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アメリカ連邦所得税法における必要経費について-給与所得の必要経費を中心に-: 沖縄地域学リポジトリ

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(1)

Title

アメリカ連邦所得税法における必要経費について−給与

所得の必要経費を中心に−

Author(s)

石島, 弘

Citation

沖大法学論叢 = OKIDAI HOGAKU RONSO, 2(1): 67-110

Issue Date

1976-03-31

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12001/6463

(2)

アメリカ連邦所得税法における

必要経費について~工

一給与所得の必要経費を中心に-

石島弘

111 123 111 はじめに 必要経費の憲法上の問題 必要経費の立法史 111 456 111 必要経費の法的基礎 必要経費の内容 結びに

目次

(1)はじめに

Holmesはその箸「コモン゜ロー」(c・mmonLawbの冒頭`、文章で陸

の生命は論理ではなく、経験であった。」と述べている力、それはアメリカ で法がどう考えられているかを単的に表現した文章であろう。

常に変動する社会の中で法の固定性よりも発展性を重視し、理論よりも社会

的事実に、論理よりも経験に重さをおく考え方である。このような思考は、

具体的事件に対してなされた裁判所の判決の中に在る法を第一次的法源とす

る判例法主義をアメリカの法制が採っていることに関係することが多いと思

うが、この基本的な考え方は制定法を第_」衰的法源とし条文の厳格な解釈適

用が要求される税法の世界でも妥当しているように思う。 「課税(taxation)はす と課税は常にいい友人関係に 政策を強く反映するきわめて われることが多いから、その 値性も、それが人々の日常生 「論理 は国家 段に使

清…

禿`らq 』治

鯰で;

とが多いから、その理論やその中で使われている語句の概念の有価 それが人々の日常生活の中で役立つことが先づ必要であり、この必 -67-

(3)

要性(有用性)という実践的効果が正否の判定基準とされる。そこには、い わゆるプラグマティズム的思考が根底に在ると言える。 必要経費は税率や課税標準などと同じく納税義務者の税額を決定する重要な ファクターであるから、それに対する権利意識は高くなければならない。勵 税者の法的地位を憲法上の基本権の観点からとらえなおせば、公権力の不当

な課税に対して納税者がこれを拒否する権利が納税者にあるのではないか」

との認識から「納税者基本権」が提唱されているが、納税者の「必要経費控

⑤ 除権」を憲法上の権利としても、もしくは憲法上の基本権の観点からとらえ ることはできないだろうか。課税所得は総収入金額ではなく、それから必要 経費を控除した純所得であることが所得税法の本質的要請とされるが、日本 ⑥

税法は行政の便益が優先しisウユ、給与所得者に必要経費の控除権を認めてい

ない。

Holmesを継承するCardozoら、必要経費け必要,,(Ordinarym

necessary)の基準を法の支配(Ruleoflaw)の基準でなく生活の

方法(awayoflife)の基準とし、その具体的内容は豊富な生活体験

の中でのみ知りうる、としていう。このことから推考すると、必要経費概念

を一般的抽象的に説明することは困難であり、またその有用性もないであろ う。そのことは憲法上の概念にしても制定法上の概念にしても同様である。 しかし、判例や実務の扱いなどを通して連邦所得税法における必要経費に ついて給与所得の必要経費を中心に概念し考察し、一応の理解をしておきたい 註

①OノipeWelzde〃Ho/mes,TノbeCollzmo〃Law,Marルル"oノルH0"e編集(19

63年)5頁

②伊藤正巳・アメリカ法入門(昭和43年)171頁以下

田中和夫・英米法概説(昭和46年)122頁

③FarmersLoα〃Tγ卿jCo.’M伽esota,班OU.S、204.2,(1930年)

④so""e6ro〃aos・UCUγe#oM62U.S、522(1923)でのMcrey"o/dsの少数意見。

⑤浦田賢治・「納税者基本権」と大島違憲訴訟、法と民主々義56号12頁。北野弘

久・「大島税金訴訟と憲法判断」法学セミナー(1974年8月号)27頁

⑥京都地裁に民),昭和49年5月30日判決,昭和41(ウ)10-いわゆるサラリー

マン訴訟判決,シユトイエル147号(1974年6月)

-68-

(4)

⑦京都地裁前掲判決 ⑧Ca,mdozoは法の考え方もプラグマティズムの思想に立脚し法を固定した過去の ものとせず現実の社会に即応した将来の規範の予言であるとするするHMmes の法予言説を継承し、連邦最高裁判所判事としてもHMmesの後任としてその退 宮の年1932年に最高裁を入り.していろ。 ⑨”eノcハ⑳.HeZひerj喝290U、S、121,115(1933) -69-

(5)

(2)必要経費の憲法上の問題

国家の財政需要が増大すると、普通必ず税法改正がおこなわれ増税がはか

られる。課税物件の拡大、課税標準の変更、税率の引き上げなどにより課

税基礎が拡大されて財源が確保されることになる。課税(Taxation)は国

など行政主体の収入を得る手段であるから、行政主体がその財政需要の増加

に対処するために課税範囲の拡大を要求することはけだし当然と言えよう。

しかし単に増収が目的であればいわゆる課税要件の拡大だけでなく、課税所

得を算定する過程で考慮すべき控除の範囲を制限することも実質的に税収の

増化をもたらすことになるから税率の引き上げなどと同様に増収の方法と

して機能する。控除の範囲を制・限すれば課税所得額は増加し、課税対象額が

多くなり晶分だけ税収が多くなる。逆に控除の範囲を拡大すれば課税され

る所得額は減少し納税額も減少するから納税者の税負担は軽減され課税主体

の税収はその分減少することになる。控除の操作により税額が増減すること

は国民の財産権の保護の上から控除に関する納税者の法的地位に軽視できな

いものがあることを意味する。

税率など上記課税要件等については、税法の最高法原則である租税法律主

義の厳格な適用が主張されるが、控除を租税に関する重要事項として挙げる

意見をあまりきかない。租税法律主義は租税に関する憧要」な事項、例え

ば、納税義務者、課税物件、課税標準、税率などの課税要件や、租税の申告

納付課税処分、滞納処分などが前もってすべて法律で定められていなければ

ならないとするMg租税の賦課徴収を国民代表議会が制定した「法律」

に基づかせることにより、税法の執行機関である税務官庁や裁判所の盗意的

判断を防止し、国民の財産権を擁護しようとする原則で雷。租税法律主義

の内容は「国民の正義衝平の観念に反する等立法府がその裁量を逸脱し、当

該租税法規が箸るしく不合理であることの明白である場合」のほかは「立法

政策的裁量に委ねるほか」ないとされる。

アメリカの連邦所得税法に占める鍵制度の地位は内国歳入法典や税法の

-70-

(6)

