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プラスチックの素材としての魅力付けのための基礎的研究(1) : 生活の中のプラスチックに関する意識調査から

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岡山県立大学デザイン学部紀要 vol.2 No.l 論文

プラスチックの素材としての

魅力付けのための基礎的研究 (1)

生活の中のプラスチックに関する意識調査か 5

村木克爾

藤戸琢也

1. はじめに プラスチックが誕生して 200年余り、そのプラスチッ クが我が国に伝わり、高度経済成長を経た現在までの 100年間に、我々は急速にとの素材を利用するようにな り、その結果、私達の生活は、「便利さ」という新しい 価値観と共に著しく変化し、現在においては、プラスチ ック素材は必要不可欠な存在となっている。 また、今日 に至るまで、生活の中の「ものJ は、天然素材からプラ スチック素材へ代替され、その量的関係は相対的に逆転 し、プラスチック素材を使用していないものが逆に見つ けにくくなっている。 こうした中で、プラスチックがも たらした「便利さ」を享受する反面、人とものとの聞に 「情緒的な関係」が失われていることも感じられる。 また、各々プラスチック製品の印象を一般消費者に対 し、 10代から 70代以上の各 10代毎の世代に分けて問うも のとした。 そうすることによって、天然素材で出来てい るものが、生活の中で多く使用されていた時代を実体験 として持っている年代には、プラスチック製品に対する 価値観を両素材の比較から問うことができ、逆に、そう いった実体験を持たない年代からは、想像(天然素材に ついて)と現実(プラスチック素材について)との比較 において価値観を問うごとになり、結果として、年代毎 の価値観の差異が表れる事を期待できるからである。 4. 調査の結果 4.1 調査対象者の内訳 回答者の総数は、 339人で、その内訳は図1の通りであ 2. 調査の目的 る。 プラスチック素材への代替によって、「もの」に対す また、 10代から 70代以上の各年代毎の回答者の比率は、 る価値観が変化したことが指摘できる。 特に注目される 岡山県の人口比率とほぼ一致している。 のは次の点である。 土、木、石など、の天然素材が持って いる素材そのものの魅力がプラスチック製品からは感じ られにくくなっていること。 また、造り手と使い手相互 の関係において、「もの」に対する「思い入れ」、「愛着」、 それらを含めた「側値観j が、プラスチック製品の普及 によって、!怪干見されてきたのではないかというとと。 そ れと異にした視点からは、このような「価値観」が、プ ラスチック製品の「便利さ」に置き変わり、人とものと の情緒的な関係が薄らいできたのではないかという点で ある。 このような疑問点を一般消費者の視点から明らかにす るためにアンケー ト調査を実施した。 3. 調査の方法 このアンケー ト調査は、最終的に日本人全体の傾向を 掴むことを目的とするものだが、今回はその導入として、 地域を限定し、岡山県在住の一般消費者を対象とした。 アンケート調査票については、消費者が日常頻繁に使 用する、あるいは触れることができるプラスチック製品 を例に取り、それぞれについての質問項目を用意した。 ここで、例に取ったプラスチック製品を「衣J 、「食」、「住」 の分野にそれぞれ分類し、日頃あまり意識することのな いプラスチック製品に対する考えを引き出しやすいよう 考慮した。

*

MURAKI

K

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FUJITO

Takuya工芸工業デザイン学科

15~19歳 20代 30代 40代 50代 60代 70歳~ ロ男性園女性ロ無記 0 1 0 20 30 40 50 60 70 80 調査人数(人) |豆11 アンケート回答者の内訳

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47.5% 便利・機能 44.2% 価格 嗜好 その他 ( 回 答選択肢の分類) 80.0% 70.0% 60.0% 10.0% 0.0% 一般消費者の「化繊に対するイメージ」 図2 28.7% 便利 ・機能 54.6% 価格 42.6% 嗜好 その他 ( 回 答選択肢の分類 ) 80.0% 70.0% 60.0% 50.0% 「住」それぞれに関する質問項目について各年代毎の回 答傾向を得、考察を行った。 集計によって、それぞれの質問項目について各年代と もほぼ同様の回答傾向が見られたため、全般的な傾向と して回答比率を全年代にまとめた。 その結果を図2、図3 、 医14、 図5に示す。 ここで、質問項目毎に用意した回答選 択肢の内容だが、「利便性・機能性」、「価格(購買)面」 を示すものは肯定的イメージであり、 「II奮好面j を示す ものは否定的イメージとなっている。 4.2.1 クロス集計による考察の結果 まず、「衣J についての設問では主に化織についての 一般消費者の 「プラスチック製食器に対するイメージ」 4.2 プラスチック製品のイメージについての調査結果 質問項目は、「衣」、「食」、「住」に分類し、サンプル として取り上げた各々のプラスチック製品について、そ の印象を問うものとした。ここで、消費者が日頃考えて いると思われる印象を回答選択肢として用意した。 乙れ らの回答選択肢を「利便性・機能性」、「嗜好面」、「価格 (購買)面」、その他に分類し、どのような点について評 価しているのかを回答比率から読み取れるようにした。 アンケート調査によって得られた回答を 10代から 70代 以上の各年代毎に単純集計し、質問項目毎のクロス集計 としてまとめた。 このクロス集計から、「衣」、 「食」、 図 3

