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ファルヴォ事件連邦最高裁判所判決全訳と解説 : アメリカ合衆国FERPAにおける「教育記録」の定義と第三者開示

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全文

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フ ァル ヴ ォ事 件 連 邦 最 高 裁 判 所 判 決

全 訳 と解 説

アメ リカ合衆 国FERPAに

おける 「

教育記録」の定義 と第三者 開示

Owasso Independent School District No.I-11 v. Falvo (U.S.2002, 534 U.S. 426) :

Definition and Disclosure of 'Educational

Records' in the FERPA

(Family Educational Rights and Privacy Act) of the United States

楢﨑

洋 一郎

Yoichiro

Narazaki

要 旨:日 本 の 指 導 要 録 ・調 査 書 の 開 示 請 求 を め ぐ る議 論 に 、 ア メ リカ 合 衆 国 の 「家 族 の 教 育 上 の 権 利 お よ び プ ラ イ ヴ ァ シ ー に 関 す る 法 律 」 い わ ゆ る 「FERPA」 が 影 響 を 与 え た 。 本 稿 で は 、 ま ず 、FERPAに つ い て 解 説 を 付 し、 次 に 、 「教 育 記 録 」 の 定 義 と 第 三 者 開 示 が 争 点 と な っ た フ ァ ル ヴ ォ 事 件 連 邦 最 高 裁 判 所 判 決(Owasso  Independent  School  District  No.I-11  v. Falvo (2002))の 全 訳 を 示 し た 。 最 高 裁 判 所 判 決 の 最 大 の 意 義 は 、 学 校 で 教 員 が 用 い る教 育 学 的 な 根 拠 の あ る教 育 方 法 が 、 プ ラ イ ヴ ァ シ ー の 権 利 の 概 念 か ら過 度 の 制 約 を 受 け な い よ う に 配 慮 し た こ と で あ る。 近 代 以 降 の 学 校 教 育 は 集 団 で 行 わ れ て き て お り、 そ の 教 育 学 的 な 意 義 ・効 果 に も十 分 留 意 せ ね ば な ら な い 。 キ ー ワ ー ド:FERPA、 評 価 、 教 育 記 録 、 第 三 者 開 示 、 Falvo判 決 は じ め に   日本 で は 、1990年 代 前 半 、 全 国 の 自治 体 で 児 童 生 徒 ・保 護 者 か ら個 人 情 報 保 護 条 例 に 基 づ く指 導 要 録 ・調 査 書 の 開 示 請 求 が 相 次 い だ1)。 学 説 ・判 例 ・行 政 実 務 で は 、 開 示 消 極 説2)と 開 示 積 極 説3)に 分 か れ て 激 し く 議 論 を 展 開 し た 。 他 方 、1990年 代 後 半 か ら 現 在 に 至 る ま で 、 個 人 情 報 保 護 条 例 に 基 づ く指 導 要 録 ・調 査 書 の 記 載 の 訂 正 請 求 が い くつ か な さ れ て い る4)。 こ の よ う な 日本 の 議 論 に 少 な か ら ず 影 響 を 与 え た の が 、 ア メ リカ 合 衆 国 で1974年 に 成 立 し た 「家 族 の 教 育 上 の 権 利     1)教 育情報開示弁護団=教 育情報の開示を求 める市民の会 『内申書 ・指導要録の開示に関す る審査会答申集(増 補版)』       (1996年)、兼子仁=藤 原 淳一 郎=藤 原静雄=野 村 武司編 「情報公 開等審査会答 申事例集」(ぎ ょうせい、1998年)      を参照。     2)下 村哲夫 「教育情報 自己開示請求」堀部 政男編 「情報公 開 ・個人 情報保護』 ジュ リス ト増刊(1994年)257頁 ヽ平      松毅 「「内申書」 及び 「指導要録 」開示の判断基準 ・再論 」法 と政治45巻4号(1994年)7頁 、 内野正幸 「教育情報      の開示」井 出嘉憲、=兼子仁=右 崎正博=多 賀谷一照編 『講座 ・情報 公開』(ぎ ょうせいヽ1998年)455頁 などを参照。     3)竹 中勲 「調査書(内 申書)の 本人開示請 求権」産大法学25巻2号(1991年)25頁 、市川須美子 「教育 自己情報開示      請求」堀部編 ・前掲注2 254頁、安達和志 「学校情報 の開示 と生徒 の個 人情報 権」 日本教育法学会年報24号(有 斐      閣ヽ1995年)134頁 な どを参照。     4)拙 稿 「生徒 の教育記録 の訂正 につ いて」名古屋市立大学人 間文化研究8号(2007年)173頁 を参照。

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お よ び プ ラ イ ヴ ァ シ ー に 関 す る法 律 」(以 下 「FERPA6)」)で あ る 。 と こ ろ で 、 従 来 の 日本 の 議 論 で は 、 〈プ ラ イ ヴ ァ シ ー の 権 利 論 〉 対 〈教 育 裁 量 論 〉、 あ る い は 〈法 律 論 〉 対 〈教 育 論 〉 と い う対 立 構 造 が あ っ た よ う に 思 わ れ る。 そ し て 、 フ ァ ル ヴ ォ対 オ ワ ッ ソ独 立 学 校 区No.I-11事 件 第10巡 回 区 連 邦 控 訴 裁 判 所2000年10月4日 判 決 と 、FERPAに 関 す る 初 め て の 連 邦 最 高 裁 判 所 判 決 と な っ た オ ワ ッ ソ 独 立 学 校 区No,I-11対 フ ァル ヴ ォ 事 件 連 邦 最 高 裁 判 所2002年2月19日 判 決 は 、 ま さ に こ の 対 立 構 造 の 下 で 示 さ れ た も の で あ っ た と言 え る。 最 高 裁 判 所 判 決 に 関 す る先 行 研 究 と し て は 、 坂 田 仰 「ア メ リカ の 学 校 教 育 に お け る生 徒 の 情 報 プ ラ イ バ シ ー 一"Fa1vo判 決"を 中 心 と し て 一 」 が す で に あ り、Falvo判 決 の 抄 訳 が 示 さ れ て い る5)。 そ こ で 本 稿 で は 、 最 高 裁 判 所 が 、 控 訴 裁 判 所 の 論 理 を 採 用 す る と ど の よ う な 影 響 が 生 じ る と考 え た の か 、 教 育 裁 量 を 尊 重 す る た め に ど の よ う な 法 解 釈 を 行 っ た の か な ど を 全 て 明 ら か に す る た め 、 Falvo判 決 の 全 訳 を 示 す 。 そ れ に よ り、 連 邦 控 訴 裁 判 所 が 採 用 した 〈プ ラ イ ヴ ァ シ ー の 権 利 論 〉 あ る い は 〈法 律 論 〉 と比 較 し、 議 論 の 対 立 構 造 を 考 察 す る た め の 資 料 を 得 る こ と が で き る。 一 解 説 1FERPAと 「教 育 記 録 」 ・第 三 者 開 示 (1)FERPA成 立 以 前 の 生 徒 の 個 人 情 報 保 護 に 関 す る 議 論 ・判 例 ア メ リカ 合 衆 国 の 学 校 教 育 で は 、1950年 前 後 、 生 徒 の 個 人 情 報 を 収 集 し て 、 科 学 的 な 教 育 活 動 の た め に 利 用 す る よ う に な っ た 。1960年 代 に は 、 教 育 界 で も生 徒 の 個 人 情 報 の 保 護 が 意 識 さ れ 始 め 、 生 徒 の 個 人 情 報 の 漏 洩 を 問 題 視 す る形 で 議 論 が 展 開 さ れ た 。 そ し て 、1970年 代 に な り、 ラ ッ セ ル ・セ ー ジ ・ガ イ ドラ イ ン7)が 提 示 さ れ 、 生 徒 の 個 人 情 報 に 対 す る 「開 示 請 求 権 、 訂 正 請 求 権 、 第 三 者 開 示 同 意 権 な ど を 背 景 と す る情 報 当 事 者 自身 の 参 加 に よ る情 報 管 理 の 観 点 」 が も た ら さ れ た8)。 FERPAに 定 め ら れ た 生 徒 の 教 育 記 録 に 対 す る 開 示 請 求 権 、 訂 正 削 除 請 求 権 、 第 三 者 開 示 同 意 5)日 本女子大学紀要家政学部50号(2003年)119頁 。 6)FERPAに 関す る先行研究 としてヽ荏原明則 「教育情報 の公開 とプ ライバ シーの保護 アメ リカの 「家族 の教育上 の権利 およびプ ライバ シーに関す る法律」(FamilyEducationalRightsandPrivacyAct)を 中心 と して一」神 戸学院法学13巻3号(1983年)21頁 ヽ中嶋哲彦 「米国にお ける生徒 と親のプ ライバ シー権一FERPAの 意義 と問題点一」 久留米 大学法学1巻1号(1988年)83頁 、片 山等 「教育情報 にか かわる 「知 る権利」 と 「情報プ ライバ シー権」」星 野安三郎先生古稀 『平和 と民主教育の憲法論」(勤草書房、1992年)373頁 、乳原亨 「教育行政 における情報公開 と 情報保護 アメ リカのFERPAの 概要 とその提起す るものにっいて 」平原春好編 「教育 と教育基本法」(勤草書房、 1996年)372頁 、中嶋哲彦 「生徒個人情報への権利に関す る研究』(風間書房、2000年)が ある。

