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勤労青少年教育の諸問題

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勤労青少年教育の諸問題

塩 見 淳 Problems on Working Youth Education. Jun−ichi Shiomi Problems on Working Youth Education   The newly established educational system makes it a leading aim to provide as suficient opportunity as possible for working youth who are forced to work hard to get their living as soon as they graduate secondary school ; yet, as a matter of fact, more advanced education (either liberal or professional) is not opened to most of them, chiefly because of their poverty.   In our country, promotion of scientific technique education is now strongly demanded in view of its effective function for develop− ing industry; yet, as a matter of fact, both the government and local authorities seem unconcerned with the education of working youth which should form a sound foundation of developing industry. Far from that, work− ing youth are really worrying about decreasing educational facilities (decreasing of part−time high sc’?盾盾戟C conversion of part−time high school to full−time high school and so forth).  If the equal opportunity of education is to be given to all those working youth, 1 believe, the standard of professional thchnique being raised, scientific technique education (train− ing of minor technicians) will be developed, and as natural result, the indutrial skills of our country being developed, our foreign trade will be promoted.  In coclustion, what is important for develop一 ing industrial and eeonomical develoment of Japan is to have minor working class equip− ped with culture and scientific technique. From this point of view 1 want to enquire into the problems of working youth edu− cation. 序   中学校を卒業して家業に従事する生徒達への 関心は,ほとんどはらわれていないということ は,どことも同じような傾向である。   他の生徒達のことがせわしくてそれらにかか りあっている時間が,ないというのかも知れな い。   その理由はいろいろあるにしても,そのよう ないわゆるとりのこされた生徒達,しかもTer− minal educationとして学校を卒業すれぽ大方 は忘れられていくこのひとたちこそほんとう に,将来日本の産業経済を背負っていく下部構 造の基盤となるのである。    戦前の丁稚制を労基法時代にそのまま実現しよう    とするところに無理があるが,近年申学卒の就職    は,工場の徒弟か商店の丁稚かが大部分であるか    ら,使用者の心づかいや愛情も必要だし,有効だ    が問題を本質的には解決しない。(28. 9. 17朝日)   これらの学校教育の機会にめぐまれず,勤労 に従事する青少年の教育は,産業の振興と国家 建設の基盤としてその重要性をみとめられると ころであるが,この重要な青少年の教育は,質 的にも量的にも極めて複雑困難な問題をはらん でいる。  そのうち,工場や中小企業にでもいわゆる 「就職」したものは,職場教育をうける機会も t

