論 文
電流端子を用いない電流雑音測定法
―リングサンプル法―
(昭和55年8月27日受理)橋口住久
鈴木喜孝
A New Method of the Current Noise Measurement with a
Current Driving Contact-free Configuration
SumihisaHASHIGUCHI YoshitakaSUZUKI Abstオact In current noise measurements of semiconductors and metals, it is sometimes di伍cult to obtain low noise ohmic contacts as current driving contacts. In this paper a new method is proposed to measure the current noise without current driving contacts. Aring−shaped sample is excited with a constant e.m.f. induced by a maglletic flux through it. The results of this method on carbon sheet resistive rings show good agreement with those of the conventional dc method.
はじめに
電流雑音の測定においては,サンプルに電流を流す ための電極の影響は極めて大きく,良質の低雑音オー ム性接触を得ることが必要である。通常は,電極で発 生する雑音の影響をさけるために,ブリッジ形サンプ ルに定電流を流して,四端子法で測定する。この方法 では,サンプルの抵抗値が大きいときには,定電流源 を構成する電源の電圧や直列抵抗の値を大きくする必 要があり,多くの困難を生じる。したがって,雑音測 定において非接触測定が可能となれば,その価値は極 めて大きい。 雑音測定においては,検出すべき量が極めて小さい 場合が多いので,検出用電極を除くことは困難であ る。ここでは,駆動用電極を用いない1〃雑音測定 法について検討し,測定例を示した。測定理論
駆動用電極を用いないで,サンプルに通電するため に,電磁誘導起電力を利用する。図一1のようなリン グ状サンプルを,変圧器の2次巻線として用い,誘導 起電力でサンプルを定電圧駆動する。サンプルの抵抗 値にゆらぎがあると,検出電極PrP2の間に電圧のゆ\
図一一1 リング状サンプル Fig.1 Ring sample一104一
電流端子を用いない電流雑音測定法 らぎが生じる。サンプルのP1−P2間の左側の部分を中 心からみこむ角度を図一1のようにθとすると,サン プルー周の起電力をe,抵抗をRとして,PrP2間の 左右の起電力と抵抗は,それぞれ ・・一昔ら炉(θ 一12π)・ (・) R・−撃煤@R・R・・=一(㌃・)R (2) である。P1−P2間に現われる電圧v12は, eLをRL
とRRで分圧した電圧とe;eをRRとRLで分圧
した電圧の和であるから, RL RR eコt (3) −eL十 V12= RL十RR RL十RR で与えられる。いま,抵抗RL, RRにゆらぎがある とき,これを:蕊㍍隠} (4)
と書けぽ,(3)は,Ro=RRo十RLoとおいて, ・12u㌃{妾・RR+(lt−・)dRL}(5)
となる。(5)は,搬送波eがdRR, dRLでDSB変
調を受けた形になっている。 実際には,サンプルの不均一性や,駆動磁束の中心 とサンプルの中心との位置のずれなどがあるので,搬 送波の漏れKe(K<1)を生じる。2つの検出電極の 位置を,サンプルの中心に関して対称にすれば,θ=π であるから v12=(e/2R) (∠IRR−dRL) (6)となる。∠RRとdRLとは無相関で,その大きさは
等しいことが期待されるので<dRR2>+<d.RL2> =<dR2>と書けば(6)は ・・2−堰^<餐2>一
(7) となる。ここで〈〉は平均を示す。搬送波の漏れのあるときにはPrP2間の電圧v12は
・・2・−K・+÷〆際2>−Ke(・+永/一く斜)
(8) となり,搬送波の漏れKe,変調度γ/<AR2>/2KR の振幅変調波の形をもつ。これを包絡線検波すること によって1/一ュコR2>/R2を求めることができる。 さて,図一1のようにサンプルの内径をrl,幅をW とすると,相対ゆらぎは単位帯域幅当たり<$2>一く雀〉一詩 (9)
と書けることが知られている1)。ここで,Gはコンダ クタンス,Nはキャリア総数,ノは周波数,αは雑 音の大きさを表す定数で,これを決定することが目的 である。いま,サンプルの導電率をρ,サンプルの厚 さを彦とすれぽ,図一1の半径r,幅drの細いリングのコンダクタンスdGは
