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「環境と人間」プロジェクト2015年度活動報告 『保育者および教員養成課程における環境教育の実践-椙山女学園大学教育学部(名古屋市)の事例2007年~2015年』

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「環境と人間」プロジェクト2015年度活動報告

保育者および教員養成課程における環境教育

の実践一椙山女学園大学教育学部(名古屋市)

の事例2007年∼2015年

Activ摘esofEnvironmentalEducationonaCourseofTeacherEducation: ACaseinSchoolofEducation,SugiyamaJogakuenUniversity,Nagoya, Japan,2007-2015 椙山女学園大学教育学部准教授

野崎

健太郎

Kentaro Nozaki キーワード:教員養成課程,環境教育,自然体験,伝統的な食文化 人間関係 Keywords:teachereducation,enVironmentaIeducation,nature eXperience,traditionalfoodculture,human relation はじめに 2007年に教育学部子ども発達学科が設置 され10年間が経過した。この間、筆者は、保 育者および教員養成課程にふさわしい授業の 在り方を模索し、実践を繰り返してきた。教 育学部では「理科」と「理科教育」を専門に 担い、今日、アクティブ・ラーニング(Acti veLearning)と称される学生参加型の授業形 態を実施し、その教育効果を検討してきた(野 崎,2010;野崎,2011a;野崎,2012a;野崎, 2013a;Nozakieta/,2013;野崎2014a;野 崎,2015)。加えて、椙山人間学研究センター で「環境と人間」プロジェクトを立ち上げて からは、教員養成課程における「環境教育」 の確立に力を注いできた。本稿では、この10 年間で確立してきた手法を用いた2015年虔 の実践を荷介する。 環境の科学 教養教育科目であるが、保育者や教員とな って現場で環境教育を実践する際に活用でき る知識と技術の習得を目指した(野崎, 2014b)。学校ビオトープを用いた水生生物の 採集および水質調査の実践(野崎・宇土,2011; 野崎・森,2012;野崎,2013b;野崎2014c; 写真1.大学のビオトープガーデンにおける水生生物の採集 (2015年4月21日) 166 Journa10fSugiyamaHumanResearch2015

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写真2.パックテストを用いたビオトープの水質調査 (2015年4月21日) 吉川・野崎,2014)、教室で簡便に実施できる 化学分析(野崎,2012b)を授業に取り入れ た。 写真1、2は2015年虔前期の授業で行った 大学のビオトープガーデンにおける水環境調 査の実践である。受講学生たちは、このよう な人工の小さな他にも3種類のヤゴ(トンボ の幼虫)、ミズムシ(甲殻類)が生息している ことに驚き、夢中になって採集活動を行って いた。水質は現地ではその億の意味が実感で きなかったようであるが、次の授業時間に、結 果を図表にまとめ、椙山女学園大学附属小学 校のビオトープ、東海地方の主要河川の水質 と比較させることで理解を深めた。 生活科 小学校1、2年生の教科で行われ、保育の学 びである``遊び''から、小学校での"学習"へ のつなぎとなる教科である。授業の内容を「生 命と食」に絞り、野菜の栽培、収穫した野菜 の調理、会食、地域の食文化を学ぶ社会見学 を行っている(野崎,2011b;野崎2012c)。 写真3、4は、2015年度前期および後期の 開墾である。粘土質の土壌に苦戦しながらも、 鍬やスコップを楽しげに振っていた。農器具 写真3.教育学部敷地内の空き地を開墾する(2015年4月27日) 写真4.冬野菜の栽培を目指しての開墾作業(2015年10月5日) の安全な使い方、肥料の種類と効果、教材と しての種子と常について体験的に学ばせた。 野菜を栽培する上で、「間引き」は必須の作 業であるが、生活科ではこれを「いのちの教 育」の教材として活用した。間引きは、人間 が食料を得るために、人間の都合で小さな苗 を引き抜く行為であり、受講学生には、それ を美化することなく、失われるいのちに向き 合うことを求めた。間引いた箇は、お経煮や パスタの異材として受講学生と料理して味わ った(写真5、6)。なお、お経煮の出汁は、日 本の伝統的な食文化を実感するために、昆布 と鰹節でとった。 前期はジャガイモと夏野菜のカレー、後期 はサツマイモと冬野菜の鍋を調理して会食を Journa暮ofSugiyamaHumanResearch2015 167

