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重力レンズ効果により観測された天体の質量の求め方

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重力レンズ効果により観測された天体

の質量の求め方

09S1-004 内間克豊

(2)

2

概要

私たちはさまざまな物質で満ち溢れた世界で生きている。そして、その広さは光でさえ膨

大な時間をかけていかなければならないほどの大きさなのである。それが“宇宙”である。

宇宙には様々な物質が存在し日々変動している。それは光も同じである。昔の人々は、真空

中の光は一直線に進むものと考えられていた。しかし、アインシュタインの一般相対性理論

によって、光は物体の重力によって曲げられることを人々は知った。それは衝撃的なニュー

スであったであろう。そして今では、その現象を見ることが出来るようになった。その現象

こそ、タイトルに含まれている言葉、

「重力レンズ効果」なのである。重力レンズ効果とは、

その名の通り、重力がまるでレンズのような役目をしているようにみえる現象である。その

ため、レンズの役目をするのは必ず重力を持たなければならないため、レンズの役目をする

物質を見つけられるのは簡単だろうと思われていた。しかし、なかにはまったく観測しても

見つからないということが報告されてきた。その物質こそ、今では宇宙の謎のひとつとして

研究が盛んに行われている「ダークマター」なのである。ダークマターは観測に引っかから

ないが、重力として観測を行えばたしかに存在する物質と考えられている。

そこで本研究は、重力レンズ効果によって、遠くの天体から発せられた光が環のように変

形された天体の像「アインシュタイン・リング」を用いて天体の質量を求め、さらにダーク

マターが存在することを質量-光度比によって確かめることにする。

(3)

3

目次

1.序論

1.1.アインシュタイン方程式から光の湾曲を求める

1.2.理論の検証

1.2.1.ニュートン力学の場合

1.2.1.1.ニュートン力学の計算方法(1)

1.2.1.2.ニュートン力学の計算方法(2)

1.2.2.一般相対性理論の場合

1.2.3.観測値を用いた理論の検証

1.3.重力レンズ天体の発見

2.本論文に使用した資料の説明

2.1.重力レンズ効果の種類

2.1.1.強い重力レンズ効果

2.1.2.弱い重力レンズ効果

2.1.3.重力マイクロレンズ効果

2.2.アインシュタイン・リングの仕組み

3.理論計算方法

3.1.アインシュタイン・リングまでの距離dの求め方

3.2.アインシュタイン・リング半径𝒓

𝑬

の求め方

3.3.天体の質量Mの求め方

3.4.質量-光度比𝑴 𝑳

⁄ の求め方

4.理論計算結果

5.考察

6.参考

6.1.参考文献

6.2.画像の引用ホームページ

7.物理定数表

8.謝辞

(4)

4 1.序論 遠方の天体からの光は我々に到達するまでに、宇宙の非一様な物質分布の影響でその経路が複雑 に湾曲する。これは重力のために空間が歪む効果であり、この効果のことを「重力レンズ効果(一部 の説明には“光の湾曲”として使う場合がある)」と呼んでいる。一般相対性理論によると“重力は 力ではない”という思考であるため、時空が歪むことによって実効的な屈折率が生じ、その結果光 の測地線が曲がる、という解釈の方がより適切かもしれません。しかし、重力レンズ効果は先に書 かれているように、一般相対性理論から導かれることを前提としているが、いったいどのような方 法で重力レンズ効果は導かれるのか、またそれが正確なのかを説明するため、次の「1.1.」には、 一般相対性理論の重要公式であるアインシュタイン方程式から光の湾曲を求め、その次の「1.2.」 には、太陽を例とした光の湾曲の理論値の求め方を、アインシュタインの重力理論の場合と、同じ く重力を主としているニュートン力学の場合を提示し、観測値を引用して、どちらが正確であり、 なおかつ重力レンズ効果を述べるのにふさわしいのかを検証を行う。 1.1.アインシュタイン方程式から光の湾曲を求める 物質は原点を中心に持ち、その周りに球対称の質量分布をしているとする。アインシュタインの 重力場の方程式 𝑅𝜇𝜈− 1 2𝑔𝜇𝜈𝑅 + Λ𝑔𝜇𝜈= − 8𝜋𝐺 𝑐4 𝑇𝜇𝜈 (1.1.1) から宇宙項Λ𝑔𝜇𝜈は無視できるとし、物質の外部の重力場方程式 𝑅𝑖𝑗 = 0 (1.1.2) を解く。線素の式 (𝑑𝑠)2= 𝑔 00(𝑟)𝑐2(𝑑𝑡)2+ 𝑔11(𝑟)(𝑑𝑟)2− 𝑟2{(𝑑𝜃)2+ 𝑠𝑖𝑛2𝜃(𝑑𝜑)2} (1.1.3) と仮定する。球対称で静的という条件により求めようとする基本テンソル𝑔00と𝑔11はr だけを含み、 t に無関係であるとする。(1.1.3)で c は光速度(一定)であり、t は時間(座標時間)を表すパラメータ、 r は原点からの距離、θとφは方向を与える空間座標である。 𝑥0= 𝑐𝑡 , 𝑥1 = 𝑟 , 𝑥2= 𝜃 , 𝑥3 = 𝜑 (1.1.4) 𝑔00(𝑟) = 𝑒𝑓(𝑟) , 𝑔11= −𝑒𝜓(𝑟) とおくと、 (𝑑𝑠)2= 𝑒𝑓(𝑟)(𝑑𝑥(0)) − 𝑒𝜓(𝑟)(𝑑𝑥1)2− 𝑟2{(𝑑𝑥2)2+ 𝑠𝑖𝑛2𝜃(𝑑𝑥3)2} (1.1.5) となる。このとき、 𝑔22(𝑟) = −𝑟2 , 𝑔 33(𝑟, 𝜃) = −𝑟2𝑠𝑖𝑛2𝜃 (1.1.6) 𝑔𝑖𝑗 = 0 (𝑖 ≠ 𝑗) である。𝑔𝑖𝑗は対角行列であるから、その逆行列

(5)

