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〈各種報告〉現代韓国語における連子音と連母音の回避現象

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はじめに  子音は舌や唇などの調音器官を調整し、息の抵抗(障礙)を通して得られる音であり、 この子音を実際に口から生み出すのが母音であることは、その名前からもよくわかる。ハ ングルは子音字母と母音字母を交替に並べ、字形を作る。しかし、「ひらがな」とは異な り、初声(子音字母)+中声(母音字母)+終声(子音字母)、または中声(母音字母)+終 声(子音字母)で構成される閉鎖音も多くあり、次の音節が子音字母で始まると、子音字 母が並ぶことになる。この場合、子音同士の相性によっては、発音の変化(音韻変動)を 招くことがある。また、曲用や活用の際にも子音字母や母音字母ではじまる助詞または語 尾が付け加わることによって、その境界に子音字母や母音字母が並ぶ場合がある。本稿で はこの現象を各々「連子音」と「連母音」と呼ぶことにする1。連子音と連母音は、発話 の効率を落とすと同時に、発音の変化を招き、疎通を妨げる。現代韓国語の場合、連子音 には母音挿入が、連母音には母音縮約(又は融合)を設け、この困難を回避している。  多様な発音の変化と複雑な文法は、外国語として韓国語を習う人だけではなく、教える 側にも重い負担となっている。しかも、発音の変化と文法は全く関係のない別の学習スケ ジュールに沿って教えられており、両者を引き起こす原因は少なくとも入門の教科書では 統合的に説明されていない。しかし、発音に変化をもたらすと同時に、複雑な文法を作る のは連子音や連母音の回避を含む音韻上の問題である以上、両者への学習と指導を統合的 に行う必要があるだろう。  これまで音韻論から韓国語の母音と子音を構成元素に還元し、その支配関係(結合・分 解)を通して、発音の変化や活用の変化を共時的・通時的に分析する先行研究は多くあっ た2。ただ、これは韓国語を外国語として習う一般の学習者への配慮はなく、そのまま教 育現場で用いるのは困難である。韓国語の入門者に発音と文法の相関性をより分かりやす く提示する教授法はないだろうか。  それで、2016 年度から 2017 年度まで大学の韓国語入門クラスを対象に、連子音と連母 音の回避現象を用いて発音と文法を統合的に教えた。これは音韻論を踏まえ、連子音と連 母音における調音位置や調音方法の連続的移動によって生じる物理的困難とその解消が、 発音の様々な変化と多様な文法的装置を作らせた原因の一つであること、そしてこのメカ

呉 永三

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ニズムを理解することでただ覚えるのではなく、学習者自ら納得する仕組みを目指す教授 法である。本稿はこれを纏めたもので、まず連子音と連母音の問題とその回避のために設 けられた発音上の変化や文法的装置を紹介する。それから、例外的用例を確認すること で、連子音と連母音の回避が求められる理由を検証する。最後に、連子音と連母音の回避 という現象を、韓国語の発音や文法を統合的に理解する一つの枠として提示し、学習者の 負担を軽減させる教授法として提案するものである。 1.連子音の回避 1−1.発音の変化  韓国語の音節は初声(子音字母)+中声(母音字母)の開音節があり、これは日本語と 同様である。ところが、ハングルにはこれに加えて初声(子音字母)+中声(母音字母)+ 終声(子音字母)、または中声(母音字母)+終声(子音字母)の閉音節も多くあり、これ によって少ない字母でより多くの音節が作られる。問題は後者の場合、次に来る音節の初 声と連子音を作ることである。二つの子音字母同士が並ぶと、子音同士の相性によって、 同化または強化による発音の変化が起きる。発音の変化には様々な様態があるが、ここで は代表的な幾つかの例を挙げ、連子音による発音の変化を見渡す3  まず、同化には鼻音化・流音化がある。並ぶ子音字母の内、後ろの子音字母が鼻音 (/ㄴ/・/ㅁ/・/ㅇ/)である場合、一定の速度で両子音を発音すると、連動する舌 の動きによって一方の子音も鼻音に変わるのが鼻音化である。例えば、「학년(学年)」の 一音節の終声/ㄱ/と二音節の初声/ㄴ/はほぼ同時に実現されるために、/ㄱ/を発音 する時の舌根は軟口蓋に付けきれず、前進する。同時に、止められるはずの息は鼻音/ㄴ /を発音するために、鼻を通りつづける。/ㄱ/の実現の段階で早くも/ㄴ/を発音する ので、/ㄱ/は鼻音/ㅇ/に近い音になり、最終的に[항년]と発音されるのである。  また、どちらかの子音字母が流音/ㄹ/である場合、もう一方の子音字母も流音になる 流音化がある。これも鼻音化と同様、両子音の調音位置の無理な移動によって生じるもの である。例えば、「신라(新羅)」の場合、/ㄴ/を発音するために舌先は歯槽に向かうが、 それとほぼ同時に舌を曲げる流音(弾舌音)/ㄹ/の調音位置に移動しなければならない。 そのため、舌先は歯槽に付けきれず、曲がるので/ㄴ/は/ㄹ/に実現されるのである。 この逆行同化の他に、「달님(お月様)」が[달림]に変わるような順行同化もある。  一方、強化には濃音化(硬音化)と激音化がある。まず、並ぶ子音字母の内、一音節の 終声を一定の速度で正確に発音すると、二音節の初声が濃音に発音される濃音化がある。 例えば、「춥다(寒い)」が[춥따]になる場合がそれである。唇をしっかり閉じる/ ㅂ/、舌根を軟口蓋に付ける/ㄱ/、舌を硬口蓋に付ける/ㄷ/は何れも唇や舌で息を止