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98 滋 大 紀 要 第  7  号 1 9 5 7 あり,集団生活による相互教育もあるが,家業 に従事するひと達の向上修養の社会は,それほ どにめぐまれてないといってよいQ   「働きつつ学ぶ」として,昼聞汗とほこりに まみれて働き,疲れきった心身を更にむち打っ て夜間勉学研さんにっとめることは,よほどの 体力と気力を要することであるから,工場の従 業員達でもこの両立はむずかしく,初心のきん 張はいつのほどにかどちらもつかずに脱落して いく場合が多いということをきく。  科学技術教育の振興が新しい教育施策のとつ としてクローズアッズアップさようとすると き,日本産業の進展に黙黙と精進をつづけるこ のひと達の教育こそ政府としてももっとも関心 をはらい,更にそれぞれの職場に直結する適切 なる指導がもっとも大切ではないだろうか。   このため交部省では,勤労青少年教育の振興を今   年の重点施策のひとつにとりあげることにきめ,   文部大臣の最高諮問機関である,中央教育審議会   に大がかりな「勤労青少年教育の改善策」を諮問   することになった。この諮問では,社会ですぐ役   にたつかつての旧制農,工,商業学校といった職   業技術教育コースの新設も考えられているQ        (32.6.23朝日)  このように勤労青少年の教育は,わが国教育 の全体構造の中で,とくに重要な位置をしめつ つあるにもかかわらず,学校教育とちがってや りにくい点も多く,またこの教育に対する世人 の認識の不足と努力の古池により,いわゆる教 育の盲点一盲腸的な存在一となっている。  また一方では,可型性にとみ(よい意味にも わるい意味にも),心身共に未成熟にして思想的 には不安動揺する人生の一大危機に際会する青 年期だけに,もっとも教育を施すしがいのある 重大な陶冶期である。  このときに,現場ですぐ聞にあう職業教育も 必要であるが,同時に人生観なり,職業観な り,また一般教養方面についてもしっかりした Back upを考えてやることがこれまた肝心なこ とであると思う。  “青年を大切にする国家は栄える”というこ とばを想起するとき,とくにその必要性を痛感 する。   この論稿では,義務教育終了後主に家業に従事し ている,勤労青少年の問題に頭をおいたものであ り,今回をはじめとして,更に稿をすすめるつも りである。  昭和22.3.31に教育基本法(無筆25号)なら びに学校教育法(法第26号)が公布されて,明 治5年(1872)に始まる,二本の近代教育制定 を立直す劃期的な方策がとられた理由として は,「日本人が自主的に健全な教育制度再建に必 要な諸条件を樹立するための援助の積極的提案 をなすことに主要な重点を置いた」米国教育使 節団の勧告示唆が大きな推進力となったのであ る。  征服者の精神でなく経験ある教育者として, 有力なる相談相手としてやってきた教育使節団 は,日本の教育者は精神だけで働くひとに対す ると同様に器具をもつて働くひとびとに対して も敬意をはらう国民に誘導せねばならないと し,そしてまた日本の教育制度は大衆と少数特 権階級に別別の種類の教育を施した,19世紀型 の教育体系を根本から立直すことをも強力に推 進せんとしたのであった。  この米国教育使節団の学制改革方針に対する 積極的な提案をとりいれて(これをうけ入れる か,否かの重大会議のとき,だれひとりとして 反対者がなかった由)学校体系を単線化して, 義務教育として国民に最少限度の教育を施すよ うにして教育の機会均等の立場をとり,義務教 育を中学校3力年迄延長して,20世紀的教育水 準まで高めようとする当時における世界的傾向 への適応を示すことになった。  そしてこの新学制のもとに,教育基本法第一 条(教育の目的)にうたわれている,  「人格の完成をめざし,平和な国家及び社会  の形成者として,真理と正義を愛し,個人の  価値をたっとび,勤労と責任を重んじ,自主  的精神にみちた心身ともに健康な国民の育  成」という新しい教育目的のもと,すべての  国民に平等の教育の祉会を賦与し,それによ  つて個人の機能を完全に発揮させ,かつその  祉会的義務を有効に遂行させるという民主々  義の理念に従って,国民教育制度の組織化に

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 着手したのであった。  ところがそれから僅か10年をすぎんとして, 早くもそれに対する「再検討」がいろいろな角 度からおこなわれてきているのである。  すなわち,道徳教育論,科学技術教育,職業 教育,教育課程,内容の問題から更には,根本 的な学校教育鋼度の改革案までもでて,いずれ も現行教育,内容に対する,ぎびしい批判がな されているのである。  近代学校の理想は,あらゆるものに学校進学 の機会が均等に与えられねぽならぬということ にある。  このためには,学校の性格がここに入ろうと するひとびとをはばまないようにと様様な方策 を施し,進学を奨励する方法さえもとられてい る。  このように学校を近代的な性格のものとなす 考えは中等教育段階をこえて高等教育の一部に まで進んでいるのであって,教育の機会均等は 初級中等学校及びその後の学校についても均等 の機会を与えようとしている。  アメリカにおけるもっとも進歩的な学校制度 を型どったわが国の63制度が与えたもっとも大 きな改革は,小学校教育を終了したものが中等 学校と青年大衆学校との二途にふりわけられ, その進路を決定しなければならなかった二重体 系を打破して,中等学校進学の機会を均等にし たことである。  ここに中学校の特権化された性格が一挙にし て破れて民衆学校となったのである。しかし学 校特権化の問題は次の段階である,高等学校に おいて保持されようとしている。ここを民衆中 等学校の観点から分離して,えらばれたものの 学校たらしめようとする考えが一般に力をもつ てきた。  この3再開は義務制でないが,あらゆるもの に対して進学の機会が広く与えられ,ここに入 学したいという希望はすべて充足されるように 学校が設置され,その教育は無償となることが 求められている。  しかし,実際にはこのような思想は実現され ていないのであって,この段階では進学者は著 るしく制限されている。  すなわち,中学校卒業生の進学率は,昭和30 年度では50%以下の県が全国の半分以上をし め,61%以上を示すのは東京,神奈川,京都, 大阪,兵庫,岡山,広島,山口の8府県で,40 %以下は九州南部三県がしめている。同一府県 内でも都市と農山漁村の差があるので,高校は 依然として,一般民衆の入る学校ではないとい う性格を与えられている。  いま,本県の昭和31年3月卒業生進学志望率 についてみると,    昭稲31年3月卒業生進学志望率       (昭和30.10.1現在)       ()の中は29. 10.1現在調査