5 𝑔00 = 𝑒𝑓(𝑟) , 𝑔11= −𝑒−𝜓(𝑟) , 𝑔22= −𝑟2 (1.1.7) 𝑔33= −(𝑟𝑠𝑖𝑛𝜃)−2 , 𝑔𝑖𝑗 = 0 (𝑖 ≠ 𝑗) がただちに求められる。 𝜕𝑔𝑖𝑗𝜕𝑥0= 0なので、3 指標記号 {𝑖𝑗} =𝑘 1 2𝑔𝑘𝑙( 𝜕𝑔𝑗𝑙 𝜕𝑥𝑖 + 𝜕𝑔𝑖𝑙 𝜕𝑥𝑗 − 𝜕𝑔𝑖𝑗 𝜕𝑥𝑙) (1.1.8) は、 { 000} = −1 2𝑔00 𝜕𝑔00 𝜕𝑥0 = 0 (1.1.9) { 001} =1 2𝑔00 𝜕𝑔00 𝜕𝑥1 = 1 2 𝑑𝑓 𝑑𝑟 = { 010} のように計算される。そのほかの{𝑖𝑗} = 00 であり、さらに { 100} =1 2 𝑑𝑓 𝑑𝑟𝑒𝑓−𝜓 , { 111} = 1 2 𝑑𝜓 𝑑𝑟 { 122} = −𝑟𝑒−𝜓 , { 1 33} = −𝑟𝑠𝑖𝑛2𝜃𝑒−𝜓 { 212} =1 𝑟= { 221} , { 233} = −𝑠𝑖𝑛𝜃𝑐𝑜𝑠𝜃 (1.1.9′) { 313} =1 𝑟= { 331} , { 323} = 𝑐𝑜𝑠𝜃 𝑠𝑖𝑛𝜃= { 332} そのほかの{𝑖𝑗} = 0 𝑘 となる。 リッチ・テンソル𝑅𝑖𝑗を求めると0 でない成分として、 𝑅00= −𝑒𝑓−𝜓{𝑓′′ 2 + 𝑓′ 4(𝑓′− 𝜓′) + 𝑓′ 𝑟} 𝑅11= 𝑓′′ 2 + 𝑓′ 4(𝑓′− 𝜓′) − 𝜓′ 𝑟 (1.1.10) 𝑅22= −1 + 𝑒−𝜓{1 +𝑟 2(𝑓′− 𝜓′)} 𝑅33= 𝑠𝑖𝑛2𝜃𝑅 22 を得る。ただし、 f′=𝑑𝑓 𝑑𝑟 , 𝑓′′= 𝑑2𝑓 𝑑𝑟2 , 𝜓′= 𝑑𝜓 𝑑𝑟 (1.1.10′)

(6)

6 である。 重力場の方程式(1.1.2)はしたがって、 𝑅00= 0 , 𝑅11= 0 , 𝑅22= 0 (1.1.11) となる。𝑅00= 0と𝑅11= 0とを組み合わせると f とψの間の関係 f′+ ψ= 0 (1.1.12) が得られる。したがってf + ψ = b(定数)。これを𝑅22= 0に代入して f を消去すると、 𝑅22= −1 + 𝑒−𝜓(1 − 𝑟 𝑑𝜓 𝑑𝑟) = 0 (1.1.13) これを積分して積分定数をa とすれば、 𝑒−𝜓= 1 −𝑎 𝑟 (1.1.14) を得る。これらの解を(1.1.10)に代入するとすべての方程式が満たされることがわかる。 したがって(1.1.3)は、 (𝑑𝑠)2= (1 −𝑎 𝑟) 𝑒𝑏(𝑑𝑥0)2− (𝑑𝑟)2 1 − 𝑎 𝑟⁄ − 𝑟2{(𝑑𝜃)2+ 𝑠𝑖𝑛2𝜃(𝑑𝜑)2} (1.1.15) となる。ここでb は任意の定数であって、座標時 t のとり方は任意性を含むから、𝑒𝑏 2⁄ 𝑥0を改めて 𝑥0= 𝑐𝑡とすれば、 (𝑑𝑠)2= 1 −𝑎 𝑟𝑐2(𝑑𝑡)2− (𝑑𝑟)2 1 − 𝑎 𝑟⁄ − 𝑟2{(𝑑𝜃)2+ 𝑠𝑖𝑛2𝜃(𝑑𝜑)2} (1.1.16) となる。これが「シュヴァルツシルトの解」である。これは物質の外の解なので、「シュヴァルツシ ルトの外部解」ともいう。 定数a を決めるには、弱い重力の場合の近似を用いればよいのである。そこで、ここからは弱い 重力の場合の近似を求めることにする。 重力がないとき、時空は平坦(ミンコフスキー時空)であって、基本テンソル𝑔𝑖𝑗は準ユークリット 系の基本テンソル (𝑛𝑖𝑗) = ( 1 0 0 0 0 −1 0 0 0 0 −1 0 0 0 0 −1 ) (1.1.17) に等しいから、弱い重力の場において、 𝑔𝑖𝑗 = 𝜂𝑖𝑗= ℎ𝑖𝑗 (1.1.18) とすると、 |ℎ𝑖𝑗| ≪ 1 (1.1.19) と考えられる。さらに、𝑔𝑖𝑗が𝑥0= 𝑐𝑡に無関係(静的な場)であるとすると、𝜕𝑔 𝑙0⁄𝜕𝑥𝑜 = 0なので、 k=1,2,3 に対し、 { 𝑘 00} ≅ − 1 2𝑔𝑘𝑙 𝜕𝑔00 𝜕𝑥𝑙 = 1 2 𝜕𝑔00 𝜕𝑥𝑘 (𝑘 = 1,2,3) (1.1.20) とおける(𝑔𝑘𝑘≅ −1(𝑘 = 1,2,3)を考慮する)。 物体の速度が光速c に比べて十分小さいときは、

(7)