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める子音であり、その際に発生した息の圧力が後行する初声にそのまま伝わる。これに よって、濃音が存在するすべての平音は濃音に発音される。  また、「축하(祝賀)」が[추카]になる激音化がある。これは子音字母同士が衝突し、 二つの子音字母が一つの激音に縮約されることで、少なくとも表面的にはすでに取り上げ た発音の変化と少し異なり、連子音の現象自体が無くなる。  このように発音の変化は連子音によって引き起こされる発音上の物理的困難を回避する 有効な手段であり、この現象自体を連子音の回避と見ることも可能であろう。ただ、教育 の現場で注意しなければならないのは、一定の速度と正確な発音という条件を同時に満た す場合のみ、実現されることを熟知させることである。 1−2.曲用と活用  体言と用言を曲用・活用する場合、単語や語幹が子音字母で終わり、付ける助詞や語尾 もまた子音字母で始まると、子音字母同士が並ぶことになる。この場合、発音の過程で両 子音は相互影響を受け、結果的に正確な発音や意思疎通を妨げるリスクが生じる。これを 回避するために、助詞を二通りに設けたり、語幹と語尾の境界に母音字母/ㅡ/又は/ ㅏ・ㅓ/を挿入したりすることで連子音の現象を回避する。本稿ではこれを同意別形の選 択と呼ぶ。  例えば、「이(が)」「은(は)」「을(を)」「으로(で)」は体言が子音字母で終わった場 合、各々「가」「는」「를」「로」の代わりに付ける助詞であり、結果的に連子音を回避す ることになる。例えば、「汁(국)+は」の場合、「국+는[궁는(鼻音化)]」ではなく、 「국+은[구근(連音化)]」とし、連子音による発音の変化を最小化し、体言の終声をで きるだけ正確に伝える。他の助詞も体言との境界を子音字母+母音字母、または母音字母 +子音字母という順に整え、連子音に伴う発音の変化と物理的困難を避けて、発話の効率 を高める装置として二通り設けられたと理解できる。  一方、用言の場合、例えば「웃다(笑う)」に終結語尾の「세요」を付けて「お笑いに なる」(又は「笑ってください」)に変える場合、「웃+세요[욷쎄요]」になり、語幹と語 尾の境界に二つの子音字母(ㄷ+ㅅ)が並ぶ。この場合、語幹の終声は閉音節であり、語 尾の初声/ㅅ/は歯茎摩擦音であるから、この連子音を連続的に発音することは物理的に 難しい。したがって、両子音字母の間に母音/ㅡ/を挿入し、語尾を「으세요」とするこ とで、調音位置の移動や調音方法の変換を滑らかにすると同時に、「세요」という記表も 濃音化を抑え、正確に伝えることができる。  また、「잡다(取る)」に連結語尾の「면」を付けて「取ると」に変える場合、「잡+면」 となる。そうなると、二つの子音字母が並び、子音字母の同化によって語幹の終声/ㅂ/