7)RusselSageFoundation,Guidelines for the Collection, Maintenance and Dissemination of Pupil Records, (NewYork,1970). 8)中 嶋哲彦 は、1960年 代か ら1970年代初め まで の生徒 の個人情報保護 をめ ぐる議論の動向 にっ いてヽ次 の通 りに整理 す る。① 「1960年代には教育界で も生徒のプ ライヴァシーを保護 する必要 が認識 されてお り、制度改革 と して、 ま たは職業 的倫理の問題 と して生徒個人情報 の管理方 針の改革が検討 されていた」。 ② 「生徒個 人情報 保護制度 に関 す る議論 に当事者の権利 と参加を保障す る観点 は、 ラ ッセル ・セー ジ財団の一連の調査研究 とガイ ドライ ン設定 に よる教 育界への積極的 な働 きか けの成果 だった」。③ 「ラッセル ・セー ジ ・ガイ ドライ ンの勧告 は基 本的 に初等 中 等教育機関 を念頭 においた もので、中等後教育機関 は視野 に入れ られて いなか った」。④ 「FERPAの 基本的枠組 み もラ ッセル ・セー ジ ・ガイ ドライ ン継承す る ものだった」。中嶋哲彦 ・前掲注6238-239頁 。

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権 な ど は、FERPA成 立 以 前 に も 裁 判 所 が こ れ ら の 権 利 を 憲 法 の 修 正 条 項 を 根 拠 とす る 権 利 と し て 認 め ら れ つ つ あ っ た9)。 (2)FERPAの 成 立 FERPAは 、1974年8月21日 に 第93連 邦 議 会 で 、 法 律 第380号 の 一 部(以 下 「オ リ ジ ナ ル FERPA」)と して 成 立 し た 。 バ ッ ク レ ー 上 院 議 員 は 提 案 理 由 を 次 の 通 り に 述 べ た 。 第 一 に 、 「親 が そ の 子 ど も の 学 校 の 記 録 に ア ク セ ス す る権 利 を 有 す る こ と を 確 保 す る よ う に 助 け る」。 第 二 に 、 「学 生 お よ び そ の 親 に つ い て の 記 録 お よ び 一 身 上 の 資 料 等 の 濫 用 や 不 適 切 な 開 示 を 防 ぐ」。 第 三 に 、 「学 生 記 録 が ほ と ん ど の 第 三 者 に 開 示 さ れ る 前 に 、 親 の 同 意 を 要 求 す る 」。 第 四 に 、 「子 ど も が 一 定 様 式 の 試 験 を 受 け る 時 な ど に は 、 事 前 に 親 の 同 意 ま た は 告 知 を 要 求 す る」。 第 五 に 、 「教 室 内 で 使 用 さ れ る教 授 上 の 資 料 を 、 要 求 に よ り親 に よ る審 査 の た め に 使 用 さ せ る」10)。 し か し、 オ リ ジ ナ ルFERPA成 立 直 後 か ら大 学 関 係 団 体 を 中 心 に 改 正 を 要 求 す る議 論 が 提 起 さ れ た 。 そ し て 、1974年12月31日 に 第93議 会 で 、 オ リ ジ ナ ルFERPAは 法 律 第568号 に よ り改 正 さ れ た(以 下 「改 正FERPA」)。 バ ッ ク レ ー 、 ペ ル 両 上 院 議 員 は 提 案 理 由 を 次 の 通 り に 述 べ た 。 第 一 に、 「本 法 の 適 用 が 及 ぶ 機 関 を 『教 育 機 関 ・施 設 』(educationa1agencyorinstitution)と て 明 確 に 定 義 し た 」。 第 二 に 、 「親 が 子 ど も の 教 育 記 録 の 内 容 を 争 い う る権 利 … に つ い て … ① 聴 聞 を 求 め う る 時 期 等 … ② 本 法 の 対 象 と な る記 録 … ③ ア ク セ ス で き な い 場 合 に つ い て … ④ 手 続 」 に 関 す る規 定 を 整 備 し た 。 第 三 に、 「個 人 の 『直 接 的 情 報 』(directryinfomation)に つ い て の 取 扱 を ゆ る め た 」。 第 四 に 、 「推 薦 状 に つ き1975年1月1日 前 に 作 成 し た も の を 非 公 開 」 に し た 。 第 五 に 、 「親 の 財 産 記 録 へ の 学 生 本 人 に よ る ア ク セ ス の 制 限 、学 生 に よ る ア ク セ ス 権 の 放 棄 の 法 定 、 … 教 育 情 報 を 開 示 し う る第 三 者 を 列 挙 」 し た11)。 (3)改 正FERPAの 概 要 改 正FERPAは 、 ① 「生 徒 の 親 に 対 して 、 子 の 教 育 記 録 を 閲 覧 し点 検 す る 権 利 を 否 定 す る政 策 を 持 ち 、 ま た は 事 実 上 妨 げ る場 合12)」、 ② 「親 の 書 面 に よ る 同 意 を 得 ず に 生 徒 の 教 育 記 録 … の 、 個 人 、 機 関 ま た は 組 織 へ の 開 示 を 認 め る 政 策 を 持 ち 、 ま た は そ の よ う な 運 営 を 行 う13)」よ う な 9)中 嶋哲彦 は、FERPA成 立 以前の判例 の動 向について、次の通 りに整理 する。① 「憲法修正条項 に もとつ いて、親 には子 の教育 をコン トロールす る権利 として教育権が保障されているとの主張 が展 開された。… しか しヽ その反面、 生徒個人情 報開示請求権 は生徒 が 自分 自身 の個人情報 を閲覧す る権利 と しては展 開 されて こなか った」。② 「FER PA成 立以前 に教育 機関の違法 な判 断に基 づいて なされた記載 の訂正削除請求 を認め る判決が あ ったがヽ生徒個人 情報 の訂 正削除請求権 については裁判所 の判 断は定ま って いなか った」。③第 三者開示拒否権 にっいて 「これ は学 校 ・教職員 と親 との信頼関係維持を根拠 にヽ他 の市民 による公文書 公開請求権の主張 に対抗す るものと して認 め ら れつっあ った」が、 「いわ ゆる守 秘義務が免除 される コ ミュニ ケー ション…な どに関 してヽ親 が第三者開示 を拒否 す る権 利が認め られ た事 例は見出 され なかった」。④ 「収集が不当で ある場 合、 また はプライヴ ァシーを不当 に侵 害 す る情 報を収集す る場 合に裁判所が生徒個人情報 の収集制限 を認 めた事例が あ」 ったがヽ「学 校 ・教職員 による 情報収集 その ものを制約 した事例 は見 られ」 なか った。 中嶋哲彦 ・前掲注6269-270頁 。 10)120cong.Rec.13952.荏 原 明則 ・前掲注638-39頁 を参照。

11)Joint statement in Explanation of Buckley/Pell Amendment,120 Cong.Rec.39862-39863,荏 原明則 ・前掲 注64 1-42頁を参照。

12)20U.S.C.Sec.1232g(a)(1)(A). 13)20U.S.C.Sec.1232g(b)(1).