7 τ ≅ t , 𝑑𝑥0 𝑑𝑡 ≅ 𝑐 , 𝑑𝑥𝑘 𝑑𝜏 ≅ 𝑑𝑥𝑘 𝑑𝑡 ≅ 0 (1.1.21) なので、運動方程式 𝑑2𝑥𝑘 𝑑𝜏2 + { 𝑘 𝑖𝑗} 𝑑𝑥𝑖 𝑑𝜏 𝑑𝑥𝑗 𝑑𝜏 = 0 (1.1.22) のk=1,2,3 成分は、 𝑑2𝑥𝑘 𝑑𝜏2 + 𝑐2 2 𝜕𝑔00 𝜕𝑥𝑘 = 0 (𝑘 = 1,2,3) (1.1.23) となる。 他方でニュートン力学ではΦを万有引力のための重力ポテンシャルとして運動方程式は、 𝑑2𝑥𝑘 𝑑𝑡2 + 𝜕Φ 𝜕𝑥𝑘 = 0 (𝑘 = 1,2,3) (1.1.24) したがって(1.1.23)と(1.1.24)を比べΦ → 0のとき𝑔00 → 1であることを考慮すれば、 𝑔00= 1 + 2 𝑐2Φ (1.1.25) であることがわかる。これが弱い重力の場合の近似である。 ここでΦは原点にある物質(例えば太陽)の質量を M、万有引力定数を G とすると、 Φ = −𝐺𝑀 𝑟 (1.1.26) なので、 𝑔00= 1 − 𝑎 𝑟 = 1 − 2 𝑐2 𝐺𝑀 𝑟 (1.1.27) したがって、 a =2𝐺𝑀 𝑐2 (1.1.28) であることがわかる。a のことを「シュヴァルツシルト半径」という。 ここからは、太陽のまわりの惑星の運動式を導くことにする。 太陽の重力場の中の運動を知るには測地線の方程式を解いてもよいが、そのためには3 指標記号 {𝑖𝑗} 𝑘 (1.1.29) を求める必要があり、これは少し面倒な計算である。 もっとも簡単なのは、測地線のもとに戻って測地線は積分∫ 𝑑𝑠が極値をとる経路であるというハ ミルトン原理を用いることである。これは、 δ ∫ 𝑑𝑠 = 0 (1.1.30) と書かれる。線素ds としては、シュヴァルツシルトの解を用いればよいのである。これは、 (𝑑𝑠)2= (1 −𝑎 𝑟) (𝑑𝑥0)2− (𝑑𝑟)2 1 − 𝑎 𝑟⁄ − 𝑟2{(𝑑𝜃)2+ 𝑠𝑖𝑛2𝜃(𝑑𝜑)2} (1.1.31)

(8)

8 である(𝑥0= 𝑐𝑡)。したがって、 L = [(1 −𝑎 𝑟) ( 𝑑𝑥0 𝑑𝜏 ) 2 − ( 𝑑𝑟 𝑑𝜏) 2 1 − 𝑎 𝑟⁄ − 𝑟2{( 𝑑𝜃 𝑑𝜏) 2 + 𝑠𝑖𝑛2𝜃 (𝑑𝜑 𝑑𝜏) 2 }] 1 2 (1.1.32) とおくと、(1.1.30)は変分原理 δ ∫ 𝐿𝑑𝜏 = 0 (1.1.33) を与える。そこで𝑥0、θ、φに対するオイラーの方程式 𝑑 𝑑𝑡{ 𝜕𝐿 𝜕(𝜕𝑥𝑖⁄ )𝜕𝜏 } − 𝜕𝐿 𝜕𝑥𝑖 = 0 (𝑥𝑖 = 𝑥0, 𝜃, 𝜑) (1.1.34) 書き下すと、 𝑑 𝑑𝜏{(1 − 𝑎 𝑟) 𝑑𝑥0 𝑑𝜏 } = 0 (1.1.35) 𝑑 𝑑𝜏(𝑟2 𝑑𝜃 𝑑𝜏) − 𝑟2𝑠𝑖𝑛𝜃𝑐𝑜𝑠𝜃 ( 𝑑𝜑 𝑑𝜏) 2 = 0 (1.1.36) 𝑑 𝑑𝜏{𝑟2𝑠𝑖𝑛2𝜃 𝑑𝜑 𝑑𝜏} = 0 (1.1.37) を得る。さらに𝑥𝑖 = 𝑟に対するオイラー方程式を求めてもよいが、これらは線素の式と独立ではない ので、4 番目の式としては線素の式と同様な (1 −𝑎 𝑟) ( 𝑑𝑥0 𝑑𝜏 ) 2 − ( 𝑑𝑟 𝑑𝜏) 2 1 − 𝑎 𝑟⁄ − 𝑟2{( 𝑑𝜃 𝑑𝜏) 2 + 𝑠𝑖𝑛2𝜃 (𝑑𝜑 𝑑𝜏) 2 } = 𝑐2 (1.1.38) を用いることにしよう。 ある時間に、 θ =𝜋 2 , 𝑑𝜃 𝑑𝜏 = 0 (1.1.39) であったと仮定すると、軌道は常にこの面θ = 𝜋 2⁄ に乗っていることが(1.1.36)からわかるので、こ れを仮定すると(1.1.37)から、 𝑟2𝑑𝜑 𝑑𝜏 = ℎ (一定) (1.1.40) を得る。これは面積速度の式「𝑟2𝜑̇ = ℎ(一定)」に相当しますが、静止系における時間 t を用いると dτ = dt√1 − 𝑣2⁄ であるので、 𝑐2 𝑟2 √1 − 𝑣2𝑐2 𝑑𝜑 𝑑𝑡 = ℎ (1.1.41) を意味する。 (1.1.35)を積分し、積分定数を b とおくと、

(9)

9 (1 −𝑎 𝑟) 𝑑𝑥0 𝑑𝜏 = 𝑏 (1.1.42) を得る。また(.1.40)から、 𝑑𝑟 𝑑𝜏= −ℎ 𝑑 𝑑𝜑( 1 𝑟) (1.1.43) が得られる。そこで(1.1.39)から𝑑𝜃 𝑑𝜏⁄ を、(1.1.40)から𝑑𝜑 𝑑𝜏⁄ を、(1.1.42)から𝑑𝑥0⁄ を、(1.1.43)𝑑𝜏 から𝑑𝑟 𝑑𝜏⁄ を、それぞれ(1.1.38)に代入しますと、 (1 −𝑎 𝑟) −1 [𝑏2− ℎ2{ 𝑑 𝑑𝜑( 1 𝑟)} 2 ] −ℎ2 𝑟2= 𝑐2 (1.1.44) これを整理すると、 { 𝑑 𝑑𝜑( 1 𝑟)} 2 + (1 𝑟) 2 =𝑎𝑐2 ℎ2 1 𝑟+ 𝑏2− 𝑐2 ℎ2 + 𝑎 ( 1 𝑟) 3 (1.1.45) となる。 (1.1.45)をφで微分すれば、太陽のまわりの惑星の運動は、 𝑑2 𝑑𝜑2( 1 𝑟) + 1 𝑟 = 𝐺𝑀 ℎ2 + 3 2𝑎 ( 1 𝑟) 2 (1.1.46) で与えられることがわかる。ここで、a は式(1.1.28)「シュヴァルツシルト半径」であることを考慮 する。次からは光の湾曲の導き方を説明する。 【図1.1.1】 重力を受けた光の軌道も、物体と同様に測地線で与えられるが、測地線の方程式の各成分に対す る式のうちの 1 つを線素自身の式でおきかえるときに、光に対しては特に(𝑑𝑠)2 = 𝑐2(𝑑𝜏)2= 0とし なければなりません。 そこで太陽による球対称な重力場を通る光線を一般相対性理論で扱うときは、

(10)

