『ハムレット』における再現モチーフ
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(2) 2. 水. 落. 一. 朗. がら絶命する. So. tell血im,. Wbicb. have. with. tb'occurrents,. solicited-the. rest. more. and. less,. is silence.. ハムレットの三度くりかえされる真実を伝え,琴6D名誉を守ってくれるようにとの懇願 にうながされて,ホレィショーが再現してみせることになるのがこの戯曲である.このよ. うに,それ自身虚構である作品のなかでその作品の創造動機を語っていることは注目すべ きことである。テレソス・ホークスの表現を借りると,. 「-ムレットが舞台を離れるとこ. ろから,作品『-ムレット』が引き継ぐ」1)ことになるのだが,この動機の表明ほ,なに より,作品の構造に直接かかわってくる関与的信号である。言葉をかえていえば,究極的. には露呈軍れるべきクロ∵ディ、アスの犯罪を最後の破局にいたるまで,. A-ムレットとホレ. くホレィショ. ィショーの二人だけが知り,他の登場人物にはそれを隠蔽するという作者. ー〉の側の「距離の特権的操作」2)り.を意.味することになろう。しかしながら,なぜこのよ うに特権的操作がはどこされたかを考えてみると,やほり,この作品の基底的なモチーフ が再現にあり,作品中のいたるところでさまざまな再現を試み,虚構と現実の相互関係を 探求して,その意味を問うばかりではなく,作品全体が,. -ムレットの物語の声現の試み. であるという二重構造になっているからであると思うo. この小論の目的は,再現のモチーフと根源でかかわっている時間の問題をとりあげ,時 間の扱いがどのように工夫・処理されているかを明らかにしようとすることである。 2. まず作品の全体を基本的に律している時間と再現の関係枠組を考えると,争闘神話の一 変種であるく兄弟殺し)の枠組が問題となろう.『-ムレット』において,. ?ローディアス. ほみずか-ち・兄-ムレットを毒殺したことをカインの罪であること囲めており,王子-チ. Vッ,hの悲劇ほあげてここに起因する3:うにみえる.しかし,はたしてそぅであろうかoこの作品の時間の遠近法はそれほど単純ではなく,すくなくみつもってもー世代の経過を 必要としており,クローディアスの兄弟殺しそれ自体が変換された祖型反復である考えら れる,. -ムレット王とフォーティンブラス王の一騎討ちにまで遡ってみなければならない. ものである.この一騎討ちこそ-ムレットの物語の起点であり,作品において一幕-場で. 亡霊の登場と同時に古代英雄王の叙事詩の筆法で物語られなければならない理由である。 そして,また,このデンマ-ク王の英雄的事蹟とみなされるにいたった三十年という歳月 が,新たにフォーティンブラスの同名を持つ遺児が父の失った土地を取り返そうと企てさ せているのである。したがって,歴史は繰り返されるというのであれば,それぞれ父の名. を継ぐ若い世代の二人の一騎討ちが,再現されてよいはずであるが,そこに割り込んでき. たの坑Irク占-ディアスであり, う形で,しかも,. √彼は三つの王家の争いを,ノーつの王家の兄弟の争いとい 「正規の,法で確認され印を捺し交わした契約書」一軒こ`よ'って公然と決行さ.
(3) 3. 『-ムレット』における再現モチーフ. れたのに対して,相手の「油断を見すまして,. -ボナの毒汁を充たした小びんを持って忍. び寄って」兄王を殺したためである。この出来事がすっかり表面ほ違ってはいるものの, 「野心と慢心に駆り立てられる男」の争いであるという基本的な性質ほ,さきの∵騎討ち と共有されていることに関心をむける必要があるだろうo. この性質は,さらに,若いフォ 「みずからの優勢を夢みて」領土を返してよこすように書簡をクロー. ーティンプラスが,. ディアスに送ったときにも,みいギせるものである. デンマーク王家とノルウェイ王家の領土をめく。る争いが,もし歴史的に修正変更された 争闘神話の一変種であることが認められるとすれば, 『-ムレット』にほ,この神話の変 換された出来事が,すくなくとも,四回はおきることになり,全体を通してみれば,それ らの連続であると考えられる.第一は,年長の世代の公然とした争い,第二は,クロ-デ ィアスのひそかな兄王との争い,第三は,レィアティーズと-ムレットの問の争い,第四 は,父の代理としての-ムレッートとクローディアスの争いでありいずれも争う相手を殺害 「共同体の価値そのものが強固 しており,いずれの場合もその根底をなしているものほ, にされるような方法で,英雄と敵役,善と悪を区別する基本的必要」である.この相い争 う二人の兄弟ほ, 「両者間の差異に結着をつけようとするためでほなく■,暴力を通して互 いを区別できる決定的差異一勝者一敗老-を確立しようとして争う」のであり, 序の破局を解決し回避する」ためである8)。また,'このように短い期間内で四回も繰り返. 「秩. えされるのは,. 「敗れ去った原理が-,周期的に復権して, -季節の間支配して後に再び反対 「差異なしの危椀」が大きい 原理に座を奪われる」4)神話的解決法では追いつかないはど, からである.つまり,年長の世代の対立が若い世代で神話的に解決される可能性を一時的 に第三の兄弟殺しが介入してきたため,空位期が出来したからである.. 『-ムレット』の時間構造の大きな枠組が,カインの界弟殺しを神 話的祖型とみることのできる争闘神話のゃつ時間構造と一致していることが理解されたと ・このようにみると.,. 思う。また,作品内での時間が,クローディアスが偽主として統治している空位期である ことも了解できたとすると,この空位期の時間構造が次に問題となるだろう。その第一の 特徴は,いうまでもなく,. -ムレットの「この世(-時間)の関節が外れたのだ」と嘆く. 台詞で表現されているものである。秩序と反秩序,善と悪,真と偽,正と邪,愛と憎,な どの両極化した対立が;否定的な負の記号をつけられたものの支配に服している期間であ り,したがって,秩序,其・善L.・美という理想主義者の限にほ,すべてが逝様にみえる. 単に,理想主義者のみでほなく,クローディアスもまたこの世が腐敗していることを,神 の裁きの絶対性と比較して次のように述べていることに注意しておくべきであろう.<. In. the. corrupted. Offence'sgi1ded And Buys There. 'tis. oft out is. the. qf this. currents. hand. seen. the. law.. no・shuming_. may. I)y. shove. wicked But. world. prize. 'tis not There. so. the. justice;. itself above. action. lies.
