• 検索結果がありません。

〈論文〉持続可能性報告の保証--文献研究および研究課題

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "〈論文〉持続可能性報告の保証--文献研究および研究課題"

Copied!
27
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)商経学叢 第60巻第2・3号 2014年3月 . 持続可能性報告の保証 ―文献研究および研究課題―. 川. 原. 尚. 子. 要旨 企業の環境および社会の影響を報告し,並びに企業の持続可能な開発に向けたコミッ トメントを示す持続可能性報告に対する保証の重要性は,研究者および実務家によりますま す認識されてきている。本稿は,関連する文献のレビューを通じて,将来の研究課題を探索 した。持続可能性報告への保証の付与が,報告企業の持続可能な開発への実質的な貢献とい う持続可能性報告の本来の目的をどのように確実にできるかという点が今後の課題として非 常に重要である。. Abstract Academics and practitioners have increasingly recognized the importance of assurances of corporate sustainability reports, which communicate companies’ environmental and social performance and demonstrate their commitment toward sustainable development. This study attempted to further advance this research agenda following a review of the related literature. It is crucial for further research to examine the manner in which assurances of sustainability reports can ensure that companies actually contribute toward sustainable development, which should be the primary objective of such reports. キーワード 持続可能性報告(sustainability reports) ,保証(assurance),開示(disclosure), 環境(environment) ,会計専門職(accounting profession) 原稿受理日 2013年12月11日. 1 ( ) 207 ─ ─ .

(2) 第60巻 第2・3号. Ⅰ は じ め に. 近年,企業の環境および社会への影響についての情報である持続可能性情報に関して, その年次報告に含めて報告する企業が増加しつつある。この背景には,持続可能性情報の 作成および報告に関する様々な指針が国際的にも地域的にも発展しつつあること,その指 針をもとに所定の企業に所定の情報開示を要求する制度あるいは非制度の圧力が増大しつ つあることがあげられる。そこで問題となるのは,持続可能性報告で開示される情報の信 頼性の向上の取り組みである。様々な取り組みの中でも,とりわけ,持続可能性報告の報 告組織とは独立した外部者が保証を付与する場合について,これまで様々な学術的あるい は実務的な議論が積み重ねられてきた。 本稿は持続可能性報告およびその保証の意味合いを再考し,この分野の学術研究の視点, および実務的な課題を整理しつつ,この分野における研究の機会を探求することにある。 このような検討はわが国における持続可能性情報の保証の制度化に向けた政策的議論の洞 察を提供するものとして非常に重要と考える。 本稿の構成は以下のとおりである。第2章で持続可能性報告の保証の意味合いを吟味し, 第3章で持続可能性報告の保証に関する研究調査の視点および成果を検討し,第4章で持 続可能性報告の実務面からの議論を取り扱い,第5章で今後の研究課題について結論を述 べていきたい。. Ⅱ 持続可能性報告の保証の意味合い. 持続可能な開発とは,「将来世代の自らの欲求を充足する能力を弱めることなく, 現代 の世代の欲求を充足する開発」 と定義される。そして,持続可能な開発とは, 「本質的に, 資源の利用,投資の目的,および技術開発への対応における変化のプロセス」であり,ま た,「ただ人間の欲求と野心を満たす現在および将来の潜在能力を調和し促進することに  ものとされる。このような持続可能な開発の考え方をふ おいてのみ,制度の変化がある」. まえた場合,企業の持続可能性報告において,資源の利用,投資の目的,および技術開発.  United Nations World Commission on Environment and Development(1987), p.37, sec.1.  Ibid., p.38, sec.15.. 208 ─ 2 ( ) ─ .

(3) 持続可能性報告の保証(川原). への対応における変化のプロセスに関連した内容,また,現在世代間の,および現在と将 来世代間の衡平の問題を重視した内容が求められるといえる。 持続可能な開発の概念で重視する事柄は,環境問題と社会正義の問題といえる。持続可 能な開発の問題とは,資源の枯渇や環境への圧力という問題が政治および経済的な力の不 均衡から生じていること,企業による大気や水の容認できないレベルの汚染の影響の矢面 に立つ人々が貧困の状況にあるため効果的に不平を言うことができないないこと,また, 企業はこの状況において罰をうまく逃れていることというような問題をいう。このよう な問題を解決しようとする立場から,持続可能性報告で重視される内容は,自ずと環境活 動および社会的正義に関連する事柄といえる。 環境,社会,および持続可能性の報告は,民主主義が十分機能する重要な要素と位置づ けられる。 これらの報告は, 環境や社会への企業の影響, また社会的正義の面について 企業を分析したものであるならば,そのことで説明責任を果たし,民主主義を十分機能さ せることに貢献することでその価値が認められる。会計は,実務的にはそうでなくとも, 原則として,この分野における最も高い水準をもつものであり,また公共の利益に貢献す ることを,十分かつしきりに要求されているものである。会計専門職が公共の利益のた めに貢献することは可能であるが,そのためには,環境,社会,および持続可能性の報告 の分野に関する会計および監査の技術,経験および独立性が一層求められ,会計教育訓練 について再考することが必要になる。 持続可能性報告の保証の定義は未だ画一的ではなく,様々な保証の意味合いが想定でき る。持続可能性報告の保証は,持続可能性報告の情報の信頼性を高めることを通じて,報 告プロセスに期待される機能を高めるためのものである。しかし,一般に,保証の定義に 画一的なものが見られないし,持続可能な開発との関連での定義もそれほど見られない。 そこで,社会環境報告に対する「監査」の用語を整理することを通じて,持続可能性に向 けた多様な活動およびそれらの報告に対する保証の意味合いを明らかにしていきたい。そ もそも問題なのは,財務会計でいう独立した第三者による証明という保証の概念に比較し て,社会環境報告,あるいはその「監査」というものが,何を達成しようとするかがあい まいであることである。なぜなら社会環境報告の後ろにある目的が様々であるために,何.  Ibid., p.39, sec.1 6.  Gray(2000), p.247.  Ibid., p.258.  Ibid., p.263.  Ibid.. 209 ─ 3 ( ) ─ .

(4) 第60巻 第2・3号. が「監査」であるかがあいまいであるからである。Gray は社会環境会計およびその「監 査」の用語を,報告編集主体と報告消費主体の視点で明瞭に分類している(図表1)。こ のように社会環境会計およびその「監査」の意味合いが多様であることから,同様に,持 続可能性報告およびその保証の意味合いも多様であることが十分想定される。 持続可能性報告の保証の定義や解釈は,実際の報告実務において多様である。最近の20 年間において,国境を越えたレベルで,あるいは各国レベルで,持続可能性報告およびそ の保証は様々に発展してきている。しかし,持続可能性報告の「保証」という用語は,実 務上,様々な保証提供者によって「検証」,「認証」,「監査」あるいは「外部保証」という 用語でも同義的に使用されているものの,厳密な定義および解釈の面でばらつきがある。 ただし,このように実務的な定義や解釈にばらつきがあっても,保証は企業が提供する情 報が外部の第三者による独立した検査を受けているならば,より信頼できると考えられる. 図表1.社会環境会計および「監査」の類型 報告編集主体 報告消費主体 内部関係者. 外部関係者. 内部関係者. 1. 環境監査/会計 EMS(環境マネジメントシステム) EMAS(環境マネジメントスキーム) /ISO14001(環境マネジメントシステ ムの国際規格) 意識監査 ステークホルダー検査 コンプライアンス監査  例:SA8000 (労働環境監査の国際規格) 社会的責任監査 使命/価値監査 評判管理. 2. 規制当局による報告  例:EPA(環 境保護庁) サプライヤー監査 注意義務監査 環境コンサルタント 社会的責任検査 マーケット/ステークホルダー調査 イメージ監査. 外部関係者. 4. 年次報告での開示 「沈黙社会会計」 環境報告 社会報告 GRI(グローバル・レポーティング・ イニシアティブ)/持続可能性報告 コンプライアンス報告 使命/価値声明書 広告/ステークホルダー教育 NGO 社会監査. 3. 「外部社会監査」 倫理的投資/EIRIS(倫理的投資調査サー ビス) 消費者監査 圧力団体監査 環境の/Greenpeace(グリーン・ピー ス) 社会監査有限責任会社 競争相手 労働組合報告. 出典:Gray(1 991),p.251.筆者訳および一部編集。  Ibid., pp.247248.  Gray(1991), p.251.  UNEP(2013), p.80.. 4 ( ) 210 ─ ─ .