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が鼻音/ㅁ/に変わり、[잠면]と発音される。ここで母音/ㅡ/を挿入し「잡으면[자 브면]」とすると、調音器官の移動や調音方法の変換をスムーズにすると同時に、語幹の 終声を変化させず正確に伝えることができる。更に、「받다(もらう)」に連結語尾「니 까」を付けて「もらうから」に変える場合も、同様に発音の変化([반니까]鼻音化)が 起きるので、/ㅡ/を挿入し、「받으니까」とすることで、発音と疎通を円滑にするので ある。他にも「면서(しながら)」・「려고(しようと)」・「러(しに)」など、母音/ㅡ/ を挿入する活用は多く見られるが、これもすべて連子音の回避といえよう。  それから、母音字母で終わる用言の語幹に終結語尾「ㅂ니다」を付けると、動詞は「ま す」、形容詞は「です」となる。例えば、「내리다(降りる)」は「내립니다(降ります)」 に、「예쁘다(可愛い)」は「예쁩니다(可愛いです)」になる。一方、子音字母で終わる 語幹には/ㅡ/を挿入してから「ㅂ니다」、即ち「읍니다」を付ける。例えば、「먹다(食 べる)」を「食べます」に変えると、「먹읍니다」となる。これも前記したように語幹と語 尾の境界に連子音を回避するために設けられた同種の文法的装置であるといえよう。た だ、一九八八年の改正(国立国語院)によって、この「읍니다」は「습니다」に統一され たため4、今の標準語では「먹습니다」となっている。現在は例外的に連子音が許容され る形になっているが、もともと連子音の回避という力が働いていた表現といえ、指導の際 に注意が要される。 1−3.例外  連子音による発音の変化には例外がある。例えば、「놀다」は[놀다]そのままに発音 される。直観的考察ではあるが、その理由として考えられるのが舌先を口蓋に曲げて付け る弾舌音/ㄹ/から舌先をそこから離す/ㄷ/に移る動きは非常にスムーズであり、連子 音における特有な相互影響や干渉が発生しないからであろう。また、「결혼(結婚)」が [겨론]と発音されるように、/ㅎ/の脱落現象も連子音からではなく、もともとこの子 音が持つ発音上の特徴から起こると考えられる。つまり、子音/ㅎ/は喉から舌・歯・唇 などによる屈折や摩擦を通して音色を形作る他の子音とは異なり、息の強さだけで発音さ れる喉頭摩擦音である。日常の言語生活の中、二音節以下は息が弱くなり、二音節以下に ある/ㅎ/はほぼ発音されない状態になる。これが/ㅎ/の脱落現象を起こし、多くの場 合は連音化を伴う。  助詞や語尾を付ける時も、連子音が許容される場合がある。例えば「과・와(と)」の 内、母音字母で始まる助詞「와」は終声の閉音の後に付け、連子音を避けるべきである が、この場合はなぜか逆の形をとる。つまり、「산와(山と)」ではなく、「산과(山と)」 とし、敢えて連子音を迎える。その理由として考えられるのが単語を列挙する場合、意思