市市市市市市 郡早牛郡郡郡

根津幡市即急太田洲生賀島

  三日  部

早大近八長草郡栗坂野幾十高

65.8% (73.090’) 65.6% (66.0%) 59.9% (65.1%) 56.3/Oo’ (47.590) 52.7% (54.0%) 50.8% (51.3.0/.) 55.6/o/. (60.6%) 55.0% (57.4.o/.) 48.4% (49.4%) 36.3702i (39.4%) 34.0;e,i./ (31.0%) 25.4% (23.7%) (教育時報 第7−4号)  これで市及びその近接地が高く,辺地程低く なっていることは毎年同じ傾向であるが,全般 からは進学志望率が年年低くなるように思う。 いま,教育年限について旧制度と比較すると,   小学校  中等諸学校  高専 旧制6      5     3      中学校   高校

新制6   3     3

となり,旧制との差は僅かに1年となる。  戦前,戦中を通じて教育の普及発達はめざま しく,ほとんどどのコースかの旧制中等学校に 入学した情況であったことを思うと,新制度に

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100 滋 大 紀 要 第  7 号 1 9 5 7 おける僅か1年だけの差のある高校が準義務制 になる位の進学の機会が均等に開放せられなけ ればならないと思う。ここにおいて高校の準義 務教育化が実現し,教育の民主化が完成する。 これこそが民族の教育の根幹となるのである。  新学制の中等教育で折角教育の機会均等が標 ぼうされて進歩的となったが高等教育では,昔 の中学校の如くすっかり特権化してしまってそ の効果を減殺したことにさえなるのである。  戦後63制の実施によって,義務教育年限が延 長され,教育の機会均等はある程度すすめられ たが,より以上の高等普通,専門の教育は「教 育をうける能力」が原則として経済的な基盤に よつて限定されている。  その結果,主として経済的な理由によって義 務教育以上の学校に進学することのできないも のは,社会的階層の形成に劣等な立場にたっと いう社会通念が根強く麦配している。  したがって,勤労に従事し乍ら自力によって 再び学習のコースについても,その能力は別と して,自らも社会一般も,はじめから特殊なコ ースにあるものと認めているのが現状である。  この基礎的な条件は,「教育の機会均等が叫ば れ乍ら,現状は教育をうける能力に限定があり, 知的能力がじゅうぶんでなくとも,経済的に能 力あるものがその機会をほしいままにした過去 の伝統が,依然として社会の底流をなしている ことを立証するものである。  こと新しく教育基本法をもちだすまでもな く,民主的文化的な国家の形成者としての国民 ひとりひとりの人格の完成を期する教育は,義 務教育をもつて終結するものでなく,生ある限 り,あらゆる機会,あらゆる場所において続け られ,その目的達成に向って,たえざる努力が なされなければならない。  このようにみてくると,ここに奨学金制度, 育英資金制度の拡充強化が必要とされる所以で ある。   この稿をすすめるおりもおり,岸首相の全国遊説   第一声には「教育制度を日本の国情に合うように   改め,技術,実業教育を充実する」点を強調して   いる。そして青少年への期待では「わが国の将来   の運命を担う者は青少年であり,そのための自覚   を高め,道義心を培い,国史に深い理解をもち, 祖国に愛情をもつよう教育内容を改め,また科学 技術教育,実業教育を重視するよう学校体系を調 整する必要がある」と。更につづけて「また私が 特に実現したいと考えていることは,秀れた才能 をもち乍ら,経済上の理由で上級の学校に進学で きない青少年にたいしては,大学までの進学費を 国が全額保障をする育英制度を創設することであ る」と力説している。(32.9.20毎日)  更に自民党の教育改革の方策としては青少年の 育成に対し,この外に定時制教育,夜間大学,青 年学級などの改善充実をはかると共に,職場教育 の施設を拡充すること等を打出している。  交線省では,経済的に高校へ進学できない曲学 卒業生の数が約40万人あるとみ,その中1万人の ‘‘ p才”をえらびだして,高校に進学させこれに 月額3千国の奨学金を貸与する制度を考えてい る。3年後に大学へ入った場含は月額8千Nとし, しかもその償還は一部免除しようとする構想であ る。  これが実現すれば家庭貧困の“英才”にとって は大きな福音となるわけだが,これに要する国費 は初年度3億6千万円からはじまって,7年後に は毎年度50億四に上るという計算である。        (32.9.19 朝日) 四  昭和31年1月現在,中学校卒業後「進学せな い理由」について調査したところをみると,調 査校は大津市内5校と郡部16校の計21校で本県 全中学校の%,昭和30年度卒業生の約11%の 2.011名(998十1.013)。  最:も多いものからその理由をあげると,       男    女 1.仕事がすきである 2.経済的な理由 3.家事の手伝 4.早く給料をとって独立 5.成績わるくて進学できぬ 6.親がたっしゃでない 28.4% 21.0% 22.0% 17.7% 12.1% 17.4% 9,5% 12.0% 6.9% 7.2% 4.3% 5.6%  この調査結果から,大津市内5校と他郡市16 中学校と,また性別の比較をしても,いずれも, 上記のように仕事ずき,経済的理由,家業手伝, 給料とつて独立,成績わるい一という順にな ってほぼ同じ傾向を示していることは注目すべ きことと思う。  「経済的な理蜘」と「家業の手伝」とは,家 計がこんなんで,学資がたりないことなどがか らんで考えられる。それであるから「早く給料