(4) 4. 水 In his true Even To. t6. the. give呈n. nature,. we. and. teeth. and. 落. ourselves. forehead. of. 朗. 一. compelled, faults,. our. evidence.. 社会が腐敗しているばかりでほなく,すべての価値が暖昧になり行為の規範となりえず, 「美しいということには,まともなことが一番似合の相手」ではなくなっており,. 「美しさ. というものはまともな人間の本性を売女に変える力を持っている」実例が現実にみられる 世の中になっている。. 「理性が色情の手引きを」しているばかりか,. 「いいことが悪いこと. に頭をさげるだけじゃない,顔色をうかがわなければならない」醜い世の中が,空位期の 特徴であるo秩序のゆきとどいている世の中は日常性の時間の支配にあるのに対して,皮 秩序の世界は,非日常性の時間が支配していることになるだろう.作品のなかの時間は, こうして非日常的時間が優勢な構造をもっており,祝祭的時間の特性をおびていることに なる。. この二つの時間である日常的時間と非日常的時間の寅的差異ほ,前者が時間感覚を麻挿 させてしまうのに対して,後者は,逆に時間に対する感覚を蘇らせるところに,また前者 において見えないものを見えるようにする椀能を後者はそなえているところにある.そし て,再現というモチーフからみれば,当然,再現を必要とする時は,この非日常的時間の 支配する時である・。 -ムレットが彼の物語を是非とも観客に正しく伝えてもらいたかった のは,舞台に主要登場人物が彼を含めて四人もの死体が横たゎっているというまったく死 の支配する非日常性の時であったことを想起すべきである。したがって,作品で何らかの 非日常性が現前するときほ,必ず再現のモチーフが姿をみせることになるo例えば,オフ ィ-i)アの葬式の場における-ムレットとレィアティーズの二人が彼女に対していただい しかし,一番適切でこの作品の中 心を貫ぬいている再現ほ,亡霊の出現と彼の死についての物語であろう。その結果,亡霊 ていた思いのたけをはとばしらせるときがそうであるb. の物語を基底に潜めた「ゴソザ-ゴー殺し」の芝居という形式での再現が続き,その一部 である毒殺は,ついにほ四人の生命を奪ってしまうのである. この亡霊が出現したときの異様さについて,次のふたつの事は大切であると思う。ひ、と つにほ,バーナードが畔夜みた「恐しいもの」のことを語る時刻と,その物語りによる再 現とが,まったく不思議にも舞台上でぴったり一致してしまう異様さである。 Last. night. When. yond. Had Where The. made now. of all, same. his. star course. it burns,. bell then. beating. tbat's t'illume Marcellus. from. westward that and. part. the. pole. of heaven. myself,. one-. もうひとつは,ホレィショーが,この亡霊にむかって語りかけるとき使用する言葉の異.
(5) 『-ムレット』における再現モチーフ. 5. 様さである。彼ほ次のようにいう。. Wbat. thou. that. Togetber. with. that. ln wbicb. the. Did. art. sometimes. tlSurpeSt. fair and. majesty march?. this time warlike. of buried By. of night, form. Denmark. heaven. I charge. thee,. speak.. 「夜のし この台詞について,アーサー・-ンフ1)-ズほ,大要次のように述べている. じまを破り,国王-ムレットの姿形を無法にもまとったかにみえることを表現する動詞. `usurpest'は,割り込んだ気詰りな音の言葉であり,この行のもつしなさやさに異邦人の ように突こんできており,その昔が奇抜さを押しつけるように,その意味も,悪による善 の違法な追い出し,自然の秩序の転倒,亡霊の疑わしい地位をも含意している。」5)たし かに,亡霊の出現,しかも埋葬されたばかりの前国王そっくりの武装をしての出現ほ,再 現そのものの様相を示めすと同時に,このようなものの出現する意味まで考えれば,その 異様さ,非日常性は明らかであろうo この亡霊のもつ人々を不安にさせ,過去をふり返えさせる機能ほ,これらの再現すべて にみられる基本的な機能であることから,もうすこし考えておきたい。. まず,亡霊が存在すると仮定すれば,その定義上,彼はこの世でも幽界でもない,その 境界にいるものであり,したがって,現在と過去の仲介者としての役割を持っていること になろう。また,その存在が疑問視される場合でも,悪魔の使いとして,人間を堕落させ るものであるとしても,地獄という仮構された世界とこの世とを結びつける媒介者である. ことには変りない。いずれにしても酸味で疑わしい性格を持つ二つの世界を媒介するもの であり,両極化している二つの世界に同時に出入りできる両義的性格のものであろう.。そ. して,ひとたび,亡霊と言葉をかわした者は,この亡霊の特性が伝染するかのように,二 つの世界の境界に位置づけられることになり,死者の生きた過去と現在の二つの時間に同 時に生きる仲介者の機能を附与されることになるであろうo. この両義性に,過去と現在ば. かりではなく,秩序と反秩序,生と死,莫と偽,などの両極化された対立項を同時に体現 しうる能力をも与えられている。一種の潰依現象ともいうべき状態になるのであり,. -ム. レットが亡霊に会って以来,彼の狂気をひめた精神状態を納得させるものだ8)0 亡霊の出現ほ,その酸味さにもかかわらず,あるいほ,その暖昧さによって,一挙に, 日が夜に順序正しく続いている秩序正しいと思われている日常の世界に,まったく異質の 時間をもたらしたことは疑いのないところである。そして,やがて,この異質の時間の垂 直性が,水平な等質の時間に挺を打ちこみ,亀裂を生じさせることになろうo いままで,再現のモチーフに関連して,争闘神括の時間構造,日常性と非日常性の時間 の相嵐 更には,亡霊の両義性をもつ仲介者の機能にふれてきたが,今度は視点をかえて,上 物語における時間を別の角度から触れてみたいと思うo ひとつは,出来事を物語るときみられる二つの態度に関連するもので,ニコラス・ブル.