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疎通のために一つ一つの単語を切って正確に読んで伝える必要があるからではなかろう か。この場合、連音化はむしろ意思疎通を妨害し、避けるべき現象であり、これを防ぐた めに終声で終わる単語に敢えて「과」を付け、連子音を許容すると考えられる。検証は難 しいが、現状は明らかに他の助詞とは異なる特徴を見せる。  語尾の場合も連子音は子音同士の組み合わせによって許容される場合がある。例えば、 子音で終わる語幹を持つ用言に「고(て)」・「지만(が)」・「거나(たり)」のような連結 語尾や、「죠(ましょう・でしょう)」・「자(しよう)」のような終結語尾を付ける場合、 子音が並ぶことになるが、発音の困難はほぼないので、連子音は許容される(濃音化が伴 う場合がある)。その理由はやはり子音同士の組み合わせによって連子音の回避現象が選 別的に行われるからであろう。何れの子音も軟口蓋音/ㄱ/または/ㅈ/と組み合わされ ると、調音における物理的困難はないため、連子音は許容されると考えられる。同様の理 由で、何れの子音字母+「습니다」も連子音は許容される。例えば、「먹습니다」・「춥습니 다」・「앉습니다」・「읽습니다」などは語尾に濃音化を招くものの、語幹の終声を正確に発 音するのに問題はないので、連子音は許容されたと見える。  また、連結語尾「는데」・「느냐」・「느니」なども、活用の際に連子音が許容される。例 えば、「받는데」・「심느냐」・「갚느니」のように/ㅡ/を挟まず、語尾をそのまま付ける。 その理由は定かではないが、/ㅡ/を挟むと、「받으는데」・「심으느냐」・「갚으느니」の ように、/ㅡ/母音が続くことになり、発話の効率を著しく落とす結果になる。「니까」・ 「세요」が/ㅡ/を挟み、発音の困難を打開したのと対照的である。  総合すると、発音の変化は連子音による発音上の物理的困難を回避するための有効な手 段である。また、体言の曲用の際に二通りの助詞を設けたり、用言の活用の際に語幹と語 尾との境界に/ㅡ/を挿入したりすることも、連子音による調音器官や調音方法の急激な 移動を円滑にするための工夫と考えることができるのである。 2.連母音の回避 2− 1.発音の変化  母音字母は子音字母の三層製字構造5と同様、単母音・二重母音(ヤ行)・二重母音(ワ 行と/의/)6と構成されるが、これは少ない字母で多様な音素を表すことができると同 時に、より多くの一音節の単語を作るのにも役立ち、言語運用の効率性を高めてくれる。 現代韓国語の連母音は二重母音字母に見られる。例えば「귀(耳)」・「쇠(金)」・「뫼 (山)」・「쥐(ネズミ)」のような一音節の単語は二重母音字母7の存在によってその数を 増やすことが可能になり、表記の弁別性を高める機能をする。また、二重母音字母の存在 は活用の際に表記上連母音を回避しやすくする機能も担っている。

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 一方、音節間で見られる連母音がある。例えば、「고아(孤児)」・「수업(授業)」など の漢字語は各々[과]・[쉅]と読まれず、連母音は許容される。反対に、固有語には「아 이(子ども)」が「애」に、「이야기(話)」が「얘기」に、「오이(きゅうり)」が「외」 に、「무엇(何)」が「뭣」になるなど、連母音の回避現象が見られる。  以下では、入門教科書が取り扱う曲用や活用に見受けられる助詞と語尾における同意別 形の選択・縮約・濶音・脱落を通して、連母音の回避現象と文法との相関性を確認する。 2−2.曲用と活用  韓国語の用言、即ち動詞・形容詞・指定詞・存在詞は語幹+語尾の形で活用される。し かし、どこまでを語幹と見るべきかによって、伝統式と語基式に分かれる。伝統式は語幹 を固定し、残る部分を語尾とするが、語基式では日本語と同様に語尾を固定し、残る部分 を語基と見る。本稿では伝統式をとり、連母音の回避現象を見ていきたい8  曲用の際に連母音を回避するために、助詞を二通りに設けるのは連子音の場合と同様で ある。体言が母音で終わる場合、そこに付ける助詞は母音で始まる「이(が)」「은(は)」 「을(を)」「으로(で)」ではなく、各々「가」「는」「를」「로」となり、結果的に連母音 を回避することになる。例えば、「海(바다)+は」の場合、「바다+은」ではなく、「바다 +는」とし、母音字母+子音字母という順を整え、円滑な発音と明瞭な意思疎通を図る。  また、活用の際にも用言の語幹が母音字母で終わり、付ける語尾もまた母音字母で始ま ると、母音字母同士が並ぶ連母音になる。この場合、発音の過程で両母音は両方の音価を 代表する一つの母音字母にまとまる。本稿では子音の場合と同様、この現象を連母音の回 避と理解したい。例えば、「가다(行く)」に終結語尾「아요」を付けて「行きます」に変 えると、「가다」は「가+아요」となり、二つの/ㅏ/母音字母は一つに縮約され、「가 요」になる。また、「서다(立つ)」に「어요」を付けて「立ちます」に変える場合、「서 +어요」となり、二つの/ㅓ/母音字母は一つに縮約され、「서요」になるわけである。 これを「母音縮約」という。更に、「기다리다(待つ)」に「어요」を付けて「待ちます」 に変える場合、「기다리+어요」になり、/ㅣ/と/ㅓ/の二つの母音字母は融合され、 同音価の/ㅕ/にまとまるので、「기다려요」となる。これを「濶音化」という。  一方、母音同士が一つの母音に縮約されない場合、つまり二つの母音字母の音価を同時 に満足させる母音字母が存在しない場合、音価の強い母音字母のみが残る9。何れの場合 でも連母音は許されないのが決まりである。例えば、「크다(大きい)」に「어요」を付け て「大きいです」に変える場合、「크+어요」になり、/ㅡ/と/ㅓ/の二つの母音字母 が融合されると、/ㅡ/はほぼ実現されず、結果的に/ㅓ/だけ残り、「커요」となる。 「담그다」も「담그+어요」であり、/ㅓ/だけが残り「담거요」となる。ただ、この場

