第38回群馬脳腫瘍研究会
日 時:2007年 2月 10日 (土) 場 所:群馬ロイヤルホテル 代 表:好本 裕平(群馬大院・医・脳脊髄病態外科学) 当番世話人:栗原 秀行(桐生厚生 合病院 脳神経外科)一般演題>
座長:栗原 秀行(桐生厚生 合病院 脳神経外科) 1.下垂体腫瘍の血流障害について 甲賀 英明,黒崎みのり,若林 和樹 ( 立藤岡 合病院 脳神経外科) 田村 勝,田中 壮佶 (同 附属外来センター) 下垂体腫瘍の血流障害を来したと えられる 2症例を 提示する. 【症例1】 33歳女性. 生理不順. 乳汁漏出 高 PRL 血症 (80-90), 鞍上進展する高さ約 15mmの腫瘍 産科でテルロンで第 1子出産. 2003/8 panic disorder精 査で下垂体腺腫を指摘され紹介. 視力障害や画像上の増 大時に手術を行なう方針. 2004/4/25 子宮外妊娠 (7W) のため産科で卵管切除術後より両側耳側半盲出現, 多飲 多尿, 全身 怠感 左眼高度視力低下のため当科 2004/ 5/3入院. 視力右 1.2 左 0.04 (以前は両眼 1.2) 腫瘍は上 下約 23mmと (+7mm) 増大し, 内容が造影されず. 汎下 垂体機能低下, 一日に 4-5ℓの多飲多尿, 下垂体腫瘍梗 塞の診断で手術. 所見>腫瘍はやや固い部 と軟化し柔 らかくなった部 が混在. 出血所見なし. 摘出は容易.病理> pituitary adenoma, chromophobe type with infarction 免疫組織では PRL (−)で非機能性腺腫. 術 後経過> 術後視力は視力は右 1.2 左 1.2に回復したが視 野欠損少し残存. 怠感は消失し, 6ヶ月後には補償離脱. 術後 MRI では全摘出. 外来経過観察中. 【症例2】 70 歳男性. 視力障害, 両耳側半盲で発症, 高さ 36mmの非機 能性腺腫. 2005/5/10 経鼻的手術施行. 鞍内腫瘍は柔ら かく摘出されたが, PCO2調節を行っても鞍上部腫瘍が 落下せず, 鞍上部は fibrous hard. 鞍底を大きく解放し, 二期的手術予定とした. 術後経過は特変なし. 術後 MRI では下 1/2の摘出. 外来で画像経過観察中, 腫瘍落下が 確認され腫瘍は高さ 27mm.8/9 手術施行.術直後の視力 低下はなかった. 術後, 意欲低下・全身 怠感出現し, 副 腎皮質ステロイドを補充.8/12 視力低下・視野狭窄が悪 化し緊急 MRI 施行で残存腫瘍の腫脹があり, 下垂体腫 瘍梗塞が疑われ, これが視神経を圧迫していると えら れた.8/12 緊急下垂体減圧術施行.術後 徐々に視力の回 復が得られた. 術後尿崩症には至らず, またステロイド の補充も積極的に行った. 8/31 視力は右視力は 0.4まで 回復し自宅退院となった. 腫瘍はほぼ摘出. 下垂体機能 も回復傾向で, 現在チラージン S0.5錠のみ補充. 2.脳腫瘍化学療法と病棟薬剤師の関わり 栗原 彩,大林 恭子,関塚 雅之 山本康次郎,堀内 龍也 (群馬大医・附属病院・薬剤部) 【はじめに】 群馬大学病院脳神経外科病棟において薬剤 師は, 患者ができるかぎり安心して治療を受けられるよ う, 説明書を作成し指導を行っている. 今回, 化学療法に 関する服薬指導についての患者の評価を調査したので報 告する. 【方 法】 群馬大学病院入院中にグリオーマ に対する化学療法 (PE, TZM, ICE) を受けた患者 9 名 に, 化学療法に関して, 何が知りたかったか, 薬剤師の説 明は十 か,情報提供に対する意見・要望,について調査 を行った. 【結果・ 察】 薬剤師は患者ごとに説明書を 作成し, 治療のスケジュール, 時期によって予想される 副作用やその対策などを説明している. 患者からは, 最 も心配だった副作用に関する情報を紙面で得られ, わか りやすくて助かった, という意見が大半であった. 薬剤 師からの紙面による情報提供は, 患者の化学療法に対す る不安の軽減につながったと えられる. 今後, 患者ご とにより適した服薬指導を行うため, チーム医療の中で の医師・看護師との情報 換を活発に行っていきたい. 3.mesenchymal chondrosarcomaの一例 早瀬 宣昭,楮本 清 ,卯木 次郎 (埼玉県立がんセンター 脳神経外科) 黒住 昌 (同 病理科) 極 め て 稀 で あ る, 頭 蓋 内 に 発 生 し た mesenchymal chondrosarcomaを報告する. 症例は 21歳女性, 糖尿病, 293 Kitakanto Med J 2009;59:293∼295