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「教 育 行 政 機 関 ま た は 教 育 機 関 は 、 連 邦 財 政 援 助 を 利 用 で き な い 」 と 定 め る 。 ま た 、 学 校 記 録 が 「不 正 確 で な く、 誤 解 を 与 え ず 、 生 徒 の プ ラ イ ヴ ァ シ ー そ の 他 の 権 利 を 侵 害 し な い こ と を 確 保 す る」 た め に 、 ① 「学 校 記 録 の 内 容 に 異 議 を 申 し立 て る」 権 利 、 ② 「デ ー タ の 修 正 ま た は 削 除 」 お よ び 「親 の 弁 明 書 を 当 該 記 録 に 付 け 加 え る」 た め の 機 会 を 与 え る た め 、 「教 育 長 官 が 定 め る 規 定 に 基 づ い て ヒ ア リ ン グ の 機 会 を 保 障 さ れ て い な い 場 合 」、 そ の よ う な 「教 育 行 政 機 関 ま た は 教 育 機 関 は 、 連 邦 財 政 援 助 を 利 用 で き な い 」 と定 め る14)。 (4)「 教 育 記 録 」 の 定 義 改 正FERPAで は 、 「教 育 記 録 」 の 定 義 と して 、 「記 録 、 フ ァ イ ル 、 文 書 、 そ の 他 の 資 料 で あ っ て 、(i)特 定 の 生 徒 に 直 接 関 連 あ る情 報 を 含 み 、 か つ(i)教 育 行 政 機 関 ま た は 教 育 機 関 、 若 し く は そ れ ら の た め に 活 動 す る 者 に よ っ て 保 管 さ れ る 」 も の を 意 味 す る と 定 め る15)。「特 定 の 学 生 ・生 徒 に 直 接 関 連 あ る情 報 」 と は 、 特 定 の 学 生 ・生 徒 に つ い て の 事 実 、 評 価 、 診 断 等 の 情 報 で あ り、 か つ 、 情 報 当 事 者 で あ る 学 生 ・生 徒 を 特 定 で き る 情 報 を 意 味 す る16)。「教 育 行 政 機 関 ま た は 教 育 機 関 、 若 し く は そ れ ら の た め に 活 動 す る者 」 と は 、 例 え ば 、 教 育 委 員 、 教 育 委 員 会 事 務 局 職 員 、 学 校 管 理 職 、 教 職 員 、 カ ウ ン セ ラ ー 、 学 校 心 理 学 者 、 学 校 医 、 学 校 看 護 師 、 警 備 員 な ど が 含 ま れ る17)。 他 方 、 「教 育 記 録 」 か ら除 外 さ れ る 記 録 と し て 、 ① 教 職 員 の 個 人 メ モ 、 ② 法 執 行 記 録 、 ③ 雇 用 関 係 記 録 、 ④ 学 生 の 治 療 ・相 談 記 録 を 列 挙 す る18)。Fa1vo事 件 と の 関 連 で は 、 ① 教 職 員 の 個 人 メ モ の 要 件 と して 、FERPA施 行 規 則 で は 「教 職 員 等 が 単 独 で 作 成 し た 文 書 で あ る こ と 」、 「他 の 教 職 員 に 閲 覧 さ せ な い こ と(た だ し、 臨 時 代 替 教 職 員 へ の 開 示 を 除 く)」 に 整 理 さ れ る19)。 (5)「 教 育 記 録 」 の 第 三 者 開 示 FERPAで は 、 「教 育 記 録 」 の 第 三 者 開 示 へ の 同 意 権 に つ い て 、 「親 の 書 面 に よ る 同 意 を 得 ず に 生 徒 の 教 育 記 録 の 個 人 、 機 関 ま た は 組 織 へ の 開 示 を 認 め る政 策 を 持 ち 、 ま た は そ の よ う な 運 営 を 行 う教 育 行 政 機 関 ま た は 教 育 機 関 は 、 い か な る利 用 可 能 な プ ロ グ ラ ム の 下 で も連 邦 財 政 援 助 を 利 用 で き な い 」 と 定 め る20)。第 三 者 開 示 同 意 権 の 保 障 は 、 当 事 者 が 望 ま な い 第 三 者 に よ る 教 育 記 録 の 閲 覧 に よ り プ ラ イ ヴ ァ シ ー が 侵 害 さ れ る こ と を 防 止 す る こ と を 目 的 と し て い る。 他 方 、 第 三 者 開 示 禁 止 の 例 外 と し て 、 ① 正 当 な 教 育 的 関 心 を 持 つ と認 定 さ れ た 職 員 へ の 開 示 、 ② 教 育 プ ロ グ ラ ム の 監 査 ・評 価 に 従 事 す る者 へ の 開 示 、 ③ 経 済 的 援 助 に 関 連 す る事 務 に 従 事 す る 者 へ の 開 示 、 ④ 研 究 開 発 を 行 う組 織 へ の 開 示 、 ⑤ 学 校 評 価 機 関 へ の 開 示 、 ⑥ 緊 急 事 態 、 ⑦ 少 年 司 14)20U.S.C.Sec.1232g(a)(2). 15)20U.S.C.Sec.1232g(a)(4)(A). 16)中 嶋哲彦 ・前掲注644頁 を参照。 17)中 嶋哲彦 ・前掲注644-45頁 を参照。 18)20U.S.C.Sec.1232g(a)(4)(B)(i),(ii),(iii),(iv). 19)34C.F.R.Sec.99.3"EducationRecords",中 嶋哲彦 ・前掲注649頁 を参照。 20)20U.S.C.Sec.1232g(b)(1).

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法 に 関 連 し て 法 令 で 開 示 す る こ と が 容 認 さ れ て い る場 合 、 ⑧ 司 法 命 令 ま た は 召 喚 状 に よ っ て 求 め ら れ た 開 示 、 ⑨ 学 内 暴 力 犯 罪 の 容 疑 者 に 対 す る懲 戒 処 分 内 容 等 の 被 害 者 へ の 開 示 、 ⑩ 被 扶 養 学 生 の 親 へ の 開 示 、 ⑪ 入 学 ・転 校 先 へ の 開 示 を 列 挙 す る21)。こ れ ら の 類 型 に 属 す る 個 人 情 報 は 、 親 ま た は 学 生 の 事 前 同 意 は 必 要 な く、 親 ま た は 学 生 が 開 示 を 拒 否 す る こ と は で き ず 、 原 則 と し て 情 報 当 事 者 に 開 示 を 告 知 す る必 要 は な い 。 ま た 、 開 示 記 録 を 作 成 ・保 管 し な け れ ば な ら ず 、 開 示 さ れ た 者 は 再 開 示 の 禁 止 と、 使 用 後 破 棄 の 義 務 を 負 う22)。 2フ ァ ル ヴ ォ事 件 の 事 実 と 裁 判 (1)事 実 ク リス ト ヤ ・J・ フ ァ ル ヴ ォ(KristiaJ,Fa1vo)の3人 の 子 、 エ リ ザ ベ ス ・プ レ タ ン、 フ ィ リ ッ プ ・プ レ タ ン 、 お よ び エ リ カ ・プ レ タ ン は 、 オ ク ラ ホ マ 州 ト ゥ ル サ 郊 外 の オ ワ ッ ソ 独 立 学 校 区 (Owasso  Independent  Schoo1  DistrictNo.1-11)で 就 学 し て い た 。 こ の 子 ど も 達 の 教 員 は 、 ア メ リ カ 合 衆 国 の 多 く の 教 員 と 同 様 に 、 生 徒 相 互 採 点(peer  grading)と い う 教 育 方 法 を 用 い て い る。 典 型 例 と し て は 、 生 徒 達 が 相 互 に 答 案 を 交 換 し て 教 員 の 指 導 に 従 っ て 採 点 し、 そ の 後 本 人 に 答 案 を 返 す 。 教 員 は 自分 の 得 点 を 報 告 す る よ う に 生 徒 達 に 指 示 す る。 本 件 で は 、 生 徒 は 得 点 を 読 み 上 げ る か 教 卓 へ 行 っ て 秘 密 裡 に 得 点 を 報 告 す る こ と が で き た と い う事 実 が 明 ら か に な っ て い る が 、 こ の 段 階 ま で で 、 当 然 、 得 点 は 採 点 を 行 っ た 他 方 の 生 徒 に 少 な く と も知 ら れ て い る。 生 徒 相 互 採 点 と得 点 を 読 み 上 げ る と い う方 法 の 両 方 が 、 こ こ で は 争 点 に な っ て い る。 1997∼98年 度 お よ び1998∼99年 度 の 間 、 フ ァ ル ヴ ォ は 、 生 徒 相 互 採 点 に よ っ て フ ァ ル ヴ ォ の 子 ど も達 が 恥 を か か さ れ た と主 張 し た 。 フ ァ ル ヴ ォ は 、 生 徒 相 互 採 点 を 禁 止 し教 員 達 自身 で 課 題 を 採 点 す る こ と、 ま た は 少 な く と も生 徒 達 が 自分 以 外 の 答 案 を 採 点 す る の を 禁 止 す る こ と を 教 員 達 に 要 求 す る政 策 を 採 用 す る よ う に 学 校 区 に 求 め た 。 学 校 区 は そ れ を 拒 否 し た た め 、1998年10月 、 子 ど も達 が 第6、 第7、 第8学 年 で あ っ た 時 、 フ ァ ル ヴ ォ は 、 学 校 区 、 デ イ ル ・ ジ ョ ン ソ ン教 育 長 、 リー ン ・ ジ ョ ン ソ ン教 育 次 長 、 お よ び リ ッ ク ・ トー マ ス 学 校 長 に 対 し て 合 衆 国 法 典42編1983 条23)に基 づ い て 集 団 代 表 訴 訟 を 提 起 し た 。 21)20U.S.C.Sec.1232g(b)(1)(A),(B),(C),(D),(E),(F),(G),(H),(1),(J).20U.S.C.Sec.1232g(b)(6). 22)20U.S.C.Sec.1232g(b)(4)(A),(B). 23)「 南北戦争後 もはび こる黒人 に対す る迫害へ の対応策 と して、南 北戦争後に採択 された合衆国憲法修正14条 に基づ き制定 され た1871年の市民権法 に置かれた規定である。 この法律 はクー ・ク ラックス ・クラン法 ともいわれて いる。 州、準州ヽ または コロンビア特別区の制定法、条例、規則 または慣習の名 目の もとに連邦憲法お よび連邦法が保 障 した権利、特 権若 しくは免除を はく奪 され た者 は、連邦裁判所 の損 害賠償また は差止請求な どの救済 を求 めること ができる旨規定 している」(英米刑事法研究会(田 中利彦執 筆分)「英米刑事法研究(13)アメ リカ合衆国最高裁判所2 006年10月開廷刑事関係判例概観」比較法学42巻2号(2009年)318頁)。

