論 文
対話型スタイリングCADシステムの構成に関する考察
古川進(平成元年8月31日受理)
A Methodology on an Interactive Styling CAD System
SusumuFURUKAWA
Abstract It is necessary to construct useful CAD systems which can desing high quality objects in short periods of time. A methodology on an interactive styling CAD system for generating and manipulating 3−D objects such as rings, brooches and car bodies with complicated freeform .surfaces is considerd. The following three types of problems are mainly discussed. (1)The problem of constructing an interactive styling CAD system, (2)The problems of constructing shape models with freeform surfaces, (3)Amethod of man−machine interaction. An efficient algorighm for generating freeform curves passing through given points is presented too・1 緒言
機械系の部品あるいは機構の設計、生産を行うため のCAD/CAMシステムはすでに実験段階を終えて実 用期に入ろうとしている。実際各種のCAD/CAMシ ステムが市販されるようになってきた1)。それらは、単 に2次元的な製図作業用に使用されるものから、複雑 な設計生産のための本格的なCAD/CAMを目指した ものまで、種々様々である。 ところで、車のボディ、指輪、ブローチなどを始め として、いわゆる意匠的に特徴のある製品の設計を行 おうとすると、現在においても、技術的に未解決な問 題が多く、まだまだ実用的な使用に耐え得るまでには なっていないのが実情である。 倉賀野等によって開発されたFRESDAM2)は、意匠 設計を強く意識したものであるが、一っの製品を設計 するためには、デザイナとCADシステムの担当者が めん密な相談を行いながら、形を決めていかねばなら ないという問題の他、3次元形状処理において多くの *機械システム工学科, Department of Mechainical System Engineering 技術的課題を抱いているため現在では非常に多くの 作業量を要求されているようである。このような現状 を打破するためには、複雑な形状の曲面を含む立体を 極めて安価に創成することができ、また対話性の良い 形状設計用CADシステムを構築することが必要不可 欠なことではないかと思われる。 本論文においては、上述のような安価に複雑な形状 の設計が可能となるシステムの構想について述べる。 さらに、形状モデラの構築に関連して、曲線、曲面論 に対する成果も得られたので合わせて報告する。2 システムの構成法
本節においては、現在のデザイン用CADシステム の問題点および一試案としてのシステムの構成法にっ いて考察する。 意匠用CADシステムの主要な部分は 1.形状モデラ、 2.マン・マシン・インタラクション、 3.その他製作情報の生成など、 の三っに大別されるものと思われる。1の形状モデラの部分では、人がイメージとして持っ ている立体形状をいかに素早く、正確に計算機内部の モデルとして実現するか、ということが問題である。 宝飾工芸品などの意匠設計においては、多面体形状 と複雑な曲面が巧みに混在し、製品の美しさを引き出 している。ところが、現在の形状モデラの多くは多面 体形状を対象としたものであり、自由形状曲面をも合 わせて取り扱うことのできるシステムはほとんど存在 しない、といっても過言ではないであろう。また、自 由形状曲面の取り扱い可能なシステムにおいても3次 元自由形状曲面のために極めて多くの作業量が要求さ れ、それ故、多量生産を行う製品の設計には利用可能 であるが、手軽に意匠用CADとして使いこなすこと ができる段階には至っていない。安価な形状定義手法 の開発が望まれる所似である。 2のマン・マシン・インタラグションは、人と計算 機がディスプレイ、キイボード、マウスなどを介して、 円滑なコミュニケーションを行うための枠組みを決め ることが必要である。 形状モデラそのものの持つ機能として、対話特性を 考慮したものも考えられているが、特に重要な対話特 性としては、 (i)形状モデルそのものを生成する際の対話性、 (ii)対話履歴の保持、 の二っに大別されるのではないかと思われる。 (i)のタイプの対話性については、既にマルチウイン ドウの概念を始めとして、多くの考え方が提案され、 種々検討されているところである。 対話履歴の保持方式としては、階層的な作業履歴と して記憶する方式3)や、いわゆる非多様体モデラの内 部構造として保持する方式4),5)などが試みられている。 しかしこれらはまだ試みの域を脱して居らず、実用的 な使用の段階に至っていない。 対話履歴を保持する手法として、対話的な形状設計 作業のプロセスをコマンド列として自動的にファイル に取り込む方式も考慮に値すると思われる。コマンド 列を利用することには、 1.命令の履歴が明確に規定される、 2.同種の命令を規則的に繰り返し行う場合に便利で ある、 3.形状の生成、処理に計算の結果を利用したいとき にも柔軟に対処できる、 4.立体のデータ構造を記憶する場合に比較して、少 ない容量で、2次記憶に立体の生成のプロセスを 図1:対話的形状設計システム構成の概念図 記憶できる、 5.部分的な修正が可能である、 6.対話的な作業の場合のように、人がディスプレイ の前に常に座っている必要がない、 などの利点があるからである。 以上の考察のまとめとして、本論文においては、図1 に示されるようなシステムの構成を提案する。図1に おいて記号→は矢印の始点における指示が終点に達す ることを意味し、また⇒は始点より終点へ目動的に情 報が与えられることを意味する。 たとえば、人が実行可能なコマンドテキストを作成 すると、目動的に形状モデラが起動され、人にその実 行結果を提示するのである。また、人が対話的に形状 モデラに対しているときには、その履歴が自動的にテ キストに組み込まれる。
3 形状モデリング
立体の形状に関して実物と同等の情報を抽出できる ように構築されている計算機内部のモデルを形状モデ ル、形状モデルに種々のアクセスを行うことを形状モ デリング、形状モデルを取り扱うことのできるシステ ムを形状モデラという。3.1形状モデラと曲面
形状モデラに関しては 1973年に発表された
1.C.Braid等のBUILD6)および沖野等によるTIPS−17) を始めとして多くの研究がなされてきた。 それらの多くは特に多面体モデルを取り扱うことの できるものであり、その意味で、これらは多面体モデ ラと呼ばれる。現在の形状モデラにおいて技術的に解 決すべき問題は、前節においても考察されたように、 多面体と曲面の混在できる使い勝手の良い形状モデラ図2:立体例 (a)制御多面体 (a) (b) (c) (b)制御多面体の曲面化 図4:曲面の生成例 図3:種々の曲面化例 を開発することと同時に、安価に曲面を取り扱うこと のできる理論的諸問題を解決して行くことである。 従来の曲面論では、たとえば、車のボディなどの形 をコンピュ 一一タを使って設計するような場合には、曲 面パッチといわれる小さな曲面分を次々と滑らかに接 続して行くことによって所要の形状を得る、という手 法がとられている。この手法では、曲面が通過すべき 点を明確に規定して、滑らかな曲面を生成するために、 1.接続条件を満足するために大規模な連立一次方程 式を解かねばならない、 2.曲面の隅の部分においては4角形以外のたとえば、 3角形、5角形パッチとの接続問題も解決しなけ ればならない、 などの欠点を有している。それ故設計作業に要する時 間が極めて多くなるのである。 単に形を決めるだけの作業で、厳密に通過点を指示 する必要がない場合には、B6zier曲面、 B−spline曲面 を始め、種々の方式が提案されている8)。しかし、たと えばB6zier曲面を生成、制御しようとすると、 1.制御点の影響が顕著には現れず、制御多面体より 生成される曲面形状の類推がやりにくい、 2.隅の部分などでは、3角形、5角形パッチとの接 続を考慮せざるを得なくなる、 などの困難がある。 さらに、多面体モデルと曲面モデルはその処理方式 がまったく異なるため、多面体データと曲面データを 同一のデータ構造内で取り扱うことが難しいというこ とも無視できない問題の一っである。
3.2 Subdivision法による曲面生成
上述のような技術的な課題をクリアする一っの方法 としては、多面体の各部を少しつつ変形して行き、最終 的に滑らかな曲面形状に達するという、いわゆるSub− division法が良いのではないかと思われる。 このような考えに基づいて、本システムにおいては、 形状モデラに多面体形状より滑らかな曲面を自動的に 生成する機能を用意する。この機能を実現するプログ ラムを以下においては曲面化トランスレータと呼ぶ。 図2に示される立体の場合を考える。この立方体を 曲面を生成するための制御多面体と考えると、図3一(a)∼(c)に示されるように、いろいろなバリエーショ ンが有り得る。図3−(a)は、立方体の下の面は全く変 化させず、また上の面はその構成稜線のみを曲線化す る、という指示を与えて作成したものである。 本トランスレータによって得られた実用レベルの曲 面の例を図4に示す(図2∼4においては不可視面同士 に共有される稜線のみを消去した簡略隠線処理が施さ れている)。 