(6) 水. 落. 一・. 6. 朗. 「結果として,-. 我々は筋の展開について ックの指摘する次のような観察とも関係がある。 二重意識をもつ.つまり,一方でほ,殺人から復讐と秩序の回復-とつながっていく出来 事のはっきりした劇的連鎖であるが,他方でほ,一見したところ不必要な多人数の死-と 「一見脱線とみえることが実際 つながる混乱と偶然の出来事の連続であるd」とのことは, ほ関連あるという構造上の特質によって強調され,対立するこづ6j価値の世界によっても 強調されている.」7)この指摘ほ次のように言い換えることができるだろうo物語にほ,袷 め,中間,終りという線的である統辞の軸にそった語り方と,もうひとつ,類似の出来事 との類縁性の関連で増幅される範例の軸にそった語り方とがあり,結局, -ムレットの物 語ほ,一統辞という隣接関係の結合を目ざす前者ほはっきりしているが,後者の範例の軸は 一見全体との関与性が明瞭でないものまで含むことになっているということになろう。文 体の次元でこの例をあげるとすれば,ボローニアスの台詞で,しばしば,'隣接性を無視し て,類似性に強くひきずられていることに気付く.彼の場合は,内容よりも修辞術に,.事 実よりも表現に,関心を持っているためでもあるが,妄想型分裂病老に「サンタグム的構 造の貧困化と,それに反比例するかのような,パラディグム的連合の過剰な増殖」8)とい 『-ム. う言語論的特性が認められると官本忠雄が報告しているのは興味深いことである。. レット』に,分裂病者の言語論的特性があるというのではない。この引用を部分的に修正 していえば, 「前者の弱体化と後者の増殖」がみられるといっても間違いないだろう。例 えば,争闘神話の繰り返されるのほ,範例の増殖の好例であろう。また,復讐の遷延と呼 ばれるのほ,隣接性の弱体化をさしていることになろう。 このパラディグム的連合と密接な関連のあるもうひとつの問題がこの作品にほあるoそ れはこの作品の革新性に関することで,ヤウスのいう文学における「期待の地平」に変更. を引き起したのは,この作品が当時流行していた復讐劇の先行作品群を/ミラダイムとして 持ちながら,そのパラダイムが呼びおこす期待とルールに「変異型が与えられ,修正され, 変更される」ことによって,ついには期待の地平を破壊してしまうにいたっていることで あるg)。この事実は,. -ワード・フェルペリンにによって次のように的確に表現されてい る。 「古い演劇形式を利用するに際してシェイクスピアの自意識,独立心,鑑識限の強さか. らみて」掛ままったく新しい形式の作品を作れそうなのにもかかわらず「もっと真に洗練 されたことをなしとげる。彼は,古い演劇形式をとりこみながらも,それらを無価値なも のとし,それらを包含するという行為そのものにおいて,凌駕しているo」10)ただし,フェ ルペリンは,復讐劇のみを考えているのではなく,道徳劇も考えに入れていることは大切 なところである。シェイクスピアの作品を読むことほ,古い演劇形式の考古学的考察にな るといってもよい。例えば,亡霊の出現ほ,復讐劇の期待とルールを呼びおこす典型的信 号であるが,この作品においては,すでにみたように,その疑わしい地位が問われること. で幽界より.の絶対的命令者という役割に修正がほどこされ,その暖昧さがもたらす真実の 所在の不明瞭さがついにはクローディアスの犯罪を最終局面においてさえ,他の登場人物 にほ知られずに終っている托どである.もうひとつ例をあげれば,余興の芝居も復讐劇の パラダイムの一部であるが,それを採用するにあたって,役者を使うばかりか,芝居の演.
(7) 7. 『-ムレット』における再現モチーフ. 出法,発声法,目的などが論じられるにいたっているのも変異型というよりも,画期的な 変更であろう。しかも,. 「ゴソザ-ゴー殺し」は,虚構であるが,クローディアスの隠され. た真実を明るみに出すこと・により,′虚と突と1が一瞬その立場を入れかわるとい.う見事な場 面をうみだしている。 3. いままで論じてきたことを改めて,具体的に三幕四場をとりあげて詳しくみていきたい と思う。 この場の特徴ほ,冒頭から緊張をほらんでいた-ムレットとガ-トルードの二人がほじ めて公的な場面でほなく,私的な二人だけの空間と時間が許される点にみいだされる。こ のため,ここでは,. -ムレットの物語の統辞の軸にそう展開ではなく,一種のアラッシ. ュ・バックの技法で,一幕二場における-ムレットの独自の世界につながっていく範例軸 にそう再現を主とした場面紅なっている.それだ桝こ,この場ほ,まるで悪夢をと悩まされ. るような由子の激情にかられた対決の様相を呈し,その道具立てに壁掛,読,イメージ群, 亡霊がそろえられて,一幕よりの主要な出来事が走馬燈のように浮びあがってくるように 工夫されている。. なぜこのような二人だけの私的な場が用意されたかを考えてみると面白い事実に気付く。 まず親子の話し合いを提案したのほボローニアスであり,最終的に実現をみるむといたるの も彼の努力によ′るところが大きいo彼はまず, -ムレットの狂気の原因がオフィーリアに 冷めたくされたことにあると考えているため,クp-ディアスとともに壁掛の後ろで,囲 に放した娘と-ムレットの二人の言動を盗聴した後,クローディアスが彼の失恋説に同意. しないため,今度は娘ではなく王妃を-ムレットに会わせて真意を探るように提案したの であった。もちろん,彼が壁掛の後に潜むことにしてである。このように,ボローニアス 紘,演出家であるとともに隠れた観客でもあるような場を考えていたのだが,他方, レットもほとんど時を同じくして芝居を上演しようとしており,その芝居の終了後行なわ れる予定の母子の対面劇と競合するはめになるとは,この宮廷人にほ思いもかけなかった. -ム. ことであろうo. しかし,事態が急変したばかりか,彼の演出目的をも変更せざるをえなく. なってしまう。. 表面からみるかぎり,目的変更を問わないとすれば,彼の熱意と努力で成功したかにみ えるのであるが,事態ほ彼の知らないところでいままでとはまったく異質な様相を示めし 始めていたため,この母子の対面劇ほ,別の力の動きによって実現してしまうのである。 「ゴソザ-ゴー殺し」中断後の時間は,それまでの宮廷を支配していた秩序ある社会的 時間とみえたものが,実ほ反秩序の偽王の支配する非日常的時間であることが,ようやく. ほっきりしてくる性格を持っており, -ムレットの独自,クローディアスの-ムレットを 直ちにイングランド-派遣して処刑する決断,続くグローディアスの祈りの場面-とめま ぐるしく時間が断片化されて示めされる。このような時間の流れは,依然クローディアス. の犯罪が-ムレットとホレィショーの二人だけしか確信していないことと関係があり,戟.