ケースプック、研・究書等を一見しても解るようにきわめて重要であ

り、同税制の最も重要な構成要素(integralpart)の一つ

である。この所得税法の基本的構造は所得税法が最初に制定された

頃から変らなけ「経費控除権」に対する権利意識は研究者や納税

者の間にも強く存在しその証拠にそれに関する判例の数は非常に多

い。

本論稿の主題である「必要経費」については「経費控除権」の説

明をした後に「控除(deductio、)」の中から抽出して「必要

な経費」の用語を特定してから考察する。控除の問題は課税所得と

の関係で存在する。課税所得が総収入金額であれば控除の問題は考

察の対象にならないし、税制で重要な構成要素とされる必要はな

い。

そこで課税所得概念の考察が必要になるが、後述のように連邦税

法は課税所得を総収入金額(grossincome,grossrece-

ipt,allreceipt,entireproceeds)から控除がなさ

れて残った純所得(netincome,netprofit)であるとす

る建前を古くから採っている。しかし、それは制定法の建前であり、

そのことが即憲法の要請であることにはならない。

連邦憲法修正第16条は「連邦議会は、いかなる原因から得られ

る所得に対しても、各州の間に配分することなく、また国勢調査も

しくはその他の人口算定に準拠することなしに、所得税を賦課徴収

する権限を有する」と規定と、「所得」の語を用いている。この語

意について、最高裁判所は無数の判断を示しているが、その中で最

も有名でリーデングケースといわれる株式配当の所得性について判

断したEi…川MaComPeらは、同条項の所得をF資本、労

働又は両者の結合から生ずる利得(gain)であると定議される。

但し所得は、資本の売却又は交換(Conversion)から生ずる稼得

-71-

(7)

利益(Profitgained)も含む」と解して、「利得(gain)」を強調

し、利得を資本価値の増大又は増加ではなく、財産から生じそれ自体独立し

て使用、収益又は処分の対象となる交換価値のある利得・利益であるとして

いるから、最高裁判所の理解の中に課税所得を総収入金額ではなく、純所得

とする観念があることがうかがえる。

所得を課税標準とした1909年の連邦法人消費税法(Federalco-

rporateExciseLawofl909)の「所得」について、1918

年のDoylev・MitchellBros・CO.は次のように述べている。「こ

こで明白なことは、この法律の真の意図及鋒味が単に資本財産(capita1

assets)の交換による総収入金額(theentireproceeds)を所得と

解しているのではないということである。……すでにStrattolislnde-

pendencev,Howbert,231us、399,415で言われているよう

に、1N所得は資本、労働又は両者の結合から生ずる利得(gain川である。

この言葉が自然にもつ意味、又は、明白な語感から、資本財産の交換con-

version)が常に所得を生むとは言えない。もしそれを原価で売却すれば

(断じて所得は発生せず)、そこにあるのは損失又は支出である。」そして

最高裁判所は、材木販売会社の総売上げ金に課税しうるとする政府の主張を

しりぞけている。このような見解は、その後の判例でも何度もくりかえし述

べられているから⑮1909年のこの法人消費税法の所得概念と同じく憲法

修正第16条及び後の制定法は、課税所得は総所得から経費控除をした残額

の純所得であることを認めているといえる。

Knollenbergは、先に最高裁判所が修正第16条の所得を同条が発効

した当時の国民鑑の中で用いられた概念であると言っていることを前提に

しる実業家(b……man)や専門家の間でだけでなく、国民の日常生

活の中で使われる所得は純所得を意味しているから、憲法上の所得は純所得

であることは明白である。

例えば、財産売却の場合の所得は取引から生ずる利得(gain)を意味し

購入費が100万円の財産を120万円で売ったとすれば、この取引から生

-72-

(8)

ずろ所得は120万円ではなく、取引から生ずる利得又は利益(Prfit) の、20万円であるとする。もし取引から生ずる総収入金額が、原価より少

額になれば「所得」の発生は観念されず、その反対概念である「損失」が、

普通一般には観念される。 純所得は担税力を測定する最良の基準といわれるが、そうであれば、純所 得は担税力に応ずろ公平課税の目的を達成するのに最も基本的な課税要件で

あると言えよう。租税平等主義が租税法律主義とともに、税法の最高法原墨

であるが、この租税平等主義を担保するためにも、純所得課税は所得課税に おける基本的要件であると思える。 憲法上の所得が純所得とされば、総収入金額から純所得を抽出するには、 両者の間にある経費の控除を必然的に認めなければならない。国民は憲法上 の権利として、立法府の裁量で否定しえないある種の経費の控除権を有する と考えられる。 との問題を考察するために、控除(deductio、)を所得を得るために不可 避的に納税者が負担しなければならない経費の控除と、立法府が納税者に補

助金的目的で認める控除に分類して~亀。後者は、国民経済的、社会政策的

観点から勺立法府の自由な判断で認められる控除で、例えば、慈善寄附金控

除、医療経費控除、交際費控除な壱を一応その例とする。前者は、所得を得

るために不可避的に負担しなければならない経費の控除であり、憲法上の所

得が純所得であれば、法律で制限又は否定することの許されない一定範囲の 経費控除の存在が観念できる. 1913年の歳入法は鉱山の減耗控除を、生産された鉱物価額の5%以内

に限定していた。BalMoMinmgm事鮮、実際の減耗が5%以上

になった納税者が、同法は純所得に課税せず純所得額を超過した額に課税し たものであるから、憲法修正第16条に違反し無効であるとその合憲性を争 った事件である。最高裁判所は、当該税は所得税ではなく消費税であるとし

て、その経費控除については憲法上の制約はないから、控除範霞の認定は議

会の判断に委ねられると判示した。 -73-

(9)

この判決の中で、ある種の控除が法律で制限されることが違憲である旨の 積極的判断はされていないが、暗に所得税についてはこの問題のあることを 示している。 減耗控除は、鉱物資源が減耗部分の補償として認められる控除で、鉱業を 営む者の資本回収もしくは事業の継続を補償することによって地下資源の合

理的維持を目的とする経済政策的な法醤であり、しかも採掘された鉱物はそ

れ自体が資本であり、資本から生じた所得ではな苞。それは減価償却費控除

に類似するが本来違う性質のもので、所得を得るために生ずる経費ではない から、それは除外して消費税の控除は議会が専権を有すると判断したものと

恩え畠。しかし、この判断が後の判例でも誤って無原則に継受されたことか

ら、判例における経費控除権は制限され、その霊位は低下した。

HelveringvlndependentlifelnsCo.(1934)で、議 ⑳ 会は控除の内容を決定、制限又は否認することができる絶対的裁量権を有す ろ、となり、NewColoniallceCoov・Helvering292U.S、

