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研究データの公開・利用条件指定ガイドラインの策定

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Academic year: 2021

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研究データの公開・利用条件指定ガイドラインの策定

○熊崎由衣1,7),南山泰之2,7),池内有為3,7),上島邦彦4,7),岡山将也5,7),山田一作6,7) 日本原子力研究開発機構1),国立情報学研究所2),文教大学3),株式会社日本デー タ取引所4),株式会社日立コンサルティング5),公益財団法人野口研究所6),研究デ ータ利活用協議会 研究データライセンス小委員会7) 〒319-1195 茨城県那珂郡東海村大字白方 2-4 E-mail:[email protected]

Development of Guideline for Specifying

Conditions of Use in Research DataPublishing

KUMAZAKI Yui1,7), MINAMIYAMA Yasuyuki2,7), IKEUCHI Ui3,7), UESHIMA

Kunihiko4,7) , OKAYAMA Nobuya5,7) , YAMADA Issaku6,7)

Japan Atomic Energy Agency 1), National Institute of Informatics2), Bunkyo University3),

Japan Data Exchange Inc.4), Hitachi Consulting Co., Ltd.5), The Noguchi Institute6),

Research Data Lisense Subcommittee of Research Data Utilization7)

2-4 Shirakata, Tokai-mura, Naka-gun, Ibaraki 319-1195, Japan E-mail: [email protected] 【発表概要】 研究データの流通・利用の促進に当たっては、データに明確な利用条件が付与され ることが重要である。研究データ利活用協議会・研究データライセンス小委員会では、 研究データの利用条件を分かりやすく表示、または確認することを目的として「研究デ ータの公開・利用条件指定ガイドライン」を策定し公開した。ここでは策定の背景や検 討内容、ガイドラインの概要について紹介する。 【キーワード】 研究データ,ライセンス,ガイドライン, 利用条件, オープンサイエンス

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1. ガイドライン策定の背景 論文や研究開発の過程で生成された データ(以下、「研究データ」)などを広く 公開・利用を可能にし、効果的・分野横 断的な研究開発の推進や新たな成果の 創出を目指すオープンサイエンスの動き が進展している。国際的にはG8 科学大 臣会合共同声明[1]において研究データ の公開が明記され、日本においても第5 期科学技術基本計画ほか[2] [3]によって オープンサイエンスの推進が明記される など、重要な政策と位置付けられてい る。 ここで、異分野におけるデータの共 有・公開を促進するに当たり、再利用の ための条件を明確にすることは重要な 観点である。利用条件の曖昧さは、条件 を遵守しようとする研究者や機関の解釈 コストを増大させ、結果的に再利用を大 幅に制限することに繋がる。また、研究 データを公開・利用するたびに独自の 利用条件を検討することは、公開者にと っても、条件を解釈する利用者にとって も負担が大きい。 公的研究資金によって生成されたデ ータについては、コミュニティによるガイ ドライン策定[4]や、助成機関や政府が定 めるデータ共有や公開ポリシー[5]によっ て利用条件の標準化が進んでいる。し かしながら、研究データの生成される背 景は様々であり、研究対象や所属機関 などからの要請により留保される条件も 多く存在する。 このような状況のもとで研究データの 流通及び利用を促進するためには、政 策的なアプローチだけではなく、利害関 係者自身がデータに利用条件を指定し、 法的な相互運用性を明確にすることが 重要となる。利害関係者自身が公開す るデータに利用条件を指定する方法とし ては、著作物の利用条件を表示するツ ールであるクリエイティブ・コモンズ・ライ センス(以下、「CC ライセンス[6]」)が良く 知られており、研究データに用いられる ことも多い。しかし、データの公開に当た って生じる制約条件は典型的な著作物 より多様であり、CC ライセンスのみでは 利用条件の実態を正確に表すことがで きない可能性が考えられる。また、数値 データなど原則として著作物として保護 する対象とならないものに同ライセンス が付与された場合、法的には効力をも たないおそれがある。 そこで、研究データ利活用協議会 研 究データライセンス小委員会(以下、「ラ イセンス小委員会」)では、原則として著 作物性がないデータを対象に、その利 用条件を分かりやすく表示し確認するこ とを目的とした「研究データの公開・利用 条件指定ガイドライン[7]」(以下、「本ガイ ドライン」)を2019 年 12 月に策定し、 2020 年 2 月に公開した。 2. ガイドライン検討の内容と経緯 本ガイドラインは、国際的な先行事例 である研究データ同盟(RDA)と科学技 術データ委員会(CODATA)が共同設 置する法的相互運用性分科会が作成し た「研究データの法的相互運用性:指針 と実施のガイドライン(Legal

