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認知過程の外化と内化を生かしたメタ認知の育成に関する研究-その2 : OPPAによる外化と内化のスパイラル化の実践例を中心にして 利用統計を見る

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メタ認知の育成に関する研究―その2

―OPPAによる外化と内化のスパイラル化の実践例を中心にして―

A study on the development of metacognition ability with attaching importance

to externalize and internalize students' recognizing process (part 2)

-In terms of the practice of spiral recognition process

through the externalization and internalization using

OPPA-山 下 春 美

     堀   哲 夫

Harumi YAMASHITA

  Tetsuo HORI  

 問題の所在

 認知過程の外化と内化を生かしたメタ認知の育成に関する研究「その1」において、一枚ポートフォ リオ評価法(OPPA:One Page Portfolio Assessment)による外化と内化のスパイラル化の理論を中心に して検討を行った1)。本稿では、その理論を受け、授業実践を通してメタ認知をはじめとする資質・ 能力の育成について具体的事例をもとに検討してみたい。  新学習指導要領によって資質・能力の育成に重点が置かれるようになった。これからの教育におい て、学習者が学習内容を確実に習得することと資質・能力を育成することは、必須といえる。これま での方法では、資質・能力が適切に育成されなかったことから、新学習指導要領の中でそれを育むこ とが強調されるようになっているのである。では、その実現のために教師はどのような働きかけを学 習者に行っていけばよいだろうか。  資質・能力を育成するためには、学習者自身が自分の学びについて意図的に吟味し、自分自身の行 動を調節することが重要である。つまり、学びの過程を確認していくことが必要とされている。毎時 間の学びを確認しながら、自己と向き合っていく一つの方法として、OPPAがある2)。しかし、これ までに行われてきたOPPAに関する研究は、メタ認知と資質・能力の育成の具体的方法論について十 分に議論されてきていない。  OPPAは、一枚の用紙(OPPシート)を用いるところにその特徴がある。OPPAの理論について検討 した前報「その1」を受けて、今回は、OPPシートを利用してその記載内容から教師が授業をどのよ うに評価し、具体的にどのような働きかけを学習者に行えるのか、またその結果どのような資質・能 力を育成できたのかを明らかにする。さらにそのことを通して、メタ認知の能力を育成できたのかど うかを検証したい。 1.研究の目的 (1)資質・能力の育成に関わる目的  学習者に適切な資質・能力の育成をするための手立てとして、OPPシートを活用する。資質・能力 の育成の核となる重要な要素は、思考力・判断力・表現力である。OPPシートに記載された内容、つ *富士河口湖町立船津小学校

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まり外化された内容を基にして、教師がその確認を行うとともに適切なフィードバックを行い、さら にそれを学習者に内化させ、その働きかけ(足場かけ)を通して、いかに学習者の思考力・判断力・ 表現力を高め、資質・能力がどのように変容していくか、それがメタ認知とどのように関連している かを検討する。 (2)教師の働きかけに関わる目的  上で述べたように、OPPシートの記載内容を基にして学習ごとの学習者の様子を把握し、資質・能 力の育成のための教師の働きかけについて検討していく。 2.研究の方法  小学校6年生の「ものの燃え方と空気」の単元(全10時間)を事例にし、OPPシートを活用しなが ら授業を展開する中で、資質・能力の育成を行う。実際に行った授業の流れは表1に示した。また、 授業で用いたOPPシート図1および2は、後に詳述するが、資質・能力の育成には、OPPシートが重 要な役割を果たしている。  まず、燃焼に対する学習者の既有の知識や考えに関する概念調査を行い、実態を把握する。次に OPPシートの作成と学習指導案を作成しながら、授業のグランドデザインを行う。授業のグランドデ ザインとは、学習前の学習者の実態を把握し、それを前提として授業計画を立て、具体的に育みたい 資質・能力を明確にするともに、OPPシートの記載内容を基にして適切な働きかけを行い、授業の修正、 確認、評価などを総体として捉え、授業を構造化していくことをさす。  次に、授業実施し授業の確認・修正を行い、学習者への不適切な点に対する働きかけを行う。  最後に、学習者の立場から評価、授業者の立場からの評価を行い、教師の働きかけと資質・能力の 育成の関わりについて検討する。  実施時期および調査対象は下記の通りである。 (1)調査時期は2009年6月5日∼26日。 (2)調査対象は富士河口湖町立F小学校6年生1学級38名(特別支援学級の学習者1名含む)。 3.本研究で用いたOPPシートの概要 (1)OPPシートの役割  OPPシートの目的の一つは、学習履歴を明確にすることである3)。学習者が教師のねらいとする学 習履歴を残すためには、教師自身、毎時間の指導目的を明確に持ちながら授業を行わなければならな い。そして、学習者の学習履歴を見て、授業の確認や修正およびフィードバック、つまり形成的評価 を行っていく。この働きかけは、学習履歴に表現された内容の質的向上にとってきわめて重要な役割 を果たしている。  学習者は、学習履歴に対して学習のポイントを自分自身で考え出した表現でまとめるため、OPPシー トを書く活動を継続的に行っていくことで、目的からずれないようにまた自覚的に授業に臨む意識が 高まってくると考えられる。  こうしたOPPシートの学習履歴を残していく活動は、資質・能力を育成する一つの手立てであり、 学習目標を学習者が持つようになるための働きかけにもなる。学習者がどのようにすれば自ら学習目 標を持てるようになるのかに関する具体的提案はほとんどない。学習履歴に求められている問いに対

