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児童にとって“わかる授業”のための手立て -教材・教具の工夫と発問-

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Academic year: 2021

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児 童 に と っ て “ わ か る 授 業 " の た め の 手 立 て 一教材・教具の工夫と発問一 高度学校教育実践専攻 教 員 養 成 特 別 コ ー ス 西 谷 美 香

1.課題設定の理由

筆者は,児童が生き生きと活動し,学ぶことの 喜びや充実感を味わい,心から「わかった」と言 える授業をつくりたいと考えている。そのために も,児童にとって“わかる授業"を行うことを理 想としている。そのような授業を行っていくこと により,児童は問題に対して自ら解決する意欲を 持ち,自主性や自立心を養い,生きる力へと繋が っていくのではないかと考えたからである。 本研究に取り組みたいと考えたきっかけは,大 学院 1年次のメンターの授業,第 1学年道徳『は しのうえのおおかみ』から見えてきたことにある。 この授業は,登場人物のお面と段ボールで作られ た橋が教材・教具として用いられ,教師と児童で 役割演技が行われた。教師の「おおかみさんはど んな気持ちになったかな」としづ発聞から「わか った」とし寸言葉が聞こえ,児童は,くまと出会 ったおおかみの心の変化に気づき,おおかみの気 持ちを理解した。それは,教材・教具の工夫や教 材・教具を効果的に用いるための発問によって “わかる授業"となったからであると考え,筆者 もこのような授業を作っていきたいと感じた。 そこで,“わかる授業"をつくっていくために は,どのように教材・教具を工夫すればよいのか, また,児童が問題を解決するにあたって教師はど、 のような発聞を行っていけばよいのかを追究し たい。そして,自身が理想とする“わかる授業" に近づけていきたいと考え,この課題を設定した。 実習責任教員 実習指導教員 専 任 教 員

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研 究 す る に あ た っ て 端 村 達 也 藤 原 伸 彦 木 下 光 二 児童にとって“わかる授業"のための手立て 一教材・教具の工夫と発問ー とはどういうこ となのかを考えていくo (1)“わかる授業"とは 莱原 (1997) は 子 ど も に と っ て 『 わ か る 授業』というのは,まず,

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未知のもの』が子ど もの前に置かれ,それを既知のものと『置き換 え』たり『類推』したりすることで,一時間の 授業の終了時には未知のものが既知となり,

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わ かった』といえるものになっている。そして, 既知と未知の間,つまり『境界領域』で展開す るのが『わかる授業』であり,

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なるほどわかっ た

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といえる授業は,かならず既知と未知の境 界領域で成立する。ちょっとした溝を,子ども たちの力で跳び越えさせることが大事であり, わかったといえる授業は,常にこういうふうに 存在する」と述べている。 既知の知識から新しいジョイントができて, 未知の知識のジョイントとつながったとき Iわ かった」を実感し,授業ではこの 2つの知識の ジョイントを児童自らが「つなげたjと思わせ るように支援していくことが大切である。つま り ,

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つのジョイントを引き出すための発問や 指示などの教師の働きかけが重要となる。

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教材・教具とは 教材・教具の定義として, 角 (2006)は「教 材とは,教育活動を成立させるための媒体であ

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り,それは教育目標を達成させるために選ばれ た文化的素材をさすのが普通である。一方,教 具とは,学習を効果的に行わせるために使用さ れる道具をさす」としている。しかし「教材と 教具とは厳密に区別されがたい面もあるので, 『毒主材・教具』という一つの用語として用いら れることが少なくないj とまとめている。 よって本研究で、は教材・教具と表記する。