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30.9% 29.5% 便利・機能 価格 嗜好 その他 ( 回答 選 択肢の 分 類 ) 80.0% 70.0% 60.0% 50.0% 40.0% 30.0% 20.0% 10.0% 0.0% 一般消費者の「プラスチック製建材に対するイメージ」 図 4 69.3% 22.6% 0.9% 41.2% 機能 価格 嗜好 ( 回 答選択肢の分類) その他 エコロジー 80.0% 70.0% 60.0% 50.0% 40.0% 30.0% 20.0% 10.0% 0.0% アンケー 卜結果全般から言える利便 ・機能についての評 価の高さと比較すると、プラスチック製食器については その低さが指摘できる。 また、「住」についての設聞は、プラスチック製建材 についてのイメージを問うものとした。 ここでは、図4 から利便・機能、価格、嗜好それぞれにほぼ同様の回答 比率があり、「衣」、 「食」で得た結果と異なって、分類 項目の評価に片寄りが見られず、特徴の無い平板化した 傾向となっている。 ここでは代表するイメージが特に無 いか、あるいは、建材の樹脂化に対する認知l度合いが低 いことも考えられる。 一般消費者の「プラスチックに対するイメージ」 一般消費者のイメージを問うものとした。医12 に示す通 り、回答選択肢中の「しわになりにく L リ、「乾きが早いj など、 化繊の衣類に対しては利便性・機能性あるいは価 格の商を評価する傾向が見られ、「生地の風合L リ、「愛 着」といった嗜好の面でもさほど不満はないという結果 が得られた。 次に「食」については、プラスチック製食器を例に取 り、そのイメージを問うものとした。 図3 から、この結 果では、 前述 「衣J の例と異なり、 仙i絡の面に対して高 い評価が得られたものの、嗜好の面での回答比率が高く、 プラスチック製食器に対する不満が伺える。 また、 図 5