(8) 8. 水. 落. 一. 朗. 客にもその点が明確でないため,作者の特権的操作によって,観客との距離をここで縮め て,タロ-ディアスの内面-と密着させる必要性から生じてきているとも考えられよう. この場合観客反応の心理を特権的に操作しているとみるよりも,やほり,この中断後の時 間の垂直性と関連があるとみる方がよいと思う.事実,クローディアスは,すでに引用し た台詞で,. 「だが,天国ではそうは行かん,ごまかしは利かん,行為はすべてあるがままに. 裁かれる」と■っぶやいているのであり,ここに神の前の時間が意識されていることに注意 すべきである。あるいほ,. -ムレットが「今ならおれも生血をすすって,白日も限をおお. っておぞけふるう残虐な行為がやれそうだが」というときにも,白日という日常に対比さ れた夜の非日常性を強調していることになろう。クローディアスの内奥をみせる場はこの ように劇の時間構造そのものの要請なのである。. これとまったく同じことが,それに続く三幕四場についてもいいうるだろう。たしかに, ボローニアスによって用意された場ではあるが,ガ-トルードの内奥の秘密をあきらかに 白日のもとに晒すのは,はかならない「真夜中,まさに魔女たちが騒ぎだす時刻」でなけ ればならない.。日常で見えないものが,見えてくる時間でなければならない。そして,こ. のような場に居合わせる特権は第三者には許されるほずがないことにも注意しなければな らないだろう.. この母子の対面の場ではその演出家が交替し, -ムレットにその役割が移る必然性が理 解できるであろう。この場は,全体で218行,その約4分の3が-ムレットの台詞で占め られ,王妃のそれは50行にみたないことからも察せられるように,彼が演出家であると ともに主役を演ずることになっている。このまるで劇中劇のような起承転結をそなえた場 面は,次のように五つの小幕から成立していると考えられる。. 第一幕(初行より25行目まで) ボローニアスの死 心の内面を映す鏡. 第二幕(26行より102行目まで) ガ-トルードの行為の意味. 父と叔父の比較 習慣,五感の機能,価値の逆転 第三幕(103行より136行目まで) 亡霊の出現とその意図 一族再会. 第四幕(137行より179行目まで) -ムレットの狂気の否定. 母親への忠告 習慣,演技, ボローニアスの死の意味.
(9) 9. 『-ムレット』における再現モチーフ. 第五幕(180行より218行目まで) パリノードによる愛情テスト -ムレットの今後の態度 ボローニアスの死体の処置 これよりこの構成順序に従って分析していくことにしよう。 4. (i) 「悪ふざ桝こも度がすぎる,ぴしりときめつけ. あたふたと駆けつけたボローニアスが,. ておやりなさいませ」と言いのこして壁掛の後に身を隠したところで,. -ムレットが入っ. てくる。母と子の最初のやりとりは,修辞的技巧をこらした謎めいた問答体で始まるo Hamlet,. thou. Mother,. you. Come, Go,. come,. go,. you. hast. have. thy. father. much. offended・. my. father. much. offended・. answer. you question. with. idle tongue・. an. with a. tongue・. wicked. ここにみられる/father/という意味表現の両義性が引き起す暖昧さが,両者の対立を, そして意志伝達の齢齢を一層きわだたせている.同じ意味表現で,母親としてのガ-トル -ムレットほとっさに,噺笑. ードが,法律上の擬制である意味内容をさしたのに対して,. するかのように,事実上の血につながりをもつばかりかその復讐を果す役割を背負ってい る父親に,意味内容を切り換えてしまうのである。この一瞬の切り換えについていけない ガ-トルードは,母親としての自己同一性を確認する必要に追い込まれる。だが,_. -ムレ. ットほにべもなく「あなたは,王妃,夫の弟の妻。それに-残念です!-あなたはわ たしの母上だo」と応ずる。. このわずか数行の問答が示めしているのは,相互に相手の表現しようとする内容を解読 するためのコードを持ち合せていないということであり,この記号論的破綻状態こそ,一 方の日常性に埋没した意識に思いもかけない衝撃を与え,苛立たせるものであり,. 「そん. なふうにいうなら,話の通じる人に応対してもらいましょう。」といわせるものだ。それ にかまわず,. -ムレットは,彼の演出しようとするもうひとつの芝居の世界に彼女を誘導. しようと,次のようにいうo. Come,. come,. Yougo. not. Where. you. sit you. and. till l set you may. see. the. down. up. a. inmost. You. shall. not. budge・. glass part. of you.. しかし,ガ-トルードには,ますます事態が理解できず,. -ムレットの殺気立った様子に,.