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(2)第 一 審 判 決24) 原 告 た る フ ァル ヴ ォ とそ の子 ど も達 は、 被 告 た る学 校 区 の生 徒 相 互 採 点 とい う教 育 方 法 が合 衆 国憲 法 修 正14条 お よ びFERPAに 基 づ く原 告 の権 利 を侵 害 して い た と主 張 した。 集 団代 表 訴 訟 の 原 告 適 格 の 存 在 を地 方 裁 判 所 が決 め る前 に、 フ ァル ヴ ォ は2つ の訴 え につ い て宣 言 的 判 決 お よ び 略式 判 決 を求 め た。 学 校 区 もま た、 略式 判 決 を求 め て訴 訟 を提 起 した。 オ ク ラホ マ州 北 地 区連 邦 地 方 裁 判 所 は、 合 衆 国教 育 省 内 の監 督 者 か らの公 式 発 表 が生 徒 相 互 採 点 を支 持 して い た こ と、 生 徒 相 互 採点 がFERPAに 違 反 して い な か った こ とに言 及 した。 地 方 裁 判 所 は、FERPAに お け る 「保 管 す る」 の文 言 の解 釈 が教 育 省 に よ って 適 切 に解 釈 され て い た と 判 示 した 。 地 方 裁 判 所 は 、 「保 管 す る」 の文 言 が こ こで 説 明 され て い る法 律 に 及 ぼ なか った と こ ろ で はFERPA違 反 は なか っ た と判 断 した。 さ らに、 地 方 裁 判 所 は、 暫 定 的 な テ ス トや宿 題 は憲 法 上 の保 護 に値 す る 「高 度 に個 人 的 な」 問題 で は な か った こ とを理 由 に、 プ ライ ヴ ァ シー の権 利 に基 づ く修 正14条 違 反 は な か った と判 断 した。 地 方 裁 判 所 は、 学 校 区 が 当該 訴 え に対 して 限定 的 免 責(qua1ified immunity)を 認 め られ て い な か った が 、 訴 え の利 益 に 基 づ く被 告 を 支 持 す る 略式 判 決 は妥 当 で あ った と言 及 した。 結 論 と して、 地 方 裁 判 所 は、 学 校 区 に お け る生 徒 相 互 採 点 に つ い て法 律 違 反 を主 張 す る訴 え に お い て 略式 判 決 を求 め る フ ァル ヴ ォ とそ の子 ど も達 の訴 え を認 め ず、 学 校 区 を支 持 す る略式 判 決 を認 め た。 ま た、 地 方 裁 判 所 は、 原 告 適 格 の確 認 を求 め る フ ァル ヴ ォ と子 ど も達 の訴 え は ム ー ト に な って い る と して認 め な か った。 フ ァル ヴ ォは そ の後 、 特 別 支 援 教 育 を必 要 とす る生 徒 と して、 フ ィ リップ ・プ レ タ ンが特 別 支 援 教 育 を伴 う個 人 に関 す る法 律(以 下 「IDEA」)を 根 拠 に して フ ィ リッ プ の評 価 に つ いて プ ラ イ ヴ ァ シー へ の期 待 権 を持 った こ とを理 由 に、 地 方 裁 判 所 が修 正14条 に基 づ く訴 え に つ い て フ ィ リップ を支 持 す る救 済 を認 容 す るべ きで あ る と主 張 して、 地 方 裁 判 所 の判 決 の再 考 と解 明 を求 め た。 地方 裁 判 所 は、 フ ァル ヴ ォがIDEAに 基 づ く訴 え を提 起 しな か った こ とを理 由 に、 フ ァル ヴ ォ が修 正14条 に基 づ く訴 え を前 提 と してIDEAに つ い て 述 べ る こ とが で きな か っ た と指 摘 して 、 この請 求 を棄 却 した。 (3)控 訴 審 判 決25) フ ァル ヴ ォは、 オ ク ラホ マ州 北 地 区連 邦 地 方 裁 判 所 の判 決 を不 服 と して控 訴 した。 控 訴 裁 判 所 は、 修 正14条 は生 徒 相 互 採 点 とい う教 育 方 法 を 排 除 して い なか った が、FERPAは 排 除 して い た と判 示 した。 控 訴 裁 判 所 は しか し、 個 々 の被 告 が 限定 的免 責 を認 め られ て い た と判 断 した。 控 訴 裁 判 所 は、 生 徒 相 互 採点 の 教 育 実 践 がFERPAに 違 反 して い た とい う法 が 明確 に制 定 さ れ て い な か った と論 じた。 さ らに、 控 訴 裁 判 所 は、 限定 的免 責 が差 し止 め命 令 の た め の責 任

24) See, Falvo v. Owasso Independent School District No.I-11, 146 F.Supp.2d 1137; 1999 U.S.Dist.LEXIS 22692. 25) See, Falvo v. Owasso Independent School District No.I-11, 233 F.3d. 1203; 2000 U.S.App.LEXIS 35343; 2000

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か ら個 々 の被 告 を保 護 して い な か った と述 べ た。 控 訴 裁 判 所 は、 憲 法 に基 づ く訴 え に つ い て地 方 裁 判 所 に よ る被 告 を支 持 す る略式 判 決 の認 容 を 維 持 し、FERPAに 基 づ く訴 え につ い て被 告 た る学 校 区 を 支 持 す る略 式 判 決 の認 容 を破 棄 した。 ま た、FERPAに 基 づ く訴 え につ いて 、 控 訴 裁 判 所 は、 損 害 賠 償 に よ る救 済 を 求 め る原 告 の訴 え に つ い て個 々 の被 告 を支 持 す る略式 判 決 の認 容 を維 持 した が、 差 止 命 令 を求 め る原 告 の訴 え に つ い て 略式 判 決 を破 棄 した。 (4)上 告 生 徒 相 互 採 点 とい う教 育 実 践 がFERPAに 違 反 した とい う被 上 訴 人 た る フ ァル ヴ ォの主 張 に つ い て、 地 方 裁 判 所 に よ る上 訴 人 、 す な わ ち、 学 校 区、 教 育 長 、 お よ び学 校 長 へ の 略式 判 決 の認 容 を破 棄 した判 決 を再 審 査 す る た め に、 第10巡 回 区連 邦 控 訴 裁判 所 に対 して 裁 量 上 告 が認 容 さ れ た。 二 【日 本 語 訳 】 オ ワ ッ ソ 独 立 学 校 区NO.1-11対 フ ァ ル ヴ ォ 事 件26) 合 衆 国連 邦 最 高 裁 判 所2001年11月27日 結 審2002年2月19日 判 決 法 廷 代 理 人 原 告 代 理 人 ジ ェ リー ・A・ リチ ャ ー ドソ ン(オ ク ラ ホ マ州 トゥル サ) 合 衆 国代 理 人 法 廷 助 言 者 エ ドウ ィ ン ・S・ ク ニ ー ドゥラ ー(ワ シ ン トンDC) 被 告 代 理 人 ウ ィル フ レ ッ ド ・K・ ウ ェイ ト ・Jr(オ ク ラホ マ州 ク レア モ ア) 裁 判 官 ケ ネ デ ィ裁 判 官 の 法廷 意 見 に、 レー ンキ ス ト首 席 裁 判 官 、 ス テ ィー ヴ ンス、 オ コー ナ、 ス ー タ、 ブ ライ ア の各 裁 判 官 が 同調 した。 ス カ リア裁 判 官 は、 法 廷 意 見 に 同意 す る意 見 を付 した。 法 廷 意 見(OPINION) ケ ネ デ ィ裁 判 官 が法 廷 意 見 を下 した。 教 員 は、 学 級 全 体 に正 解 を説 明 す る時、 相 互 に他 の生 徒 の テ ス トや レポ ー ト、 課 題 を採 点 す る よ うに生 徒 に指 示 す る こ とが 時折 あ る。 第 三 者 が生 徒 相 互 採 点 と して 関 わ る とい う この教 育 方 法 は、1974年 制 定 の家 族 の教 育 上 の 権 利 お よ び プ ライ ヴ ァ シー に関 す る法 律(以 下 「FERPA」 ま た は 「Act」)に 違 反 す る と、 被 上 訴 人 は主 張 す る。 当裁 判 所 は、 この 争 点 を解 決 す る た め に本 件 裁 判 を実 施 す る。

26) Owasso Independent School District No.I-11 v. Falvo, U.S.2002; 534 U.S. 426; 122 S.Ct. 934; 151 L.Ed. 2d 896; 2002 U.S. LEXIS 619.