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合は母音調和によって「거」の/ㅓ/母音字母が/ㅏ/に入れ替えられ、「담가요」とす るのである。これを「脱落」という。  これと反対に語尾「어요」の「어」が脱落するものがある。例えば、「세다(強い)」に 「어요」を付けて「強いです」に変える場合は、語幹の/ㅔ/と語尾の/어/は両者の音 価を満足させる母音字母はなく、前舌母音と後舌母音との組み合わせという調音の位置 上、縮約ないし濶音化も起きない。この場合は両母音の内により強い音価のみを残して、 「세요」とする。このような例は他にも「보내다」が「보내요」となるなど、多く見られ る。  連結語尾の「서(て、ので)」も、上記した終結語尾の「요」と同様に「아」または 「어」を挟んで語尾を構成し、語幹と結合して円滑な発音を図る。よって生じる連母音の 問題は縮約・濶音・脱落を通して解消するのは「요」と同じである。例えば、「사다(買 う)」に「아서」を付けて「買って」を作る場合、「사+아서」になるが、二つの/ㅏ/母 音字母は縮約され、「사서」にまとまる。  疑問になるのはなぜ「서」は「면」・「니까」など子音字母で始まる他の連結語尾や終結 語尾とは違って、「으」を挿入するのではなく、「아・어」を入れて連子音を回避するのか ということである10。今後の論証が求められるが、敢えてその背景を挙げてみると、調音 の位置関係からその理由を探ることができるだろう。つまり、「아・어」(低舌開母音)は 「으」(高舌閉母音)より「서」の/ㅓ/と舌や唇の調音位置が近く、発音の便宜があるか らではなかろうか。例えば、「먹으서」より「먹어서」が、「받으서」より「받아서」が発 音しやすい。他に「아도・어도(ても)」も同様で、「으」より「아・어」が「도」の/ ㅗ/と舌の調音位置が近い母音である。反対に「면」の/ㅕ/と「니까」の/ㅣ/が先行 する媒介母音に/으/を取る理由は同じ平唇閉母音であり、開母音「아・어」とは調音位 置がより遠いという点が働いたのであろう。  上記した例からわかるように、連母音の場合、同じ二つの母音字母は一つに、異なる二 つの母音字母は両方が縮約した音価に該当する別の母音字母にまとまる。ただ、融合した 音価に該当する母音字母がない母音同士の場合は、より強い母音のみを残すという仮説を 立てることができる。 2−3.例外  上記したように、連母音による発音の変化は止揚される。例えば、「나무(木)+에 (に)」から/ㅜ/と「에」を縮約し、[나뭬]と読むことは許されない。その理由は勿論、 助詞という記票を守るために切って発音するからであり、これによって連母音の現象は存 在しないことになる。これは発音の便宜より、文法的機能を重視し、意思疎通を選んだた

