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加速度脈波に基づく上腕-足首脈波伝播速度baPWVの推定

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Academic year: 2021

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(1)生体医工学 59(1):47-53, 2021. 研. 究. DOI:10.11239jsmbe.59.47. 加速度脈波に基づく上腕-足首脈波伝播速度 baPWV の推定 廣瀬. 玖実*・若 林. 哲*・小野. 卓哉**・平 原. 誠*・八名. 和夫*. The Estimation of Brachial-ankle Pulse Wave Velocity (baPWV) Based on the Acceleration Plethysmogram Kumi HIROSE,* Satoshi WAKABAYASHI,* Takuya ONO,** Makoto HIRAHARA,* Kazuo YANA*. Abstract This paper proposes a method to estimate brachial-ankle pulse wave velocity (baPWV) based on parameters extracted from acceleration plethysmogram (APG), the second derivative of photoplethysmography (PPG). The baPWV is to measure the arterial stiffness and clinically utilized to probe the presence of atherosclerosis. The measurement is made by the time delay between brachial and ankle pule waves at the clinical bench in a hospital. To explore the possibility to monitor the baPWV in daily basis at home, we examined the relation between baPWV and APG waveform. The simultaneous recordings of baPWV and PPG are made for 74 healthy subjects aged 30-69 (47.3 ± 8.8) in supine posture. We have extracted five parameters from the APG, b/a, c/a, d/a, e/a and Tae, in which a-e are the extreme values of APG and Tae is the time interval between a and e. The new parameter estimation method using the third derivative of PPG waveform is introduced for the accurate parameter derivation, namely b, c and d which sometimes fuse each other to make the separation difficult in APG. Result showed the parameter Tae is the most important index for the estimation. The correlation coefficient between baPWV and Tae showed 0.569 (p < 10−3). With additional parameter d/a, the prediction of baPWV by the multiple regression showed corrected coefficient of determination of 0.430. Setting the risk criteria of arteriosclerosis be baPWV > 1.45 (MS) the proposed prediction scheme achieved the risk detection rate of 0.917 with the false detection rate of 0.161. Although the estimation accuracy needs further improvement for the clinical use, the method will be utilized for the daily health monitoring for the early detection of the change in arterial stiffness. Keywords : pulse wave velocity, photoplethysmography, acceleration plethysmography, health monitoring, ubiquitous healthcare.. 1.. は. じ. め. に. 速度(baPWV : brachial-ankle pulse wave velocity)が知 られている.baPWV は血管弾性(動脈の硬さ)を評価す. WHO の調査によれば,世界的に最も多い死因は動脈硬. る非侵襲的な方法であり,臨床に広く用いられている. 化を主因とする心疾患である=1>.動脈硬化は進展するま. =2-5>.baPWV は上腕と足首の 2 点に脈波が到達する時. で自覚症状がないため,このリスクを低減させるために. 間差を身長から推定される 2 点間の測定距離で除すことに. は,定期的に動脈硬化度を検査することが望ましい.動脈. より計測される.動脈硬化の進行に伴い,伝搬速度は上昇. 硬化は種々の循環器系疾患を引き起こす要因であり,早期. する傾向がある=5>.測定は類似の頸動脈-大腿動脈間脈波. 発見の指標の一つとして,上腕動脈-足首動脈間脈波伝搬. 伝搬速度(cfPWV : Carotid-femoral pulse wave velocity). 2020 年 12 月 2 日受付,2021 年 1 月 17 日改訂,2021 年 2 月 3 日再改訂,2021 年 2 月 3 日採択 Received December 2, 2020 ; revised January 17, 2021, February 3, 2021 ; accepted February 3, 2021. * 法政大学理工学研究科応用情報工学専攻 Applied Informatics Major, Graduate School of Science and Engineering, Hosei University ** 日本医科大学循環器内科 Department of Cardiology, Nippon Medical School. の計測より容易であるが,専用の装置が必要となることか ら医療機関以外で,計測することは困難である. baPWV 以 外 に 計 測 が 容 易 な 光 電 脈 波(PPG : Photoplethysmogram)による動脈硬化度の推定に関する研究 がある.PPG は主に指先で測定され,血中酸素濃度の測 定に用いられるものであるが,PPG 波形の持続時間に関 連したパラメタを血管硬化度の指標とする報告がある. Millasseau ら は 心 臓 の 収 縮 に よ る 駆 動 圧 に よ る 最 初 の.