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I FERPAに 基 づ き、 連 邦 財 政 援 助 を 受 け て い る 学 校 お よ び 教 育 行 政 機 関 は 、 一 定 の 条 件 に 従 わ ね ば な ら な い(第1232条g項(a)(3))。FERPAで 定 め られ て い る 条 件 の 一 つ は 、 生 徒 に 関 す る セ ン シ テ ィ ヴ な 情 報 は 親 の 同 意 な し に 第 三 者 へ 開 示 さ れ て は な ら な い と い う こ と で あ る。FERPA は 、 親 の 書 面 に よ る 同 意 な し に 生 徒 の 教 育 記 録(ま た は そ の 中 に 含 ま れ る個 人 識 別 情 報)の 第 三 者 へ の 開 示 を 認 め る 政 策 や 実 践 が あ る 学 校 区 に 連 邦 財 政 援 助 は 与 え ら れ な い と 定 め て い る(第 1232条g項(b)(1))。 こ の 「教 育 記 録 」 と い う文 言 は 、FERPAで は 、 「教 育 行 政 機 関 ま た は 教 育 機 関 に よ っ て 、 あ る い は 教 育 行 政 機 関 ま た は 教 育 機 関 の た め に 活 動 す る 人 に よ っ て 保 管 さ れ る」、 生 徒 に 直 接 関 連 す る 情 報 を 含 む 「記 録 、 フ ァ イ ル 、 文 書 、 お よ び そ の 他 の 資 料 」 と 定 義 さ れ る (第1232条g項(a)(4)(A))。 こ の 教 育 記 録 の 定 義 で は 、 「文 書 作 成 者 が 単 独 で 所 持 し、 か つ そ の 者 の 代 替 職 員 以 外 の 者 が ア ク セ ス さ れ ま た は 漏 ら さ れ る こ と が な い 、 教 育 職 員 、 管 理 職 員 、 行 政 職 員 の 記 録 」 が 除 外 さ れ る(第1232条g項(a)(4)(B)(i))。 当 裁 判 所 が 解 決 す べ き 問 題 は 、 生 徒 に よ っ て 相 互 に 採 点 さ れ た 教 室 で の 学 習 活 動 や 課 題 が 教 育 記 録 に 該 当 す る か ど う か と い う こ と で あ る。 被 上 訴 人 フ ァ ル ヴ ォ の3人 の 子 は 、 オ ク ラ ホ マ 州 ト ゥ ル サ 郊 外 の オ ワ ッ ソ独 立 学 校 区 で 就 学 し て い る。 こ の 子 ど も達 の 教 員 は 、 こ の 国 の 多 く の 教 員 と 同 様 に 、 生 徒 相 互 採 点 と い う教 育 方 法 を 用 い て い る。 典 型 例 と し て は 、 生 徒 達 が 相 互 に 答 案 を 交 換 し て 教 員 の 指 導 に 従 っ て 採 点 し、 そ の 後 本 人 に 答 案 を 返 す 。 教 員 は 自分 の 得 点 を 報 告 す る よ う に 生 徒 達 に 指 示 す る。 本 件 で は 、 生 徒 は 得 点 を 読 み 上 げ る か 教 卓 へ 行 っ て 秘 密 裡 に得 点 を 報 告 す る こ と が で き た と い う事 実 が 明 ら か に な っ て い る が 、 こ の 段 階 ま で で 、 当 然 、 得 点 は 採 点 を 行 っ た 他 方 の 生 徒 に 少 な く と も知 ら れ て い る。 生 徒 相 互 採 点 と い う教 育 方 法 と得 点 を 読 み 上 げ る と い う方 法 の 両 方 が 、 こ こ で は 争 点 に な っ て い る。 被 上 訴 人 は 、 生 徒 相 互 採 点 と い う教 育 方 法 に よ っ て フ ァ ル ヴ ォ の 子 ど も達 が 恥 を か い た と主 張 し た 。 被 上 訴 人 は 、 生 徒 相 互 採 点 を 禁 止 し教 員 達 自身 で 課 題 を 採 点 す る こ と、 ま た は 少 な く と も 生 徒 達 が 自分 以 外 の 答 案 を 採 点 す る の を 禁 止 す る こ と を 教 員 達 に 要 求 す る政 策 を 採 用 す る よ う に 学 校 区 に 求 め た 。 学 校 区 は そ れ を 拒 否 し た た め 、 被 上 訴 人 は 、 学 校 区 、 デ イ ル ・ ジ ョ ン ソ ン教 育 長 、 リー ン ・ ジ ョ ン ソ ン教 育 次 長 、 お よ び リ ッ ク ・ トー マ ス 学 校 長 に 対 し て 合 衆 国 法 典42編1983 条 に 基 づ い て 集 団 代 表 訴 訟(class action27))を 提 起 し た 。 被 上 訴 人 は 、 学 校 区 の 生 徒 相 互 採 点 と い う教 育 方 法 がFERPAお よ び こ の 裁 判 で は 関 連 の な い そ の 他 の 法 律 に 違 反 し た と主 張 し た 。 オ ク ラ ホ マ 州 北 地 区 連 邦 地 方 裁 判 所 は 、 学 校 区 の 立 場 を 支 持 し て 略 式 判 決(Summary Judgment28))を 認 容 した 。 地 方 裁 判 所 は 、 一 方 の 生 徒 に よ っ て 答 案 に 記 載 さ れ た 得 点 は 、 こ の 27)共 通点 を持つ一定範 囲の人 々(class)を 代表 して、一人 または複数名 の者が、全員 のために原告 と して訴 え、 ある いは被告 と して訴 え られるとい う訴訟形態。 田中英夫編 「BASIC英 米法辞典』(東京大学 出版会、1993年)32頁 。 28)重 要 な事実 につ いて真正な争点がな く、法律問題だけで判決 が下 せる場合 に、 申 し立 てによりなされ る判決。訴答、 その他 の一件記録ヽ宣誓供述書 などに基 づいてなされる判決。 田中編 ・前掲注31180頁 。

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段 階 で は、 「教 育 行 政 機 関 ま た は教 育 機 関 、 も し くは そ れ らの 機 関 の た め に活 動 す る人 に よ って 保 管 され る」 記 録 に は該 当 せ ず(第1232条g項(a)(4)(A))、 よ ってFERPAに 基 づ く 「教 育 記 録 」 の要 件 を 構 成 しな い と判 示 した 。 以 上 の理 由 か ら、 生 徒 相 互 採 点 はFERPAに 違 反 しな い と結 論 付 け た。 第10巡 回 区 連 邦 控 訴 裁 判 所 は、 原 判 決 を破 棄 した(233 F.3d 1203(2000)。FERPAは 、 学 校 が連 邦 財 政 援 助 を受 け るた め に充 た さ ね ば な らな い条 件 を指 示 して お り、 最 初 の 問題 と して 同 裁 判 所 は、 条 件 が 充 た さ れ て い な い場 合 にFERPAが 生 徒 お よ び親 に私 的 請 求 権 を 付 与 して い る か ど うか を検 討 した。 私 的 当事 者 に請 求 権 を付 与 す る法 律 に お い て 明 白 な権 利 付 与 の欠 如 が あ る に もか か わ らず 、 控 訴 裁 判 所 は、 被 上 訴 人 が合 衆 国 法 典42編1983条 に基 づ い てFERPAに 定 め る 事 項 を執 行 させ る た め に提 訴 す る こ とが で き る と判 示 した(233 F.3d at 1211-1213)。 実 体 審 査 で は、 控 訴 裁 判 所 は、 生 徒 相 互 採 点 と い う教 育 方 法 がFERPAに 違 反 す る と判 示 した。 生 徒 相 互 の活 動 で 記 載 さ れ た得 点 は 、FERPAに よ って 保 護 され る教 育 記 録 で あ り、 よ って 採 点 す る と い う行 動 は ま さ に採 点 す る生 徒 へ の情 報 の 開 示 で あ って 認 め られ な い と判 示 した(233 F.3d at 1216)。 合 衆 国 連 邦 最 高 裁 判 所 は、 生 徒 相 互 採 点 とい う教 育 方 法 がFERPAに 違 反 す るか ど うか を判 断 す るた め に裁 量 上 訴(certiorari29))を 認 容 した(533 U.S.927(2001))。FERPA違 反 の な い こ とが 明 らか に な った の で、 当裁 判 所 は原 判 決 を破 棄 す る。 皿 初 め に、 合 衆 国 連 邦 最 高 裁 判 所 は、FERPAが 被 上 訴 人 の よ うな 私 的 当 事 者 に第1983条 に基 づ く作 為 請 求 権 を与 え て い るか ど うか が未 解 決 の解 決 す べ き問題 で あ る と述 べ る。 当裁 判 所 は、 他 の事 件 で こ の問 題 の裁 量 上 訴 を 認 容 して い る(Gonzaga Univ.v.Doe,534 U.S.110312002ノ を

参 照)。 さ らに 、 両 当 事 者 は、 第10巡 回 区 連 邦 控 訴 裁 判 所 に よ る裁 判 の前 に 第1983条 の問 題 に つ い て は争 わ な か った。 控 訴 裁 判 所 は 自発 的 に この 問題 を取 り上 げ、 上 訴 人 は この 問題 に つ い て裁

量 上 訴 を 請 求 しな か った。 当 裁 判 所 は、 「控 訴 裁 判 所 で 提 起 ・検 討 さ れ、 あ るい は最 高 裁 判 所 が 裁 量 上 訴 を認 容 した 問題 に含 ま れ て い る とい う理 由 で事 件 を判 断 す る こ と」 が最 高 裁 判 所 の任 務

で あ るか ら、 当 裁 判 所 の裁 判 で は この問 題 を解 決 す る必 要 は な い(Bragdon v.Abbott, 534U.S. 624(1998))。 当 裁 判 所 が想 定 す る これ らの 状況 で は、 この問 題 につ い て の意 見 を それ ほ ど判 断 ・ 説 明 す る こ と はな い が、 両 当事 者 は、 この 問 題 につ いて 当 裁 判 所 の裁 判 で はFERPAの 規 定 を執 行 さ せ るた め に第1983条 に基 づ い て教 育 行 政 機 関 を訴 え る こ とが で き る。 当裁 判 所 は第1983条 の 問題 を未 解 決 に した ま ま で あ るが、 被 上 訴 人 の連 邦 法 に 関 す る訴 え は 「連 邦 問題 を含 ま な い の と 同様 に訴 え の利 益 を完 全 に欠 い て い る」 の で、 当裁 判 所 は主 要 な問 題 の裁 判 を行 う(Steel Co.v. 29)上 訴を受理するか否かが、上訴を受ける裁判所の完全な裁量にかかる場合を言う。上訴は、重要な法律問題を含む と上級審が判断した場合に許される。田中編 ・前掲注2727頁 。