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めであろう。  また、曲用の際にも連母音の回避現象が起きない場合がある。すでに挙げた「에」・「에 서」・「에게」は閉音節と開音節両方に付けられる助詞であり、開音節で終わる体言に付 き、形式上連母音を作る。この連母音によって起きる意思疎通の乱れは上記した「나무 에」で見たように、切って発話することで解消される。  活用の際にも連母音の回避には例外がある。例えば、「뛰다(走る)」を「走ります」に 変える場合、語幹「뛰」に「어요」を付け、そのまま「뛰어요」とする。/ㅟ/と/어/ との組み合わせは一つの母音でまとめることはできないだけではなく、前舌円唇母音と後 舌平唇母音という差もある。にもかかわらず、どちらか音価のより強い母音を残す「커 요」や「세요」とは違って、両方を共に残している。「되다(なる)」も同様で、/ㅚ/と /어/はそのまま残り、「되어요」(これが縮んで「돼요」)とし、連母音は許される。つ まり、二重母音と単母音との組み合わせは縮約・融合・脱落せず、許容されるわけであ る11 3.連子音と連母音の回避現象による発音と文法の理解  本稿で提示する韓国語の教授法は入門クラスにおいて発音の変化と文法的装置との相関 性、即ち連子音と連母音の回避現象が両者において重要な機能を果たすという点に注目 し、学習者に発音と文法を統合的に理解させるものである。  発音の変化と様々な文法的装置が言語生活の便宜と円滑な疎通のために設けられたこ と、そして両者は緊密に相互影響を及ぼし、その発音に特化された文法へ展開したことは 韓国語のみならず、言語一般に広く認められる理解であろう。しかし、このような理解は 研究の領域ではよく見かけられるが、教育の方面では発音と文法の関係を各々完結した学 習対象と捉え、段落的に教えるのが現状である。たとえば、大学で使われる多くの韓国語 入門教科書はまずハングルの字母と発音方法を述べ、次に韓国語の文法や表現を載せる が、両者の間に存在する相関性に関しては紙面を与えず、教師の随意的判断に任せられて いる。即ち、なぜ発音の変化が起きるのか、曲用の助詞がなぜ二通りあるのか、活用の語 尾はなぜ様々な形で語幹と結合するのかに関しては、入門における煩雑さを避けるため か、何れも記述されていない。  しかし、上記したように発音の変化は連子音と連母音の回避によるものが多く、韓国語 の文法における独特な曲用や活用の展開も両者の回避に起因するところが多い。教育の現 場でも二重母音の製字や鼻音化などの発音の変化に関する説明、同意異形の助詞や語尾の 成立と選択、活用における規則性と不規則性などを説明する際には、随意的ではあるが、 連子音と連母音の回避という現象が指摘されている。問題は、その表現が子音連鎖・子音

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縮約・母音挿入・母音衝突など一貫性を欠いており、この現象を学習者自らが発音と文法 を貫く一つの支配原理として捉えるのは難しいことである。  ところが、連子音と連母音の回避現象を用いれば、発音の変化や様々な文法的装置を作 る理由を短い時間に分かりやすく説明すると同時に、発音と文法を一つの原理によって連 続的に理解させることができる。その流れ筋を挙げると次のようである。まず、連子音が 許容される場合と回避される場合の例をそれぞれ取り上げる。そして、両者が語幹の末音 節終声と語尾の初音節初声に当たる両子音の音韻的相性によって決まることを説明する。 それから、発音の主な変化は連子音を回避する方便であることを指摘する。また、曲用と 活用の際にも、母音で始まる助詞をつけたり、連子音同士の境界に媒介母音を挿入したり して連子音を回避することを説明する。同じように、連母音が許容される場合と回避され る場合の例をそれぞれ取り上げる。そして、連母音が回避される場合に、語幹の末音節中 声と媒介母音に当たる両母音との音韻的相性によって母音字母の縮約・融合・脱落が起き ることを説明するのである。  本稿でいう音韻的相性とは、連子音と連母音における調音の位置と方法の移動又は転換 に物理的無理があるのかないのか、意思疎通の便があるのかないのかを基準とするが、音 韻論的に検討すべきものは多く残されている。また、従来の教授法に比べ、連子音と連母 音を介した教授法が果たしてどれ程、学習者の学習負担を軽減し、効率を高められるかに 関する計量的調査が必要であろう。ただ、日本語を母語とする学習者において、韓国語は 親しみやすい外国語であり、だからこそ両者間の発音的・文法的相異に関する疑問はより 本質的な問題になるはずである。これらの多くが連子音と連母音の存在によるものであ り、これらを回避するために、言い換えれば円滑な発音と明確な意思疎通のために、日本 語には見られない様々な発音の変化と文法的装置が設けられたことを理解することは、学 習内容に対する受容力を向上させるに大きな役割を果たすことは確かであろう。 おわりに  これまで、現在通用される韓国語の入門教科書において取り扱われる発音の変化と曲 用・活用を主な対象に、連子音と連母音の回避現象を通して、発音と文法を統合的に概観 した(表)。発音の変化には鼻音化・流音化・濃音化・激音化などが、曲用と活用には助 詞「이」・「은」・「을」・「으로」、連結語尾「아서・어서」・「으면」、終結語尾「으세요」な どがあり、すべて連子音を回避する目的で起きる発音の変化であり、文法的装置であると いえよう。  一方、「가」・「는」・「를」・「로」は連母音を避けるために設けられた助詞である。また、 連結語尾「아서・어서」と終結語尾「아요・어요」は語幹の母音(中声)と結合して連母