(2) (48). 生体医工学. 59 巻 1 号(2021 年 3 月). ピーク(Systolic Peak)とそれに続く駆動圧の末梢からの. 平均値を被験者の baPWV 値とした.また,左右いずれか. 反射による再上昇圧波によるピーク(Diastolic Peak)の. の指尖に装着したセンサーより PPG の計測を行った.. 時間差 ΔT が動脈硬化度と関連することを見出し,伝搬速. 指尖光電脈波 PPG の記録には,Maxim Integrated 社の. 度と関連づけるためその逆数を含む動脈硬化の指標を提案. ヘルスセンサープラットフォーム MAX REFDES 100 #. している=6>.また,PPG の 2 回微分により得られる加速. を用いた.本センサープラットフォームは PPG,皮膚温. 度脈波(APG : Acceleration Plethysmogram)の極値を動. 度,3 軸加速度,気圧の同時記録が可能で,PPG としては. 脈硬化度と関連付ける研究がある.APG 波形には特徴的. 緑色,赤色,赤外線の LED を用いた三種類の波形が得ら. な 5 つのピーク値(極値)が認められ慣例的に a,b,c,. れる.本研究では赤外線 LED 波形を用いた.AD 変換さ. d,e と名付けられている.極値 b,c,d,e を a で除した. れた出力が得られ,シリアル出力される.サンプリング周. 基準化パラメタ b/a,c/a,d/a,e/a が加齢にともなうト. 波数は 200 Hz に設定した.. レンドを示し動脈硬化と関連することが報告されている. PPG 波形は,測定する際にセンサーにかかる指圧や被. =7-10>.これら基準化パラメタについて下記の特性が知ら. 験者の指の動きの影響を大きく受ける.安定した波形を得. れている=8, 9>.b/a は末梢血管の進展性に関連しており,. るため 3D プリンターで厚さ 3 mm のエンクロージャーを. 加齢に伴い値が上昇する特徴がある.c/a について明確な. 作成した.センサー部分を窓にし,指が乗る部分に 10 度. 意味づけはなされていないが,加齢とともに下降していく. の傾斜をつけ,被験者が脱力した状態で指を乗せた際,指. 傾向がある.d/a は血管作用薬の評価,左心室後負荷の指. の腹の中心がセンサーの真上を覆うようにした.このエン. 標として活用されており,動脈の硬化度合いを表す.加齢. クロージャーによりセンサーに直接指が接触せず一定の距. とともに減少する傾向がある.e/a もまた,動脈の硬化度. 離を保ち安定した波形が得られる.また,指が動かないよ. 合いを表し,加齢とともに減少する.また,年齢と極値パ. うにテープにより指を軽くセンサーエンクロージャーに固. ラメタの回帰分析から血管年齢と呼ばれる指標も提案され. 定した.センサーを装着したエンクロージャーを図 1 に. ている=10>.. 示す.. これら PPG 由来のパラメタによる動脈硬化度の評価は. 本研究では脈波の 2 回および 3 回微分波形を用いるた. 計測の容易さから日常的な健康モニタリングに有用と思わ. め,高周波域の雑音の影響を強く受ける.安定した微分波. れるが,客観的なリスク評価基準は存在しない.. 形を得るため,前処理としてセンサーから出力されるデジ. そこで,本論文では,計測の比較的容易な APG 波形か. タル化された信号の高域ノイズ除去にカットオフ周波数. ら得られるパラメタによる動脈硬化度の指標 baPWV の予. 15 Hz の 6 次バターワース低域フィルターを用いた.図 2. 測可能性を検討する.APG の極値パラメタ b/a-e/a と動. に PPG 波形の 2 回数値微分で得られた APG 波形を示す.. 脈硬化度の情報を含む ΔT に対応する APG 由来のパラメ. 直接指をセンサーに載せた計測と比較して上記エンクロー. タとして極値 a,e 間の時間差 Tae,を加えた 5 つのパラ メタを用いた baPWV 推定の可能性および推定精度を検証 する. 本研究の目的は,特に自覚症状のない健常者が,自宅で 計測可能な APG にもとづく baPWV の推定値をヘルスケ ア指標として日常的にモニタリングすることにより,動脈 硬化の早期発見に資することにある.リスクありと判定さ れた場合,リスクレベルに応じて生活習慣の見直し,医療 機関での受診を促すなど,無症状の内に早期対応を促すヘ ルスケアシステムへの応用を目指している.. 