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発問とは 有田 (2005)は「発問は,教材と子どもの能 力を基底にして,子どもの追究活動を方向づけ たり,刺激したり,規制したりするもの」と述 べ,発問の目的として次の3点を挙げている。 ①子どもたちから,何らかの情報を入手しよう とする意図をもっている。 ②子どもたちと,教材とを新鮮な出会いをさせ て,問題を確かにもたせ,追究のしかたを意 識させ,追究的にすることを目指している。 ③子どもたちが,自らの力で教材にたちむかつ て,問題解決を進めていくことをめざしてい る(活発な追究活動が行われること)。 また,子どもを動かす発問として, 思考を焦点化する発問 五 思考を拡散する発問 第 2に,ねらいに迫ることのできる発問,子 どもを動かす発聞を考える。 (2)方法 本研究では,以下の手立てを授業実践に取り 入れる。 ①教材・教具の工夫について 児童が自分たちで操作できる教材・教具の工 夫をし,視覚的にわかりやすい教材・教具を作 り,児童が自ら考え,問題解決へとつなげてい くことができるようにする。 ②発問について フローチャートを作成し,児童がねらいに迫 っていくことができるような発問,子どもを動 かす発問(i 思考を焦点化する発問 11 思 考を拡散する発問 m 思考を深化する発問) を考える。また,発聞が多くなりすぎないよう に精選する。 ③児童の変容について ビデオカメラを設置し,児童の表情も捉えて いく。これにより,児童の表情や態度から学び の変容を読みとることができるのではないかと 考えている。また,プロトコル分析からも児童 の変容を読みとってし、く。 皿 思考を深化する発問

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授 業 実 践 の 分 析 ・ 考 察 の3つに分類している。本研究では,以上の3 大学院2年次に行った授業実践をまとめる。 つの子どもを動かす発聞を中心に実践を行う。 対象は配属学級の第3学年,児童数は24名 で,実施日と単元は以下のとおりである。以下

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研 究 の 目 的 と 方 法 の授業実践を分析・考察し,研究課題にあった (1)目的 成果と課題が見えた主な項目を挙げる。 本研究では,児童にとって“わかる授業"を 行うために,次の 2点について研究することを 目的とする。 第 1に,教材・教具作りを工夫し,活用方法 を考える。 @ @ @ 実践 1 ・算数科『一億までの数~ (2013.6.10) 実践2:算数科『三角形

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(2013.10.22) 実践3・算数科『べつべつに,いっしょに』 (2013.12.12)

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(1)教材・教異の工夫について

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一億までの数』より

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児童が教材・教具を操作しているとき,

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わか った」としづ声が聞こえた。教材・教具を操 作する中で,第 2学年で学習した既習事項と の結びつきが生まれ

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わかった」という声 へつながったと考える。

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位取り板・位取り表を用いたことで,視覚的 にわかりやすくなり,大きな数を表すことへ のイメージをはっきりさせることができた。 つまずきが予想される空位のある問題も概 ね理解できたと考える。 (o

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三角形』より

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ストローを長さごとに4種類に色分けするこ とで, 3辺の長さの構成が視覚的にわかりや すくなったと考える。 ・三角形を貼る台紙に,何色(何 cm) のスト ローを何本使ったかを書く表をつけること で,辺の組み合わせを意識できると考えたが, 実際には何本かを書き入れただけになって しまった。表の活用法について説明できてい れば,この表から辺の組み合わせを意識でき, 三等辺三角形,正三角形の仲間分けができた のではないかと考える。

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ベつべつに,いっしょに』より

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児童が操作できる教材・教具を取り入れたこ とによって,ワークシートではできない絵を 操作すること(重ねる,動かす,並べる,集 める)ができた。

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教科書の挿絵を提示・ワークシートに取り入 れたことによって,問題文にはない“6人" という言葉を視覚的に気づかせることがで きた。

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ワークシートに考え方を書く枠を3つ取り入 れたことで,児童から多様な考え方を出すこ とができた。また,枠が3つあることで段階 的にも考えさせることができたと考える。

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発問について

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一億までの数』より ・教材・教具を操作する活動のあと,児童を前 に出させて発表させる場面を作ったが,事前 に知らせていなかったために児童が自分の 言葉で発表することができず,教師が代わり に説明してしまった。活動のあとに発表する という見通しを持たせることができていれ ば,児童が自分の言葉で発表することができ たのではなし、かと考える。 ・ワークシートを用いた練習問題の場面では, 一問一答になってしまった。「百が 1個だっ たらー百って書く?百だけ ?J と問し、かけた のに対し,児童から「百だけ」と発言があっ たが,そのまま次の問題へと進んでしまった。 ここで「どうして百だけワ」と思考を深化す る発聞を取り入れることができていれば,児 童の追究心を高めることができたのではな いかと考える。 (o

