コンピュータに よる心理診断の現状 と展望
Current Developments and Future Directions
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は じ め に
近年、欧米では コンピュータを利用 した心理診 断が隆盛 をきわめ、1987年にはJournalofConsu-1tingandClinicalPsychology誌お よびApplited psychology:AnInternationalReview誌が特集 を組み、同 じ年 にButcherの編集に よる 『コンピ ュータ心理診断 』が、 また1990年にはBaskinの 編集 に よる 『精神医学 と心理学におけ るコンピュ ータの利用 』と題 した著作が刊行 されてい る。 し か し心理検査に コソピュークが導入 されたのは決 して最近の ことではな く、ほや くも1940年代には ミネ ソタ多面 人格 目録(MMPI)の集計作業に使用 されているし、MMPIの 自動解釈は1960年代には は じめ られている。 コンピュータを利用 した心理 診断 システムは、初期の ころは もっぱ らMMPIに 集中 していたが、やがて他の性格検査、知能検査 に関 して も開発 され るようになった。 アメ リカで は170以上の システムが商業ベースで稼働 してお り、臨床、教育、産業などの各分野で、年間30万 件にのぼ る心理検査が コンピュータで処理 されて い る(Tallent,1987)o現在ではMMPI(Butcher,
1987b;Fowler,1985)以外に も、 ロールシャッ- ・ テス ト(Exner,1987)0 16PF人格検査(Kar80n& 0'Dell,1987)。 ウエクスラー式知能検査ほか多 く の心理検査 に コンピュータが導入 されている。 コンピュータを利用 した心理検査は、 日本の場 合、 ア メ リカ ・ヨー ロッパ と くらべて盛 んとはい えないが、商業ベースで矢 田部ギル フ ォー ド性格 検査、内田 ・ク レペ リン精神作業検査等の コンピ ュータ判定が利用可能であ り、パ ー ソナル ・コソ
湯
田 彰
夫
Akio Yuda
ピューク用のシステムでは ロール シャッ- ・テス ト (村上 ら,1988)、MMPI(村上 ら,1989)、 p-Fスタデ ィ (湯 田,1989)、WISC-R(湯 田 1990)等の処理 プログラムが発表 されている。臨 床心理学領域に限 らなければ、商業ベースで稼働 して る適性検査はかな りの数にのぼ ると思われ る。 この ように 日本における コンピュータ心理診断の 利 用状況は、現状 ではかな り限定 されているが、 この先徐 々に普及 して くることは確実 と思われ る。 本稿では主 にアメ リカにおける利 用状況に基づ き なが ら、 コンピュータによる心理診断の現状 と問 題点、将来の展望について概観 したい。2.
心 理 検 査 に お け る コ ン ピ ュー タの 利用形態 心理検査におけ るコンピュータの利用方法 とし ては、い くつかの異なった形態が考え られ る。本 節 では心理検査 における コンピュータの利用形態 を、データの入力お よび処理形式 と結果の出力形 式 か ら分類 し、それぞれの特徴について整理 して お こ う。 (1) デー タの入力形式による分類 データの入力形式は以下にあげ る三種類に分類 で きる(Moreland,1987)。 いずれが最適な方法か は、処理すべ きデータ件数、 コンピュータ処理に 要す る費用、結果を受け取 るまでの時間 といった 要 因に よってかあ って くる。 (彰郵送処理 これは利用者が回答用紙を心理検査サ ービス会 -37-社に郵送 し、 コンピュータで処理 された後、結果 が返送 されて くるとい う方法 である。従 って、検 査 自体は通常の方法で実施 され る (ただ しデータ 入力に光学式読取 り装置を使用す る場合など、回 答用紙 に特殊な様式を要求 され る場合 もある)0 コンピュータ ・ネ ットワーク、パー ソナル ・コン ピュータが普及す る以前は、 もっぱ らこの方法に よって心理検査 データは処理 されていた。現在で も、 この方法には コンピュータなどの設備投資が 不要であるとい う利点があ り、早急に結果をえる 必要がない場合、大量のデータ件数を処理す る必 要がある場合な どに適 した方法 といえる。 