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をとって独立する」ことにもなり,いつまでも, 親に厄介をかけないで「早く楽にしてあげた い」子の至惰がふくまれている。 「経済的な理 由」で進学できないことは,奨学金制度,育英 資金制度のワクがもっとひろくなることはのぞ まれないものか。    未知の青少年からの進学できないなやみについ   て,その理由についてみると,   ①経済的な事情第一。   ②農商家の長男は教育すれば家業をつがない     という,相続関係を親がおそれる。   ③それから女子に学問はいらないとする親の    考え方も多い。   それで進学が不可能であったり,進学の希望が理   解してもらえないことを嘆いている。        (31.5.12毎日)  高等教育をうけると家にいなくなり,所詮家 業をつがないといった考え方は,本県にても直 接きいたことがあり,これは社会通念であるら しい。   労働者は「われわれが子供時代,先生は一・生懸命   勉強して軍人や政治家になれと教えたが,職工に   なれとはすすめなかった。労働者は,社会の進展   には何の関係もない雑草のように思われていたの   だ。だから先生は,上級の学校にいくものが入学   試験に合格すると大変よろこんでくれたが,工場   や鉱山へ働きにでるものに対しては,温い顔や言   葉は与えてくれなかった。親も子もすぎからでは   ない。職工になるのも貧乏だからやむをえないの   である。    そして同じような成績なのに,となりの子は高   校へ,わが子は工場へいくとき,子供の悲しそう   な顔をみて,親は胸もつぶれるような思いをする。   もっと明るい世の中にしてほしいものだ」と子供   の教育すら満足にでぎない嘆ぎを訴え,労働者に   もっと陽のあたるような政治を要望している。        (30.2.28ご月の声)    日本育英会高等学校奨学生の予約採用制度。    この制度は,学業,成績,人物,健康,いずれ   も極めて優秀であるが,家計が困難なため,育英   資金をかることがでぎれば進学可能な高校入学希   三者に対して予約採用する制度で,本県では採用   人員30名以内で高校卒業まで,月額千円かること   ができる。    門中学校長は一校一名,ときには二名以上も出   願でぎることになっている。  この育英資金の月額をまし,採用人員を少し でも多くすることはのぞむことであるが,それ ができなけれぽ授業料を免除することや,生活 扶助家庭の子弟や通信教育生にもその適用をひ ろげ,またどちらかといえば,全日制普通高校 生よりも実業高校生や定時制高校生の方に多く 貸与せられて早く社会にでて活動するようにし むけてもらいたいと思う。  高等学校を普及させてだれでも容易に進学で きるようにするばかりでなく,優秀な素質をも つたものを経済的な理由で進学を断念させてい る実情を根本的に検討して,これに対する最善 の方策がたてられることがのぞまれる。  このことは,教育基本法第三条②にすでに指  摘されているところであって,   ②国及び地方公共団体は,能力があるに   かかわらず,経済的な理由によって修業困   難な者に対して,奨学の方法を講じなけれ   ばならない。  ことである。 五  最:近5年間の本県中学校卒業生の動向につい てみると次のとおりである。 本県中学校卒業生の動向        (公私立中学校集計)