10 𝑟2𝑑𝜑 𝑑𝜏 = ℎ で dt → 0 (あるいは 𝑟2 √1 − 𝑣2𝑐2 𝑑𝜑 𝑑𝑡 = ℎ で𝑣 → 𝑐) とすればよいのである。これは、 𝑟2𝑑𝜑 𝑑𝜏 = ℎ → ∞ (1.1.47) とすることである。したがって、光線の奇跡は 𝑑2 𝑑𝜑2( 1 𝑟) + 1 𝑟= 𝐺𝑀 ℎ2 + 3 2𝑎 ( 1 𝑟) 2 (𝑎 =2𝐺𝑀 𝑐2 ) (1.1.48) から 𝑑2 𝑑𝜑2( 1 𝑟) + 1 𝑟= 3𝐺𝑀 𝑐2 ( 1 𝑟) 2 (1.1.49) で与えられることになる。 第1 近似として(1.1.49)の右辺を無視すると、 𝑑2 𝑑𝜑2( 1 𝑟) ≅ − 1 𝑟 (1.1.50) ∴1 𝑟 = 𝑐𝑜𝑠𝜑 𝑅 (𝑅 = 一定) (1.1.51) となる(図 1.1.2)。 【図1.1.2】 これを(1.1.49)の右辺に入れた式 𝑑2 𝑑𝜑2( 1 𝑟) + 1 𝑟 = 3𝐺𝑀 𝑐2𝑅2𝑐𝑜𝑠2𝜑 (1.1.52) は(1.1.49)の近似式である。ここで、 𝑑 𝑑𝜑𝑠𝑖𝑛2𝜑 = 2𝑠𝑖𝑛𝜑𝑐𝑜𝑠𝜑 (1.1.53) 𝑑2 𝑑𝜑2𝑠𝑖𝑛2𝜑 = 2(𝑐𝑜𝑠2𝜑 − 𝑠𝑖𝑛2𝜑) = 2(1 − 2𝑠𝑖𝑛2𝜑) したがって、

(11)

11 𝑑2 𝑑𝜑2(1 + 𝑠𝑖𝑛2𝜑) + (1 + 𝑠𝑖𝑛2𝜑) = 3𝑐𝑜𝑠2𝜑 (1.1.54) に注目すれば、(1.1.52)の特解として 1 𝑟 = 𝐺𝑀 𝑐2𝑅2(1 + 𝑠𝑖𝑛2𝜑) = 𝐺𝑀 𝑐2𝑅2(𝑐𝑜𝑠2𝜑 + 2𝑠𝑖𝑛2𝜑) (1.1.55) を得る。この特解を(1.1.52)の右辺を 0 とおいた同次式の解(50)に加えれば(52)の一般解として 1 𝑟= 𝑐𝑜𝑠𝜑 𝑅 + 𝐺𝑀 𝑐2𝑅2(𝑐𝑜𝑠2𝜑 + 2𝑠𝑖𝑛2𝜑) (1.1.56) が得られる。さらにx = rcosφ、y = rsinφとおき、(1.1.56)の両辺に rR を掛けて移項すれば、 x = R −𝐺𝑀 𝑐2𝑅 𝑥2+ 2𝑦2 √𝑥2+ 𝑦2 (1.1.57) となる。したがって|𝑦| → ∞に対し、 x → R −2𝐺𝑀 𝑅𝑐2 |𝑦| (1.1.58) であって、光線は δ =4𝐺𝑀 𝑅𝑐2 (1.1.59) だけ方向が曲がることになる(図 1.1.1)。 1.2.理論の検証 ここから、本題である光の湾曲を導く。そこで、「ニュートン力学」と「一般相対性理論」のどち らが正確に導き出されるのかを調べるため、それぞれの光の湾曲の導き方を説明する。 最初は「ニュートン力学」の場合を説明する。 1.2.1.ニュートン力学の場合 ニュートン力学には計算方法が違う場合がある。そこで、代表的な 2 つの方法を説明する。 1.2.1.1.ニュートン力学の計算方法(1) ニュートン力学によれば、太陽(質量 M、万有引力定数 G)の引力を受けて xy 面を運動する物体の 運動方程式は、太陽が座標原点にあるとして、 𝑑2𝑥 𝑑𝑡2 = − 𝐺𝑀𝑥 (𝑥2+ 𝑦2)2 3⁄ (1.2.1.1.1)

(12)

12 𝑑2𝑦 𝑑𝑡2 = − 𝐺𝑀𝑦 (𝑥2+ 𝑦2)3 2⁄ で与えられる。この運動方程式は物体の質量によりません。したがって光が粒子であって万有引力 を受けるとすればその運動方程式は(1.2.1.1.1)によって与えられるはずである。 (1.2.1.1.1)は完全に積分できるが、ここでは光の速度が大きく、光は太陽によって進行方向がわず かに曲げられるだけであると考えて、近似的方法でこれを解いてみることにする。 第1 近似として y 軸に平行に x=R を通る軌道(図 1.1.1) x = R , y = ct (1.2.1.1.2) を採用すると、 𝑑 𝑑𝑡≅ 𝑐 𝑑 𝑑𝑦 (1.2.1.1.3) これを(1.2.1.1.1)に代入すると、 𝑑2𝑥 𝑑𝑦2= − 𝐺𝑀𝑅 𝑐2(𝑅2+ 𝑦2)3 2⁄ (1.2.1.1.4) となる。この式の近似解は、 x = R −𝐺𝑀 𝑅𝑐2√𝑅2+ 𝑦2 (1.2.1.1.5) したがって、 |𝑦| → ∞で x → R −𝐺𝑀 𝑅𝑐2|𝑦| (1.2.1.1.6) であり、光の進行方向の変化は、ニュートン力学では、 δ =2𝐺𝑀 𝑅𝑐2 (1.2.1.1.7) で与えられる。 1.2.1.2.ニュートン力学の計算方法(2) 太陽のへりを通る時の曲がる角度を計算する。 あるとき、遠方から光がやってきたと仮定する。その時、光は太陽の重力で湾曲する。それは図 1.2.1.2.1 のように、そのまま進むと太陽の縁をかすめるようにやってきた光を考えられる。粒子で その速さが光の速さcだと考える。できるだけ簡単にするために、太陽の横を通り過ぎる時だけ太 陽からの重力を受けるのだと考える。

(13)