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音を作るが、この場合は縮約・融合・脱落などの回避現象が起きる。その理由はやはり連 子音と同様、発音上の問題を解決し、運用の効率を高めるための工夫であると考えられ る。このような理解は連子音・連母音の回避現象における例外、例えば助詞「와・과」や 連結語尾「지만」を通しても裏付けられる。  本稿は韓国語の初級学習者に連子音・連母音の回避という現象を通して発音と文法を統 合的に教えることで期待できるメリットを、教育現場での経験に基づいて述べ、関連研究 者や教師にその妥当性と問題点を問うものである。そのメリットとは、連子音や連母音の 回避現象を発音と文法を貫く一つの原理として教えることで、難解で複雑な学習内容がよ り分かりやすく秩序付けられること。また、この原理を理解することで、巨視的観点から ハングルと韓国語の仕組みが眺望できる効果も期待できることである。今後の課題として は、現在形態音韻論から盛んに分析されている活用の不規則性に関しても、連母音と連子 音の回避という現象による考察を行い、この現象の普遍的適用可能性を確かめたい。 連子音の回避 発音の変化 鼻音化・濃音化・激音化・流音化など 助詞 体言の子音語幹+이・은・을・으로など 語尾(으・아/어の挿入) 用言の子音語幹+으면・으니까・으세요・아서/어서・아도/어도 など 例外 体言の子音語幹+과 用言の子音語幹+고・지만・죠・자・습니다など 連母音の回避 助詞 体言の母音語幹+가・는・를・로など 語尾(縮約・融合・脱落) 用言の母音語幹+아요/어요・아서/어서・아도/어도など 例外 体言の母音語幹+에・에서など 体言の母音語幹+와 用言の二重母音語幹+아요/어요・아서/어서・아도/어도など 1. 先行研究では「連子音」を「隣接子音」または「子音連鎖」、「連母音」を「母音衝 突」とするが、本稿では子音と母音が並ぶ現象自体に着目し、両者を対称的に捉える ために「連子音」と「連母音」という造語を使う。 2. 近年発表されたものには、新保朝子の「한국어 자음의 내적구조와 음운현상의 연

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구(韓国語子音の内的構造と音韻現象の研究)」(韓国外国語大学博士論文、2016 年)、 노채환の「(한국어 ㄷ-、ㅂ-、ㅅ- 불규칙용언에 대한 지배음운론적 접근(韓国語 ㄷ -、ㅂ-、ㅅ- 不規則用言に対する支配音韻論的接近)」(『言語と言語学』66 号、 韓国外国語大学言語研究所、2015 年)、김성욱の「/nl/연쇄에서 유・비음화 현상 에 대한 음운론적 제약과 지배음운론적 분석(/nl/連鎖で流・鼻音化に対する音韻 的制約と支配音韻論的分析)」(『言語学』27 号、韓国言語学会、2015 年)、김선정の 「한국어 음운현상에 나타난 결합 작용과 분해 작용(韓国語音韻現象に現れた結合作 用と分解作用)」(『語文学』69 輯、韓国語文学会、2000 年)などがある。 3. 並ぶ子音が音素配列制約(支配位階)から外れた場合、この制約に合わせるために調 整することで起きる音韻現象である。音素配列制約とは並ぶ二つの子音の中、先行す る子音は後行する子音より強くなってはいけないことである。子音強度は流音<鼻音 <平音<激音・濃音の順に大きくなる。 4. 標準語規定第 17 項「似た発音の形態が複数使われる場合、その意味に差がなければ 最も広く使われる形態を標準語とする」によって替えられたが、その背景には「있 다」・「없다」のように頻繁に使われる存在詞の存在があったと考えられる。つまり、 この存在詞「있읍니다(あります)」・「없읍니다(ありません)」は連音化によって [이씀니다]・[업슴니다]と発音されており、ここで使われる[슴니다]が他の用言 にも影響を及ぼしたのであろう。そこに[슴니다]の/ㅅ/は何れの子音とも発音上 の相性がよかった点も、「읍니다」の代わりに「습니다」が用いられるようになった 一つの理由かもしれない。 5. 子音字母の提示方法は発音に基づくか、製字原理に基づくかによって様々であるが、 ここでは製字原理を基準とし、子音字母の三層構図を平音・激音・濃音とする。即 ち、母音字母の三層構造と同様、第一層に平音を、平音の字母に/・/を加え第二層 の激音を作り、平音字母を二つ重ねて第三層の濃音を作る。 6. 教科書によっては基本母音字母・合成(複合)母音字母、単母音字母・重母音字母、 単母音字母・半母音字母+単母音字母(ヤ行とワ行)・二重母音字母など、さまざま な提示方法があるが(熊谷明泰「朝鮮語教育と学習書の現状について―母音解説で見 られる問題点を中心として」『関西大学研究センター報』26 号、2000 年)、本稿では 単母音字母、単母音字母に/・/を加えた二重母音字母(ヤ行)・単母音字母を二つ 重ねた二重母音字母(ワ行と「의」)の三層構造の提示法を取る。 7. 「위」・「외」は現在単母音として扱われており、二重母音としての発音も許容されて いる。 8. 中西恭子「韓国語の文法教授法に対する一考察―伝統式と語基式―」『人文論叢』第

