造的絶望  創造的絶望では、患者がこれまでに行ってき た疼痛への対処法を振り返って、疼痛と向き 合っていくことの重要性を伝えることを目的 としている。慢性疼痛を有する患者の大半は、 疼痛を取り除くことに固執して、疼痛をコン トロールするための方略を過剰に使用したり、 使い方を誤ったりして、生活に害を与えてい る場合がある。そのため、患者が行っている 対処法が生活や人生を有意義にしているのか を整理する必要がある。実際の介入では、図 6 に示した課題を活用し、患者がこれまでに行っ 図5 心理的非柔軟性 心理的非柔軟性 体験の回避 好ましくない出来事を避 けようとする 認知的フュージョン 頭に浮かんできた思考に 支配される 価値の明確さの欠如 人生の価値や、向かう方向 がわからない 有効でない行動 自分にとって必要な行動 が実行できない 少ない自己知識 過去や未来の不安に囚わ れ、今の自分を受け入れら れない 概念としての自己に対 する囚われ 自分らしさに囚われて、上 手くいかない事を受け入 れられない

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てきた対処法をあげて、その対処法の長期的 効果の有無、生活を有意義にしているか、ど れくらいの気力や時間を費やしているかなど を整理する。また、良い効果を持つ行動(運動、 減量など)についても痛みを取り除くことに 固執した動機づけとなっていないかを確認す る必要がある。 2. アクセプタンス  アクセプタンスでは、患者が望まない疼痛 などの不快な体験に対して、身構えたり、壁 を作ったりしないで、心を開いて痛みを受け 入れる気持ちを作ることを目的とする。慢性 疼痛患者では、疼痛を伴う恐れのある活動を 避ける、疼痛から気を逸らす、と言った体験 の回避をとりやすい。さらに、体験の回避には、 ネガティブな考え方や行動を修正する認知再 構成のようなことも該当する。実際の技法で は、患者に図 7 の事例を通して、患者がこれ まで実施してきた、疼痛から避けたり抵抗し たりする対処法を長期的に続けていると、心 身ともに疲労しやすく患者自身が大切と思う ことに取り組めないことを伝える。一方、こ の事例に対するアクセプタンスでは、疼痛な どの不快な体験を膝の上に置くことで、疼痛 を完全になくすことはできないが、膝の上に 置くことによって、患者が限られた中で大切 と思う活動に取り組めることを説明する。 3. 脱フュージョン  脱フュージョンでは、疼痛によって連想さ れるネガティブな考えに対して、患者自身が 支配されることなく、考えを観察できるよう になることを目的としている。慢性疼痛を有 する高齢者では、疼痛を長く経験することで、 連想されたネガティブな考えが行動の妨げに 図6 創造的絶望における課題 これまで痛みに対処 するために、どんな ことをしてきました か? その効果はどれくら い続きましたか? 短期的・長期的 その対処法によっ て、有意義な生活を 送れていますか?  はい ・ いいえ その対処法にどれくらい の気力や時間を使いまし たか? 気力: 時間: 短期的・長期的 はい ・ いいえ 気力: 時間:    図7 アクセプタンス事例 図8 脱フュージョン事例              痛みを恐れて、運動すること を避けていませんか?  安静をとる時間が多くなって ませんか?  痛みをすごく嫌って、抵抗し ていませんか?  痛みをなくすためだけに運動 をしていませんか?  膝の上に置くと、痛みが完全 になくなることはありませんが、 押し続ける事や恐れる事から解 放されます。  この状態であれば、限られた 中でやりたい事に挑戦できませ んか?  「考え」に一定の距離を置いて観察するには、頭に浮かぶ「考 え」を「買い物」としてとらえると理解しやすいと思います。  例えば、あなたは買い物をしています。あなたの頭に無意 識と浮かんでくる「考え」を少し立ち止まり、次のようなこ とに気をかけてみてください。  ・この考えを買って自分のためになるのか?  ・この考えはどのくらいの価値があるのか?  ・この考えを買ってどうしたいのか? 回避型 抵抗型 アクセプタンス 「考え」を買う

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なることが多い。その結果、患者は自身にとっ て本当に必要な行動を見失ったり、物事に手 がつけられなくなったりしてしまう。実際の 介入では、図 8 の考えを買う、事例を通して、 連想された考えに一定の距離を置いて観察す ることを学習する。 4. 価値の明確化  価値とは、自分は人生でこれをやりたい、こ れを大切にしたい、いつもこんなふうに行動 したい、という人生の方向を決めるものであ る。一方、目標は価値の中に存在する手に入 れたいもの、成し遂げたいことで、未来に存 在して価値とは異なり、達成すると消えてし まう。価値の明確化では、患者が疼痛を持ち ながらも価値を明確化することで、行き詰まっ ていた行動を活性化することを目的としてい る。実際の介入では、一般的な人の価値に相 当するとされる、人間関係(友人、社会的対人)、 家族関係、仕事(役割)、個人的な成長と進歩、 趣味、社会貢献、身体的健康、心理的健康な どに対して患者の優先順位をつけ、具体的な 内容を確認していく。 5.コミットされた行動  コミットされた行動では、明確化された価 値に向かって目標を計画して、具体的な行動 を実行していくことを目的とする。実際の介 入では、第二世代の認知行動療法で前述した 目標設定と同様に、目標が具体的な内容になっ ているかを確認する他に、患者の身体機能に 適した目標になっているか、価値に沿った目 標になっているかを確認する。さらに、計画 された目標に対して、患者が実行可能な行動 を設定する作業を行う。 6.マインドフルネス  マインドフルネスでは、患者が疼痛やネガ ティブな考えによって「今、ここにあらず」 の状態から「今、この瞬間」に注意を向けて、 適切な判断や行動がとれるようにすることを 目的とする。慢性疼痛患者では、過去の疼痛 や不快な体験を連想したり、過去のことを引 きずって無意識に未来への不安を連想したり するため「今、ここにあらず」の状態になり やすい。この「今、ここにあらず」の状態は、 患者が実行する行動の妨げとなって、生活に 不利益を生じさせることになる。そのため、 実際の介入では、瞑想などを活用して、「今、 この瞬間」に注意を向け、日頃から適切な判 断や行動をとれるようにする。 Ⅴ.まとめ  本稿では、高齢者の運動器慢性疼痛対策に おける諸問題を挙げ、その解決策として認知 行動療法の有効性についてまとめた。また、 我々の取り組みや先行研究を参考に、PCST お よび ACT の具体的な技法についても紹介した。 運動器慢性疼痛に対する認知行動療法の有効 性は、諸外国において先行研究が散見される が、我が国においてもエビデンスの構築が進 められている40)。今後は、我が国においても 認知行動療法の経験が豊富な臨床心理士だけ でなく、運動器慢性疼痛の診療経験の豊富な 医療従事者に治療技術の習得が求められる。 文献

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