(10) 10. 水. 落. 朗. 一. 殺意さえ感じられ,助けを求める悲鳴をあげる。その瞬間∴ボローニアスの役割が終り, 幽明境を異にしてしまう. 「なんと軽ほずみでむごい」殺害行為による退場であるが,彼がこのまま隠れ. たしかに,. て盗聴するのを許さないなにものかが,彼の退場を命じためだと解するよりはかあるまい. そのなにものかは,偶然と必然のかくされた結びつきであって,この母子の対面の場を要 請したものと同じもの,劇の構造そのものであろう。 しかし,彼の死がもたらしたものほ決定的で,彼の死体の横たわるこの居室を,本当の. 意味で,二人だけの私的空間に反転させたばかりか,ガ-トルードの日常なじんで疑わな い社会的時間を一瞬のうちに非日常的な,聖なる時間へと転じさせる転轍機の作用を果し たのである。 そして,皮肉なことに,いままで宮廷を支配していた相互の情報活動が彼の死をもって 終りをつげるばかりか,二人だ桝こなった-ムレットは彼の疑念を直接ガ-トルードに問 いただすばかりではなく,彼の狂気が偽りのものであることまで明らかにするにいたるの であるb 4. (ii). 偶発的なボローニアスの死が,それを非難するガ-トルードの言葉に重ねられるように. 「むごいこと一悪いには違いないですよ,善良なお母さん,王を殺して,. -ムレットが,. その弟の妻になると同じくらいにね」と言葉の短剣をく小さりと突き刺す.ガートルードほ ただ驚き怖れおののくのみで,何を言われているのか理解できないが,彼女の自己同一性 に対する脅威であることだ桝ま解る。その苛立つ気持で,. 「わたしが何をしたというの,. そんな失礼なことを,わたしに向ってわめきたてて」と反応する。この反応には罪の意識. がみられず,彼女がクローディアスの共犯者ではないこと示めす証拠であるとされるが, そう解するよりも,ここで起きつつある事態そのものに対する反応,いいかえれば,母と 子の役割の交替という想像を絶する事態への反応であると解する方がよいであろう。なぜ なら,. -ムレットの次の台詞ほ,彼女を一挙に故-ムレット王との結解式の時に,あるい ほ,それ以前の恋する乙女であった時に連れ戻してしまうからである。こうして年齢差ほ 逆転してしまい,親子の役割も交脅する。 Such That. blurs. Calls. virtue. From And. the. hypocrite;. As. false. as. As. from. the. The. very. dicers'oatbs;. body. soul,. and. of. of modesty;. takes. off the. an. innocent. of. blister there;. a. act. blush. and. fair forehead. the sets. grace. an. makes. contraction. love. marriage. 0, such. sweet. rose. a. deed. plucks. religion. makes. vows.
(11) 『-ムレット』における再現モチーフ A. of. rhapsody. Yes,. this. With. heated. solidity visage,. Is thought-sick. at. face. Heaven's. words! and. against. the. glow,. mass,. compound. as. does. ll. the. Doom,. act.. ここでこの台詞について,また,この道立ちした親子の関係についていくつかのことを 考慮に入れておく必要があるだろう。まず,上の台詞をはじめこの三幕四場の台詞の用語 法の問題であり,したがってそのような用語法を支えている思考様式の問題である。この. ことについて,第2節でも引用したフェルペリンの意見を聞くことからはじめよう。彼ほ 次のようにこの場面を論じている。まずこの場の台詞のほとんどが「個人的感情からでほ なく,私情をほさまない義憤から発しており,彼の言葉とそれが表現する役割がこの場面 を一般化し,私情を抜き去り,息子の愛憎のいりまじった感情の自然主義風の描写をまっ たく跡形もなくなるほど古風なものにするように働いている」11)のであり,結局,いまま での出来事を書き換えて,この場を「古めかしい世界劇場にきわめて同質のものに変質さ せており,登場人物の誰れもが黒白のはっきりした約束事の役割を持つ道徳劇に劇全体の 経験を組み立て直している」のだという。この意見にそっくり従うことはできないが,肝 要なのは,. -ムレットが,この場を芝居にしようとしていることと,その際,パラダイム. に選んだのが,道徳劇の明確な役割と人物が分離していない世界,したがって,倫理の引 照基準が垂直であって,その動機のメカニズムが単純な世界であること,このふたつのこ とであろう。 たしかに,用語法といい,修辞といい,あるいほ,倫理の引照基準といい,すべて道徳. 劇の対応するものがそのまま引き継れてはいよう。しかし,このパラダイムを選ばせたの は,ほかならぬ-ムレットの激情であり,グラングィルエバ-カーの表現でいえば, の世全体が神の怒りに青ざめているという漠然とした感t:,理解されるというより感覚で とらえられるべきもの,悟性で矯小化されてほならぬもの」12)を伝えようとしている-ム レットの「途方もない考えの強迫的な熱情」13'につき動かされている有様を感じとるべき なのである。 彼の熱にうかされたような高揚感は,彼のすでに上演した芝居の成功によるものである が,それに加えて,居間に来る途中クローディアスがひとりいるのを見逃がした理由をの べるとき,次のような楼会を狙うと述べるが,. When. be. is drunk. Or. in th'incestuous. At. game,. That. has. a-swearing, no. relish. or. asle・ep, pleasure or. in. his rage,. of his bed,. about. of salvation. some. act. in't-. そのときすでに,彼の脳裏の片隅に一幕二場の独自で使った言葉「不義の寝床」が入り込. 「こ.