自動車 教習所や企業単位で実施 され る適性検査、大規模 なアチープ メソ ト・テス トな どは この方法で処理 されている。臨床心理学領域の検査 としては、 日 本で も矢田部ギル フォー ド性格検査、内田 ・ク レ ペ リン精神作業検査等のが この方法で処理可能で ある。 ②オンライ ン処理 この方法は遠隔地でデータを処理す るとい う点 では郵送処理 と同様だが、データの t zミュニケ-シ ョソに電話回線を使用す るとい う点で異なって いる。つ ま り利用者は回答用紙を郵送す るかわ り に手元の コンピュータ通信用 ター ミナルか らロー データを入力 し、それを電話回線を介 して心理検 査サービス会社に伝送す る。処理 された結果は同 様に電話回線を介 して フ ィー ドバ ックされ る。郵 送処理 と比較 した場合の利点は、検査結果をえ る までの時間が飛躍的に短縮 され ることである. 普 た処理 された結果はパ ー ソナル ・コンピュータな どで再利用可能なので、データベース化 した り、 統計処理のための入力データとして使用す るとい った付加価値 もある。 ただ し郵送処理 と比較 した 場合、 コンピュータ通信用 ター ミナルや光学式読 取 り装置な どの設備投資が必要になる。 ア メ リカ でこの方法が商業的に利用可能になったのはここ 10年の ことで、 日本で もコソピューク ・ネ ットワ ークの普及がすすめば今後導入 され る可能性があ るだろ う。 ③パーソナル ・コンピュータに よる処理 この方法はパー ソナル ・コンピュータとパーソ ナル ・コンピュータ用 に開発 された ソフ トウエア を使用 して、心理検査デ ータを処理す るものであ る。当然、パ ー ソナル ・コンピュータとソフ トウ エアを購入す る必要があるが、検査者の望む時に 結果を処理す ることがで きる、 コンピュータには 心理検査の結果処理以外に もさまざまな使用法が ある、 といった柔軟性が最大の利点になる。 この 場合、従来通 りの方法で心理検査を実施 したのち に検査者がデータを入力 して もよい し、 ソフ トウ エアに よっては心理検査の質問項 目を コンピュー タのモ ニター画面に皇示 し、被検査者にキーボー ドか ら直接回答を入力 させ ることもできる。 パー ソナル ・コンピュータを利用 して心理検査を実施 す る場合の利点 と問題点については、のちにあ ら ためて触れ ることにす る。 (2) 結果の出力形式による分類 心理検査データを処理 して コンピュータが出力 す る内容は、検査に よって も異 なるし、同 じ検査 を処理す る ソフ トウエア同士 を比較 して も、個 々 のシステムによってその内容は千差万別である。 何 人かの研究者 に よって出力形式に よる分類が試 み られているが(Butcher,Keller&Bacon,1985; Moreland1987)、ここでは集計 された得点だけを 出力す るもの と、集計 された得点に基づいてなん らかの解釈文を出力す るもの とにわけて整理 して お こ う。 ①集計結果のみを出力す るもの このタイプの ソフ トウエアは、文字通 り集計結 果のみを出力す る。心理検査を実施 してえ られた ローデータを入力す ると、それぞれの検査結果の 解釈に必要な種 々の得点を自動的に算出す るだけ であるが、多 くの項 目について計算 しなければな らない検査の場合には非常に有効である。た とえ ばMMPIの場合、開発当初のオ リジナルの尺度に ついてだけ計算す るのであれば コンピュータを使 用す るまで もないが、 これ までの研究 を通 して蓄 積 されて きた数百にのぼる追加尺度について も得 点を算出 したい時には コンピュータの導入が不可 欠になる。 また集計作業に コンピュータを導入す ることで、 通常は算出 しない ような指標、た とえば検査得点 の信頼区間の計算や、__鹿計的鹿足 など も容易にお こな うことがで きるようになる。 投影法 に よる性格検査の場合、現在の ところ被
検査者の反応 内容を検査者が分析 しコー ド化 した デ ータを入力す る必要があるが、 日常言語に よる 反応内容 自体 を コンピュータで内容分析 しよ うと いう試みもなされている(Butcher,Keller