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次 時 学 習 活 動 指 導 目 標  OPPシートと評価 1 1 ・燃えているろうそくに底を切ったびんをかぶ せてふたをすると火がどうなるか考える。 ・ろうそくを燃え続けさせるにはどうしたらよ いか考える。 ・燃えているろうそくに底を切ったびんをかぶせ、しばらく すると消えることを確認し、ろうそくを燃え続けさせる ためにはどうしたらよいか、着眼点を持たせ考えさせる。  【OPPシートの使い方の説明】 OPP「学習前」 ・学習前の燃焼に対す る概念をみる。 【意欲】 2 ・ろうそくを燃え続けさせるための実験を行う。 ・ものが燃え続けるには、空気の出入りが必要 であることをまとめる。 ・ものが燃え続けるには、空気がたえず入って出ていく必 要があることを理解させる。  【タイトルと学習履歴の記入の仕方の説明】 OPP No.1 【意欲】 【習得】 【活用】 2 3 ・空気中の何にものを燃やすはたらきがあるの か考える。 ・窒素、酸素の中でろうそくを燃やす実験をす る。 ・酸素にはものを燃やすはたらきがあることを まとめる。 ・空気中の気体の体積の割合を知らせ、窒素と酸素をびん に捕集し、どちらの気体にものを燃やすはたらきがある のか理解させる。  【前時の学習内容について誤った理解の修正】  【タイトルのつけ方と学習履歴の書き方についてのアド バイス】 OPP No.2 【意欲】 【習得】 【活用】 3 4 ・ものが燃えたあとのびんの中の空気がどうなっ ているか考える。 ・ものが燃えたあとのびんの中の空気がどうなっ ているか石灰水で調べる。 ・石灰水を使って、びんの中の空気が変化していることを 理解させる。  【前時の学習内容について誤った理解の修正】 【意欲】 【習得】 5 ・ものが燃えると二酸化炭素ができることをま とめる。 ・ものが燃えると二酸化炭素ができることを理解させる。  【タイトルのつけ方と学習履歴の書き方についてのアド バイス】 OPP No.3 【意欲】 【習得】 【活用】 6 ・ものが燃える前と燃えたあとの、びんの中の酸 素と二酸化炭素の体積の割合について考える。 ・気体検知管の使い方を知り、ものが燃える前 の酸素と二酸化炭素の体積の割合を調べる。 ・気体検知管の使い方を知らせ、ものが燃える前の酸素と 二酸化炭素の体積の割合を調べさせる。  【前時の学習内容について誤った理解の修正】 【意欲】 【習得】 7 ・ものが燃えたあとの酸素と二酸化炭素の体積 の割合を調べる。 ・ものが燃えると、空気中の酸素の一部が使わ れて二酸化炭素ができることをまとめる。 ・気体検知管を使い、ものが燃えたあとの酸素と二酸化炭 素の体積の割合を調べさせる。 ・ものが燃える前とあとの体積の割合を比較し、ものが燃 えると、空気中の酸素の一部が使われ二酸化炭素ができ ることを理解させる。  【タイトルのつけ方と学習履歴の書き方についてのアド バイス】 OPP No.4 【意欲】 【習得】 【活用】 8 ・これまでの実験結果をもとにて、自分で燃焼 のしくみを説明する。 ・これまでの学習で分かったことを使い、燃焼について文 章でまとめさせる。  【自己評価の記入の仕方を説明】 OPP チャレンジ  「学習後」 ・学習後の燃焼に対す る概念をみる。  「学習を振り返って」 ・学習を通して自己変 容を確認する 【意欲】 【活用】 発 展 9 10 ・酸素50%、二酸化炭素50%の気体の中で ろうそくを燃やし、一定量の酸素があれば、 ものが燃えることを理解する。 ・空気中の酸素の量や二酸化炭素の性質を見直させる。  【前時の学習内容について誤った理解の修正】  【タイトルのつけ方と学習履歴の書き方についてのアド バイス】 OPP 発展 【意欲】 【活用】 びんの中でろうそくを燃え続けさせよう ものを燃やすはたらきがあるのは空気中の何か ものが燃えたあとの空気はどうなっているか ものが燃えるしくみを説明しよう 学習前の「燃焼」に対する素朴概念の確認 「学習履歴」による習得・活用内容の確認 「学習履歴」による習得・活用内容の確認 「学習履歴」による習得・活用内容の確認 「学習履歴」による習得・活用内容の確認 学習後の「燃焼」に対する概念の確認と自己評価 「学習履歴」による習得・活用内容の確認 表1 「ものの燃え方と空気」単元の授業の流れ(全10時間) (注)「指導目標」内の【 】は、OPPシートに関する指導者の具体的な働きかけである。「OPPシートと評価」内の【 】はOPPシートから見取っ ていく評価観点であり、【意欲】は、課題を意識し見通しを持って、意欲的に学習に取り組んでいるかを見取る。【習得】は、タイトルと学習 のまとめから学習者の習得状況を見取る。【活用】は、一般的に活用する力をつけるために、学習内容をまとめる学習活動(活用する学習活動) を通して、学習者の活用状況を見取る。