2. 2・1. 実. 験. 方. 法. データ取得と前処理. 本研究の対象は 30 歳から 69 歳(47.3 ± 8.8)で動脈硬 化関連疾患の治療・投薬歴のない健常者,計 74 名(男性 30 名,女性 44 名)とした.実験はヘルシンキ宣言に則 り,被験者のインフォームドコンセントを得て行った.ま た,法政大学生体を対象とする研究に関する倫理委員会の 承認を得ている(承認番号# 2018-8) . 仰臥位で左右の上腕と足首より baPWV を計測し,その. Fig. 1. 図 1 センサーエンクロージャー (左上 : 表面,右上 : 裏面,下 : 見取り図). Sensor Enclosure (Upper Left and Right : Top and Bottom views : Lower : General view)..

(3) 廣瀬玖実ほか:加速度脈波に基づく脈波伝搬速度の推定. (49). (符号が変わる)点を 2 回微分波形に当てはめることで 2 回微分波形の極値を検出することができる(図 5 参照) . 3 回微分波形を用いることにより図 4 で示したように極 値が融合し分離が困難な場合にも以下のアルゴリズムによ り合理的なパラメタ推定が可能となる.すなわち,APG 波形の b-e 間で 3 回微分波形が一定基準以下の値をとる場 合極値 c,d が融合していると判定し,対応する 2 回微分 波形の値を c(= d)とする(図 6 参照) .. 図2. 加速度脈波 APG 波形. (a) セ ン サ ー に 指 を 直 接 載 せ た 場 合,(b) エ ン ク ロ ー ジャーを用い波形を安定化させた場合 . Fig. 2 Measured APG waveform. (a) Direct finger placement on the sensor, (b) Use of the sensor enclosure for stabilizing the APG waveform.. ジャーを用いた場合安定して APG の波形および以後の データ処理で用いる極値が安定して得られることがわかる. 上腕動脈-足首動脈間脈波伝搬速度 baPWV は,上腕と 足首で記録された脈波波形の時間差を,被験者の身長で推 定 さ れ る 血 管 の 長 さ で 割 っ て 測 定 す る.体 の 左 右 の baPWV を,血圧脈波測定装置:BP-203 RPEIII,(フクダ. Fig. 3. 図 3 APG の典型的な波形例と抽出パラメタ. A typical example of the APG waveform and extracted parameters.. コーリン株式会社)で測定した. 本研究では baPWV と PPG を同一被験者から測定し, 分析を行うが,カフを装着する baPWV の測定は PPG 計 測に影響するため同時に記録することはできない.そこ で,仰臥位で両計測のためのセンサーを装着した後安静状 態を 10 秒保ったのち,まず PPG を 20 秒間測定し,その あとに血圧脈波検査装置で baPWV を測定した. 2・2. パラメタ抽出. センサーデジタル出力に対しフィルター処理後,数値的 に 2 回微分した APG の典型的な波形と極値パラメタを図 3 に示す.APG の 5 つの極値 a,b,c,d,e と対応する. Fig. 4. 図 4 極値が融合する APG 波形例. APG waveform with fused extreme values.. 各 極 値 の 発 生 時 刻 か ら,APG 持 続 時 間 Tae を 求 め た. baPWV の推定には正規化された APG 波形の極値,次元 を合わせる意味で 1Tae,を加えた 5 つのパラメタを用い た. 2・2・1. 脈波 3 回微分による極値検出. 図 4 に示すように APG 波形によっては極値 c,d が明 確に区別できないケースがある.主に高齢者に見られ,パ ラメタ推定を誤る可能性がある.また,5 つの極値が得ら れず解析不能となってしまう. このような場合にも対応できるように極値パラメタの抽 出に PPG 波形の 3 回微分を用いる方法を提案したい.2 回微分波形の変化量を明瞭化するため 3 回微分波形を用い る.まず,2 回微分波形の a 点を始点として 3 回微分波形 から 5 つの極値を検出する.3 回微分波形は 2 回微分波形 の変化量を表していることから,3 回微分値が 0 となる. 図 5 PPG 3 回微分波形による APG パラメタ推定 (実線 : 2 回微分,破線 : 3 回微分). Fig. 5 Parameter extraction by the 3rd PPG derivative (Solid : 2nd Derivative, Dotted : 3rd Derivative)..

