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認知症看護の普及啓発にセブンクロス法を活用しての効果

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(1)

椙山女学園大学

認知症看護の普及啓発にセブンクロス法を活用して

の効果

著者

大嶋 光子

雑誌名

椙山女学園大学 看護学研究

3

ページ

43-49

発行年

2011

URL

http://id.nii.ac.jp/1454/00001869/

(2)

看護学研究 VbL3 43∼49(2011)

《報告》

認知症看護の普及啓発にセブンクロス法を活用しての効果

 大嶋 光子

椙山女学園大学看護学導

電 旨

旧  的】  高齢化と平均寿命の延びに伴って、認知症の患者数が年々増加することは明らかになっている。そ のため、看護師は新たな認知症看護の問題に直面していくことが予想される。今回、看護師専門教育 の一環として、認知症看護の研修を実施した。研修で行ったグループ演習の効果を検討することが目 的である。 【方  法】 看護師80名を対象とし、グループ演習のなかでセブンクロス法を用い、質的帰納法的に分析を行っ た。 【結  果】  グループ演習から得られたデータより、構成因子の抽出の結果、第1位に「笑顔」「人格」「いやし」 「愛1青」「人として」「制限しないで」「傾聴」「叱らないで」「自由」「思いやり」の10項目が得られた。 【結  論】  研修においてセブンクロス法を実施することで、認知症患者を疾患という一方向からのみ、見るの ではなく、一人の人として尊重することが必要であることが明確になった。セブンクロス法は認知症 看護研修において有用であることが確認された。 キーワード1認知症  セブンクロス法  看護師  パーソン・センタード・ケア

1.はじめに

 高齢化と平均寿命の延びに伴って、わが国における認知症の患者数は年々増加し、今では85歳以 上の高齢者の4人に1人が認知症患者だとされている1>。今後はさらに患者数が増え、2020年には300 万人近くにまで達する見込みといわれている2)。そうなると介護者も含めた1千万人以上の国民が何 かしらの認知症問題に直面することになる。  そこで、今回、看護師専門教育の一環として研修が実施された。この研修は看護師の認知症看護に 対する認識の充実を図ることを目的としている。この機会を得たので、その成果を報告する。

(3)

44 看護学研究 Vb1.3(2011) 皿.研究方法  セブンクロス(7×7)法(カール・グレゴリーが考案したデータ整理技法の一つ)の手法3)を参考 に、質的帰納的に内容分析を行った。  データ収集方法:研修会出席者80名。1グループ8人で10グループに分かれ、「あなたが認知症になっ たらしてほしいこと」と「あなたが認知症になったらしてほしくないこと」をテーマに、以下の手順 に従ってグループ演習を行った。具体的には、①付箋(一人10枚程度)に書き出す、②内容の類似 性と重要度合いを検討し7つのカテゴリー(重要度順)に分類し、並べる、④各カテゴリーを忠実に 反映するネーミングを考える、というものであった。特に、本研究では、上位3位に挙げられた内容 を分析対象とした。  期間:2010年9月  研究対象:本事業に参加した80名の看護師である。  倫理的配慮:グループ演習開始前に研修参加者に研究の趣旨・方法の説明を行った。また、研究の 対象者の権利に関する説明として、①記述内容は自由意志によるもので、いつでも拒否することがで きること、記述拒否による不利益はないこと、記述したくない内容に関しては回答しなくてもよい権 利があること、②対象者の記述内容は、本研究以外の目的で使用することは一切ないことをロ頭で伝 えた。さらに結果を公表・報告することへの同意を得たうえで、分析を実施した。また、分析に関し てはグループ演習参加者同意並びに研修開催主催者の承認を得た。 皿.結果 1)講習会の内容 1日6時間(午前180分、午後180分)(表1) 表1講義内容と時間 講義内容 時間(分) 講義形式 オリエンテーション 10 アイスブレイク、チームワーク作り 30 演習 認知症看護の情報と認知症のアセスメントツール 40 講義 認知症の医学的理解・心理的理解 100 講義 グループワーク uあなたが認知症になったら、してほしいこと・してほしくないこと」 100 演習 認知症の新しい理念パーソン・センタード・ケア 60 講義 DVD鑑賞 20  2)参加者の性・年齢   参加者は80名であり、女性76人(95%)、男性4人(5%)であった。性・年代別は20歳代では、 女性20人(26.3%)、男性1人(25.5%)、30歳代では、女性25人(32.9%)、男性1人(25%)、40歳 代では、女性19人(25.0%)、男性2人(50.0%)、50歳代は、女性9人(25.0%)、60歳代は女性3人(3.9%) であった。(表2)