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して、全力で答えていく活動を通して、学習者は、自分の学びを実感するとともに学習の変容に気づ いていくようになることを目指している。 (2)OPPシートの内容とその活用  今回使用したOPPシートは、図1および2に示したように、本質的な問い(学習前・後)、学習履歴、 チャレンジ、自己評価から構成されている。このOPPシートは、3つに折りたたんで使用するようになっ ている。以下、OPPシートを構成するそれぞれの要素について、この授業内容に即して説明する。  【本質的な問い】TIMSS2003の理科問題から、物理・化学領域の「ロウソクの消える様子」の問題 を使った4)。TIMSSの結果を見ると、日本の学習者のこの問題の正答率は、国際的にかなり低いレベ ルにある。そこで、この問題を活用し、TIMSSでは回答理由を書かせるようになっていないため、選 択肢から選んだ理由も書かせるようにし、燃焼についての理解のどこにつまずきあるのかを把握しよ うとした。さらに、学習前と後で全く同じ問題を回答させ、学習によってどのようにその理解状態が 変容していったのか把握できるようにした。  【学習履歴】学習履歴は、本来ならば毎時間書かせることが望ましいのだが、全10時間を一枚の用 紙の中に納めることは難しいので、学習内容の区切りで履歴を残すようにした。学習履歴では、学習 展開の中でわかったことや授業の中で最も大切なことをふり返り、学習者自身の表現でまとめていく 活動を行う。また履歴の中で、その学習に対する適切なタイトルをつけさせる。この働きかけは、学 習の要点を的確に表現する能力を育成するためである。  学習履歴は、学習した内容を直接問うのではなく、学習者からしてみると最も遠いところからの、 言い換えると「この授業で最も大切なこと」と問うことで、学習の真の理解を外化させようとする。 この働きかけにより、学習者は、自らの学習に対して責任を持たざるを得なくなり、徐々に学習目標 をもって授業にのぞむようになる。その結果、自分で考え、判断し表現するという活動が深められ、 質的に高い学習ができるようになる。授業者にとっては、学習者の理解の状態を随時捉え、それを フィードバックしていくことが可能になってくる。  【チャレンジ】学習した内容の理解状態を把握するために、燃焼の仕組みについて「空気」「酸素」「二 酸化炭素」のキーワードを使って、文章でまとめるという表現活動を取り入れた。それは、学習内容 を適切に習得かつ理解し、さらに活用できるようになっているのかどうかを判断するである。このと き、学習した内容を自分が持っている情報の中から的確に選び出し、それをまとめ適切に表現する力 が求められる。  【自己評価】ここでは、学習者自身が学習前の自分の考え、学習履歴における自分のまとめ方や表現、 学習後の自分の考え総てをふり返り、学習に対する変容に気づくことができようにする。学習者は、 自己の学習内容の習得およびその変容の実感とともに、自己の学習に取り組む姿勢の成長に気づくよ うになる。また授業者は、授業全体をふり返り、教師の働きかけの課題点などを明らかにする。   (3)OPPシートによる評価  OPPシートを活用することは、学習者自身が学習の構造を把握し、その中で自分の高まりを実感す ることができる利点がある。これがまさに新学習指導要領でいっている「学びの実感」ではないだろ うか。教師の立場から見ていくと、OPPシートには、学習者の表現で学習がまとめられていることから、 不適切な内容で記録してある学習者がいた場合、学習過程において修正をしていくことが可能である。  また、OPPシートには、習得内容の他にも思考力、判断力、表現力といった学習者の力が表出され ているので、今までの自己評価では読み取れなかったところまで踏み込んで学習者の実態を見取るこ とができる。つまり、学習者の変容や理解をより深めることができ、資質・能力の育成についても見