(4) (50). Fig. 6. 生体医工学. 59 巻 1 号(2021 年 3 月). 図 6 PPG 3 回微分による極値融合波形の処理. Fused APG extreme value processing by the PPG 3rd derivative.. 2・2・2. 分析波形の選択. APG は 20 秒から 30 秒測定し複拍数分のパラメタを計. Fig. 7. 測し一定基準で選択したのち代表値を求め解析に用いる.. 図 7 APG パラメタ d/a と baPWV の関係 (r = 0.367, p < 0.01). Relation between APW parameter d/a and baPWV (r = 0.367, p < 0.01).. 上述のセンサーエンクロージャーにより安定的な波形が得 られるが,アーチファクト,予期せぬ被験者の動きなどで 大きな誤差が混入することも想定される.本研究では以下 の反復手順により分析に用いる代表パラメタを求めた.ま ず,計測により得られた N 拍の APG 波形それぞれから得 られた正規化パラメタを bn/an,cn/an,dn/an,en/an,n = 1,…,N とし,パラメタベクトル p(n)=(bn /an,cn /an, dn/an,en/an)を定義する. Step 1.対象とする各拍における APG 正規化パラメタそ れぞれの標本平均値 μb/a,μc/a,μd/a,μe/a を求め, それらを要素とする平均パラメタベクトル p を 求める.. 図8. Step 2.各拍のパラメタベクトル p(n)と平均パラメタベ クトル p の距離 L(n)= p(n)−p  を求め最も距離 の離れた拍を対象から除外する.. Fig. 8. APG パラメタ 1Tae と baPWV の関係 (r = 0.569, p < 10−3). Relation between APG parameter 1Tae and baPWV (r = 0.569, p < 10−3).. Step 3.除外した N-1 拍を選択対象拍とし,対象拍数が 5 となるまで Step 1-3 を繰り返す.. タの重回帰分析を行った結果を図 9 に示す.修正決定係. Step 4.平均パラメタベクトルと最も距離の近いパラメタ. 数 R2 は 0.430 であった.測定された baPWV の平均およ. ベクトル p(n)の要素を APG パラメタの代表値. び標準偏差はそれぞれ 1.27(MS),0.198(MS),74 例. として分析に用いる.パラメタ Tae は該当拍の. 中 17 名が通常用いられる動脈硬化の一般的な中程度リス. a-e 間時間差として求めた.. ク基準 1.4(MS)を超える値を示した.. 3. 3・1. 結. 果. APG 波形パラメタによる baPWV の推定. APG 波形より得られるパラメタ b/a-e/a および 1Tae 各々と baPWV の単回帰分析により d/a(r = 0.367,p < −3. 推定の適合度を検証するために Bland-Altman 図を示 す.推定誤差の標準偏差は 0.143(MS) ,破線で示される 95%信頼区間を外れる点は 3 点であり総データ数の 4.05% に近く良好な適合性が示された. APG パラメタにもとづく baPWV 推定値に閾値を設け. 0.01)および 1Tae(r = 0.569,p < 10 )に顕著な相関が. て動脈硬化リスク評価を行った結果得られる ROC 曲線を. 見られた(図 7 および図 8).d/a は脈波反射波の振幅,Tae. 図 11 に示す.ここで,通常用いられる baPWV によるリ. は反射波の戻り時間を表すことから妥当な結果といえる.. スク境界(baPWV > 1.4MS)と,大動脈 PWV と baPWV. これら baPWV と関連をもつ APG 波形の 2 つのパラメ. の比較研究=11>が示唆するリスク境界(baPWV > 1.45MS).