喘息の既往. 1ヵ月前からの頭痛あり, 複視, 嘔吐みられ, 近医で脳腫瘍と診断され, 当科紹介入院した. 神経学的に頭痛, 複視, 軽度の右片麻痺を認めた. 左側 頭部に, 50×45×40mm, 八つ頭状の, 内部に粗大な石灰 化部 を伴う, 著明に造影される腫瘍を認めた. 脳血管撮影により, 左中 膜動脈 枝から栄養される 著明な腫瘍濃染像を認め, 腫瘍血管塞栓術を施行した. 画像所見から, 錐体前面 膜から発生した髄膜腫を疑い, 腫瘍摘出術施行した.腫瘍は灰赤色,弾性軟,やや出血性, 境界明瞭, 周囲脳との剥離は容易であった. 錐体近くは, く繊維性で出血性であった. 石灰化病変も含め肉眼的 に全摘出し, 膜付着部は十 電気凝固を加えた. 術後, 頭痛, 複視,右片麻痺は改善.術後,髄液鼻漏あり,腰椎ド レナージ, 膜閉鎖術施行. その後, 経過良好で独歩退院 した. 病理所見 : 類円形ないし楕円形の核と淡明な狭い 細胞質をもつ腫瘍細胞が密に増殖し, 細胞配列に特徴的 な細胞配列はない. 核にはクロマチン増加があり, 核 裂増が散見される. 鹿角状に拡張した間質血管に富む. 腫瘍内に散在性に軟骨組織を認める. 以上の所見から mesenchymal chondrosarcomaと病理診断された.後療法 として左錐体を中心に局所照射 60Gy施行した. chon-drosarcomaの亜型である Mesenchymal chondrosarcoma の悪性度は WHO grade IVで, 局所再発, 遠隔転移を生 じ, 予後不良とされる. 現在, 慎重に経過観察を行ってい る. 4.鞍上部腫瘍に対する手術戦略 赤尾 法彦,石内 勝吾,山口 玲 好本 裕平 (群馬大医・附属病院・脳神経外科) 鞍上部腫瘍に進展した 66歳女性 atypical meningioma および 61歳男 性 recurrent Solitary Fibrous Tumor (SFT) の症例につき提示する. 前者は左視力低下にて発 症し, 術後視力は温存され sympson grade の摘出を試 行した. 後者は右眼窩, 中頭蓋窩, 海綿静脈洞内に浸潤す る腫瘍で 1999 年に部 摘出, 再燃腫瘍に対して 2001年 ガンマナイフ加療後の状態で経過中右視力は失明してい る. 2006年 8月頃より腫瘍増大を認め左視力, 視野の急 激な悪化を認め, 術前は指数弁程度. 失明を回避するた め左視神経, 視 叉の減圧を目的に手術を施行した. 両 者との pterional approachにて前頭洞は開放せず, 眼窩 上縁と正中部まで開頭した. まず正中部にて嗅神経を oxycelと fibrin glueにて保護. 髄膜腫では重要構造物の
ない正中部より腫瘍付着部位を十 凝固し, 腫瘍をくも 膜露出面より内減圧すると腫瘍被膜ごと剥離摘出が可能 である. SFT は表面は乳白色の組織学的に膠原線維に 富む い腫瘍で, 腫瘍を構成する紡錘型腫瘍細胞は脳実 質に突き刺すように浸潤するため視床下部や下垂体茎と の剥離に際しては腫瘍被膜を薄く残すことが術後の機能 温存にとって重要である. 両腫瘍とも ipsilateral の視神 経後方の腫瘍の剥離に際しては患者頭位を同側に傾け顕 微鏡を正中部から振り approachすると視神経を損傷せ ず摘出が可能である. また腫瘍細胞の生物学的特性を 慮した手術戦略が重要である. 5.診断に苦慮した中頭蓋窩―傍鞍部腫瘍の一例― 本多 文昭,藤巻 広也,橋場 康弘 相島 薫,朝倉 ,宮崎 瑞穂 (前橋赤十字病院 脳神経外科) 伊藤 秀明 (同 病理部) 平戸 純子 (群馬大院・医・病態病理学) 症例は 72歳, 女性. 2006年 11/21, 自宅で倒れている 所を発見され搬入された. 来院時 JCS -20, 瞳孔不同 (右>左) を認め, 対光反射は両側消失, 重度の左片麻痺 を認めた. 頭部 CT では右側頭葉∼大脳基底核に周囲に 浮腫を伴う出血を認めた. MRI では同部に 6 cm大の不 一な massを認め一部が造影されることから腫瘍内出 血が疑われた. 全身検索では原発巣を疑う病変は認めず 腫瘍マーカーも陰性, 脳血管撮影では腫瘍濃染像は認め なかった. 11/29, 右前頭側頭開頭で摘出術を施行. 腫瘍 は中頭蓋窩から一部後頭蓋窩に伸展していたが肉眼的に は周囲脳との境界は比較的明瞭. しかし発生母地は不明 であった. 後 通動脈の穿通枝付近, 前脈絡叢動脈上方 の一部を残して亜全摘された. 病理所見では類円形の核 をもつ多角∼紡錘形の腫瘍細胞が中∼高度の細胞密度で 増殖, MIB-1LI は 29.4%と高値であった. 以上の症例に ついて若干の文献的 察を加えて報告する. 本症例は術 前診断が困難で術中所見も特異的, さらに病理組織診断 にも苦慮した一例であった. 最終病理診断については口 演時に明らかにしたい. 6.高身長,頭蓋骨肥厚を合併した1例 栗原 秀行,曲沢 ,霜田 茂 渡邊 孝 (桐生厚生 合病院 脳神経外科) 高身長, 無月経を主訴に受診し, 頭蓋骨肥厚を合併し た症例を経験したので報告する. 症例は 14歳女性 家 族歴, 身長は 親 175cm, 母親 159cm, 姉 157cmと, 特別 高身長の家族無し. 高身長, 無月経で平成 18年 8月 9 日, 当院小児科受診. 身長 177.6cm, +3.9SD. 無月経で GH : 14.3, PRL :36.4, IGF-1:1180, LH 2.0, FSH 6.9, E2:24, 骨年齢 14歳程度, 腹部エコーにて内性器に著変無し. 視 力, 視野に異常無かった. MRI にてトルコ鞍内から突出 し, 視神経に接する腫瘍を認めた. また, 頭蓋から下顎に 第 38回群馬脳腫瘍研究会 294