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さらに、「プラスチック」に対するイメージを問う設 聞を設けた。 図5 から、 価格(安価で、あること)への評 価が突出して高くなっていることがわかる。 また、ここ ではエコロジーに対する一般消費者の関心が同え、現代 の時代性を反映した結果が得られたと言える。 4.2.2 主成分分析による考察の結果 前項の集計による結果では、各年代毎の回答傾向に顕 著な差異は見られないが、年代毎のイメージに対する評 価基準に疑問が残るため、各年代毎の回答比率データを 元に、主成分分析およびクラスター分析を用い、その解 析を行った。 まず、「衣」、 「食」、「住」、「プラスチック」に関する 一般消費者のイメージが各年代共類似していた点である が、その中でも特に似通った評価基準を持っていると考 えられるのが、 50代、 40代であり、この 2つの年代が全 体の分析結果に大きく寄与していると言える。 また、な おかつ全年代のイメージの傾向を代表しているとも考え られる。 そして、この 50代、 40代に近い評佃i基準を持っ ているのが、 30代および20代である。 この評価基準は、 プラスチック製品の利便性・機能性の高さと価格(安価 であること)だと考えられる。 したがって、乙の結果が 全体的な回答傾向として表れているとわかる。 これら中間的年代と異なる基準を持っているのが 60代 と 70歳以上、あるいは 10代である。 60代と 70歳以上は、 力をもって捉えられているのではないかと考えられるか らである。 4.3 プラスチックとの出会いに関する調査結果 これまでの結果から、年代毎の評価基準について、 10 代、 20代から 50代、 60代以上との 3 タイプに大別できる ことがわかった。 そこで、これらの年代がそれぞれ、い つ、どのようにプラスチック製品と出会ったかをこれら に関する質問項目から、また、本研究で作成した巻頭の 年表との照合において明らかにし、プラスチック製品に 対するイメージを決定づける背景について考察した。 75.0% 60.0% 45.0% 30.0% 70歳~ (年代) 製品の樹脂化時期を境に天然素材のものとプラスチック 15.0% 製品の双方の使用経験を持っているため、その比較から 中間的年代とは異なった背景において、より強く便利さ を基準として評価していると考えられる。 また、特に将来を予測する意味において非常に興味深 いのが、 10代の評価Ii基準である。 10代は最も代表的なプ ラスチック世代として結果に表れており、次世代の傾向 を掴む上で有効な手掛かりになると考えられる。 その評 価基準は、 f也の世代とは大きく異なっている。 他の年代 に見られるプラスチック製品に対する実利的側面への評 価は、この年代では当然のことと捉えられ、あまり強い 基準とは考えられない。 むしろ、現状の基準である他の 年代における上記の評価基準とは、遠う何かと言うごと が出来る。 この点を調査結果全体から考察すると、プラスチック 製品に感じられない情緒的側面への欲求を指摘すること が出来る。 これは、 60代と 70歳以上の素材代替によって プラスチックに対して感じた官Iii値観とは、逆転の関係に あるように思われる。 それは、プラスチック製品と天然 素材のものとの現在の市場に占める量的割合の逆転か ら、プラスチック製品の普及が始まる時期のそれに対す る価値観同様、天然素材のものの価値観がある意味で魅 15 ~19歳 ( 生 5 6 11 18 生 し ( た 12 」 と 17 (回答選択肢) 図6 初めてプラスチック製品を意識した時期 (1)初めてプラスチック製品を意識した時期 まず、図6 だが、これは各年代が「初めてプラスチッ ク製品を意識した時期」について得られた回答結果であ る。 こ乙では、 30代から 60代にかけての意識した時期の 移り変わりが明確に表れており、その時期的変化の中心 年代は、 40代および50代となっている。 そしてまた、こ れらの時期は、年表3の非ナフサ系樹脂からナフサ系樹 脂への変革期および実用化 H寺期と合致する。 60代以上の 世代が、初めて意識したのが社会人の時であるという結

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果は、仮に、さらに過去に遡ったとしても、同様の回答 傾向を示すことが考えられる。 また、 30代以下では、今 後も継続して調査を行った場合、小学生あるいは幼児期 に意識したという結果が直線的に続くものと容易に推測 できる。 70歳~ (年代) (回答選択肢) 図7 初めて意識したプラスチック製品 (2)初めて意識したプラスチック製品 図7は、「初めて意識したプラスチック製品J を年代毎 に示している。 乙こで注目すべき点、は、 50代、 60代が食 品容器をまた、 30代が玩具に多く回答しているところで ある。 これらを年齢から換算すると、前者が 1950年から 1955年、後者が1965年から1970年ということになる。 年表1に示す通り1950年から1955年は、イ ンスタン卜 食品の普及が始まった時期である。 現在では極めて常識 的に思われるインスタント食品も乙の時期には、非常に 目新しいものとして感じられたはずである。その結果が、 グラフに示す通り、 50代、 60代の食品容器に対する高得 点、に結び付いていると考えられる。 また、 1965年から 1970年は、「ダッコちゃん」、「)\ ー ビ- J 人形、「リカちゃん」人形などが、市場に現われ た H寺期である。 これらの商品は、ヒット商品として位置 づけられ、また、消費者の印象に残るものでもある。 こ のことから、 30代の玩具に対する高得点、を説明する乙と が出来る。 10代に再び食品容器に対する回答の傾向が見られる が、これはコンビニエンスストア、ファーストフードの 生活への定着度が影響しているものと考えられ、今後さ らにこの回答傾向が、高くなることが予測できる。 (3)初めてプラスチックを意識したときの印象 図8は、「初めてプラスチックを意識したときの印象」 について年代毎に示すものである。 ここでは、 70歳以上 と 60代が、流行としての意識、 50代から 40代が、新鮮さ の意識と変化している。そして、傾向が明らかに変わり、 30代では、流行としての意識とその他(ここでは、何も 思わなかったという回答である。)とに回答が分れる。 30代以下では、この傾向が徐変的にその他の回答に移り 変わっているのがわかる。 4. 2.2項で10代のその他の 年代に対する特異性を説明したが、ここでもその結果が 如実に現われている。 また今後の予測として、この質問に関する回答はその 他、つまり 「何も思わなかった」 に収束していくと言う ことが出来る。 70歳~ 60.0% 45.0% 30.0% 150% (年代) (回答選択肢) 図8 初めてプラスチックを意識したときの印象