(5) (51). 廣瀬玖実ほか:加速度脈波に基づく脈波伝搬速度の推定 表 1 リスク判定評価指標. Table 1 Indices of the risk evaluation. Sensitivity. Specificity. PPV*. NPV**. Risk Group 1. 0.706. 0.842. 0.574. 0.906. Risk Group 2. 0.917. 0.839. 0.524. 0.981. Risk Group 1: baPWV>1.4 M/S Risk Grpup 2: baPWV>1.45 M/S *PPV: Positive Predictive Value **NPV: Negative Predictive Value. 表 2 推定パラメタの主成分係数. Table 2 Principal component coefficients. 図9. APG パラメタの重回帰による baPWV の推定 (修正決定係数 R2= 0.430). Fig. 9 baPWV estimation via multiple regression of APG derived parameters (Corrected coefficient of determination R2= 0.430).. 1st PC1. 2nd PC. 3rd PC. 4th PC. b/a.  0.549. −0.0534. −0.0123. −0.324. c/a. −0.451. −0.417. −0.0423. −0.397. d/a. −0.532. −0.103. −0.305.  0.471. e/a. −0.276.  0.290.  0.881.   0.0412. age.  0.298.  0.167. −0.0343.  0.649. 1/Tae. −0.219.  0.837. −0.357. −0.305. 43.8. 23.0. 16.9. 8.96. 2. ccr 1 2. PC: Principal component Cumulative contribution ratio(%). の 2 つを用いてリスク群を定義した.以後それぞれリスク境 界 1,2 と呼ぶ.また,各境界で定義されるリスク群をそれ ぞれリスク群 1,2(Risk Group 1,2)と呼ぶ.リスク評価の 有用性を示す指標 AUC(Area Under the Curve)はリスク境 界 1,2 においてそれぞれ 0.816 および 0.923 となった. また,baPWV 推定値のリスク判定境界を Youden 指標 図 10 baPWV 推定に関する Bland-Altman 図. Fig. 10 Bland-Altman Plot for baPWV estimation.. を用いて定めたところ感度,擬陽性率は境界 1 で 0.706, 0.294,境界 2 で 0.917,0.161 となった.得られた.リス ク判定評価指標をまとめて表 1 に示す. 3・2. baPWV 推定パラメタの主成分分析. 本論文で解析の対象とした baPWV 推定に用いるパラメ タの相互依存性を検証する目的で主成分分析を行った.分 析に際し,すべてのパラメタを正規化し,累積寄与率が 90%以上になる第四主成分までを表 2 に示した.第四主 成分までを重回帰分析した結果,修正決定係数 R2 は 0.415 となった.第一主成分の b/a-e/a の係数分布は,APG パ ラメタを用いた血管年齢推定において年齢との相関がある (b-c-d-e) /a の 重 み 係 数 分 布 =8> に 近 く,主 要 な 成 分 と なっている.このことから血管年齢指標といえる.第二主 成分はパラメタ 1Tae の重みが大きく反射波速度をあらわ 図 11 APG パラメタによる動脈硬化リスク評価の ROC 曲線. Fig. 11 ROC curve for the atherosclerosis risk evaluation based on APG parameters.. すと言える.第三主成分は他のパラメタと独立な e の変 動,第四主成分は年齢の係数が大きく年齢トレンドを表す 成分と言える..