43M40(193参では、、控除を認めるか、どの範囲で認めるかは、

立法的恩恵(legislativegrace)に委ねられている帆とされ、lnter-

stateTransitlinesv・Conmissioner319USo590(19

4墨)では、所得の控除は立法的恩恵であるということ、及び控除請求権

(therighttotheclaimeddeduction)の内容の明白な程度の 挙証責任は、納税者が負担する、とされることは現在では熟知された:原則 (rule)であるvuとなっている。それを文字通りに厳格に解釈すれば、控 除を全く否認して総収入金額を課税所得としうることになる。そうであれば 憲法上課税所得は純所得であるとした判例と矛盾する。

取得経費が、,00万円かかった財産を都合があ曾て,00万円で売った

場合に、純所得を課税所得とすれば100万円以上で売らなければ課税され ることはないが、課税所取を総収入金額とすれば、この100万円に対し課 税されるし、30万円欠損して70万円で売っても70万円を対象に課税さ れることになる。 -74-

(10)

担税力が減退しても、担税力の増加を認めて課税することになり、論理に 矛盾が生ずる。所得を得るために支払った給料とか、実際になされた人的役 務に対する報酬等の控除を全く否認して、総収入金額を課税所得とすれば、 場合によっては営業の自由を侵害することにもなる。所得を得るために、不 可避的に負担しなければならないd種類の経費の控除まですべて、立法府の 無制限な立法的恩恵と解しなければならない積極的理由は、ないように思え る。

1966年の連邦巡回控訴審判透に「議会はその控除についての権限を行

使して、所得を創出することはできない」とするが、最高裁判所は資本財産 価値の回収費(anamountsufficienttorestorethecapi-

talvalue,restorationofcapitalassets)の控除を除き、控

除は憲法的要件ではないと解している。この資本財産価値回収費は、所得を

得るのに不可避的に必要な経費ではなし窟。最少限このような経費控除は、

立法府の立法的恩恵、そして支配されないものと解すれば、純所得を課税所 得とする説と矛盾しなくなる。

Lamo魁は「連邦所得税は総所得(grosMncome)、又は総収入金

額(grossreceipt)に対する税ではなく、純所得(netincome) に対する税であるから、一般的な感覚で咽通常且つ必要帆と理解される経費 については、単にそれが道徳的に妥当とは思えないような場合であっても、

控除を否認できない」としている。Grisswo愚も、慈善的寄附金控除や

医療費控除等の控除は、本質的に納税者に対する公的補助金的性質の控除で あるから、立法府の政策的判断で決定されるが、事業経費控除は議会の専権 に服しないと解している。 本稿の「必要経費」の語は、所得を得るのに必要的に負担しなければなら ない経費を指すもので、内国歳入法典第162条の「事業経費」等の用語

、ordmaryandn…ary(通常且つ必要)鵬を指称通。

-75-

(11)

註 (1)Notes(RoBweユユMagiユユ),TaxaユUityo定GroBB IncomeUndertheSixteenthAmendment(1936).36 COユU、L・Rev、274.RoBweユユMagimandHenryW・de KoBmian,thelnternaユRevenueo召1954:Income, DeductjLons,GainBandLoBBeB,HarvardL,Review (▽oユ.68,1954)P202 (2)大法廷37年.2月21日判決.清永敬次.税法(昭和50年)28頁 (3)中川一郎監修北野弘久・清永敬次・税法用語小辞典(昭和46年)151 頁. (4)京都地裁(二民),昭和49年5月30日判決,和41(ウ)いわゆる サラリーマン訴訟判決,シュトイエル147号(1974年6月) (5)本稿はすべて1972年6月26日現在のC・OH社から出版された法令集、 InternaエRovenueCodeによる。ErwinN、GriBwoユd箸の ケースブック、Federaユtaxation(theFoundationPreBB Ino,1966)は、所得税法を次のように八節に分けて解説している。1. 序説2.所得概念3.納税義務者4.控除5.所得発生6.キャピタ ゲインと損出7.法人配当8.特殊問題 (6)DonaユdLLamont,ControvereiaユABpeotBo丑O- rdinaryandNeceeBaryBusineBBExpenBer・TneTa- xMagaBine(December,1974)P、808. (7)連邦憲法は直接税を賦課徴収するには、それを各州の人口に比例し、国勢 調査もしくはその他の人口算定に準拠した計算に基づく割合により、各州に 配分することを用件とした(憲法第1条2項3号。用件等1条9項4号)こ とから、憲法上直接税の賦課は用件充足が困難なことから、所得税を直接税 と解すれば、所得課税は困難になる。 最初の所得税は、この用件を備えた税法で、1861年に制定されている。

(MagiユユanddeKoBemian,Bupranotel・Griewo1d,

inrranotel54)。所得が直接税か間接税かの議論があった(前出のD -yエev・MitcheユユBros・CO・では、所得を課税した1909年の連 -76-

(12)

邦法人消費税法の税を消費税としている。Char1eBL.B・LowndeB, SpurioueConoeptionBoftheConBtitutionaユLaw o召Taxation,HarvardLawReview(voユ.47,1934 )P、648.参照 Springerv、UnitedStates,102us、586(1880)は 1864年(6月30日)の南北戦争所得税法(theCivユWarlnco- meTaxActoぞJune30,1864)の所得(income),利得( gainB)及び利益(Pro室its)に対する税を直接税ではないと判断してい る〕。 しかし間接税とされていた南北戦争所得税法の税が、最高裁判所の判例変更 で直接税と判断(poユユockvFarmerBLoanpTruBtCo.,1 58us、601,1895年)されたため、所得課税が困難になり、所得税に ついては憲法上の直接税課税要件を解除するために、この修正第16条を191 3年2月25日制定、発効した。 現在の連邦所得税法に関する諸税法令は、この規定を源泉しており、それ以 前の税法と区別して現代所得税法(ModernincomeTaxユaw)と称 されることがある。 (8)252us,189,40Sup,0t、189(1920) この判例を中心に株式配当の所得性について石島「アメリカ連邦所得税法 における株式配当(BtockDividend)の課税問題」沖大論叢第12巻 第1号(昭和48年)参照。 (9)247us,179,38Sup・Ct、467(1918) qOSouthernPaciricCo、VLowe,247U,S、330, 38Sup.Ct、540(1918).,GoodriohVEdwarde255 U.S、527,41Sup.Ct、390(1921), Bowersu・Kerbough-LmpireCq,271U,S、170,46 Sup.Ct、449(1926) (lDBernHardKnoユユenberg,Taxab1elncomeUnder theSixteenthAmqendment,theTaxMagaBine(voユ.ェ 1931)P、87 -77-

(13)