(5) 持続可能性報告の保証(川原). という基本的な概念を指すものとして本質的に共通であるとみなされる。 持続可能性報告の保証の目的は一義的でなく,様々な目的が想定される。例えば,情報 開示制度の枠組みに従った法令遵守の目的もあれば,一方,制度外の場合もある。制度外 の場合の目的は様々に想定され,例えば,持続可能性報告の品質を高めるためのものであ るとの主張もあれば,保証がない場合に経営者の利己的な説明を受けざるを得なくなると 主張する人々に満足を与えるために経営者が保証を得るという主張もある。持続可能性 報告の品質を向上させる,あるいは情報利用者の満足を得るためには,保証の一般に認め られた方法が必要になる。 持続可能性報告の保証がもたらす便益は,保証される情報の利用価値との関連において 議論される場合がある。例えば,温室効果ガス排出量のインベントリー情報に対する保証 の場合,インベントリー情報が完全で,正確で,一貫性があり,透明性があり,関連性が あり,そして重要な誤表示がないという信頼できる水準にあると評価する見方がある。そ してこのような保証は,報告企業あるいは他のステークホルダーにとって,情報を利用し た意思決定の際に価値があるとされる。具体的な便益として次の4つの面が想定される。 まず,上級委経営者が,温室効果ガス排出量削減目標および関連する決定に基づいて報告 される情報に信頼性を増す。2つ目に,データ収集,計算,内部報告システムの面での組 織内部での算定報告実務が改善される。加えて,学習および知識移転の促進が図られる。 3つ目に,次のインベントリーの改訂プロセスを効率的な改善される。最後に,報告され る情報にステークホルダーの信頼性が増す。 持続可能性報告の対象となる情報は,報告の機能であるステークホルダーへの説明責任 。 との関係で4つの階層に分類できる(図表2). 図表2.説明責任の解除のために各ステークホルダーとの間で求められる情報の階層 記述的:ステークホルダーとの関係について重要な特徴を提供するデータ(例:関連する数字お よび量,その関係に特定の契約条件など) 社会による定義:すべての法律,法律のようなもの,行動規準,その関係に関連した使命声明書 に対する業績の開示および報告を要求されるすべての情報 企業による定義:企業が重要と考える社会・環境情報-おそらく企業の使命声明書・価値声明書 に関連する情報 ステークホルダーによる定義:それぞれのステークホルダーがそのステークホルダー・グループ に組織が義務を負うと考える説明責任についての見解 出典:Gray(1991),p.261.筆者訳および一部編集。  Deegan et al.(2006), Zadek et al.,(2004), Smith(2 011), p.426.  Smith(2 011), p.426.  Gray(2000), p. 261.. 5 ( ) 211 ─ ─ .

(6) 第60巻 第2・3号. これらの情報が持続可能性報告で開示されることを想定すると,情報の信頼性の向上の ための報告基準および保証基準の開発は重要な課題であるが,保証業務に携わる会計専門 職等の教育訓練がさらに重要な課題といえる。. Ⅲ 持続可能性報告の保証に関する研究調査の視点. 1 保証を付与する誘因 持続可能性報告の保証を依頼する企業にとって,持続可能性報告の保証を付与する誘因 となるのは企業の評判を意識する場合であるとの見方を支持する研究がある。Simnett ら は, 持続可能性報告書の保証について, 国際的に広範な規模での比較調査を行った。こ の研究において,企業の非財務報告書と持続可能性報告書を同義に用いている。そして持 続可能性報告書は財務報告書とは別媒体で,一般目的での公表が増加しつつあることを指 摘している。この研究では,いくつかの持続可能性報告書は,独立の第三者によって保証 されているものもあり,その保証提供者が監査の職業専門家である場合もあることを踏ま え,このような企業の任意の保証業務の市場の状況を明らかにしている。分析対象および 範囲は,31カ国の21 , 13社の企業が公表した,2002年から2004年の間に作成された持続可能 性報告書である。調査手法として,企業の任意で保証を依頼する,および保証提供者の選 定を行う際の意思決定に関連する要因を特定するため,逐次ロジット分析を利用している。 この研究で用いた仮定は,企業が保証,および保証提供者の選択を通じて,信頼性を高め る必要があるならば,企業,産業,および国に関連した要因が相関関係にあるというもの である。分析の結果,保証提供者が監査の職業専門家かどうかは問題ではないが,報告書 の信頼性を高めたい,また,企業の評判を確立したい企業は持続可能性報告の保証をより 依頼しやすいという議論が支持された。さらに,ステークホルダー志向の国々で事業を行 う企業は株主志向の国々の企業よりも,監査の職業専門家を保証提供者に選定しがちであ ることが明らかとなった。. 2 保証提供者 持続可能性報告の保証を誰が提供するかを企業が選択する際のダイナミズムを説明した 研究がある。 Perego は, 持続可能性報告書に保証を提供する様々なタイプの保証提供者.  Simnett et al.(2009).. 212 ─ 6 ( ) ─ .

(7) 持続可能性報告の保証(川原). を選択する原因と結果についての実証的研究を行った。世界の136企業を対象に,持続可 能性報告の第三者認証を求める企業が様々な保証提供者を選択する原因と結果について回 帰分析の手法で調査した。その結果,弱い統治システムをもつ国にある企業が,保証提供 者として,ビッグ4と呼ばれる国際的大手会計事務所を選択しがちであることが明らかと なった。また,この研究で Perego は,既存の枠組み をもとにした内容分析の手法によ り,2つの保証提供者のタイプに分けて,持続可能性保証報告書の保証の品質に関係する と予想される3つの点,すなわち,報告様式,保証手続き,並びに勧告および意見との関 係を吟味した。その結果,ビッグ4においては,報告様式については保証において参照し た内容,並びに報告企業および保証提供者それぞれの責任に関しての明示があるかどうか という点,また,保証手続きについては標準化された手続きおよび一般に認められた保証 基準を特別に厳守して参照しているか という点において,強い関係性が見られた。対照的 に,勧告および意見に関して,非会計事務所の保証提供者はビッグ4よりも,より周到で 情報提供のあるものであったという。 同様に,保証提供者の選択と,企業統治の状況との関係性をうまく説明した研究がある。 Kolk および Perego は,持続可能性報告に対する任意の保証報告書を企業が採用する決 定要因について国際的な規模で調査研究した。この研究で対象とした社会,環境および 持続可能性報告の保証提供サービスの市場は,初期段階にあるため,非財務情報の保証実 務への要求に対する理解は限られているものの,様々な国々において急速に実施されつつ あるという。国際監査および環境会計の分野の幅広い文献研究から,Kolk および Perego は1999年,2002年および2 005年にフォーチュン250企業の212社を対象に,持続可能性報告 に対する保証報告書の採用を説明する一連の国レベルでの制度要因に焦点を当てた。彼ら の予測通り,ステークホルダー志向の国々において企業が事業活動を行い,企業統治の実 施体制がより弱い場合,持続可能性報告書への保証報告書をより採用しがちであるという 結果を導き出した。さらに,市場および制度的メカニズムによって,企業の持続可能性へ の取り組みをよりうまく実践できる国の方が,保証に対する要求がもっと高いことが明ら かとなった。この研究では株主志向で,訴訟レベルがより低い国々にある企業において, 保証提供者として大会計事務所を選ぶ可能性が増大することが示唆された。また,学術お よび実践的な意味合いに関連する持続可能性報告の保証の分野での研究の3つの方向性が.  Perego(2009).  O’Dwyer and Owen(2 005).  Kolk and Perego(2010).. 213 ─ 7 ( ) ─ .