(6) (52). 生体医工学. 4.. 考. 59 巻 1 号(2021 年 3 月). 察. 本論文では APG 波形パラメタによる baPWV 推定の可. る baPWV の APG 由来のパラメタによる推定可能性が示 されたことにより,臨床的な意味づけが明確なリスク評価 が可能になると思われる.. 能性を論じた.APG 由来のパラメタには脈波の末梢から. 5.. の反射波の戻り時間やその大きさと関連するパラメタ,. お. わ. り. に. a-e 間隔 Tae および APG の極値 d 等があり,それらパラ. 本 論 文 で は 加 速 度 脈 派 APG 由 来 の パ ラ メ タ を 基 に. メタを用いた重回帰分析により baPWV 推定の可能性を定. baPWV を推定し,動脈硬化リスク指標とすることを提案. 量的に検証した.さらに,被験者のうち baPWV の測定値. した.APG による従来のリスク指標に比して,baPWV. が基準を超える者を動脈硬化リスク群とし,APG に基づ. を媒介指標とすることにより,客観性を持った評価が可能. く baPWV の推定値に閾値を設けリスク評価を行うことの. となろう.今後の課題としては,信頼性の高い計測,処理. 可能性を示した.定量的なリスク基準が定められている指. の最適化を進めるとともに,標準化に向け,動脈硬化症例. 標として baPWV を推定目標値とすることにより,APG. を含めたデータの蓄積を進めたい.APG の複数計測点を. より意味のあるリスク評価指標を得ることができる.リス. 用いた手法=12, 13>との比較も興味ある課題と言える.さ. ク評価の精度向上には,さらなるデータの蓄積,特に今回. らに APG からは自律神経機能を評価する目的で PP 間隔. 被験者に含めていない動脈硬化症例を多数含めた大規模. の計測も可能であり,本論文で提案する動脈硬化リスク指. データによるデータ分析が必要となる.. 標と合わせて日常的かつ総合的なヘルスケアシステムの核. baPWV の予測パラメタとしては APG の持続時間 1Tae. とすることを目指したい.. が単回帰で相関値が最も高く重要な役割を果たした.従来 の APG を用いた動脈硬化の指標として血管年齢の推定 =10>があり,そこでは年齢に伴い極値 b,d の傾き Sbd が. 利益相反 日本生体医工学会の投稿規定の基準による開 示すべき利益相反関係は無い.. 年齢とともに正から負に向かって変化することが指摘され ている.本研究においてもこの傾き Sbd を baPWV の推定. 謝辞. 熱心に討論頂いた法政大学理工学部坂田琴実氏. に取り入れることを当初想定していたが,単回帰で有意な. 3D プリンターによるエンクロージャーの製作を担当頂い. 相関は見られなかった.1Tae を除いて正規化された極値. た法政大学理工学研究科濱健吾氏に感謝の意を表します.. d/a が baPWV と顕著な相関を示したため,推定指標とし. 文. て採用した. 主成分分析の結果,四次までの主成分に意味づけができ. 1.. Word Health Organization : Global Health Estimates 2016 : Deaths by Cause, Age, Sex, by Country and by Region, 2000-2016, Geneva, World. たことは興味深い.しかしながら四次までの主成分を用い た baPWV の推定は単回帰で得られる相関係数を基準とし. 献. Health Organization, 2018. 2.. Yamashina A, Tomiyama H, Takeda K, Tsuda H, Arai T, Hirose K, Koji. てパラメタを選んだ重回帰による推定精度を超えることは. Y, Hori S, Yamamoto Y : Validity, reproducibility, and clinical signifi-. なかった.