’ ⑫MerclユanteLoanandTruBtCo.▽・Smietaka,255U、 S、339,41SupCt、386,389,(1921),LynchV、Hornby, 247U,S,339,343,344,38Sup.Ct,543,545(1918L LiBnerV;Maoomber,252U、S、189,219,40SupCt、189,1 97(1920)で、HomeB判事は少数意見ではあるが、同じようなことを 言っている。 <1,Aユ至redG・Buehユer、thePriceoEFreed○m:Taxat- ionandFiBcaユPoucyinAmericanGovernment,by PeterH,OdegardandHanBHBaerwaユ.(1962)P、433 ⑭中川一郎編税法学体系(1970)P、52 ⑮ErwinMGriBwoエd・CaBeBandMateriaユBonFed- ra1Taxation(Bixtheditionl966)P、340 (10すでにEiBnerV、Macomberなどでもみたように、所得は財産(資 本)から生ずる利得であるが、労働者(給与所得者など)にとっては労働力 (体)が資本である。資本財産(体)から所得(給与など)を得るには、維持 費(研修費、教育費)や修理費(医療費)などが必要経費として控除されなけ ればならない。体を資産とすれば、医療費も当然必要経費と理解しなければな らない。 教育の資本的性質はこれまで確認されてきているし、それが納税者の所得稼 得力の可能性を高める(無体)財産であることも理解されているから、受けた 教育の減価償却費控除も理論的には観念できる〔PhiユipBHeoherユi- ng,TheFederaユTaxationoぞLegaユeducation:Pa- Bt,Present,andPropoBed,OhioStateLawJournaユ (▽oユ.27,1966)P,122 H・Heユmut,SomeTaxProbmmBoぞStudentBandSc- hoユare,45Ca1辻.L・Rev、153,154(1957). RichardA・Shaw,EducationasanOrdinaryandN- eceBBaryExpenBeinCarryingonaTradeorBu- BineBB,TaxLawRev.(VOL19,1963)P、8〕。 -78-

(14)

最近このようなHumanCapitaユの研究が広くなされている〔Wエユユー iamJ・Harey,HumanCapitaユ:TheChoiceBetweenl- nveBtmentandlncome,TheAmericanEoonomicReⅥ (▽oユ.LXIII,NU5)P,929,944〕。 ⑰StantonV、BaユtieMiningCo.,240U、S、103,36Sup. Ct、278(1916). ⑬id. ⑲松井豊「合衆国における石油減耗控除法制の成立と展開」、シュトイエル 246号34貢。 HerveringV・BankユineOUCo.,303us、362(1938) ⑳Griewoユd,FederaユTaxation(註15)P、455 CDアメリカ内国歳入法典は減価償却費(Depreciation)を167条以 下、減耗費(Depエetion)を611条以下に規定して162条の事業経費 (必要経費)とは区別して規定しているが、日本の所得税法及び法人税法では 必要経費または換金との額に算入することが認められていて、減価償却費も必 要経費の中にふくめている。 C2Magiユユ,SupraNotel,p,280 C3292U.S,371(1934) C4292U.S、435,440(1934) C51319U.S、590(1943) (20Magiエユ,TaxamitySupra・notel,P,281 mBユankV、CommiBBionero丑InternaユRevenueCer- tioraritotheCircuitCourt,ReadingsinFederaユ TaxationbyFFrankE.A・SanderandDavibWesti?- aユユ(1970)P、326 C8IMagiユユ,TaxabiユitySupranotel,P,279 (29Donamユ.Lamont・ControverBiaユABpectB orOrdinaryandNeceBBaryBuBineBBEpenBe,theT- axMagazine(December,1964)P821 COGriBwoユd,FederaユTaxation,Supranotel5 -79-

(15)

13,内国歳入法典第162条(a)の規定は、営業(trade)又は事業(bu-

Binese)に関する必要経費(ordinaryandnecesBaryexp- ense)であるが、営業や事業に従事しない個人が所得を得た場合の必要経費

については212条の規定を置き、①所得の造出もしくは取立て②所得造出の

ために保有する資産の管理、保存もしくは維持③租税の確定、徴収もしくは還

付に関する費用につき、その課税年度内に支払いもしくは負担したすべての通 常且つ必要な経費を控除することを認めている。 両条文における「通常且つ必要」の概念は同一内容とされる〔Samueユ BrodBkyandDavidMckibin,DeduotionoEnon二rr-

adeNon-BuBineBeEpensee,TaxLawReview(vo12,

1946)P,39.しかしこの論文は1939年の内国歳入法典のもとで書かれ

たもので、同法典では現行法典(1954年法)の212条は、23条(a)項(1)号

である。LamontpControverBia1ABpeotBSupranote29

P、808.〕

(3)必要経費の立法史

先に述べたように本稿でいう「必要経費」は、内国歳入法典162条を中

心に使われているHordinaryandnecessaryexpensesnを指す

ものである。第162条は営業又は事業と関連して所得稼得の経費に関する

ものであるが、営業又は事業と無関係に所得を得る場合の控除規定は同第2

12条である。後者の規定もHordinaryandnecessaryexpen-

sesNlの語を使っている。第162条の名称が営業又は事業経費(trade

orbusinessexpenses)であるのに対し、同条の名称は’所得造出

経費(expensesforproductionofincome)v,として前者を

区別している。両規定とも本質的には同性質と思えるから、憲法上の控除権

の対象になるものと思うが、控除すべき経費を特定するために、両者ともo-

rdinaryとnecessaryの形容詞を使っている。

必要経費がnecessaryexpenses(必要経費)ではなく、ordina-

ryandnecessaryexpenses(通常且つ必要経費)になった経緯を

-80-

(16)

みながら、必要経費の立法史を先ず概観しておきたい。 アメリカ合衆国の最初の所得税法は、土地所得を課税した1861年(8

月5日)法であso同法は土地から生ずる年収を課税物件とするが、総収入

金額に課税するのではなく、当該財産(土地)に対する税額をその中から控

除した。1862年(7月1日)薑は、1861年法の課税物件を拡大し、

年間利得(gains)、利益(profits)及び所得(income)を課税す

るものとし、控除は前年度法の税金控除と、合衆国公務員の給与控除を認め

た。同年相続課税(inheritancetax)を新設した。政府歳入増加をめ

ざすものと思える。1864年(6月30日)萱は、1862年法を基礎に

して高税率を適用した。しかし、控除の範囲も拡大し使用料、労賃、修理費

のほか、実際に支払われた利子や不動産損失の控除を認めている。この法で

、ordinarハの語がはじめて使用さる控除すべき経費を特定する形容

詞として登場してきた。同法の控除制度は、1865年(5月3日)着、1

867年(5月2日)着、1870年(7月14日)蕾等に維持されている

控除制度としても重要な法律であるこの1864年法は、南北戦争(Ci-

vilWar)のための戦費徴達に大きく機能したようで、終戦次の1866

年にはこれまでの最高の税収をもたらした。これは南北戦争所得税法(c-

MlWa[IncomeTaxAct)とも称されるが、1867年法では税

率を大幅に軽減した01880年同法の憲法適合性が争われたが、Sprin-ge『v・umtedStat渇はそれを合憲とした.