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図1 授業で使用したOPPシートと記入例(表面,男子K.H.)

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取ることができるのである。 4.調査の結果と考察 (1)資質・能力の育成に関して  本稿でいうメタ認知の能力の育成とは、次のような過程を経て獲得されると考えている。学習者が 学習内容の最も大切なことを自分の頭で真剣に考え外化し、それを教師が確認する。外化された内容 を確認するとともに適切なフィードバックを行い、学習者に内化を働きかける。その内化された内容 が次の学習に外化されていく。こうした一連の過程をたどることによってメタ認知の能力が高められ ていくと考えている。  ① 学習タイトルにおける外化と内化  学習履歴ごとにタイトルをつける活動を取り入れた。初めの段階では、タイトルをつけるのが難し いと感じる子どもが多かった。しかし、教師の働きかけにより徐々に質的に向上していく様子が伺え た。学習したことをタイトル化するということは、究極の学習内容の要約で、認知過程の外化である。 学習したことを意識化した、思考、判断、表現の表れと捉えることができる。  1回目、2回目のタイトルづけでは、漠然としたものや、内容からややずれているものが多く見ら れた。そこで、 「授業でやったことで大事なことが一言で表せるようにしてみよう。」 「新聞の見出しのようにタイトルをつけると分かりやすいと思う。」 などという全員に対する働きかけを行った。その結果、授業や学習の目的を意識するようになったタ イトルが増えてきた。  3回目のタイトルでは、実験の結果だけに目がいってしまったと思われる子どもが多かった。そこ で、次は、 「結果からどんなことが言えるのかをタイトルにしていけば分かりやすいのでは…。」 といったアドバイスを与えた。  また、中には個別指導が必要な学習者もいるので、彼らには、個別に全員への働きかけと同じ様な 内容の言葉かけを再度行ったり、今日の授業の振り返りを一緒に行ったりした。その結果、教師の毎 回の働きかけで、タイトルをつけることも意識しながら授業に臨むようになり、話の聴き方や実験へ の取り組み方など授業態度にも変化が見られるようなった。そして、タイトルの内容も徐々に授業に 沿いながら工夫されるようになり、タイトルをつける意味(学習内容を要約しているということ)に ついても子ども自身が意識できるようになってきた。初めての取り組みで、まだまだ内容的にも質的 にも課題は残っているが、このような活動の繰り返しによって、確実に力を伸ばしていくだろうとい うことが、この学習の成果から推測できる。  次に、学習者の力がどのように高まっていったのか、具体例をあげて検討する。  A.漠然としたものから学習内容を反映した明確なタイトルへと変容した事例  次に示した事例は、先にも述べたように1回目、2回目ともに内容には触れず、漠然としたタイト ルしかつけていないものである。このまま働きかけを何もしていかないと、次からのタイトルも同じ レベルでしか表現できないことが予想できた。そこで、全体への働きかけの後、個別に 「タイトルを見たら授業で何の勉強をしたかわかるようにまとめてみるといいね。」 といった働きかけを行った。その後のタイトルは、授業の内容を表すように明確な視点をもったもの