このことは,推定に貢献しないパラメタが4雑. cance of noninvasive brachial-ankle pulse wave velocity measurement.. 音5として推定の妨げになったためと思われる.主成分分 析結果において重要な推定パラメタ d/a,1Tae および年 齢が異なる直交軸で主要な項となり,ほぼ直交しているこ とは興味深い結果と言える. baPWV 推定精度向上のためには,データ処理法の開発. Hypertens Res. 25(3), pp. 359-364, 2002. 3.. indicator of arteriosclerosis in hemodialysis patients. Atherosclerosis. 176(2), pp. 405-409, 2004. 4.. Yamashina A, Tomiyama H : Arteriosclerosis and pulse wave velocity.. 5.. Tanaka H, Munakata M, Kawano Y, Ohishi M, Shoji T, Sugawara J,. Nihon rinsho. Jpn J Clin Med. 62(1), pp. 80-86, 2004. Tomiyama H, Yamashina A, Yasuda H, Sawayama T, Ozawa T :. に加え,APG の安定した計測が重要な役割を演ずる.安. Comparison between carotid-femoral and brachial-ankle pulse wave. 定した波形を得るために独自のセンサーエンクロージャー. velocity as measures of arterial stiffness. J Hypertens. 27 (10), pp.. を導入したが,本手法の実用化に向けては,センサー自身 の特性,エンクロージャーの形状の最適化・標準化を行う. 2022-2027, 2009. 6.. Millasseau S, Kelly R, Ritter J, Chowienczyk P : Determination of agerelated increases in large artery stiffness by digital pulse contour. 必要があろう. 第一節「はじめに」で述べたように APG 由来のさまざ. Takenaka T, Kobayashi K, Suzuki H : Pulse wave velocity as an. analysis. Clin Sci. 103(4), pp. 371-377, 2002. 7.. Homma S, Ito S, Koto T, Ikegami H : Relationship between accelerated. まなパラメタが動脈硬化度の指標として提案されている. plethysmogram blood pressure and arteriolar elasticity. Phys Fitness. が,いずれもそれらパラメタと末梢血管の進展性など,個. Sports Med. 41(1), pp. 98-107, 1992. (In Japanese) 本間幸子, 伊藤昭治, 古藤高良, 池上晴夫 : 指尖加速度脈波と血圧および. 別の血管状態を表す指標との関連が示されていたり,必ず しも臨床的な意味づけが明らかでない血管年齢の推定など に留まり,明確なリスク基準値が示された指標とはなりえ ていない.本研究で動脈硬化のリスク基準値が知られてい. 細動脈弾性率との関係に関する研究. 体力科学. 41(1), pp. 98-107, 1992. 8.. Takazawa K, Fujita M, Matsuoka O, Saiki T, Aikawa M, Tamura S, Ibukiyama C : Assessment of vasocative agents and vascular aging by the second derivative of photoplethysmogram waveform. Hyperten-.