1894年(8月27日)霊は、ウィルソン関税法(WilsonTariff

Act)と称されるが、法人の控除制度について「実際に負担した事業運用

経費を超過する純利益、又は所得(netProfitsorincome)」が、

課税所得であるとし、事業経費、運用経費の控除を認めている。個人の場合

には「事業(Business)、勤務(occupation)、職業(Profes-

sion)を維持するために実際に負担した必要(necessary)経費は控除

する」とし、はじめて、e…s川の語を用い19`要経費控除を認めM

のほかに負債、利子、税金、損失、貸倒金(baddebts)の控除が認めら

-81-

(17)

れる。同法は関税率(tariffrates)は引き下げたが、1872年法

で廃止された所得税を復活させて、所得課税に強化し、内国歳入庁(Bur-測蝋:勤鵜W鰯雲,M墓び地方鬮鮴

債から生ずる所得に課税する同法の当該条項を違憲と判断したことにともな い、所得税部の活動は1895年4目8日停止した。同法はその課税の部分

は直接税であるが、各州に人口に比例して配分されず、憲法の直税課要件に

合致しないとの理由で同年5月20日、全面的に違憲とされた。

~米西戦争(1898年)は議会を再び増税させることになったが、数種の

税の中で相続(legacies)課税がKnowltonVMooro(190&)

で合憲とされ、大きな財源となった。しかしこの米西戦争税は、事実上19

02年(4月12日)法で廃止された。 1909年法は、5,000ドル以上の法人純所得の1パーセントを税として

課税したものであるが、Pollock判例の場合とは違い最高裁判所の支持を

得ている。両裁判の相違点は、1909年法は法人の形態で事業を営む特権

に封し鵠税するものであり、収入によって測られる消費税で、間接税であ

るとされる点である。同法は1913年法に継受されるが、以後の一般所得

⑯ 税法の前身として重要な位置にある。

1913年2月25日には現代所得税法の源泉である憲法条項の修正第1

6条が制定ざ盗そのもとで同年10月3日‘1913年法が制定されて、

個人及び法人の純所得が課税されることになった。この歳実法は、法人の場

合の純所得の算定には、事業の維持及び運営のために負担した「全ての通常

且つ必要経費(alltheordmaryandnecessaryexpenses)」

を控除するとし、始めてordinaryとnecessaryを結合して使うように

なった税法であるが、非法人納税者の場合にはordinaryは付さず、単に

necessaryexpense(必要経費)としている。両者を区別したことに

ついて、議会では何等説明していな造しかし、1919年法で両者は統一

され、法人及び個人の事業についての「通常且つ必要経費」の控除が認めら

-82-

(18)

現在のような形になった。 1913年法で発展拡大され、その後定期的に再制定される』慣習になった が、1928年法で所得税法の形式は広範な改訂がなされ、1939年議会 は歳入法を定期的に再制定することの手数を除くため、1939年内国歳入 法典(InternalRevenueCodeofl939)を制定し、連邦歳入 法制の'恒久法化を計った。 現行の1954年内国歳入法典は、1939年法典を全面改訂したもので ある。必要経費については、1918年法の語句の使用法に若干の差はある が、実質的には1918年法と同じであり、以後全く変更されていない。 必要経費の制度は、形においては1919年法、1918年法に遡及する が、その源泉は所得を得るために負担した使用料、労賃、修理費等の控除を 認めた1864年法にみることができる。同法では必要経費を抱括的に規定 していないし、「通常・必要な使用料」とか「通常・必要とされる修理費」 などと、経費を限定するような規定のしかたも採っていない。しかし、or- dinaryとかnecessaryの語は経費控除を限定するための用語ではなく そのために「必要経費」の範囲を狭く解釈すべきではないことは、立法過程

でも言われていることであ愚。

註 (1)l2Stat,309(1861) (2)12stat,473(1862) (3)13stat、223(1864) (4)BarnardWoユman,ProreBBorsandthe1Aordinary andneceBBaryNhbuBineBBexpenBe,UniverBityo超 pennByユvaniaLawReview(vo1.112NU8,1964)P・l092 notel5. (5)13Stato467(1865) -83-

(19)

(6)14stat、471(1867) (7)16stat,256(1870) (8)SpringerV、UnitedStates,102us、586(1880) (9)l02US,586(1880) UCI28Stat,553(1894) (mBupranote4 (l2Griewoエd・FederaユTaxation,Bupranote(2)15P、4 (l3PoエユockV、Farmers,hLoanTruetCo.,Bupranote (2)7. M178U.S、41(1900) (l9mintV,StoneTracyCo.,220U,S,107(1911) q6IBeeBupranotel2. (17)Bupranote(2)7 qGI38Stat,172(1913) (l9iBupranote4

(20Note(EwinN、GriBwoユd),AnArgumentAgainst

theDoctrinethatDeductionshou1dbenarrow- ユyconBtruedaBaMatteroどLegiB1ativeGrace, HarvardL・Review(VOL56,1943)P、1145. Bupranote4

(4)必要経費の法的地位

わが国の所得税法は収入金額とすべき金額(又は総収入金額に算入すべき

金額)を、原則としてその年において収入すべき金額とし、金銭以外の物ま

たは権利その他経済的な利益をもって収入する場合には、それらのものの価

額(所361,所令84)としている。そして給与所得などは除外して、不

動産所得、事業所得、山林所得、診療所得、一時所得及び雑所得の課税金額

-84-

(20)

をその年中の収入金額から必要経費を控除して算定する法制になっている。 必要経費の内容は、譲渡所得、一時所得、山林伐採または譲渡にかかる所

得以外の所得については、別段の定めがあるものを除き、総収入金額に係る

売上原価、その他総収入金額を得るために直接に要した費用の額と、その年 における販売費、一般管理費、その他これらの所得を生ずべき業務について 生ずる費用の額としている。 この概念は、費用収益対応の原則に立却した時間対応の原則と家計費用排