曲面化トランスレータを利用する利点としては、 1.制御多面体は、通常の多面体モデルと全く同一の データ構造で取り扱うことができる、 2.制御多面体を局所的に順次変形して行く方法を採 用しているので、変形の途中で頂点、面、稜線の 細かい修正を行うことにより曲面の微妙な変形も 可能である、 3.複雑で滑らかな曲面の生成であっても極めて短時 間、図4の例の場合では約15∼20分程度、で作業 を終了することができる、 などが上げられる。 意匠用CADシステムには必要の機能の一っである と確信される理由である。 本トランスレータと同様なSubdiVision法による曲 面生成の手法も種々提案されている9),10)が、いずれも 曲面としての滑らかさという観点から、実用的な使用 に耐え得るには至っていない。
4 与えられた点列を通る曲線の生成
寸法的に厳しい制約のある工業製品においては、通 過点を与えて、制御点を逆算する機能が必要である。 ここでは曲線の場合を例にとって、連立一次方程式を 用いずに制御点を決定する方法について検討する。 o:制御点,×:通過点 図5:制御点と通過点の関係 曲線は一般に式n
R(t)=Σ」V、(t)P, i=O (1) で表されるものとしよう。ここで」Vi(t)は3次スプラ イン関数とする。また、Piは制御点である。制御点と 曲線との関係を図5に示す。 関数1V、(t)は3次スプライン関数なので、生成され た曲線はたとえば通過点Ri(i =1,2,…,n−1)で、曲 線分が2次微分連続で接続されている筈である。とこ ろで、点Rtは引き続く3個の制御点Pi_1,Piおよび Pi+1によって決定されるものとすると、点R。の位置 は式 Ri=αiPi_i十bi Pi十Ci Pt+1 (i=1,2,…,n−1) (2) で表される。ここでαi, biおよびc,は各制御点の関係を 規定する係数である。 曲線の端点においては、Ro=Po,Rn=Pnである とすると式(2)はRiより制御点Piを決定するための 連立一次方程式であると考えられる。 通過点R2」(」=1,2,…,n/2)に対する通過条件をは ずすと、式(2)は α2」_2P2」_3十b2」_2P2」_2十c2」_2P2」_1=任意 α2」_1P2」_2十b23・_1P2」・_1十c2」_1P2」=R2」_1 α2jP23_1十b2フ・P2」十c2」p2」+1=任意 (3) のように書き換えられる。 この連立一次方程式は、未知数n個、式の数n/2個 に縮退していると考えられるので、n/2個の未知数(こ 一礫一一一一rθト借 O:制御点,×:通過点 図6:点列を通る曲線の生成例/\ 〉一一〇e_e..“ve._e_ee O:制御点,×:通過点 図7:中間制御点の移動による曲線の修正 こではP2」とする)は任意の値をとることができる。こ のように考えて式(3)を変形すると、式
恥一
潤iR2」_1一α2」_1P2」_2−c2ゴー1P2」)(4) (元一1,2,…,;) が得られる。式(4)は制御点P2」_1が連立一次方程式 を解かなくても求めることができることを意味してい る。このときの点P2」を中間制御点と呼ぶ。中間制御 点は曲線形状の決定後にもその位置を修正することが できるという特徴を持っている。 上述の手法によって生成された曲線の例および中間 制御点の位置の修正の例をそれぞれ図6、7に示す。図 8は同じ通過点列で連立一次方程式を解く方法によっ て求めた曲線の生成例である。 図8の曲線には設計者が望まない”うねり”が発生し ているのに比較して、図6の例ではこの傾向がやや減 少し、さらに図7の曲線にはうねりが発生していない ことがわかる。 なお、本手法は曲面形状に対しても全く同様に適用 できるものであると考えられる。先に述べられた曲面 化トランスレータと共に形状モデラに組み込むことに より、極めて柔軟に意匠設計に対応可能となる。5 結言
対話型形状設計システムの構想について述べた。従 来のシステム構築と比較して、特徴的な事柄は、 1.形状モデラにおいては、多面体、曲面の区別なく \x._一_/・)e−一一一一一〉ぐ 図8:従来の手法による曲線の生成例 統一的に取り扱うことができる、 2.すべての曲面は多面体よりの局所的な変形作業で 実現される、 3.通過点を与えて、制御点を逆算するとき、連立一 次方程式を解く必要がない。従って、通過点の変 化は、その付近への影響のみで止まる、 4.対話的な設計作業が自動的にテキストとして記憶 できるような構造になっている、 などである。 本スタイリングCADシステムの構想は、より良いシ ステムへと展開するための第一歩であると考えている。 本論文では、対話的な設計作業の過程をコマンド列 として自動的にテキストに取り込むための技術的課題 を始めとして、システムのチュートリアル機能、設計 知識による作業支援およびチェックなどのような知的 レベルでの支援法など多くの問題に触れることが出来 なかった。今後の検討課題である。参考文献
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