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Interoperability of Research Data: Principles and Implementation Guidelines)」[4]を起点として、日本の法 体系やデータリポジトリ、研究者などの 状況を反映させることを目指した。 国内において研究データの利用条件 に関する標準化の動向は管見の限り見 受けられなかったため、ガイドラインの策 定に当たっては、まず関連する文献の 収集・翻訳、データリポジトリ管理者や研 究者などの専門家へのインタビュー調 査、ライセンスに関する実態や認識を明 らかにするためのアンケート調査を行っ た。 ガイドラインの骨子を検討した後、こ れらの調査から得た情報によって法的 な観点や文献調査で得られる情報だけ でなく、研究分野の慣習や実務的な課 題を本ガイドラインに盛り込むこととした。 素案の作成後は研究者や図書館員等 の協力者にレビューを依頼し、それらを 反映しながらライセンス小委員会におい て議論することで詳細を検討した。 ここでは、調査の概要を紹介する。な お、各調査と結果の詳細は、ライセンス 小委員会の前身となる、研究データ利 活用協議会小委員会(研究データのラ イセンス検討プロジェクト)報告書[8]に記 載している。 2.1. インタビュー調査 インタビュー調査は、研究データ公開 の先行事例から公開の状況とライセンス の課題を明らかにし、ガイドライン策定の 参考とすることを目的として行った。 調査対象は宇宙科学、学際分野、社 会科学、材料科学、人文学(デジタルア ーカイブ)のデータリポジトリ管理者や研 究者などの専門家5 名である。調査期 間は2017 年 12 月 12 日から 2018 年 2 月1 日で、それぞれ約 1 時間ずつ、半 構造化インタビュー調査を実施した。主 な質問項目は以下の4 点である。 1) 研究データの共有・公開について 2) 研究データへのライセンス付与の 実施に関して 3) 研究データへのライセンス付与や 法的相互運用性の促進について 4) その他、ライセンス違反への対応 について 調査から、調査対象が取り扱うデータ の権利保護、データポリシーの整備状 況や利用条件に関する課題や要望を整 理した。データの流通やライセンス付与 に際しては、知的財産権を管理する専 門家やそのコミュニティが求められてい る一方、そのための人材育成や制度化、 コストに課題があることが分かった。 2.2. アンケート調査 次に実施したアンケート調査では、イ ンタビュー調査の結果を踏まえて質問 項目を設定した。目的はライセンス使用 に関する実態と認識を明らかにすること、 ガイドラインのレビュー協力者を募ること である。 調査期間は2018 年 2 月 13 日から 3 月20 日で、Web アンケートを実施した。 有効回答数は409 件(全回答数 413 件)、ガイドラインのレビューに協力可能 な回答者は59 名であった。利用者に要 求したい条件の中では、成果にクレジッ

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トを表示することの比率が最も高かった が(93.4%)、何も求めない(自由利用可 能)という回答も一定程度見られた (43.5%)(図 1)。 図1. データを公開する際に利用者に求めたい条件n=409)(以下、「n」は回答者数) その一方、既存のライセンスの認知度 と使用経験は、最も高いCC ライセンス であっても46.9%(認知度)と 30.7%(使 用経験)に留まった(図2、図 3)。 図2. 既存ライセンスの認知度(n=409)3. 既存ライセンスの利用状況 これらの調査により、ライセンスの表示 ツールおよび利用条件に関する理解促 進がまず必要であること、その理解によ ってデータの公開者が適切に利用条件 を設定する、またはデータの利用者が適 切に利用可能となることが見出された。 3. ガイドラインの概要 これらを踏まえ、本ガイドラインでは、 研究データの公開に当たって一般的に 留意が必要となる情報や事例を、その 判断プロセスとともに整理した。対象とす る読者は研究データの公開者及びデー タの利用者(研究者やリポジトリ管理者 等の研究支援者)を想定している。 本ガイドラインは「研究データの公開 と利用条件指定に関する5 の質問」で 構成している(図4)。 図4. 研究データの公開・利用条件指定フロー その質問に沿って、Q1.公開対象とす るデータの特定、Q2.データ公開の制約 条件の確認、Q3.公開制約条件の解除、 Q4.公開先の選択肢、Q5.利用条件の 指定(選択肢と表示例)と進むことで、デ ータ公開を希望する読者が適切な利用 条件と公開先を指定することが可能とな る。また、研究分野によっては複数の語 義を持つ用語について、用語集を作成 することで曖昧さを回避しわかりやすさ に配慮した。 3.1. 公開データと非公開データを区別 したか? まず、公開の対象とするデータを特定 する。「研究データ」が指し示す範囲は 研究分野ごとに異なる。そこで本ガイドラ