(8) 第60巻 第2・3号. 提示されている。まず,持続可能性報告書の保証サービスの企業レベル,および国レベル での追加的な誘因を検討し,この研究で調査した決定要因の理論的な枠組みを再定義する 必要があるという。次に,単なる保証の採用を調査するよりもむしろ持続可能性保証報告 書の品質をさらに調べるべきであるという。3つ目に,持続可能性情報に関する金融仲介 業者の役割は徐々に高まりつつあり,また,最近,機関投資家業界で起きている変化を反 映していることを踏まえて,投資アナリストが財務情報のみに基づいて行う投資の意思決 定を補完する際に,保証サービスの提供に対してどのように反応するかを理解する必要が あるという。. 3 保証の機能 持続可能性報告の保証の機能について,持続可能性報告の保証が,保証の信頼性を増す と主張する研究がある。Park および Brorson は,スウェーデンにおける環境または持続 可能性報告書の発展を踏まえ,企業がこれらの企業報告書に第三者による保証を導入する 際の意思決定のダイナミズムについての実証的研究を行った。 この研究ではスウェーデ ン企業28社の1990年より2003年までの間の環境,持続可能性または年次報告書を対象に分 析し,かつ,保証提供者との面談を実施した。結果として,スウェーデンでは企業による これらの任意報告書の数は増加したものの,2003年までみるとそのうちの約3分の1の報 告書だけが第三者による保証が付与されていることが明らかとなった。保証を委託してい る企業においては,一般に,保証が効率的な内部報告システムの開発の指針となる,また, 公表データの信頼性を増すという,第三者による保証の報告がもたらす便益を認識してお り,そのことについて疑念の余地がなかったという。一方,保証を委託していない企業は, このような概念の採用に躊躇したという。彼らは企業が保証を依頼する際に支払うコスト, および,その保証の際に第三者が用いる証拠についても検討した。彼らのこの研究での主 な議論は,第三者による保証が信頼性を促進するというものであった。保証実務が将来発 展する要因について,企業側の見方では先導的企業の革新的な手法,一般に認められた報 告指針,および保証方法の組み合わせという要因があり,また,ステークホルダーの圧力 の増大,および第三者による保証が企業およびそのステークホルダーにとって便益を生み 出すという一般的な認識もあるという。この研究では,保証方法と環境および持続可能性 報告書の信頼性の増加の間に正の関係を確立することへの注意喚起を求めている。.  Park and Brorson(2 005).. 214 ─ 8 ( ) ─ .

(9) 持続可能性報告の保証(川原). 一方,現行の持続可能性報告の保証の内容が多様であいまいである状況を踏まえ,保証 の価値を疑問視した研究もある。Deegan らは,ヨーロッパとイギリスで公表されたトリ プルボトムライン報告に対する第三者による保証報告書について調査した。トリプルボ トムライン報告は,Elkington によれば, 「報告組織の社会,環境および経済の業績につ いての情報を提供する公表された文書」として定義される。1990年代後半に,この名称を Shell 社が採用したことで知られている。 Deegan らは,最近,トリプルボトムライン報 告と同義的に持続可能性報告を発行する実務を踏まえ,また,健康安全および環境報告と 組み合わせた他の報告と同様に,別冊の社会およびまたは環境報告と,広義には同じ分野 の報告とみなして,これらの報告の保証について研究している。この調査ではイギリスお よびヨーロッパの報告を収集したデータベースを基礎とした情報分析を行っている。対象 とした保証報告書は,多くの企業が年度ベースで報告作成していないこともあり,直近の 報告のものとした。また,2000年の8件,2 001年の86件,2002年の65件,2003年の11件の 合計1 70件の報告を対象とした。 その結果, 第三者保証報告書の内容に固有の多様性とあ いまいさがかなりあることが示され,Deegan らは,その評価を踏まえ,実務におけるト リプルボトムライン報告のプロセスに保証報告書が価値を提供するかについて疑念を示し た。. 4 鉱山・金属業における持続可能性報告の保証 鉱山・金属業分野の持続可能性報告の保証の品質と意味合いを検討した研究がある。Fonseca は,鉱業企業の持続可能性報告の信頼性を題材に, 「国際金属・鉱業評議会(the International Council on Mining and Metals: ICMM) 」の要求事項に従った外部保証に対する批判的 分析を実施した。Fonseca が研究対象とした ICMM は,金属・鉱業界の国際的業界団 体であり,独自の保証の枠組みをもつ。 ICMM によれば,ICMM は業界の直面する課題に取り組むべく,最善事例の普及と 業績を改善しようとしており,各国の多様な鉱物資源を扱う会員団体および企業に対する 指導的役割を果たすことを目指した団体であるという。そして,持続可能な発展に向けて, 一貫性のあるアプローチの提供を会員に採用するよう促しており,業界全体の慣行基準の.  Deegan et al.(2006).  Elkington(1997).  Fonseca(2010).  ICMM, http://www.icmm.com/.. 9 ( ) 215 ─ ─ .

