網膜 離を伴う黄斑疾患の画像診断と 子細胞学的解析
本 英孝
1 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学大学院医学系研究科眼科学 はじめに 網膜 離は神経網膜が網膜色素上皮から 離する病態で ある. 視細胞は網膜外層に存在し, 網膜色素上皮細胞を介 して脈絡膜循環から栄養を受けている. このため, 離網 膜では視細胞が虚血に陥り視細胞死が起こる. 網膜 離は 裂孔原性網膜 離だけでなく, 加齢黄斑変性や中心性漿液 性脈絡網膜症などの黄斑疾患でも起こる. 原疾患の治療に よって網膜が復位しても, 離期間中の視細胞死によって 恒久的な視力低下が起こる. このため, 離網膜における 視細胞死のメカニズムを解明し, 網膜 離期間中の視細胞 死を抑制することが重要である. 本項では, これまで行っ てきた網膜 離の臨床, 基礎研究について紹介する. 臨床研究 光干渉断層計は, 生体の網膜の断層像を非侵襲的に短時 間で撮影することができる画像診断機器であり, 現在の眼 科診療において欠くことのできない検査機器である. 我々 は, 光干渉断層計で中心性漿液性脈絡網膜症を観察するこ とによって, 離網膜における視細胞の形態変化や視細胞 死に伴う網膜外顆粒層の菲薄化がみられることを見出し た (図 1). さらに, 網膜復位後の視力は外顆粒層厚と正の 相関を示すことを見出した. 光干渉断層計で得られるこれ らの所見は, 視力予後を予測するうえで重要な所見であり, 日常診療においても役立てられている. ― 91― 文献情報 投稿履歴: 受付 平成28年10月19日 採択 平成28年12月8日 論文別刷請求先: 本英孝 〒371-8511 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学大学院医学系研究科眼科学 電話:027-220-8338 E-mail:hide-m@gunma-u.ac.jp北関東医学会奨励賞
2017;67:91∼92 図1 中心性漿液性脈絡網膜症の光干渉断層計像基礎研究 著者は米国留学中に, これまで報告されていた齧歯類の 網膜 離モデルを改変し, 作製が容易で再現性の高い網膜 離モデルを確立させた. そして, この網膜 離モデルを 用いて, 離網膜における視細胞死の 子メカニズムを解 明するために様々な研究を行ってきた. 本項では, 離 網膜における視細胞死と Fas-Fasリガンドとの関係を調べ た研究について紹介する. Fasシグナルは, 細胞死をもたらすシグナルとして知ら れている. 膜結合型 Fasリガンドが受容体 Fasに結合する と, カスパーゼを介してアポトーシスを誘導する. 膜結合 型 Fasリガンドはメタロプロテアーゼによって切断され 泌型 Fasリガンドとなるが, 泌型 Fasリガンドのアポ トーシス誘導能は非常に低い (図 2). 本研究では, Fasリガ ンドの完全欠損マウスである Fasl マウスと Fasシグナ ルが強く入る ΔCSマウス (Fasリガンドのメタロプロテ アーゼ切断部位に遺伝子変異がある) に網膜 離を作製し, 離網膜における視細胞死とそれに伴う炎症について評価 した.その結果,視細胞死,炎症ともに Fasl マウスでは抑 制され,ΔCS マウスでは促進された.これらのことから, 離網膜における視細胞死には Fas-Fasリガンドが関与し ていることが証明された. さらに, 網膜 離作成時に網膜 下にリコンビナント可溶型 Fasリガンドを注入すると, ア ンタゴニスト効果により 離網膜における視細胞死が抑制 されることも かった.以上のことから,Fas-Fasリガンド は 離網膜における視細胞死抑制の治療標的になり得ると えた. おわりに 網膜 離を来たす眼疾患は多数あり, 患者数も多い. 離網膜における視細胞死を抑制することは, 視力維持のた めに重要である. 今後とも, 実臨床に反映されるような網 膜 離の臨床, 基礎研究を行っていきたい. 謝辞 平成 28年度北関東医学会奨励賞を頂くにあたり, 御推 薦および御指導いただきました群馬大学大学院医学系研究 科眼科学 岸章治前教授, 北関東医学会奨励賞受賞講演で 座長の労をお執りくださった群馬大学大学院医学系研究科 眼科学 秋山英雄教授をはじめ, 教室員の方々に深く感謝 いたします. 文献
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網膜 離を伴う黄斑疾患の画像診断と 子細胞学的解析
図2 Fas-Fasリガンドとアポトーシス誘導能