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インでは、公開・利用条件指定の検討対 象を「電磁的な方法により管理が可能な データのうち、研究成果として公開する データ」とし、サンプル(試料、標本)や 記録媒体(紙、ディスク)などの現物、メ タデータやデータベース等の使用環境 は含まないこととした。 ここでは本ガイドラインの検討対象と する研究データと、検討対象外としたデ ータ等を具体例とともに定義し、後者に ついてもその取扱いについて解説して いる。また、研究資金の助成機関や出 版社、所属機関によってデータ公開が 義務付けられている場合があるため、注 意喚起を行っている。 3.2. 公開の制限はあるか? 公開対象として特定したデータにつ いて、その内容(秘密情報、プライバシ ー等)が法律や研究分野の慣習、契約 等により制約を受けるかどうかを確認す る。本ガイドラインでは、制約の主体別 に、1) 分野・コミュニティの慣習など、2) 個人情報、3) 国家安全保障、国際関 係など、4) 共同研究契約や個別の契 約による公開制限、5) 所属機関(部署)、 研究助成機関などによるポリシーと5 つ の確認の観点とその参考情報を示して いる。 3.3. 制約条件解除の定めはあるか? データ公開に制約があると判断され た場合でも、データの加工処理や一定 の猶予期間を経ることでデータを公開す ることが可能となる場合がある。そこで、 前述の5 つの観点ごとに、制約を解除 するために確認すべき情報源や事例を 挙げている。読者は専門家との相談も視 野に入れつつ具体的な解除手続きやそ のための処理を行う。なお、解除要件は、 必要に応じて後述する利用条件に書き 込むよう促している。 また、検討段階で非公開と判断され た場合でも、データの所在を明確にし、 猶予期間経過後の公開を判断可能とす るため、メタデータの作成・公開とデータ の保存を推奨することとした。 3.4. 公開先は決まっているか? 対象とするデータの公開先を選択す る。整理や保存を任せられる、データの 永続性を担保できる、利用者に認知さ れやすい、セキュリティ管理といった観 点から、関連分野のリポジトリ、所属機関 の機関リポジトリなどの利用を推奨する。 そのため、国内の分野別リポジトリのリス トを掲載した。また、データの流出や不 正利用が起きた際の対応に考慮して、 日本において適用が可能な法的措置の 一覧を作成、明示した。 3.5. 利用条件は決まっているか? データ公開者による利用条件の設定 を行う。上述のとおり、データが著作物 であれば既存のライセンスによる条件を 用いることができるが、当該データが著 作物であるかという判断を個々のデータ 公開者(研究者や研究支援者)が行うの は難しい。 そこで、本ガイドラインが推奨する利 用条件は、CC ライセンスが定める 4 つ の条件を準用し、著作物の利用条件と

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互換性をもつ形で提案している。 また、国内の著作権法と同程度の条 件を定めた標準的な利用条件(利用規 約)をフォーマットとして提示し、著作権 法の保護対象となるかどうかに関わらず、 同程度の権利表明を行えるよう意図した。 さらに、個別の条件についても挿入箇所 を明示して利用条件の指定と記述を行 いやすくする配慮をした。 4. ガイドライン活用の提案と今後 本ガイドラインは研究データ管理に関 する様々な参考情報や用語集などの補 足情報を充実させることで、これから研 究データを取り扱おうとする機関の研究 支援者にも利用しやすいよう留意した。 よって、研究データ管理や公開への 理解促進のために通読することも、5 の 質問を個別に使うこともできる。たとえば Q1.(3.1)の研究データと非研究データ の区別は、研究データに関するポリシー や機関内のルールなどを策定する際の 参考になるかもしれない。 また、Q2.(3.2)・Q3.(3.3)では、研究 データを日頃取り扱っているリポジトリ担 当者が、日常業務の中での法的な確認 事項などを確認・参考とする、といった利 用方法も考えられる。 本ガイドラインが様々な機関や役割を 担う方の手に取られ、データの公開や利 用が促進されることを期待する。 5. 参考文献

[1] G8. G8 science ministers statement: London, 12 June 2013. https://www.gov.uk/government/publicatio ns/g8-science-ministers-statement-london-12-june-2013,(参照 2020-05-22) [2] 内閣府. 第 5 期科学技術基本計画, 2016. https://www8.cao.go.jp/cstp/kihonkeikaku/i ndex5.html,(参照 2020-05-22) [3] 内閣府. 統合イノベーション戦略 2019, 2019. https://www8.cao.go.jp/cstp/tougosenryaku /index.html, (参照 2020-05-22)

[4] RDA-CODATA Legal Interoperability Interest Group. Legal Interoperability of Research Data: Principles and

Implementation Guidelines. zenodo, 2016. https://doi.org/10.5281/zenodo.162241, (参 照 2020-05-22). [5] 国内の例では、以下などが挙げられる。 国立 研究開発法人科学技術振興機構. オープンサ イエンス促進に向けた研究成果の取扱いに関 するJST の基本方針. https://www.jst.go.jp/pr/intro/openscience/ policy_openscience.pdf, (参照 2020-05-22). [6] クリエイティブ・コモンズ・ジャパン. クリエイティ ブ・コモンズ・ライセンスと は.https://creativecommons.jp/licenses/, (参 2020-05-22). [7] 研究データの公開・利用条件表示ガイドライン ver.1.0. 研究データ利活用協議会(RDUF) 研究データライセンス小委員会, 2019, 32p. https://doi.org/10.11502/rduf_license_guide line, (参照 2020-05-22). [8] 研究データ利活用協議会(RDUF)研究データ のライセンス検討プロジェクト小委員会. 研究デ ータ利活用協議会小委員会(研究データのライ センス検討プロジェクト)報告書, 2019. https://japanlinkcenter.org/rduf/doc/rduf_li cense_report.pdf, (参照 2020-05-22).

参照

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