(10) 第60巻 第2・3号. 向上に貢献することを狙っているという。 具体的には,「持続可能な開発のための10基本 原則(2003年)」,グローバル・リポーティング・イニシアティブ(Global Reporting Initiative: GRI)の G3 枠組み,および関連する「GRI 鉱山・金属業補足文書(GRI Mining and Metals Sector Supplement: MMSS) (2005年)」に基づく報告,さらに「持続可能  による第三者保証の3要素からな な開発(SD)のための枠組み:検証手順書(2008年)」. る ICMM の「持続可能な開発への枠組み」の実行を会員企業に約束することを求めてい る。 この第三者保証については, 国際公認会計士連盟( International Federation of Accountants: IFAC)の国際監査・保証基準審議会(the International Auditing and Assurance Standards Board: IAASB)による国際保証業務基準(International Standard on Assurance Engagements: ISAE, 3 000),イギリスの調査サービス会社であるアカ ウンタビリィティ(AccountAbility)社による AA1000 保証基準(AA1000 Assurance Standard: AA1000AS ) , または, 国際標準化機構( the International Organization for Standardization: ISO)による「品質およびまたは環境マネジメントシステム監査の ための指針(ISO19011: 2002)」 の3つの指針を参照することを推奨している。 このうち,ISAE3000 は,正式には「過去財務情報の監査またはレビュー以外の保証業 務のための国際保証業務基準」 を指し,持続可能性報告を含む非財務情報を含む,過去財 務情報の監査またはレビュー以外の保証業務に関する要求事項と指針を提供する基準であ る。IAASB によれば, 「保証業務とは,主題情報について業務実施者が責任を負う者以外 の想定利用者の信頼性の程度を高めるよう設計された結論を表明するために,業務実施者 が十分かつ適切な証拠を得ようとする業務」をいう。 また,ISAE3000 は,基本的主題に対して広範囲に適用可能な原則主義の基準であり, 現在および将来において,特定の主題を対象とした ISAE のための基礎を提供していく性 質を備えている。例えば, ISAE3410 は,ISAE のうちの一つで,「温室効果ガス報告に 対する保証業務」のための基準として2012年に公表された。そのため,ISAE3 000 の改 訂のための検討の過程において,すでに公開草案が示されていた ISAE3410の内容にも影 響し,その内容の改訂に及んでいる。.  SD は Sustainable Development の略。2 011年に「ICMM 検証手順書の適用:解釈指針」が さらに公表されている。  ISO19011は2002年に第1版が発行され,2011年に「マネジメントシステム監査のための指針」 として改正版が発行されている。  IAASB(2013b) .  Ibid., p.7, sec.12.  IAASB(2 012b).. 10( ) 216 ─ ─ .

(11) 持続可能性報告の保証(川原). 次に,AA1000AS における保証の定義についてみると,保証とは開示の信頼性を高める ために,適切な基準と規準に対して,基礎をなすシステム,データおよびプロセスと同様 に,組織の業績についての組織の開示を評価するための,保証提供者によって行われた方 法およびプロセスをいう。 保証報告書には保証プロセスの結果についてのコミュニケー ションを含む。 前述の Fonseca の研究では,ICMM の加盟企業の持続可能性報告書を対象とした「ICMM の検証手順書」に焦点を当て,対象とした保証報告書が,最小限の勧告内容をどの程度満 たしているかを分析することで保証の品質の問題を検討している。この研究において Fonseca は,最近確立された ICMM の保証手続きの意味合いを理解しようとした。分析の結 果,16社の対象企業のうちの9社がこの研究の分析対象期間において保証を得ていた。そ して,それらの保証報告書は,先行研究で指摘のあった保証の品質の問題点を反映したも のであったという。すなわち,保証提供者によって実施された検証規準において,幅広い 限定および多様性があるということは,金属・鉱業分野の企業が保証の実施に対してかな りの制約を設けていたことを示唆するものであるという。これらを踏まえ,Fonseca は, 保証手続きが検証プロセスに首尾一貫性および深度をもたらす可能性を指摘している。ま た, 報告される情報の信頼性の向上にどの程度寄与するかは, ICMM の保証手続きの要 求事項を保証提供者がどのように解釈するかなど,いくつかの要因に依存するとみている。 ICMM の保証手続きが,GRI フレームワークを超えた新しい指標や報告を開発するよう に金属・鉱業分野の企業に働きかけるかどうかは不明であると Fonseca は批判している。 また ICMM の保証手続きが,ICMM の原則,および企業の重要な持続可能性リスクおよ び機会について検証するように保証提供者に要求しているものの,この原則,リスクおよ び機会が,GRI の指標によって取り扱われているかどうかも不明であると指摘している。. 5 保証提供者と経営者の関係性 保証提供者と経営者との関係性がもたらす保証業務への影響を検討した研究がある。 Smith らは,公認会計士等あるいは他のコンサルタントが提供する持続可能性報告書の保 証報告書の信頼性の問題が長く学術的に議論の的となっていることから,この問題を巡る 概念的枠組みを整理している。Smith らは,先行研究より保証が経営者および保証提供 者の強い利害のもとにあり,公的な説明責任が提供されていない点,経営者あるいは職業.  Smith et al.(2011).. 217 ─ 11( ) ─ .

(12) 第60巻 第2・3号. 専門家集団は, 自らの商業的で専門的な目的に見合う言語やプロセスを充当することに よって,持続可能性報告の方針および実践を管理しようとしがちである点,とりわけ保証 提供者の主な関心が業務範囲の制限あるいは潜在的な責任を限定することにある点などを 指摘している。Smith らは,イギリスでの保証実務の様々な関係者間における相互作用に 着目し,幅広い社会的で政治的なダイナミズムとして説明する新しい概念的枠組みとして 新制度理論を提案している。それは,ステークホルダー理論や正統性理論では説明しにく い企業,保証提供者および社会的状況の間の相互作用を取り扱う理論である。さらに,先 行研究をもとに,この分野の研究での面談手法に一定の限界がある点を指摘している。. 6 持続可能性報告の発展の障害要因 持続可能性報告の発展の障害要因と発展の課題を検討した研究がある。Wallage は,財 務,環境および社会問題に関する主張を提供する持続可能性報告を検証する保証提供者の 視点を研究した。Wallage によれば,まず,財務諸表監査では,表示および主題事項の 表示を評価するための会計的な枠組みを配置することによって財務諸表が真実かつ公正な 概観を提供しているかどうかに関する保証を監査人が提供し,その保証業務の主題事項を 評価あるいは測定するために用いられる基準あるいはベンチマークとしての規準が重要で あると主張する。財務諸表監査に比較すると,持続可能性報告に関する確立した規準が不 足しているので,そのことが持続可能性報告の保証の発展に対する障害となっている点を 指摘している。2つ目に,重要業績指標(Key Performance Indicators: KPIs)は,内 部管理および外部報告のために開発されうるが,持続可能性は非常に重要な予測の要素を 含んでおり,過去の行為やデータよりもシステムやプロセスの方が,ステークホルダーに とって,より重要となる検証が求められる主題事項であると主張している。3つ目に,倫 理的行為を説明する際に,非財務システムおよびプロセスを報告したり,監査したりする ことが非常に重要な役割を果たすことから,企業の重要な業績データに加えて,意思決定 のプロセスを透明にすることを重視している。企業の意思決定の結果,持続可能性の問題 が様々な次元で軋轢を生み,そのジレンマを解決する方法について企業は明瞭に報告する ことを求めている。4つ目に,最近の保証提供者は個別の主張のレベルでの判断,関連性, および完全性という保証だけを提供しているが,その理由として報告書全体を通して様々 な主張があり,様々なステークホルダーがいることを挙げている。最後に,様々な保証提.  Wallage(2000).. 218 ─ 12( ) ─ .