(4)

看護学研究 Vb1.3(2011) 45

表2性・年齢

男性n=4(%) 女性薮罵76(%) 計 4 100% 76 100 20歳代 1 25.0 20 26.3 30歳代 1 25.0 25 32.9 40歳代 2 50.0 19 25.0 50歳代 0 0 9 11.8 60歳代 0 0 3 3.9  3)セブンクロス表を用いたグループ演習のカテゴリー化  本研究では、特に各グループで話し合われたセブンクロス軸上の上位5位の付箋(1グループ5枚 ×10グループ分計50枚)の内容から、「認知症になったらしてほしくないこととしてほしいこと」を 構成する因子の抽出を行った。具体的には、すべての付箋内容をもとに、類似性を検討しながら、両 者の抱える認知症について、外的な条件による認知症のイメージと内的なものにサブカテゴリー化 し、抽出した内容で、1枚を1ポイントと設定するという手順で行った。  (1)グループごとの優i先順位  グループ演習から得たデータより、認知症患者に対する看護のイメージが明確になった。そこで、 セブンクロス法により、カテゴリー化することによって看護師として役割が明らかになるのではない かと考えた。(表3) 表3優先順位・グループ別因子

G

優先順位1 優先順位2 優先順位3 優先順位4 優先順位5 1 笑顔で 7 制限しないで 7 やめて 6 食事 5 会話したい 5 2 人格 6 孤独 9 笑顔 8 食事 7 傾聴 7 3 いやし 2 自由 39 排泄 5 食事 6 コミュニケーション 18 4 愛情 14 排泄 13 食事 6 お金 3 家族 8 5 人として 7 やさしくして 14 家族 7 自分らしく 40 葭然に逝きたい 4 6 制限しないで 17 好きなこと 15 やさしくして 7 環境を整える 6 人として 6 7 傾聴 8 笑顔 8 掬制しないで 5 家族 2 自由 3 8 叱らないで 6 役割分担 5 孤独 5 やさしくして 8 食事 5 9 自由 14 食事 11 プライド 14 孤独 15 望み 26 10 思いやり 5 排泄 1 人として 18 清潔 13 食事 12 (2)構成因子別サブカテゴリー(表4) ]v.考察  1)グループ演習から抽出した因子と認知症に対する認識について  本研究ではセブンクロス法で抽出された475ポイントのうち、項数の多さでは食事、排泄、清潔に 関しての生活や環境について高いポイントを示したが、逆に優先順位では笑顔、尊厳などポイントの 数値が低いものが選ばれている。これはグループ演習において、受講者が一旦、看護職の立場を離れ、 「認知症になったら」という仮説に立って自分のものとして考えることで得られたものと考える。認

(5)