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写真5.間引き菜を異材としたパスタづくり(2015年6月8日) 写真6.間引き菜を異材としたお経煮づくり(2015年10月26日) 行っている。お世話になっている先生方、先 輩方をお招きし、会話を楽しみながら、共に 食べる``共食''の意義を実感してもらってい る(写真7、8)。なお、後期は化学調味料を 用いずに、塩と昆布だけで漬ける白菜漬けを 仕込み、2016年1月には、冬野菜の鍋ととも に収穫祭の会食を行った。野菜の栽培活動や 調理実習を行う中で、伝統的な食文化への認 識が高まってくる。これを定着させるために 愛知県豊田市の味噌蔵、野田味噌商店(掛塚 味噌)の見学を行っている(析壕味噌web Site:http://www.masuzuka.cojp/)。この味 噌蔵は三河地方伝統の豆味噌を木の樽で1年 半凄かせる天然醸造にこだわっている。筆者 は教育学部着任前に、豊田市の戦争遺跡を学 写真7.夏野菜とカレーの会食(2015年7月20日) 写真8.サツマイモの収穫禦(2015年12月7日) ぶ会の催しに参加し、旧日本軍の飛行横格納 庫を蔵として持つ桝塚味噌の野田清衡社長 (無限責任社員)、野田麻規子専務夫妻に巡り あった。教育学部ではぜひ伝統食に関わる授 業をと構想していたため、思い切って見学を 申し込んだところ快く受け入れていただき、 写真9.研塚味噌「蔵の食青学校」での野田社長の講義 (2015年12月5日) 168 Journa‡ofSugiyamaHumanResearch2015

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写真10.自給率100%のネオ料を用いた五平餅づくり (2015年12月5日) 2008年以来、現在まで年2回の見学をお願い している。見学当日は、旧鳳来町の廃校から 移設した机、椅子、額縁が並ぶ蔵の食青学枚 で、野田社長自らの熱い語りに学生はみるみ ると引き込まれていく(写真9)。加えて、豊 田五平餅学会の事務局長を兼務する研塚味噌 営業の稲石さん指導の五平餅づくりの体験は、 大変に楽しいひと時である(写真10)。 受講学生には事前学習として、「発酵」につ いて、大人向け、子ども向けの説明を考えさ せ、その結果を班(3∼4人)ごとに3枚の 報告書にまとめさせる。この報告書は、事前 に野田社長に送り、当日の授業の材料として もらっている。社長から「発酵」について質 問され、表面的な回答をしても、それが真の 理解とはほど遠いことに気づく、これが学び の理想的なかたちの1つであろう。野田社長 は「子どもたちは正直だ。おもしろくなけれ ば聞いてくれない。そして大人の嘘をすぐに 見抜く。」と受講学生たちに語りかけてくれ る。そして、「俺たち味噌屋は味噌をつくって いない。味噌を見守っているのだ。教育もそ ういうものではないか。待つことも大切だ。」 と続く、そして``ひとなる''という言葉を引 き合いに出しながら、「人間になるのを待とう じゃないか。」と結論付ける。この話を開き、 教師になった卒業生が、「学生の頃、ここで良 い勉強をしました。」と言って、再び子どもた ちを連れて見学に来る。野田社長はこれがた まらなく嬉しいとのことである。事後学習で は、野田ご夫妻と稲石さんに自筆の手紙を書 いてもらう。このように社会見学の際には、多 忙な本業の時間を割いて対応してくれる現場 に丸投げすることなく、学校側もいかに準備 して臨むか、そして、それが良い効果を引き 出す、ということを実感させている。 ケースメソッド 愛知県、名古屋市の水道水源である木曽川 の上流、長野県木曽町福島で4泊5日の合宿 形式で行っている。筆者が人間関係学部在籍 写真11.河川源流部の調査(2015年8月10日) Jouma10fSugiyamaHumanResearch2015 169

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暗から始め(野崎,2008)、教育学部に異動後 は、高知大学理学部生物学科との合同で実施 している。この4受業に用いる教科書も2冊編 集した(日本陸水学会東海支部会編,2010; 2014)。授業内容は、地形、水質、水生生物の 調査を行い(写真11、12)、それらを組み合 わせて河川生態系の仕組みを理解させること を中心にしている(野崎,2012d;山本・野 崎,2015)。受講学生たちは、複数の情報を組 み合わせて1つの話をつくる作業に慣れてい ないが、現実社会の課題は、ほとんどがその ような解決策を用いる必要がある。その訓練 とも位置づけている。 調査以外にも、水泳、焚き火、魚釣り、自 炊といった楽しい内容も盛り込みながら、共 同生活を楽しんでいる(写真13、14)。この 写真13.川遊び(2015年8月18日) 写真14.焚き火で焼いたトウモロコシを頬張る(2015年8月11日) 実習を通じて、教育効果を検討したところ、 「人間関係を構築する大切さ」が浮かび上がっ てきた(野崎,2013c)。受講学生からの意見 をまとめてみると、自然は個人では太刀打ち できないことがある。しかし、仲間と協力す ればできることが大きく広がることを学生た ちは実感した。ここから社会における共同作 業、すなわち人間関係の重要性が理解された ようである。ともに自炊し食事をとる楽しさ も格別のようである(写真15、16)。ここで も``共食''の学びが実践できている。 写真15.楽しく会食(2015年8月13日) 写真16.楽しく会食(2015年8月18日) 今後の課題 この10年間の実践により、授業内容は確立 してきた。しかしながら、教育効果について は明確ではない(野崎,2013a;野崎2014b)。 170 JournaIofSugiyamaHumanResearch2015