&
Bacon,
1985)
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②解釈文 を出力す るもの コンピュータが作成す る解釈文は、それぞれの システムが依拠す る解釈ルールに基づいて分類す ることがで きる。 ここでは解釈文を記述文のみを 出力す るタイプ、実際の臨床家をモデルに した タ イプ、統計的基準に基づ き臨床知識 も援用 した タ イ プの三つにわけて、それぞれの特徴、問題点 を 簡単に まとめておこ う(Butcher,Keller&Bacon,
1985)
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第一の記述文のみを出力す る解釈 システムは、 個 々の指標に基づいて解釈をおこな うだけで、指 標間、尺度間の関連性は問題に しない。 た とえば 不安尺度の得点が高い場合、 「本 ケースは強い不 安 を もってい る 」とい った解釈文が出力 され るこ とにな り、抑 うつ尺度など関連す る指標が どの よ うな傾 向を示 しているかは まった く参照 しない。 この種の解釈文 も、 きわめて多 くの尺度について 得点が算出 され る場合な ど、逸脱 した尺度をすば や く見 出せ るとい う意味で有効である。 また個 々 の解釈文が どの指標 に対応 した ものであるか容易 に理解す ることができる、 とい った利点 もある。 しか し尺度間のあ るいは指標間の関連性を問題に しないため、出力文全体をみ ると互いに矛盾 した 記述が含 まれ る可能性があるし、全体の意味を把 捉 しに くい とい った欠点がある。 二番 目の実際の臨床家をモデルに したタイ プと は、熟練 した臨床家が依拠す る解釈 ス トラテジー をその まま模倣 しようとす るものである。当然の ことなが ら、 この タイプのシステムは、記述文の みを出力す るシステムよ りも洗練 された解釈文を 作成す る。熟練 した臨床家が公開 された研究例、 自らの臨床経験を通 してえた知識、診断仮説等に 基づいて検査 データを解釈す る時に、 どの ような 解釈ル ールに従 っているかを明示的に記述す るこ とができるな らば、 コンピュータにそのプ ロセス を模倣 させ ることは可能である。 しか し実際問題 として、解釈ル ールをすべて明示的に表現す るこ とは困難 であ るし、臨床家の解釈は正確であると 仮定すること自体にも難点がある(Butcher,Keller&
Bacon,1985)0
三番 目の統計的基準に基づ き臨床知識 も援用 し た タイプは、二番 目のシステムの問題点を回避す るために考 え られた ものである。た とえばMMPI の よ うな十分なデータの蓄積がな された性格検査 では、統計的基準に基づいて性格 プロフ ィールを 解釈す ることができる。MMPIの性格 プロフ ィー ルは、 どの尺度が標準値か ら逸脱 してい るか、逸 脱パ ターンは特定の コー ドにあてはまるか、その コー ドは どの ような性格特性を代表 しているか と い った点か ら解釈 され る。 しか しMMPIの場合で も、すべての性格 プロフ ィールが コー ド化可能な わけではないので、統計的基準に基づいてあ らゆ るケースを解釈す ることはで きない。 そのため コ ー ド化不能 なプロフィールに対 しては、臨床知識 に基づいて判断を くだす必要性がでて くる。従 っ て三番 目の タイ プは統計的基準の厳密 さと臨床家 の柔軟性 とい う、両者の長所を と りくんだ システ ムとい うことができる。厳密な統計的基準に基づ いた解釈ル ールは、個 々の臨床家が依拠す る解釈 ル ールの慈意性を排す るとい う意味で、かつては 強 く望 まれた ものであるが、今 日では多 くの心理 学者が コンピュータの解釈 ス トラテジーは柔軟性 を欠いていると非難す る原因になっている。確か に、 コンピュータは同 じコー ドに対 してはつねに 同 じ解釈文を出力す るが、臨床家は検査 プロフィ ール以外 の背景情報に基づいて解釈を微妙にかえ ることができる。 また コンピュータは得点が1点 違 っただけで も、 まった く異なった解釈を くだす こともあ る(Wetzler,1990)。この点 については最 後の節で、 も う一度触れ ることにす る。
3.