(7) 廣瀬玖実ほか:加速度脈波に基づく脈波伝搬速度の推定. 9.. sion. 32(2), pp. 365-370, 1998.. 小野. Baek H, Kim J, Kim Y, Lee H, Park K : Second derivative of. 1992 年日本医科大学医学部卒業.1999 年日本. photoplethysmography for estimating vascular aging. The 6th Interna-. 医科大学院卒業(医学博士).同年ロンドン大学. tional Special Topic Conference on Information Technology Applications in Biomedicine, pp. 70-72, 2007. 10.. Kimura Y, Takamatsu K, Fujii A, Suzuki M, Chikada N, Tanada R, Kume Y, Sato H. Kampo therapy for premenstrual syndrome : efficacy. 11.. 卓哉(オノ. タクヤ). 聖ジョージ医学校循環科学科留学.2001 年日本 医科大学附属武蔵小杉病院内科助手.2002 年日 本医科大学附属病院集中治療室助手.2004 年日. of Kamishoyosan quantified using the second derivative of the. 本医科大学第 1 内科助手.2016 年医療法人社団. fingertip photoplethysmogram. J Obstetrics Gynecol Res 33 (3), pp.. 桃医会小野内科診療所院長.2017 年東京医科歯科大学院修士課程. 325-332, 2007.. 医療管理政策学コース修了.日本医科大学循環器内科非常勤医師.. Tanaka H, Munakata M, Kawano Y, Ohishi M, Shoji T, Sugawara J,. 日本内科学会認定専門医,日本循環器学会認定専門医.. Tomiyama H, Yamashina A, Yasuda H, Sawayama T, Ozawa T : Comparison between carotid-femoral and brachial-ankle pulse wave velocity as measures of arterial stiffness. J Hypertens. 27, pp. 2022-2027, 2009. 12.. 平原. 誠(ヒラハラ. マコト). 1992 年法政大学大学院修士課程修了.同年松. Fujimoto K, Sano Y, Watanabe E : Application of accelerated plethys-. 下 電 器産 業 (株)入 社,同 年松 下 技研 (株) 出 向.. mography for measuring pulse wave velocity. Jpn J Ergonomics. 48. 2000 年法政大学助手,講師を経て 2010 年より同. (6), pp. 285-294, 2012. (In Japanese). 大准教授.博士(工学).ニューラルネット,視. 藤本浩一, 佐野裕司, 渡邊英一 : 脈波伝播速度計測における加速度脈波の 応用. 人間工学. 48(6), pp. 285-294, 2012. 13.. (53). Chakraborty G, Ikeda E, Takahashi H, Kinoshita T, Bornand C : Proposal of a cheap pulse wave velocity (PWV) meter using. 覚心理,最適化などの研究に従事.電子情報通信 学会, 日本神経回路学会,日本知能情報ファジィ学会等会員.. photoplethysmography. 2018 12th International Conference on Sensing Technology (ICST), 4-6 Dec. 2018.. 八名. 和夫(ヤナ. カズオ). 1979 年早稲田大学理工学研究科博士課程修了 (工学博士).順天堂大学医学部助手をへて 1984 廣瀬. 玖実(ヒロセ. クミ). 2019 年法政大学理工学部応用情報工学科を卒 業.同年より同大学院修士課程在学中.生体信号 処理による循環器系疾患早期発見に向けた研究に 従事. 日本生体医工学会準会員,IEEE 学生会員.. 若林. 哲(ワカバヤシ. サトシ). 1991 年法政大学大学院工学研究科電気工学専 攻博士後期課程修了(工学博士).同年東芝マイ クロエレクトロニクス株式会社入社半導体設計用 EDA 開発に従事.2011 年-16 年株式会社半導体 理工学研究センターへ出向し,上級研究員として MOT,IoT,大 学 教 育 な ど の 研 究 業 務 に 従 事. 2015 年より法政大学理工学部応用情報工学科兼任講師.生体信号処 理を応用した IoT システムの開発に従事. IEEE 会員.. 年法政大学工学部専任講師.1992 年より同大教 授,現在に至る.その間 1989 年-90 年 MIT 客員 助教授.1994 年-95 年生体信号処理・解釈研究会 長.生体信号処理とヘルスケアへの応用に関する 研究に従事. 日本生体医工学会,電子情報通信学会,IEEE 等会員..

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Fig. 1 Sensor Enclosure
Fig. 6 Fused APG extreme value processing by the PPG 3 rd derivative.

参照

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