13 【図1.2.1.2.1】 太陽の半径をRとする。速さcの粒子が2Rだけ進むのにかかる時間は、 2𝑅 𝑐 (1.2.1.2.1) である。粒子が太陽の方向に受ける重力をmgとする。するとその方向に受ける加速度はgですか ら、その間に速度がどれだけ増えるかといいますとそれは、2𝑅 𝑐⁄ とgの積である。それは、 2𝑅 𝑐 × 𝑔 = 2𝑔𝑅 𝑐 (1.2.1.2.2) となる。 【図1.2.1.2.2】 速度の水平成分はc、上下成分は下向きに2𝑔𝑅 𝑐⁄ ですから角度tan 𝜃は図 1.2.1.2.2 より、 tan 𝜃 =2𝑔𝑅 𝑐⁄ 𝑐 = 2𝑔𝑅 𝑐2 (1.2.1.2.3) となる。ここでのgは太陽表面の重力加速度である。ニュートンの万有引力の法則より重力加速度 gは、 g =𝐺𝑀 𝑅2 (1.2.1.2.4)

(14)

14 となる。ただしGは万有引力定数、Mは太陽質量、Rは太陽の半径である。したがって、 tan 𝜃 =2𝑔𝑅 𝑐2 = 2(𝐺𝑀 𝑅⁄ )𝑅2 𝑐2 = 2𝐺𝑀 𝑅𝑐2 (1.2.1.2.5) となる。θは1 に比べて小さいですから、tan 𝜃はθで近似できる。したがって、 θ =2𝐺𝑀 𝑅𝑐2 (1.2.1.2.6) であり、(1.2.1.1.7)と同じになる。 (例)太陽の場合 M = M = 1.99 × 1030kg、R = R ⨀= 6.96 × 108mとし、万有引力定数 G = 6.67 × 10−11m3kg−1s−2、 光速c = 2.99 × 108ms−1を代入すると、 δ =2 × 6.67 × 10 −11× 1.99 × 1030 6.96 × 108× (2.99 × 108)2 ≅ 4.27 × 10−6[𝑟𝑎𝑑] ≅ 0.89["] となる。 1.2.2.一般相対性理論の場合 式(1.1.59)より、M = 𝑀= 1.99 × 1030𝑘𝑔、R = 𝑅 ⨀ = 6.96 × 108𝑚とし、万有引力定数 G = 6.67 × 10−11𝑚3𝑘𝑔−1𝑠−2、光速c = 2.99 × 108𝑚𝑠−1を代入すると、 δ =4 × 6.67 × 10 −11× 1.99 × 1030 6.96 × 108× (2.99 × 108)2 ≅ 8.53 × 10−6[𝑟𝑎𝑑] ≅ 1.76["] となる。 1.2.3.観測値を用いた理論の検証 さて、太陽を例として光の湾曲を計算したのですから、後は観測してどちらが正確であるか確か めるだけである。しかし、直接望遠鏡で太陽を観測は出来ませんので、日食(太陽-月-地球がこの 順にほぼ一直線に並び、月が太陽の前を横切るときに太陽を隠す現象)に観測を行う必要がある。そ れを観測したのは、イギリスの天文学者アーサー・エディントンなのである。 エディントンは、アインシュタインの一般相対性理論を理解し、理論から光が重力場によって湾 曲することを知り、それが正しいのかを検証するため、1919 年 5 月 29 日、日食を観察しました。 そこで観測された結果が図1.2.3.1 のようになっている。

(15)

15 観測地点 観測した星の数 星のズレ ソブラル島(ブラジル) 7 1.98 ± 0.16" プリンシペ島(ギニア) 5 1.61 ± 0.40" 【図1.2.3.1】 この星のズレと先ほど出しましたニュートン力学と一般相対性理論の理論値を比較しますと、一般 相対性理論の理論値にほぼ一致していることがわかる。この出来事は世界中の人々に衝撃を与え、 アインシュタインは一躍有名人となりました。 1.3.重力レンズ天体の発見 アインシュタインは“光の湾曲と同じようなことが宇宙で行われていて、それが地球から見ると 天体が歪んでいるように見えるはずである”と予言しました。この天体のことを「重力レンズ天体」 と呼ぶ。しかし、なかなか見つからないまま1979 年を迎えました。 1970 年頃になると、重力レンズ天体探しは、「2 つ(または複数)の天体が非常に近距離にあること」、 「天体の特徴が同じであること」の 2 つの点に留意して行われました。重力レンズ効果では、もと もと同じものの像が2 つ(あるいは複数)に見えているのですから、見かけ上、そんなに大きく離れて 見えるはずがありませんし、それ以上に、全く異なった特徴を持つように見えるわけがありません。 そして 1979 年、その特徴を持ったクェーサー天体「QSO0957+561」が D.Walsh らによって発 見されました。この発見により、「重力レンズ天文学」は研究が盛んに始まりました。

(16)

16 2.本論文に使用した資料の説明 本論文に使用した資料は、「強い重力レンズ効果であり、なおかつアインシュタイン・リングが観 測できる天体」を採用している。そこで、「重力レンズ効果の種類」と「アインシュタイン・リング の意味とその仕組み」を説明する。 2.1.重力レンズ効果の種類 重力レンズ効果は3 種類に分類される。 2.1.1.強い重力レンズ効果 特に強い重力ポテンシャルを受けた場合には、遠方天体からの光が複数の異なる経路を通って観 測者に到達する場合がある。その結果、同一の天体に対して、見かけ上複数の分離した像が観測さ れる。これを強い重力レンズ効果と呼ぶ。ほぼ点光源とみなしてよい遠方のクェーサーが途中の銀 河の強い重力レンズ効果によって多重像として観測されている例は、すでに100 個ほど報告されて いる。 図2.1.1.1 図2.1.1.1 は銀河団 Abell2218 といい、アーク状に見える天体はこの銀河団の背後にある銀河が、 重力レンズ効果で歪められたものである。

(17)

17 2.1.2.弱い重力レンズ効果 星やクェーサーとは異なり、銀河は点光源ではなく有限の広がりを持っている。この場合、銀河 の異なる場所から出た光は若干異なる重力レンズ効果を受けるため、観測される銀河の形状が本来 のものに比べて歪む。これを弱い重力レンズ効果と呼ぶ。実は本来の銀河の形はわからないため、1 個の銀河を観測しただけでは、重力レンズ効果による変形の度合いを抜き出すことはできません。 しかしある銀河団の回りにある多数の背景銀河の形状を統計的に解析すれば、その系統的な歪みの 成分から弱い重力レンズ効果を検出することができる。それから逆に、レンズ効果を及ぼす天体で ある銀河団の重力ポテンシャルを推定できる。 2.1.3.重力マイクロレンズ効果 多重像ができるということはそれらを足し合わせれば、重力レンズ効果を受けていない場合に比 べてより明るくなることが予想できる。とすれば分離角が小さいため分離した複数像として観測さ れない場合でも、天体の明るさは重力レンズ効果によって変化しているはずである。特に、銀河系 内の暗い天体が背景星の手前を横切る場合にはこの明るさの変化が時系列として観測できるはずで ある。これを(重力)マイクロレンズ効果と呼ぶ。 2.2.アインシュタイン・リングの仕組み 本論文に使用した資料は、「強い重力レンズ効果であり、なおかつアインシュタイン・リングが観 測できる天体」を採用している。そこで、「重力レンズ効果の種類」と「アインシュタイン・リング の意味とその仕組み」を説明する。 図2.2.1 を見てください。これは重力レンズ効果の概念図である。 【図2.2.1】