(12) 12. 水. 落. 朗. 一. んでいて,その想念が彼に固着して離れないことを示めしていることだ。この第一の独自 が示唆する苦々しい幻滅感,人間のもろさに対する悲観的な考え方なども同時に表面に姿 をみせていて,この場面での彼の言動のほしばしに連続しているのである。 この複雑な感情の状態ほ, 語で,. -ムレットの引き込んだ芝居の合図に思わずのって,芝居用. 「そんなに雷のように幕開きそうそうわめきちらすなんて,どんなしわざをしたと. いうの」とガ-トルードが聞き返すとき,. -ムレットが使用する言葉によく表れていると 思う。彼にとって父親の死と母の早過ぎた結婚を境いに何もかもが「わずらわしく色あせ て味気なく無益に」見えていたことを忘れてほならない。彼はガ-トルードに二人の兄弟 の絵姿をつきつけながら,次のように二人を比較する。 See. a. what. Hyperiom's An. eye. A. station. New A. Mars,. lighted. on. To. give. the. world. was. Here. is your. Blasting. to. seem. assurance. husband;. bill-. indeed. Look like. bi島 wholesome. a. his seal. set of. husband.. your. command,. Mercury. form. a. did. god. and. heaven・kissing. and. every. This. herald. a. combination. Jove himself,. of. to threaten. like the. brow:. this. on. seated. the front. curls,. like. Where. was. grace. a. man. now. you mildewed. what. follows.. ear,. brother.. この二人の比較は,一幕二場の次の台詞を拡大敷侍して繰り返したものにはかならないo So. excellent. Hyperion My. Than. to. father's. a. king,. a. satyr;. that. brother,. but. was. no. to. more. this. like. my. father. l to Hercules.. この四行はまだクローディアスの犯罪を知らなかったときのものであることに注意すれば, この場面全体の基調が,. -ムレットのメランコリー症状と一致しており,また,統辞の隣. 接関係よりは,範例の類似関係の連合によっていることが明らかになってくるであろう。. ここに記憶によって想起された過去の理想王が再現される。オリンパス山の神々のすぐれ た特性をそなえた男と措きだされる-ムレット王の理想像が,伝統的な修辞法にのっとっ ていることほ明らかであるが,その父が統治していたデンマークも同時に理想化されて失 なわれた楽園のすばらしさを再現してみせており,王の死後の「荒れるにまかされた,辛 は茂って実の成るがまま,むかつくばかり汚いもので一面におおわれている」庭となって.
(13) 『-ムレット』における再現モチーフ. 13. いる現在と対比されていることにも注意を向ければ,記憶のはたす役割の重要さが理解さ れるであろう。. -ムレットは,むかつくぼかりの腐臭をまきちらしている今の世の中,関 節の外れた世の中を立て直すために必死の努力を懐けているが,その手段が記憶による過 去の想起的再現なのである。もしガ-トルードが,彼のように記憶力を持っておれば, 「婚姻の誓いをばくち打ちの贋証文」に変えてしまうこともなかったであろう。記憶は美. 徳のひとつであり,賢慮の一部分であるとされるからだ14). しかしながら,ここでの記憶による-ムレット王の再現は,単に記憶の賢慮であること を証明しようがためでほなく,それ以上に,. 「差異なしの危機」を解決し,回避するための. 争闘神話の儀式でもあるのであり,美と醜悪さの対立を通して,夫と地,其と偽,正と邪,. 秩序と反秩序などの一切の対立に,決定的に結着をつけようとしているためである.それ がなされるのほ暴力を通じてであるが,ここでほ言葉の暴力が用いられているoその最終 的決着がつけられるのほやほり暴力を通してであって「大物同士が怒り狂って剣を交え る」よりほかにないのではあるが。ギリシアの神々に擬せられた-ムレット王と対比して,. クローディアスほ,土着の道徳劇の道化の王,偽王に準えられるのも,この「差異なしの 危機」を克服するのが目的であるからである。ガ-トルードには,この二人の決定的差異 を識別する能力が欠けていたことから,. -ムレットのメランコリー症があらわれてきたの. であり,あらゆる価値が逆転してしまったのである。この-ムレットの言葉の暴力,争闘 神話の再現に対して,ガ-トルードほ,ついに二人の夫の差異を,おそらくは決定的差異. ではないにしても,認めるにいたるが,その二度目の台詞は,言葉の暴力性を語っている。 「ああもう何もいわないで,あなたの言葉は一つ一つ短剣のように耳に突き刺さるo. それ. でやめて,ねえ-ムレット」と彼女は息子に病む。しかしなおも-ムレットほ次のように タロ-ディアスの醜さを強調しつづける。 A A. Slave. Of. your. A. And. that. precedent. cutpurse. That. from put. is not. of the a. shelf. it in his. murderer. twentieth. lord,. a. empire the. a. and. kings,. vice. of. and. the. precious. tithe. the. part. villain,. rule,. diadem. stole. pocket-. このとき三度,すでに母親としての同一性を確保できなくなっているガ-トルードが, やめるように懇願するが,. -ムレットほ何ものかに濃かれたかのように言葉を続けようと. する。そこに出現するのが父の亡霊である。 4. ここで亡霊が登場してこようとほ,. (iii). -ムレットの芝居の構想にも入っていなかったであ. ろう。まったく突然の思いもよらぬ出来事である。彼の亡霊に対する対応はぎこちなく感.