看護学研究 Vb韮.3(2011) 46 3﹂麟駒3櫛⊃3騒も艇 3﹂題︾○撞限 3⊃滋駒更塗胞槌卿 ︾﹂剤く 鍵誌 β♪⊃滋レ3櫛JVJ嶽 O命3暎 OH 3⊃選レ3櫛患健 V3レ虫喰輔;やみ 3﹂騒粒⊃Vの和倖 3﹂選︾⊃射更魯粕脚鼻ゆ柵 ︾£翻楚︽剣櫛脚嚥 3D遊︾oに︾虞鋼9題転 駒3櫛左脚鞄談蘇e転写 ユや郎ト 3櫛此面楚か爵阻 蹄釧 ︾ヤ食置画素細櫛緬ぬ 紐姐 ① レ3櫛⊃審鷺 駒3櫛﹂強掌憩喫︵y櫛V麺虞慮で綴 3﹂選︾ヤ油翻贈9紐孤 3﹂愚︾o蜂紬禦楚盤e蘇耀 3﹂遊簑蘭島9細”櫛や即紡レ 3﹂選レ3櫛船装 3⊃選駒3櫛D病毒 魚感 3﹂遊︾愈船脚口引ゆ絢和 黒虫羅鰹 3﹂選レ3櫛憩顯 駒3櫛癒ぎ ◎○ 3⊃選駒3櫛⊃U刷く一 3和人V如蹄廻 3﹂遊レ3櫛や和9騨群 3⊃遊レ3櫛£蝦D躍9躍鴇 3⊃選駒3諸病智 3D麺︾b灸賠 3﹂踏駒3櫛﹂血縁 冨鼠 3D選駒3櫛﹂梱懸3約V勾更£ 石蝋 3﹂爵号3櫛﹂窓黛 撰攣 ト 3﹂選レ3縫①灘 3⊃選レ3櫛憩顯 3﹂選︾3麗脚賠 3﹂選レ3櫛む灸賠駒右翼 3﹂選9酒煮築勾ム躯 3⊃攣影3櫛⊃羅慧 3の選︾3誕鞄賠 ︾⊃VJ和砕 鄭終奪超心喫○櫛V櫛虞宴超 勤労配陣慮 3⊃麟レ3櫛﹂3餌圏轟 レ3櫛⊃婆羅 Φ 3⊃遊駒3櫛憩ぎ 3﹂選︾ヤ灸竈梱蘇恥 3⊃選︾ヤ和u篇糞 3⊃選レ3櫛︾轄曜楚繕懸 3﹂攣駒3櫛﹂3牽華串 3﹂選︾⊃糊灘梱.脚額 3喫塵払騒 翼騒 ∼の壇レ3櫛の楚蘂轟 ︾のVの約舞 3豹鰻V旨3櫛むO£患 ︾の剤く め 3喫3類語串 憂3楚R購 影3櫛£腫、潟細Ψ躯隈 瞳で撫仏eザ♪灸日 V贈u∼ヤム 3⊃選︾﹂賠胞懸蝋 ゆ冥磁鞄eや櫛舳蛍石e鞄 蹄姻 3喫Ok思朗医興 謎難 3﹂選影3櫛忍窪顯 鯉劇 尋 3﹂遊︾ヤ豹マ超梱e強櫛常同 ムヤムO蝿○や興 3﹂遊旨のVJ胸倖 3﹂麺駒3櫛⊃桜黒 懸楚。や興 超誌 3⊃選言媚興9暇輪 盈佃 3﹂選︾廉9タV恒 ⊃母3 αう 3の選︾ヤ引手慧ムヤん ︾︾駒u心租樋 3喫3思弁1謁繕騒 3D選︾の聴駒遜螺 ︾ヤ禽趣9遜串 3﹂推度3櫛癒勲 懸蝋 悟疋Ω略画鱒鑓 熱藻 3D選影ぐ蝕楢渥卿 牽く eq

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(6)