(18)

18 遠方の光源(たとえばクェーサー)から発せられた光が、間にある重力レンズ(たとえば銀河)によっ てその進路を曲げられ、その結果、光源の像が複数個、違った場所に見えてしまうのである。光線 が曲がる角度は、銀河の質量が重いほど、また光線の通り道が銀河に近いほど大きくなる。 重力レンズ効果が起こるときには、光源とレンズ天体と私たち観測者は、おおむね一直線上に並 んでいますが、直線からのズレの程度によってできる像の形が違うのである。 【図2.2.2】 もし光源とレンズ天体と観測者が完全に一直線上に並んだときには、レンズ天体の左右を通る光 が同じ角度だけ曲げられ、立体的に見た場合には完全な輪となって見えるのである(図 2.2.2)。それ が、「アインシュタイン・リング」と呼ばれるモノなのである。直線から少しズレると、光源の重力 レンズ像は円弧状となり、もっとズレると複数個の像となり、さらにズレると重力レンズ像が出来 なくなってしまうのである。

(19)

19 3.理論計算の仕方 さて、いよいよ資料を使用し、天体の質量Mを求めていきますが、天体の質量M を求めるために は、いくつかの材料が必要となる。 まず最初に判明する材料は、天体の観測値です。天体を知るためにまずやらなければいけないの が天体の観測である。そこから得られる観測値は、観測した天体のプロフィールのようなものであ るため、天体の特徴を細かく知るためには必要不可欠なのである。今回の本論文では、直接観測し た値ではなく、発表されている論文の値を引用して理論計算を行っていますので、生の値は提示す ることが出来ないことを、ここでお詫び申し上げます。 次に判明する材料は、理論計算によって導かれたさまざまな理論値である。天体の質量Mを求め るためには、天体の観測値だけでは表せられないので、いくつかの物理公式や物理定数を応用しな がら、段階を踏んでいろんな理論値を求めてから天体の質量Mを求めていく必要がある。その段階 は大きく分けて2 つある。 まず最初に行う作業は、「アインシュタイン・リングまでの距離dの求め方」である。 3.1.アインシュタイン・リングまでの距離dの求め方 アインシュタイン・リングまでの距離をdとおくとする。そこで、距離dを求めるのに使用する のは、「ハッブルの法則」である。ハッブルの法則とは、天体の後退速度をv、ハッブル定数を𝐻0、 天体までの距離をd、光速度をc、赤方偏移をzとすると、 v = 𝐻0𝑑 (3.1.1) v = cz (3.1.2) である。この法則は、1929 年、アメリカの天文学者エドウィン・ハッブルによって発見された、宇 宙が膨張していることを公式である。 (3.1.1)、(3.1.2)より、距離dは、 d = 𝑐𝑧 𝐻0 (3.1.3) となる。ただしこの場合、z ≪ 1であることが条件だが、本論文でのzは 0.1 以上の天体を採用して いるため、式(3.1.2)を修正する必要がある。そこで、アインシュタインの特殊相対性理論における ドップラー効果の公式を採用すると、zとvの関係は、 z = √1 + 𝑣 𝑐 1 −𝑣𝑐− 1 (3.1.4) で表される。これをvについて解くと、 v =(𝑧 + 1) 2− 1 (𝑧 + 1)2+ 1× 𝑐 (3.1.5) となる。

(20)

20 したがって、(3.1.1)に(3.1.5)を代入し直すと、 d[𝑚] = 𝑐 𝐻0× (𝑧 + 1)2− 1 (𝑧 + 1)2+ 1 (3.1.6) となり、距離dが求められる。このとき、距離の単位をメートル[m]とする。 図3.1.1 は、(3.1.3)、(3.1.6)を採用したグラフである。縦軸は天体までの距離d、横軸は赤方偏移 zである。このようにグラフで見ると、zが大きくなるほど、距離dの値の差が大きくなることが わかる。 次の作業はアインシュタイン・リングの半径𝑟𝐸の求め方である。 【図3.1.1】

0

2000

4000

6000

8000

10000

12000

14000

16000

18000

0

0.

2

0.

4

0.

6

0.

8

1

1.

2

1.

4

1.

6

1.

8

2

2.

2

2.

4

2.

6

2.

8

3

3.

2

3.

4

3.

6

3.

8

4

pc

赤方偏移z

編集したハッブ

ルの法則

本来のハッブル

の法則

(21)

21 3.2.アインシュタイン・リングの半径𝒓𝑬の求め方 アインシュタイン・リングの半径を𝑟𝐸、アインシュタイン・リングまでの距離をdとし、三角測 量の原理を用いると、 𝑟𝐸 = 𝑑 sin 𝜃 (3.2.1) となる。しかし、天文学ではθが微小な値を用いる。よって、θ ≈ sin 𝜃と近似されるので、(3.2.1) は、 𝑟𝐸 = 𝑑𝜃 (3.2.2) となる。また、天文学においてθはラジアン[rad]で示され、1 度の 3600 分の 1(これを 1 秒角["]と いう)を用いる。1rad は、 1[𝑟𝑎𝑑] =180°× 3600" 𝜋 (3.2.3) となる。よって、1 秒角["]は、 1["] = 𝜋 180°× 3600"[𝑟𝑎𝑑] (3.2.4) 以上により、アインシュタイン・リングの半径𝑟𝐸は、 𝑟𝐸[𝑚] = 𝑑 × 𝜋 180°× 3600"× 𝑟𝐸["] (3.2.5) と求められる。このとき𝑟𝐸の単位をメートル[m]とする。 このようにしていろんな材料を武器にしてから最後に行う作業が、「天体の質量Mの求め方」であ る。 3.3.天体の質量Mの求め方 一般相対性理論によって導かれた式(1.1.59)より、 θ =4𝐺𝑀 𝑟𝐸𝑐2 (3.3.1) となる。これを(3.2.2)に代入すると、 (𝑟𝐸)2=𝑑 × 4𝐺𝑀 𝑐2 (3.3.2) となる。 シュヴァルツシルト半径の式(1.1.28) a =2𝐺𝑀 𝑐2 より、𝑟𝐸は、 𝑟𝐸= √2𝑎𝑑 (3.3.3) となる。(3.3.3)を a について解くと、