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に変容していった(下の6月12日、No.3以降参照)。       (男子H.S.)  B.授業の内容とは違うものから学習内容を反映したタイトルへと変容した事例  ここで示す記述例は、はじめは授業内容からは離れたタイトルづけをしたものである。このような 子どもに対しても、Aの記述例の学習者と同じように個別指導を行った。授業内容を表すのがタイト ルということを理解してからは、タイトルの内容が授業の内容に沿ったものに変容していった(下の 6月12日、No.3以降参照)。         (男子W.Y.)  C.タイトルが授業の内容からずれている、実験結果のみに視点をおくなどから変容した事例  ここにあげた記述例の学習者は、1回目のタイトルは授業の目標とは違うところでつけてしまって いる。このように誤ったタイトルをつけた学習者に対しては、授業内容の振り返りができるような働 きかけを行った。学習履歴の中で一番大切な事が書かれているので、それを短く端的にするのがタイ トルだということを意識させるようにした。また、3回目のタイトルは、実験の結果だけをタイトル にしてしまっている。上でも述べたようにこのような学習者には、実験の結果から何がいえるのかを 意識させる言葉かけを行った。 (男子K.K.)  D.最初から授業に沿ったタイトルがつけられていた事例  下にあげた記述例のように、最初から授業のねらいとずれないでタイトルをつけられる学習者もい る。このような学習者には、さらに精選されたわかりやすいタイトルをつけられるようさらに働きか けを行った。このような学習者は、教師の全員への働きかけを聞きながら改善しようと努力したり、 友だちのタイトルを参考にしながらさらに工夫しようとしたりしていた。 (女子K.M.)  ② 学習履歴における外化と内化  学習者自らが自分の言葉で学習した内容をまとめるのが、学習履歴である。本時の学習で最も大事 なことをまとめる作業であるため、学習目標を持って授業に取り組んでいないと履歴を残すことは難 しい。授業の中のさまざまな情報を自分の中に取り込み、その中から最も大事なことを選び出し、自 分の表現でまとめることは、資質・能力を育成する上できわめて重要な活動だと考えられる。  図4は、実際に学習者が記入した学習履歴である。前時の学習の内容を踏まえ、学習のつながりを 意識し、まとめ方にも統一感を持たせている。授業の中での情報からここはと自分が思う所を選び出 し、自分なりの言葉や表現でまとめることができている。

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 OPPシートの学習履歴をまとめるための学習者への問いは、学習内容に対して抽象的なものである。 本シートでは、「今日の学習でどんなことがわかりました?一番大切なことを書きましょう。」と聞い ている。具体的な学習内容には触れず、学習者自身に学習履歴としてまとめる内容を選ばせているの である。一番大事なことを聞かれ、何を選んでくるかということで、本時の学習についての習得状況 を確認できるとともに、まとめるという作業から、思考力、判断力、表現力への働きかけとその育成 をはかることができる。常に抽象的な問いが繰り返されることで、今日の授業での大切なところはど こかと学習者自らが学習目標を持つようになり、その姿勢で主体的に授業に臨むようになった。  そのため、学習履歴に対する教師のコメントや働きかけを真摯に受け止め、次の履歴に生かすよう になってきた。まさに、教師の働きかけが活かされた学習者に対する内化と言える。資質・能力を身 につけながら学ぶ意味や必然性も同時に感得されていったということも言えるだろう。まさに、外化 から内化へとスパイラルに継続されることによって、資質・能力の育成とともに、メタ認知の育成が 促されていると考えられる。 図4 学習のつながりを意識した学習履歴(女子S.S.)