(14) 14. 水. 落. 朗. 一. ぜられ,ガ-トルードにほ何が起きつつある0)か皆目見当がつかない.しかしよく考えて. みれば,父一亡霊が-ムレットの行動をたえず見張っていたはずであり,鍔の次の-ような 命令を忠実に実行しているか,この場の成り行きを見守っていたはずなのである.. r. But. howsomever. Taint. not. Against And. to. To. prick. thy. thou. thy. and. that. thorns. soul. Leave. aught.. mother. those. let thy. nor. mind,. this act,. pursues. in. her. contrive her. ・to. heaven. lodge. bosom. her.. sting. 亡霊の最初の言葉は,なるはど,. 「鈍り勝ちな決意を研ぎすますため」となっているが,. 重要なのはその次の「惑乱しておののいている母の悩み闘っている魂を庇ってやる」ため の出現であったことは疑いのないところである。亡霊の命令の第三項ほ,はっきり「胸の 内でも母に向って何かたくらむことはするな」であったのであり,三度のガ-トルードの 懇願を聞き入れない-ムレットは,. 「自然の情」を忘れたばかりか,言葉の短剣をつき刺し. 続けたのであるから,亡霊がその姿をみせるのは自然であろう。命令の再確認のためであ る。. ・しかし,そのためばかりの登場でないはずで,命令の再確認が,物語の統辞の軸におけ る意図であるにしても,範例の軸においては,. -ムレットの言葉によって,想起された理. 想の楽園への復帰の願望の再現,づまり,一族の再会の実現がその主たる目的であったと 考えられるだろう占だが,. -ムレットの言葉の暴力に屈したガ-トルードにも,その亡霊 が見えないことで,この再会の試みは失敗してしまう。彼女には,やほり;決定的な差異. が見えておらず,価値体系は依然逆立ちしたままなのである。そのことは,蒼めた亡霊が そっと出ていった後で判明することでほあるが。 ここで観客の反応心理の操作という立場からであるが,ホニグマンの説15'を緯介してお きたい。掛ま,この居間の場における-ムレットの感受性の粗野さに対する批判に対して 弁明の論をほっているのだが,観客の敵対的反応を抑えるために二つの方法が利用されて いるといい,そのひとつほ,ガ-トルードの無条件降伏であり,もうひとつほ,一亡霊の出 現であると論じている。なぜかといえは,前者により,. ことを彼女が認めたからであり,後者により,. -ムレットの想像が現実であった -ムレットが激情に駆られて抑制がきかな. くなってし貰うのを止めたからであるという.なるほどと思わせるが,ここでは,再現モ チーフによる出現であるとする考えが正しいよう忙思う.. ∴. その意味でほ,ホニグマンの続いての亡霊についての指摘は興味深いものがある。ハム. レットの用語法は亡霊が一幕五場で用いたそれに類似しているという説であり,「葱きまと って離れないガ-トルードの寝床-の関心」を示す箇所として,次の二つを引用しているo So. lust,. tbougb. to. a. radiant. angel. linked,.
(15) 『-ムレット』における再現モチーフ itself. Will. sate. And. prey. on. If thou. bast. Let. not. the. couch. for. A. In the. rank. Stewed Over. in. a. bed. luxury. sweat. of. nasty. it not.. bear. of Denmark. be. damned. incest.. and. in corruption, the. ‥. in thee,. nature. royal. bed. celestial. garbage‥. 15. an. bed,. enseamed. boneying. and. love. making. sty-. この類似性ほ,. -ムレットが父の思考と感情を想起して,その代弁をしていることを示め 「亡霊との最初の出会いの際使用されたすべての単語が記憶に焼きつけられて. しており,. いるか,あるいほ,本物の亡霊が身近におり,日にみえないが,. -ムレッ1トに影響を与え. ているのか」いずれかで,この類似性が生じていると説いている。この説明ほ,すでに述 べたように,. -ムレットが二つの世界を仲介する者としての性格を持っているという考え. 方に通ずるものである.彼は,単なる代弁者というよりも,仲介者であり,その悠依状態 において,父その人である。 4 (iv) 亡霊の出現で,. -ムレットの争闘神話の物語,兄弟の決定的差異の再現の暴力的言辞の 奔流ほ一時的に堰とめられるが,ガ-トルードが亡霊など何も見えず,その声も聞えない というばかりか,彼の狂気のもたらしたものだという言葉をきくと,再び彼女に言葉の短. 剣をつきつける.「試して下さい,今のこと,ひとことひとこと観り返しL{みせてあげるJ, 狂気ならとんでもなくそれるはずだ」といって,次のように罪を告白するように迫る。 Lay. that丑attering. not. That. not. yollr. It will but、、skin Whiles Infects. rank. trespass. and丘1m. corruption,. to. unction but the. my. your. ulcerous. mining. soul,. madness. all. speaks. place. within,. unseen.. すべてが,始めからのやり直しである。この場の主要なリズムは,この繰り返しであり,. 執扮なまでの範例の軸での連合の増殖である-.そのこと・の一つの表れが.,. 「おやすみな写. い」を革度も繰り返してガ-トルー-ドに言われるこ七にみいだせる。またこ羊での-`rank corruption'・という表現に注目してみるとよい.この形容詞は,いままで次のよう.町こ,繰 り返し重要な箇所で使用されてきているo.