(13) 持続可能性報告の保証(川原). 供者の中で,財務諸表の監査人の持続可能性報告の検証サービス市場における優位性をい くつか指摘している。国際的規模の会計事務所では包括的監査手法に従って監査を実施し, 多くの専門分野をもっていること,公認会計士の職業専門家団体からの支援を得られるこ と,プロセス検証の専門性という評判に依拠し,独立的であると認められ,コンサルティ ングとは異なると見られること,情報システムのレビュー,データの検証,組織外への情 報の報告に必要なスキルを備えている点など,強みが多いことである。ただし,持続可能 性報告の検証において多くの専門家と協力することが独立的ではないと見られる点も指摘 している。. 7 フランスにおける保証実務 持続可能性報告の保証実務は地域によって異なる可能性があるが,フランスの状況を分 析した研究がある。Gillet は,フランスにおける保証報告書を含む社会および環境報告書 の発展を踏まえ, 持続可能性情報の企業外部保証者による検証実務について研究した。 分析対象範囲は,第三者によって検証された持続可能性報告書を公表するフランス上場企 業40社の保証報告書であった。企業の持続可能性を担当するマネジャーおよび保証提供者 への面談も実施した。分析の結果,Gillet はどのように保証報告書が記述されているかを 明らかにし,保証報告書が厳密さや説明が不足しているようであると指摘した。また,持 続可能性情報の保証を企業が依頼するのは,持続可能性情報を報告する際に,持続可能な 開発に関する方針および進展という問題をうまく取り扱うことに関心があるためであると 分析した。持続可能性の保証を企業が行うのは,開示情報に対する説明責任および信頼性 を利用者に保証することに目的があり,持続可能性の保証に関与することによって正統性 を求めるためであると結論した。. 8 マレーシアにおける保証実務 アジア新興国であるマレーシアでの持続可能性報告とその保証実務について分析した研 究がある。Sawani らの研究は,マレーシアでの持続可能性報告および保証実務に関する 洞察を提供した。 マレーシアにおける近年の報告実務および傾向,および持続可能性報 告書の保証に関する認識レベルを確認するため,持続可能性報告および保証の発展状況を 調査した。Sawani らは,イギリスの勅許会計士協会(Association of Chartered Certified  Gillet(2 012).  Sawani et al.(2010).. 219 ─ 13( ) ─ .

(14) 第60巻 第2・3号. Accountants: ACCA)主催によるマレーシアの環境および社会報告の表彰制度の2 007年 度参加企業の報告および保証に関連した問題について,面談および質問票による調査に加 えて,企業年次報告およびその他の報告書の内容分析も行った。分析の結果,報告された 持続可能性に関連する開示情報のほとんどが年次報告において統合されており,また,認 識レベルが低く,実務を要請する制度的圧力がないために保証報告書がないという証拠を 示した。少数株主が企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility: CSR)活動よ りも投資リターンに固執するため,寄付金額に関連する情報を企業が選択して報告する場 合があることも指摘され,持続可能性報告における少数株主の役割についてのさらなる研 究の余地も示された。. 9 会計専門職の保証業務基準 持続可能性報告の保証実務に会計専門職が関与する場合に依拠すべき,非財務情報の保 証基準ともいえる前述の ISAE3000の公開草案を吟味した研究がある。Simnett は,持続 可能性報告書の保証に関連して,前述の ISAE3000の改訂とこれに関連する研究の機会に ついて研究した。 この研究のねらいは, IAASB による ISAE3000 の改訂作業の途上の タイミングにおいて,持続可能性報告の保証を付与するためのプロセスの改訂の意味合い を検討し,IASE3000 の公開草案の内容を分析するものであり,この検討に関連する政策 関連の研究の機会を明らかにしようとするものであった。この研究で焦点を当てているの は,合理的保証および限定的保証の間の相違,限定的保証業務の適切な受託の際における 必要な手続き,並びに限定的保証報告の構成および内容であった。結論として,これらの 論点は,政策的な問題を検討する研究調査で取り扱いが可能な分野であるという。また, この研究では,基準設定プロセスを再考し,そして,持続可能性報告の保証提供者,基準 設定主体および規制当局についての意味合いを検討している。また,保証提供者の限定的 保証のための手続きの要求事項の変化の意味合い,および限定的保証報告書により示され る保証のレベルにおいて保証報告書の内容が変化する特徴についての意味合いを実験的に 調べたものである。. 10 内部監査とリスクマネジメント 企業の内部監査およびリスクマネジメントを通じた持続可能性報告の保証が重要である.  Simnett(2 012).. 220 ─ 14( ) ─ .

(15) 持続可能性報告の保証(川原). と主張する研究がある。Ridley らは,いわゆる新興市場における持続可能性の保証および 内部監査を題材とし, 持続可能性報告とその保証との間の関係性を明らかにした。この 研究の趣旨は,新興市場における企業の取締役に対して,企業の責任と統治の点において 持続可能性に関連する内部監査にもっと注意を払うことを支援することにある。Ridley ら は,企業に関連する持続可能性問題を企業が報告することへの認識が高まりつつあるも, 独立の保証を受けた持続可能性報告のステークホルダーへの重要性や価値が,十分に評価 されていないことを問題視した。この研究では,理論的な議論に不足する面もあるものの, 持続可能性報告への保証が内部監査によって提供できる,あるいは提供されていること, また,そのような内部監査の機能が効果的な企業統治に意義のある貢献をしていることを 主張した。この研究では,いくつかの実際の事例を,理論的および実証的な先行研究に結 び付いた主要な内部監査の専門職基準および指針の特徴をもとにレビューをしている。そ の結果,持続可能性の方針,実践および測定の報告に対する独立の保証がない場合には, ステークホルダーにとっての価値を低減させるものであるとの議論を支持することとなっ た。持続可能性問題の報告に関して内部監査に潜在的な機能があるにせよ,国際的にみれ ば,内部監査がこの役割を促進してきたとは必ずしも限らないと指摘している。. 11 持続可能性報告の開示制度 欧州連合(European Union: EU)による,年次報告の中での持続可能性報告の開示政 策に対して,保証の要求事項が不足しているなどの批判的分析を加えている研究がある。 Zandvliet は EU による CSR 報告書の単一の枠組みに向けた制度改革に対する評価を行っ ている。2011年に CSR 戦略の改訂に向けた EU の通知文書は,非財務情報の開示を通 じて社会および環境の責任を促進していくことを重要な問題と位置づけている。また, 企業の社会および環境情報の開示を改善することを求めている。 Zandvliet はこの通知 文書を報告要求事項の拡大に向けた最初の段階と位置づけ,その内容に対して改善案を提 示している。例えば,EU 加盟国の中でも環境および社会情報の開示の制度が進んでいる デンマークの制度を取り上げ,改善点を指摘している。すなわち,まず,アメリカ合衆国 のドット・フランク法 の要求事項のように,外部の監査人によって報告書を検証するこ  Ridley et al.(2011).  Zandvliet(2 011).  EU(2011), p.7, sec.3.3.  Ibid., sec.4.5.  Dodd-Frank Wall Street Reform and Consumer Protection Act,Pub.L. 1 11203, H.R. 4173.. 15( ) 221 ─ ─ .