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Citizens for Better Environment, 523U.S。83,89(1998))。 これ らの 予 備 的 な 考 察 を伴 い 、 当 裁 判 所 は実 体 審 査 を行 う。 両 当事 者 は、 他 の生 徒 が課 題 を採 点 す る時点 で課 題 が 教 育 記録 に該 当す る場 合 、 生 徒相 互 採 点 、 ま た は少 な くと も教 室 で 自 らの得 点 を 読 み 上 げ る よ うに指 示 す る と い う教 育 実 践 は、 第1232条g 項(b)(1)に基 づ く記 録 の第 三 者 開 示 と して 許 され な い で あ ろ うと い う こ と に 同意 す る こ と を 明 ら か に して い る。 この点 に つ い て判 断 せ ず に、 当裁 判 所 は、 分 析 の た め に両 当事 者 の 同意 が正 しい と推 定 す る。 しか し、 両 当事 者 は、 生 徒 相 互 で採 点 さ れ た課 題 が教 育 記 録 の要 件 を仮 に も構 成 す るの か ど うか につ い て 同意 して い な い。 答 案 は生 徒 に直 接 関 連 の あ る情 報 を 含 ん で い るが、 「教 育 行 政 機 関 また は教育 機 関、 も し くはそ れ らの機 関 の た め に活動 す る人 に よ って 保 管 され て い る」 時 お よ び場 合 の みFERPAに 基 づ く記 録 と な る(第1232条g項(a)(4)(A))。 上 訴 人 は、 法 廷 助 言 者 た る合 衆 国 に よ って支 持 を受 け、 この定 義 が教 育 機 関 の記 録 の み に及 ぶ と主 張 す る。 す な わ ち、 これ らの資 料 は教 育 課 程 の事 項 と して恒 久 記 録 に保 存 さ れ る。 両 当事 者 は、 「教 育 行 政 機 関 ま た は教 育 機 関 に よ って 保 管 され る」 記 録 が 最 終 的 な教 育 課 程 に お け る評 点 、 生 徒 の評 点 の平 均 、 標 準 テ ス トの得 点 、 出欠 記 録 、 カ ウ ンセ リン グ記 録 、 お よ び懲 戒 記 録 を含 む が、 生 徒 の家 庭 あ るい は授 業 で の学 習 活 動 は含 ま な い と主 張 して い る(原 告 の上 訴 趣 意 書17、 合 衆 国 の上 訴 趣 意 書14)。 被 上 訴 人 は、 控 訴 裁 判 所 の判 決 理 由 を採 用 して、 生 徒 相 互 で採 点 さ れ た課 題 は教 育 記 録 の定 義 の 中 に含 まれ る と主 張 して い る。 そ の定 義 に は、 「教 育 職 員 、 管 理 職 員 、 行 政 職 員 の 記 録 で、 文 書 作 成 者 が単 独 で所 持 し、 か つ そ の者 の代 替 職 員 以 外 の者 が ア クセ ス さ れ ま た は漏 らさ れ る こ と が な い もの」 が 除 外 され て い る(第1232条g項(a)(4)(B)(i))。 控 訴 裁 判 所 は、 教 員 補 助 簿 が教 育 記 録 に該 当 しな い場 合 、 例 外 を定 め よ う とす る連 邦 議 会 に と って必 要 とは さ れ て い な か った で あ ろ う と論 じた。 控 訴 裁 判 所 は、 教 員 補 助 簿 お よ び そ こに記 載 さ れ る得 点 が教 員 に よ って 「保 管 さ れ て」 お りFERPAの 適 用 が 及 ぶ と判 断 した(233 F.3d at1215)。 控 訴 裁 判 所 は、 教 員 が 補 助 簿 に結 果 を記 録 す るま で は個 々 の生 徒 の課 題 の得 点 を保 管 して い な い と理 解 した。 しか し、 控 訴 裁 判 所 は、 連 邦 議 会 が一 旦 補 助 簿 に記 載 さ れ た生 徒 の得 点 の第 三 者 開示 を教 員 に禁 止 す る場 合 、 事 前 に直 接 的 に 第 三 者 開示 を 許 す 理 由 が 理 解 で き な い と論 じた(233 F.3d at 1216)。 控 訴 裁 判 所 は こ う して、 得 点 が教 員 に報 告 さ れ るま で は生 徒 が得 点 を保 管 して い る と判 示 した。 控 訴 裁 判 所 の 論 理 は、 最 高 裁 判 所 の 審 査 に耐 え うる もので はな い。 ま た、 控 訴 裁 判所 の解 釈 は、 我 が 国 の学 校 の運 営 に お け る州 政 府 と連 邦 政 府 の 間 の責 任 の分 配 に劇 的 な変 更 を もた ら した で あ ろ う。 当裁 判 所 は、 立 法 の 明 白 な 目的 が あ るに もか か わ らず連 邦 問題 の均 衡 に実 質 的 な変 更 を も た らすFERPAの 解 釈 を 目の 当 た りに して た め ら うで あ ろ う。 この原 則 に よ って 当 裁 判 所 の判 断 は導 か れ て い る。 2人 の法 案 提 案 者 は、 他 の生 徒 に よ って採 点 さ れ る とす ぐに課 題 が教 育 記 録 の定 義 を満 た す と

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す る控 訴 裁 判 所 の判 断 に は誤 りが あ った と最 高 裁 判 所 に話 して い る。 第 一 に、 生 徒 の答 案 は、 他 の生 徒 に よ って 採 点 され て い る段 階 で は、 第1232条g項(a)(4)(A)の 意 味 す る範 囲 内 で 保 管 さ れ て い な い。 「保 管 す る」("maintain")と い う言 葉 の通 常 の 意 味 は、 「現 存 ま た は継 続 して保 つ こ と; 保 存 す る;保 持 す る」 で あ る(ラ ン ダム ハ ウス英 語 辞 典1160(第2版 、1987年))。 教 員 補 助 簿 が 教 育 記 録 に該 当す る と想 定 して い る と して も、(そ れ は両 当 事 者 が 争 って い る点 で あ って 当裁 判 所 が こ こで 判 断 しな い点 で あ るが 、)生 徒 相 互 で採 点 さ れ た 課 題 の得 点 は、 教 員 が 得 点 を記 録 す るま で は 「その 中 に は含 ま れ」 な い(第1232条g項(b)(1))。 生 徒 達 が他 の 生 徒 の 課 題 を採 点 しま た は 自分 の得 点 を読 み上 げ るま で は、 教 員 は得 点 を保 管 して い な い。 ま た、 採 点 した生 徒 達 は、 第1232条g項(a)(4)(A)の 意 味 す る 範 囲 内 の 得 点 を 保 管 して い な い。 「保 管 す る」 と い う文 言 は、 FERPAの 対 象 た る記 録 が 、 た と え生 徒 が卒 業 した後 で あ って も、 お そ ら く学 校 の記 録 保 管 室 で 書 類 整 理 棚 に また は恒 久 的で 安 全 な デ ー タベ ー ス に保 管 され るで あ ろ うと い う こ とを示 して い る。 採 点 した生 徒 達 は、 教 員 が正 解 を読 み上 げ る時 に ほ ん の わ ず か な 時 間 だ け課 題 を取 り扱 うの み で あ る。 記 録 係 が恒 久 的 な フ ァイ ル に生 徒 の フ ォル ダを保 管 す るの と同 じ方 法 で生 徒 が答 案 を保 管 す る と言 うの は、 非 現 実 的 で あ る。 ま た、 採 点 した各 々 の生 徒 が 第1232条g項(a)(4)(A)の 意 図 す る教 育 機 関 「の た め に活 動 す る人 」 で あ る とす る控 訴 裁 判 所 の 断 定 に は誤 りが あ った。 「∼ の た め に活 動 す る」("acting for")と い う文 言 は、 学 校 で働 く人 、 例 え ば教 育 職 員 、 行 政 職 員 、 そ の他 の学 校 従 業 員 を意 味 して い る。 生 徒 達 が教 員 の指 示 に従 って 問題 を解 く時 に教 育 機 関 「の た め に活 動 す る」 と言 う こ とが我 々 の通 常 の理 解 と一 致 しな い の と同様 に、 生 徒 達 が教 員 の指 示 に従 って採 点 す る と きに教 育 機 関 「の た め に活 動 す る」 とは言 い難 い。 他 の生 徒 の学 習 活 動 に つ い て誤 りを見 つ け て正 し く直 す こ とは、 テ ス ト受 け る こ とそ れ 自体 と同様 に課 題 の一 部 とな り得 る。 新 た な文 脈 に お い て再 び学 習 事 項 を 教 え る とい うの は一 つ の方 法 で あ り、 そ して そ の方 法 は仲 間 の生 徒 を助 け た り敬 った りす る方 法 を生 徒 達 に示 す の に役 立 って い る。 生 徒 達 が答 案 を採 点 す る時 に正 解 を学 級 全 体 に説 明 す る こ と に よ り、 教 員 は そ の学 習 活 動 を補 うだ け で な く、 生 徒 達 が教 材 を理 解 して い るか ど うか、 次 の学 習 へ進 む準 備 が で きて い るか ど うか を発 見 す る こ とが で き る。 当 裁 判 所 は、FERPAが これ らの 教 育 技 術 を禁 止 して い る と考 えて い な い。 当裁 判 所 は ま た、 「教 育 機 関 の た め に活 動 す る人 によ っ て」 とい う文 言 が 「保 管 す る」 に か か る とい う事 実 を見 失 って は な らな い。 生 徒 達 が課 題 を採 点 して い る時 は教 員 の た め に活 動 して い る こ とに た とえ誰 か が 同意 す る と して も、 そ れ は生 徒 達 が 課 題 を保 管 して い る教 育 機 関 の た め に活 動 して い る と言 う こ と とは異 な る。

FERPAの 他 の 条 項 に よ って 最 高 裁 判 所 の 解 釈 は裏 付 け られ て い る(Davis v. Michigan Dep't of Treasury(1989)を 参 照(制 定 法 の文 言 が 、 文 言 の 文 脈 の 中 で 解 釈 さ れ る と と もに 、 全 体 的