除の原則を骨子とし、その内容は自己労力等無体財産の必要経費性を否認し

原則として収入金額を得ることについて直接的に必要なもののみを必要経費

とするものであ島。

個人の健康と労働力だけを資本として生活する給与所得者にも、事業所得

等のその他の所得と同様に必要経費の概念を理論的に認められ畳が、収入の

増加と直接に結びつく費用、即ち収入金額を得るのに直接必要な経費の存在

が考え難いとか、必要経費と家事費ないし家事関連費との区別が困難である

などの理由で、現行税制はこれを認める、かわりに給与所得控除制度を定め

ているにすぎない。 ④ 所得の種類を7つに分類する西ドイツ所得税法は、給与所得について他の 所得の場合と同じく、課税所得の算定にあたり収入金額から必要経費を控除

することになっており、しかもこの建前はライヒ所得税法以来の一貫とした

法制のようであgoアメリカ連邦所得税法でもこの基本構造は、古くから採

られていることは先に述べた通りである。 総所得から課税所得である純所得に達するまで経費の控除しなければなら ないが、ここで控除の中核をなす必要経費(事業経費)の法的基礎について 検討する。

内国歳入法典第63条(a)は、課税所得の定義の一般原則を「(b)項

に定める場合を除き、この編(subtitle)の適用上課税所得(taxab-

leincome)の語は、総所得から第4款(第141条以下)により認めら

れる概算控除(standarddeduction)以外の、この章(chapter) -85-

(21)

によって認められる控除を差引いたものを意味す&」とし、概算控除を選択

した個憎ついて(b)項は「第'44条に基づき、第4款(第'41条以

下)に定める概算控除を用いることを選択した個人の場合には、この編の適 用上課税所得の語は調整総所得から次のものを差引いたものを意味する。 (1)当該概算控除(2)第151条に定める人的所得控除による控除」と定 めている。

概算控除を選択する個人の場合は、課税所得=総所得一調整総所得(a-djUstedgrosMncome)-概算控除-人的所得控除の形にな志一

般原則の概算控除を選択しない場合は、課税所得=総所得一控除(経費)と なる。 一般原則について検討することにすると、総所得から差引かれるべき控除 は、本稿の主題である必要経費(事業経費)について規定する第162条か ら第188条までに規定された個人及び法人に対する項目控除(itemized

deduction詮と、第211条から第218条までに規定する個人に対す

る追加項目控霊、及び第241条から第250条までに法人に対する特別控

篭が対象になる。総所得について第61条は、原則的定義を「この編におい

て別に定める場合を除き、総所得(grossincome)は次に定める諸項目 (但しこれに限定されない)を含み、いかなる源泉から取得されるかを問わ ずすべての所得を意味する」として、役務に対する対価等15項を列挙して

いる。この,5項目は限定列挙ではなく、「但しこれに限定さ震ない」から

例示列挙である。 この総所得から上記の控除が差引かれて課税所得が計算されることになる が、実際には税法に各種の特別規定が設けられているし、判例や行政取扱い

いにより広範囲にわたる所得項目が「総所得」から除外されているから、全

所得から非課税所得項を除外して「総所得」が決定される。

課税所得を計算するために、総所得から差引かれる控除は、所得を得るた めに不可避的に負担しなければならないものと、議会の裁量によって認めら れる法定控除に分類し、前者の例として必要経費(事業経費)を挙げた。こ -86-

(22)

の必要経費の原則規定を第162条(a)は、次のように規定している。「営

業(trade)又は事業(business)の運営において、課税年度内に支払

いもしくは負担したすべての通常且つ必要な経費(ordinaryandne- cessaryexpenses)を控除として認めるものとする。 次に掲げるものもその中に含める。 (1)俸給もしくは実際になされた人的役務に対するその他の報酬に対する 合理的範囲の額 (2)営業又は事業の遂行のために、家族を離れ(awayfromhome)て いた間の旅費(食事及び宿泊のために支出した金額で、その事情にかん

がみ贄沢もしくは過大で趣いものを含む)

(3)営業又は事業のために納税義務者が権限を取得しないか、取得しない であろうもしくは衝平法上の権利(equity)を有しない資産の継続的 使用、もしくは占有の条件として支払わなければならない賃借料もしく はその他の支払金」。 総所得の場合、その定義を包括的に規定したあと、具体例を15項目例示 列挙したが、必要経費についても同じスタイルで、先ず包括的定義を示した 後に具体例を列挙している。 これは連邦所得税法が、日本税法や西ドイツ税が所得を10又は7種類に 分類しているのとは違い、包括的に定義し所得を分類しないからである。給 与所得という分類もないから、個別的に給与所得について必要経費の控除を 認める規定もなく、給与所得の必要経費も第162条(a)の解釈適用で控 除が認められることになる。 註 (1)忠佐市「租税法要綱(第6版)」126頁。 (2)京都地裁(二民)、昭和49年5月30日判決、昭41(行ウ)10、所得 税決定処分取消請求事件、シュトイエル147号(1974年6月号)27頁。 -87-

(23)

(3)同京都地裁判決。

波多野弘「いわゆるサラリーマン訴訟判決について(1)」シュトイエ

ル145号(1974年7月号)15頁。

(4)所得税法第28条Ⅱ.Ⅲ

昭和49年5月30日の京都地裁判決は、給与所得控除制度について次のよ

うについて次のように述べている。

「給与所得控除制度の趣旨は、次の4つの内容、すなわち

①給与所得には、その給与収入を得るために必要な経費というものが存在する

ので、その必要経費を概算的に控除する(必要経費の概算控除)。

②給与所得は、利子、配当所得および事業所得等に比べて、一般的に担税力に

乏しいのでこれを概算的に調整する(担税力の調整)。

③給与所得の捕捉率とその他の申告所得の捕捉率との間には、ある程度の格差

が存在するので、これを概算的に調整する(捕捉率の格差の調整)。

④給与所得は、その他の申告所得に比べて平均5ケ月程度早期に所得税を納付

しているので、この間の金利差を概算的に調整する(金利調整)。

という4つの内容を含み、これが総合されてその趣旨をなしているものと認め

られる。

そして、右のとおり、給与所得控除制度の趣旨には、給与所得の必要経費の

概算控除という内容が含まれているものと認められるが、同制度の趣旨には、

そのほか、給与所得の担税力の概算的調整、捕捉率の格差の概算的調整および

金利差の概算的調整という3つの内容も含まれており、以上4つの内容が総合

して給与所得控除制度を形づくっているため、必要経費の概算控除分が給与所

得控除制度の中にどのようにして織り込まれ、給与所得控除額のうちのいかほ

どの割合(ないし金額)を占めているのかは、必ずしも的確に画定されていな

い。

しかしながら、所得税の課税は、収入金額ではなく、それから必要経費を控

除した純所得を基礎にしてなされることが所得税の本質的要請であるので、所

得税法上、給与所得についてもこの点は最大限の考慮が払われているものと考

えられる(なお、給与所得控除額が収入金額の増加に伴い4段階で逓増してい

るのは、主に、給与収入の増加に応じて必要経費も一般的に増加すると考えら

-88-

(24)