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五号、京都女子大学人文学会、2011 年。 9. 子音のような音素配列制約が母音にも想定されているのか、筆者は知らない。しか し、母音にも息の強い前舌単母音「이」「에」から「오」「우」「아」「어」「으」をへ て二重母音へという順に強度の差が認められ、連母音の場合には何れか強い母音が残 るという仮説を立てることも可能であろう。 10. 一方、「아요・어요」の「아・어」はそれ自体で文法的機能を持っているだけではな く、記票「요」を守る役割も果たす。例えば、「만들다」に「요」を直接付けると、 [만드료]と発音されるように、먹다は[머교]、「젊다」は[절묘]と実現される。 「ます・です」にあたる終結語尾「요」に「아・어」が先行しないと、語幹の様々な 終声が連音化されることによって、「요」という記票は実現されないのである。とこ ろが、同じく「아・어」が先行する「서」の場合、これらは連子音を回避する媒介母 音として「으」と同じ役割を果たしており、両者の機能が異なることが分かる。 11. 音素配列制約が母音にも適用されうるとすれば、縮約や融合のできない場合は連母音 を回避するために何れか弱い母音が脱落すべきであろう。すでに挙げた「세요」・「보 내요」は右の母音「어」が左の母音「ㅔ」・「ㅐ」より弱いため、音素配列制約の違反 によって脱落したと考えることができる。無論、語幹の母音は脱落できないからでも あろう。ただ、「뛰어요」「되어요」の場合は右の母音「어」が左の母音「ㅟ」又は 「ㅚ」より強いため、音素配列制約に適合しており、「요」の発音を明瞭にするために も「어」は残したと考えられるのである。母音の強度は注 9 を参照。 参考文献 新保朝子「한국어자음의 내적구조와 음운현상의 연구(韓国語子音の内的構造と音韻現象 の研究)」、韓国外国語大学博士論文、2016 年。 中西恭子「韓国語の文法教授法に対する一考察―伝統式と語基式―」『人文論叢』59 号、 京都女子大学人文学会、2011 年。 熊谷明泰「朝鮮語教育と学習書の現状について―母音解説で見られる問題点を中心とし て」『関西大学研究センター報』26 号、2000 年。 이진호「일본의 한국어 음운론(日本の韓国語音韻論)」『国語学』77 輯、国語学会、2016 年。 김성욱「/nl/연쇄에서 유・비음화 현상에 대한 음운론적 제약과 지배음운론적 분석 (/nl/連鎖で流・鼻音化に対する音韻的制約と支配音韻論的分析)」『言語学』27 号、

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韓国言語学会、2015 年。 노채환「한국어 ㄷ-、ㅂ-、ㅅ- 불규칙용언에 대한 지배음운론적 접근(韓国語ㄷ-、 ㅂ-、ㅅ- 不規則用言に対する支配音韻論的接近)」『言語と言語学』66 号、韓国外国 語大学言語研究所、2015 年。 노채환「한국어 음절핵의 해석과 음운현상 연구(韓国語音節核の解釈と音韻現象の研 究)」韓国外国語大学博士論文、2015 年。 박기영「한국어 음운론과 한국어 발음 교육의 상관성에 대한 일고찰(韓国語音韻論と韓 国語発音教育の相関性に対する一考察)」『語文論集』43 輯、中央語文学会、2010 年。 김선정「한국어 음운현상에 나타난 결합 작용과 분해 작용(韓国語音韻現象に現れた結合 作用と分解作用)」『語文学』69 輯、韓国語文学会、2000 年。

参照

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