な制 定 法 の構 造 に お け る文 言 の位 置 に つ い て の見 方 を伴 って解 釈 さ れ ね ば な らな い こ とは、 制 定

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録 を 保 管 す る」 こ とを 教 育 機 関 に 求 め て い る(第1232条g項(b)(4)(A))。 この 記 録 は、 生 徒 の教 育 記 録 へ の ア ク セ ス を 申 請 した個 人 お よ び 申請 を な した理 由 を一 覧 にせ ね ば な らな い(第1232 条g項(b)(4)(A))。 そ の ア ク セ ス の 記 録 は、 「親 、 当 該 記 録 の 管 理 に責 任 の あ る教 職 員 お よ び そ の ア シス タ ン)トに対 して の み利 用 可 能 で な け れ ば な らな い」(第1232条g項(b)(4)(A))。 教 育 記 録 に つ い て の控 訴 裁 判 所 の 幅広 い解 釈 に基 づ け ば、 全 て の教 員 は、 別 々 に各 生 徒 の課 題 へ の ア クセ ス の記 録 を保 管 す る義 務 を負 うで あ ろ う。 そ の代 わ りに、 控 訴 裁 判 所 の論 理 に よ り、 自分 の答 案 を採 点 した生 徒 で あ って も、 課 題 が返 って く るま で は ア クセ ス の記 録 を保 管 す る義 務 を負 うで あ ろ う。 当裁 判 所 は、 連 邦 議 会 が全 て の教 員 に そ の よ うな重 い行 政 上 の義 務 を課 して い るの か に つ い て疑 い を持 って い るが、 連 邦 議 会 が生 徒 へ の命 令 に拡 大 して は い な い こ とは確 か で あ ろ う。 ま た 、FERPAは 、 各 生 徒 へ の ア ク セ ス の 「記 録 」 を要 求 して い る。 こ の単 一 の 記 録 は、 「教 育 記 録 と と もに」 保 管 さ れ ね ば な らな い。 これ は、 連 邦 議 会 が、 教 育 記 録 は単 一 の ア クセ ス の記 録 と と もに一 つ の場 所 で保 管 さ れ るで あ ろ う とい う こ とを考 慮 した こ とを示 して い る。 記 録 の管 理 に責 任 の あ る職 員 と して 「学 校 職 員 」 お よ び 「学 校 職 員 の ア シス タ ン ト」 と規 定 す る こ とに よ り、FERPAは 、 教 育 記 録 が 、 記 録 係 の よ うな 、 単 一 の 集 中的 な管 理 者 に よ って 保 管 され る教 育 機 関 の記 録 で あ って、 別 々 の教 室 に お い て採 点 した多 くの生 徒 達 に よ って取 り扱 わ れ た個 々 の生 徒 の課 題 は該 当 しな い こ とを示 して い る。 さ らに、FERPAは 、 我 が 子 の教 育 記 録 の正 確 性 を 争 う こ とが で き る ヒ ア リ ング の機 会 を親 に 与 え る こ とを、 連 邦 財 政 援 助 の 受 給 者 に要 求 して い る(第1232条g項(a)(2))。 この ヒア リ ング は、 「教 育 長 官 の定 め る規 則 に従 って」 行 わ れ ね ば な らず、 直 接 利 害 関 係 の な い職 員 に よ る裁 決 と親 が弁 護 人 に よ り代 理 され るた め の機 会 を順 に要 求 して い る(連 邦 行 政規 則34編92条22項(2001))。 連 邦 議 会 が、 全 て の書 き取 りテ ス トの得 点 や我 が子 が制 作 した芸 術 作 品 の評 価 の正 確 性 に異 議 を 申 し立 て るた め に この手 の込 ん だ手 続 きの仕 組 み を親 に もた ら した の か ど うか は、 疑 問 の余 地 が あ る。 生 徒 の家 庭 ま た は授 業 で の学 習 活 動 に適 用 範 囲 を及 ぼ す た め に被 上 訴 人 が採 った 「教 育 記 録 」 の文 言 の論 理 構 成 は、 全 国 の教 員 に実 質 的 な義 務 を課 す で あ ろ う。 そ の義 務 は、 授 業 や そ の準 備 に費 や さ れ る時 間 を 日常 的 な生 徒 の課 題 を採 点 す るた め に割 くよ うに、 全 て の教 員 に 強 い るで あ ろ う。 被 上 訴 人 の考 え方 は、 教 員 が 即 時 的 な指 導 を生 徒 に行 う こ とを よ り難 し くさせ るで あ ろ う。 被 上 訴 人 が主 張 す る解 釈 は、 そ の他 の習 慣 的 に用 い られ る教 育 方 法 、 例 え ば チ ー ム で取 り組 む課 題 を グル ー プ で評 価 す るよ うな教 育 方 法 を止 め るよ うに、 教 員 達 に 強 い るで あ ろ う。 確 か に、 被 上 訴 人 の考 え方 の論 理 上 の結 果 は、 ほ とん ど際 限 が な い。 口頭 弁 論 に お い て、 被 上 訴 人 の代 理 人 は 、 全 国 の数 千 に及 ぶ 教 室 の い くつ か で 教 員 が 、 教 室 で の 課 題 に ス マ イ ル マ ー ク("a happy face")金 星 マ ー ク("a gol dstar")を 貼 り、 ま た は 批 判 的 な 感 想 を 記 載 す るの で あ れ ば 、

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FERPAは そ れ を見 る こ とを生 徒 達 に認 め な い とい う こ とに 同意 して い るよ うに思 わ れ る。 当裁 判 所 は、 連 邦 議 会 が、 伝 統 的 な州 の機 能 を この 強烈 な や り方 で妨 げ る こ とを意 図 して い た か ど うか につ いて 疑 問 を持 って い る。 控 訴 裁 判 所 のFERPAの 解 釈 に基 づ け ば 、 連 邦 の 権 限 は、 全 国 の教 室 で特 定 の教 育 方 法 や教 育 的 な力 学 に極 め て小 さ な統 制 を行 使 す るで あ ろ う。 連 邦 議 会 は この結 果 を お そ ら く強制 して お らず、 そ して 当裁 判 所 は そ れ を要 求 す るよ うに制 定 法 を解 釈 し な い。 以 上 の理 由 か ら、 教 員 補 助 簿 が教 育 記 録 に該 当 す る と想 定 す る と して も、 控 訴 裁 判 所 の判 断 に は誤 りが あ り、 生 徒 達 の答 案 に記 載 さ れ た得 点 は、 少 な く と も教 員 が得 点 を拾 って そ れ を 自分 の 補 助 簿 に記 録 す る まで は、FERPAに 基 づ い て適 用 範 囲 は及 ぼ な い で あ ろ う。 当裁 判 所 は この小 さ な争 点 に つ い て の判 断 に 限定 し、 個 々 の生 徒 の課 題 の得 点 が、 一 旦 教 員 に戻 さ れ る と して も、 FERPAに よ って保 護 さ れ るか ど うか とい う大 きな 問題 に つ い て は判 断 しな い。 控 訴 裁 判 所 の判 決 は破 棄 さ れ、 本 件 は差 し戻 さ れ る。 補 足 意 見(CONCUR) ス カ リア裁 判 官 は、 この判 決 に 同意 して い る。 私 は、 当裁 判 所 が説 明 す るよ うに、 他 の生 徒 の答 案 を採 点 した生 徒 が この語 句 の通 常 の意 味 で 学 校 「の た め に活 動 して い る人 」 に は該 当 しな い の で、 生 徒 相 互 で採 点 さ れ た答 案 は他 の生 徒 が 保 管 した状 態 で あ る間 は 「教 育 記 録 」 の要 件 を構 成 して い な い とい う当裁 判 所 の判 断 に 同意 して い る。 しか し、 私 は、 裁 判 所 に よ って繰 り返 し示 さ れ た他 方 の点 に は 同意 で きな い。 そ れ は、 教 育 記 録 が 学 校 の い くつ か の 集 中 的 な 収 納 場 所 で 保 存 さ れ る資 料 だ け を含 む と い う も の で あ る (「『保 管 す る』(`maintain')と い う文 言 は、FERPAの 対 象 と な る記 録 が 学 校 の記 録 保 管 室 で書 類 整 理 棚 ま た は恒 久 的 な 記 録 の デ ー タ ベ ー ス に保 存 され る で あ ろ う こ とを 示 して い る。[採 点 し た生 徒 は、]記 録 係 が 恒 久 的 な フ ァ イ ル に生 徒 の フ ォル ダを 保 管 す る の と同 じ方 法 で 答 案 を保 管 して い る と言 うの は、 非 現 実 的 で あ る。」)、(「FERPAは 、 教 育 記 録 が 単 一 の集 中 的 な 管 理 者 、 例 え ば 記 録 係 の よ うな人 に よ って 保 存 さ れ て い る教 育 機 関 の記 録 で あ る こ とを 当 然 意 味 して い る。」)。 当裁 判 所 が認 め る よ うに、 連邦 議 会 は、教 育 記録 が記 録 係 の よ うな単一 の集 中 的 な管 理 者 によ っ て教 育 機 関 の記 録 だ けを 含 む 場 合 、FERPAの 適 用 範 囲 か ら 「… 教 育 … 職 員 の 記 録 で 、 文 書 作 成 者 が単 独 で所 持 し、 か つ そ の者 の代 替 職 員 以 外 の者 が ア クセ ス さ れ ま た は漏 らさ れ る こ とが な い もの」 を 除外 した(第1232条g項(a)(4)(B)(i))。 被上 訴 人 は、 教 育 記 録 が 記 録 係 の よ うな、 単 一 の 集 中 的 な管 理 者 に よ って保 存 さ れ る教 育 機 関 の記 録 だ け を含 む場 合 、 教 員 補 助 簿 を含 む、 教 員 が 教 室 で作 成 ・保 管 し う る多 くの資 料 を お そ ら く含 む この例 外 を無 意 味 な もの に した で あ ろ う。 当 裁 判 所 は、 当然 、 規 定 全 体 を 無 効 の 状 態 にす る よ うなや り方 で 制 定 法 を 解 釈 して い な い(United