れるのを反映してと認められることは前述のとおりである。)のに対し、給与

所得の担税力が利子、配当所得や事業所得等に比べて一般的に弱いというもの

のその計算数的格差は不明であり、しかも、給与所得の担税力の弱さに対する

考慮は、わが国の給与所得控除制度の沿革上は重要な意義を占めてきたもので

あったが、これはあくまで沿革的事実にすぎなく、かえって、給与所得の担税

力の弱さの主因が前のとおり給与所得の勤労的性質ないし非継続性にあると

すれば、農業所得や零細小規模の事業所得についてもほぼ同様の事情を窺知で きるのに、これらの所得の担税力の強さを考慮している制度は、所得税法上格

別存在していないことなどを照らして考えると、一般的には、給与所得の担税

力の弱さを立法上考慮するのは極めて適切であるとしても、給与所得控除制度

の中に織り込まれている給与所得の担税力の調整分を余りに重要視するのは、

必ずしも相当ではないと考えられ、また、給与所得と他の申告所得との間の捕

捉率に格差が存在するとしても、その具体的、計数的度合は各分的であるばか

りでなく、所得の捕捉率の問題は、後にも述べるとおり、本来単なる税務行政

執行上の事実上の問題にすぎないと考えられるので、これまた所得税法上、こ

の所得の捕捉率の格差の存在を考慮するのが適切であるとしても、給与所得控

除制度の中に織り込まれている捕捉率の格差の調整分を余りに重要視するのは

必ずしも相当ではないと考えられ、さらに、給与所得者が源泉徴収納税により

被ることのあるべき金利上の損失は、前のとおり、かなり僅少な額にとどま

ると認められるので、結局、給与所得控除制度の趣旨の中において、給与所得 の必要経費の概算控除分はその主要な地位ないし部分を占めているものと認め るのが相当である。

(5)清永敬次「給与所得課税と必要経費」法学論叢82巻2.3.4号21

6頁。 (6)連邦内国歳入法典第141条(b)パーセント概算控除(percentage standarddeduction) パーセントの概算控除は下表に示す調整総所得の適用パーセントで、下表に

示す最高額を越えない額(又は結婚している個人が、個別申告書を提出する場

合には下記最高額の半額) -89-

(25)

最高額 $1,000 1,500 21000 課税開始年度 1970……….… 1971………Ⅷ 1972及び1972年以降 適用パーセント ・・…10 ...…13 15 同第142条基礎控除を受ける資格のない個人 (a)夫及び妻、他方の配隅者の税が、第1条に基づき概算控除にかかわりなく 算定された課税所得を基礎として確定される場合には、概算控除は夫もしく は妻について認められないものとする。 (b)その他資格のない一定の納税義務者、概算控除は、次にかかげるものの課 税所得の算定に当っては認められないものとする。 ①非居住の外国個人 ②(合衆国の属領内の源泉からの所得に関する)第931条の適用を受ける 合衆国の国民 ③年度会計期間の変更のために12月未満の期間について、第443条(a) 項(1)号の申告書を作成する個人 ④相続財産もしくは信託、共同信託、基金または組合、 アメリカの内国歳入法(InternaユRevenueCode)の邦訳に、京 大比較税法研究会が訳し、税法学(日本税法学会編)に長期間登載されたもの があり、参考にしました。 (7)同144条概算控除の選択 (a)選択の方法及び効果 ①申告に記範された調整総所得が10,000ドル以上の場合は、納税義務者 がその申告書において選択した場合に限り概算控除が認められるものとし かつ財務長官もしくはその受信者は規則により申告書における当該選択を 表示する方法を定めるものとする。 申告書に記載された調整総所得が1o,000ドル以上であるが、正しい調 整総所得が10,000ドル未満の場合は、前段により概算控除を行なう納税 者の選択は、第3条(税額表に基づく税に関する)により課税される税を 納付するための選択とみなされるものとする。 -90-

(26)

前段の規定に基づき概算控除によることを選択しない場合には、第3条 により課される税を納付しないことを選択したものとみなされる。 ②申告書に記載された調整総所得が10,000ドル未満の場合は、納税義務 者が、第4条に定める方法で、第3条によって課される税を納付すること を選択したときに限り概算控除が認められるものとする。 申告書に記載された調整総所得が10,o00ドル未満ではあるが、正しい 調整総所得が10,000ドル以上の場合は、第3条によって課される税の納 付を納税義務者が選択することは、概算控除の選択をなしたものとみなさ れるものとする。 第3条によって課される税の納付を選択しない場合は、概算控除の選択 をなさなかったものとみなされる。 ③納税義務者が申告書の作成に当って、(1)号もしくは(2)号に定め る方法で、概算控除の選択もしくは第3条により課される税の納付の選択 をそれぞれ表示しない場合は、概算控除を選択しないものとみなされる。 ④申告書に記載された調整総所得が10,000ドル以下で、第4条(d)項 (5)号の理由で第3条により課された税を納付することを選択できない 納税者は、(第141条e項適用後の)概算控除が、(2)項にかかわらず 納税者の申告における選択により、適用される(本項は1971年以降適用 される。) (8)同第62条調整総所得(adjuBtedgrosBincome)の定義剛 この編の適用上、調整総所得の語は、個人の場合、総所得から次に掲げる控 除をしたものを意味する。 ①営業および事業控除、この章(ただしこの節の第7款によるものを除く によって認められる控除で、納税義務者によって行なわれる営業又は事業 が被用者として納税義務者が行なう役務の遂行を構成しない場合に限る。 ②被用者の営業および事業 (A)払戻し経費(reimburBedexpenBeB)蝋第6款(第161条 以下)によって認められる控除で、納税義務者ゑ雇主との払戻しその他経 費支給契約に基づき、納税義務者が被用者として行なった役務の遂行に関 連して、支払いもしくは負担した経費を構成するもの。 -91-

(27)

(B)家を離れた旅行のための経費、第6款(第161条以下)によって認め られる控除で、納税義務者が被用者として行なった役務の遂行に関連し て、支払いもしくは負担した家から離れていた間の旅費、食費および宿 泊費から成るもの。 (C)交通費、第6款(第161条以下)によって認められる控除で、納然義 務者が被用者として行なった役務の遂行に関連して、支払いもしくは負 担した交通費から成るもの。 (D)外勤セールスマン(outBideeaユeBman)、第6款(161条 以下)によって認められる控除で、納税義務者が行なう営業又は事業に 基因するもの。但し、当該営業又は事業が、雇主の事業の事務所を離れ て、雇主のために事業上の勧誘をなすことに有する場合に限る。 ③長期資産譲渡利得(1ong-termcapitaユgains)、第1202 条が認める控除 ④資産の売却又は交換による損失、資産の売却又は交換による損失として 第6款(第161条以下)により認められる控除。 ⑤賃貸料および権利使用料、第6款(161条以下]、第212条(所得の生 産のための経費)、および第611条(減耗控除)によって認められる控除 で、賃貸料又は権利使用料(rOyaユtieB)の生産のために保有する資 産に基因するもの。 ⑥資産の終身使用権者および所得受容者の一定の控除、資産の終身使用者 (ユ泄etenantB)又は遺産の相続人、受遺者もしくは受贈者の場合 第167条により認められる減価償却控除及び第611条が認める控除。