心 理 検 査 に コ ン ピ ュー タ を導 入 す る こ と の効用 コンピュータに よる心理診断の最大の効用は、 時間の短縮、労力の軽減にあるが、利点は この点 だけにとどまらないoButcher(1987a)、Krug(1987)、 Schwartz(1990)らの指摘に基づいて コンピュータ 心理診断の効用について整理す ると、次の ような 利点が考 え られ る。 -39-(1) 効 率 心理検査の施行、ス コア リング、解釈の段階に コンピュータを導入す ることは、時間の短縮、労 力 ・コス トの軽減を もた らす。 この ことは単なる 負担の軽減を意味す るだけでな く、心理検査の結 果解釈 その ものに質的な違いを もた らす可能性を もっている。前述 した ようにMMPIではオ リジナ ル尺度の他に、現在では六百以上の追加尺度が作 成 されている。 これ らの尺度のい くつかに関心が あ った として も、回答用紙か ら手作業で得点を算 出す るには限度がある。得点の集計、標準点-の 換算に コンピュータを使用すれば、従来は参照で きなか った多 くの尺度について も、短時間に効率 よ く情報を得 ることがで きるようになる。 また一般にはス コア リング、解釈時の効率が問 題に されてい るが、 コンピュータを用いて心理検 査 を施行す ることで、検査時間を15%か ら50%短 縮 できるとい う報告 もある(Krug,1987)0 (2) 測定方法の均質化 標準化 された心理検査の多 くは、検査の実施手 順について も厳密な規定を設けている。 しか し実 際の検査時には、種 々の制約のために実施手順が 必ず しも厳密に守 られないことがある。 また、劣 悪な防音 ・照明 ・空調設備の もとで検査が実施 さ れ る場合 もあるし、十分な作業空間が確保できな い場合 もある。 これ ら検査結果になんらかの/1イ アスを もた らす と考え られ る要因の多 くは、検査 実施時 に コンピュータを導入す ることでかな りの 部分を均質化す ることができる。 また、結果 の集計時には転記 ミス、計算 ミスな ど、かな りの誤差が入 りこむ と考 えられ るが、検 査実施時に コンピュータを導入 し計算を自動化す ることで、 これ らの誤差 も除去す ることができる (Krug,1987)
0
¢) 報告書の等質化 ス コア リ-/グの手順や解釈ル ールが適切にプ ロ グラムされていれば、常に等質の結果が出力 され、 個 々の検査者 に固有の癖やバイアスが介在す る余 地 もな くなる。 また大量の検査件数を処理 しなけ ればな らない場合で も、人間が処理す る場合 とは 異な り、 コンピュータは疲労 した り、不注意に よ る ミスを犯す こともない(Butcher,1987a)04.
心理 検 査 に コ ン ピ ュー タ を導 入 す る こ と の 問題 点 コンピュータの導入に よって心理検査 の実施、 スコア リング、解釈が容易になることは、利点で あ る と同時 に さまざまな幣害 を もた らす。心理 検査 への コンピュータの導 入に関 して基本的に 反対 の立場 を とってい る老 のみ な らず 、 システ ムの開発者、利用者か らもさまざまな問題点が指 摘 され、批判がな されてい る。 ここではそれ らの 問題点を、非 人間化、利用者の資格、解釈文の妥 当性、検査施行時 に コンピュータを使用す ること の幣害の四点にわけ、それぞれについて整理 して お く。 (1) 非人間化 心理検査に コンピュータが導入 されて以来、 コ ンピュータは心理診断のプ ロセスを非 人問化 し、 治療者 とクライエソ トとの距離を増大 させ、結果 的に好 まし くない影響を及ぼす、 とい う指摘がた びたびなされてきた。 しか しい くつかの研究成果 をみて もこの ような指摘が必ず しも裏づけ られて いるわけではな く、検査者側の敬念にすぎない場合 も多い(Fowler,1985;Krug,1987)0た とえば、skinnerとAllen(1983)お よびHarrell
とLombardo(1984)の研究では、 検査者や質問紙 の冊子に向 うよりも、被検査者は コンピュータと 対面 して回答す ることを好む ことが明 らかに され ている. またCarrとGhosh(1983)に よれば、 コン