W

三角形』より .フローチャートを作成したが,教師主導の流 れになっており,児童の間違いやつまずきを 考えることができておらず,児童の恩考の流 れを十分に考えることができていなかった。 .つくった三角形を仲間分けする際,仲間分け の視点を踏まえた発問ができなかった。「辺 の長さ」と「組み合わせ」の2つのキーワー ドを提示したが, 6班中 5班は「形」で分け たと発表した。色=長さということも十分に おさえられていなかったため,キーワードの 意味を理解することも難しかったと考える。

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ベつべつに,いっしょに』より Oフローチャートを作成したことで,児童の恩

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考の流れを予想し,思考を深化する発問,思 ければならないと考える。 考を拡散する発問をあらかじめ用意するこ ・教材・教具の活用と発聞は常にリンクしてお とができた。実際には,児童が自ら発見した り,どれだけ良い教材・教具を準備しでも, ために発聞をすることはなかったが,児童の 発聞が的確でなければ教材・教具を生かすこ 思考の流れを予想するためには効果的であ とができないとわかった。 ったと考える。 -思考を深化する発問を問し、かけた際,具体性 に欠ける発問をしてしまった。児童が一生懸 命に考えてくれたために,期待していた発言 を得ることができたが,具体性のある発問が できていれば,児童にとってもわかりやすい 発問になったと考える。 5 成果と課題についての考察 (1)教材・教具の工夫について ・児童が操作できる教材・教具を取り入れ,教 材・教具を操作することで既習事項との結び つきができ,児童にとって「わかるJへとつ ながっていくと考える。 -視覚的にわかりやすい教材・教具を取り入れ ることで,児童にとってはイメージしやすい ものとなり,児童の問題解決への意欲につな がっていくものだと考える。

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発問について ・フローチャートを作成することにより,授業 の流れや児童の思考の流れを予想すること ができ,子どもを動かす発聞を取り入れるこ とができた。また,主要発聞がわかり,発問 を精選することもできた。しかし,教師主導 ではなく,児童の間違いやつまずきを予想し, 児童の思考の流れに沿ったフローチャート を作成しなければならないことがわかった。 ・発問は,児童にとってわかりやすし具体性 のある発聞を考え,行わなければならない。 また,児童の思考の流れに沿った発聞をしな 6.研究のまとめ 児童にとって“わかる授業"を行うために, 児童が操作できる教材・教具,視覚的にわかり やすい教材・教具を取り入れること,また,フ ローチャートを作成し,児童の思考の流れを予 想した上で,子どもを動かす発聞を取り入れる ことが“わかる授業"にとって効果的であるこ とがわかった。 以前は,ただ児童が興味をひくような教材・ 教具をつくり,自己満足の授業を行ってしまっ ていた。しかし,本研究を進めていくうちに, 教材・教具の工夫,児童の思考の流れに沿った 発聞を考える等,児童の立場に立って考えるよ うになった。また,授業を行うためには,児童 との信頼関係を築いていくことが大切であり, 普段からの学級経営の大切さを実感した。 児童が自信をもって「わかったJと言えるよ うな授業を行うことは,これから教師として取 り組んでいくべき自身の課題である。本研究で わかったことを生かしていき,児童にとって“わ かる授業"を行える教師を目指して,これから も研究と修養に励んでいきたい。 {参考文献〉 O来原昭徳著『わかる授業をつくる先生』図書文 化社, 1997.

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角文喜,障害のある子どものための手作り教 材・教具 http://me皿bers3.jcom.home.ne.jp/sumikakaol kyoguron.html

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有田和正箸『有田和正の授業力アップ入門 授 業がうまくなる十二章一』明治図書, 2005.

参照

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