職蝶者難学者数就職翻墨到死亡

昭和27 28 29 30 31 18,114 14,412 7,165 39.5% 6,430 44.6% 、5,282 i晒6    i 44.8% 18,223 18,172 7,859 43.7% 7,871 43.3% 7,977 5,806 6,482 8,486 8,631 2,876 2,124 1,842 1,757 1,583 96 48 100 118 82 4 2 3 5  この表でみるとおり,進学は大体43%一44% であり,就職者の中にも,就職しつつ定時制に 通学するもの(昭和30.373,昭莉31.298)もあ るが,大体55%内外のものが勤労青少年という ことになる。  ところがこの勤労青少年の教育は,学校とい う制度の中で営まれていないこと,対象となる 青少年が実務青年であって,社会全般にわたり, 広汎かつ雑多な職業に従事し,単純にこれをと

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102 滋 大 紀 要 第  7  号 1 9 5 7 らえ,教育の場にひきつけることができないと ころにそのむずかしがある。  またこれら勤労青少年教育に対する世人の認 識の不足もまたその不振の原因である(青年学 級で各地:方の小学校を利用する場合,先生方の 理解協力は少くて,研修会,グループ学習,フ ォークダンス等の場合に大へん困るとの実情を きくことが多い)。  一一eeに学校といえば,そのschoolという名の 示すように,古代ギリシャで閑暇(schore)の ある自由民が学習するところで,生産とか労働 というものはおよそスコーレとは反対の,自由 民のすることではなく,無閑暇,無自由の下賎 のこととされ,学習や教育とは縁のないことと されたその考え方が今尚こびりついているよう である。  またわが国の学校そのものがおしなべて,独 尊的で閉鎖的で,はなはだ特権的である。庶民 の要求に耳を傾けてその門を開き,生きた社会 の庶民の生活に教育を打こむことを,教育者の 堕落のように考えがちである。  新教育制度は,だれでも勉学できる「教育の 機会均等」がたてまえとなっているが,実際に は働く青少年の教育施設はかえって狭くなって いる。   現在,働く青少年に開かれている教育のチャンス   は,定時制高校,高校通信教育,短期大学,夜間   大学,青年学級,民間会社の技能職員養成所など   あるが,地方の赤字財政のあおりなどから,こう   した施設がへってきている。    とくに“働きながら学ぶ”大口の施設である定   時制高校はこの1年間に71校も全国でへらされた   うえ,来年度申にはさらに55校がへらされる運命   にある。これにひぎかえ,今年新設を予定されて   いるところは,全部で19校で非常に少く,関係者   は「放っておけば定時制高校崩壊の危機もくる」   と心配している。農村に多い青年学級も,学校教   育のワクにはめて実施すると,生徒の出費ばかり   かさむ割りに,働く青少年の希望にそわないとか,   負担が重すぎてかえって生徒がよりっかないとい   う結果がでてくる。また民間の技術者養成所につ   いても学力の程度がまちまちで,高校の教育課程   の一部としてみとめられるかどうかということが   問題とされている。このように勤勇青少年の勉学   機会が少くなったり,制度そのものにも疑問がも   たれてきている。      (32,6.23朝日)  勤労青少年の対策としては,既に昨年1月に 中央青少年問題協議会が「定時制高校に学ぶ働 く青少年の教育保護福祉対策要綱」を総理大臣 に意見具申している。更に内閣の青少年問題協 議会では「勤労青少年教育対策要綱」を発表し て,再検討の必要を総理大臣に訴えた。その意 見具申の骨子は,  ①わが国の発展充実のためには,現在の技  術水準では不十分である。今後の教育は技術  立国の線にそい,教育の体系を再編成するこ  とが必要であること。  ②そのためには,現在行われている各種各  様の勤労青年の組織,機能,事業等について  相互の調整をはかるだけでは不十分であり,  根本的な改革が必要である。  ③ 今日の生産技術の急速な発展に即応しう  るためには,勤労青年の教育の機会を拡充し  て,少くとも満18歳に達するまでは,使用者  又は保護者に対し就学を義務づけることによ  り,勤労青年に職業技術を修得させる必要が  あること。  ④この教育の機関として4年制の産業高等  学校(仮称)の制を新におこして,このうち  2年間を義務化しようとするものであるこ  と。   設置要領として,  ① 勤労青年の使用者叉は保護者は,勤労青  年が義務教育を終了した日から満17歳に達し  た日の属する学年の終りまで就学し,昼間学  習のため,労働時間内において産業高校に就  学義務を負う。  ②教育方法は一般教養学科,基礎学科,関  連学科,実験実習,実務実習で工場事業場と  連絡実施,単位制で現行高校の単位と共通,  4年間で完結する。  そして,現行制度との関係については,定時  制高校の職業課程,高校通信教育,披能者養  成施設のうち可能なものから漸次産業高校に  統合する。  このような構造のもとに発足せんとしている のである。  この中央青少年問題協議会具申による「勤労 青少年教育対策」に対して,更にまた一方産業 界からも改善の希望が強くだされているQすな