(16) 第60巻 第2・3号. と,また,財務報告の法令のように,企業が虚偽または誤解を与える情報を報告する場合 に利害関係者が行動をとることができる権利を付与することを提案している。また,上場 企業に社会および環境問題に関する報告を要求するフランスの制度も取り上げ,デンマー クとともに,制度としては評価に値する一方,実務的にその効果を測定することは困難で あると指摘している。. 12 温室効果ガス排出量の検証 持続可能性情報には様々あるが,他の情報項目に比較して測定,報告および検証(Measurement, Report and Verification: MRV)のシステムが国際的に確立しつつある分野 として温室効果ガス(Greenhouse gases: GHGs)の排出量があり,その報告に対する検 証業務に関する研究がある。Green らは,GHGs の排出量という非財務情報に関する保証 における期待ギャップについて研究した。排出事業者,保証提供者,および株主など様々 なステークホルダーの間にある GHGs の保証に関連する期待ギャップがあるかどうかを 調査した。また,様々な GHGs 排出者あるいは GHGs の利用企業など,様々な産業分野 のための保証契約に内在する不確実性によって,ステークホルダーの期待が影響を受ける かどうかを調べた。その結果,排出量の保証の背景に期待ギャップが存在することが支持 された。ステークホルダー・グループの間で,排出量報告書の信頼性,意思決定有用性, また,保証提供者と経営者の責任に関して,根本的な相違が明らかとなった。さらに,利 用企業の契約および排出企業の契約の間で,そのギャップの程度が異なることが明らかと なった。この研究は,保証提供専門家および保証基準設定主体が,排出量の保証の信頼性 および社会的価値を促進するために,この背景における保証機能を効果的に伝達すること を促進するためのメカニズム,例えば,GHGs 報告書の国際的な保証基準の開発を検討す る際の議論に貢献できる研究といえる。. 13 CSR レポートと評判リスク管理 持続可能性報告が CSR レポートによって行われる場合があるが,評判リスク管理との 関係性について吟味した研究がある。Bebbington らの研究は,CSR レポートが評判リス ク管理のプロセスの結果に,またその一部になりうるとの見解を支持している。Bebbington らは,評判リスク管理と既存の社会会計の理論を結びつけながら,評判リスク管理の概念  Green and Li(2 012).  Bebbington et al.(2008)p.348.. 222 ─ 16( ) ─ .

(17) 持続可能性報告の保証(川原). が CSR レポートの実践を理解するのに役立つ可能性とがあるという調査結果を得た。と りわけ,環境の評判の記述についてみると,レポートのうちの環境責任に関する記載箇所 だけでなく,むしろ,経営品質,財務業績,および製品およびサービスの革新の面が,環 境責任に関する記載箇所と一緒に結びついていたという。同様に,社会業績に関する記載 箇所のもとでも,社会責任の記述は,経営品質についての確実性,および社会責任がいか に財務業績に結びついているかという内容と結びついていたという。 この研究より,持続可能性報告が CSR レポートで行われる場合,環境や社会の業績デー タを保証するにあたっては,保証の対象となる情報が広範囲にわたる可能性が伺える。そ の場合,報告媒体にわたる記述内容の相互関連性,整合性,あるいは一貫性に配慮した保 証を行う必要があることが示唆される。. 以上,持続可能性報告の保証に関する研究調査の視点とその成果を検討してきた。持続 可能性報告の保証の研究分野は未だ萌芽期といえる状況にあるものの,保証提供者,諸地 域の開示制度,保証基準,保証手続き,保証対象,保証報告書などに焦点を当てた様々な 研究がこれまで積み重ねられてきている状況が明らかとなった。ただし,持続可能性報告 に期待される機能である環境問題と社会正義の問題の解決の文脈で,保証の意味合いを明 らかにした研究がそれほど見られなかったので,これからの課題であることが伺える。. Ⅳ 持続可能性報告の保証の実践面における議論. 1 GRI による議論 持続可能性報告の作成の事実上の国際的標準を提供してきたといえる GRI によれば, 持続可能性報告とは持続可能性に関連した問題と,組織の計画および戦略,目標設定,業 績測定,並びに持続可能な国際経済に向けての取り組みの管理との間を,繋げるよう組織 が理解することを支援するプロセスと定義づけている。そして,持続可能性報告の最終プ ロセスは,組織の経済,社会および環境の影響,並びにこれら3つに関する業績との関係 についての最も重要な側面に関して,その組織が報告することであるという。 GRI は財務報告と比較した場合の持続可能性報告の特徴をいくつか挙げている。まず, 多様なトピックを扱うものであり,管理,測定,および開示される対象となる非常に重要 な問題が,産業分野や企業ごとに異なる点であることを取り上げている。次に,報告の中 に,数的および質的情報が混在し,特に,持続可能性に関する数的な開示は,通常,財務 223 ─ 17( ) ─ .

(18) 第60巻 第2・3号. 報告のように金額ベースで測定されるとは限らないこと,また報告のための内部統制シス テムおよびデータ収集が,財務情報のシステムやプロセスと比較した場合,それほど発達 していないことを指摘している。 GRI は,このような持続可能性報告が,組織をより持続可能にするための方法として, また,持続可能な開発に貢献する方法として活用されることを促進する組織であると自ら の存在を位置づけている。また,GRI は自らの使命を持続可能性報告基準の実践の普及と しており,すべての企業および組織が経済,環境,社会および統治の業績を報告すること を可能とするための持続可能性報告指針を無料で作成し,この持続可能性分野で先導的な 役割を果たそうとしている。 GRI によれば,保証とは報告書の読者および内部の経営者に,持続可能性に関する業績 の品質の信頼性を付与するものと定義している。また保証の効果については,データの信 頼性をより高め,意思決定により利用されるようになることであり,並びに開示情報の強 固さ,正確さ,および信頼性を高めるものと説明している。 GRI は持続可能性報告の開示に関する国際的に多く利用されている保証基準に,前述の ISAE3000 および AA1000AS を列挙しているものの, 保証の方法についていえば未だば らつきがあること,保証を制度化した国も未だ少ないことなどを挙げ,すべての地域で保 証が広く利用されているとは言えない現状を認めている。 そして,GRI が2013年にそれまでの持続可能性報告指針の改訂として公表した「G4 持 続可能性報告指針」において保証は任意適用のままである。すなわち,この指針に準拠し たという場合の要求事項に外部保証の付与を含めていない。外部保証の利用は推奨する ものの,報告書に外部保証が付与された場合,GRI 内容一覧表で参照が可能なように外部 保証報告書に該当頁を含めることを要請しているに過ぎない。 しかし,GRI は G4において,保証の品質に関連する4項目についてその報告に含める よう報告組織に要請している。すなわち,持続可能性報告の外部保証を求める組織の方針 および最近の実務,2つ目に,持続可能性報告に添付された保証報告書に含まれていない 場合,その範囲と基礎,3つ目に,組織及び保証提供者との間の関係,最後に,組織の持 続可能性報告の保証を求める際に,企業統治の最高組織あるいは上級経営者が関与してい るか否かの4項目である。.  GRI(2 013a), p. 13.  Ibid., p. 31, G432c.  Ibid., p. 36, G433.. 224 ─ 18( ) ─ .

