Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
Midazolam Increases Bite Force During Intravenous
Sedation
Author(s)
黄, 明裕
Journal
歯科学報, 112(5): 664-665
URL
http://hdl.handle.net/10130/2953
Right
論 文 内 容 の 要 旨 1.研 究 目 的 静脈内鎮静法は,歯科治療時のストレスや不安を軽減するために,歯科治療に極度の恐怖心を有する患者, 全身疾患を有する患者などに広く応用されている。代表的な静脈内鎮静薬であるミダゾラムは,抗不安作用, 催眠作用,順行性の健忘効果があり,効果の発現が速く,持続時間も短いといった特徴がある。加えて循環や 呼吸機能に対する影響も少ないことから使用頻度が高い。また,ミダゾラムは筋弛緩作用,抗痙攣作用を有す るため,障害者,特に脳性麻痺患者の歯科治療時の体動抑制目的にも用いられる。 これまでにミダゾラムの中枢神経系,循環動態,呼吸への影響や覚醒に関する研究報告は数多くなされてい るが,運動機能の評価,特に筋力の評価に関する報告はまだない。そこで我々は,ミダゾラムが意識下静脈内 鎮静において生体機能,認知機能,運動機能(握力,咬合力)に与える影響を検討した。 2.研 究 方 法 研究に対して同意を得た健康成人右利き男性ボランティア20名を対象とした。本研究を行うにあたって,全 てのボランティア被験者に研究の目的およびその内容について書面を用いて説明し,同意を得た。本研究は, 東京歯科大学の倫理委員会の承認を得て行われた。被験者は,無作為交差法でミダゾラム群と対照群に分けら れた。ミダゾラム群では,投与前をベースラインとして,ミダゾラム0.05mg/kg を静脈内投与後2,5,10, 20,30分でそれぞれ観察を行なった。ミダゾラム投与後30分に桔抗薬であるフルマゼニルを0.5mg 静脈内投 与し,5,10,20分においても観察を行なった。対照群においてミダゾラム群と同様のタイムスケジュールで 観察を行なった。観察項目は心拍数(HR),非観血的血圧(SBP,DBP),動脈血酸素飽和度(SpO2),呼吸数 (RR)に加え,鎮静レベルの評価として bispectral index(BIS)値,Observer s Assessment of Alertness/Seda-tion(OAA/S)スケールと stroop color word test(SCWT)の正答率,運動機能評価として握力と咬合力の測定 を行った。 3.研究成績および結論 対照群では,各観察項目において有意差は認めなかった。ミダゾラム群において BIS 値と OAA/S スケー ルは投与後直ちに減少したが,フルマゼニル投与後速やかに回復した。鎮静中 SBP は低下し,フルマゼニル 投与後も低下を認めたが,HR は変化しなかった。鎮静中 SpO2 は低下したのに対して RR は変化しなかっ 氏 名(本 籍) こう あき ひろ
黄
明
裕
(中国(台湾)) 学 位 の 種 類 博 士(歯 学) 学 位 記 番 号 第 1907 号(甲第1159号) 学 位 授 与 の 日 付 平成23年3月31日 学 位 授 与 の 要 件 学位規則第4条第1項該当学 位 論 文 題 目 Midazolam Increases Bite Force During Intravenous Sedation
掲 載 雑 誌 名 Journal of Oral and Maxillofacial Surgery 第70巻 8号 458∼463頁 2012年8月 論 文 審 査 委 員 (主査) 一戸 達也教授 (副査) 金子 譲教授 柴原 孝彦教授 川口 充教授 田 雅和教授 歯科学報 Vol.112,No.5(2012) 664 ― 68 ―
た。SCWT の正答率はミダゾラム投与後5分と10分で低値であった。鎮静中握力は低下し,フルマゼニル投 与後に回復した。咬合力はミダゾラム投与後速やかに増加し,フルマゼニル投与後も増加したままであった。 本研究の結果から,ミダゾラム静脈内鎮静による意識下鎮静状態では,ミダゾラムの筋弛緩作用に起因する と思われる握力の低下を認めたが,咬合力は相反して亢進することが示された。この作用の詳細なメカニズム については現在のところ明らかではないが,ミダゾラム静脈内鎮静中には,仮に四肢の筋力が低下したとして も,咬合力だけは高いまま維持される可能性のあることが示唆された。 論 文 審 査 の 要 旨 静脈内鎮静法で使用されるミダゾラムについては,生理機能への影響や覚醒に関する研究報告は多くなされ ているが,運動機能の評価,特に筋力の評価に関する報告はまだない。本研究では,意識下鎮静中の生理機 能,認知機能,運動機能(握力,咬合力)に与えるミダゾラムの影響を検討した。東京歯科大学の倫理委員会の 承認のもと,同意を得た健康成人右利き男性ボランティア20名を対象とした。被験者を無作為交差法でミダゾ ラム群と対照群に分けた。ミダゾラム群では,投与前をベースラインとして,ミダゾラム0.05mg/kg を静脈 内投与後2,5,10,20,30分でそれぞれ観察を行なった。ミダゾラム投与後30分に拮抗薬であるフルマゼニ ルを0.5mg 静脈内投与し,5,10,20分においても観察を行なった。対照群においてミダゾラム群と同様の タイムスケジュールで観察を行なった。観察項目は心拍数(HR),非観血的血圧(SBP,DBP),動脈血酸素飽 和 度(SpO2),呼 吸 数(RR),bispectral index(BIS)値,Observer s Assessment of Alertness/Sedation(OAA/ S)スケール,stroop color word test(SCWT)の正答率,握力および咬合力とした。対照群では,各観察項目 において有意差は認めなかった。ミダゾラム群において BIS 値と OAA/S スケールは投与後直ちに減少した が,フルマゼニル投与後速やかに回復した。鎮静中 SBP は低下し,フルマゼニル投与後も低下を認めたが, HR は変化しなかった。鎮静中 SpO2 は低下したのに対して RR は変化しなかった。SCWT の正答率はミダゾ ラム投与後5分と10分で低値であった。鎮静中握力は低下し,フルマゼニル投与後回復した。咬合力はミダゾ ラム投与後速やかに増加し,フルマゼニル投与後も増加したままであった。以上のことからミダゾラム静脈内 鎮静による意識下鎮静状態では,ミダゾラムの筋弛緩作用に起因すると思われる握力の低下を認めるが,咬合 力は相反して亢進させることが明らかとなった。 本審査委員会では,1.ミダゾラム投与量の決定,2.プロポフォールによる鎮静との違い,3.咬合力増 加のメカニズム,4.ミダゾラム投与量と運動機能,5.本研究の結果を更に検証する研究方法などについて のコメントや質問があった。これら対する回答として,1.予備実験において被験者が入眠しない最大量とし た。2.プロポフォールを用いた過去の研究と異なり,握力の減少が認められた。3.文献検索を行ったが, 説得力のあるメカニズムを考察するまでには至らなかった。今後,継続して検討したい。4.投与量別の運動 機能評価は行っていない。5.咬合力増加のメカニズムを検証するには動物実験が必要と考えている。と説明 された。また,研究方法をより具体的に記述することやフルマゼニルに関する考察,図の修正等の指摘がなさ れた。 本研究で得られた結果は,今後の歯学の進歩,発展に寄与するところ大であり,学位授与に値するものと判 定した。 歯科学報 Vol.112,No.5(2012) 665 ― 69 ―