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わち日経連では,   ①定時制高校や通信教育に職業教育,職業科目    をふやすこと。   ② 産業の地域分布をにらみ合せ,農村には農業    課程,工業地帯には商,工業課程の学校を配置    する。   ③ 技能者養成所と定時制,通信教育との連絡を    はかる。        (32.6.23朝日)  といった,実業界ですぐ使える教育の実施を 要求,原子力,オートメション時代の今日,い まの学校,とくに勤労青少年の教育は普通課程 より科学技術を中心とした職業課程に重点をお けといっている。   英国の勤労青少年教育関係の法令のうちとくに注   目されるもので,1944年有名な,バトラー法とよ   ばれる教育法によって義務教育が1年延長され5   歳から15歳までとなった。そして義務教育を終え   た青少年たちの「継続教育」(further education)1・t   「15歳で学校を去ったすべての青少年」を牧容し   て勤労日の一週の中一日に相当するだけ’County   College lcて無料の定時制教育をうける義務があ   るとされた。この44年法は,年問44遍,勤労日の   うち一週に一日または半日2回出席,または他の   方法で年問330時間出席が原則で,この時間は労  働時間のうちに計算される。産業高校の構想がよ   くにる。 本県教育費の年度別教育分野別総教育費 一実額一

’;凝議「繍讃隊四韻籔温石育藝

昭和27 28 29 30 31   千円 2,620,814 100.0% 3,072,011  100.0 3,378,259  100.0 3,427,204  100.0 3,403,234  100.0 2,445,484   93.3 2,780,684   90.5 3,174,903   93.9 3,202,817   93.4 3,179,102   93.4 79,596  3.0 149,831   4.8 84,224  2.6 93,169  2.8 98,376  2.9 95,734  3.7 141,496   4.7 119,132   3.5 131,218   3.8 125,756   3.7 六  次に社会教育の行財政の問題についてみると 次表に示すようである。 文部省:地方教育費の調査報告書 校教育費85%,社会教育費約6.5%,教育行政費 8.5%位となっている。 大津市の年度別教育分野別数育費 。。区分