(19) 持続可能性報告の保証(川原). 同様に,GRI は G4において,持続可能性報告に含まれる情報の信頼性の基礎となる報 告組織の内部統制である情報システムを重視していることから,その情報システムが持続 可能性報告の外部保証のプロセスの際,検証の対象となる可能性を明示している。また, 外部保証の対象となる報告書の情報の範囲が特定されているかどうかが,持続可能性報告 の信頼性の面で重要な点と位置づけている。 GRI は G4の実践マニュアルにおいて,保証の基本的な考え方を明示している。まず, 報告組織が持続可能性報告の信頼性を向上させるための様々な方法を用いる中で,内部資 源に加えて,外部保証の利用も推奨するが,要求事項とはしない。GRI では報告および, 記述あるいは数量情報であるにかかわらず,そのような情報の品質について保証報告書に おいて結論を公表することを計画した活動を解釈するために,外部保証の用語を使用する。 外部保証の用語は,GRI ではまた,重要性の原則の適用,あるいはステークホルダー・エ ンゲージメントを含む,報告内容の定義のためのプロセスのような,システムあるいはプ ロセスについての結論を公表することを計画した活動にも使われる。これは,業績の検証 あるいは法令遵守評価の公表のような,組織の業績の品質や水準を評価したりあるいは認 証したりするために計画した活動とは異なる。専門的保証提供者,または他の企業外部の グループあるいは個人の利用などを含む,外部保証の導入のための多様な方法が報告書提 供者によって用いられている。特定の方法に関わらず,外部保証は,保証のため専門的な 基準に従う,あるいは体系的で文書化された,証拠ベースでのプロセスを適用する「保証 提供者」である,組織外部の能力のあるグループまたは個人によって実施されるべきであ る。 同様に,GRI は G4 の実践マニュアルで,全体として,GRI の持続可能性報告指針を 利用した報告書の外部保証のために保証提供者に必要とされる7項目を列挙している。 まず,組織から独立していること,それにより報告に関する客観的で公平な意見あるいは 結論に至りそれを公表することができることである。2つ目に,主体事項および保証実務 の両方においての能力を有することが明らかであることである。3つ目に,保証契約に品 質管理手続きを適用していることである。4つ目に,体系的で,文書化された,証拠ベー スでの,そして明確に定められた手続きによって特徴づけられる方法において,契約が実 施されることである。5つ目に,全体の内容の選定と同様に,報告におけるデータの真実  GRI(2 013b), p. 16.  Ibid.  Ibid., p. 51.  Ibid.. 19( ) 225 ─ ─ .

(20) 第60巻 第2・3号. 性に配慮しつつ,合理的でバランスのとれた業績の表示を持続可能性報告書が提供してい るか否かを評価することである。 6つ目に,結論に至るまでの過程で, 報告組織が GRI の持続可能性報告指針を適用した範囲を評価することである。最後に,公に入手可能な記 述報告書を公表し,その中には,意見あるいは一式の結論,報告提供者および保証提供者 の責任に関する記述,並びに保証報告によって伝達される保証の性質を説明するために実 施された作業の要約を含むことである。. 2 米国の会計専門職による議論 持続可能性報告の保証業務を提供する潜在的な機会のある会計専門職には,対処すべき 重要な課題があるが, その視点を提供する米国の実務を基礎とした議論がある。 まず, Ballou らは,持続可能性報告で企業が公表する情報を会計専門職が保証する潜在的な機会 に注目しつつ,課題を提示している。すなわち,まず,どのような情報を保証業務の対 象とすべきかについて,未だ十分に関係者の合意が形成されていない点があげられる。報 告を作成する規準の適切性,および保証提供者がどのような業績および報告の基準を利用 すべきかについても,懸念があげられている。Ballou らは,持続可能性報告とは,企業の 事業,社会,および環境の活動について,およびそれらに関連するリスクをうまく取り扱 うことのできる能力を,重要なステークホルダーに向けた財務情報と非財務情報を含むも のと位置づけている。このような報告は,企業外部あるいは内部のステークホルダーの情 報要求を満たすために,企業は,社会,および環境の業績を測定し,かつ報告することが より求められていると主張する。そして,会計専門職には,そのようなニーズのある情報 を企業が提供する際,また,その情報の正確性を検証することでの支援の際に,重要な役 割をはたすことができると主張する。 Ballou らは,保証の枠組みに必須な報告作成基準について,GRI による報告フレーム ワークが,主な報告作成基準として利用されていることを認めている。GRI が2002年に包 括的な持続可能性報告の作成指針を公表し,2006年に第3版(G3)となる報告枠組みを改 訂し,2006年時点で国際的に10 , 00以上の企業がこの基準を使用していることを登録してい る事実を評価している。 しかし,Ballou らは,米国公認会計士協会(American Institute of Certified Public.  Ballou et al.(2006).  その後,GRI による持続可能性報告の指針の第4版(GRI(2 013a),GRI(2 013b))が,2013 年に公表されている。. 226 ─ 20( ) ─ .

(21) 持続可能性報告の保証(川原). Accountants: AICPA)およびカナダ勅許会計士協会(the Canadian Institute of Chartered Accountants: CICA )によって2 002年に設けられ持続可能性報告に関する統合任務部隊 が,2002年の GRI 持続可能性報告指針の規準は,関連性,信頼性,および検証可能性に 関連する測定の性質の点で,一般に認められた適切な基準を満たさないとの結論に2003年 に至ったことを重視している。Ballou らは,物量的で検証可能な測定値の場合には持続可 能性に関する情報が保証可能であるとの見方から,GRI の2002年の報告指針ではあらゆる ステークホルダーのために信頼性に欠ける測定の基準も用意され,結局,リスクマネジメ ントに関する多くの質的な記述,また検証するには十分な信頼性に欠ける業績や物量測定 値がある点を指摘している。そのため,一般に,持続可能性報告の検証は,検証範囲を限 定せざるを得ないという保証実務の限界を説明している。 また,Ballou らは,内部監査システムが報告の誠実性や信頼性に対して全体として重要 であり,GRI が外部者の検証を,内部監査に追加的なものとして推奨していることに言及 している。一方,保証専門家以外の者,例えば,ステークホルダー・パネル,あるいは外 部のグループあるいは個人が持続可能性報告に対して与えるコメントが,保証を与えるか どうかについて非常に懐疑的である。その理由は,体系的で,文書化された,証拠に基づ くプロセスを経た手続きを行っているか,また保証のための職業専門家の基準があるかの 点で,不十分であると主張するものである。 Ballou らは,持続可能性や CSR の報告を含む非財務情報が,外部の保証を受けないま ま一般に公表される状態を CSR 不正と呼んで問題視している。なぜなら保証が付与され ていない投資家等の誤解を招く機会となるかもしれないからという。 さて, 米国には GHGs 排出情報の証明業務基準があるので, その業務に関する議論の 前に,その設定経緯および特徴に触れておきたい。前述の AICPA と CICA の統合任務 部隊は,AICPA の監査基準審議会の承認のもとで2002年に「意見書(Statement of Position: SOP)第0 32号,GHGs 排出情報の証明業務」を公表し,2013年には同じタイトルで改訂 された「SOP 第131号」を公表している。当初の SOP 第032号が公表された背景には, 米国での気候変動問題への関心の高まりによって,企業が GHGs 排出の報告および削減 に対する法制度から自主的レベルまでに至った状況がある。また,持続可能性および気候 変動への企業および一般社会の関心とともに,GHGs 排出情報を自主的に報告する実務が, 米国でこの10年間に非常に発展してきた状況がある。その結果,多くの企業が中程度の保.  AICPA ウェブサイト参照。. 227 ─ 21( ) ─ .