看護学研究 Vb1.3(2011) 47 知症のBPSD(Behaviora1韻d Psychological Symptoms of Dementia認知症の行動と心理症状)を考え る際、困っているのは認知症の人そのものであり、周囲の視点(いままでの看護)と当事者(患者) の視点でみることによって、違いを理解したものと考える。また、最近の認知症ケアの動きが「認知 症の人は何を感じ、何を求めているか」という患者本位の視点に立ったアセスメントーッール4)を知 ることによっても理解できたと考える。加藤5)によれば、不適切なケアが認知症の人のBPSDにつな がり、それが再び不適切なケアを行うことにつながり、悪循環を引き起こすと述べている。グループ 演習を通して「してほしくないこと」を考えることによって、逆に看護者が行っていたケアが実は患 者にとって不適切なケアの可能性もあるということに気付くきっかけになったと考える。  2)研修における効果  今回の研修プログラムは講義と演習を交互に行い、各自の意見を活かしながら、グループごとにセ ブンクロス法での発想の転換をはかる手法を導入した。グループメンバーはそれぞれが心理的理解に 想像力を働かせ、グループ演習の醍醐味である「答えは1つではない」を実際に経験し、受講者各自 の考えや意見とメンバーの意見を集約していくことが重要なプロセスであることが理解できたと考え る。病院における高齢者の6割が認知症といわれるなかで、認知症ケアの新しい理念としてパーソン・ センタード・ケア6)すなわち、認知症をもつ人の視点・立場を重視したトム・キッドウッドの理論7) に基づくケアの大切さが理解できたと思われる。それは、看護師自身のエンパワメントを図っていく ための糸ロが抽出された考えや意見のなかにあるのではないかと考えた。例として、優先順位1位の カテゴリーでみてみると、【笑顔】は、対人サービスをする側として求められる【人格】や【人として】 の要件である。認知症の症状は援助者の視点を変えることによって「問題とされる行動」は「認知症 患者の訴え」となる。BPSDは必要とされるかかわりを看護師に発信していると考える。【いやし】、【愛 情】、【制限しないで】、【傾聴】、【叱らないで1は、現在の看護職が業務に追われ、患者の欲求に向か い合うことが不足していることを看護師自らが感じているのではないか。それは認知症を疾患として 理解することも大切であるが、患者の心理面を理解することも同じくらい重要であると気付いた。そ の人の培ってきた生活や現在の心身の状態、社会心理・関係、その人の性格傾向を知らなければ、個 別の看護には近づけない。それぞれかかわりの要求に違いがあることを想像し、その人の存在を認め、 向かい合う必要がある。【自由】や【思いやり】は、疾患としての認知症をもつ人から認知症をもつ 一人の人として尊重されるべき存在であることを認識しておく必要がある。したがって、これらの視 点を盛り込んだ研修プログラムをこれからも継続的に行っていく必要がある。

V.おわりに

 認知症ケアの新しい理念としてパーソン・センタード・ケアを学び、疾患としての認知症をもつ人 から認知症をもつ一入の人として尊重されるべき存在であること。また認知症患者の生の声を聞き、 看護師に望まれる看護について振り返りをおこなう必要がある。 文献 1)本間 昭:「認知症予防・支援マニュアル」東京都老人総合研究所 p6 2009 2)本問 昭:「認知症予防・支援:マニュアル」東京都老人総合研究所 p8−162009 3)川喜多二郎:「発想法の科学」申央法規 1995 4)認知症介護研究・研修東京・大府・仙台センター:「認知症の人のためのケアマネジメント センター方式の  使い方・活かし方」中央法規 2006

(7)

48 看護学研究 Vb1.3(2011)

5)加藤伸司:「高齢者痴呆介護実践講座∬」第一一法規 2002 p152

6)認知症介護研究・研修大府センター(監修):「Evaluating Demea宅ia Care;The DCM methodその人を中心とし

たケアをめざして;パーソン・センタード・ケアと痴呆ケアマッピング」日本語版初版 愛知 2004 7)ドーン・ブルッカー,水野裕:「パーソン・センタード・ケア」クリエイツかもがわ 2010

(8)

tsue#lilffi Vbl.3 (2011) 49

Effects of

e

usmg

qutaM

the 7×7 method in promoimg

dy of demenha care

Mitsuko OSHIMA

SzrgdyamaIQgakuen Uitiversdy School ofATharsing

Abstract

Objective: As society is aging and life expectancy increases, it is clear that the Rumber ef

patients with demeRtia is increasing year by year. It is therefore expected that nurses may be faced

with a new problem of dementia nursing. In this study, we conducted a training of demeRtia

nursing as part of the professienal education fer nurses. The objective of this study was to

investigate the effects of group learRiltg in traiRiRg.

Method: A qualitative iRductive analysis was conducted in 80 nurses using the 7x7 method in

group learning sessiens.

Results: The most impertant coRfiguration factors obtained from the analysis of the data frorn group learning sessions inclttded "smile", "personality", "act of healing", "affection", "treating as a

human being", "refraining from imposiRg restrictielts" "listening closely", "refrainiRg frem rebuking", "allowing freedom", and "being compassionate".

CenclusioR: The 7×7 method in the training showed that patients with dementia should be

regarded and respected as human beings, not viewed firom oRe aspect as a persoR with a disease.

']] ie 7 × 7 method has proven te be usefu1 in training of dementia nursing.

参照

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