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States v.Nordic Village, Inc.(1992)。 最 高 裁 判 所 は、 被 上 訴 人 の主 張 が正 し くな い こ と、 そ して 「教 育 職 員 の記 録 」 の 除外 を外 見 的 に不 必 要 な もの に す る 「集 中 的 な管 理 者 」 の原 則 に今 も依 存 し続 け て い る こ との理 由 を説 明 して い な い。 悪 い こ とに今 な お、 教 員 補 助 簿 を 明 らか に除 外 す る理 論 に依 拠 して い るが 、 当裁 判 所 は、 教 員 補 助 簿 が教 育 記 録 に該 当 す るか ど うか を判 断 して い な い と主 張 して い る。 私 の考 え方 で は、 記 録 の 「集 中的 な管 理 者 」 の 理 論 を 当 裁 判 所 が 是認 す る こ とは、 外 見 的 に は第1232条g項(a)(4)(B) (i)に反 して お り、(教 員 補 助 簿 の 位 置 付 け につ いて の何 らか の 考 え 方 を裁 判 所 が 否 認 す る こ と と 結 び つ い た場 合)救 い よ うな く取 り違 え て お り、 本 件 の判 断 の た め に は不 必 要 で あ る。 三 若 干 の 検 討 1「 教 育 記 録 」 の定 義 に つ い て 生 徒 が採 点 した 答 案 の 得 点 が 第1232条g項(a)(4)に 定 め る 「教 育 記 録 」 に該 当 す るか ど うか に つ い て、 第10巡 回 区控 訴 裁 判 所 と連 邦 最 高 裁 判 所 は、 「保 管 す る」 と 「教 育 機 関 の た め に活 動 す る 人 」 の文 言 の解 釈 に着 目 した。 控 訴 裁 判 所 は、 教 員 補 助 簿 に記 録 さ れ た得 点 を代 替 職 員 が 閲覧 す る こ とが第 三 者 開示 に該 当 す る と考 え る限 り、 そ れ を 「事 前 に 直接 的 に他 の生 徒 へ の 開示 を許 す 理 由が 理 解 で きな い こ とを理 由 に、 採 点 した生 徒 達 が 得 点 を 付 けた段 階 で 「教 育 記録 」 に該 当 し、 採 点 した生 徒 達 は 「教 育 機 関 の た め に活 動 す る人 」 に該 当 す る と判 断 した。 これ に対 して最 高 裁 判 所 は、 「保 管 」 と い う文 言 に は 「現 存 ま た は継 続 して 保 つ こ と」 とい う意 味 が 含 まれ る と解 釈 した上 で、 生 徒 が相 互 に採 点 を行 った 時点 で は得 点 は教 員 補 助 簿 に記 録 さ れ て お らず、 少 な く と も教 員 が得 点 を教 員 補 助 簿 に記 録 す るま で は 「保 管 」 して い る とは言 え な い こ とを理 由 に 「教 育 記 録 」 に該 当 せ ず 、 ま た、 「教 育 機 関 の た め に活 動 す る人 」 と は 「教 育 職 員 、 行 政 職 員 、 そ の他 学 校 従 業 員 を意 味 して い る」 と解 釈 した上 で、 一 般 的 な理 解 とは 明 らか に異 な る こ とを理 由 に、 採 点 した生 徒 達 は 「教 育 機 関 の た め に活 動 す る人 」 に該 当 しな い と判 断 した。 2「 教 育 記 録 」 の第 三 者 開示 に つ い て 自分 の答 案 を他 の生 徒 に渡 して 採 点 して も ら う行 為 が第1232条g項(b)(1)に 定 め る第 三 者 開示 に 該 当 す るか ど うか に つ い て、 控 訴 裁 判 所 は、 前 述 の通 り採 点 した生 徒 達 を 「教 育 機 関 の た め に活 動 す る人 」 と捉 え た上 で、 生 徒 相 互 採 点 とい う教 育 方 法 は第 三 者 開示 に該 当 す る と判 断 した。 こ れ に対 して最 高 裁 判 所 は、 前 述 の通 り採 点 した生 徒 達 を 「教 育 機 関 の た め に活 動 す る人 」 で は な い と考 え た上 で 、 生 徒 相 互 採 点 の意 義 を認 め、FERPAが この 教 育 技 術 を禁 止 して い る とは考 え られ な い こ とを理 由 に、 生 徒 相 互 採 点 は第 三 者 開示 に は該 当 しな い と判 断 した。

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3〈 プ ラ イ ヴ ァ シー の権 利 論 〉 対 〈教 育 裁 量 論 〉、 〈法 律 論 〉 対 〈教 育 論 〉 控 訴 裁 判 所 判 決 の最 大 の意 義 は、 教 育 記 録 の第 三 者 開示 同意 権 を プ ライ ヴ ァ シー の権 利 の一 部 と捉 え よ う とす る と と も に そ れ を合 衆 国憲 法 修 正14条 か ら導 き出 そ うと試 み た こ とで あ る30)。そ の た め、 採 点 した生 徒 が持 って い る他 の生 徒 の答 案 の得 点 を 「教 育 記 録 」 に該 当 す る と判 断 し、 生 徒 相 互 採 点 がFERPAの 禁 止 す る第 三 者 開 示 に該 当 す る と判 断 した の で あ る。 しか し、 「他 の 生 徒 の課 題 を教 員 の指 示 に従 い客 観 的 な立 場 か ら採 点 す る とい う行 動 を通 じて、 生 徒 自 らが 陥 り や す い ミス を発 見 し、 理 解 を深 化 さ せ る」 とい う教 育 効 果 に着 目す れ ば、 控 訴 裁 判 所 の解 釈 ・判 断 は、 「相 互 採 点 活 動 が 有 す る教 育 学 的 効 果 を捨 象 した一 面 的理 解 で あ る」 と い う指 摘 が あ る31)。 他 方 、 最 高 裁 判 所 判 決 の最 大 の意 義 は、 学 校 で教 員 が用 い る教 育 学 的 な根 拠 の あ る教 育 方 法 が、 プ ライ ヴ ァ シー の権 利 の 概 念 か ら過度 に制 約 を受 け な い よ うに配 慮 した こ とで あ る32)。そ の た め、 採 点 した生 徒 が持 って い る他 の生 徒 の答 案 の得 点 を 「教 育 記 録 」 に該 当 しな い と判 断 し、 生 徒 相 互 採 点 の教 育 学 的意 義 を展 開 して第 三 者 開示 に該 当 しな い と判 断 した の で あ る。 しか し、 法 廷 意 見 は、 教 員 補 助 簿 に記 録 さ れ た得 点 の 「教 育 記 録 」 該 当性 に つ い て 直接 的 に判 断 を して い な い。 この点 につ いて 、 「教 務 手 帳 が教 育 記 録 に含 ま れ な い こ とを 示 唆 す る一 方 で、 教 務 手 帳 の教 育 記 録 該 当性 に つ い て判 断 す る こ とを 回避 す る とい う法 廷 意 見 の姿 勢 は、 あ る種 の矛 盾 を含 む」 とい う指 摘 が あ る33)。 プ ライ ヴ ァ シー の権 利 は個 人 の人 格 価 値 に 関 わ る重 要 な権 利 と して尊 重 さ れ ね ば な らな い が、 他 方 で 、 近 代 以 降 の 学 校 教 育 は集 団 で行 わ れ て き て お り、 そ の 教 育 学 的 な意 義 ・効 果 に も十 分 に留 意 せ ね ば な らな い。 (研究 紀 要 編 集 部 は、 編 集 発 行 規 程 第5条 に基 づ き、 本 原 稿 の査 読 を論 文 審 査 委 員 会 に依 頼 し、 本 原 稿 を本 誌 に掲 載 可 とす る判 定 を受 理 す る。2010年4月28日 付) 30)控 訴 裁 判 所 判 決 は、 「生 徒 達 の 学 校 で の学 習 活 動 や テ ス トの評 価 を 第 三 者 に開 示 す るの をFERPAが 禁 じて い る と い う 当裁 判 所 の 結 論 は 、 個 人 情 報 の 第 三 者 開 示 を禁 止 す る た め の 憲 法 上 の 権 利 の 範 囲 につ いて の 当裁 判 所 の判 断 を 性 格 付 け て い る の で あ るが ヽ 中 学 校 で の 学 習 活 動 や テ ス トの評 価 を第 三 者 に 開 示 す るの を 防 ぐた め の権 利 が 、 憲 法 か ら導 き 出 さ れ る 基 本 的 人 権 に 深 く根 付 い た概 念 だ と 当裁 判 所 が言 う こ とは で きな い 」 と判 示 し、 第 三 者 開 示 同意 権 につ い て憲 法 上 の権 利 と の関 わ りを強 く意 識 した。 31)坂 田仰 ・前 掲 注5124-125頁 。 32)坂 田 仰 はヽ 最 高 裁 判 所 判 決 の 意 義 に つ い て 「『学 校 と い う特 別 な環 境 の下 で 」 どの 程 度 の権 利 行 使 を 認 め るべ き な の か と い うTinker判 決 の法 理 は、 自 己情 報 コ ン トロ ー ル権 につ いて も また 複 雑 な 影 を 投 げ か けて きた とい え る。 … Falvo判 決 は 、Tinker判 決 以 降 ヽ 急 激 な法 化 現 象 が 進行 した ア メ リカ の 学 校 教 育 にお いて 、 教 育 の本 質 は何 か と い う基 本 的視 点 に 再 度 立 ち 返 る必 要 性 を 示 した と い う点 に お い てヽ 大 き な意 義 を 有 して い る とい え る」 と述 べ る。 坂 田仰 ・前 掲 注5125頁 。 33)坂 田仰 ・前 掲 注5125頁 。

参照

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