(22)

22 a =(𝑟𝐸) 2 2𝑑 (3.3.4) となる。(3.3.4)に(3.1.3)を代入すると、 a =(𝑟𝐸) 2𝐻 0 2𝑐𝑧 (3.3.5) となる。 シュヴァルツシルト半径の式(1.1.28)を天体の質量Mについて求めると、 𝑀 =𝑎𝑐 2 2𝐺 (3.3.6) となる。(3.3.6)に(3.3.5)を代入すると、求める天体の質量Mは、 𝑀[𝑘𝑔] =(𝑟𝐸) 2𝑐𝐻 0 4𝐺𝑧 (3.3.7) で計算される。このときMの単位をキログラム[kg]とする。 天体の質量の関するある公式「質量-光度比」について説明する。この公式で導かれる値は、見 えない物質がどのくらい存在するのかを示すことができるのである。 3.4.質量-光度比𝑴 𝑳⁄ の求め方 質量-光度比とは、天体の質量Mを光度Lで割った量で、単位光度を放射するのに必要な質量を 意味する。これが大きい天体は放射の効率が低い。天文学固有の量であり、主に恒星以上の階層の 天体に適用される。生の値が扱われることがほとんどなく、通常は太陽の質量-光度比𝑀⨀⁄𝐿⨀ で割った無次元量 𝑀 𝐿 = (𝑀 𝑀⁄ ⨀) (𝐿 𝐿⁄ ⨀) (3.4.1) が用いられる。𝑀 𝐿⁄ という表記は、ほとんどの場合はこの無次元量を意味する。太陽は定義によっ て𝑀 𝐿⁄ = 1となる。その他の天体はおおよそではあるが図 3.4.1 のようになる。銀河や銀河団は光度 に寄与しないダークマターも含んでいるので、それだけ質量-光度比は大きくなる。

天体の種類

(𝑴 𝑳

⁄ )

主計列星、巨星 (太陽近傍)

0.7~1.5

白色矮星、中性子星 (太陽近傍)

0.1~0.6

渦巻銀河

7~21

楕円銀河

13~30

連銀河

15~100

銀河団

100~

【図3.4.1】

(23)

23 ここからは光度Lに関する式を導く。 見かけの等級𝑚𝑣は測定された輻射強度をfとすると、 mv= −2.5 log f + 定数 (3.4.2) という関係式がある。ここで、2.5 という因子は、1 等級の差に相当するものである。マイナス記号 がついているのは、等級は放射強度が強くなるにつれて、小さくなるためである。右辺第2 項の定 数はどのような等級基準をとるかで決まる定数である。 この関係式と同様に絶対等級Mv は天体の光度Lと、 M = −2.5 log L + 定数 (3.4.3) という関係で結びつけられる。太陽の場合、 Mv = −2.5 log L+ 定数 (3.4.4) という関係がある。ここで𝑀𝑣⨀は太陽の絶対等級で、𝐿⨀は太陽の本来の光度である。(3.4.3)、(3.4.4) を差し引くと、 Mv − Mv = −2.5 log(L L⁄ ) (3.4.5) となる。これをLについて解くと、 L L⨀= 10 −(Mv−Mv⨀) 2.5 (3.4.6) という関係式を得る。

(24)

24

4.理論計算の結果

前章により、天体の質量を求める方法を理論的に導くことが出来る。よってその方法を用いるこ とにする。例として「COSMOS0018+3845」という天体を用いて行う。それを基にして他の天体に 応用することにする。

COSMOS0018+3845 は COSMOS(Cosmic Evolution Survey:宇宙進化サーベイ)領域の中に存在 している天体である。 【図4.1】 図 4.1 を見てください。中央やや左にあるリングに近いアーク状の天体とその中央の天体を合わ せた天体がCOSMOS0018+3845 であります。そして、COSMOS0018+3845 の天体データは図 4.2 の通りです。 赤方偏移【z】 0.71 アインシュタイン・リングの半径【“】 1.32 絶対等級【Mv】 -19.20 【図4.2】

「Faure, C., et al.2008,ApJS,176,19」、「Lagattuta, D.J., et al.2010,ApJ,716,1579」より 図4.2 の天体データを基に、天体の質量を求める。 (3.1.6)より、アインシュタイン・リングまでの距離dは、 d =2.99 × 10 8 7.3 × 104 × (0.71 + 1)2− 1 (0.71 + 1)2+ 1≅ 2008[𝑀𝑝𝑐] ≅ 6.20 × 1025[𝑚] である。 (3.2.5)より、アインシュタイン・リングの半径𝑟𝐸は、

(25)

25 𝑟𝐸= 6.20 × 1025× 3.14 180 × 3600× 1.32 ≅ 3.97 × 1020[𝑚] である。 よって(3.3.7)より、天体の質量Mは、 M =(3.97 × 10 20)2× 2.99 × 108× 7.3 × 104 4 × 6.67 × 10−11× 0.71 ≅ 5.89 × 1041[𝑘𝑔] となった。 質量-光度比を用いる。求めた天体の質量Mを太陽質量𝑀⨀を用いると、 𝑀 𝑀= 5.89 × 1041 1.99 × 1030≅ 2.96 × 1011 となる。 (3.4.6)より、 𝐿 𝐿 = 10 −(−19.20−4.8)2.5 ≅ 3.98 × 109 となる。 以上により、(3.4.1)を用いて、COSMOS0018+3845 の質量-光度比の値は、 𝑀 𝐿 = 2.96 × 1011 3.97 × 109 ≅ 74.4 となる。これによって、質量のほとんどは見えない物質、つまりダークマターが主になっているこ とがこれにてわかる。 以上により、COSMOS0018+3845 の計算を基にして他の天体にも同じようにすると、図 4.1.1 の ようになる。ただし、図 4.1.1 は途中の値を四捨五入は行ってはいないので、例として求めた COSMOS0018+3845 の値が若干違うことに注意することである。

(26)