⑦自家営業による個人の恩給、利益分配、年金及び債券講入計画蝋第401

条(c)項1号の意味における被用者たる個人の場合には、当該個人のた

めに出された分担金による限度まで、第404条及び第405条(c)項に

より認められた控除。

③着任費の控除(movingexpenBe)第217により認められる控

除。 本条の規定は、同一の項目を2度以上控除することを認めるものではな い。 -92-

(28)

(9)個人及び法人に対する項目控除(itemiyeddeduction)は、第162 条(事業経費)から第188条(職業訓練施設及び児童保護施設出費の割賦償還 費)の間に規定される34項目である。 UCI個人に対する追加項目控除(additionaユitemiyeddeducti- On)には、所得造出経費、医療費、移転費(mOvingexPenBeB)等で ある。 UD法人に対する特別控除には、-部非課税利子、法人が受領する配当、一定の 優先株につき受領する配当、一定の外国法人から受領する配当、公益事業の一 定の優先株について支払われた配当、設立費等がある。 (1215項は次のものである。 ①報酬、手数料及び類似の項目を含む役務に対する対価②事業から取得さ れる利得(gaine)③資産取引から生ずる利得④利子⑤賃貸料⑥ 権利使用料⑦配当③離婚及び別居扶養料⑨年金⑩生命保険及び養老

保険契約からの所得⑪恩給⑫債務免除からの所得⑬組合(partn-erBhip)総所得からの分配持分⑭被相続人にかかる所得、及び⑮遺産 又は信託財産の権利からの所得 u3総所得から除外されるもので、法典で特定されているものに第101条から第 124条までに列挙された23項目がある。 例えば、一定の死因絵は、贈与及び相続、一定の政府債務に対する利子、傷 害又は疾病に対する補償、地方自治体等の所得、奨学金及び研究補助金、雇主 の便宜のために提供する食事もしくは住居、65才に達した個人の住宅の売却 又は交換による所得など。 判例や行政上の取扱で、総所得から除外されるものに株式配当、評価益、所 有者が占有する住居の賃貸価格(imputedユncome)、自家消費物品等が ある。

(5)必要経費の内容

同法典第262条は「との章において別段の定めのある場合を除き、個人 -93-

(29)

的、生計的又は家族的経費については、控除は認められない」ものとしてい る。この規定は、同第162条に対応する規定であるが、必ずしも積極的に 必要な規定ではなく、第162条から抽出できる規定と思えるが、連邦所得 税制もわが国の税制と同じく、必要経費の法制は費用収益対応の原則や期間 対応の原則、及び家事費用控除の原則を骨子としているものと思えろ。 人間が所得を消費するのは納税者として税法と関連する場合と、個人とし

て税法の対象外の場合がある。この両者の区別をすることが必要経費の内容

を特定する過程で先ず必要となる。しかし、必要経費(事業経費)は前述の ように-つの項目控除にすぎず、税法は他にも控除項目を認めているから、 この規定は、次の3つの問題点を考察する必要がある。 ①必要経費か個人経費か ②必要経費(経常費)か資本経費(減価償却費等)か ③違法所得の必要経費は控除されるか(PublicPolicyの問題) 162条の必要経費の内容を特定するには、この3つの問題点を考察する

必要があると恩えSが、前述のCardozoも言っているように、それを一般

的に説明することはきわめて困難であるし、又その有用性もないと思えるか

ら「豊富な生活体験」の表現といえる、即ち判例や行政上の扱いの中で。-

rdinaryandnecessary概念の内容の変遷について、追ってみること

が必要である。

判例や実務の取扱いは、①と②の問題と事業(tradeorbusiness)

との関連性の問題として発展し展開してきている。しかし、事業上通常に必

要な経費とみなされる経費であっても、それが即162条(a)の適用のも

とに控除が是認されるかというと、すみやかにそうは言えず、それが違法所

得と関連する必要経費である場合には、PublicPolicyのうえで問題が

残るとする意見もあるから、違法所得と必要経費の問題も検討する必要があ

る。

しかし、本稿ではこの点は触れない。先ず「通常且つ必要」の許容範囲に

ついて概観するわけで、「必要経費」の法的基礎である162条(a)の内

-94-

(30)

容と問題点を探り、更に「必要経費」の内容を概観したい。

1921年内国歳入局(1,t…lRevenuoS…Ceろは、医師の

職業(Profession)にとって医師が学会に出席するのに伴って生ずる交

通費、宿泊費等の学会出席費を通常且つ必要経費に当たらないとし、単に1

922巷には大学教員が研究活動することは、その本質的要請であるこ

とを認め、しかも教員(teacher)の専門家としての社会的評価と 地位(recognitionandstanding)を維持するには、研究 に従事しなければならず、そのためには研究費(researchex- penses)は不可決と認めながらも、給与所得者である教員の研究 するとしないにかかわらず、その給料が増減されることのないこと、 研究成果と所得発生の問に直接的関連性がないことを理由にその控除 に非認した。また研究費は、趣味的活動に要する経費と同じく個人的経

費とみなされるとし、学会出席費と同様にその必要経費性を否認した。

しかし、1925毒租税裁判所(thoBoardomxAppeals)で

牧師の教会会議出席費が、牧師の教会における地1位及び職位(standing

andposition)上、教会の会議に出席することは、その本質的要請であ

るとする認識からその控除を認めた。税務官庁は、必要経費性の判定基準を

当該経費と所得発生の直接的関連性を要件とみる立場から、大学教員の場合

の専門家としての評価及び職位(recognitionandstanding)は個

人経費と理解したが、本件の租税裁判所はその要件を否定し、事業の内容と

経費の関連性を基礎として判定すべきであるとして、納税者の業務を遂行す

るうえでの地位及び職位(standingandposition)が、控除を考え

る鍵になるとしている。

1927年のSilv…ロ事椿も租税裁判所は同じ考え方を堅持し、

大学教授のその専攻分野の学会出席費の控除を認めた。大学教員には不断の

研究活動が期待され且つまた要求(expectedandnecessary)され

るし、また(そうすることが)大学の利益(interests)増進になる、の

理由からである。 -95-

参照

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