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今後は効果の測定方法の開発を含め、実践を 見直す時期に入っていると考える。 謝辞 環境の科学における実践では、教育学部教 授/元附属小学校長の宇土泰寛先生、附属小 学校教諭の森昌彦先生、生活科の社会見学で は、桝塚味噌の野田清衡社長、野田麻規子専 務、稲石さん、ケースメソッドでは、高知大 学理学部生物科学コース講師の加藤元海博士 にお世論になりました。ここに深く感謝いた します。 文献 日本陸水学会東海支部会編(2010)身近な水の 環境科学,朝倉書店,東京. 日本陸水学会東海支部会編(2014)身近な水の 環境科学(実習一測定霜)-自然の仕組みを調 べるために∴朝倉書店. 野崎健太郎(2008)体験型の水環境教育の実践 ∼人文社会学系の大学生を対象にして∼.椙 山人間学研究,4,57-68. 野崎健太郎(2010)小学校教員養成課程の大学 生への教材体験を通した「理科」学習の実践. 椙山女学園大学教育学部紀要,3,85-95, 野崎健太郎(2011a)小学校教員養成課程の「理 科」における鮮魚(マイワシ:Scadinops melanostictus)を用いた解剖実習.椙山女学 園大学教育学部紀要,4,95-102. 野崎健太郎(2011b)植物の成長観察を用いた 大学生の科学的素養(科学リテラシー)教育の 実践.椙山女学園大学研究論集(自然科学篇), 42,27-33. 野崎健太郎・宇土泰寛(2011)小学校のビオト ープを活用した大学生の水環境教育一椙山女 学園大学教育学部(愛知県名古屋市)の教養教 育における実践∴椙山人間学研究,7:148-155. 野崎健太郎(2012a)小学校教員養成課程にお ける模擬授業を導入した「理科指導法」の学習 の立案と実践一授業を準備し実践するまでに 必要な時間経過を理解するために-.椙山女 学園大学教育学部紀要,5:165-175. 野崎健太郎(2012b)人文社会学系の大学生を 対象とした陸水環境教育の実践∴講義科目へ の利き水,水質分析およびBOD試験の導入 とその評価.陸の水,54:1ト18. 野崎健太郎(2012c)保育者㌧小学校教員養成 課程の「生活科」授業における生命と食の学び. 椙山女学園大学研究論集(自然科学篇),43: 1-12. 野崎健太郎(2012d)保育者・小学校教員養成 課程における河川調査実習の立案とその教育 効果.日本生態学会誌,62:51-58. 野崎健太郎・森昌彦(2012)保育者・教員養成 課程の大学生への環境教育および研究の場と しての椙山女学園山添キャンパス(愛知県名 古屋市千種区覚王山).鳩山人間学研究,8: 181-184. 野崎健太郎(2013a)自然科学系の大学講義に おける期末試験の得点と事後学習との関係. 椙山女学園大学研究論集(自然科学篇),44: 1-8. 野崎健太郎(2013b)教員養成における陸水学 の研究手法を導入したアクティブ・ラーニン グ形式の環境教育の実践.塙山人間学研究,9: 194-199. 野崎健太郎(2013c)第5章河川実習を通じた 人間関係への気づき一自然体験学習が大学生 に及ぼす影響,人間関係の諸問題:渡追毅(編 JoumaIofSugiyamaHumanResearch2015 171

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著),p.101-114,中部日本教育文化会,名古屋. Nozaki,K.,Mori,Y.,Mori,A.,Mori,A, 00take,S.andIwasaki.K.(2013) Preliminaryresearchonpaperrotor(Kami-tombo)asacraftteachingmaterial:efEectof wingwidthandlengthonrotor色ighttime. ノb〟ノⅥβノ∂′∠AeJわj♂クノク′g♂〟C∂〟bβ′ 励β鹿血/eβ乙わ/血ケ,6:355-361. 野崎健太郎(2014a)生物学教育における有性 生殖の教材としての糸状緑藻アオミドロ属 (車軸藻綱)の有用性.椙山女学園大学教育学 部紀要,7:295-299. 野崎健太郎(2014b)大学教養科目の環境学に おけるアクティブ・ラーニングの効果.横山 女学園大学研究論集(自然科学篇),45:119-126. 野崎健太郎(2014c)設置後5年を経過したビ オトープの他の水質と水生動物相一椙山女学 園大学星が丘キャンパス(名古屋市)のビオト ープの事例-.鳩山人間学研究,10:173-176. 野崎健太郎(2015)糸状藻アオミドロ属(ホシ ミドロ科Zygnemataceae,物属)の 接合過程を教材とした有性生殖の学び一小学 校教員養成課程における実践√.椙山女学園 大学教育学部紀要,8:159-167. 山本彩荊・野崎健太郎(2015):木曽川上流域 (長野県木曽町)におけるスナック菓子とセル 瓶を用いたコイ科魚類アブラハヤ 」●二!∴・`∴=二!ニ・・∴・し..亡、・・・=ト∴●、∴・.∴、∴∴・:‥.‥.‥∴●・ 採集:自然体験学習の教材としての予備的研 究.陸の水,70:35-39. 吉川真由・野崎健太郎(2014)都市部の学校施 設に生息する昆虫と生息環境との関係:名古 屋市千種区山添町における解析.椙山女学園 大学教育学部紀要,7:173-185. 172 Journa10fSugiyamaHumanResearch2015

参照

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