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 ③ 自己評価における外化と内化  OPPシートの「学習をふり返って」(自己評価)の記述内容を分析してみると、学習内容に関わる記 述と自己変容に関わる記述に分類できる(表2参照)。学習内容に関わることを記述している学習者は、 38名中33名(86.8%)、自己変容に関わることを記述している学習者は、38名中30名(78.9%)である。  自己変容に関わる記述をさらに細かく分析すると、次のような記述内容に分けることができる。表 現(まとめ・メモ)に関わる記述63.2%、思考・考える力に関わる記述21.1%、話の聴き方に関わる 記述18.4%、楽しさ・自信に関する記述23.7%。  OPPシートを利用し自己評価することで、自分の学習の深まりに気づくとともに、自分の授業に臨 む態度の変容にも気づくことができた。目的意識を持って学習に取り組んでいることに気づき、自分 にどんな力がついてきているかを自覚し始めてきている。自分の言葉を使ってOPPというオリジナル シートを作ることで、主体的に学んでいる満足感や充実感も感じているようである。  また、さらによいものを仕上げていきたいという向上心にもつながり、前向きに学習に取り組む様 子が見られた。OPPシートの活用によって、自己評価することで学ぶ喜びに触れ、自己効力感を体感 できるのである。自分の学びを学習履歴という形で外化することで、学習者自身が自己の学びをチェッ クすることができ、それにより内面とも向き合えるのである。  それに加えて、外化したことに対して教師の働きかけがあることで内省が行われ認知過程の内化が 促進されたのである。学習内容についての記述だけでなく、学習を通して変容した自分にも気づき記 述できる、これこそが真の自己評価であり、メタ認知の能力の育成に大きく関わる点であるというこ とが明らかになったと考えられる。また、自己評価における外化と内化は、次の単元の学習意欲や学 びの必然性につながるという意味での大きなスパイラル化と言えるだろう。  以上のことから、学習内容の確認とともに、自分の学習に向かう内面的な変化をも確認できる仕組 みをOPPシートは持っているといえる。この学習に対する内面的な成長が学ぶ必然性につながると考 えられ、資質・能力を育む内容についても学習者自身が気づく仕組みになっていると言える。 学習者の記述例 学習内容の み記述 ○私は、物を燃やすと二酸化炭素がほとんどで酸素より多いと思っていたら、意外に酸素の方 が多いということが分かった。火が燃え続けるためには、空気の出入りが必要と分かった。 自分では、物を燃やすためには、二酸化炭素が必要だと思っていたけど、酸素が必要だと分 かってよかった。空気中の成分が分かった。空気中のほとんどがちっ素という事も分かった (女子K.M.)。 自己の変容 のみ記述 ○メモの書き方がよくなった。勉強で、目的にあったいしきをしているから(女子A.T.)。 ○自分で大きく変わったことは三つ。一番おおきかったのは、知識が増えたこと。次が考え方。 三番目がメモの取り方です(男子W.Y.)。 学習内容と 自己の変容 を記述 ○前よりも先生の話をよく聞くようになったり、上手にまとめるようにがんばったり、考える 力もついたと思う。ちっ素が燃やす働きがあると思っていた。だけど酸素が燃やす働きを もっていることが分かった。それから二酸化炭素は炭素と酸素がつかないと出来ないことが 分かった(女子O.K.)。 ○ぼくは、この学習を通して先生が何を言うのか先を見ようとするようになった。そして、二 酸化炭素だけで消えると思ったら、空気がじゅんかんしていないから消えることがわかった。 火を燃やす材料は酸素だということがわかった(男子K.S.)。 表2 「学習をふり返って」(自己評価)の記述例