ピュータを使用 して 自己の行動評定をお こなった 恐怖症患者 も、なん ら不安を示す ことはなか った (Carp&Ghosh(1983)に関 しては、Fowler,1985 か らの再引用)0 「コンピュータに慣れ親 しんでいない治療者は、 コンピュータを使 って心理検査を受け ることに患 者は決 して同意 しないだろ うと考えがちだが、研 究結果が示す ところは患者は概 していやが らない とい うことである」(Fowler,1985,p.754)O徒 つ て、心理診断の プロセスに コンピュータをは じめ とす る新 しい技術を導入 して も、その こと自体が 心理診断のプ ロセスを非 人間化す るわけではない
とい うことがで きる(Krug,1987)0 (2)利用者の資格 コンピュータの導入に よる幣害のひ とつは、心 理検査が誤用 され る機会が増大す ることである。 心理検査の結果は本来、確率的、試案的な もので あ るが、心理検査 に熟知 していない者は心理診断 の補助手段ない しは材料 としてではな く、それだ けを判断の根拠 に して しま う恐れがあ り、場合に よっては無批判的に受け入れて しま うとい う懸念 がある(Matarazzo,1986;Tallent,1987)。そのた め アメ リカでは、 コソピュ-タ心理検査の安易 な 使用を制限す るための、 さまざまな規制がな され ている(American Psychological Association
,
1986;Butcher,1987a;Fowler,1985;Wetzler,
1990)。 誰が心理検査を実施 し、利用するのか とい う点は、心理検査 に コンピュータが導入 され る以 前か らの問題であ るが、郵送サービスだけでな く パ ー ソナル ・コン ピュータ用の 自動心理診断 プロ グラムが市販 され るようになった今 日、 日本で も なんらかの規制が心要にな って くると考 えられ る。 また関連す る点 として、最終的な報告書の診断 上の責任を誰が もつのか とい う問題がある。標準 化 された心理検査を使用す る場合、従来は検査 の 実施者ない しは解釈者が報告書の内容に責任を も てば よか った。 しか し郵送サービスやパーソナル ・ コンピュー タに よる心理検査 自動解 釈 プ ログラ ムに よって結果をえた場合、責任の所在が暖昧に な って くる。 コンピュータが出力す る報告書には 署名はな されていないので、その ままでは責任を とるべ き専門家が介在 しない ことになる。誰 も責 任 を とらないのな らば、資格のない者が検査結果 を誤 って不適切 に使用す ることも起 こ りうる。 コ ンピュータに よる出力は、一般的にい って、臨床 家に よる報告書 よ りも信頼できるとみな されがち なので、誤用を避 け るために も責任の所在を明確 にす る必要がある(Wetzler,1990)oアメ リカ心理 学会のガイ ドライ ンに よれば、 コソピュークが出 力 した報告書の正確 さおよび妥当性については、 それを受け取 った心理学者が最終的に診断上 の責 任をもたなければならないとされている(American PsychologicalAssociation,1986;Butcher,1987 a)0
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コンピュータによる自動解釈文の妥当性 コンピュータが出力す る自動解釈文の妥当性に ついては、あま りに も一般的す ぎて個 々の患者の 状態についてなんら有益 な情報を もた らさない、 あま りに も型にはま りす ぎていて柔軟性に欠け る 等、 さまざまな批判がな されてい る(Matarazzo,
1986;Lanyon,1984)。それに対 して 自動解釈文の 妥当性を検討す るための実証的研究が多数な され て きたが(Moreland,1985)、同時 に妥当性を検証 す るた めの方法論上 の困難 さ も指摘 されている (Fowler,1985)0
コンピュータが出力す る解釈文の質は、心理検 査 自体の妥当性、それぞれの コンピュータ ・プロ グラムが依拠す る解釈ル ールの質、解釈文 自体の 質な どい くつかの要因に依存す る。 コンピュータ が出力す る解釈文の質お よび正確 さを検討す る方 法 として、 まず第一に考え られ ることは、実際の 臨床家が作成 した検査報告書 とコンピュータの出 力 とを比較検討す ることである。 しか し実際の臨 床家の報告書が最良の比較基準になるとい う保証 はな く、 この ような比較法で コソピュークが出力 す る解釈文 の妥 当性 を検討す る こ とはで きない (Moreland,1985;Wetzler,1990).