(16) 16. 落. 水 Fie. on't,. That. `tis. ah,丘e, to. grows. an. And forgeries. As. may. 0,. my. in. gross. and. rank. nature. it merely.. Possess. what. garden. unweeded Things. seed.. 朗. 一. you. dishonour. offence. is. there. none. please-marry, him-take. rank.. heed. It. bin. on. put. so. rank. of that-. to. smells. heaven・. 「シェイクスピアにあってはいつも,肉体的,精神的,及び道徳的な腐敗. この形容詞にほ,. が,強い性的な連想をともなって,言外に陪示」1¢'される働きがあり,ボローニアスでさ え, 「女を買う」のはよいが, 「女のところに入り浸る」のほ,息子の名誉にかかわること だというときこの単語を用いているのでも解るように,きわめて強い道徳的含意を持つこ とが明らかである。特にこの場では,三回使用されるのだが,そのうち二度まで`corruption'という単語と結びつけられており,最後には,ふたたび,一幕二場の独自との類似 性が強調されて, 「むかつくばかり汚いもので一面におおわれている庭」が「肥り返って醜 い今の世の中」であることを示めしている。その世の中を立て直すためには,神という絶 対的な垂直な時間と直面する必要があることをも含めて,次のように命令法で-ムレット はいう。. Confess Repent And To. Avoid. what'past. do. make. not. spread. them. to. yourself. what. the compost. is to on. the. heaven.. come; weeds. ranker.. これに対して,ふたたび言葉の暴力性を表わす「あなたはわたしの胸を真二つに裂いて しまった」とガ-トルードが応じるのだが,この彼女の台詞を実検に,-ムレットは,-慕 二場で否定した「見える」こと,. 「それを使ってどんな芝居でもできる」外観の必要性を母. 親に説くばかりか,否定的に考えられていた習慣の効用をも勧める。この認識の逆転とも いえるものほ,母の改俊を契磯にしていると考えられるだろう。道徳劇のパラダイムはそ の目的を果し,日常の世界-ようやく移動し始めたのである。その合図は,第一回目の 「ぉやすみなさい」である。そして,外観-「見えること」の重要性を説き終ったとき,二 度日の「おやすみなさい」が-ムレットの口から発せられたとき,現実の世界の出来事で あるボローニアスの死という事実に直面することになる.ここで,. -ムレットが二つの世. 界に属していることがふたたび明らかにされ,超自然の世界の媒介者としてこの逆立ちし ている時間を立て直す役割を荷負っているとともに,この世に生きている老として,この.
(17) 17. 『-ムレット』における再現モチーフ. 世の約束事にも従わざるをえない二重性が,彼の次の台詞で示めされるのであるo For I do To. But. repent. me. punish. That. l must. this. heaven. bath. this, and. with be their. lord,. same. it. pleased. this with and. scourge. so,. me,. minister.. こうして,四度目の「おやすみなさい」で,いままでの母子の役割の交替も元に戻って, 残筋な言葉も母親のためを思ってのことであると弁明もそえられ,悪夢のような道徳劇の. パラダイム平のっとった兄弟殺しの再現劇ほ終りになってよいはずであったo 4. (v). たしかに,J芝居ほ終っているのであるが,その芝居の夢幻の世界から解放されて,現実 の世界に戻るためにほ何らかの転轍機がやほり必要とされるだろう。それはど,この場は 非日常性の時間に支配されていたのであり,この母子の共有した聖なる時間は,二人の秘. 儀参加者以外にほ知らせてほならないものである。そのためには,強烈な衝激療法が用い られねばならず,. -ムレットの母親とクローディアスの関房描写がその役割を果している. と考えられるであろう.この衝激療法ほ,同時に,母親に対する愛情テストの性格も兼ね ていると考えられよう。クローディアスと息子の二者択一を迫って,彼の内心の秘密を守 る方法でもある。 しかしボロ. 三幕四場の範例の軸における再現モチーフは,ここで一応は結末を迎える-D. ーニアスの死という突発的な出来事が,この場を統辞の線的な軸に結びつけ,すでに決定 している-ムレットのイングランド-の派遣とあわせて,この場以降は,一方の仕掛ける. 地雷で自らが木端微塵になるよう,他方が相手よりもーヤ-ド下を掘る隣接性の強い展開 がなされるであろう.そして,言葉でなく,本当の暴力で「大物同士が怒り狂って剣を交 「差異なしの危棟」を克服するであろう。それこそが,父になり替った-ム. える」ことで,. レットと弟クローディアスの争いであり,争闘神話の再現である。 注. 作品からの引用はすべてHamlei. by. edited. T・ J・ B・ Spencer. (Harmondsworth,. 1980)によっ. ている.. 翻訳は,種々参照させてもらったが,主として借用したのは,木下順二訳『-ムレット』 文庫, 1971). (講談社. 1. 1). Terence. 2)蓮貴重彦:. Hawkes:. Shakesl,eare's. Talking. 『大江健三郎論』(青土社, 1980),. Animals p・. (London,. 1973). ,. p・. 126・. 129・. 2. 3). Joel. Fineman:. shakespeare pp.. `Fratricide edited. by. Murray. and. Cuckoldry: M.. Schwartz. Shakespeare's and. Copp61ia. Doubles'in Kahn. Representing. (Baltimore, 1980),. 86-90.この論文にRen色Girardの神話研究が紹介されていて,本論はこの二人に多くを.
(18) 水. 18. 落. 朗. 一. 負うている. 『文化と両義性』(岩波書店, 1975) pp・ 29-48・ 4)山口昌男: 『知の遠近法』(岩波書店, 1978)第十一章参照・ 5). Arthur by. R・ Milton. 6). ed L.ゲィゴツキー. 7). Nicholas. Humphreys: Crane. `Style. and. (Chicago, 1973), 俊夫訳: 『-ムレット. 8)官本忠雄: 9) H.R.ヤウス 10) Howard. Shakesbeare's. Early. Art. Tragedies. (London,. 1968),. p・. 189・. 260-261・. 『言語と妄想』(平凡社, 1974), 轡田 収訳: 『挑発としての文学史』(岩波書店, 1976), p・37・ Representation Felperin: Shakes♪earean (Princeton, 1977) pp・ pp・. 59160・. ,. 4. ll). H.. Felperin:. oP・. cii・, p・. edit・. その言葉と沈黙』 (国文社, 1970)・第二章`ハ. ムレットの両世界性'参照. Brooke:. ShakesPeare's. 32-33・. pp・. 峯. in Hamlet'in. Expression. 49・. (London, Granville・Barker: Prefaces to Shakesaeare 1972) p・ 175・ 12) Harley Humphreys: ob・ cii・, p・ 32・ 13) A.R. (岩波書店, 1979), p・ 223・ 『共通感覚論』 14)中村雄二郎: A. Honigman: Shakespeare-Seven Tragedies-(London, 1980), pp・ 65-66・ E. J. 15) Shakes♪eare's (0Ⅹford, 1976) p・ 90・ Melchiori: 16) Giorgio Pyamaiic Meditations ,. ,.
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