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(2)教師の働きかけに関して ① ワークシートの活用と役割および資質・能力の育成  学習者が、OPPシートに認知過程を外化するためには、外化するための材料がなくてはならない。 今回、その材料を集める手段として、ワークシートを活用した(図5参照)。  今までワークシートというと、教師が理解させたい内容を構成し、工夫して作成してきた。しかし、 これでは結局、教師の枠の中に学習者を入れてしまっているだけで、学習者が自ら考え表現するとい う学びにはなっていないのではないかと考えた。つまり、ワークシートに書かれる内容は、たとえ学 習者が書いたとしても教師の考えた要素が多く入り込むので、本当の意味での外化になっていないと いう問題である。そこで、今回使用したワークシートは、今までの教師の枠を取り払い、自由メモ的 に学習していることを書けるようにした。  ただし、教師は、適宜学習履歴を残していくことを学習者に指示し、自分がワークシートに残した メモが毎時間の学習履歴の材料になるよう意識づけをしていった。学習者は、自分の学習履歴を残す ため、主体的にワークシートにメモをとり、板書のみでなく、必要なことや大切なこと、具体的な現 象など事細かに記録するようになっていった。  つまり、OPPシートに「一番大切なこと」をまとめるために、学習者自身が必要と考える情報の記 録である。こうした教師の働きかけにより、自分に必要なものは何かという学習目標を持って、学習 に意欲的に取り組む姿が見られた。このように自分の学びから外化したことの具体的内容に対する教 師の働きかけが入ることで、それに続く内化の機能を適切に働かせることが可能になるのである。  何のためにメモを残しているのかという目的意識を持たせることによって、学習者は主体的に活動 を始める。教師の働きかけは、構造化されたワークシートを準備するのではなく、学習者自らが幅広 く活動できるような場を与え、学習目標を意識化させることではないだろうか。そうすることで、学 図5 授業でメモとして使用したワークシート(左;女子H.M. 右;女子K.A.)

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習者自身の学びが本質的なものになっていくのだと考えられる。  ② 話し合い活動の導入および資質・能力の育成  今回、OPPシートに、学習者が一番大事なことを理解し記録するためには、実験の結果からどんな ことが言えるのかを検討する場面設定の重要性を痛感した。学習者は、単純に実験して、見えている 結果や現象に心を奪われがちである。もちろん具体的に見えている結果や現象は非常に重要であるが、 そこから導き出せる理論を組み立てていく働きかけがなければ、課題意識の明確化や科学的な思考に まで到達することができない。  そのため、授業の中に話し合いの場面を導入し、考えを出し合うことで学びを共有化し、さらに考 えが深まるような仕組みを授業の中に取り入れることが重要であると考えられる。ここで言う話し合 いは、ワークシートのメモに書いたことをもとにして行う話し合いのことをいっている。学習履歴を 残すためにワークシートに一人ひとりが記録していったことを根拠にしながら、話し合いをするので ある。そうすることで、思いつきで話すのではなく、自分の外化したことをもとにすることによって、 話し合いの深まりが期待できる。  教師の一方的な話しだけではなく、学習者の言葉での話し合いだからこそ気づくことや理解の深ま りがある。また、友達の考えと向き合うことで自分の考えと再び向き合えるという大切な機会になる。 要するに自己の見直しの機会である。自己の見直しを通すことによりメタ認知の能力の育成も期待で きる。  学習者の話し合いという活動における教師の役割として、話し合いが深まるために、どのようなタ イミングでどのような働きかけを行うかが重要になると考えられる。教師の具体的な役割については、 今後も検討し、授業展開の中で上手く機能していくように探っていく必要がある。  ③ OPPシートへの記載内容に対する具体的な働きかけおよび資質・能力の育成  OPPAは、OPPシートへの記載内容について点数化するような評価はしないということが大前提で ある。しかし、書かれていればなんでもよいというわけではない。学習の状況や自己の内面について 確認する。言い換えると内化を促すシートなので、記載内容が向上していくいような教師の働きかけ は、必要不可欠である(図6参照)。  今回の授業では、具体的に、学習履歴を提出するごとに教師のコメントを入れていった。授業の趣 旨を良く理解しまとまっている学習者に対しては、「分かりやすくまとめましたね。」「よくまとまって います。」といった簡単なコメントをいれていったり、よくまとまっているところに波線を入れたり した。授業の趣旨からずれて記述している学習者に対しては、次回の学習履歴に適切な記載が可能に なるような発問ともいえるコメントを赤で示した。  また、実験の結果だけを書いている学習者には、「この実験からどんなことが言えますか。」という ように質問の形でコメントを入れていった。このように質問の形でコメントを入れると、図6、No.1 の記述例のように、それに対して答えを記入する学習者が出てきたり、履歴に記入すべきポイントを つかめるようになったりして、教師がもっていた授業の目的と合致するようになっていった。このよ うな簡単なコメントでも、学習者はとても楽しみにしていて、教師のコメントをよく読んでいた。こ のような一人ひとりとの簡単なやり取りでも、具体的な働きかけがあることで記載内容が徐々に質的 に高まっていった。  学習者の中には、OPPシートの学習履歴に対して、真剣に考え工夫をかなり凝らすものがいた。そ のような優れたOPPシートについては、それをクラスで紹介したりするなどの働きかけも行った。学 習者は、自分のシートにこだわりを持ち始めていたので、友だちの良い所を真似し合い、さらに自分