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5. まとめ アンケートの結果から、一般消費者の評価を次のよう にまとめることが出来る。 衣食住のそれぞれ具体的なプラスチック製品について の評価は、「利便性」、 「機能性j に関して高く、「思い入 れJ や「愛着j といった価値観が、全般的に低くなって いることがわかった。 しかし、プラスチックについての 全般的なイメージでは、「価格」に対する評価が突出し て高くなり、その安さのイメージが際立つている。 この 結果は、 50代、 40代の回答が最も寄与していると考えら れる。 また、ここではエコロジーに結び付くものといっ たイメージも多く、特に10代においてその傾向があると 言える。 このように具体的なプラスチック製品に対する 評価、あるいはイメージと、プラスチックという言葉か ら受けるイメージとにずれがあるととも指摘できる。 こ の点は、プラスチックに関する認知の度合いを示すもの とも考えられる。 便利さについての評価が、 全般的に表れていることに ついて、この結果は、 50代と 40代に代表され、次いで30 代、 20代が強く影響していると言える。 ところが、 10代 においては、プラスチックの存在が至極当然のことであ るためか、便利さ以外に情緒性を求めている傾向も見逃 すととは出来ない。つまり、人とものとの関係において、 「使利さ」が追及される一方で、情緒的側面がそこから 遊離してしまった現状を指摘することができる。 今まで、プラスチック素材の外観上の魅力を向上させ る試みとして、(あるいは、天然素材に近付けるために) 塗装、 印刷、シボなどの方法でテクスチュアを疑似的に 処理することが主流となって行われてきた。 その結果、 身の回りには、見た目にはそれがプラスチック素材であ ることすらわからないものもある。 乙のように、外観上 非常に精巧に疑似化されたプラスチックが存在するもの の、 一般的にプラスチック素材をイメージとして捉えた とき、安っぽさがその印象として持たれていることも調 査結果から言うことがでる。 つまり、プラスチックにつ いては、天然素材からの代替過程におけるフェイクとし ての捉え方が一般的になされていると考えられる。 これらの結果から、特に 10代の情緒的側面を求める傾 向を考えたとき、今、プラスチックに固有の素材感を追 及していく必要性を指摘したい。 6. おわりに 人とものとの関係は見るだけではなく、触れる、匂う、 聞く、 またそれらを含めた雰囲気がそとに良い関係性を 生み出すものである。 これからのものの在り方、延いて は生活の在り方を考えた上で、材料的にメリッ トの多い プラスチックという若い材料を今後も使い続けるに当た って、素材と しての魅力付けや最適化の活用方法を再検 討すべき時期ではないかと考える。 謝辞 本研究を行うにあたり、アンケート調査に快くご協力 くださいました岡山県立大学事務職員および関連の 方々、総社商工会議所、総社市シルバー人材センター並 びにアンケー卜にお答えいただきました岡山県在住の 方々、資料の提供と、分析にご助言を賜わりました三菱 レイヨン株式会社の小宅康夫氏、また、解析に関してご 指導、ご協力を賜わりました岡山県立大学デザイン学部 ビジュアルデザイン学科の荒生蒸教授にとの場をお借り して深謝いたします。 参考文献 1)通産省大臣官房調査統計部『プラスチック製品統計年報』通産 省、 1966-1993 2)通産省大臣官房調査統計部『繊維統計年報』通産省、1966-1993 3l『昭和 二万日の全記録j 諮談社、 1990 4)『データ読本一戦後50年』朝日新聞社、1994 5) 『戦後50年j 毎日新聞社、 1995 6)石井頼三『プラスチック読本』春秋大社、1958 7) 『プラスチ y ク年鑑j 工業調査会、 1958-1971 8)『プラスチック日用品の流通の現状』財団法人流通システム開 発センタ一、 1982 9)本山卓彦『おもしろいプラスチックのはなし』日刊工業新聞社、 1988 10)石油学会編『暮らしの中の石油ー歴史と未来を考える』講談社 サイエンティ 7 ィク、 1988 11)藤井正美、ほか『総説食品用プラスチック』日本食品衛生協会、 1988 12)『プラスチック再生利用使覧』社団法人プラスチック処理促進 協会、 1991 13)竹原あき子 『魅せられてプラスチック一文化とデザインj 光人 相、 1994 14)斎藤儒範『変貌するプラスチック産業一世界の材料開発と産業 構造の変化』シグマ出版、1994 15)岩井宏實 『民具の世相史』河出書房新社、1994 16)中村次雄、 佐藤功 『初歩から学ぶプラスチック』 工業調査会、 1995

参照

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