tdr (10) dG= 2πρr で与えられる。これから,サンプルのコンダクタンス は, G・・ −Qi.1;,∫li+w÷−2:,1・(ア1三W)(・・) となる。(9)は,細いリングのゆらぎについても成立 するから,キャリア密度をnとすると αtdr (12) d<dG2>= 8π3ρ2nfr3 −・一〈dG・〉一、6論{☆一て命)・} (13) を得る。したがって相対ゆらぎは <dG2>_α (1/r、2)一{1/(r・+1の2} G2 4naf 〔ln{(rl十W)/r1}〕2 (14) となる。これから,α/nは α <V、22> 〔ln{(rl+W)/rl}〕2 一=16π n となる。 <e2> (1/r、2)一{1/(r、+W)2} (15) サンプルの最適寸法 サンプルー周のコンダクタンスGは(11)で与えら れるから,θ=πの時の検出電極P、−P2からサンプルを見た抵抗値R12は
R12一士一2、1。{ tap(rl+w『)/r、} (・6) となる。したがって,この抵抗の熱雑音は, 〈・…〉一、1。{漂誓)/r、} (・7) となる。そこで,検出電極Pl−P2間でのゆらぎは (14)より <。122>一α(1/r・2)一{1/(rl+W)2}〈e・〉 4Xnf 〔1n{(rl十W)/rl}〕2 (18) となる。 コアの半径を,サンプルに内接させるように大きく できる時には,一周当たりの最大起電力em。xは,コ アの飽和磁束密度をBm。xとすると emax ・caπri2 Bmax (19)一105一
昭和55年12月 山梨大学工学部研究報告 第31号 となる。したがって,サンプルのゆら ぎと熱雑音の比は <V122>_αZω2 Bm。。2 <Vth2> 8kTρnf ri2W(2r1十W) (rl十vγ)21n{(r、+W)/rl} (20) となる。これは,rlの増加とともに 単調増加し,Wの増加とともに単調 減少する。また,厚さ彦に比例する。 したがって,サンプルの内径が大き く,幅が狭く,厚い方が良いことが分 かる。 一方,コアの半径r。。reが一定のと きには em・x=ωπr・・re2 Bm・x (21) となる。したがって <V122>_αZω2 Bmax2 <Vtん2> 8kTpnf rcore4 IV(2ri十W) 20W Sample 15kHz ミOSC 60db
HPF
DET
f,=1.2kHz Core 図一2 交流誘導励起による1ノゲ雑音測定回路 Fig.2 Measuring setup 90−−130db」
’ 1 1 / i / 1 ンノ ド・−1Hz.ノ
Spectrum Analyser ⑦ 9carrier ②)noise in the driving system ③1∠fflu血ration \叉 r・2(r・+W)21n{(r、+W)/rl} (22) となる。これは,(20)と異なりrlの 増加とともに単調減少する。したがっ て,サンプルの半径はコアの半径に接 するようにできる限り小さくした方が よい。 (a) 90∼130db 測 定 法 (a) f、 リングサソプル中の電 流スペクトル Spectrum of the current in a ring sample 図一3 Fig.3 k−1Hz ① 図一2に測定系を示す。搬送波の漏れがじゅうぶん小 さくv12程度であれば,そのまま増幅して周波数分析 すれば<v122>を求めることができるが,比較的大 きいときには搬送波を除くために,包絡線検波する。 リングサンプルの一周の起電力と,抵抗ゆらぎによ るサンプル内の電流スペクトルは,図一3(a)のよう であり,搬送波と,ゆらぎスペクトルの1Hzでの値 とのレベル差は・90∼130dbである。 Pl−P2間に現わ れる電圧ゆらぎは,図一3(b)のようになる。搬送波 の漏れが無ければゆらぎをそのまま増幅して周波数分 析できるが,搬送波の漏れのレベルがゆらぎレベルよ り50db以上大きいときには,そのまま周波数分析す るとゆらぎの測定精度が悪くなる。漏れキャリアを小 さくする一つの方法として,同一の形状の2つのサン プルを搬送波の漏れに関して逆直列にするのが効果的 である。こうすることによって,ゆらぎ分は3db増 加し,搬送波の漏れは20∼40db小さくすることがで 五 (b) 電極間の電圧スペクト ノレ (b) Spectrum of voltage across the electrodes サンプルノイズのスペクトル Carrier supPression with a ring sample きる。すなわち逆直列サンプルの両方のリングで発生 するゆらぎは無相関であるから逆直列によって得られ る<v122>は2倍となり,(15)の代わりに 9=8π<竺22> 〔ln{(r、+W)/r、}〕・ n <e2> (1/r、2)一{1/(r!+1の2} (23) を用いる必要がある。 測定は次のような手順で行う。 1) コアの.一次巻線に15kHzの正弦波交流電圧を 加え,サンプルに通電する。このとき,別の1回巻コ イルにて起電力eを測定しておく。 2)サンプル端子間の電圧を約60db増幅し, HPF を通して包絡線検波をする。 3)検波出力の交流分Vnlをスペクトルアナライ ザで測定する。 4) 検波出力の直流分Vdcを読みとる。 5) サンプルを金属皮膜抵抗で構成したリングに置 き換えて,交流分Vnsを測定する。このとき,4)の 直流分がサンプルのときと同じVdcになるようにす る。 一106−一電流端子を用いない電流雑音測定法