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なりの工夫をそこに入れ、次第に良いシートを作りあげることができるようになっていった。  このように小さな働きかけではあるが、毎回個々に働きかけができるので、確実に一人ひとりの学 習状況をつかむことができた。そのことによって、教師自身が授業の見直しをしたり修正をしたりす ることができたことは大きな成果であった。学習者からみると、毎回のコメントにより書く目的がはっ きりしてきたので、目的意識を持って学習に臨むようになっていた。だから、授業のつぶやきの中で「そ ういうことだったのか…。」とか「やっと理由がはっきりした。」などといったものが数多く出てくる ようになった。これは、学習者が学習目標を持ちはじめた証の言葉だと捉えることができるのではな いだろうか。  OPPシートを通しての教師の働きかけは、毎回全員に確実に行き届く。また、OPPシートによる外 化と内化およびそのスパイラル化は、学習者の何にどう働きかけたらよいのか、つまり足場かけの視 点を明確にしてくれる。さらに、こうした働きかけは、学習者の学習意欲とも結びつき、主体的な学 びにつながっているため、資質・能力を育成するためのきわめて適切な働きかけになったということ ができる。 図6 学習者のOPPシートへの記述に対する教師の働きかけの例(男子S.S.)

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 結語  授業における主な教師の役割は、教科書の内容を理解させ、必要な資質・能力を育成することにあ る。資質・能力とは、「自分の思考についての思考であるメタ認知」「学んだことを使いこなし、自分 なりに問題を解決する力」「自ら学び自ら考える力」などと言い換えることができるのではないだろう か。このような力を学習者に授業を通して身につけさせることの重要性は、教壇に立つ教師として十 分理解していたつもりである。しかし、その具体的な手立てが分からず、結局のところ評価もはっき りできる教科書の内容の習得に重きがいき、資質・能力については曖昧になっていたのが現実である。  今回、OPPAの利用により、学習者の認知過程の外化に対して、教師が指導結果の確認を行い、そ れを授業過程にフィードバックをかけることで学習者の認知過程の内化に働きかけを行えるというこ とが明らかになった。要するに、メタ認知能力の育成をはじめとする資質・能力の育成には、認知過 程の外化と内化をスパイラル的に機能させることの重要性が明確になった。  今後は、さらにメタ認知の育成と関わって実践的・方法論的な研究を深めていきたい。 (附記)本研究は下記の分担により行われた。OPPAによる外化と内化のスパイラル化の理論の骨子を 堀が作成した。また、研究の企画は堀と山下が行った。使用したOPPシートと学習指導案は山 下が作成し、授業を実施した。山下が執筆した論文に堀が加筆修正した。 (註) 1)堀 哲夫「認知過程の外化と内化を生かしたメタ認知の育成に関する研究−その1―OPPAによる外 化と内化のスパイラル化の理論を中心にして―」『山梨大学教育人間科学部紀要』Vol.11,印刷中 2)堀 哲夫編著『子どもの学びを育む一枚ポートフォリオ評価 理科』日本標準,2004 3)堀 哲夫『学びの意味を育てる理科の教育評価―指導と評価を一体化した具体的方法とその実践―』東洋 館出版社,2004 4)国立教育政策研究所『IEA国際数学・理科教育動向調査の2007年調査(TIMSS2007)』  http://www.nier.go.jp/timss/2007/index.html

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