また、多 くの心理検査サ ービス会社は、 自動解 釈文に対す る利用者の満足度、正確 さの評定値を、 自動解釈 プログラムの妥当性を保証す る指標 とし よ うとしている。 しか し、利用者が満足 しかつ正 確だ とみ な しているか らとい って、解釈文の妥当 性が確認 されたわけではない。 また満足度の高い 利用者は一般的で暖味 な解釈文を正確 な記述 とみ な しがちであるとい う報告 もあ り、 これ らの評定 値を妥当性を検討す るための指標 として受け入れ ることはで きない(Wetzler,1990)0 妥当性を検討す る三番 目の方法は、 コンピュー タが出力す る個 々の解釈文あ るいは解釈文全体を 外的基準、た とえば被検査者を よ く知 るセ ラピス トに よる症状のチニ ック ・リス ト、ない しは評定 尺度値 と照合 して評価す ることである。 しか し今 までな されて きた外的基準 との比較に基づいた研 究 も、適切 な方法論に基づいているとは言いがた く、妥当性を検討す るための さまざまな方法論上 の提 言が何 人か の研 究者 に よって な され ている (Moreland,1985)0
- 41-四番 目の方法は、 自動解釈 プログラムが依拠す るアル ゴ リズムや解釈ル ールを吟味す ることであ る。 しか し多 くの場合 これ らの情報は公開 されて いないので、実際にアル ゴ リズムや解釈ル ールを 検討す ることは難 しい (Wetzler,1990)oプログラ ム自体の妥当性を保証す るために も、 これ らの情 報が公開 され る必要があろ う。 以上みてきた よ うに、 コンピュータに よる自動 解釈文の妥当性を確認す るための決定的 な方法は 今の ところ存在 しない。 この ことは コソピューク に よる自動解釈文の妥当性のみ ならず、臨床家が 作成す る検査報告書の妥当性を確認す る方法 も欠 如 していることを意味 している。 コソピュークが 出力す る解釈文の妥当性が問題に され ることが多 いのに対 して、臨床家が作成す る報告書が体系的 に論 じられ ることはは とんでない(Wetzler,1990)O また心理学者は心理検査 自体の標準化 には厳格だ が、検査の妥当性を確認す るために検査報告書を 詳細に吟味す ることはめ った忙 しない (Fowler
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1985)。検査報告書の妥当性は、当然のことなが ら 心理検査 自体の妥当性 と無関係ではない。心理検 査 自体の妥当性が確立 されていないならば、それ に基づいた検査報告書に も妥当性など求め よ うが ない。心理検査が測定す る変数 と、関連す る行動 との関係がは っき りしないならば、妥当性のある 報告書を書 くことはそ もそ も期待 できないことに なる。 コンピュータが検査結果 を解釈す る場合に も、検査 の理論的背景、蓄積 されたデータ ・解釈 の枠組み など、特定の判断を くだす上 で さまざま な情報を必要 とす る。 コソピュークが出力す る解 釈文の妥当性を問題にす ることは、心理検査 自体 の妥当性、結果を解釈するために蓄積 されてきた 知識 自体 の妥当性を問 うことで もある (Fowler,
1985)o
㈱ 心理検査施行時 にコンピュータを利用する場 合の問題点 コンピュータを用 いて実施す る心理検査の多 く は、従来の筆記式の検査をそのままコソピューク 用に移植 した ものである。心理検査施行時に コン ピュータを利用す る場合、つ まり被検査者が質問 紙 と回答用紙に向 うのではな く、 コンピュータが 呈示す る刺激に対 してキーボー ドか ら直接回答を 入力す る場合、従来の実施法 との等価性が問題に な って くる。 コソピュークを導入す ることで従来 の実施法では考 えられなか った ような要因が入 り 込み、二つの実施法 で測定す る構成概念が まった く異なった ものにな って しま うとい う可能性が生 れ る(Hofer&Green,1985;Moreland,1987)o