縁J韻学鰍讃藪議警政暮

昭和29 30 31 32  千円97,180 100.0% 105,458  100.0 105,433  100.0 130,542  100.0 82,935  85.4 90,155  85.5 88,966  84.5 110,889  84.9 5,542  5.7 6,400  6.1 7,360  6.9 10,137  7,8 8,703  8.9 8,903  8.4 9,107  8.6 9,516  7.3 大津市教育予算書による。 同上 (大津市近接五村合併前) 全国年度別教育分野別総教育費 一実額一

期1繍韻学穂倒懸屠譜

昭和27 28    千円 247,815,767  100.0% 296,887,284  100.0% 2g 1333・?g8r82.9 30 337,973,825  100.0% 230,869,157   93.2% 274,972,186   92.6% 311,308,525   93.3% 6,998,391  2.8% 8,303,078  2.9% 8,437,312  2.6% 316,545,72017,785,350   93.7%i 2.3% 9,948,219  4.0% 13,612,020   4.5% 13,584,292   4.1% 13,642,755   4.0% 文部省:地方教育費の調査報告書による 昭和25  千円63,311 100.0% 55,563  87.7 2,120  3.3 5,628  8.9  すなわち全国と本県との教育分野制の比較で は,ほぼにかよった比率を示していて,そのな かでも社会教育費と教育行政費とはこれまたよ くにて大差なしという実績を示している。しか し,これが次の大津市の教育予算の比較では学  これは学校教職員の給与が国費と県費でまか なわれているための変動であって,もし市町村 の負担とすれぽ,全国や本県の比率のようにな り社会教育費の方がもっとへる筈である。しか し,年と共に社会教育費と教育行政費との比率 は,ほぼ全国及び本県なみに相互には大差なし という実態を示しつつあることはのぞましいこ とである。  これが,大津市の近接地5村(大石,上田上, 雄i琴,坂本,下坂本)の合併前の昭和25年度教 育予算の比率では,学校教育費87.7%に対し, 社会教育費3.3%,教育行政費8。9%となってい る。これと現在とを比較すると,町村合併によ

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104 滋 大 紀 要 第  7  号 1 9 5 7 る社会教育費の予算が増額されたことになるわ けで,勤労青少年教育のためにもよろこぼしい ことである。  社会教育費は市町村自治体の負担であるか ら,これが教育行政費と同率にないしはそれ以 上に増額されつつあることは,合併地域がいず れも純農村地帯であるだけに,家業に従事する 青少年たちの教育指導の上にも注意が払われつ つあることを立証するものであろう。  勤労青少年教育の振興方策について,丈部省 でも,勤労青少年に対しもっと広く教育の機会 を与え,また産業技術の進歩についていけるだ けの能力を育成する必要があるとしてその具体 的施策として,  ① 各種の勤労青少年教育機関の性格,役割  を明らかにし,その勤労青少年の実態に応じ  た産業教育の促進,たとえば定時制高校の職  業教育,職業訓練の重視,教員給与の国庫負  担,青年学級に実験実習の施設,設備の整  備。  ②各種教育機関の相互連絡を密にし,学習  継続ができるようにする。  ③勤労青少年の教育に対して祉会の協力理  解を求める。  このようにして,わが国の青少年の大部分を しめる勤労青少年教育に対して,政府としても 現行制度および機関に対し全面的な再検討を加 えることとなったのである。  中学校の卒業生は毎年度180万人内外に上っ ているが,このうち全日制高校進学が約4割, 働きながら定時制高校に学ぶものが1割7∼8 分,このほか通信教育,青年学級,労働者の技 能者養成制度などの教育をうけたり,各種実業 学校に入るものが少数あるが,全体の凡そ5割 近くは全く教育の機会を与えられていないとい うのが現状である。  昭和30年度の国勢調査によると,15歳一24歳迄 の青少年人口16,867,000人この中大学生は547, 740(夜間102,637),高校生2,592,001(定時制 541,715),青羽生1,075,358(除学生,生徒),各 種学校958.292,通信,技能養成,農村建設, 産業開発青年隊,補導所生245.665であり,青 少年のうち約32%ののものが継続的計画的な教 育の機会を与えられていることになる。  勤労青少年教育機関の性格,役割を朋らかに してその勤労青少年の実態に応じた産業教育を 推進するためには,文部,農林,労働厚生各 省との相互連絡提携が必要であることも,この 際特に考えなければならないことである。  学校教育はそのままでも進展する。社会と世 人の学校教育によせる関心と努力はそれを更に 促進せずにはおかない。ところが,勤労青少年 に対する教育はどうであるか。しかも一方では 勤労青少年教育の問題は,国家の現在と将来を 視野の中に入れた広い意味の産業教育の一環と して考えられなければならない重大なる使命が 負荷されている。  わが国が工業と外国貿易を振興させることと 共に食糧自給度の向上は国家的な課題である。 わが国農村の勤労青少年教育の問題は,この国 家的課題との関連のなかで考えられなければな らない。  このように考えてくると,日本産業経済の基 盤としての勤労青少年の教育については,ここ で現行の各教育制度を検討し,この使命を培う 方面に,今こそ再編成し強力に実践せなければ ならない瀬戸ぎわにたっていると確信する。