(22) 第60巻 第2・3号. 証,あるいはレビューを求めており,そのような業務提供のための既存の証明業務の枠組 みがあるが, 特殊な適用指針の開発が必要とされた。 当初の「 SOP 第032号」は GHGs 排出量取引,スキームあるいは法規制のための書類の提出に関連した保証の要求事項を満 たすために使用されるという想定で,検査業務を提供する際に,GHGs 排出報告に対する 証明基準をどのように適用するかについて,公認会計士に指針を提供するものであった。 しかし,米国では当初の保証依頼では法規制の要求事項を満たさず,企業は公表する報告 の情報の信頼性をもっと追加することを自発的に求めたことから,検査業務よりもっとコ スト対効果のあるレベルで保証を求めることになった。この要求に応えるために,「 SOP 第032号」は,GHGs 排出情報の特定の主題事項に対するレビュー業務のための証明基準 の適用方法についての指針を含んだ「SOP 第1 31号」に改訂された。 「SOP 第1 31号」は,検査あるいはレビューに関わらず,業務の実施およびその報告に 関する指針を提供し,GHGs 業務を実施する実務家にとって必須のリソースという特徴が ある。ここでいう業務には,GHGs 排出インベントリーあるいは GHG インベントリーの ベースラインについての情報に関連したスケジュールあるいは主張についての検査あるい はレビューがある。 また, 登録における GHGs 排出削減の記録,あるいはその削減ある いは排出量クレジットの取引に関して,排出削減に関する情報に関連したスケジュールあ るいは主張についての検査あるいはレビューがある。 さて, この持続可能性報告および GHGs 排出情報に対する保証について, Schneider はこの保証業務の提供を公認会計士が実施することが適切であると主張している。その 理由として,Schneider は,まず,強固な保証の方法論があり,数多くのシステム,情報 プロセス,また管理フレームワークでの経験があり,弱点の特定および誤謬のリスクを特 定する能力があり,新規の主題事項を学び,そして新しい専門性を開発する能力がある点 を挙げている。 一方,Schneider は, 公認会計士が GHGs 排出情報の証明業務を提供するに際し,克 服する必要のある課題も指摘している。具体的には,この分野の保証業務を提供する非会 計事務所の競争相手があまり厳密な方法論を使っておらず,その分,報酬も低い可能性が あることである。2つ目に,GHGs 排出量の保証業務の分野にあるような,外部からの認 定が要求される潜在性を考慮しておく必要がある点である。3つ目に,前述の「SOP 第13 1号」が開発されたが,クライメイト・レジストリ(The Climate Registry)のような他.  Schneider(2013).. 228 ─ 22( ) ─ .

(23) 持続可能性報告の保証(川原). の組織においても独自の方法論を持っており,この分野が財務諸表監査のような会計専門 職の独占的業務領域でないこともあり,この業務を行うに当たり関係先と調整を図る必要 がある点である。4つ目に,2012年より AICPA で進展しているところの,持続可能性報 告の主題事項に既存の証明基準を適用するための指針を開発する必要がある点である。5 つ目に,GHGs 排出情報を含む,非財務の測定の把握,計算,および集積に関する管理を 考慮することが,持続可能性あるいは GHGs の保証にとって必須の部分となる点である。 6つ目に,財務諸表に GHGs 排出情報に関係する金額がある場合, 公認会計士は財務諸 表への影響を取り扱うために,GHGs 排出量に関連した概念を理解する必要がある点であ る。. Ⅴ 結 論. 持続可能な開発に向けた企業の変化あるいはそのプロセスに関する報告としての持続可 能性報告は,企業年次財務報告とは独立の媒体で公表されてきたが,最近,年次報告の中 でも財務情報と統合的に公表されつつある。問題は,持続可能性報告の媒体や形式ではな く,公表される情報の信頼性の確保,例えば,会計専門職など外部保証提供者による保証 の付与などを通じた,持続可能性報告の機能の向上といえる。しかし,財務報告の情報に 対する保証と比較した場合,持続可能性報告の目的,効果,内容などは一義的でなく,保 証についての制度的枠組みも未だ発展途上の状況が伺える。そのため,これまで適切な保 証の在り方に関する様々な議論が積み重ねられてきた。 本稿では,持続可能性報告の保証の分野におけるこれまでの主な学術的あるいは実務的 議論の検討を通して,今後の研究課題を探求してきた。第2章で持続可能性報告の保証の 意味合いを検討してきた。環境および社会報告書に対する「監査」の概念は多様でありあ いまいであることから,持続可能性報告の意味合いおよびその保証の意味合いも多様であ ること,よって報告および保証の求めるものを明確にすることが非常に重要であることが 明らかとなった。また保証の効果,保証対象の情報内容などにおいても一義的なものは見 られない。よって,持続可能性報告に期待される機能が,持続可能な開発への取り組み, すなわち環境保護や社会正義の問題の解決という報告の意味合いを関係者がよく理解した 上で保証業務の基準を開発するとともに,保証業務に携わる会計専門職等の教育訓練の充 実が重視されるといえる。 第3章で持続可能性報告の保証に関する研究調査の視点および成果を吟味してきた。保 229 ─ 23( ) ─ .

(24) 第60巻 第2・3号. 証を付与する誘因,保証提供者,保証の機能,鉱山・金属業における持続可能性報告の保 証,保証提供者と経営者の関係性,持続可能性報告の発展の障害要因,フランスおよびマ レーシアにおける保証実務,会計専門職の保証業務基準,内部監査とリスクマネジメント, 持続可能性報告の開示制度, 温室効果ガス排出量の検証, および CSR レポートと評判リ スク管理に焦点を当てた研究調査の成果を見てきた。これらの研究の共通の視点として, 持続可能性報告書の保証がもたらす持続可能な開発への貢献,あるいは説明責任の解除に ついての視点であり,それらの達成について批判的な論評が多く伺えた。 第4章で持続可能性報告の実務面における課題を,GRI および米国の会計専門職による 議論を通して検討してきた。GRI によれば,持続可能性報告書の保証は GRI の提供する 報告指針において必須要件とされていないものの,保証の品質に関する論点が相当程度整 理されて示されていた。また,米国では会計専門職のこの分野の潜在的可能性に鑑みた議 論が示され,そのための会計専門職のための保証基準が開発されつつあるが,重要な課題 も提起されていた。 以上,本稿で吟味してきた学術的あるいは実務的議論では,関係者の現状認識や実務の 醸成を踏まえつつ,建設的提案を加えていく肯定的な議論が多く見られた。そして,今後 の研究課題の共通点として,持続可能性報告への保証の付与が,報告企業の持続可能な開 発への実質的な貢献という持続可能性報告の本来の目的をどのように確実にできるかとい う点に引き続き焦点を当てていくことと言える。すなわち,持続可能性報告のプロセスを 通じて,環境問題や社会正義の同世代あるいは世代間の衡平の問題が解消されるという持 続可能性報告の本質的機能を,保証が確実にするという関係性をより明らかにしていくこ とが課題と言える。. 参考文献および参照ウェブサイト. American Institute of Certified Public Accountants: AICPA, http://www.aicpa.org/Pages/ default.aspx. AccountAbility(2008),AA1000 Assurance Standard 2008, AccountAbility, http://www.accountability. org/standards/aa1000as/index.html. AccountAbility(2011),http://www.accountability.org/images/content/5/4/542/AA1000SES% 202010%20PRINT.pdf. Ballou, Brian, Dan L. Heitger and Charles E. Landes(2006),“The Future of Corporate Sustainability Reporting A rapidly growing assurance opportunity”, Journal of Accountancy, American Institute of Certified Public Accountants: AICPA, US. Bebbington, J., Larrinaga C. and Moneva J. M.(2008),“Corporate Social Reporting and Reputation Risk Management” , Accounting, Auditing and Accountability Journal, 21 (3), pp.337361.. 24( ) 230 ─ ─ .

参照

関連したドキュメント

[r]

[r]

著者 研究支援部研究情報システム課.

著者 研究支援部研究情報システム課.

著者 研究支援部研究情報システム課.

著者 研究支援部研究情報システム課.

( 8 ) F REYFOGLE & G OBLE , supra note 5, at 8─17.. (

(Approximately 4,000 characters in Japanese, or 1,500 words in English. The Doctoral Thesis title, however, must be written in both Japanese and English.).. 博士論文審査委員会