コンピュータを使用す る場合 と従来の実施法 vTL基 づ く場合の差には さまざまな理 由が考 えられ るが、 以下の よ うに整理す ることができる。 まず第一に、 コソピュークに対す る、ない しは キーボー ドか らのデータ入力に対す る慣れの問題 がある。拡散的思考力の測定を例に とってみ よう。 制限時間内にある概念に共通す る事物を列挙す る ことで拡散的思考力を測定す るとして、 コンピュ ータのキーボー ドか ら回答を入力す る場合には タ イ ピソグ能力が介在す ることになる。 しか し従来 通 りに筆記で回答す る場合、あるいは 口頭で回答 す る場合にはタイ ピング能力の優劣は まった く関 係 しない. コンピュータを操作 した経験に乏 しい 人が、 コソピュークを用いて心理検査を実施 され る場合には、当然不利益を こ うむることになる。 アメリカでは特定の人種、性別、年齢などの社会経 済的階層 とコンピュータに対する慣れとの関係が問 題にされている。た とえば、高齢者は コソピューク を利用 した心理検査の実施を好 まないとい う指摘が ある(Car一,Wilson,Ghosb,Aneil
&
Woods,1982; volanS&Levy,19820 いずれ もHofer&Green,
1985か らの再引用)。 この よ うな場合 で も、検 査 前 に十分 な練 習時間を設 け る ことで、 コソピ ュークやキーボー ドに対す る懸念を低減 し、馴致 させ ることができるとい う指摘 もある。 Johnson とWhite(1980)は、高齢者を対象 として検査の実 施前に一時間の練習時間を設けた ところ、練習を しなかったグループに くらべ、得点に有意な上昇 がみ られたことを報告 してい る。心理検査実施時 に コンピュータを使用す る場合には、人に よって コソピュークの操作経験、 コソピュークに対す る 不安の程度に差があることを留意 し、少 しで も負 担を軽減できるよう刺激の呈示法や回答法に工夫 す る必要があろ う。 また コンピュータを操作す る ことを蹄跨す る場合には、従来通 りの方法に基づ いて検査を実施す るべ きであ る(Hofer
&
Green,
1985)o
第二 に、質問項 目の呈示方法の違いが もた らす 差が考 え られ る。 コンピュータで質問項 目を表示 す る場合、一度に一問ない しは少数の問題 しか呈 示 され ないので、全体で どの くらいの質問項 目が あ るのか知 ることができない。それに対 し従来通 りの質問項 目の冊子を用いる場合には、全体の質 問項 目数 をあ らか じめ知 ることができる。その結 果、次の二つの差が もた らされ る可能性があ る。 一つは質問項 目の呈示に コンピュータを使用 した 場合、無答の数が減少す ると考え られ る。全体の 質問数が見通せ る場合、検査をほや くおわ らせ よ うと回答 しない項 目が増 える。 しか しひ とつひ と つの質問が順次皇示 され る場合、質問に対す る注 意が喚起 されやす く慎重に回答す るため、無答の 数が減少す ると考 え られ るか らである。更に、質 問項 目の呈示 に コンピュータを使用す ると、全体 の質問項 目を見通す ことができず、 また以前の質 問項 目を確認す ることができないので、回答パ タ ーンの一貫性が低下す ると考え られ るO 質問項 目 の冊子 を手元において回答す る場合、似た ような 意味の質問項 目に対 して、一貫 した回答をす るこ とがで きる。た とえば、性格検査の r:不幸 であaJ とい う質問に こたえる時に、以前に 「寂 しい 」と い う質問に対 して こたえた回答を参照す ることが で きれば、回答パ ターンに一貫性を保つ ことがで きる。 しか し、質問項 目の呈示に コンピュータを 使用 した場合の ように、以前の回答を確認 できな いな らば 、一貫性 が低下す るこ とが予想 され る
(Hofer&Green,1985;Moreland,1987)
0
第三 に、 コンピュータに対 して回答す る場合 と、 質問紙 あるいは検査者 に対 して回答す る場合 とで は、社会的望 ましさに由来す るバイアスの発現の しかたに差が生ず ることが予想 され る。い くつか の研究は、検査者 に対 して回答す る場合 よ りもコ ンピュータに対 して回答す る場合の方が、被検査 者は社会的望 ましさを配慮す ることな く、 よ り正 直に反応す ると指摘 しているが(Evans
&
Miller,
1969; Koson,Kitchen,Kochen
&
Stodolsky,
1970)、それを否定する研究 もある(Skinner&Allen,
1983)o
以上の よ うに、 コソピュークを使用 して心理検 査を実施 した場合 と従来の筆記式で実施 した場合 とでは、結果に さまざまな違いが生ず る可能性が ある。従 って従来の実施法に基づいて標準化 され た基準を、 コンピュータを使用 した心理検査 にそ のまま適用す ることは危険が ともな う。従来か ら の基準に基づいて結果を解釈す る場合には、実施 方法の違いに よって どの ような差が もた らされ る のかについて十分注意をは ら う必要があろ う。5.