むすび

 日本産業経済の基盤となって義務教育終了後 直ちに職業につく勤労年少者の教育の問題は, 国家の現在と将来を視野の中に入れた国家的課 題との関連の中で考えられなけ’ればならない。  勤労年少者というのは便宜上20歳未満の青少年を   よび満20歳からの5年間はほんとうは成入なのだ   から,年長者とよぶ。勤労青少年というのは満15  歳からの10年間ということになる。 つまり問題の理解には,国家の産業形態につい ての大きな展望が必要なのである。このような 重大な使命をになっているのにもかかわらず, これら勤労青少年教育に対する政府及び各地方 自治体の関心は極めてうすい。  それどころでなく,実際には働く青少年の教 育施設は年年狭くなりつつさえある。6・3制に よる義務教育制度の確立によって,基礎的教育 水準はいくぶん高められてきたが,職能的専門 的水準は必ずしもこれに伴っているということ

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はできまい。戦後10年の6・3制教育を検討する 教育課程審議会の一つの課題として,科学技術 教育振興のため中学校職家科の再編成を考えま た職業教育強化の立場から,義務教育の最終段 階である第三学年では教科と時間数に巾をもた せ,生徒の進路特性に応ずる指導をすることを 考えて,この新しい教育課程は来年3月に結論 を文相に答申するとのことである。  世の中は分化し,それぞれの部面や部局がは っきりした技術を要求してくる。産業技術の分 化発達は,自分自身に何か適確な披術をぴった り身につけておくとい5,自分に重心を置く考 え方が要請されてくる。いわば機能的な社会へ とすすんできているのである。「働きつつ学ぶ」 勤労年少者たちの学習の機会は色色と考えられ るがそこには両立せない条件が多い。  そこでこの場合より重要な点は,勤労年少者 教育の制度を根本的にかえるか否かの問題にか かわらず,さしあたっては現に多少の青少年を 雇用しているひとびとが,単に青少年たちのた めというばかりでなく,日本の生産水準の向上 という視点から積極的な協力をすることであ る。まず使用者の教育からはじめることがその 第一歩である。さきにのべた,中央青少年問題 協議会が「昼間の産業高校を新設し,その前期 2年間を義務就学制とする」の制度の実現に協 力することもその一つであると思う。  勤労青少年の教育を最近要望の高まっている 技術教育中心のものとするためには,現行のそ の教育機関たる定時制高校や青年学級の教育内 容が一般教養にかたよりすぎているので,これ を技術教育中心にすべきだとの意見も丈部省や 産業界を中心にかなり強く行われていることも きく。しかしこれはこの教育だけの問題ではな い。  これらの「働きつつ学びたい」勤労年少者た ちにひろく教育の機会を与えてやることによる 職能的専門的水準の向上は,科学技術教育(初 級技術者養成)を振興することになり,ひいて はわが国の生産技術を高め外国貿易を振興する ことに役だつからである。  日本産業経済の発展のためには,国民全体の 技術水準が高まることが必要であり,勤労青少 年教育の大じなことはここにつきる。  とまれ,中学校卒業後直ちに職業につく勤労 年少者の教育のあり:方については,日本産業経 済の基盤構造となるだけに,政府も地:方自治体 も,もっともっと重点施策をここにおいて,再 検討することが要望される。(32,9稿)

参照

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