26 天体名 赤方偏移z 半径[“] 絶対等級 距離d [× 𝟏𝟎𝟐𝟓m] 半径𝒓𝑬 [× 𝟏𝟎𝟐𝟎m] 質量M [× 𝟏𝟎𝟒𝟏kg] (𝑴 𝑳⁄ )⨀ COSMOS 0012+2015 0.41 0.67 -20.84 4.19 1.36 1.19 3.32 COSMOS 0018+3845 0.71 1.32 -19.20 6.21 3.97 5.88 74.2 COSMOS 0038+4133 0.89 0.73 -22.31 7.12 2.52 1.89 1.36 COSMOS 0047+5023 0.85 1.41 -23.06 6.93 4.74 6.99 2.52 COSMOS 0049+5128 0.33 2.09 -19.81 3.51 3.56 10.2 73.2 COSMOS 0050+4901 1.01 1.69 -22.53 7.63 6.25 10.2 6.02 COSMOS 0056+1226 0.44 1.64 -21.16 4.42 3.51 7.43 15.4 COSMOS 0124+5121 0.84 0.86 -20.79 6.88 2.87 2.59 7.57 COSMOS 0211+1139 0.9 3.14 -23.05 7.17 10.9 35.0 12.7 COSMOS 0216+2955 0.67 1.75 -21.70 5.98 5.07 10.1 12.8 COSMOS 0227+0451 0.89 2.64 -22.05 7.12 9.11 24.7 22.6 COSMOS 5857+5949 0.39 2.28 -20.67 4.02 4.45 13.4 43.7 COSMOS 5914+1219 1.05 1.65 -22.33 7.79 6.23 9.78 6.91 COSMOS 5921+0638 0.45 0.7 -20.77 4.50 1.53 1.37 4.07 COSMOS 5941+3628 0.9 1.17 -22.43 7.17 4.06 4.85 3.13 COSMOS 5947+4752 0.28 1.97 -19.97 3.06 2.92 8.08 50.2 【図4.1.1】

(27)

27 5.考察 図4.1.1 より、質量-光度比の値はおおよそ1.3~75(𝑀 𝐿⁄ )と幅広いことがわかる。 本論文に示した天体の絶対等級は天体のすべての波長ではなく、V バンドと呼ばれる波長帯のみ を引用している。 【図5.1】 波長帯とは、図 5.1 のように、ある振動数の値Aからある振動数の値Bまでの範囲B-Aのこと を意味している。よって、すべての波長ではなくある波長帯のみを引用すると、式(3.4.6)により、 光度Lの関係式は小さな値になる。よってこの値を式(3.4.1)に代入すると、質量-光度比は光度に 反比例なため値は本来の値に比べ大きくなるのである。

(28)

28 6.参考 6.1.参考文献 ・ 岡村浩 著「相対論」(2004) 放送大学教育振興会 ・ 戸田盛和 著「物理学 30 講シリーズ 7 相対性理論 30 講」(1999) 朝倉書店 ・ 須藤靖 著「一般相対論入門」(2010) 日本評論社 ・ 須藤靖 著「もうひとつの一般相対論入門」(2010) 日本評論社 ・ 福江純・山田竜也 著「岩波科学ライブラリー47 重力レンズでさぐる宇宙」(1997) 岩波書店 ・ 谷口義明 著「暗黒宇宙で銀河が生まれる ハッブル&すばる望遠鏡が見た 137 億年宇宙の真実」 (2007) ソフトバンク クリエイティブ株式会社 ・ 小玉英雄 著「数理科学ライブラリ=3 宇宙のダークマター 暗黒物質と宇宙論の展開」(1992) サ イエンス社 ・ 岡崎洋二 著「宇宙科学入門」(2010) 東京大学出版会 ・ Graham Woan 著 堤正義 訳「ケンブリッジ物理公式ハンドブック ポケット版」(2012) 共立 出版株式会社 ・ 岡村定矩・家正則・犬塚修一郎・小山勝二・千葉柾司・富阪幸治 編「シリーズ現代の天文学 別 巻 天文学辞典」(2012) 日本評論社 ・ Faure, C., et al.2008,ApJS,176,19 ・ Lagattuta, D. J., et al.2010,ApJ,716,1579 6.2.画像の引用ホームページ ・http://cosmos.phys.sci.ehime-u.ac.jp/~tani/Cosmos/PressRelease/lensing.html ・http://hubblesite.org/gallery/album/pr2008009e/

(29)

29

7.物理定数表

物理定数名

記号

数値

光速度 c 𝟐. 𝟗𝟗 × 𝟏𝟎𝟖𝒎𝒔−𝟏 ハッブル定数 𝑯𝟎 𝟕. 𝟑 × 𝟏𝟎𝟒𝒎𝒔−𝟏𝑴𝒑𝒄−𝟏 メガパーセク Mpc 𝟑. 𝟎𝟗 × 𝟏𝟎𝟐𝟐𝒎 万有引力定数 G 𝟔. 𝟔𝟕 × 𝟏𝟎−𝟏𝟏𝒎𝟑𝒌𝒈−𝟏𝒔−𝟐 太陽の質量 𝑴 𝟏. 𝟗𝟗 × 𝟏𝟎𝟑𝟎𝒌𝒈 太陽の半径 𝑹⨀ 𝟔. 𝟗𝟔 × 𝟏𝟎𝟖𝒎 太陽の絶対等級 𝑴𝒗 +𝟒. 𝟖

(30)

30 8.謝辞 本卒業論文にあたり、研究室指導員の祖父江義明先生、小野寺幸子先生、日比野由美先生にはと ってもお世話になりました。この場を借りて深く感謝申し上げます。 この 1 年間はとても楽しく、そして辛い日々を過ごして参りました。何度も挫折をし、立ち直っ ては挫折を繰り返しての日々は、私の心を壊しかねないほどでした。なんにも覚えられない私は、 私自身を物理的に何度も傷つけました。しかしそんな私に救いの手を伸ばし、さまざまなアドバイ スを授けてくれた先生方は、そのときの私にとっては、神様のように見えました。それはそれは、 本当に涙を流しかねないほどでした。 そんな1 年を過ごし、今まさに大学生活の集大成としての卒業論文をこうやって表現しています。 卒業論文は大学生活の集大成と書きましたが、私にとっての卒業論文は、今までお世話になった人 への感謝を書いた手紙そのものではないのかなと思っています。 私は今年、大学生から大学院生となります。私自身はまだまだ未熟者だと思っていますが、未熟 者だからこそたくさんの物事を吸収することができます。だからこそ未熟者である利点を生かし、 物事への探求心を忘れずに精一杯頑張ります。いろいろと今後ご迷惑をお掛けしますということを 先に申し上げますが、そんな私自身をどうか暖かく見守って下さいますよう、今後ともよろしくお 願い申し上げます。 本当に1 年間ありがとうございました!

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