今後の展望 ここまで コンピュータ心理診断の現状 について みて きたが、 自動解釈文の妥当性の問題、 コンピ ュータに よる刺激呈示の問題な ど解決 しなければ な らない問題がい くつかある。 本節では、十分注 意 して適切な使用法を心掛ければ コンピュータは 心理検査において も有用な道具にな りえるとい う 観点か ら、現状 での望 ましい活用法 と今後の課題 について述べてお きたい。 (1) 情報の統合 心理検査に コソピュークを利用す ることに対す る批判 のひ とつ として、心理検査 の実施 ・解釈(psychologicaltesting,pSyehometrics)と心理診 断(psychologicalassessment)とは異な るプロセ スであ るとい う指摘がある。心理検査 の実施 ・解 釈 は統計学的な規則に従 って、単にデ ータを機械 的に処理す ることであ るのに対 し、心理診断を強 調す る立場では、心理検査は検査対象者 のパー ソ ナ リテ ィ、能力、独 自性を理解す るための一手段 であ り、その他の利用可能なデ ータ (行動観察、 面接記録、生育史、病歴 な ど) と共に、統合的な 解釈をおこな う上での材料 と考える(Tallent,1987)。 現在の ところ、心理検査のデータと共 に、 これ ら 関連す る情報を参照 して解釈文を作成す る コンピ ュータ ・システムは存在 しない。 また単独の心理 検査 ではな く、テス ト・バ ッテ リーか ら情報を抽 出 して判断を くだす よ うな コンピュータ ・システ ム も存在 しない。前述 した よ うに、 コソピューク が従 う解釈ル ールは、柔軟性に欠け る とした批判 もある。 従 って、現時点で コ1/ピューク心理診断を利用 す る最良の方法は、 コンピュータが出力す る解釈 文 をその まま報告書 として使用せず に、ー臨床家の 責任において解釈文を取捨選択 し、関連す る情報 -
43-と統合 した後に最後的な報告書を作成す ることで ある。 コンピュータが出力す る解釈文をその まま 報告書 とす ることは、利点 よ りも幣害のほ うが多 い (Wetzler,1990)oMatarazzo(1983)は、 コンピ ュータ心理診断を飛行機の 自動操縦 にた とえてい る。予定通 り飛行 しているな らは、パイ ロ ットは 自動操縦 まかせに していれば よい。 しか しい った ん変事が発生 した場合には、パイ ロットが飛行操 を操縦す ることになる. 同 じように コソピューク 心理診断の場合 も、必要に応 じて臨床家が手を加 えれば よい。 (2)新 Lい検査法の開発 従来、筆記法 で実施 されて きた心理検査をその ままコンピュータに移植 した場合、前述 した よう に様 々な問題点が生 じることになる。筆者の見解 では二つの実施法の等価性が保証 されていない う ちは、あるいは コンピュータ検査用の新 しい標準 化がなされない うちは、従来か らある心理検査を 実施す る場合に安易 に コンピュータを使用す るべ きではない。検査の実施に コンピュータを使用す るならば、 コンピュータの能力を十分に生か した新 しい検査法を開発すべきである。質問項 目を呈示 し てか ら反応がえ られ るまでの潜時や、被検査者が キーを押す強 さも、 コンピュータを用いれば測定 可能である。現在の ところ、反応時間や入力時の 圧力が何を意味 しているかは明 らかではないが、 でた らめ反応や被検査者の疲労度をチニ ックす る 指標 にな りうるとい うとい う指摘 もある(Space
,
1981。ただ しButcher,Keller& Bacon,1985よ り 引用)。また コンピュータを利用 した新 しい検査方 法を開発す ることで、従来の筆記式の心理検査で は測定できなか った、 さまざまな障害を もつ人び との能力や性格 な ども測定可能 にな る(Wilson,
1987)o
もっとも期待が もてるのは、質問項 目が枝分れ 式に構造化 されている検査-の応用 であ る(Allen&Skinner,1987;Butcher,Keller&Bacon,1985; Giannetti,1987;Stein,1987a,1987b)。一つの質問 項 目に対す る回答が次の質問項 目を規定す るよう な検査で も、 コソピュークを使用すれば容易に質 問の流れを制御す ることができる。 また適性検査 などでは、順次回答をえるごとに能力の推定値を 算出 し、確定的な判断が くだせた時点で以降の質 問を打 ち切 るといった こともで きる。 こ うい った 柔軟性は筆記式の適性検査 には期待できない。 コ ンピュータを利 用す ることで被検査者の負担を軽 減す ると共に、検査時間を大幅に短縮す ることが 可能である(Weiss,1985;Weiss
&
Vale,1987,
1987b)。以上の よ うに、 これ まで利用で きなか っ た新 しい検査方法を開発できるとい うことが、心理 検査に コンピュータを導入す ることの最大の利点 であろ う。引 用 文 献
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